説明

熱圧着ラベル及びICタグ付き樹脂製容器

【課題】ICチップに損傷を与えることなく、ICタグを含む熱圧着ラベルが樹脂製容器に対して確実に固着される熱圧着ラベル及びICタグ付き樹脂製容器を提供する。
【解決手段】熱圧着ラベル3が熱軟化性樹脂製容器5に密閉固着されたICタグ付き樹脂製容器であって、熱圧着ラベルは、電子的情報が格納されたICチップ12と、ICチップが電気的に接続されるアンテナパターンが形成されている基材14と、を備えて、熱軟化性樹脂製容器と実質的に同じ材質から構成される熱圧着層18が、ICチップ、基材及び熱圧着層の順序で積層され、少なくともICチップが収納可能な形状に加工された凹部56が熱軟化性樹脂製容器に形成されて、少なくともICチップが凹部に収納された状態で、基材の外郭部分よりも外側部分の熱圧着層に対して熱及び圧力を印加することによって、熱圧着ラベルが熱軟化性樹脂製容器に密閉固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品等に関する電子的な情報が格納されたICタグを含む熱圧着ラベル、及び、当該熱圧着ラベルが取り付けられたICタグ付き樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
物品が収納される樹脂製の通い箱やコンテナや段ボール等の樹脂製容器に取り付けて、物品の流通履歴を管理したり、物品の在庫や入出庫状況を管理したりするために、当該物品に関する電子的な情報が格納されたICタグが幅広く使用されている。樹脂製容器に対するICタグの取付には、粘着剤による貼付、又は熱活性タイプの接着剤やホットメルト等による熱溶着等の手法が用いられている。
【0003】
樹脂製容器は耐久性に優れているために、一回限りの使い捨てというよりは、洗浄処理して繰り返し使用することが行われている。粘着剤を用いた取付方法では、樹脂製容器とICタグとの間の接着強度が十分ではないために、ICタグ付き樹脂製容器を洗浄処理したときに、洗浄液等によって粘着剤が侵されて洗浄液等がICタグの内部に滲入することによって、ICチップの損傷が起こってしまうという問題がある。
【0004】
従来の貼付による取付方法では、粘着剤等を介してICタグを樹脂製容器に貼付するものであるために、ICタグを樹脂製容器から容易に剥離することが可能であり、ICタグ内に格納された電子情報が改ざんされる可能性もあるという問題もある。
【0005】
さらに、樹脂製容器の表面にICタグが貼付されているだけなので、樹脂製容器の表面からは、ICタグの厚み相当分だけICタグが盛り上がっている。このような突出は、樹脂製容器の外観的な美観を損なうだけでなく、ICタグに硬質物がぶつかったときにその衝撃でICチップの損傷を引き起こしてしまうという問題もある。
【0006】
さらにまた、ICタグの上にラベルを貼付して、貼付されたラベルによってICタグを覆い隠すことが行われているが、繰り返しの洗浄処理によってラベルが剥離したり、ラベルが経時的に劣化してラベル上の表示が不鮮明になったりするという問題もある。
【0007】
また、従来の熱溶着による取付方法では、樹脂製容器及びICタグの双方に対して異質な樹脂材料を用いて熱溶着しているので、十分な接着強度が得られない。さらに、ホットメルトでは溶着温度が低いので、洗浄時に温水に接すると、ホットメルト剤が軟化して接着強度が低下する。したがって、従来の熱溶着法では、樹脂製容器及びICタグの双方に対して全く異質な熱溶着用樹脂材料が用いられていたので、十分な接着強度が得られていないという問題がある。
【0008】
従来タイプの熱溶着による取付方法としては、熱溶着性を有する樹脂層をICタグと包装材料との間に介在させて、樹脂層を加熱軟化させることによって樹脂層を包装材料に接合させるというものである(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の方法では、加熱された一対の熱溶着治具がICタグに対して全体的に当接して高熱及び押圧力が印加するために、ICタグのICチップがかなりのダメージを受けてしまい、ICチップの損傷を引き起こしてしまうという問題がある。
【0009】
また、従来の熱圧着による取付方法としては、熱可塑性樹脂シートと熱可塑性樹脂シート(フィルム)との間にICタグを挟持した状態で熱圧着するものがある(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の方法も、上記特許文献1の方法と同様に、熱圧着部材がICタグに対して全体的に当接して高熱及び押圧力が印加するために、ICタグのICチップがかなりのダメージを受けてしまい、ICチップの損傷を引き起こしてしまうという問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開2002−236896号公報
