説明

熱可塑性特性を有するポリマー複合体を製造する方法

【課題】架橋ゴムと凝結水性ポリマー分散物から複合物質を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、架橋ゴムの粒子と凝結水性ポリマー分散物とを混合し、水性分散物中の混合物を形成し、その水性分散物混合物を固相剪断粉砕にかけて、物質の全固体を基準にして10〜95重量%の架橋ゴム濃度において熱可塑性物質として加工されうる物質を形成することを含む、複合物質を製造する方法を提供する。本方法は、粉砕された生成物を混練して有用な物品、例えば屋根用部材および靴底などを形成することをさらに含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架橋ゴムと水性凝結ポリマー分散物から複合物質を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、廃棄ゴム加硫物および水性凝結ポリマー分散物から、熱可塑性物質のように挙動する複合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はペンシルベニア州フィラデルフィアのロームアンドハースカンパニーと中華人民共和国、成都の四川大学における高分子材料工学国家重点実験室(State Key Laboratory of Polymer Materials Engineering)との共同研究契約の下になされた。
ゴム物品、特に架橋または加硫ゴムの再使用に多くの労力が充てられてきた。廃棄自動車タイヤについて新たな用途を見いだすことの望みは特に深刻である、なぜなら非常に多くの廃棄自動車タイヤが存在し、その廃棄は問題をもたらしているからである。政府はそれらのできるだけ多くを埋め立てしないように維持することを懸命に試みてきた、なぜなら、他にも理由はあるが、埋め立てのスペースが次第に小さくなっていること、および焼却によるタイヤの廃棄がそれと共に、微粒子排出および潜在的に危険な化合物による大気汚染についての懸念をもたらすからである。廃棄タイヤは、例えば、セメント製造操作における燃料として;新たなタイヤ、屋外競技場表面および道路アスファルトにおける充填剤として(微細に粉砕される場合);またはマルチとして使用されてきた。
【0003】
粉砕タイヤゴム(GTR)を充填剤として使用することには困難があり、特に所望の最終生成物が熱可塑性物質である場合に困難があるが、これはGTRが架橋した熱硬化組成物だからである。例えば、純粋な粉砕タイヤゴムから製造された押出物品は弱く柔軟でない、というのは粉砕タイヤの粒子はそれらが熱硬化組成物なので一緒に充分に融合できないからである。よって、今日まで、粉砕タイヤが充填剤として熱可塑性組成物に加えられる場合には、物理的特性が付与される以前に、粉砕タイヤ含有量の上限があり、この上限は約5−10%の粉砕タイヤゴムである。粉砕タイヤゴムが新たなタイヤに使用される場合にも同じことがいえる。
【0004】
廃棄加硫ゴムの加工における1つの改良は固相剪断粉砕(solid−state shear pulverization;SP)を含む。SPは、粒子サイズ低減が引き裂き、剪断、磨耗または磨砕により行われ、かつ多くの場合周囲条件下で行われる粉砕方法である(例えば、Solid−State Shear Pulverization(固相剪断粉砕)、第2および3章、K.Khait and S.Carr,Technomic Publishing Company,Inc.2001を参照)。サイズの低減に加えて、SPは、複数成分混合物の混合または混和と、炭素−炭素結合の破壊から生じるラジカルの結果としての機械化学とを誘導することを示してきた。1970年代以来、ベルストルフ(Berstorff)粉砕機、押出粉砕、回転グラインディングミル(Rotating Grinding Mill)、およびパンミル(Pan Mill)をはじめとするいくつかの種類のSP加工技術および装置が開発されてきた(Polymer Engineering and Science,June 1997,Vol.37,No.6,1091−1101;Plastics,Rubber and Compositions Processing and Applications 1996, Vol.25,No.3,152−158)。回転グラインディングミルおよびパンミルの双方は、固定された表面と回転する表面とを含み、それぞれは異なるデザインの接触面を有する。しかし、溶融物質を生じさせる高温の使用がなければ、異なる固体物質の緊密な混合はこれら固相粉砕技術を用いて容易に達成されない。
【0005】
固体の熱可塑性物質、例えば、ポリエチレンと混合することによって廃棄タイヤを再利用するかまたは回収して、ゴムタイヤを加工されうる物質に変換する実質的な努力が存在してきた。SPはそのような混合物に適用されてきた。しかし、この手法は、高温で、多くの加工用添加剤と共に熱可塑性物質/ゴム混合物を溶融処理するのを必要とする。他の公知の方法は、機械化学方法によるポリオレフィン−グラフト性−極性モノマーコポリマーの製造、および廃棄タイヤゴムから高い表面活性を有するゴム粉体を製造することを含み、これがポリマー/ゴム粉体組成物を形成するのに使用されうる。
【0006】
さらに、天然または合成ゴムラテックスをGTRと混合することが試みられてきた。ブリジストンの特開2007−231153号は天然ゴムラテックス、カーボンブラック、および粉体化されたゴム(GTR)の湿潤マスターバッチを製造する方法であって、この混合物が凝結させられ、次いで乾燥させられ、押し出されることを開示する。このような方法は、しかし、再利用熱硬化ゴムおよび熱可塑性ポリマーから、10%を超える再利用ゴムを含む有用な熱可塑性物質を製造する方法についての要求を満たさない。
廃棄ゴムタイヤは多くの注目を集めてきたが、ゴムを再利用する問題は廃棄タイヤよりもはるかに広範囲に残っている。構成成分ポリマーの機械的特性を損なわずに、新たな複合体が熱可塑性組成物として効果的に再利用されうるように、架橋ゴムのような熱硬化ポリマーを熱可塑性ポリマーと混合する方法についての必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−231153号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Solid−State Shear Pulverization(固相剪断粉砕)、第2および3章、K.Khait and S.Carr,Technomic Publishing Company,Inc.2001
