説明

熱型変位素子及びこれを用いた放射検出装置

【課題】変位部に固定した部材が変位するときに、前記部材の傾きの変化を低減する。
【解決手段】基板1に支持された被支持部2は、基板1側から可動電極部7にかけて順次接続された、第1の変位部4の個別変位部4−1,4−2、熱分離部5、第2の変位部6の個別変位部6−1,6−2を有する。個別変位部4−1,6−2は、基板1とは反対側に湾曲し、下側のSiN膜と上側のAl膜との2重膜からなる。個別変位部4−2,6−1は、基板1側に湾曲し、下側のAl膜と上側のSiN膜との2重膜からなる。入射赤外線量が変化しても、可動電極部7は常に基板1と平行のままである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱型赤外線検出装置等の熱型放射検出装置などにおいて用いられる熱型変位素子、及びこれを用いた放射検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば静電容量型の熱型赤外線検出装置や光読み出し型の熱型赤外線検出装置においては、基体と、この基体に支持された被支持部とを備えた熱型変位素子が用いられている(下記特許文献1等)。前記被支持部は、赤外線を受けて熱に変換する赤外線吸収部と、該赤外線吸収部と熱的に結合されその熱に応じて前記基体に対してバイメタルの原理により変位する変位部とを有している。したがって、放射が熱に変換され、その熱に応じて変位部が湾曲して変位する。そして、変位部に生じた変位に応じた所定の変化を得るために用いられる変位読み出し部材が、変位部に固定されている。
【0003】
光読み出し型の熱型赤外線検出装置には、変位部の変位を、変位読み出し部材の傾きとしてではなく、変位読み出し部材の高さとして検出するものもある。このような装置では、例えば、前記変位読み出し部材として、受光した読み出し光の一部のみを反射するハーフミラー部が変位部に固定され、反射部が該ハーフミラー部と対向するように前記基体に対して固定される(特許文献1の図25及び図26)。この場合、ハーフミラー部側から読み出し光を照射すると、反射部からの反射光とハーフミラー部からの反射光とが干渉して干渉光となって戻り、この干渉光の強度はハーフミラー部と反射部との間の間隔に依存するので、入射赤外線量に応じた強度の干渉光が得られる。
【0004】
また、静電容量型の熱型赤外線検出装置の場合には、熱型変位素子の変位部に可動電極部を固定し、この可動電極部と対向するように固定電極部を基体に固定しておき、変位部に生ずる変位による可動電極部の高さ(可動電極部と固定電極部との間の間隔)の変化を両電極部間の静電容量として読み出して、入射赤外線量を検出する。したがって、静電容量型の熱型赤外線検出装置も、変位部の変位を、変位読み出し部材の傾きとしてではなく、変位読み出し部材の高さとして検出する。
【特許文献1】特開2003−75259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の熱型変位素子を用いた赤外線検出装置では、変位読み出し部材の変位として変位読み出し部材の傾きではなく高さを検出するにも拘わらず、入射赤外線量に応じて変位読み出し部材の傾きが変化するように構成されており、この変位読み出し部材の傾きに伴って生ずる変位読み出し部材の高さが検出されていた。したがって、入射赤外線量の変化に対する変位読み出し部材の高さの変化が比較的小さくなり、ひいては、赤外線の検出感度は必ずしも十分ではなかった。また、変位読み出し部材が傾くので、場合によっては、変位読み出し部材が基体に衝突してしまい、赤外線検出のダイナミックレンジが制限されてしまうような事態が生ずる可能性もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、入射する放射量の変化に応じて、変位部に固定した部材が変位するときに、前記部材の傾きの変化を低減することができる熱型変位素子、及び、これを用いた放射検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による熱型変位素子は、基体と、該基体に支持された被支持部とを備えたものである。そして、前記被支持部は、熱抵抗の高い熱分離部と、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、第1及び第2の変位部とを含む。前記第1の変位部及び第2の変位部の各々は、複数の個別変位部を有する。前記第1の変位部の前記複数の個別変位部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有する。前記第2の変位部の前記複数の個別変位部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有する。前記第1の変位部は、前記基体に対して、前記熱分離部を介することなく機械的に連続する。前記放射吸収部及び前記第2の変位部は、前記基体に対して、前記熱分離部及び前記第1の変位部を介して機械的に連続する。前記第2の変位部は、前記放射吸収部と熱的に結合される。前記第1の変位部の前記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変位部は、前記放射吸収部が受ける放射の量が少ない所定の状態で前記基体側に湾曲する。前記第1の変位部の前記複数の個別変位部のうちの他の少なくとも1つの個別変位部は、前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する。前記第2の変位部の前記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変位部は、前記状態で前記基体側に湾曲する。前記第2の変位部の前記複数の個別変位部のうちの他の少なくとも1つの個別変位部は、前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する。なお、前記被支持部は、薄膜で構成してもよい。
【0008】
なお、前記放射は、赤外線のみならず、X線、紫外線等の不可視光や他の種々の放射であってもよい。この点は、後述する各態様についても同様である。
【0009】