【特許文献2】特開2005−263288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、ICチップに損傷を与えることなく、ICタグを含む熱圧着ラベルが樹脂製容器に対して確実に固着される熱圧着ラベル及びICタグ付き樹脂製容器を提供することである。
【課題を解決するための手段及びその作用と効果】
【0012】
上述の技術的課題を解決するために、本発明に係る熱圧着ラベル及びICタグ付き樹脂製容器は、以下の特徴を有する。
【0013】
すなわち、本発明に係る熱圧着ラベルは、
電子的情報が格納されたICチップと、
前記ICチップが電気的に接続されるアンテナパターンが形成されている基材と、を備えて、熱軟化性樹脂製容器に密閉固着される熱圧着ラベルであって、
前記熱軟化性樹脂製容器と実質的に同じ材質から構成される熱圧着層が、ICチップ、基材及び熱圧着層の順序で積層され、
基材の外郭部分よりも外側部分の熱圧着層に対して熱及び圧力を印加することによって、熱軟化性樹脂製容器に密閉固着されることを特徴とする。
【0014】
上記構成の熱圧着ラベルによれば、熱軟化性樹脂製容器と実質的に同じ材質から構成される熱圧着層がICタグの基材の外郭部分よりも外側部分に設けられていて、その外側部分に熱及び圧力を印加して熱軟化性樹脂製容器に密閉固着するというものである。いわゆる、ヒートシールという手法によって熱溶着するものであるが、実質的に同じ材質のもの同士を熱溶着するので接合強度が非常に優れていることに加えて、熱溶着する部分がICタグの基材の外郭部分よりも外側部分というICチップから離れた場所であるので、ICチップが熱的なダメージを受けることを防止することができる。
【0015】
上記のように、熱圧着層を直接的に樹脂製容器に密閉固着させることができるが、熱圧着層の部分が腰を出すために、熱圧着層の上には、耐熱性透明樹脂フィルムがさらに積層されていることが好ましい。
【0016】
ラベルとしての表示特性を熱圧着ラベルに付与するために、熱圧着層と耐熱性透明樹脂フィルムとの間には、表示部を有することが好ましい。
【0017】
熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともに樹脂トレイによって保持されている浅絞りのトレイパックタイプであり、浅絞りのトレイパック部分が樹脂製容器の凹部に収納されている。このように構成することにより、ICチップに衝撃や損傷を与えることなく、ICチップの安定的な動作を確保することができる。
【0018】
熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともに熱収縮樹脂フィルムによって保持されているスキンパックタイプであり、スキンパック部分が樹脂製容器の凹部に収納されている。このように構成することにより、ICチップに衝撃や損傷を与えることなく、ICチップの動作を安定的に維持することができる。
【0019】
熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともにブリスター樹脂シートによって保持されているブリスターパックタイプであり、ブリスターパック部分が樹脂製容器の凹部に収納されている。このように構成することにより、ICチップに衝撃や損傷を与えることなく、ICチップの動作を安定的に維持することができる。
【0020】
樹脂製の通い箱やコンテナや段ボール等の樹脂製容器としては、オレフィン系、特にポリプロピレン系のものがしばしば使用されているので、熱軟化性樹脂製容器及び熱圧着層が、ポリプロピレンから構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の第一実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3を、図1を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3は、シリコンチップからなるICチップ12が基材10上に搭載された構成をしている。ICチップ12には、通い箱やコンテナや段ボール等の樹脂製容器に収納される物品に関する情報(例えば、製造者特定情報、生産管理情報、品番情報、製品特性情報等)、容器に関する情報(例えば、材質情報、洗浄方法や洗浄回数の情報、配送先情報等)といった電子的な情報が格納されている。このようなICチップ12は、半導体集積回路であるICチップ又はさらに集積度のアップしたLSIチップである。
【0023】
基材14は、柔軟性や可撓性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂材料、あるいは紙等から構成されている。
