説明

熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレット及び熱可塑性樹脂組成物

【課題】 本発明は、優れた燃焼促進効果が付与された熱可塑性樹脂組成物、詳述すれば、焼却時に完全燃焼を促進し、有害な有機化合物の発生を抑制できる熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物を製造するためのマスターバッチペレットに関するものである。
【解決手段】 熱可塑性樹脂中に白色燃焼触媒を配合した熱可塑性樹脂組成物であって、前記白色燃焼触媒は平均粒子径が0.1〜1.0μmの酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム又は酸化チタンの中から選ばれる1種以上の無機担体粒子の表面に、平均粒子径10nm以下の金属Pdコロイド粒子を0.001〜0.10wt%担持させた白色燃焼触媒であり、該白色燃焼触媒を熱可塑性樹脂に1.0〜2.0wt%配合した熱可塑性樹脂からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の着色を抑制できるとともに、優れた燃焼促進効果が付与された熱可塑性樹脂組成物、詳述すれば、焼却時に完全燃焼を促進し、有害な有機化合物の発生を抑制できる熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物に用いるマスターバッチペレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活様式の変化や生活水準、所得水準の向上等により、新しい商品があふれ、豊かな物質文化が形成されたが、それにともない工場や家庭から排出される一般廃棄物および産業廃棄物が多量に発生しており、これらの処理に関する問題は大きな社会問題ともなってきている。
【0003】
とりわけ、合成樹脂はその優れた機械的、物理的性質及び成形性から現代社会においては欠くことのできない材料としてあらゆる分野で膨大な量が使用されており、それに伴ってその廃棄物の総量も年間数百万トン以上にものぼっている。したがって、合成樹脂の廃棄物処理は一般廃棄物及び産業廃棄物に関する問題の中でも特に重要な課題となってきている。また、合成樹脂は人類に与えられた貴重な資源である石油を原材料としたものであることから、一旦使用した後でも再利用あるいはエネルギー源として活用する技術を確立することが強く求められている。
【0004】
これらの廃棄物処理のうち、一般廃棄物に関しては、一般にポリエチレン樹脂で代表される熱可塑性樹脂に各種顔料を添加した自治体指定のプラスチック製ごみ袋に詰められたごみを、自治体所有の焼却炉で焼却するという方法が多く採られている。
【0005】
近年における商品の特性向上は、安全性や機能性等の本質的特性を有していることはもちろん、殊に視覚的、心理的な面からの改良と環境面からの改良が強く要求されており、上記買物袋やごみ袋等の品質特性の改良もその傾向が強く、使用に際して優れた透明性と低い彩度とを有していることが強く要求されている。
【0006】
更に、環境面からプラスチック製の買物袋やごみ袋等は、使用済後に廃棄処分する必要があるが、可燃ごみの焼却処理には以下のような問題があった。即ち、燃焼中に発生するNOxによる大気汚染、焼却後に多量に発生する残灰や燃え残りを処分する埋め立て地等の不足、残灰中の有害成分の埋め立て地での漏洩、あるいは有害なダイオキシンの生成等の問題に加えて、可燃ごみ中に燃焼カロリーの高いプラスチック廃棄物やプラスチック製ごみ袋が多量に含まれている場合には、焼却炉の炉内温度の上昇の原因となって焼却炉が破損する等の問題があった。
【0007】
従来、燃焼効率を付与したプラスチック製の買物袋やごみ袋として、熱可塑性樹脂中に長軸径が0.02〜2.0μmの含水酸化第二鉄粒子又は平均粒子径0.03〜1.0μmの酸化鉄粒子を0.1〜20.0重量%含有させたプラスチック製の買物袋やごみ袋が既に実用化されている。(特許第2824203号、特許第2905693号)
【0008】
また、無機質担体に白金族元素を0.001〜0.2wt%担持させた微粒子の燃焼促進剤を、該白金族元素の濃度が0.5〜100ppmになるように熱可塑性樹脂に配合した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。(特開2002−167516号公報)
【0009】
一方、白金族金属は、非常に高価な金属であるが、触媒反応における歴史は非常に古く、とくに白金とパラジウムの触媒作用は種々の反応において広く研究されてきた。白金とパラジウムが炭化水素の水素添加、脱水素の好触媒であることはよく知れている。また、アンモニア酸化に白金や白金−ロジウム合金が使われ(Kuhlmann法)、炭化水素の酸化や含酸素化合物の分解反応に白金やパラジウムが金属の形で使われており、各種燃焼触媒用途にも幅広く利用されている。
【0010】
【特許文献1】特許第2824203号
【特許文献2】特許第2905693号
【特許文献3】特開2002−167516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
強度や安全性等の本質的特性を有していることはもちろん、使用後の焼却時に完全燃焼を促進して有害な有機化合物の発生を抑制でき、且つ、所望の色調に着色可能な優れた透明性を有する熱可塑性樹脂組成物は、現在最も要求されているところであるが、上記諸特性を十分満足する熱可塑性樹脂組成物は未だ得られていない。
【0012】