【非特許文献2】Polymer Engineering and Science,June 1997,Vol.37,No.6,1091−1101
【非特許文献3】Plastics,Rubber and Compositions Processing and Applications 1996, Vol.25,No.3,152−158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、熱硬化ゴムの割合が複合体の10重量%を超える場合であっても、再利用熱硬化ゴムと熱可塑性ラテックスポリマーとから、構成成分ポリマーの機械的特性を保持している有用な熱可塑性物質を製造する課題に対する解決策を見いだそうと試みてきた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従って、複合物質を製造する方法は、
(a)1種以上の水性ポリマー分散物を凝結させて、約1ミクロン〜約1,000ミクロンの重量平均粒子サイズの凝結ポリマー分散物を生じさせ;
(b)水性凝結ポリマー分散物と1種以上の架橋ゴムの粒子とを混合して、水性分散物中の混合物を形成し;
(c)水性分散物混合物を固相剪断粉砕にかけ、それにより架橋ゴムの粒子サイズを低減させ;および
(d)混合物の水分含有量を低減させること;を含む。
【0011】
本発明のある実施形態においては、本方法は物品を形成する前に混合物を混練することをさらに含む。
本発明の別の実施形態においては、1種以上の水性ポリマー分散物を凝結させることが、1種以上の架橋ゴムの粒子の存在下で行われ、水性分散物中の混合物を形成する。
さらに別の実施形態においては、架橋ゴムは、少なくとも部分的に、150ミクロン篩い粒子サイズ(80メッシュ)以上、または11,100ミクロン篩い粒子サイズ(2メッシュ)以下、または203ミクロン篩い粒子サイズ(60メッシュ)以上、または3,350ミクロン篩い粒子サイズ(6メッシュ)以下の粒子サイズ範囲を有する再利用タイヤから得られる。
さらに別の実施形態においては、凝結される水性ポリマー分散物はエマルションポリマー分散物から、好ましくはアクリル系エマルションポリマーから得られる。
別の実施形態においては、水性凝結ポリマー分散物はエマルションポリマー製造設備の廃棄物流れから得られる。
本発明のさらに別の実施形態においては、混合物の水分含有量を低減させることは混合物の固体物質を単離することを含む。
本発明のさらに別の実施形態においては、固相剪断粉砕はパンミリングまたはディスクミリングを含む。
本発明のなおさらに別の実施形態においては、水性凝結ポリマー分散物は、カルボン酸官能基、リン含有酸官能基、ヒドロキシ官能基、アミン官能基、アセトアセトキシ官能基、シリル官能基、エポキシ官能基、シアノ官能基、イソシアナート官能基およびこれらの組み合わせから選択される官能基を有する1種以上の官能性モノマーの重合単位を有する(コ)ポリマーを含む。製造物が容易に単離されることができ、有用な物品に加工されうるように、熱可塑性ポリマーと熱硬化架橋ゴムとを含む凝結したラテックスの水性スラリーを、周囲条件下で共粉砕することを含む、再利用熱硬化ゴムと熱可塑性ポリマーとからの熱可塑性物質を製造する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法は、それぞれ熱可塑性ポリマーおよび熱硬化ポリマーとしての、アクリルポリマーおよびクラムゴムタイヤの加工に特に好適であり、10%を超えて95%までの熱硬化ゴムを含む有用な複合物質を生じさせうる。湿式粉砕法は低コストで、効果的で、かつ良好な熱散逸能力と装置の低汚染性との双方を伴う。本方法は、熱硬化ゴム粒子と混合する前または混合した後に、ラテックスポリマーの凝結処理を含む。ラテックスポリマー粒子の凝結は、約1ミクロン〜約1,000ミクロンの範囲の平均粒子サイズのポリマー粒子を生じさせ、これは出発ゴム粒子の一般的なサイズ範囲内にあり、成分の緊密な混合を可能にし、それらの間の化学的および/または機械的相互作用を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、固相粉砕条件下でGTRまたは架橋ゴムと共にラテックスポリマーを使用する方法を見いだした。ラテックス粒子は粗粒度GTRよりも小さいので(約3桁の違い:150nm対150ミクロン)、従来のラテックスを用いてGTRを分散することにより製造されるスラリーは、それぞれの粒子が変化せずに相分離する傾向がある。さらに、本発明者は、固相粉砕技術がスラリーの湿式粉砕において好適であり得ることを見いだした。本発明のスラリー方法は、市販のラテックスでは一般的にコロイドで安定なので一般的に機能しない遠心分離およびろ過のような従来の方法によってさえも、ラテックスポリマーと架橋ゴムまたはGTRとの生成物混合物の単離を容易にし、ミルに容易に導入されることができる、クラムタイヤゴムとアクリル系ポリマーとの均一な混合物を提供する。
【0014】
本発明の方法は、廃棄製品または再利用物質から全体的にまたは部分的に製造される複合物質の製造を可能にする。例えば、熱硬化ゴムは、廃棄自動車タイヤ由来の粉砕タイヤゴム(GTR)であることができ、熱可塑性ポリマーは、エマルションポリマー製造設備からの廃棄物流れのような、廃棄物流れから得られるラテックス(コ)ポリマーに由来することができる。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語、「粉砕タイヤゴム」(GTR)とは、再使用の目的のために、クラム(crumb)ゴムのような、微粉砕形態に製造されたゴム物質をいう。この物質は主として廃棄タイヤからの架橋および熱硬化ゴムを含んでなるが、他のソースからの他の廃棄ゴムを含んでいてもよい。GTRは多くの粒子サイズ範囲で商業的に供給され、最も広い種類のGTRは「粉砕ゴム」(1,520ミクロン篩い粒子サイズ、すなわち10メッシュ、またはそれより小さいクラムゴム)および「粗(coarse)ゴム」(1/4インチ以上の粒子を含み、最大寸法で13,000メッシュ篩い粒子サイズ(1/2インチ)の最大サイズを有する)と一般的に称される。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「水性ポリマー分散物」はポリマー粒子の水中での分散物を意味し、この粒子は架橋ゴム粒子ではない。