本発明の第2の態様による熱型変位素子は、前記第1の態様において、(i)前記第1の変位部の前記複数の個別変位部は、前記第1の変位部の始点部から前記第1の変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、(ii)前記第2の変位部の前記複数の個別変位部は、前記第2の変位部の始点部から前記第2の変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、(iii)前記第1の変位部の始点部から前記第1の変位部の終点部へ向かう向きと、前記第2の変位部の始点部から前記第2の変位部の終点部へ向かう向きとが、実質的に逆であるものである。
【0010】
なお、本明細書において、変位部(又は個別変位部)の始点部とは、基体から機械的に連続するルートにおいて、当該変位部(又は個別変位部)の端部のうち基体に近い側の端部をいう。また、変位部(又は個別変位部)の終点部とは、基体から機械的に連続するルートにおいて、当該変位部(又は個別変位部)の端部のうち基体から遠い側の端部をいう。
【0011】
本発明の第3の態様による熱型変位素子は、前記第1の態様において、(i)前記第1の変位部の前記複数の個別変位部は、前記第1の変位部の始点部から前記第1の変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、(ii)前記第2の変位部の前記複数の個別変位部は、前記第2の変位部の始点部から前記第2の変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、(iii)前記第1の変位部の始点部から前記第1の変位部の終点部へ向かう向きと、前記第2の変位部の始点部から前記第2の変位部の終点部へ向かう向きとが、実質的に同じであるものである。
【0012】
本発明の第4の態様による熱型変位素子は、前記第2又は第3の態様において、(i)前記第1の変位部の前記複数の個別変位部の数及び前記第2の変位部の前記複数の個別変位部の数は、それぞれ2つであり、(ii)前記第1の変位部の前記複数の個別変位部のうちの前記第1の変位部の始点部側の個別変位部、及び、前記第2の変位部の前記複数の個別変位部のうちの前記第2の変位部の終点部側の個別変位部は、前記状態で前記基体とは反対側に湾曲し、(iii)前記第1の変位部の前記複数の個別変位部のうちの前記第1の変位部の終点部側の個別変位部、及び、前記第2の変位部の前記複数の個別変位部のうちの前記第2の変位部の始点部側の個別変位部は、前記状態で前記基体側に湾曲するものである。
【0013】
本発明の第5の態様による熱型変位素子は、前記第4の態様において、前記第1の変位部の前記各個別変位部の始点部から終点部までの長さは互いに実質的に等しく、前記第2の変位部の前記各個別変位部の始点部から終点部までの長さは互いに実質的に等しいものである。
【0014】
本発明の第6の態様による熱型変位素子は、前記第1乃至第5のいずれかの態様において、(i)前記第1の変位部の前記複数の個別変位部に関して、前記状態で前記基体側に湾曲する個別変位部の前記少なくとも2つの層と前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する個別変位部の前記少なくとも2つの層とは、各層を構成する物質同士が同じであるとともに各物質の層の重なり順序が逆であり、(ii)前記第2の変位部の前記複数の個別変位部に関して、前記状態で前記基体側に湾曲する個別変位部の前記少なくとも2つの層と前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する個別変位部の前記少なくとも2つの層とは、各層を構成する物質同士が同じであるとともに各物質の層の重なり順序が逆であるものである。
【0015】
本発明の第7の態様による熱型変位素子は、基体と、該基体に支持された被支持部とを備えたものである。そして、前記被支持部は、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、複数の個別変位部を有し前記放射吸収部と熱的に結合された変位部とを含む。前記複数の個別変位部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有する。前記複数の個別変位部は、前記変位部の始点部から前記変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続される。前記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変位部は、前記放射吸収部が受ける放射の量が少ない所定の状態で前記基体側に湾曲する。前記複数の個別変位部のうちの他の少なくとも1つの個別変位部は、前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する。
【0016】
本発明の第8の態様による放射検出装置は、前記第1乃至第6のいずれかの態様による熱型変位素子と、前記第2の変位部に対して固定された変位読み出し部材であって、前記第2の変位部に生じた変位に応じた所定の変化を得るために用いられる変位読み出し部材とを備えたものである。
【0017】
本発明の第9の態様による放射検出装置は、前記第8の態様において、前記変位読み出し部材は受光した読み出し光の一部のみを反射するハーフミラー部であり、該ハーフミラー部と対向するように前記基体に対して固定された反射部を備えたものである。
【0018】
本発明の第10の態様による放射検出装置は、前記第8の態様において、前記変位読み出し部材は可動電極部であり、該可動電極部と対向するように前記基体に対して固定された固定電極部を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、入射する放射量の変化に応じて、変位部に固定した部材が変位するときに、前記部材の傾きの変化を低減することができる熱型変位素子、及び、これを用いた放射検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による熱型変位素子及び放射検出装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
