説明

熱可塑性透明樹脂

【課題】
透明性、低吸水性に優れた熱可塑性透明樹脂を提供する。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られる共重合体の構成単位において芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が0.25以上1.0未満である共重合体の芳香環の70%以上97%未満を水素化反応することによって得られる熱可塑性透明樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性透明樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
非晶性プラスチックの分野ではアクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂など、様々な材料が使用されており、それぞれの用途にあった性能を使い分けている。メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(以下MS樹脂と略す。)はメタクリル樹脂の持つ優れた透明性を生かしつつ、かつ寸法安定性、剛性、比重などの物性バランスを改善した透明樹脂である。その性質を生かし、看板や照明カバー、建材などに広く使われているが、近年では導光板やレンズシート、前面パネルなど、様々なフラットディスプレイ産業におけるディスプレイ部材としての用途が拡大している。特にMS樹脂はメタクリル樹脂に比べ樹脂の吸水率が小さいことから、寸法安定性が優れている点で有用である。しかしながらこのMS樹脂は芳香環骨格を有するため、メタクリル樹脂に比べると透明性が劣ることなど、用途が限定される場合があった。またその寸法安定性、耐熱性に関してもさらなる改善が求められている。
【0003】
また、スチレン系樹脂の芳香環を水素化(核水添ともいう。)する技術は古くから知られており、ポリスチレンから得られるポリビニルシクロヘキサンは、機械強度に劣るという欠点はあるものの、透明性と耐熱変形性に優れた樹脂である。その優れた透明性と耐熱変形性から、光ディスク基盤への応用が検討されてきた(特許文献1参照。)。MS樹脂を核水添した樹脂も、この光ディスク用途に応用した例として一部の組成で開示されている(特許文献2参照。)が、金属との密着性が不足すること、耐熱変形性が必ずしも十分でないことから、光ディスクの基盤としては十分にその性能を発揮することができないことがあった。またプラスチックレンズへの応用も一部の組成で開示されている(特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開昭63−43910号公報
【特許文献2】特開平6−25326号公報
【特許文献3】特開平4−75001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上で述べた熱可塑性透明樹脂に要求されている透明性、耐熱性、吸水性のバランスに優れた熱可塑性透明樹脂を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記、特許文献2および3で開示されているMMA共重合率の低いMS樹脂の芳香環を高い水素化反応率まで反応させた樹脂(MMA構成単位/スチレン構成単位(モル比)=0.92以下、水素化反応率97%または100%)では、主鎖が切断して分子量が低下する事による機械強度低下の現象が起こり、必ずしも満足のいく結果が得られず、実用に耐えない場合があった。本発明は上記事情に鑑み鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーから選択したモノマー組成物を重合して得られる、特定の構成単位の組成からなる共重合体の芳香環の70%以上97%未満の範囲で水素化反応することによって得られる熱可塑性透明樹脂が、透明性、耐熱性、機械物性の物性バランスが良いことを見出し、本発明に到った。
すなわち本発明は(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られる共重合体の構成単位において芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が0.25以上1.0未満である共重合体の芳香環の70%以上97%未満を水素化反応することによって得られる熱可塑性透明樹脂に関するものである。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはメタクリル酸とアクリル酸とを指す表記である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により得られる熱可塑性透明樹脂は、透明性、耐熱性、吸水性、機械物性のバランスが優れている。この樹脂を含有する光学材料組成物を成形してなる光学物品は吸水率が低いため、寸法安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキル類;(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)や(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)などの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;(メタ)アクリル酸(2−メトキシエチル)、(メタ)アクリル酸(2−エトキシエチル)などの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;(メタ)アクリル酸ベンジルや(メタ)アクリル酸フェニルなどの芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類;および2−(メタ)アクロイルオキシエチルホスホリルコリンなどのリン脂質類似官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル類などをあげることができるが、物性面のバランスから、メタクリル酸アルキルを単独で用いるか、あるいはメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルを併用することが好ましい。さらに、メタクリル酸メチル80〜100モル%およびアクリル酸アルキル0〜20モル%を用いることが好ましい。用いるアクリル酸アルキルのうち、特に好ましいものはアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルである。