即ち、前出特許文献1及び2記載の技術は、特定の酸化鉄粒子の燃焼促進作用を利用したものであって、焼却処分時に低温、低酸素濃度下であっても熱可塑性樹脂を完全燃焼させることができるという効果を有しているが、酸化鉄特有の赤色,黄色等に着色することは避けられず、このため、酸化鉄の配合量を少なくしても、例えば、野菜や肉等の食料品、衣料品等の包装用途に好まれる無色透明性を得ることは不可能であった。
【0013】
また、前出特許文献3記載の熱可塑性樹脂組成物は、白金族元素を担持した白色無機質微粒子を配合しているため、無色透明な色調が得られ、且つその燃焼促進作用を利用して、焼却時の完全燃焼を促進させることができるが、十分な燃焼促進効果を得ることは困難であった。
【0014】
そこで、本発明は、安全性等の本質的特性を有していることはもちろん、焼却時に完全燃焼を促進することで有害な有機化合物の発生を抑制でき、且つ所望の色調に着色可能な優れた透明性を有する熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物を製造するためのマスターバッチペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0016】
即ち、本発明は、熱可塑性樹脂中に白色燃焼触媒を配合した熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットであって、前記白色燃焼触媒は平均粒子径が0.1〜1.0μmの酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム又は酸化チタンの中から選ばれる1種以上の無機担体粒子の表面に、平均粒子径10nm以下の金属Pdコロイド粒子を0.001〜0.10wt%担持させた白色燃焼触媒であり、該白色燃焼触媒を熱可塑性樹脂に2.0〜60wt%配合したことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットである(本発明1)。
【0017】
また、本発明は、無機担体粒子が酸化アルミニウムである前記熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットである(本発明2)。
【0018】
また、本発明は、白色燃焼触媒が、陽イオン性、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤又は水溶性高分子から選ばれる1種以上を含む金属Pdヒドロゾルと無機担体粒子粉末を含む水懸濁液とを接触混合させ、無機担体粒子表面に金属Pdコロイド粒子を電気的に担持させた白色燃焼触媒であることを特徴とする本発明1又は2の熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットである(本発明3)。
【0019】
また、本発明は、熱可塑性樹脂中に白色燃焼触媒を配合した熱可塑性樹脂組成物であって、前記白色燃焼触媒は平均粒子径が0.1〜1.0μmの酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム又は酸化チタンの中から選ばれる1種以上の無機担体粒子の表面に、平均粒子径10nm以下の金属Pdコロイド粒子を0.001〜0.10wt%担持させた白色燃焼触媒であり、該白色燃焼触媒を熱可塑性樹脂に0.1〜2.0wt%配合したことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である(本発明4)。
【0020】
また、本発明は、無機担体粒子が酸化アルミニウムである請求項4の熱可塑性樹脂組成物である(本発明5)。
【0021】
また、本発明は、白色燃焼触媒が、陽イオン性、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤又は水溶性高分子から選ばれる1種以上を含む金属Pdヒドロゾルと無機担体粒子粉末を含む水懸濁液とを接触混合させ、無機担体粒子表面に金属Pdコロイド粒子を電気的に担持させた白色燃焼触媒であることを特徴とする本発明4又は5の熱可塑性樹脂組成物である(本発明6)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットは、該マスターバッチペレットを用いて作製した熱可塑性樹脂組成物中に白色燃焼触媒を容易に均一に分散させることができるので、熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットとして好適である。
【0023】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、強度や安全性等の本質的特性を有していることはもちろん、使用後の焼却時に完全燃焼を促進して有害な有機化合物の発生を抑制でき、且つ、透明性が高く所望の色調に容易に着色することができるので、野菜や肉等の食料品、衣料品の包装用途等の幅広い用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明実施にあたっての諸条件について述べる。
【0025】
まず、本発明における白色燃焼触媒について述べる。
【0026】
本発明における白色燃焼触媒は、平均粒子径0.1〜1.0μmの酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム又は酸化チタンの中から選ばれる1種以上の無機担体粒子の表面に、平均粒子径10nm以下の金属Pdコロイド粒子を0.001〜0.10wt%担持させたものである。
【0027】
