説明

熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法

【課題】樹脂含有が50質量%未満である熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本組成物の製法は、植物性材料(ケナフコア)と無機材料(タルク)と熱可塑性樹脂(ポリ乳酸)とを含有し、組成物全体100質量%に対する樹脂含有が50質量%未満である組成物の製造方法であって、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程を備え、無機材料は、植物性材料及び無機材料の合計に対して1〜55質量%である。本成形体の製法は、本組成物の製法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法に関する。更に詳しくは、植物性材料と熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びこの熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量削減や環境保護等の観点から植物等の天然資源を用いた材料及びその技術が注目されている。特に、石油等の鉱物資源を用いた樹脂から生物資源を用いた樹脂へと転換する試みや、鉱物資源から得られた樹脂に生物資源から得られた補強剤等を混合して鉱物資源の使用量を削減する試み等がなされている。しかし、鉱物資源から得られた樹脂は、これまでに種々の物性制御がなされ優れた特性が付与されている一方で、生物資源から得られる樹脂、例えば、ポリ乳酸等は、耐熱性を向上させたり、結晶化速度を早くしたりして、より優れた物性が達成されつつあるものの、鉱物資源から得られた樹脂に比べると未だ特性に劣る部分もある。
この問題に対して、樹脂に対してより高い機械的特性を付与する観点から、下記特許文献1及び下記特許文献2に開示されるように、植物性材料等を含有させる技術が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−105245号公報
【特許文献2】特開2000−219812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のケナフ繊維強化樹脂組成物は、植物性材料であるケナフ繊維を50質量%以下含有させたものである。しかし、特許文献1には、ケナフ繊維が50質量%を超えると、樹脂組成物の流動性が著しく低下して射出成形性において満足する製品形状や製品形態が得られないことが記載されており、更なる樹脂使用量の低減と、機械的特性及び成形性の向上が求められる。
【0005】
また、上記特許文献2の熱可塑性樹脂組成物は、植物性材料である非木材繊維を50質量%以上含有させた熱可塑性樹脂組成物である。しかし、特許文献2には、樹脂にロジンや可塑剤を加えず、植物繊維のみを配合した場合には植物繊維が均一に分散され難く、樹脂と植物繊維の間の親和性が悪いことなどから、強度等に劣り、又品質の均一性にも欠け、実用性に乏しい材料しか得られないことが記載されている。
更に、上記特許文献2の熱可塑性樹脂組成物の製造には、ケナフを10分間かけて徐々に混練機に投入した上で20分間混練を行い、更に、添加剤を添加した上で20分間混練を継続することが記載されている。このように、従来、植物性材料は数度に分けて投入し、更に、混練を繰り返すことが必要であり、熱可塑性樹脂組成物の製造には煩雑な工程と長時間を要している。このため、より簡便で短時間での製造が求められる。
【0006】
本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂に植物性材料を高い割合で効率よく含有させることができる新たな熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びこの熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示す通りである。
(1)植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを含有し、本熱可塑性樹脂組成物全体100質量%に対する該熱可塑性樹脂の含有量が50質量%未満である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記無機材料は、上記植物性材料及び該無機材料の合計を100質量%とした場合に1〜55質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(2)上記撹拌機は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂と、上記植物性材料及び上記無機材料と、を混合する上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(3)上記無機材料の見掛け比重をBとし、上記熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合に、B/Cは1.2以上である上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