以下の説明では、放射を赤外線とした例について説明するが、放射を赤外線以外のX線や紫外線やその他の種々の放射としてもよい。
【0022】
[第1の実施の形態]
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態による放射検出装置の単位画素(単位素子)を模式的に示す概略平面図である。図2は図1中のX1−X2線に沿った概略断面図、図3は図1中のX3−X4線に沿った概略断面図、図4は図1中のY1−Y2線に沿った概略断面図である。ただし、図1乃至図4は、本実施の形態による放射検出装置の製造途中において、犠牲層20を除去する前の状態を示している。この犠牲層20は、図2乃至図4では示しているが、図1では省略している。図面には示していないが、図1中のX5−X6線に沿った概略断面図は図3と同様となり、図1中のX7−X8線に沿った概略断面図は図2と同様となる。
【0024】
なお、説明の便宜上、図1に示すように、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を定義する(後述する図についても同様である。)。基板1の面がXY平面と平行となっている。また、Z軸方向のうち矢印の向きを+Z方向又は+Z側、その反対の向きを−Z方向又は−Z側と呼び、X軸方向及びY軸方向についても同様とする。なお、Z軸方向の+側を上側、Z軸方向の−側を下側という場合がある。
【0025】
図5(a)(b)は、本実施の形態による放射検出装置の、犠牲層20を除去した後の完成状態を大幅に簡略化して模式的に示す図であり、図1中のA矢視図に相当している。図5(a)は、常温付近の低温物体を観察している状態(すなわち、当該低温物体からの赤外線iが入射している状態)において、環境温度が常温T0である場合に、熱平衡に達して基板及び素子各部の温度もT0となったときの様子を示している。図5(b)は、環境温度及び基板温度がT0である場合において、かなり温度の高い高温物体を観察している(すなわち、当該高温物体からの赤外線iが入射している)様子を示している。なお、理解を容易にするため、図5において、第1及び第2の変位部4,6の湾曲具合を誇張して示している。この点は、後述する図10、図14及び図18についても同様である。
【0026】
本実施の形態による放射検出装置は、基体としてのシリコン基板1と、基板1に支持された被支持部2と、被支持部2の第2の変位部6に生じた変位に応じた所定の変化を得るために用いられる変位読み出し部材としての、可動電極部7と、可動電極部7と対向するように基板1上に形成されたAl膜等からなる固定電極部8と、を備えている。
【0027】
本実施の形態では、被支持部2は、基板1からZ軸方向(上下方向)に立ち上がった2つの脚部3を介して、基板1上に浮いた状態に支持されている。被支持部2は、2つの第1の変位部4と、熱抵抗の高い2つの熱分離部5と、2つの第2の変位部6と、赤外線iを受けて熱に変換する赤外線吸収部9とを有している。
【0028】
本実施の形態による放射検出装置は、図1中の左右に関して左右対称に構成されており、機械的な構造の安定性を得るために、脚部3、第1の変位部4、熱分離部5及び第2の変位部6からなる組を2つ設けているが、本発明では当該組は1つ以上であればよい。
【0029】
第1の変位部4は、図1に示すように、その+X側の端部(始点部)から−X側の端部(終点部)にかけて−X方向の向きに順次機械的に接続された2つの個別変位部4−1,4−2で構成されている。+X側の個別変位部4−1の+X側の端部(始点部)は脚部3に接続されている。個別変位部4−1の−X側の端部(終点部)は、接続部4aによって−X側の個別変位部4−2の+X側の端部(始点部)に接続されている。個別変位部4−2の−X側の端部(終点部)は、接続部5aによって、熱分離部5の一端部に接続されている。したがって、第1の変位部4は、基板1に対して、熱分離部5を介することなく機械的に連続している。
【0030】
本実施の形態では、個別変位部4−1は、図2に示すように、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった2つの層としての、Z軸方向(上下方向)に互いに重なった下側のSiN膜21及び上側のAl膜22で構成されている。個別変位部4−1は、レジスト等からなる犠牲層20が除去されていない段階では、図1及び図2に示すように、犠牲層20により保持されて湾曲せずに、基板1と平行にX軸方向に真っ直ぐ延びているが、膜21,22の膜厚や製造時の成膜条件等を設定することで、最終的に犠牲層20が除去されると、膜21,22の内部応力によって、常温において図5(a)に示すように、上方(+Z方向、基板1とは反対側)へ湾曲するようになっている。SiN膜21よりAl膜22の方が膨張係数が大きいので、個別変位部4−1は、熱を受けて温度が上昇すると、その温度に応じて、上方への湾曲の度合いが小さくなる。
【0031】
なお、個別変位部4−1を構成する層数や材料は、前述した例に限定されるものではない。この点は、後述する個別変位部4−2、5−1,5−2についても同様である。
【0032】
本実施の形態では、脚部3は、個別変位部4−1を構成しているSiN膜21及びAl膜22がそのまま連続して延びることによって形成されている。基板1における脚部3の下部には、拡散層10が形成されている。Al膜22は、脚部3において、SiN膜21に形成されたコンタクトホールを介して、拡散層10に電気的に接続されている。可動電極部7は、Al膜22及び後述するAl層23,25,26やTi配線層24を経由して、拡散層10に電気的に接続されている。一方、基板1には、固定電極部8の下部に拡散層11が形成され、両者が電気的に接続されている。図面には示していないが、基板1には、拡散層10,11間の静電容量を読み出す公知の読み出し回路が形成されている。
【0033】