本明細書において使用される場合、用語「ラテックスポリマー」はポリマーマイクロ粒子(粒子サイズ1ミクロン未満)の水中での安定な分散物をいう。
本明細書において使用される場合、用語「エマルションポリマー」は乳化重合方法によって、水中または実質的に水性の溶液中で製造されたポリマーを意味する。
本明細書において使用される場合、用語「粉砕」は、引き裂き、剪断、磨耗、または磨砕によって達成される、固体粒子状物質の粒子サイズを結果として低減させるあらゆる方法をいう。
本明細書において使用される場合、用語「固相剪断粉砕(solid state shear pulverization)」または「SP」は、激しい剪断応力を固体粒子に与える、固相の物質の非溶融粉砕をいい、これは周囲温度でまたは冷却してその物質を用いて行われうる。
本明細書において使用される場合、用語「形成」は、成形された物品をもたらすように熱可塑性物質を扱う操作をいう。
【0017】
他に示されない限りは、丸括弧による挿入語句を含む用語は、択一的に、丸括弧が存在しなかった様な全体の用語、および挿入語句なしでの用語(すなわち、丸括弧内の内容を除く)、およびそれぞれの選択肢の組み合わせを意味する。よって、用語(コ)ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーをいう。さらに、(メタ)アクリルはアクリル、メタクリルおよびそれらの混合物のいずれも意味する。
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「コポリマー」は独立して、コポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマーおよびそのいずれかの混合物または組み合わせを含む。
本明細書において使用される場合、「アルキル」の語句は、1以上の炭素原子を有するあらゆる脂肪族アルキル基を意味し、アルキル基にはn−アルキル、s−アルキル、i−アルキル、t−アルキル基または5、6もしくは7員環構造を1以上有する環式脂肪族が挙げられる。
本明細書において使用される場合、「(C−C12)−」または「(C−C)−」などの語句は、それぞれ、3〜12の炭素原子および3〜6の炭素原子を含む化合物を意味する。
【0018】
用語「不飽和カルボン酸モノマー」または「カルボン酸モノマー」には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸、フマル酸モノアルキル、マレイン系モノマー;それらの無水物およびそれらの混合物が挙げられる。マレイン系モノマーには、例えば、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、マレイン酸モノアルキル、およびマレイン酸無水物およびそれらの置換体が挙げられる。
用語「不飽和スルホン酸モノマー」には、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびパラ−スチレンスルホン酸が挙げられる。
本明細書において使用される場合、語句「水性」または「水性溶液」には、水、並びに水と水混和性溶媒とから実質的になる混合物が挙げられる。
本明細書において使用される場合、「重量%」、「wt.%」または「重量パーセント」は重量パーセントを意味する。本明細書において使用される場合、語句「ポリマー複合体固体の全重量を基準にして」とは、ポリマー複合体(例えば、ラテックスコポリマーおよび粉砕タイヤゴム)中の水でない成分の全ての全重量に対する所定の成分の重量をいう。
【0019】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「篩い粒子サイズ(sieve particle size)」は、所定の粒子サイズの篩いを通過したサンプルから得られる、物質の粒子サイズをいう。例えば、203ミクロンサイズの篩い(60メッシュ)を通過する様に粉砕された粉砕タイヤゴムは、203ミクロンサイズの篩い粒子サイズを有すると称される。与えられた物質について、メッシュ篩い粒子サイズは重量平均粒子サイズより大きいであろう。
【0020】
本明細書において記載される、水性凝結ポリマー分散物の粒子サイズおよび粒子サイズ分布はマルバーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)2000商標粒子サイズ分析器(Malvern Instruments Ltd.,マルバーン、ウースターシャー、英国)を用いて測定された。この装置は光散乱技術を使用し、得られる粒子サイズは重量平均粒子サイズである。
【0021】
架橋ゴムは架橋されたあらゆるゴムであることができ、廃棄タイヤを粉砕することにより得られるゴムに限定されない。例えば、架橋ゴムは、天然ゴム、合成ゴムおよびこれらの誘導体から選択されるゴムの1種以上に由来しうる。合成ゴムの例としては、ジエンベースポリマー、例えば、イソプレン、シス−1,4−ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン、シス−1,4−ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマーゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどが挙げられる。
【0022】
好ましくは、複合物質の架橋ゴムは再利用ゴムであり、最も好ましくは粉砕された自動車タイヤポリマーからの再利用ゴムから少なくとも部分的に得られる。よって、ゴムは加硫(架橋)または超酸化(hyperoxidized)ゴムであることができ、そして廃棄ゴム製品に多くの場合存在するような架橋剤、硫黄、加硫促進剤、酸化防止剤、オゾン分解抑制剤、保存剤、プロセス油、酸化亜鉛(ZnO)、カーボンブラック、ワックス、ステアリン酸などのような1種以上を含むことができる。好ましくは、導入ゴムは、廃棄自動車タイヤにおいて多くの場合存在するような非ゴム成分、例えば、スチールベルトまたは布などをあらかじめ除いている。GTRの商業的なソースは概してこのように提供される。
【0023】