(4)上記無機材料は、平均粒径が100μm以下である上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(5)上記植物性材料は、ケナフコアである上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(6)上記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂である上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(7)上記無機材料は、タルクである上記(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(8)上記(1)乃至(7)のうちのいずれかに記載の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、多量の植物性材料を熱可塑性樹脂と短時間で混合して熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。また、得られる熱可塑性樹脂組成物から成形される成形体からは高い機械的特性(特に剛性)が得られる。
混合工程では、混合室中で混合羽根の回転により溶融された熱可塑性樹脂と、植物性材料及び無機材料と、を混合することで、特に短時間で混合を行うことができ、また、外部からの加熱を要することなく熱可塑性樹脂組成物を製造できる。更に、外部からの加熱を要しないために別途の加熱手段等が不必要であり、低コストで熱可塑性樹脂組成物を製造できる。
無機材料の見掛け比重をBとし、熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合にB/Cが1.2以上である場合は、優れた機械的特性を有しながら軽量な成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物を短時間で製造できる。
植物性材料がケナフコアである場合は、より軽く且つ特に機械的特性に優れた成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物を製造できる。また、ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。
熱可塑性樹脂が生分解性樹脂である場合、生合成可能であり、また、非石油系樹脂である樹脂を用いることとなり、高い機械的特性を得ながら、石油資源の使用を抑制できる。
本発明の成形体の製造方法によれば、熱可塑性樹脂に対して多量の植物性材料が含有された機械的特性に優れた成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを含有し、本組成物全体100質量%に対する熱可塑性樹脂の含有量が50質量%未満である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記無機材料は、上記植物性材料及び上記無機材料の合計を100質量%とした場合に1〜55質量%であることを特徴とする。
【0010】
上記「植物性材料」は、植物に由来する材料である。植物は、草類であってもよく、木類であってもよく、その他の植物であってもよい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。この植物としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0011】
また、植物性材料として用いる植物の部位は特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定の部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
尚、本発明におけるケナフとは、木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、更に、通称名における紅麻、キュウバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
また、本発明におけるジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法で用いる植物性材料の形状は特に限定されない。即ち、例えば、粒状であってもよく、繊維状であってもよい。粒状とは、球状、立方体状、ブロック状、直方体状、柱状及び不定形塊状等を含む形状であるが、繊維形状は含まない。一方、繊維状とは、長さL/直径R(円形でない場合は最大長さ)が10以上となる形状である。このうち植物性材料の有効活用の目的(例えば、ケナフにおいては靭皮繊維だけでなくコアを使用でき、より多くの部位を有効活用できる)においては粒状の植物性材料(粒状のケナフコアなど)が好ましい。一方、成形体の機械的特性(曲げ弾性率及び耐衝撃性等)を特に大きくする目的においては繊維状の植物性材料(例えば、ケナフの靭皮繊維など)が好ましい。更に、併用することでこれら両方の効果を得ることができる。