個別変位部4−2は、Z軸方向(上下方向)に互いに重なった下側のAl膜23及び上側のSiN膜21(このSiN膜21は、個別変位部4−1からそのまま連続して延びている。)で構成されている。個別変位部4−2は、犠牲層20が除去されていない段階では、図1及び図2に示すように、犠牲層20により保持されて湾曲せずに、基板1と平行にX軸方向に真っ直ぐ延びているが、膜23,21の膜厚や製造時の成膜条件等を設定することで、最終的に犠牲層20が除去されると、膜23,21の内部応力によって、常温において図5(a)に示すように、下方(−Z方向、基板1側)へ湾曲するようになっている。個別変位部4−2は、熱を受けて温度が上昇すると、その温度に応じて、下方への湾曲の度合いが小さくなる。
【0034】
本実施の形態では、個別変位部4−1の始点部から終点部までの長さL1と個別変位部4−2の始点部から終点部までの長さL2とは、実質的に等しくなっている。このように両者が等しいことが好ましいが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではない。また、個別変位部4−1の下側の膜21と個別変位部4−2の上側の膜21の膜厚は互いに実質的に同一とされ、個別変位部4−1の上側の膜22と個別変位部4−2の下側の膜23の膜厚は互いに実質的に同一とされているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0035】
接続部4aは、図2に示すように、個別変位部4−1,4−2からそのまま連続して延びたSiN膜21及びAl膜22,23で構成されている。接続部4aにおいて、SiN膜21に形成されたコンタクトホールを介して、Al膜22とAl膜23とが電気的に接続されている。
【0036】
熱分離部5は、断熱性の高い材料で構成され、本実施の形態では個別変位部4−2からそのまま連続して延びたSiN膜21で構成されている。熱分離部5上には、その断熱性が損なわないように幅狭にされたTi配線層24が形成されている。接続部5aは、個別変位部4−2及び熱分離部5からそのまま連続して延びたSiN膜21及びAl膜23で構成されている。接続部5aにおいて、SiN膜21に形成されたコンタクトホールを介して、Al膜23とTi配線層24とが電気的に接続されている。熱分離部5は、主にX軸方向に延びた後にややY軸方向に延びた後に再びX方向に延びるJ字状に構成されている。
【0037】
第2の変位部6は、図1に示すように、その−X側の端部(始点部)から+X側の端部(終点部)にかけて+X方向の向きに順次機械的に接続された2つの個別変位部6−1,6−2で構成されている。−X側の個別変位部6−1の−X側の端部(始点部)は、接続部5bによって、熱分離部5の他方端部に接続されている。個別変位部6−1の+X側の端部(終点部)は、接続部6aによって+X側の個別変位部6−2の−X側の端部(始点部)に接続されている。個別変位部6−2の+X側の端部(終点部)は、接続部7aによって、可動電極部7に接続されている。したがって、第2の変位部6は、基板1に対して、熱分離部5及び第1の変位部4を介して機械的に連続している。
【0038】
個別変位部6−1は、図3に示すように、Z軸方向(上下方向)に互いに重なった下側のAl膜25及び上側のSiN膜21(このSiN膜21は、熱分離部5からそのまま連続して延びている。)で構成されている。個別変位部6−1は、犠牲層20が除去されていない段階では、図1及び図3に示すように、犠牲層20により保持されて湾曲せずに、基板1と平行にX軸方向に真っ直ぐ延びているが、膜25,21の膜厚や製造時の成膜条件等を設定することで、最終的に犠牲層20が除去されると、膜25,21の内部応力によって、常温において図5(a)に示すように、下方(−Z方向、基板1側)へ湾曲するようになっている。個別変位部6−1は、熱を受けて温度が上昇すると、その温度に応じて、下方への湾曲の度合いが減る。
【0039】
本実施の形態では、個別変位部6−1の始点部から終点部までの長さL3と個別変位部6−2の始点部から終点部までの長さL4とは、実質的に等しくなっている。このように両者が等しいことが好ましいが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではない。また、個別変位部6−1の上側の膜21と個別変位部6−2の下側の膜21の膜厚は互いに実質的に同一とされ、個別変位部6−1の下側の膜25と個別変位部6−2の上側の膜26の膜厚は互いに実質的に同一とされているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0040】
接続部6aは、図3に示すように、個別変位部6−1,6−2からそのまま連続して延びたSiN膜21及びAl膜25,26で構成されている。接続部6aにおいて、SiN膜21に形成されたコンタクトホールを介して、Al膜25とAl膜26とが電気的に接続されている。
【0041】
接続部5bは、熱分離部5及び個別変位部6−1からそのまま連続して延びたSiN膜21及びAl膜25で構成されている。接続部5bにおいて、SiN膜21に形成されたコンタクトホールを介して、Al膜25とTi配線層24とが電気的に接続されている。
【0042】
個別変位部6−2は、図3に示すように、Z軸方向(上下方向)に互いに重なった下側のSiN膜21(このSiN膜21は、個別変位部6−1からそのまま連続して延びている。)及び上側のAl膜26で構成されている。個別変位部6−2は、犠牲層20が除去されていない段階では、図1及び図3に示すように、犠牲層20により保持されて湾曲せずに、基板1と平行にX軸方向に真っ直ぐ延びているが、膜26,21の膜厚や製造時の成膜条件等を設定することで、最終的に犠牲層20が除去されると、膜26,21の内部応力によって、常温において図5(a)に示すように、上方(+Z方向、基板1とは反対側)へ湾曲するようになっている。個別変位部6−2は、熱を受けて温度が上昇すると、その温度に応じて、上方への湾曲の度合いが減る。
【0043】
可動電極部7は、個別変位部6−2から接続部7aを介してそのまま連続して延びたAl膜26で構成されている。赤外線吸収部9は、金黒等の赤外線吸収膜27で構成され、可動電極部7の上面に形成されている。赤外線吸収部9は、可動電極部7及び接続部7aを介して第2の変位部6に熱的に結合されている。これにより、赤外線吸収部9は、基板1に対して、熱分離部5及び第1の変位部4を介して機械的に連続している。もっとも、赤外線吸収部9を可動電極部7の上面に形成する代わりに、例えば、第2の変位部6を構成する膜を赤外線吸収部として兼用してもよいし、第2の変位部6に赤外線吸収部として金黒等の赤外線吸収膜を形成してもよい。