本発明は、当初の架橋ゴム粒子の形状によって限定されない。SPプロセスにおいて使用するためのゴムは、例えば、細断形態、ゴムペレット、ゴムストランド、または粒子、例えば、クラムゴム、またはゴム粉体であることができ、この粒子形態は市販されており、当業者に知られた方法により製造される。SPプロセスに導入される場合の、11,100ミクロン篩い粒子サイズ(2メッシュ)を超えるゴム粒子サイズは、使用可能であるが、実用性に劣る。概して、ゴム粒子サイズは7,000ミクロンサイズの篩い粒子サイズ(3メッシュ)以下の範囲である。より大きな粒子サイズは湿式粉砕のさらなる相互作用を必要とする場合がある。さらに、接触面の回転の速度およびデザインも湿式粉砕の有効性に影響しうる。好ましくは、架橋ゴムは3,350ミクロン篩い粒子サイズ(6メッシュ)以下、または150ミクロン篩い粒子サイズ(80メッシュ)以上、またはより好ましくは203ミクロン篩い粒子サイズ(60メッシュ)以上の粒子サイズを有する。SP粉砕ゴムの結果的に得られる粒子サイズは、概して凝結ラテックスのサイズと同じサイズであり、より大きな当初ゴム物品サイズについては2000ミクロン篩い粒子サイズ以下の範囲であり得る。好ましくは、SP粉砕ゴムの結果的に得られる粒子サイズは、100ミクロン篩い粒子サイズ以下、または46ミクロン篩い粒子サイズ(300メッシュ)以上、または35ミクロンサイズの篩い粒子サイズ(400メッシュ)以上である。
【0024】
複合物質において使用されるラテックス(コ)ポリマーは重合単位として、エチレン性不飽和モノマー、例えば、α,β−エチレン性不飽和モノマー(例えば、第1級アルカン);ビニル芳香族化合物、例えば、スチレンもしくは置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン);エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルキシレン、ビニルトルエンなど;ブタジエン;酢酸ビニル、酪酸ビニルおよび他のビニルエステル;ビニルモノマー、例えば、ビニルアルコール、ビニルエーテル、塩化ビニル、ビニルベンゾフェノン、塩化ビニリデン、など;アリルエーテル;N−ビニルピロリジノン;オレフィン;C−C30アルキル基を有するビニルアルキルエーテル(例えば、ステアリルビニルエーテル);C−C30アルキル基を有するアリールエーテル;(メタ)アクリル酸のC−C30アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル);(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルモノマー、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、および(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ヒドロキシエチル;並びに関連するアミドおよびニトリル、例えば、(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミド(例えば、ジアセトンアクリルアミド)、もしくはN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド(例えば、オクチルアクリルアミドおよびマレイン酸アミド);およびアクリロニトリルもしくはメタクリロニトリル;(メタ)アクリル酸の不飽和ビニルエステル;多官能性モノマー(例えば、トリアクリル酸ペンタエリスリトール);コレステロールから誘導されたモノマー;エチレン;界面活性剤モノマー(例えば、メタクリル酸C1827−(エチレンオキシド)20、およびメタクリル酸C1225−(エチレンオキシド)23);酸官能基を含むα,β−モノエチレン性不飽和モノマー(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、(メタ)アクリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくは無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、イタコン酸モノアルキル);酸置換(メタ)アクリラート;メタクリル酸スルホエチルおよび不飽和スルホン酸モノマー;酸置換(メタ)アクリルアミド(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸);塩基置換(メタ)アクリラート(例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ターシャリーブチルアミノエチル);並びに(メタ)アクロレインを含むことができる。
【0025】
複合物質の所望の最終用途に従って好ましい特性を付与するために、複合物質のラテックス(コ)ポリマーは、共重合された官能性モノマーまたは後に官能化されるモノマーをさらに含むことができる。このようなモノマーには、カルボン酸官能基を有するモノマー(例えば、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー)、またはリン含有酸(phosphorus acid)官能基(リン含有酸モノマー)またはヒドロキシ官能基、もしくはアミン官能基、もしくはアセトアセトキシ官能基、もしくはシリル官能基、もしくはエポキシ官能基、もしくはシアノ官能基、もしくはイソシアナート官能基を有するモノマーが挙げられうる。官能性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ホスホエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチルなどが挙げられる。ポリマー骨格に容易に組み入れられうる様々な官能基のために、アクリル系ラテックスポリマーは本発明に特に良好に適合される。
【0026】
ある実施形態においては、本発明のラテックス(コ)ポリマーは1種以上の共重合された多エチレン性不飽和モノマー、例えば、メタクリル酸アリル(ALMA)、アクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,2−エチレングリコール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ブタジエン、トリアクリル酸トリメチロールプロパン(TMPTA)およびジビニルベンゼンなどを含む。多エチレン性不飽和モノマーは、コポリマーの重量を基準にして0.1重量%、好ましくはコポリマーの重量を基準にして0.1〜10重量%、または0.1〜5重量%の量で効果的に使用されうる。