本発明における無機担体粒子としては、通常に市販されているα型、γ型等の酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、またはルチル型、アナターゼ型の酸化チタンの中から選ばれる1種以上を使用することができる。好ましくは、熱可塑性樹脂と加熱混練時に、熱的に安定で樹脂を熱劣化させることのないα型の酸化アルミニウムである。
【0028】
本発明における無機担体粒子の平均粒子径は0.1〜1.0μmである。平均粒子径が1.0μmを超える場合には、熱可塑性樹脂組成物の透明性が低下するため、好ましくない。平均粒子径が0.1μm未満の場合は、熱可塑性樹脂中に均一分散し難くなるため、好ましくない。好ましくは0.1〜0.8μm、より好ましくは0.3〜0.8μmである。
【0029】
本発明における無機担体粒子の表面に担持する金属Pdコロイド粒子の平均粒子径は10nm以下である必要がある。平均粒子径が10nmを超える場合は、触媒成分である金属Pdの比表面積が小さくなり、燃焼促進効果が低下する。好ましくは9nm以下である。平均粒子径の下限値は1nm程度である。
【0030】
金属Pdコロイド粒子の無機担体粒子への担持量は0.001〜0.10wt%である。担持量が0.001wt%未満の場合は、燃焼促進効果が低下するため好ましくない。担持量が0.10wt%を超える場合は、コストが高くなるだけでなく、着色が目立つようになるため、好ましくない。好ましくは0.005〜0.08wt%、より好ましくは0.01〜0.08wt%である。
【0031】
次に、本発明における白色燃焼触媒の製造法について述べる。
【0032】
無機担体粒子に金属Pdコロイド粒子を担持させる方法としては、無機担体粒子粉末の水懸濁液に、陽イオン性、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤又は水溶性高分子から選ばれる1種以上を含む金属Pdヒドロゾルを混合して、電荷的に担持した後、濾過、水洗し、乾燥する方法が好ましい。上記方法を用いることによって、無機担体粒子の表面のみに効率的かつ強固に金属Pdコロイド粒子を担持させることができる。
【0033】
なお、無機担体粒子粉末として酸化アルミニウム担体粒子を用いる場合は、水懸濁液中では正電荷を有するので、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤又は水溶性高分子によって負電荷を有したPdコロイド粒子を含むPdヒドロゾルを用いることができる。
また、酸化ケイ素、炭酸カルシウム及び酸化チタン担体粒子の場合は、水懸濁液中では負電荷を有するので、陽イオン性界面活性剤によって正電荷を有したPdコロイド粒子を含むPdヒドロゾルを用いることができる。
【0034】
なお、Pdヒドロゾルは、塩化パウジウム、硝酸パラジウム等のPd化合物の水溶液に、界面活性剤または水溶性高分子の存在下にて、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を添加することによって得ることができる。
【0035】
本発明においては、Pdの触媒作用を促進するために、他の各種触媒成分や助触媒成分を併用して無機担体粒子に担持させることも可能である。
【0036】
通常、無機担体粒子にPd粒子を担持させる方法としては、含浸法、イオン交換法等が用いられている。この方法では、Pd元素を含有する溶液で処理した後、乾燥および400〜800℃で焼成するため、Pd粒子の内部まで酸化した状態(PdO)となっており、本発明の方法で得られる金属Pdコロイド粒子に比べると燃焼促進効果が小さい。
【0037】
次に、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットについて述べる。
【0038】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットの熱可塑性樹脂としては、通常の押出成形に適するものであれば特に制限なく使用できる、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂又はポリ塩化ビニル樹脂等が好ましく、殊に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等の他の重合性単量体との共重合体等のポリエチレン系樹脂が大量に入手でき、安価であるので好適に使用できる。
【0039】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットは、平均長径2〜6mmが好ましく、より好ましくは2〜5mmの範囲である。平均短径は1〜5mmが好ましく、より好ましくは1〜4mmである。平均長径が1mm未満の場合には、ペレット製造時の作業性が悪くなり好ましくない。6mmを越える場合には、希釈用結合材樹脂ペレットなどとの大きさの違いが大きくなり、十分に分散させるのが困難となる。また、その形状は種々のものができ、不定形及び球形等の粒状、円柱形、フレーク状等にできる。
なお、マスターバッチペレット中の熱可塑性樹脂は、目的とする熱可塑性樹脂組成物用の樹脂と同一の樹脂を用いても、また、異なる樹脂を用いてもよいが異なる樹脂を使用する場合には、樹脂同士の相溶性により決まる諸特性を考慮して決めればよい。
【0040】
マスターバッチペレット中の白色燃焼触媒の含有量は、マスターバッチペレットに対して2.0〜60wt%、好ましくは3.0〜50wt%、より好ましくは4.0〜50wt%である。2.0wt%未満の場合には、混練時の溶融粘度が不足し、白色燃焼触媒の良好な分散混合が困難である。60wt%を越える場合には、熱可塑性樹脂が不足し微細な白色燃焼触媒の良好な分散混合が難しく、また、マスターバッチペレットの添加量のわずかな変化によってフィルム中に配合される微細な白色燃焼触媒粒子の含有量が大きく変化するため所望の含有量に調整するのが困難となり好ましくない。また、機械摩耗が激しく適当でない。