【0044】
接続部7aは、図3に示すように、個別変位部6−2、可動電極部7及び赤外線吸収部9からそのまま連続して延びたAl膜26及び赤外線吸収膜27で構成されている。
【0045】
先の説明からわかるように、第1の変位部4の始点部から終点部へ向かう向きは−X方向の向きとなっているのに対し、第2の変位部6の始点部から終点部へ向かう向きは+X方向の向きとなっており、両者は逆向きである。
【0046】
なお、図面には示していないが、個別変位部4−1,4−2,6−1,6−2以外の構成要素(例えば、可動電極部7、熱分離部5など)についてはそれぞれ、平面部と、当該平面部の周辺部分の少なくとも一部に渡って立ち上がるか又は立ち下がるように形成された立ち上がり部又は立ち下がり部とを有するように、構成しておくことが、好ましい。この場合、平面部が立ち上がり部又は立ち下がり部により補強され、所望の強度を確保しつつ、膜厚を薄くすることができ、好ましい。この点は、後述する各実施の形態についても同様である。
【0047】
図面には示していないが、本実施の形態による放射検出装置では、前述した図1等に示す単位画素が基板1上に1次元状又は2次元状に配置されている。この点は、後述する各実施の形態についても同様である。
【0048】
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、基板1、脚部3、被支持部2、可動電極部7及び赤外線吸収部9が赤外線により生ずる熱に応じて変位を発生する熱型変位素子を構成しており、各単位画素においてこの熱型変位素子の被支持部2が1つずつ用いられている。
【0049】
本実施の形態による放射検出装置は、例えば、膜の形成及びパターニング、エッチング、犠牲層20の形成・除去などの半導体製造技術を利用して、製造することができる。最終的には、犠牲層20が除去され、常温において図5(a)に示すような状態となる。
【0050】
本実施の形態では、図5に示すように、観察対象の物体からの赤外線iが上方から入射される。このとき、パッケージ等に設けた赤外線遮光部(図示せず)により、観察対象の物体からの赤外線iが第1の変位部4(特に、赤外線吸収性を有するSiN膜21が赤外線i入射側となる個別変位部4−2)に入射しないように遮光することが、好ましい。もっとも、このような遮光は必ずしも必要ではない。
【0051】
本実施の形態によれば、第1及び第2の変位部4,6が前述したように個別変位部4−1,4−2,6−1,6−2で構成されているので、常温T0付近の低温物体を観察している状態において、環境温度が常温T0である場合に、熱平衡に達して基板及び素子各部の温度もT0となったときには、図5(a)に示すようになる。すなわち、第1の変位部4は全体としてS字状をなし、熱分離部5が基板1に対して平行となる。また、第2の変位部6も全体としてS字状をなすため、可動電極部7も基板1に対して平行となる。
【0052】
そして、環境温度及び基板温度がT0である場合において、かなり温度の高い高温物体を観察すると、高温物体からの赤外線iが赤外線吸収部9により熱に変換され、この熱により第2の変位部6の個別変位部6−1,6−2の湾曲の度合いが小さくなる。このとき、個別変位部6−1の上方への湾曲の度合いが小さくなるのと、個別変位部6−2の下方への湾曲の度合いが小さくなるのとが、同程度である。また、赤外線吸収部9により変換された熱は、熱分離部5によって、第1の変位部4へは比較的短い時間ではほとんど伝導されないため、第2の変位部4の個別変位部4−1,4−2はほとんど変動しない。したがって、可動電極部7は基板1と平行のままその高さ(Z方向位置)が上方へ移動し、可動電極部7と固定電極部8との間の間隔が広がり、その間隔は入射した赤外線iの量に応じたものとなる。この間隔の変化が両電極部7,8間の静電容量の変化として前記読み出し回路により読み出される。単位画素が1次元状又は2次元状に配置されており、前記読み出し回路から赤外線画像信号が得られるようになっている。
【0053】
また、環境温度がT0からΔTだけ変化する場合を考えると、その変化に対して素子各部が熱平衡状態に達すれば、第1の個別変位部4の温度がΔTだけ変化するのみならず、熱分離部5を介して第2の個別変位部6の温度もΔTだけ変化する。これは、環境温度の変化を考える場合、ΔTが熱分離部5を介して第2の個別変位部に伝導するのに十分な時間が存するものと考えることができるためである。第1の変位部4の温度がΔTだけ変化するとその分だけ熱分離部5の高さは高くなる(又は低くなる)が、第2の変位部6の温度もΔTだけ変化して、その分だけ熱分離部5と可動電極部7との間のZ軸方向の距離は縮まる(又は広がる)ので、両者が相殺されて可動電極部7の高さ(Z方向位置)は変化しない。したがって、本実施の形態によれば、環境温度変化の影響を排除した赤外線検出が可能である。そして、このように環境温度がΔTだけ変化した場合にも、熱分離部5及び可動電極部7は、基板1と平行のままである。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、可動電極部7を常に平行にすることができる。また、図5からわかるように、本実施の形態では、可動電極部7と固定電極部8との間隔は、観察対象の物体の温度が常温付近の低い場合には狭く、その温度が高くなる(すなわち、入射赤外線量が増える)ほど広がる。これらにより得られる利点について、比較例を参照して説明する。
【0055】
図6は、比較例による放射検出装置の単位画素(単位素子)を模式的に示す概略平面図である。図7は図6中のX9−X10線に沿った概略断面図、図8は図6中のX11−X12線に沿った概略断面図、図9は図6中のY9−Y10線に沿った概略断面図である。ただし、図6乃至図9は、この比較例による放射検出装置の製造途中において、犠牲層20を除去する前の状態を示している。この犠牲層20は、図7乃至図9では示しているが、図6では省略している。図面には示していないが、図6中のX13−X14線に沿った概略断面図は図8と同様となり、図6中のX15−X16線に沿った概略断面図は図7と同様となる。