【0027】
本発明における使用に好適なラテックス(コ)ポリマーには、これに限定されないが、全てアクリル系の(all−acrylic)ラテックス;スチレン−アクリル系ラテックス;天然ゴムラテックスおよび誘導体天然ゴムラテックス、例えばエポキシ化天然ゴムラテックス;合成ゴムラテックス、例えば、イソプレン、ブタジエン、例えば、スチレン−ブタジエンラテックスもしくはスチレン−アクリロニトリル−ブタジエンラテックス;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。ラテックス(コ)ポリマーは、当該技術分野において知られているように、あらゆる重合方法例えば、溶液重合、塊状重合、不均一相重合(例えば、乳化重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合、懸濁重合、分散重合および逆エマルション重合)、およびそれらの組み合わせ;によって製造されることができる。そのようなラテックスポリマー種類の分子量は、連鎖調整剤(chain regulator)、例えば、メルカプトエタノールおよびドデシルメルカプタンのような硫黄化合物の使用によって制御されうる。連鎖調整剤の量は、(コ)ポリマーを製造するのに使用される全モノマーの全重量を基準にして、20%以下、より一般的には7%以下の範囲であり得る。ラテックス(コ)ポリマーの分子量は好ましくは、約5,000〜2,000,000またはより好ましくは20,000〜1,000,000である。
【0028】
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計(DSC)によって測定される。「Tg」は、それ以上の温度でガラス状ポリマーがポリマー鎖のセグメント運動を受けるであろう温度である。DSCによってポリマーのガラス転移温度を測定するために、ポリマーサンプルは乾燥させられ、120℃まで予備加熱され、素早く−100℃まで冷却され、次いでDSCデータが集められつつ150℃まで、20℃/分の割合で加熱される。サンプルについてのガラス転移温度は半高法(half−height method)を用いた変曲の中点で;温度およびエンタルピーのためにインジウム参照を用いるセル較正で;当該技術分野において知られるように測定される。好ましくは、本発明において使用されるエマルションコポリマーは−10〜35℃のTgを有するが、本発明において使用されるコポリマーのTgは特に限定されない。
【0029】
ある実施形態において、ラテックス(コ)ポリマーはエマルションポリマー製造設備の廃棄物流れから得られる。有利なことには、このことは、廃棄製品または再利用物質から、全体的にまたは部分的に製造される複合物質の製造を可能にする。
【0030】
複合物質において使用されるラテックス(コ)ポリマーは、好ましくは、5重量%以上、または95重量%以下、または10重量%以上、または90重量%以下の複合体の全固体を含み、好ましくは、10重量%以上、または75重量%以下、または25−65%、より好ましくは、35−65%、または50重量%までである。
【0031】
複合物質において使用されるラテックス(コ)ポリマーは、凝結させられ、または凝集させられて、粒子が当初のゴム粒子の一般的なサイズ範囲にある、好ましくはゴム粒子の粒子サイズに対して一桁の範囲内にある、水性凝結ポリマー分散物を生じさせる。ゴム粒子とラテックスポリマーとのより良好な混合をもたらすことに加えて、ラテックスポリマーの凝結は固相剪断粉砕中のプレートの汚染を妨げるのも助ける。ラテックス(コ)ポリマーはゴム粒子と混合前または後に凝結させられうる。水性ポリマー分散物を凝結させる方法は当該技術分野において知られており、ここでは限定されない。凝結の好適な方法は酸、例えば、ギ酸もしくは硫酸、または塩例えば塩化ナトリウムもしくは塩化(第二鉄)鉄の添加を含みうる。他の化学凝結剤には、ミョウバン、アルミナ、アルミニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウム、酸化カルシウム、硫酸(第一鉄)鉄、硫酸マグネシウム、ポリアクリルアミド、アルミン酸ナトリウム、およびケイ酸ナトリウムなどを挙げることができ;天然物凝結剤には、特に、キトサン、モリンガオレイフェラ(moringa oleifera)種子、パパイン、ストリコノス(strychnos)種子、およびアイシングラス(isinglass)を挙げることができる。好ましくは、水性凝結ポリマー分散物は、1ミクロン〜5,000ミクロン、より好ましくは、5ミクロン〜200ミクロン、さらにより好ましくは10ミクロン〜100ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有する。好ましくは、凝結水性(コ)ポリマー分散物はポンプ輸送可能(pumpable)である。
【0032】
凝結水性分散物は架橋ゴムの粒子と混合され、水性分散物中の混合物を形成し、その混合物はSPにかけられる。好適な技術は、固体粒子状物質を含むスラリーとしての混合物を粉砕し、それにより、ゴム粒子が凝結ポリマーと緊密に接触しつつ、ゴム粒子の粒子サイズを低減させるために使用されうる技術を含む。例えば、加熱ユニットを伴って設計され、通常の使用で溶融状態で導入物質を加工するために使用された固相剪断押出、すなわちSSSEの様な技術は、周囲条件下で水性スラリー混合物と共に使用されることができた。よって、これらに限定されないが、様々な粉砕技術、例えば、回転グラインディングミル、高剪断固相粉砕、ディスクミリング、パンミリング(pan milling)、ストーンミリング、プラストミリング(plast milling);並びに、他の粉砕技術、例えば、Berstorff粉砕機、押出粉砕、固相剪断押出、およびBrubender押し出し機;並びに類似の技術をはじめとする多くの技術が、本発明の方法を実施するのに使用されることができ、使用されるのに適合されることができる。
【0033】