尚、植物性材料は混合時の剪断力等により形状及び大きさが変化して熱可塑性樹脂組成物内に含有されてもよい。即ち、熱可塑性樹脂組成物内における植物性材料と、混合工程で用いる植物性材料と、は形状及び大きさにおいて同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0013】
この植物性材料の大きさは特に限定されず、植物性材料が粒状物である場合、その粒径は0.05〜1mmとすることが好ましい。この範囲であれば混合時間を短縮しながらより優れた機械的特性を得ることができる。更に、この粒径は0.05〜0.7mmとすることがより好ましい。この範囲であれば、混合時間をより短縮しながらより優れた機械的特性が得られる。また、この粒径は0.07〜0.5mm(特に好ましくは0.1〜0.4mm、とりわけ好ましくは0.1〜0.3mm)とすることが更に好ましい。この範囲であればとりわけ効果的に優れた機械的特性(特に高い曲げ弾性率)を得ることができる。一方、植物性材料が繊維状物である場合、その長さは5mm以下(通常0.1mm以上)が好ましい。この範囲であれば混合時間を短縮しながらより優れた機械的特性を得ることができる。更に、この長さは0.5〜5mmとすることがより好ましく、0.5〜3mmとすることが更に好ましい。この範囲であればとりわけ効果的に優れた機械的特性(特に高い曲げ弾性率)を得ることができる。
尚、植物性材料が粒状である場合の粒径は、粒度分布を測定して得られるD50(平均粒径)の値である。一方、植物性材料が繊維状である場合の長さは、JIS L1015に準拠し、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値として得られる。
【0014】
植物性材料の配合量は特に限定されないが、熱可塑性樹脂と植物性材料と無機材料との合計を100質量%とした場合に25質量%以上(通常95質量%以下)とすることができ、特に27〜90質量%とすることが好ましく、30〜75質量%がより好ましく、30〜65質量%が更に好ましく、30〜60質量%が特に好ましく、35〜55質量%がより特に好ましく、40〜55質量%がとりわけ好ましい。上記範囲では、熱可塑性樹脂に植物性材料を混合することによる補強効果を得ることができ、曲げ弾性率を効果的に向上させることができる。また、各々の好ましい範囲ではこれらの効果を更に増強させることができる。
尚、本方法により得られる熱可塑性樹脂組成物に含まれる植物性材料の含有量は、通常、上記配合量と同じである。
【0015】
また、本発明の製造方法では、上記植物性材料として後述する熱可塑性樹脂に比べて比重が小さい材料を用いることができる。一般に熱可塑性樹脂との比重差が大きい程、混合は困難となるが、本発明の製造方法では比重差が大きくとも混合を行うことができ、更に、短時間で混合でき、尚かつ得られる成形体において優れた機械的特性を発揮させることができる。
【0016】
植物性材料と熱可塑性樹脂との比重差は特に限定されないが、植物性材料の見掛け比重をAとし、熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合に、A/Cは通常0.05〜1であり、A/Cは0.6以下(通常、0.05以上)とすることができ、更に0.05≦A/C≦0.5とすることができ、特に0.07≦A/C≦0.4とすることができる。特に0.07≦A/C≦0.4の範囲では本発明の製造方法を用いることによる混合時間の短縮と機械的特性向上の効果とを効果的に得ることができる。
尚、上記A及び上記Cの各々の範囲は特に限定されないものの、Aは0.1〜0.5が好ましく、Cは0.89〜1.5が好ましい。また、発明にいう比重(見掛け比重)は、JIS Z8807{熱可塑性重合体性は液中ひょう量方法、植物性材料(水分率10%)は体積からの測定方法、にて各々測定}に準じて測定した場合の比重値である。
【0017】
A/Cが0.6以下のような比重の小さい(熱可塑性樹脂との比重差が大きい)植物性材料としては各種植物の木質部(特にケナフコア及び木材の形成層等)が挙げられる。即ち、本発明の製造方法では、植物性材料として、植物の木質部を好ましく用いることができる。例えば、ケナフにおける木質部であるコアは茎全体の60体積%程度をも占めており、靭皮よりも多く含んでいる。しかし、コアは靭皮のように長繊維化できず、また、靭皮に比べて比重(見掛け比重)が更に小さく嵩高い。このため、従来、樹脂との混合が特に困難な材料である。また、コアは長繊維化できないために樹脂に含有させた場合の補強効果が同量の靭皮に比べて得られ難い。
しかし、本発明の製造方法によれば、上記ケナフコアのような木質部を用いて、混合時間を効果的に短縮でき、また、前述の如く植物性材料を20質量%以上(更には50質量%以上)と多く含有させることができ、尚かつ高い補強効果を得ることができる。更に、靭皮繊維のような長繊維ではないために高い成形性(特に射出成形及び押出成形における)を得ることができる。
【0018】
上記「無機材料」は、これを植物性材料と併用することによって、植物性材料と熱可塑性樹脂との混合に要する時間を短縮し且つ得られる成形体の機械的特性を向上させる効果を有する。