【0008】
本発明の芳香族ビニルモノマーとは、具体的にスチレン、α―メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、およびクロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物があげられるが、スチレンが好適に用いられる。
【0009】
これらモノマーを重合する方法は、公知の方法を用いることができるが、工業的にはラジカル重合による方法が簡便でよい。ラジカル重合は塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法など公知の方法を適宜選択することができる。例えば、塊状重合法や溶液重合法の例としてはモノマーと連鎖移動剤、重合開始剤とを配合したモノマー組成物を完全混合槽に連続的にフィードし、100〜180℃で重合する連続重合法などがある。溶液重合法ではトルエンやキシレン、シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノールやイソプロパノールなどのアルコール系溶媒などの溶媒を、モノマー組成物と共にフィードする。重合後の反応液は重合槽から抜き出して脱揮押出機や減圧脱揮槽に導入することで揮発分を脱揮して樹脂を得ることができる。
【0010】
メタクリル系樹脂の場合、共重合体の構成単位の組成は仕込んだモノマーの組成とは必ずしも一致せず、重合反応によって実際にポリマーに取り込まれたモノマーの量によって決定される。共重合体の構成単位の比は、重合率が100%であれば仕込みモノマー組成比と一致するが、実際には50〜80%の重合率で製造する場合が多く、反応性の高いモノマーほどポリマーに取り込まれ易いため、モノマーの仕込み組成と共重合体の構成単位の組成にズレが生じるので、仕込みモノマーの組成比を適宜調整する必要がある。本発明で水素化反応に用いる共重合体の構成単位のモル比(A/B)としては、0.25以上1.0未満である。0.25未満になると機械強度が著しく劣り実用性に耐えない場合がある。1.0以上であると、極性基が多く含有されるため、吸水率が上昇し、寸法安定性が不足する場合がある。物性バランスの面からさらに好ましい範囲を例示するならば、0.3以上0.95以下である。
【0011】
上記手法などで得られた共重合体は、適当な溶媒にて溶解して水素化反応を行うが、重合の際と同じ溶媒を用いても良いし、異なる溶媒を用いても良い。水素化反応では水素化反応前後の共重合体の溶解性や水素の溶解性が良好なもののうち、水素化される部位を持たないものが好ましい。例えば、シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノールやイソプロパノールなどのアルコール系溶媒が用いられる。
【0012】
水素化反応はバッチ式反応や連続流通式反応など、公知の手法を用いることができるが、好ましい条件として、水素圧は3から30MPa、反応温度は60から250℃の範囲内で行われる。反応温度が低すぎると反応が進行しにくく、反応温度が高すぎると分子鎖の切断による分子量の低下が起こったり、エステル部位の反応までもが進行しやすくなる。分子鎖の切断による分子量低下を防ぎかつ円滑に反応を進行させるには、用いる触媒の種類および濃度、共重合体の溶液濃度、分子量などにより適宜決定される適切な温度、水素圧により水素化反応を行うことが好ましい。
【0013】
触媒には公知の触媒を使用することができる。具体的にはニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウムなどの金属、または該金属の酸化物、塩、錯体などの化合物をカーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土等の多孔性担体に担持した固体触媒が挙げられる。これらのなかでもニッケル、パラジウム、白金をカーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土に担持したものが好ましく用いられる。担持量としては0.1〜30wt%が好ましい。
【0014】
また水素化反応率は芳香環の70%以上97%未満以下であることが好ましく、さらに好ましくは75%以上95%未満、特に好ましくは80%以上90%未満である。70%未満の場合には樹脂が白濁して透明性が低下したり、ガラス転移温度の向上などの性能向上効果が小さく好ましくない。水素化反応率が97%以上では、必然的に水素化反応の時間を長くしたり、水素圧や反応温度を高くする必要があるため、芳香族ビニルモノマーの構成割合の多い本発明における共重合体では、水素化反応前後で重量平均分子量の低下が起こり、機械物性が低下するので好ましくない。水素化反応前後で重量平均分子量の低下の度合いをGPCを用いたポリスチレン換算の分子量測定で比較することは、樹脂の屈折率が異なってくること、溶離中でのポリマーの凝集形態によって見かけの分子量に差が出てくることなど問題はあるが、水素化反応前後で30%〜50%もの重量平均分子量の低下が観測される。
【0015】
本発明の熱可塑性透明樹脂は、可視光領域の光線を良好に透過するため、外観は透明である。3.2mm厚の成型品の全光線透過率は90%以上であることが好ましい。成型品表面の反射による損失が免れないため、この全光線透過率の上限は屈折率に依存するが、光学材料として使用される場合にはさらに高度な透明性が要求される場合があり、さらに好ましくは91%以上、最も好ましくは92%以上である。