本発明の方法は、粉砕スラリーの水分含有量を低減することをさらに含む。これは、スラリーを脱水することおよび残った固体複合物質を乾燥することの双方を含みうる。スラリーを脱水することは、さらに、例えば、過剰な水を除くための固体のろ過、または遠心分離のような方法、並びに絞るもしくは加圧するもしくは凍結乾燥することによってサンプルの水分含有量のさらなる低減を含みうる。乾燥の従来法、例えば、真空乾燥機、空気乾燥機、ドラム型乾燥機または携帯型乾燥機のようなオーブンまたは乾燥機の使用なども使用されることができる。好ましくは、本方法は、凝結した粉砕水性分散物の熱可塑性加工をさらに含み、水分含有量のさらなる低減はこのような加工中に、例えば、サンプルを室温より高い温度で圧縮することにより起こりうる。高温で行われうる熱可塑性物質の加工は複合物質を混練または成形する工程を含むことができる。混練は2−ロールミルを用いてまたは物質の押出によって、またはある場合には射出成形機への送達において達成されることができる。成形方法は、カレンダ加工、圧縮成形または射出成形の様な技術を含むことができる。2−ロールミリングは、物質を成形物品に変えるために多くの場合圧縮成形と組み合わせて使用される標準的なポリマー加工操作である。あるいは、押出または類似の溶融加工手順が使用されうる。
【0034】
スラリー混合物は、複合物質の最終用途に従って望まれるまたは必要な場合には、例えば、加硫剤、酸化防止剤、UV−安定化剤、難燃剤、着色剤、充填剤、顔料および加工助剤の1種以上のような様々な添加剤をさらに含むことができる。
【0035】
特に好ましい実施形態においては、203ミクロン篩い粒子サイズ(60メッシュ)の粉砕タイヤゴムが、Rhoplex商標AC261(ロームアンドハースカンパニー、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)のようなアクリル系ラテックスコポリマーの10%固体の水性分散物に添加され、そのラテックスは実施例1(a)において後述されるように、塩化第二鉄の40%溶液の添加によってその場で凝結させられる。そのスラリーは、実施例2に記載されるように固相剪断粉砕にかけられ、次いで、実施例3(a)に後述されるように、2−ロールミルおよび圧縮成形で加工される前に、ろ過され乾燥させられて、アクリル系ゴム複合体を生じさせる。
【0036】
本発明の方法により製造される複合物質は熱可塑性物質であり、それは場合によってはさらに配合および圧縮成形されて、所望の最終生成物を提供することができ、これは当業者に対して特定の方法に限定されない。ある用途においては、複合物品は、充填剤を例えば、粉体、繊維、スライバーもしくはチップの形態で、または強化物質、例えば、不織布もしくはスクリムなどそれぞれの技術分野において知られているように、さらに含むことができる。カーボンブラックは、意図される最終製品の多くに使用される充填剤の例である。有用な最終製品には、これに限定されないが、自動車部品、例えば、タイヤ、バンパー、ガスケット、ファンベルト、ワイパーブレード、ライナー、防振マウント、アンダーボディーコーティング、防音材およびトリム;建築用製品、例えば屋根葺き部材、シングル屋根板または屋根用フェルト;EPDM屋根葺き部材のための改質剤;コーティング;ネオプレンコーティングのための改質剤;タイルまたはタイル裏当て材;カーペット裏当て材;アスファルトシーラー;アスファルト強化材およびアスファルトコンクリート道路仕上げ材物質;アスファルトおよびセメントのためのクラック充填材;コンクリート改良材;防音物質;音響下張り;床用下張りおよびマット;工業用製品、例えば、埋め立て地用裏張り;ホットメルト接着剤;スポーツ用品、例えば、人工芝およびトラック;遊び場の表面;マットおよびパッド;ボールの芯;および消費者用製品、例えば、床用タイル;靴底;ライナー;カバー;成形製品;などが挙げられる。
【実施例】
【0037】
実施例1:ポリマー/ゴムスラリー混合物の製造:1(a)その場での凝結
市販のアクリル系ラテックスポリマーRhoplex商標AC261ラテックス(アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルとのエマルションコポリマー、50%固体;ロームアンドハースカンパニー、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)および粉砕タイヤゴム(203ミクロン篩い粒子サイズ;すなわち、60メッシュ;Lv Huan Rubber Powder Limited Company、浙江、中国)がスラリー混合物中で次のように使用された:2ガロンの容器中で、1000gのRhoplex商標AC261ラテックスが3500gの水で希釈された。撹拌しつつ、その希釈ラテックスに500gの粉砕タイヤゴムが、10分間にわたって徐々に添加された。クラムタイヤゴムがラテックス分散物中に分散された後、塩化鉄(III)、すなわちFeCl、の40%溶液37.6gが分散物に添加され、ラテックスの凝結を開始させた。撹拌は15分間続けられ、そのスラリー混合物は一晩放置され平衡化させた。凝結した混合物は固体ケーキになったが、撹拌によって流動可能なスラリーに容易に再分散されうる。凝結ポリマー固体の粒子サイズは、光学顕微鏡によって約10−200ミクロンであると推定された。さらに、凝結混合物の粒子サイズおよび粒子サイズ分布はマルバーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)2000商標粒子サイズ分析機(Malvern Instruments Ltd.,マルバーン,ウースターシャー、英国)を用いて測定された。結果は、低い粒子サイズ分布が1ミクロン〜1,000ミクロンの粒子の広い分布を示し、80%超が2−200ミクロンであり、および〜25ミクロンでピークを有する、重なった二峰性の分布を示した。後者の分布は、凝結ラテックスポリマーのものであると決定された(下記の1(b)参照)。
【0038】
ポリマー/ゴムスラリー混合物の製造:1(b)ラテックスの予備凝結
別の手順において、実施例1a)に記載されるようなスラリーは、次のように、ラテックスの凝結とそれに続く粉砕タイヤゴムの添加によっても製造された:2ガロンの容器中で1000gのRhoplex商標AC261ラテックス(50%固体)が3500gの水で希釈された。その分散物に、FeClの40%溶液37.6gが添加され、ラテックスの凝結を開始させた。撹拌は15分間続けられ、凝結ポリマー分散物は一晩放置され平衡化させられた。撹拌しつつ、500gの粉砕タイヤゴム(203ミクロン篩い粒子サイズ;すなわち60メッシュ)が、凝結ポリマー分散物に10分間にわたって徐々に添加された。凝結ポリマー固体の粒子サイズは光学顕微鏡で約10−200ミクロンであると推定された。さらに、凝結分散物の粒子サイズおよび粒子サイズ分布はマルバーンマスターサイザー2000商標粒子サイズ分析機を用いて測定された。結果は、80%超が2−200ミクロンであり、および〜25ミクロンでピークを有する、1ミクロン〜1,000ミクロンの粒子の広い分布を示した。