【0056】
図10(a)(b)は、この比較例による放射検出装置の、犠牲層20を除去した後の完成状態を大幅に簡略化して模式的に示す図であり、図6中のB矢視図に相当している。図10(a)は、常温付近の低温物体を観察している状態において、環境温度が常温T0である場合に、熱平衡に達して基板及び素子各部の温度もT0となったときの様子を示している。図10(b)は、環境温度及び基板温度がT0である場合において、かなり温度の高い高温物体を観察している様子を示している。
【0057】
図6乃至図10において、図1乃至図5中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0058】
この比較例は、特許文献1に開示された従来技術に相当するものである。この比較例が本実施の形態と異なる所は、主に、個別変位部4−2,6−1が除去されて、第1の変位部4が個別変位部4−1のみで構成され、第2の変位部6が個別変位部6−2のみで構成されている点である。個別変位部4−1は下側のSiN膜21と上側のAl膜22で構成され、個別変位部6−2は下側のSiN膜32と上側のAl膜26で構成されている。なお、熱分離部5はSiN膜32で構成されている。個別変位部4−1の始点部から終点部までの長さL11と個別変位部6−2の始点部から終点部までの長さL12とは、実質的に等しくなっている。最終的に犠牲層20が除去されると、個別変位部4−1,6−2は両方とも、膜21,22の内部応力又は膜32,26の応力によって、常温において図10(a)に示すように、上方(+Z方向)へ湾曲するようになっている。個別変位部4−1,6−2は、熱を受けて温度が上昇すると、その温度に応じて、上方への湾曲の度合いが小さくなる。
【0059】
この比較例では、常温付近の低温物体を観察すると、図10(a)に示すように、個別変位部4−1、そのときの素子温度(基板1の温度)に応じて上方に湾曲する。一方、個別変位部6−2は、そのときの素子温度(基板1の温度)及び入射赤外線iによる温度に応じて上方に湾曲する。図10(a)では、低温物体を観察しているため、個別変位部4−1と個別変位部6−2の温度はほぼ等しい。そのため、個別変位部4−1と個別変位部6−2の湾曲度もほぼ等しくなり、可動電極部7は基板1上に形成された固定電極8とほぼ平行な状態になる。
【0060】
そして、この比較例では、かなり温度の高い高温物体を観察すると、図10(b)に示すように、個別変位部4−1は、そのときの素子温度(基板1の温度)に応じて上方に湾曲する。一方、センサBMは、そのときの素子温度(基板1の温度)及び入射赤外線iによる温度に応じて上方に湾曲する。図10(b)では、高温物体を観察しているため、個別変位部4−1の温度に対して個別変位部6−2の温度はかなり高くなる。そのため、個別変位部4−1の湾曲度に対して個別変位部6−2の湾曲度はかなり小さくなる。この結果、可動電極部7は、図10(b)に示すように傾き、場合によっては、図10(b)中のC点付近で固定電極部8と接触してしまう。
【0061】
この比較例では、入射赤外線iの量が大きくて可動電極部7が図10(b)に示すように接触するほど傾いても、そのときに得られる電極部7,8間の静電容量は、可動電極部7を固定電極部8と平行にした状態で両電極部7,8の間隔を図10(a)に示す間隔d1よりわずかに狭めたときに得られる静電容量と同じ程度にすぎない。換言すれば、図10(b)の場合の電極部7,8の実効的な間隔は、図10(a)に示す間隔d1よりわずかに小さいものとなるにすぎない。よって、入射赤外線iの量の変化に対して、両電極部7,8間の静電容量の変化が小さくなり、入射赤外線iの検出感度が低い。
【0062】
また、この比較例において、可動電極部7が固定電極部8に接触するのを避けるためには、個別変位部6−2の始点部(すなわち、図10中の接続部5b)の位置を図6中の−X方向(犠牲層20を除去した最終状態である図10では、矢印Dの方向)へずらせばよい。しかし、このようにすると、図6(a)中の間隔d1は大きくなってしまう。電極部7,8間の静電容量は間隔d1に反比例するので、間隔d1が大きくなることで、静電容量の変化が小さくなってしまい、その結果、入射赤外線iの検出感度が低くなってしまう。
【0063】
さらに、この比較例では、先の説明からわかるように、観察対象の物体の温度が高いほど、両電極部7,8の実効的な間隔が狭くなる。よって、観察対象物体の温度が高いほど、静電容量の変化が大きくなり検出感度が高くなる。しかし、通常は、常温付近にて使用頻度が多いので、比較例とは逆に、常温付近では検出感度が高く、高温になるに従って検出感度が低くなることが要求される。
【0064】
これに対し、本実施の形態では、図5に示すように、常に、可動電極部7を固定電極部8と平行にしたまま、両電極部7,8の間隔が、観察対象の物体の温度(すなわち、入射赤外線iの検出感度の量)に応じて変化する。したがって、本実施の形態によれば、前記比較例に比べて、入射赤外線iの量の変化に対する両電極部7,8の間隔の変化が大きくなり、赤外線iの検出感度が高まる。
【0065】
また、本実施の形態では、可動電極部7が固定電極部8と平行のままであるので、図5(a)に示すように、可動電極部7が固定電極部8に衝突することなく、可動電極部7を固定電極部8に近づけて両電極部7,8の間隔を非常に狭めることができる。したがって、電極部7,8間の静電容量は両電極部7,8の間隔に反比例するので、その間隔が小さくなることで、静電容量の変化が大きくなり、この点からも、入射赤外線iの検出感度を高めることができる。
【0066】
さらに、本実施の形態では、図5に示すように、前記比較例とは逆に、可動電極部7と固定電極部8との間隔は、観察対象の物体の温度が常温付近の低い場合には狭く、その温度が高くなるほど広がる。よって、最も使用頻度の多い常温付近にて感度を高くすることができるので、好ましい。
【0067】
なお、本実施の形態では、図5からわかるように、可動電極部7は、観察対象の物体の温度や環境温度等に応じて、X軸方向に移動する。そのため、このように可動電極部7がX軸方向に移動しても、Z軸方向から見た平面視で可動電極部7が固定電極部8からはみ出さないように、余裕を持って固定電極部8の寸法及び配置を設定することが好ましい。