【0024】
基材14のおもて面の上には、不図示のアンテナパターンが形成されている。アンテナパターンの中心側電極端子のそれぞれに対して、ICチップ12の接続端子が電気的に接続されている。使用する電波の波長に応じて様々なアンテナパターンを用いることができる。アンテナパターンは、従来から使用されている銅箔に近い導電性を持った導電性フィラーを含む低抵抗ペーストを用いて、印刷又は転写によって形成される。
【0025】
ICチップ12が搭載された、すなわちアンテナパターンが形成された基材14のおもて面の反対面(裏面)には、フィルム状の熱圧着層18が接着剤を介して貼付されている。ヒートシールとしての熱圧着層18は、基材14よりも大きなサイズに寸法構成されている。したがって、熱圧着層18に貼付された基材14の外郭部分の周囲すなわち外側部分には、熱圧着層18の余白部分19が存在する。余白部分19は、ヒートシール代として、熱軟化性樹脂製容器5との熱圧着のために使用される。
【0026】
フィルム状の熱圧着層18は、熱圧着ラベル3が固着される熱軟化性樹脂製容器5と実質的に同じ材質から構成される。通い箱やコンテナや段ボール等の熱軟化性樹脂製容器5としては、オレフィン系、特にポリプロピレン系のものがしばしば使用されているので、熱圧着層18がポリプロピレンから構成される。また、熱軟化性樹脂製容器5がポリエチレンやポリスチレンやポリカーボネートから構成されることもある。その場合には、熱軟化性樹脂製容器5の材質に応じて、熱圧着層18が、それぞれ、ポリエチレンやポリスチレンやポリカーボネートから構成される。
【0027】
次に、本発明の第二実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3を、図2を参照しながら詳細に説明する。上述した第一実施形態のICタグ10付き熱圧着ラベル3との相違点を中心に説明する。
【0028】
図2に示すように、第二実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3は、第一実施形態のICタグ10付き熱圧着ラベル3の裏面に対して、耐熱性透明樹脂フィルム22が貼付されている。
【0029】
耐熱性透明樹脂フィルム22は、延伸処理された強靱な透明耐熱性フィルムであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド樹脂、硬質な塩化ビニール等からなる。このような耐熱性透明フィルム22のおもて面(ICタグ10の側の面)に対して、印刷インキ24によって所望の表示部(ロゴマークや所有者表示)が形成される。表示部を有する耐熱性透明フィルム22は、ウレタン系のドライラミネート用接着剤を介して熱圧着ラベル3の裏面に貼付される。例えば、厚みが36ミクロンのPET(ポリエチレンテレフタレート)に対して、厚みが40ミクロンの無延伸ポリプロピレン(CPP)のフィルムが、ウレタン系の2液タイプの接着剤やイソシアネート系のアンカー剤を介してドライラミネートされる。また、耐熱性透明フィルム22の裏面に剥離性のある離型層を形成して、物流のときに使用される粘着表示ラベルを繰り返し貼ったり剥がしたりできるようにすることもできる。
【0030】
次に、本発明の第三実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3を、図3を参照しながら詳細に説明する。上述した第二実施形態のICタグ10付き熱圧着ラベル3との相違点を中心に説明する。
【0031】
図3に示すように、第三実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3は、第二実施形態のICタグ10付き熱圧着ラベル3と対比して、ICタグ10と熱圧着層18との間に印刷用紙36が介在されていること、及び、浅絞りのトレイパック38が熱圧着層18に固着されていることが相違している。
【0032】
コート紙(例えば、三菱パールコート 62.5Kg)等の印刷用紙36の裏面に対して印刷インキ34をオフセット印刷やグラビア印刷によって印刷して、所望の図柄や階調写真やロゴマーク等が表示部として形成される。
【0033】
さらに、印刷された印刷用紙36の裏面の上に、熱圧着型接着剤(HS剤)が塗工されている。熱圧着型接着剤(HS剤)として、例えば、大日精化製のセイカダイン(樹脂成分として塩素化PP及びEVAを、溶剤成分として炭化水素及びアルコールを含む。)を用いることができる。もちろん、一般的な接着剤を用いることができる。
【0034】