【0039】
実施例2:ポリマー/ゴムスラリー混合物の固相剪断粉砕(SP)
実施例1(a)および、別に実施例1(b)からのスラリーが、Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,1996 Vol.25,No.3,152−158;Polymer Engineering and Science,1997,Vol.37,No.6,1091−1101に記載されるように、パンミル法を用いて湿潤条件下で固相剪断粉砕にかけられた。それぞれの場合において、ポリマー/ゴムスラリーは10%の合計固形分に希釈され、パンミルの取り込み口に供給された。ミリングは、周囲条件下、60rpmの移動パン回転で行われた。パンの間の隙間は、流体駆動装置によって制御され、ポリマー/ゴム混合物の効果的な粉砕を達成した。粉砕されたスラリーの排出物をミルに再導入することによって、スラリーは5回粉砕された。
【0040】
実施例3:ポリマー/ゴム複合物品の製造:3(a)2−ロールミリングおよび圧縮成形
粉砕されたポリマー/ゴムスラリー混合物は10ミクロンフィルターバッグを用いてろ過され、固体混合物はさらに絞られてフリーの水を低減させた。得られる湿潤固体(〜50−60%水分含有量)が真空オーブン中、70℃で2日間乾燥させられた。乾燥した混合物固体(5%未満の水分含有量)が190℃、5分間2−ロールミルで加工され、そして0.102、0.127または0.203cmの厚み(40、50または80milの厚み)で、25.4cm×25.4cm(10インチ×10インチ)のフレームに取り付けられたスチールプラーク間で、190℃で、全部で5分間、すなわち3分間は低圧(10−15トン)で2分間は高圧(75トン)で圧縮成形された。加圧下(75トン)、室温で5分間、循環水を取り付けた冷却プレスにおいてさらなる冷却も行われた。
【0041】
3(b):ポリマー/ゴム複合物品の押出製造
ポリマー/ゴム複合物品を製造する別の手順において、乾燥した混合物固体は、2−ロールミリング工程を経ることなく、直接に、押出すことによっても加工された。40rpmで回転する2つの先細の1.9cm(3/4インチ)直径のスクリューを用いるHaake逆向き回転円錐ツインスクリューを用いて、乾燥したポリマー/ゴム複合体が押し出された。メインユニットは3つの加熱領域(185−190−195℃)並びに温度制御のための様々な熱電対および冷却ホースを有していた。物質は、0.102cm(40mil)のギャップサイズを有する5cm(2インチ)幅のリップダイを通って押し出された。
【0042】
実施例4:ポリマー/ゴム複合物品の特性:4(a)機械的特性
実施例3(a)からの複合体サンプル(実施例3(b)の方法により製造された後述のサンプル6を除く)は成形されたプラークからドッグボーン状に切り出され、その結果約0.35cm(0.14インチ)の幅および0.102cm(40mil)の厚みが得られた。Tinius Olsen H50KS引張り試験機(Tinius Olsen Inc.,ホーシャム、ペンシルベニア州)で、ゴムについてのタイプ5のセッティングを用いてASTM D−628プロトコルに従って機械的試験が行われた。クロスヘッド速度は0.76cm/分(0.3インチ/分)であり、0.76cm(0.3インチ)のゲージ長さが使用された。試験は23℃の制御された温度、および50%の制御された相対湿度のもとで行われた。この試験から、サンプルについての破断点伸び、最大応力(引張り強さ)、弾性係数(接線係数)および破壊エネルギーが決定された。
【0043】
【表1】

【0044】
ポリマー/ゴム複合物品の特性:4(b)ラテックスポリマーの凝結の影響
実施例1(b)に記載されるような凝結工程を用いるかまたは用いずに、粉砕されたポリマー/ゴムスラリー混合物は、10ミクロンろ過バッグを用いたろ過により脱水された。
スラリーは10重量%のポリマー固体および10重量%の粉砕タイヤゴムで構成されていた。凝結スラリー中の固体は静置して、わずかに濁った上層を伴って沈殿した。凝結のないスラリーは、白色の水層を伴った粉砕タイヤゴムの沈殿を示した。ろ過後、2つのスラリーのろ液の固体含有量が重量測定法で決定された(表2)。
【0045】
【表2】

【0046】
凝結を伴わなければ、ラテックスポリマー固体は本質的にフィルターを通過し、ろ液中の固体はラテックスポリマーに関するのとほとんど変わらない。
スラリー中の固体を単離する能力は複合物質が洗浄されるのを可能にする。スラリー中に残留する親水性成分、例えば、凝結剤および界面活性剤は最終生成物に悪影響を及ぼしうる。凝結複合体混合物は10ミクロンろ過バッグを通してろ過され、次いで固体は水中に再分散され、再ろ過され、2回効果的にサンプルを洗浄し残留する親水性物質を除去した。複合体混合物が実施例3(a)に記載されるように加工された。圧縮成形後の最終固体複合物質の水感受性は、成形された複合体の片を、表面の水を乾燥除去した後、水に浸漬させ、次いで、時間の経過による水の吸収を測定することにより決定された。水の吸収は、複合体の重量に対する吸収された水の重量%として計算された。
【0047】
【表3】

【0048】
ろ過され水中に再分散された(それ故に、洗浄された)固体から製造された複合物質は浸漬がより長くなった際に、より少ない水の吸収を示した。ポリマー物質または複合体の多くの産業用途、例えば、屋根用用途は、その用途が決定しうるように、最小限の水の吸収、例えば、7日間にわたってまたは20日間以上にわたって水中で浸漬する際に5%未満の水の吸収を必要とする。
【0049】
ポリマー/ゴム複合物品の特性:4(c)固相剪断粉砕(SP)の効果