上記無機材料は、特に限定されず種々のものを用いることができる。この無機材料としては、タルク(比重2.7〜2.8)、マイカ(比重2.7〜3.2)、シリカ(天然シリカ、合成シリカ、石英及び非晶質シリカ等を含む、比重2.0〜2.5)、モンモリロナイト(比重2.5〜2.6)、ベントナイト(比重2.0〜2.6)、パイロフィライト(比重2.7〜2.9)、ゼオライト(比重2.1〜2.2)、カオリン(比重2.5〜2.6)、珪石(比重2.5〜2.6)、クレ−(比重2.5〜2.9)、ウォラストナイト、バサルト(玄武岩)などの硅素化合物類、アルミナ(比重3.7〜3.9)及び酸化チタン(比重3.7〜4.3)等の金属酸化物類、炭酸カルシウム(比重2.5〜2.7)等の炭酸塩化合物類、並びに、グラファイト(比重2.1〜2.3)等の炭素類などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、熱可塑性樹脂に含有された際の機械的特性における補強効果が高いものが好ましく、特にタルク、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト及びパイロフィライト等の硅素化合物類のなかでも層状鉱物が好ましく、特にタルク及びマイカが好ましく、タルクがとりわけ好ましい。
【0019】
また、無機材料と熱可塑性樹脂との比重差は特に限定されないが、無機材料の見掛け比重をBとし、熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合に、B/Cは1.2以上(通常、10以下)であることが好ましい。この範囲では、特に混合時間を短縮する効果に優れるからである。このB/Cは、1.5≦B/C≦5(特に好ましくは2≦B/C≦4.5)とすることが特に好ましい。この範囲では、とりわけ混合時間を短縮する効果に優れるからである。
尚、上記Bの範囲は特に限定されないものの、Bは2〜6が好ましい。また、発明にいう無機材料の比重(見掛け比重)は、JIS Z8807(体積からの測定の方法)に準じて測定した場合の比重値である。
【0020】
また、無機材料は、天然無機材料であってもよく、加工無機材料{天然無機材料に加工(加熱加工、表面処理加工など)が施された無機材料}であってもよく、合成無機材料であってもよい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、無機材料の形状は特に限定されず、粒状、薄片状、針状及び繊維状等のどのような形状であってもよい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも粒状及び薄片状が特に好ましい。
また、無機材料の大きさは特に限定されないが、100μm以下(通常1μm以上)が好ましい(大きさの測定は植物性材料が粒状である場合と同じ方法による)。この範囲では、上記混合時間を短縮しながら、得られる成形体において高い曲げ弾性率を得ることができる。更に、この無機材料の大きさは5〜70μm(更に好ましくは10〜50μm)がより好ましい。この範囲では、混合時間の短縮効果が高く、特に高い曲げ弾性率を得ることができる。
【0021】
また、無機材料の配合量は、植物性材料と無機材料との合計量を100質量%とした場合に、無機材料は1〜55質量%である。この量が1質量%未満であると無機材料を配合することによる混合時間の短縮効果及び得られる成形体の機械的特性を向上させる効果を十分に得ることができず、55質量%を超えると急激に機械的特性(特に曲げ弾性率)が低下する傾向にある。この量は、1〜53質量%(より好ましくは5〜53質量%)が好ましい。この範囲では、混合時間を更に効果的に短縮(特に3分以内)しながら、得られる成形体においてより優れた機械的特性(特に曲げ弾性率8000MPa以上)が得られる。この量は、5〜50質量%(より更に好ましくは5〜47質量%、特に好ましくは7〜45質量%、より特に好ましくは7〜40質量%)が更に好ましい。この範囲では、混合時間を特に効果的に短縮(特に2分以内)しながら、得られる成形体において特に優れた機械的特性(特に8500MPa以上)が得られる。この量は、13〜35質量%がとりわけ好ましい。この範囲では、混合時間を更に効果的に短縮(特に1.5分以内)しながら、得られる成形体においてより優れた機械的特性(特に8800MPa以上)が得られる。
尚、本方法により得られる熱可塑性樹脂組成物に含まれる無機材料の含有量は、通常、上記の無機材料の配合量と同じである。
【0022】
上記「熱可塑性樹脂」は、特に限定されず種々のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル樹脂{(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂)、(ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエチレン樹脂)}、ポリスチレン、ポリアクリル樹脂(メタアクリレート、アクリレート等)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、ポリオレフィン及びポリエステル樹脂のうちの少なくとも一方であることが好ましい。また、上記ポリオレフィンのなかではポリプロピレンがより好ましい。
【0023】