【0016】
本発明の熱可塑性透明樹脂は、吸水率が低いため、寸法安定性に優れた物品を製造することができる。極性基を多く含む樹脂は吸水率が高く、A/Bが小さいものはエステル基の数が少ないため、より低吸水である。具体的に飽和吸水率は0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下で有ることがより好ましい。
【0017】
本発明の熱可塑性透明樹脂を含む光学材料組成物は透明性、耐熱性、機械物性のバランスが優れているうえ、吸水率が低い。この光学材料組成物を用いて射出成形や押出成形することで、寸法安定性に特に優れた光学物品を製造することができる。具体的な用途としては、各種導光板や導光体、光ファイバー、ディスプレイ前面パネル、プラスチックレンズ、プリズム、プラスチックレンズ基板、光学フィルター、光学フィルム、光記録媒体基盤などをあげることができる。
【0018】
本発明の熱可塑性透明樹脂は酸化防止剤などを配合しない状態であっても、高い耐熱分解性を有しているが、酸化分解に対しては適当な酸化防止剤を配合することにより、耐熱分解性の性能を向上させることができる。酸化防止剤としては公知のものを使用することができるが、具体的にはヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤などが挙げられ、これを単独または併用して用いると良い。添加量は樹脂に対して50〜10000ppm程度が好ましい。
【0019】
また、必要に応じて本発明の熱可塑性透明樹脂のバランスを損なわない程度に他の添加剤たとえば帯電防止剤、顔料や染料などの着色剤、UV吸収剤、離型剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、防菌剤などを配合しても良い。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によりその範囲を限定されるものではない。なお、熱可塑性透明樹脂の評価方法は次の通りである。
【0021】
(1)共重合体中の構成単位のモル比算出はH―NMR測定(400MHz)により行った。
(2)樹脂の水素化反応率は水素化反応前後のUVスペクトル測定における260nmの吸光度の減少率で評価した。
(3)重量平均分子量は、東ソー製GPC8020シリーズを用い、THFを溶離液として示差屈折率検出計を用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた。
(4)全光線透過率は、日本電色工業製色度・濁度測定器COH−300Aを用いて、3.2mm厚の平板を透過法で測定した。
(5)飽和吸水率には射出成形によって得られた50φ、3.2mm厚の円盤の試験片を用いた。重量変化がなくなるまで80℃の熱風乾燥機で乾燥させ、乾燥重量とし、常温の蒸留水に浸漬させ飽和した重量を吸水重量として、以下の式で計算した。
(飽和吸水率)=[(吸水重量)―(乾燥重量)]/(乾燥重量)×100
【0022】
<製造例1>
モノマー成分としてメタクリル酸メチル20.4モル%とスチレン79.4モル%を、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタンを0.17モル%、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを4.2×10−3モル%の濃度となるように配合したモノマー組成物をヘリカルリボン翼付き10リットル完全混合槽に1kg/時間で連続的にフィードし、平均滞留時間2.5時間、重合温度150℃で連続重合を行った。
【0023】
重合槽液面が一定となるように、底部から反応液をギヤポンプで抜き出し、重合液を150℃に維持しながら、ベント口を備えた脱揮押出機に導入して揮発分を脱揮し、ストランドを切断してペレットとした(樹脂A)。このとき共重合体中の構成モノマー単位のモル比(A/B)は0.25、重量平均分子量は22.3万であった。
【0024】
<実施例1>
上記、樹脂Aをジオキサンに溶解し、10wt%ジオキサン溶液を調製した。1000mLオートクレーブ装置に10wt%ジオキサン溶液を500重量部、10wt%Pd/C(NEケムキャット社製)を1重量部仕込み、水素圧10MPaで200℃、5時間保持して水素化反応した。フィルターにより触媒を除去した後、ジオキサンを加熱留去して反応液を50wt%まで濃縮、トルエンで再び10wt%まで希釈することを繰り返して溶媒置換し、50wt%トルエン溶液を得た。これを再びベント口を備えた脱揮押出機に導入して揮発分を脱揮、ストランドを切断してペレットを得た(樹脂A1)。水素化反応率は95%であった。重量平均分子量を評価した。結果を表1に示す。
樹脂A1を用いて射出成形機(ファナック製AUTOSHOT100B)により、シリンダ温度260℃で50φ、3.2mm厚さの円盤を作製し、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表1に示す。
【0025】
<実施例2>
上記、樹脂Aの水素化反応の時間を短縮させた以外は実施例1と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率75%、樹脂A2)を得た。樹脂A2を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
<比較例1>
上記、樹脂Aの水素化反応の時間を延長させた以外は実施例1と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率100%、樹脂A3)を得た。樹脂A3を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表2に示す。
【0027】
<比較例2>