(実施例1(a)からの)50/50凝結ポリマー/ゴムスラリー混合物のサンプルが使用され、4つの異なる方法によってポリマー複合体を製造した。2つの方法はSP技術を含んでおり、別の2つの方法は含んでいなかった;そして、それぞれのシナリオについて、1つのサンプルは2−ロールミリング処理および圧縮成形にかけられ、別のサンプルは(2−ロールミリングせずに)単に圧縮成形された、以下の表4を参照。ポリマー複合体はそれ以外は同じに製造された。4つの異なる方法により形成されたポリマー複合体について、機械的特性が試験された。
【0050】
【表4】

【0051】
Pと2−ロールミリングの双方を使用する方法は、優れた引張り強さおよび伸びを有する複合体を生じさせる。2つの技術のうちの1つだけを使用した結果、中程度の機械的特性を有するポリマー複合体を生じさせた。一方で、SPまたは2−ロールミリングなしで物質が圧縮される場合には、機械的特性は幾分不完全である。このデータは、SP技術が物質の最終特性におけるカギとなる違いを作り出すことを示す。
【0052】
実施例5:異なるポリマー組成のラテックスから製造される複合物質
複合物質は様々な他のラテックスポリマー、例えば、Rovace商標661(酢酸ビニル/アクリル酸ブチル、55%固体;ロームアンドハースカンパニー、フィラデルフィア、ペンシルバニア州);Airflex商標500(エチレン/酢酸ビニル、55%固体;エアプロダクツアンドケミカルズインク、アレンタウン、ペンシルバニア州);UCAR商標DM171(スチレン/ブタジエンゴム、50%固体;ダウケミカルカンパニー、ミッドランド、ミシガン州)およびRhoplex商標2200(スチレン/アクリル系、50%固体;ロームアンドハースカンパニー)を用いて製造されうる。表5に示された量および実施例1(a)に記載されるような方法に従って、それぞれのラテックスポリマーについて、ポリマー/ゴムスラリー混合物が製造される。
【0053】
【表5】

【0054】
表5に示されるポリマー/ゴムスラリーは、実施例2および3に記載される方法によってさらに加工され、複合物質を生じる。
【0055】
実施例6:工業的エマルションポリマー製造設備からの廃棄物質から製造される複合物質
この実施例において、エマルションポリマー製造設備に由来する廃棄物質を用いて、実施例1(b)の方法によってポリマー/ゴムスラリー混合物が製造された。このような設備からの廃棄物質は、乳化重合反応容器のすすぎから日常的に生じ、接着剤からコーティングまでの範囲(Tg−40〜40℃)の用途のために設計されたラテックス製品の混合物からの非常に少ない量のポリマー固体(2%未満)を含む。典型的には、その製造設備において、すすぎ水を含むこれらのポリマーは、廃棄前に凝結され(例えば、FeClで)、〜30%固体まで脱水される。この実施例において、脱水された凝結廃棄物質が使用されて、その廃棄物収集物から抽出された湿潤固体を、同様の固体量で添加されるGTR(203ミクロン篩い粒子サイズ、すなわち60メッシュ)と共に再分散させ、次いで、実施例2および3(a)に従ってポリマー/ゴム混合物を粉砕および加工することによりポリマー/ゴムスラリーを製造した。廃棄物エマルションポリマーおよびGTRに由来し、圧縮成形後に得られる複合体シートは、より低い機械的特性を有するが、AC261からの実施例4におけるのと類似の一体性を有する。
【0056】
【表6】

【0057】
表6に示されるように、本発明に従ったポリマーゴム複合体は、試験された全ての再利用架橋ゴム割合で良好な機械的特性を得た。50/50 重量/重量のポリマーゴム複合体は、特に、そのような高い廃棄ゴム含有量の物質について、優れた機械的特性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種以上の水性ポリマー分散物を凝結させて、約1ミクロン〜約1,000ミクロンの重量平均粒子サイズを有する凝結ポリマー分散物を生じさせる工程;
(b)水性凝結ポリマー分散物と1種以上の架橋ゴムの粒子とを混合して、水性分散物中の水性分散物混合物を形成する工程;
(c)水性分散物混合物を固相剪断粉砕にかける工程;および
(d)混合物の水分含有量を低減させる工程;
を含む複合物質を製造する方法。
【請求項2】
物品を形成する前に混合物を混練することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種以上の水性ポリマー分散物の凝結が1種以上の架橋ゴムの粒子の存在下で行われ、水性分散物中の混合物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
架橋ゴムの粒子サイズが150ミクロン篩い粒子サイズ(80メッシュ)以上、または11,100ミクロン篩い粒子サイズ(2メッシュ)以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも部分的に再利用タイヤから架橋ゴムが得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
凝結させられる水性ポリマー分散物がエマルションポリマー分散物から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エマルションポリマー製造設備の廃棄物流れから水性凝結ポリマー分散物が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
混合物の水分含有量を低減させることが、混合物の固体物質を単離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
固相剪断粉砕がパンミリングまたはディスクミリングを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
カルボン酸官能基、リン含有酸官能基、ヒドロキシ官能基、アミン官能基、アセトアセトキシ官能基、シリル官能基、エポキシ官能基、シアノ官能基、イソシアナート官能基およびこれらの組み合わせから選択される官能基を有する1種以上の官能性モノマーの重合単位を有するコポリマーを、水性凝結ポリマー分散物が含む、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2010−18783(P2010−18783A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−130432(P2009−130432)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】