一方、ポリエステル樹脂のなかでは、生分解性を有するポリエステル樹脂(以下、単に「生分解性樹脂」ともいう)が好ましい。生分解樹脂としては、(1)乳酸、リンゴ酸、グルコース酸及び3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体、並びに、これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体、などのヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル、(2)ポリカプロラクトン、及び、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体、などのカプロラクトン系脂肪族ポリエステル、(3)ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート及びポリブチレンアジペート、などの二塩基酸ポリエステル、等が挙げられる。
これらのなかでは、ポリ乳酸、乳酸と乳酸を除く他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体が好ましく、特にポリ乳酸が好ましい。
これらの生分解性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、上記乳酸にはL−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
尚、用いる熱可塑性樹脂の形状は特に限定されず、粒状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0024】
本方法における熱可塑性樹脂の配合量は特に限定されないが、熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%とした場合に50質量%未満(通常10質量%以上)とすることができ、特に15質量%以上且つ50質量%未満とすることが好ましく、20〜47質量%(20質量%以上且つ47質量%以下、以下同様)がより好ましく、25〜45質量%が更に好ましく、30〜45質量%が特に好ましく、35〜45質量%がとりわけ好ましい。上記範囲では、植物性材料を混合することによる補強効果を得ることができ、高い曲げ弾性率を得ることができる。また、各々の好ましい範囲ではこれらの効果を更に増強させることができる。
尚、本方法により得られる熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は、通常、上記の熱可塑性樹脂の配合量と同じである。
【0025】
上記「混合工程」は、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する工程である。
撹拌機を用いて植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを混合する際は、混合される材料同士の衝突エネルギー(熱量)により発熱されるものと考えられる。しかし、見掛け比重が小さい植物性材料だけを熱可塑性樹脂に混合しようとすると衝突によるエネルギーは小さくなり、熱可塑性樹脂を軟化又は溶融させるまで、更には、植物性材料と熱可塑性樹脂とを混合するまで、の時間を要することとなるものと考えられる。これに対して、植物性材料よりも見掛け比重が大きい無機材料を用いると、混合される材料同士の衝突エネルギー(熱量)が植物性材料及び熱可塑性樹脂のみの場合に比べて大きくなり、発熱効率が向上され、結果的に混合時間を短縮できるものと考えられる。このため、極めて簡便且つ短時間で上記混合を行うことができる。
【0026】
上記「撹拌機」は、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを混合するための装置である。この撹拌機1{以下、図2(特許庁の特許電子図書館から取得した国際公開04/076044号パンフレット図1を引用)及び図3(特許庁の特許電子図書館から取得した国際公開04/076044号パンフレット図2を引用)参照}としては、国際公開04/076044号パンフレットに記載の撹拌機を利用できる。即ち、撹拌機1は、材料供給室13と、該材料供給室13に連接された混合室3と、該材料供給室13と該混合室3とを貫通して回転自在に設けられた回転軸5と、該材料供給室13内の該回転軸5に配設され且つ該材料供給室13に供給された混合材料(植物性材料、無機材料及び熱可塑性樹脂)を該混合室3へ搬送するらせん状羽根12と、該混合室3内の該回転軸5に配設され且つ該混合材料を混合する混合羽根10a〜10fと、を備える撹拌機が好ましい。
【0027】
上記撹拌機を用い、植物性材料、無機材料及び熱可塑性樹脂を撹拌機1(材料供給室13)へ投入し、撹拌機1の混合羽根10a〜10fを回転させることで、植物性材料、無機材料及び熱可塑性樹脂が共に、混合室3の内壁へ向かって押し付けるように打撃し且つ押し進められ、材料同士の衝突するエネルギー(熱量)により短時間で熱可塑性樹脂が軟化又は溶融され、植物性材料及び無機材料と混合される。特にこの撹拌機を用いる場合に、上記無機材料を用いることによる作用を効果的に得ることができる。更に、得られる熱可塑性樹脂組成物には射出成形が可能な優れた流動性が発現される。
【0028】