【0068】
[第2の実施の形態]
【0069】
図11は、本発明の第2の実施の形態による放射検出装置の単位画素(単位素子)を模式的に示す概略平面図である。図12は図11中のX17−X18線に沿った概略断面図、図13は図11中のY17−Y18線に沿った概略断面図である。ただし、図11乃至図13は、本実施の形態による放射検出装置の製造途中において、犠牲層20を除去する前の状態を示している。この犠牲層20は、図12及び図13では示しているが、図11では省略している。図面には示していないが、図11中のX19−X20線に沿った概略断面図は図12と同様となる。
【0070】
図14(a)(b)は、本実施の形態による放射検出装置の、犠牲層20を除去した後の完成状態を大幅に簡略化して模式的に示す図であり、図11中のE矢視図に相当している。図14(a)は、常温付近の低温物体を観察している状態において、環境温度が常温T0である場合に、熱平衡に達して基板及び素子各部の温度もT0となったときの様子を示している。図14(b)は、環境温度及び基板温度がT0である場合において、かなり温度の高い高温物体を観察している様子を示している。
【0071】
図11乃至図14において、図1乃至図5中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0072】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、前記第1の実施の形態では熱分離部5がJ字状に構成されていたのに対し、本実施の形態では、熱分離部5が一直線状に構成され、個別変位部4−1,4−2、熱分離部5及び個別変位部6−1,6−2がX軸方向に直線状に配列されている点のみである。この配列によって、第1の変位部4の始点部から終点部へ向かう向きも、第2の変位部6の始点部から終点部へ向かう向きも、同じく−X方向となっている。
【0073】
図14から理解できるように、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と全く同じ利点を得ることができる。
【0074】
[第3の実施の形態]
【0075】
図15は、本発明の第3の実施の形態による放射検出装置の単位画素(単位素子)を模式的に示す概略平面図である。図16は図15中のX21−X22線に沿った概略断面図、図17は図15中のY21−Y22線に沿った概略断面図である。ただし、図15乃至図17は、本実施の形態による放射検出装置の製造途中において、犠牲層20を除去する前の状態を示している。この犠牲層20は、図16及び図17では示しているが、図15では省略している。図面には示していないが、図15中のX23−X24線に沿った概略断面図は図16と同様となる。
【0076】
図18(a)(b)は、本実施の形態による放射検出装置の、犠牲層20を除去した後の完成状態を大幅に簡略化して模式的に示す図であり、図15中のF矢視図に相当している。図18(a)は、常温付近の低温物体を観察している状態において、環境温度が常温T0である場合に、熱平衡に達して基板及び素子各部の温度もT0となったときの様子を示している。図18(b)は、環境温度及び基板温度がT0である場合において、かなり温度の高い高温物体を観察している様子を示している。
【0077】
図15乃至図18において、図1乃至図5中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0078】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、脚部3がSiN膜51で構成されかつX軸方向に延びた水平部3aを有することで熱抵抗が高められている点と、脚部3に幅狭のTi配線層52が形成されている点と、図1中の第1及び第2の変位部4,6及び熱分離部5の代わりに、変位部41が設けられている点である。
【0079】
変位部41は、図15及び図16に示すように、その−X側の端部(始点部)から+X側の端部(終点部)にかけて+X方向の向きに順次機械的に接続された2つの個別変位部41−1,41−2で構成されている。
【0080】
個別変位部41−1の−X側の端部(始点部)は脚部3の水平部3aの+X側の端部に、接続部41aによって接続されている。個別変位部41−1の+X側の端部(終点部)は、接続部41baによって+X側の個別変位部41−2の−X側の端部(始点部)に接続されている。個別変位部41−2の+X側の端部(終点部)は、接続部7aによって、可動電極部7に接続されている。
【0081】
個別変位部41−1は、図16に示すように、互いに重なった下側のSiN膜53と上側のAl膜54で構成されている。個別変位部41−1は、犠牲層20が除去されていない段階では、図16に示すように、犠牲層20により保持されて湾曲せずに、基板1と平行にX軸方向に真っ直ぐ延びているが、膜53,54の膜厚や製造時の成膜条件等を設定することで、最終的に犠牲層20が除去されると、膜53,54の内部応力によって、常温において図18(a)に示すように、上方(+Z方向、基板1とは反対側)へ湾曲するようになっている。個別変位部41−1は、熱を受けて温度が上昇すると、その温度に応じて、上方への湾曲の度合いが減る。
【0082】
個別変位部41−2は、図16に示すように、互いに重なった下側のAl膜26と上側のSiN膜53で構成されている。個別変位部41−2は、犠牲層20が除去されていない段階では、図16に示すように、犠牲層20により保持されて湾曲せずに、基板1と平行にX軸方向に真っ直ぐ延びているが、膜26,53の膜厚や製造時の成膜条件等を設定することで、最終的に犠牲層20が除去されると、膜26,53の内部応力によって、常温において図18(a)に示すように、下方(−Z方向、基板1側)へ湾曲するようになっている。個別変位部41−2は、熱を受けて温度が上昇すると、その温度に応じて、下方への湾曲の度合いが減る。
【0083】
個別変位部41−1の始点部から終点部までの長さL21と個別変位部41−2始点部から終点部までの長さL22とは、実質的に等しくなっている。
【0084】
本実施の形態によれば、図18から、常に可動電極部7が固定電極部8と平行になることが、理解できる。