剥離性のある離型層の形成されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムと、熱圧着層18としての無延伸ポリプロピレン(CPP)のフィルムとが、ウレタン系のドライラミネート用接着剤を介してドライラミネートされてラベル基材が構成される。そして、印刷用紙36とラベル基材の熱圧着層18とは、熱圧着型接着剤(HS剤)を介して、熱プレスによって部分ラミネートされる。
【0035】
浅絞りのトレイパック38は、ポリプロピレン等の樹脂シートからなり、少なくとも印刷用紙36及びICタグ10を収納できるように凹状に成形されている。トレイパック38によって印刷用紙36のおもて面に対してICタグ10が密着して挟持された状態で、トレイパック38の外縁部がラベル基材の熱圧着層18に対して熱圧着される。その結果、接着剤を使用することなく、ICタグ10が印刷用紙36に位置決めされる。したがって、図3に示すように、ICタグ10及び印刷用紙36がトレイパック38で覆われたICタグ10付き熱圧着ラベル3が作成される。
【0036】
次に、本発明の第四実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3を、図4を参照しながら詳細に説明する。上述した第三実施形態のICタグ10付き熱圧着ラベル3との相違点を中心に説明する。
【0037】
図4に示すように、第四実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3は、第三実施形態のICタグ10付き熱圧着ラベル3と対比して、スキンパック方式によってICタグ10及び印刷用紙36が一体化されていることが相違している。
【0038】
熱収縮樹脂フィルム42として、100ミクロン程度のポリエチレン等の樹脂フィルムが使用される。印刷用紙36の上にICタグ10を載置したものを熱収縮樹脂フィルム42で覆った状態で、真空に引きながら加熱することで熱収縮樹脂フィルム42が収縮して熱収縮樹脂フィルム42が印刷用紙36及びICタグ10に密着固定する。その結果、印刷用紙36とICタグ10とが位置決めされる。
【0039】
さらに、本発明の第五実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3として、不図示であるが、ブリスターパックの中にICタグ10等を収納したものとすることができる。
【0040】
すなわち、ブリスターパックとは、樹脂シートを凹状に成形加工したクリアカバーのポケット部にICタグ10を入れて基台部と圧着加工することにより一体的にパッケージしたものである。ブリスターパックの樹脂シートには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニール、ポリスチレン等が用いられ、表示媒体としての基台部には、紙あるいは上記樹脂シートと同じ材質のものが用いられる。したがって、ブリスターパックによって、基台部に対してICタグ10が密着して挟持された状態で、接着剤を使用することなく、ICタグ10が基台部に位置決めされる。そして、ICタグ10を含んだブリスターパックは、フィルム状の熱圧着層18に対して接着剤を介して貼付される。
【0041】
次に、図5及び6を参照しながら、上述したICタグ10を含む熱圧着ラベル3を熱軟化性樹脂製容器5に対して固定したICタグ付き樹脂製容器1、及び、当該固定方法について説明する。
【0042】
通い箱やコンテナや段ボール等の熱軟化性樹脂製容器5は、直方体形状をしていて、オレフィン系、特にポリプロピレン系のものがしばしば使用され、ポリエチレンやポリスチレンやポリカーボネートも使用される。上述したように、熱圧着層18の材質は、熱軟化性樹脂製容器5の材質に合わせて選択され、熱軟化性樹脂製容器5の材質と実質的に同じ材質のものが選択される。
【0043】
少なくともICチップ12を収納することのできる凹部56が、熱軟化性樹脂製容器5の壁面に設けられている。第一実施形態及び第二実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3の場合には、ICチップ12を収納することのできる大きさ及び深さに形成された凹部56が設けられている。第三実施形態乃至第五実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3の場合には、それぞれ、ICチップ12を含むトレイパック部分38やスキンパック部分42やブリスターパック部分を収納することのできる大きさ及び深さに形成された凹部56が設けられている。また、熱圧着ラベル3がラベルとして表示機能を提供する場合には、図5に示すように、視認されやすい場所すなわち外側の側壁面に固定される。逆に、熱圧着ラベル3がラベルとして表示機能を提供しない場合には、様々な場所すなわち側壁面や底壁面の内外に固定される。