上記混合羽根10a〜10fは、上記回転軸5の円周方向の一定角度間隔の部位における軸方向において対向すると共に、回転方向において互いの対向間隔が狭まるような取付け角で該回転軸5に配設された少なくとも2枚の混合羽根(10a〜10f)によって構成され、該混合羽根10a〜10fの該回転軸5に対する取付け角は、該回転軸5に取り付けられる該混合羽根10a〜10fの根元部から半径方向外方の先端部まで同一であることが好ましく、更には、上記混合羽根10a〜10fが矩形板状をなすことが好ましい。
また、上記混合室は、該混合室を構成する壁に冷却媒体を循環させることができる混合室冷却手段を備えることがより更に好ましい。この構成により、混合室内の過度な温度上昇を抑制でき、熱可塑性樹脂の分解及び熱劣化を抑制(更には防止)できる。
【0029】
上記「混合」における各種条件は特に限定されず、例えば、混合時の温度も特に限定されないが、混合室外壁の温度を200℃以下(より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下)に制御することが好ましく、更には、50℃以上(より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上)に制御することが好ましい。また、この温度は10分以内(より好ましくは5分以内)に到達させることが好ましい。短時間で混合を行うことで、熱可塑性樹脂の劣化をより効果的に抑制できる。特に上記温度範囲とするのも15分以内(より好ましくは10分以内)とすることが好ましい。
【0030】
また、上記温度の制御は、撹拌機の混合羽根の回転速度を制御することによって行うことが好ましい。より具体的には、混合羽根の先端の回転速度を5m/秒〜50m/秒となるように制御することが好ましい。回転軸の回転速度においては、500rpm以上(通常4000rpm以下、より好ましくは1000〜3000rpm、特に好ましくは1500〜2500rpm)とすることができる。この範囲に制御することで、無機材料による作用を利用して効率よく熱可塑性樹脂を軟化又は溶融させつつ、植物性材料及び無機材料とより強力に(より均一に)混合することができる。
【0031】
更に、この混合における終点は特に限定されないが、上記回転軸に負荷されるトルクの変化により決定できる。即ち、上記回転軸に負荷されるトルクを測定し、そのトルクが最大値となった後に混合を停止することが好ましい。これにより、分散性よく植物性材料及び無機材料を熱可塑性樹脂内に混合できる。更に上記トルクの最大値となった後にトルクが低下し始めてから混合を停止させることがより好ましい。特に最大トルクに対して40%以上(とりわけ好ましくは50〜80%)のトルク範囲で混合を停止することが特に好ましい。これにより、より分散性よく植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを混合できると共に、混合室内部から混合物(熱可塑性樹脂組成物)を160℃以上の温度で取り出すことができ、混合室内に熱可塑性樹脂組成物が付着して残存されることをより確実に防止できる。
【0032】
尚、混合工程では、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを混合する際に、植物性材料と無機材料とを撹拌機に投入する前に予め混ぜ合わせた上(粒子同士を混在させること)で熱可塑性樹脂と混合してもよく、これら3者を撹拌機に投入する前に予め混ぜ合わせた上で撹拌機に投入してもよく、その他の手順で行ってもよい。
【0033】
また、本製造方法による熱可塑性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂として上記ポリエステル樹脂を用いる場合にはカルボジイミド化合物を用いることができる。
カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
カルボジイミドの配合量は特に限定されないが、用いるポリエステル樹脂(特にポリ乳酸)の全体を100質量部とした場合に0.1〜10質量部が好ましい。この範囲では、カルボジイミド化合物を用いたことによる生分解性樹脂の加水分解抑制作用をより効果的に得ることができる。更に、カルボジイミド化合物の上記量は0.3〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が特に好ましい。この範囲では、カルボジイミド化合物による上記加水分解抑制作用をとりわけ効果的に得ることができる。
その他、本方法では、各種帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤等を混合することができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、本発明の製造方法では、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂との混合を促進するための添加剤(各種滑材、可塑剤、及びロジン等)を何ら用いることなく、目的とする熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0035】