【0041】
本発明に係るマスターバッチペレットは、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、フィラー等の各種添加剤を配合することができる。
【0042】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットは、熱可塑性樹脂ペレットなどと白色燃焼触媒とを、必要により、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で混合した後、周知の単軸混練押出機や二軸混練押出機等で混練、成形した後切断するか、又は、上記混合物をバンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混練して得られた混練物を粉砕又は成形、切断することにより製造される。
【0043】
次に、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物について述べる。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、前記熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットに用いる熱可塑性樹脂と同様のものを用いればよく、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂又はポリ塩化ビニル樹脂等が好ましく、殊に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等の他の重合性単量体との共重合体等のポリエチレン系樹脂が大量に入手でき、安価であるので好適に使用できる。
【0045】
熱可塑性樹脂組成物中の白色燃焼触媒の配合割合は、熱可塑性樹脂に対して0.1〜2.0wt%である。配合割合が0.1wt%未満の場合は燃焼促進効果が小さく、また、2.0wt%を越える場合は、濃度に見合った燃焼促進効果が期待できないので、必要以上に配合する意味がない。好ましくは0.1〜1.5wt%、より好ましくは0.3〜1.5wt%である。
【0046】
熱可塑性樹脂組成物中の無機担体粒子に担持された金属Pdコロイド粒子の含有量は0.2〜20ppmが好ましい。金属Pdコロイド粒子の含有量が0.2ppm未満の場合は、燃焼促進効果が顕著に低下するため好ましくない。20ppmを超える場合は、コストが高くなるだけでなく、着色が目立つようになるため好ましくない。好ましくは0.3〜15ppm、より好ましくは0.4〜10ppmである。
【0047】
熱可塑性樹脂組成物は、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、フィラー等の各種添加剤を配合することができる。熱可塑性樹脂組成物は、押出成形法、射出成形法又は圧縮成形法等の通常の成形法を用いて、フィルム状、板状、棒状、ブロック状、中空状、球状等の任意の形状に成形することができる。また、紡糸することで繊維状の形状とすることも可能である。本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の色調は、無色又は白色、乳白色であり、フィルム状などの薄膜とした場合には、優れた透明性が得られる。また、着色剤を配合することで、その所望の色調と透明性を得ることができる。
【0048】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に白色燃焼触媒を配合する方法としては、前記熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットを希釈用の熱可塑性樹脂に配合する方法を用いることができ、熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットを経由して熱可塑性樹脂組成物を製造した場合には、白色燃焼触媒を容易に均一分散できるので好ましい。また、熱可塑性樹脂に無機粒子粉末を配合する通常の方法を用いることもできる。
【0049】
<作用>
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に配合する白色燃焼触媒は、高温加熱することなく得られているので、Pdコロイド粒子が酸化しにくく金属状態を維持している。
一方、通常の含浸法、イオン交換法等では、Pd元素を含有する溶液で処理した後、乾燥及び400〜800℃の温度範囲で焼成するため、Pd粒子の内部まで酸化した状態(PdO)となっている。
一般的には、Pdはいったん酸化されてPdOとなり、その酸素で相手物質を酸化させると言われているが、Pd粒子がPdOに酸化された状態よりも金属Pdの状態の方が、金属Pd粒子の表層に吸着された酸素原子が容易に活性化されるものと本発明者は考えている。
【0050】
また、通常の含浸法などによってPd粒子を担持させる場合には、無機粒子担体の内部までPdが担持されている。
一方、本発明における白色燃焼触媒では、その製造法に起因してPdコロイド粒子が無機担体粒子の粒子表面に均一担持されるために、Pdコロイドのほぼ全量が触媒作用に寄与し、前述したとおりの金属Pdコロイドの有する高い触媒機能を十分に発揮することができるため、高い燃焼促進効果を有するものと本発明者は考えている。
【0051】