【0044】
熱軟化性樹脂製容器5の壁面に設けられた凹部56は、凹部56の周囲で盛り上がることを防止するために、ハーフカット後の熱プレスや機械加工によるザグリ孔という方法で形成される。凹部56に適合した大きさの熱刃あるいはトムソン刃型(ビク刃)を使って凹部56の半分程度の深さまでハーフカット(半抜)したあと、ハーフカット(半抜)した部分を熱プレスすることによって、周囲に盛り上がりの無い凹部56を形成することができる。
【0045】
図6は、第二実施形態に係るICタグ10付き熱圧着ラベル3を熱軟化性樹脂製容器5の外壁面の凹部56に固着した状態を示している。熱軟化性樹脂製容器5の側壁面は、外壁52と内壁54とを備えており、両者は連結部55によって連結されている。側壁面の外壁52には、上述した方法によって、ICタグ10付き熱圧着ラベル3のICチップ12を収納することのできる大きさ及び深さを有する凹部56が形成されている。なお、凹部56は、収納対象のICタグ10やパック部分38,42に応じて形成され、直方体形状や半球形状等とすることができる。
【0046】
ICタグ10付き熱圧着ラベル3のICチップ12が凹部56に収まるように位置決めを行ったあと、ヒートシール代として設けられた熱圧着層18の余白部分19と熱軟化性樹脂製容器5の外壁52とが局部的に熱圧着される。局部的に熱圧着するための熱圧着ヘッド(不図示)は、例えば、中央部が凹状に引っ込んだフランジ形状をしていて、ヒーター及び熱電対によって高精度に温度制御されている。熱圧着層18及び熱軟化性樹脂製容器5の材質に応じて熱圧着の条件が変化するが、それらがポリプロピレンから構成される場合、例えば、温度制御された熱圧着ヘッド温度が180℃、加圧力2kg/cm、接触時間3秒という条件で熱圧着が行われる。その結果、ICタグ10を含む熱圧着ラベル3が熱軟化性樹脂製容器5に対して密閉的に固着されたICタグ付き樹脂製容器1が作製される。
【0047】
このようにして作製されたICタグ付き樹脂製容器1では、ICチップ12やパック部分38,42が熱軟化性樹脂製容器5の外壁52から突出することなく面一になっているので、たとえ外力や衝撃が熱軟化性樹脂製容器5の側壁面に印加されても、ICチップ12への損傷を防止することができる。
【0048】
熱圧着層18の材質と熱軟化性樹脂製容器5の材質とが実質的に同じであり、同じ材質のもの同士を熱溶着(ヒートシール)するので接合強度が非常に優れている。したがって、熱溶着によって、ICタグ10付き熱圧着ラベル3と熱軟化性樹脂製容器5とが強固に密閉固着されているので、洗浄処理時の洗浄液等の滲入に起因したICチップ12の損傷を防止することができる。したがって、樹脂製容器5を繰り返し洗浄してリターナブルに使用することができるので、樹脂製容器5の経済性が向上する。
【0049】
熱溶着される部分が、ICタグ10の基材14の外郭部分よりも外側の余白部分19であるので、熱溶着の際に、ICチップ12が熱的なダメージを受けることが防止され、ICタグ10における高い情報保持性を確保することができる。
【0050】
また、耐熱性透明フィルム22の表面には剥離性のある離型層が形成されているので、物流のときに使用される粘着表示ラベルを繰り返し貼付しても、ラベルの一部分が残存してしまって耐熱性透明フィルム22の表面が汚れてしまうことが起こらなくなる。
【0051】
なお、本願発明において、熱溶着とは、ヒータからの熱と圧力とを印加することによって樹脂を溶かして接着させることだけに限定されるものではなく、加熱方法としては、超音波によって発生した摩擦熱を利用することも含む広い概念である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第一実施形態に係る熱圧着ラベルの断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る熱圧着ラベルの断面図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係る熱圧着ラベルの断面図である。
【図4】本発明の第四実施形態に係る熱圧着ラベルの断面図である。
【図5】本発明に係るICタグ付き樹脂製容器の斜視図である。
【図6】図5に示したICタグ付き樹脂製容器を模式的に説明する断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ICタグ付き樹脂製容器
3 熱圧着ラベル
5 熱軟化性樹脂製容器
10 ICタグ
12 ICチップ
14 基材
18 熱圧着層(シーラント層)
19 余白部分
22 耐熱性透明樹脂フィルム
24 インキ層(表示部)
32 接着層
34 インキ層(表示部)
36 印刷用紙
38 トレイパック(トレイパック部分)