また、本発明の製造方法では、上記植物性材料の一部を粒状の植物性材料とし、更に、その大きさを2mm以上(通常10mm以下)とすることができる。この大きさが2mmの粒状の植物性材料(以下、単に「大粒植物性材料」という)を用いることで、無機材料と同様に混合に要する時間を短縮し且つ得られる成形体の機械的特性を向上させる効果が得られる。
この大粒植物性材料の大きさは2mm以上であればよく、特に限定されないが、2〜15mm(より好ましくは2〜10mm、更に好ましくは3〜9mm、より更に好ましくは3〜8mm、とりわけ好ましくは4〜7mm)とすることが好ましい。
尚、大粒植物性材料の粒径は、JIS Z8801に準拠して得られる。また、大粒植物性材料の粒径が「X〜Ymm」であるとは、目開きXmmの円孔板篩を通過せず且つ目開きYmmの円孔板篩を通過するものを意味する。
【0036】
更に、大粒植物性材料と熱可塑性樹脂との比重差は特に限定されないが、大粒植物性材料の見掛け比重をDとし、熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合に、D/Cは通常0.05〜1であり、D/Cは0.6以下(通常、0.05以上)とすることができ、更に0.05≦D/C≦0.5とすることができ、特に0.07≦D/C≦0.4とすることができる。
尚、上記D及びCの範囲は特に限定されないものの、Dは0.1〜0.5が好ましく、Cは0.89〜1.5が好ましい。また、発明にいう比重(見掛け比重)は、JIS Z8807{熱可塑性重合体性は液中ひょう量方法、植物性材料(水分率10%)は体積からの測定方法、にて各々測定}に準じて測定した場合の比重値である。
この大粒植物性材料を用いる場合、その配合量は、無機材料と大粒植物性材料との合計を100質量%とした場合に、1〜55質量%(より好ましくは5〜50質量%)とすることが好ましい。
【0037】
[2]成形体の製造方法
本発明の成形体の製造方法は、前記製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法である。
前記熱可塑性樹脂の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物は、押出成形又は射出成形することで賦形することができる。これらの成形は、撹拌機に押出成形機又は射出成形機を接続して行うことができる。また、得られた熱可塑性樹脂組成物を冷却した後に破砕機等を用いてチップ化した後、このチップを押出成形機又は射出成形機に投入して成形を行ってもよい。
【0038】
本方法により得られる成形体の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も特に限定されない。この成形体は、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等に用いられる。このうち自動車用品としては、自動車内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造及び成形体(試験片)の製造
植物性材料として粒径(平均粒径)0.2mmのケナフコアの粉砕物(粉末)を用いた。また、無機材料として、粒径(平均粒径)26μmのタルク(富士タルク株式会社製、品名「MK−48」)を用いた。更に、熱可塑性樹脂として、粒径4mmのポリ乳酸樹脂ペレット(トヨタ自動車株式会社製、品名「U’s S−12」)を用いた。
尚、植物性材料は、粒度分布測定装置(シスメックス株式会社製、形式「マスターカイザー2000」)によって測定された粒度分布におけるD50(平均粒径)が0.2mmの材料(この植物性材料には、目開き4mmの円孔板篩を通過しない粒状の植物性材料は含まれない)である。また、無機材料も同じ粒度分布測定装置によって測定された粒度分布におけるD50(平均粒径)が26μmの材料である。
【0040】
上記3種の材料を各々表1に示す配合割合で撹拌機(株式会社エムアンドエフ・テクノロジー製、WO2004−076044号に示された器機)の材料供給室に投入した後、混合室(容量5L)内で撹拌して混練した。混練に際して混合羽根は回転速度2000rpmで回転させた。そして、混合羽根にかかる負荷(トルク)が上昇し、最大値に達した時点を終点とし撹拌を停止して、得られた熱可塑性樹脂組成物{実験例1〜6(実験例2〜4;実施例、実験例1及び5〜6;比較例)}を撹拌機から排出した。
また、上記混合においては、撹拌開始(混合羽根が回転し始めた時点)から上記終点までの経過時間を計測し、この経過時間を混合時間とし、表1に併記した。
【0041】
得られた各熱可塑性樹脂組成物を破砕機を用いて5.0mm程度に破砕して熱可塑性樹脂組成物チップを得た。得られた各熱可塑性樹脂組成物チップを射出成形機(宇部興産機械株式会社製、形式「MD350S−IIIDP」)に各々投入し、シリンダー温度190℃、型温度40℃の条件で射出成形して板状の試験片6種(実験例1〜6)を得た。
【0042】
[2]成形体(試験片)の評価
実験例1〜6の各試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mmの板形状)の曲げ弾性率を測定した(JIS K7171に準拠)。この測定に際しては、各試験片を支点間距離(L)64mmとした2つの支点(曲率半径5mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径5mm)から速度2mm/分にて荷重の負荷を行い、各試験片の破断直前の最大荷重(曲げ弾性率)を測定し、表1に併記した。