陽イオン性、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤又は水溶性高分子から選ばれる1種以上を含むPdコロイド中の金属Pdコロイド粒子は、凝集が抑制されて無機担体粒子に強固に担持されるので、Pdが有する触媒活性を十分に発揮することができ、更に、前記金属Pdコロイド粒子は、表面に界面活性剤又は水溶性高分子を吸着しているので、熱可塑性樹脂とのなじみがよく樹脂中での分散性に優れる。
【0052】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットと希釈用熱可塑性樹脂とを混練した後、成形してなる熱可塑性樹脂組成物は、樹脂組成物中の白色燃焼触媒の均一度が高く、焼却時に完全燃焼を促進することで有害な有機化合物の発生を抑制でき、且つ所望の色調に着色可能な優れた透明性を有するものである。
【0053】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットを用いて得られた熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に直接、白色燃焼触媒を配合して得られた熱可塑性樹脂組成物に比べて、安定且つ優れた燃焼特性を有する。安定且つ優れた燃焼特性を有する理由について、白色燃焼触媒は微粒子で分散しにくいが、予めマスターバッチペレットを調製した後、希釈用熱可塑性樹脂と混練することで、熱可塑性樹脂組成物中における微細な白色燃焼触媒の分散性がより向上したことによって、本来の酸化活性がより充分発揮されたものと本発明者は考えている。
【実施例】
【0054】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0055】
白色燃焼触媒の無機担体粒子およびそれに担持されたPdコロイド粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径を測定し、その平均値で示した。
【0056】
白色燃焼触媒中のPd担持量は、白色燃焼触媒1.00gを濃硝酸/濃塩酸(1/3容積比)溶液をイオン交換水で2倍に希釈した溶液30mlに煮沸溶解した後、濾過し濾液にイオン交換水を加えて100mlに希釈して、高周波プラズマ発光分光分析装置(日本ジャーレル・アゥシュ(株)製ICAP−575)で測定した。
【0057】
熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットを経由して得られた熱可塑性樹脂組成物中の白色燃焼触媒含有量は、熱可塑性樹脂組成物1.0gを磁性ルツボに入れて、空気中800℃にて1時間熱処理した際の重量差から計算した。尚、熱処理により白色触媒担体が変態するものについては,その変態による重量変化も加味して計算した。
【0058】
<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>
内径14mmφ×長さ65mmの石英試料管中に、熱可塑性樹脂組成物試料35mgを入れ、その試料を石英ウールで両端から挟んで固定した。酸素ガス200mL/minで4分間流しながら、700℃で燃焼させ、その間に生成した燃焼ガスの全量を1Lのテドラバック中に捕集して、そのガス組成と量の測定を行った。燃焼ガス組成は、ガスクロマトグラフによって、一酸化炭素、二酸化炭素及びベンゼンを測定することにより評価した。二酸化炭素の生成量が多く、一酸化炭素及びベンゼンが少ないほど、完全燃焼の度合いが高いことを示している。
【0059】
<熱可塑性樹脂組成物によるダイオキシン低減試験評価>
熱可塑性樹脂組成物90wt%と塩化ビニル樹脂10wt%を170℃にて3分間混練した後、厚さ1mmシートに成形して試料とした。700℃に加熱した内径15mmφ×長さ300mmの石英管中に、1回当たり上記試料20mgを乗せた石英ボート(幅10mm×長さ50mm×高さ10mm)を入れ、空気1.8L/minを流しながら燃焼させた。
その間に生成した燃焼ガスを、氷浴中でガス上流側より、イオン交換水、ジエチレングリコール、アンバーライトXAD−2(オルガノ(株)製)にてトラップした。この操作を70回繰り返した。実験終了後、石英管出口部分から吸収ユニットまでをイオン交換水、アセトンおよびジクロロメタンにより洗浄し、分析試料として回収した。さらに、上記洗液、イオン交換水及びジエチレングリコール溶液は濾過した後、残渣はXAD−2樹脂とともにトルエンにてソックスレー抽出し、濾液はトルエンを加えて振とう抽出した。
このトルエン吸収液中のダイオキシン類をガスクロマトグラフィー質量分析計(MICROMASS社製AUTOSPEC ULTIMA)で定量した。
【0060】
<Pdコロイド液1の調製>
18.5Lのイオン交換水に0.1mol/Lの塩化パラジウム水溶液500mLと1wt%ポリビニルアルコール水溶液500mLを攪拌下にて混合した。さらに、上記混合溶液に0.4mol/Lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液500mlを攪拌下にて添加混合することによって、負電荷を有する黒色の2.5mmol/LのPdコロイド液1を得た。
【0061】
<Pdコロイド液2の調製>
18.5Lのイオン交換水に0.1mol/Lの塩化パラジウム水溶液500mLを混合した後、さらに0.8wt%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液500mLと0.4mol/Lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液500mlを攪拌下にて同時に添加混合することによって、正電荷を有する黒色の2.5mmol/LのPdコロイド液2を得た。
【0062】
製造例1<白色燃焼触媒1>