上記、樹脂Aの水素化反応の時間を短縮させた以外は実施例1と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率65%、樹脂A4)を得た。樹脂A4を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表2に示す。
【0028】
<製造例2>
モノマー成分としてメタクリル酸メチル30モル%とアクリル酸メチル6モル%、スチレン64モル%を用いた以外は製造例1と同様にして樹脂を合成した(樹脂B)。共重合体中の構成モノマー単位のモル比(A/B)は0.5、重量平均分子量は17.4万であった。
【0029】
<実施例3>
上記、樹脂Bを用いた以外は実施例1と同様にして、水素化反応してペレットを得た(樹脂B1)。水素化反応率は96%であった。樹脂B1を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表1に示す。
【0030】
<実施例4>
上記、樹脂Bの水素化反応の時間を短縮させた以外は実施例3と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率75%、樹脂B2)を得た。樹脂B2を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
<比較例3>
上記、樹脂Bの水素化反応の時間を延長させた以外は実施例3と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率98%、樹脂B3)を得た。樹脂B3を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表2に示す。
【0032】
<比較例4>
上記、樹脂Bの水素化反応の時間を短縮させた以外は実施例3と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率62%、樹脂B4)を得た。樹脂B4を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表2に示す。
【0033】
<製造例3>
モノマー成分としてメタクリル酸メチル48モル%、アクリル酸ブチル4.8モル%とスチレン47.2モル%を用いた以外は製造例1と同様にして樹脂を合成した(樹脂C)。共重合体中の構成モノマー単位のモル比(A/B)は0.9、重量平均分子量は19.3万であった。
【0034】
<実施例5>
上記、樹脂Cを用いた以外は実施例1と同様にして、水素化反応してペレットを得た(樹脂C1)。水素化反応率は93%であった。樹脂C1を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表1に示す。
【0035】
<実施例6>
上記、樹脂Cの水素化反応の時間を短縮させた以外は実施例5と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率72%、樹脂C2)を得た。樹脂C2を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表1に示す。
【0036】
<比較例5>
上記、樹脂Cの水素化反応の時間を延長させた以外は実施例5と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率100%、樹脂C3)を得た。樹脂C3を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表2に示す。
【0037】
<比較例6>
上記、樹脂Cの水素化反応の時間を短縮させた以外は実施例5と同様にして、水素化反応率の異なるペレット(水素化反応率65%、樹脂C4)を得た。樹脂C4を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表2に示す。
【0038】
<製造例4>
モノマー成分としてメタクリル酸メチル59.9モル%、とスチレン39.9モル%を用いた以外は製造例1と同様にして樹脂を合成した(樹脂D)。共重合体中の構成モノマー単位のモル比(A/B)は1.5、重量平均分子量は16.3万であった。
【0039】
<比較例7>
上記、樹脂Dを用いた以外は実施例1と同様にして、水素化反応してペレットを得た(樹脂D1)。水素化反応率は96%であった。樹脂D1を用い、実施例1と同様にして、重量平均分子量、全光線透過率、飽和吸水率を評価した。結果を表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られる共重合体の構成単位において芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が0.25以上1.0未満である共重合体の芳香環の70%以上97%未満を水素化反応することによって得られる熱可塑性透明樹脂。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーがメタクリル酸メチル80〜100モル%およびアクリル酸アルキル0〜20モル%からなり、芳香族ビニルモノマーがスチレンであるモノマー組成物を用いて得られる請求項1に記載の熱可塑性透明樹脂。
【請求項3】
3.2mm光路の全光線透過率が90%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性透明樹脂。
【請求項4】
飽和吸水率が0.5%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性透明樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性透明樹脂を含む光学材料組成物。

【公開番号】特開2006−63127(P2006−63127A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244918(P2004−244918)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】