更に、表1に示す混合時間と曲げ弾性率との相関をグラフにして図1に示した。
【0043】
【表1】

尚、表1内の「*」は本発明の範囲外であることを示す。
【0044】
[3]実施例の効果
表1及び図1より、無機材料を用いることによって混合時間を短縮できることが分かる。即ち、図1では、無機材料の割合が0〜10質量%の間で、混合時間が急激に短くなることが見てとれる。この混合時間の短縮の効果は、無機材料の割合が10.2質量%を超えると比較的緩やかになることも分かる。
一方、無機材料を用いると、その割合が50質量%以下の範囲では曲げ弾性率は緩やかに低下するが、50質量%を超えて70質量%の間で急激に曲げ弾性率が低下することが分かる。
【0045】
これらのことから、無機材料を用いることにより、混合時間を短縮しながら、熱可塑性樹脂(ポリ乳酸においては3500MPa程度)を単独で用いる場合の曲げ弾性率に比べると飛躍的に高い曲げ弾性率を得ることができることが分かる。更に、1〜55質量%範囲で用いることで、混合時間短縮の効果に併せて、植物性材料による曲げ弾性率向上の効果を十分に発揮させることができることが分かる。また、実施例5〜6の結果から、無機材料の割合が増えて植物性材料の配合量が減ると曲げ弾性率が顕著に低下することから、植物性材料は17.9質量%を超える範囲で用いることが好ましいことが分かる。
更に、実施例の結果から、本方法により得られた熱可塑性樹脂組成物は射出成形により問題なく成形を行うことができ、優れた成形性を有していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法は、自動車関連分野及び建築関連分野などにおいて広く利用される。特に自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等に好適であり、なかでも自動車用品としては、自動車内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等に好適である。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材にも好適である。具体的には、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】各実施例において得られた熱可塑性樹脂の混合時間及び各熱可塑性樹脂から得られた成形体の曲げ弾性率と、無機材料の割合と、の相関を示すグラフである。
【図2】撹拌機の一例を示す模式的な断面図である。
【図3】撹拌機に配設された混合羽根の一例を示す模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1;撹拌機、3;混合室、5;回転軸、10a〜10f;混合羽根、12;らせん状羽根、13;材料供給室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを含有し、本熱可塑性樹脂組成物全体100質量%に対する該熱可塑性樹脂の含有量が50質量%未満である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記無機材料は、上記植物性材料及び該無機材料の合計を100質量%とした場合に1〜55質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
上記撹拌機は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂と、上記植物性材料及び上記無機材料と、を混合する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
上記無機材料の見掛け比重をBとし、上記熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合に、B/Cは1.2以上である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
上記無機材料は、平均粒径が100μm以下である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
上記植物性材料は、ケナフコアである請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
上記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂である請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
上記無機材料は、タルクである請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−57495(P2009−57495A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227044(P2007−227044)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】