平均粒子径0.6μmのα−アルミナ担体粒子の50wt%水懸濁液20kgに、攪拌下にて前記Pdコロイド液1を15L滴下混合して、α−アルミナ担体粒子表面にPdコロイド粒子を担持した。その後、上記懸濁液を濾過、水洗した後、120℃にて8時間乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して、Pdコロイド粒子が0.04wt%担持された乳白色のα−アルミナ粒子粉末10kgを得た。α−アルミナ粒子粉末に担持されたPdコロイド粒子の平均粒子径は3nmであった。
【0063】
製造例2<白色燃焼触媒2>
平均粒子径0.5μmのアナターゼ型酸化チタン担体粒子の50wt%水懸濁液10kgに、攪拌下にて前記Pdコロイド液2を15L混合して、酸化チタン担体粒子表面にPdコロイド粒子を担持した。その後、上記懸濁液を濾過、水洗した後、120℃にて8時間乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して、Pdコロイド粒子が0.08wt%担持された灰色の酸化チタン粒子粉末5.0kgを得た。酸化チタン粒子粉末に担持されたPdコロイド粒子の平均粒子径は6nmであった。
【0064】
製造例3<白色燃焼触媒3>
平均粒子径0.6μmの炭酸カルシウム担体粒子の50wt%水懸濁液20kgに、攪拌下にて前記Pdコロイド液2を1.9L滴下混合して、炭酸カルシウム担体粒子表面にPdコロイド粒子を担持した。その後、上記懸濁液を濾過、水洗した後、120℃にて8時間乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して、Pdコロイド粒子が0.005wt%担持された乳白色の炭酸カルシウム粒子粉末10kgを得た。炭酸カルシウム粒子粉末に担持されたPdコロイド粒子の平均粒子径は3nmであった。
【0065】
製造例4<白色燃焼触媒4>
平均粒子径0.6μmのα−アルミナ担体粒子粉末10kgに、7.5mmol/Lのジニトロジアンミンパラジウム水溶液5.0Lを含浸させ、120℃にて8時間乾燥後、500℃にて2時間焼成した。焼成物を粉砕して、0.04wt%Pdが担持された乳白色のα−アルミナ粒子粉末10kgを得た。α−アルミナ粒子粉末に担持されたPd粒子の平均粒子径は10nmであった。
【0066】
製造例5<白色燃焼触媒5>
α−アルミナ粒子粉末に担持されたPdコロイド粒子を、X線回折装置で同定するために、製造例1のα−アルミナ担体粒子水懸濁液を、1wt%水懸濁液8kgに変えた以外は、製造例1と同様な方法で調製し、Pdコロイド粒子が5.0wt%担持された灰色のα−アルミナ粒子粉末80gを得た。α−アルミナ粒子粉末に担持されたPdコロイド粒子は、X線回折装置で解析した結果、金属Pdの結晶面(111)のピークが確認された。また、PdOの結晶面のピークは確認されなかった。
【0067】
製造例6<白色燃焼触媒6>
α−アルミナ粒子粉末に担持されたPd粒子を、X線回折装置で同定するために、製造例4のα−アルミナ粒子粉末を1kgに、ジニトロジアンミンパラジウム水溶液を0.19mol/L、500mLに変えた以外は、製造例4と同様な方法で調製し、Pd粒子が1.0wt%担持された灰色のα−アルミナ粒子粉末1.0kgを得た。α−アルミナ粒子粉末に担持されたPdコロイド粒子は、X線回折装置で解析した結果、PdOの結晶面(101)のピークが確認された。また、金属Pdの結晶面のピークは確認されなかった。
【0068】
実施例1<熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットA>
85wt%の低密度ポリエチレン樹脂ペレットと15wt%の製造例1の白色燃焼触媒とを二軸混練機により160℃で混練、押出後、切断をして円柱状(3mmφ×3mm)のマスターバッチペレットAを得た。
【0069】
実施例2<熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットB>
95wt%の低密度ポリエチレン樹脂ペレットと5wt%の製造例2の白色燃焼触媒とを二軸混練機により160℃で混練、押出後、切断をして円柱状(3mmφ×3mm)のマスターバッチペレットBを得た。
【0070】
実施例3<熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットC>
50wt%の低密度ポリエチレン樹脂ペレットと50wt%の製造例3の白色燃焼触媒とを二軸混練機により160℃で混練、押出後、切断をして円柱状(3mmφ×3mm)のマスターバッチペレットCを得た。
【0071】
比較例1<熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットD>
85wt%の低密度ポリエチレン樹脂ペレットと15wt%の製造例4の白色燃焼触媒とを二軸混練機により160℃で混練、押出後、切断をして円柱状(3mmφ×3mm)のマスターバッチペレットDを得た。
【0072】
<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>
実施例4
99.5wt%の低密度ポリエチレンペレットと0.5wt%の製造例1の白色燃焼触媒とを180℃にて加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物1)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった(Pd含有量:2ppm)。