42 熱収縮樹脂フィルム(スキンパック部分)
52 外壁
54 内壁
55 連結部
56 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子的情報が格納されたICチップと、
前記ICチップが電気的に接続されるアンテナパターンが形成されている基材と、を備えて、熱軟化性樹脂製容器に密閉固着される熱圧着ラベルであって、
前記熱軟化性樹脂製容器と実質的に同じ材質から構成される熱圧着層が、ICチップ、基材及び熱圧着層の順序で積層され、
基材の外郭部分よりも外側部分の熱圧着層に対して熱及び圧力を印加することによって、熱軟化性樹脂製容器に密閉固着されることを特徴とする熱圧着ラベル。
【請求項2】
前記熱圧着層の上には、耐熱性透明樹脂フィルムがさらに積層されていることを特徴とする、請求項1記載の熱圧着ラベル。
【請求項3】
前記熱圧着層と前記耐熱性透明樹脂フィルムとの間には、表示部を有することを特徴とする、請求項2記載の熱圧着ラベル。
【請求項4】
前記熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともに樹脂トレイによって保持されている浅絞りのトレイパックタイプであることを特徴とする、請求項1記載の熱圧着ラベル。
【請求項5】
前記熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともに熱収縮樹脂フィルムによって保持されているスキンパックタイプであることを特徴とする、請求項1記載の熱圧着ラベル。
【請求項6】
前記熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともにブリスター樹脂シートによって保持されているブリスターパックタイプであることを特徴とする、請求項1記載の熱圧着ラベル。
【請求項7】
前記熱軟化性樹脂製容器及び熱圧着層が、ポリプロピレンであることを特徴とする、請求項1記載の熱圧着ラベル。
【請求項8】
熱圧着ラベルが熱軟化性樹脂製容器に密閉固着されたICタグ付き樹脂製容器であって、
前記熱圧着ラベルは、
電子的情報が格納されたICチップと、
前記ICチップが電気的に接続されるアンテナパターンが形成されている基材と、を備えて、
前記熱軟化性樹脂製容器と実質的に同じ材質から構成される熱圧着層が、ICチップ、基材及び熱圧着層の順序で積層され、
少なくともICチップが収納可能な形状に加工された凹部が前記熱軟化性樹脂製容器に形成されて、
少なくともICチップが凹部に収納された状態で、基材の外郭部分よりも外側部分の熱圧着層に対して熱及び圧力を印加することによって、熱圧着ラベルが熱軟化性樹脂製容器に密閉固着されていることを特徴とするICタグ付き樹脂製容器。
【請求項9】
前記熱圧着層の上には、耐熱性透明樹脂フィルムがさらに積層されていることを特徴とする、請求項8記載のICタグ付き樹脂製容器。
【請求項10】
前記熱圧着層と前記耐熱性透明樹脂フィルムとの間には、表示部を有することを特徴とする、請求項9記載のICタグ付き樹脂製容器。
【請求項11】
前記熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともに樹脂トレイによって保持されている浅絞りのトレイパックタイプであり、浅絞りのトレイパック部分が樹脂製容器の凹部に収納されていることを特徴とする、請求項8記載のICタグ付き樹脂製容器。
【請求項12】
前記熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともに熱収縮樹脂フィルムによって保持されているスキンパックタイプであり、スキンパック部分が樹脂製容器の凹部に収納されていることを特徴とする、請求項8記載のICタグ付き樹脂製容器。
【請求項13】
前記熱圧着ラベルは、表示部を有する表示媒体とともにブリスター樹脂シートによって保持されているブリスターパックタイプであり、ブリスターパック部分が樹脂製容器の凹部に収納されていることを特徴とする、請求項8記載のICタグ付き樹脂製容器。
【請求項14】
前記熱軟化性樹脂製容器及び熱圧着層が、ポリプロピレンであることを特徴とする、請求項8記載のICタグ付き樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−51885(P2008−51885A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225549(P2006−225549)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(503120999)株式会社テクノリンクス (8)
【Fターム(参考)】