【0073】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの生成量は、それぞれ86.2%、4.5%および0.7%(ポリエチレン炭素換算比率)であった。
【0074】
実施例5
99.0wt%の低密度ポリエチレンペレットと1.0wt%の製造例2の白色燃焼触媒とを180℃にて加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物2)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった(Pd含有量:8ppm)。
【0075】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの生成量は、それぞれ93.4%、1.5%および0.05%(ポリエチレン炭素換算比率)であった。
【0076】
実施例6
99.0wt%の低密度ポリエチレンペレットと1.0wt%の製造例3の白色燃焼触媒とを180℃にて加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物3)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった(Pd含有量:0.5ppm)。
【0077】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの生成量は、それぞれ80.2%、5.1%および0.9%(ポリエチレン炭素換算比率)であり、少量のPd担持量でも完全燃焼を促進する効果が確認された。
【0078】
実施例7
96.7wt%の低密度ポリエチレン樹脂ペレットと3.3wt%の実施例1のマスターバッチペレットAを、リボンブレンダーにて180℃で加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物4)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった(白色燃焼触媒含有量0.50wt%、Pd含有量:2ppm)。
【0079】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの平均生成量は、それぞれ89.2%、4.3%および0.6%(ポリエチレン炭素換算比率)であった。
【0080】
実施例8
80.0wt%の低密度ポリエチレン樹脂ペレットと20wt%の実施例2のマスターバッチペレットBとを、リボンブレンダーにて180℃で加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物5)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった(白色燃焼触媒含有量1.0wt%、Pd含有量:8ppm)。
【0081】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの平均生成量は、それぞれ96.0%、1.4%および0.05%(ポリエチレン炭素換算比率)であった。
【0082】
実施例9
98.0wt%の低密度ポリエチレンペレットと2.0wt%の実施例3のマスターバッチペレットCとを180℃にて加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物6)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった(白色燃焼触媒含有量1.0wt%、Pd含有量:0.5ppm)。
【0083】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの平均生成量は、それぞれ79.0%、4.9%および0.8%(ポリエチレン炭素換算比率)であった。
【0084】
比較例2
99.5wt%の低密度ポリエチレンペレットと製造例4の0.5wt%の白色燃焼触媒を180℃にて加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物7)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった(Pd含有量:2ppm)。
【0085】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの生成量は、それぞれ78.4%、5.2%および1.0%(ポリエチレン炭素換算比率)であった。
【0086】
比較例3
低密度ポリエチレンペレット単体を180℃にて加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物8)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった。
【0087】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの生成量は、それぞれ72.9%、7.8%および1.7%(ポリエチレン炭素換算比率)であった。
【0088】
比較例4
96.7wt%の低密度ポリエチレン樹脂ペレットと比較例1の3.3wt%のマスターバッチペレットDを、リボンブレンダーにて180℃で加熱混練し、インフレーション押出成形法で厚み50μmのフィルム(熱可塑性樹脂組成物9)を調製した。上記フィルムの色調は無色透明であった(白色燃焼触媒含有量0.50wt%、Pd含有量:2ppm)。
【0089】
本フィルムを用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物の燃焼特性評価>にて燃焼ガス測定を行ったところ、二酸化炭素、一酸化炭素およびベンゼンの平均生成量は、それぞれ80.6%、5.1%および0.9%(ポリエチレン炭素換算比率)であった。
【0090】
<熱可塑性樹脂組成物によるダイオキシン低減試験評価>
実施例10
実施例4の熱可塑性樹脂組成物1を用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物によるダイオキシン低減試験評価>にてダイオキシン測定を行った結果、ダイオシキシン生成量は70pg−TEQ/g試料であった。
【0091】
実施例11
実施例7の熱可塑性樹脂組成物4を用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物によるダイオキシン低減試験評価>にてダイオキシン測定を行った結果、ダイオシキシン生成量は60pg−TEQ/g試料であった。
【0092】
比較例5
比較例2の熱可塑性樹脂組成物7を用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物によるダイオキシン低減試験評価>にてダイオキシン測定を行った結果、ダイオシキシン生成量は250pg−TEQ/g試料であった。
【0093】
比較例6
比較例3の熱可塑性樹脂組成物8を用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物によるダイオキシン低減試験評価>にてダイオキシン測定を行った結果、ダイオシキシン生成量は700pg−TEQ/g試料であった。
【0094】
比較例7
比較例4の熱可塑性樹脂組成物9を用いて、前記<熱可塑性樹脂組成物によるダイオキシン低減試験評価>にてダイオキシン測定を行った結果、ダイオシキシン生成量は230pg−TEQ/g試料であった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットは、該マスターバッチペレットを用いて作製した熱可塑性樹脂組成物中に白色燃焼触媒を容易に均一に分散させることができるので、熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットとして好適である。
【0096】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、強度や安全性等の本質的特性を有していることはもちろん、使用後の焼却時に完全燃焼を促進して有害な有機化合物の発生を抑制でき、且つ、透明性が高く所望の色調に容易に着色することができるので、野菜や肉等の食料品、衣料品の包装用途等の幅広い用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂中に白色燃焼触媒を配合した熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレットであって、前記白色燃焼触媒は平均粒子径が0.1〜1.0μmの酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム又は酸化チタンの中から選ばれる1種以上の無機担体粒子の表面に、平均粒子径10nm以下の金属Pdコロイド粒子を0.001〜0.10wt%担持させた白色燃焼触媒であり、該白色燃焼触媒を熱可塑性樹脂に2.0〜60wt%配合したことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレット。
【請求項2】
無機担体粒子が酸化アルミニウムである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレット。
【請求項3】
白色燃焼触媒が、陽イオン性、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤又は水溶性高分子から選ばれる1種以上を含む金属Pdヒドロゾルと無機担体粒子粉末を含む水懸濁液とを接触混合させ、無機担体粒子表面に金属Pdコロイド粒子を電気的に担持させた白色燃焼触媒であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチペレット。
【請求項4】
熱可塑性樹脂中に白色燃焼触媒を配合した熱可塑性樹脂組成物であって、前記白色燃焼触媒は平均粒子径が0.1〜1.0μmの酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム又は酸化チタンの中から選ばれる1種以上の無機担体粒子の表面に、平均粒子径10nm以下の金属Pdコロイド粒子を0.001〜0.10wt%担持させた白色燃焼触媒であり、該白色燃焼触媒を熱可塑性樹脂に0.1〜2.0wt%配合したことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
無機担体粒子が酸化アルミニウムである請求項4の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
白色燃焼触媒が、陽イオン性、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤又は水溶性高分子から選ばれる1種以上を含む金属Pdヒドロゾルと無機担体粒子粉末を含む水懸濁液とを接触混合させ、無機担体粒子表面に金属Pdコロイド粒子を電気的に担持させた白色燃焼触媒であることを特徴とする請求項4又は5記載の熱可塑性樹脂組成物。


【公開番号】特開2006−22307(P2006−22307A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82050(P2005−82050)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】