【0085】
したがって、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様に、常に可動電極部7が固定電極部8と平行になることにより、入射赤外線iの量の変化に対する両電極部7,8の間隔の変化が大きくなり、赤外線iの検出感度が高まる。
【0086】
ただし、本実施の形態では、環境温度が変化するとそれに応じて可動電極部7の高さも変化してしまう。また、本実施の形態では、可動電極部7と固定電極部8との間隔は、観察対象の物体の温度が高いほど狭まるので、常温付近にて感度を高くすることはできない。
【0087】
[第4の実施の形態]
【0088】
図19は、本発明の第4の実施の形態による放射検出装置の単位画素(単位素子)を模式的に示す概略平面図である。図20は図19中のX25−X26線に沿った概略断面図、図21は図19中のX27−X28線に沿った概略断面図、図22は図19中のY25−Y26線に沿った概略断面図である。ただし、図19乃至図22は、本実施の形態による放射検出装置の製造途中において、犠牲層20を除去する前の状態を示している。この犠牲層20は、図20乃至図22では示しているが、図19では省略している。図面には示していないが、図19中のX29−X30線に沿った概略断面図は図21と同様となり、図19中のX31−X32線に沿った概略断面図は図20と同様となる。
【0089】
図23(a)(b)は、本実施の形態による放射検出装置の、犠牲層20を除去した後の完成状態を大幅に簡略化して模式的に示す図であり、図19中のG矢視図に相当している。図23(a)は、常温付近の低温物体を観察している状態において、環境温度が常温T0である場合に、熱平衡に達して基板及び素子各部の温度もT0となったときの様子を示している。図23(b)は、環境温度及び基板温度がT0である場合において、かなり温度の高い高温物体を観察している様子を示している。
【0090】
図19乃至図23において、図1乃至図5中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0091】
前記第1の実施の形態による放射検出装置は静電容量型であるが、本実施の形態による放射検出装置は、第1の実施の形態による放射検出装置を変形して光読み出し型にしたものである。
【0092】
以下の説明では、読み出し光を可視光とした例について説明するが、本発明では、読み出し光を可視光以外の他の光としてもよい。
【0093】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、以下の点である。本実施の形態では、可動電極部7に代えて、受光した読み出し光jの一部のみを反射するハーフミラー部61が用いられている。また、固定電極部8も設けられていない。ハーフミラー部61は、個別変位部6−2から接続部7aを介してそのまま連続して延びたSiN膜21で構成されている。もっとも、ハーフミラー部61は、例えば、支持部となるシリコン酸化膜と、その上に所望の反射率を得るべく非常に薄くスパッタ法等により被着されたチタンなどの金属とで、構成することができる。SiN膜21は赤外線吸収性を有するので、本実施の形態では、ハーフミラー部61がSiN膜21で構成されていることから、ハーフミラー部61が赤外線吸収部としても兼用されている。また、ハーフミラー部61と対向するように基板1に対して固定された反射部として、基板1の上面自体が用いられている。基板1としてシリコン基板が用いられており、その上面は、可視光に対して反射面となり得る。もっとも、基板1上に反射膜を形成してもよい。
【0094】
本実施の形態では、読み出し光jは上方から入射され、赤外線iは、下方から入射されて、基板1を透過する。シリコン基板1は、赤外線iに対して透明である。
【0095】
本実施の形態では、赤外線iが基板1の下側から入射されるが、この赤外線iを第1の変位部4及び熱分離部5に対して遮蔽する遮蔽部として、Al膜等からなる赤外線遮光膜62が、第1の変位部4及び熱分離部5の下方において基板1上に形成されている。もっとも、赤外線遮光膜62は必ずしも形成しておかなくてもよい。
【0096】
本実施の形態では、光読み出し型であるため、基板1には拡散層10,11や読み出し回路は形成されていない。また、Ti配線層24は除去され、SiN膜21にはコンタクトホールは形成されていない。
【0097】
本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同様に、図23に示すように、入射する赤外線iの量に応じてハーフミラー部61と基板1の上面との間の間隔が変化するが、ハーフミラー部61は常に基板1と平行である。上方から読み出し光jが入射すると、基板1の上面からの反射光とハーフミラー部61からの反射光とが干渉して干渉光となって、上方へ戻る。この干渉光の強度はハーフミラー部61と基板1の上面との間の間隔に依存するので、入射赤外線量に応じた強度の干渉光が得られる。
【0098】
ハーフミラー部61が傾くとすれば、ハーフミラー部61の各部で基板1の上面との間の間隔が異なることから、ハーフミラー部61の各部での干渉光の強度が異なるので、赤外線の検出感度が低下する。これに対し、本実施の形態では、常にハーフミラー部61が基板1と平行であるので、赤外線の検出感度が高まる。
【0099】
ここで、本実施の形態による放射検出装置を用いた映像化装置の一例について説明する。図24は、この映像化装置を示す概略構成図である。図24中、本実施の形態による放射検出装置には、符号100を付している。
【0100】
この映像化装置は、放射検出装置100の他に、読み出し光学系と、撮像手段としての2次元CCD80と、観察対象(目標物体)としての熱源81からの赤外線iを集光して、放射検出装置100の赤外線吸収部としてのハーフミラー部61が分布している面上に、熱源81の赤外線画像を結像させる赤外線用の結像レンズ82とから構成されている。
【0101】
この映像化装置では、前記読み出し光学系は、読み出し光を供給するLD(レーザーダイオード)83と、LD83からの読み出し光を放射検出装置100の全ての画素へ導く第1レンズ系84と、第1レンズ系84と協働して各画素と共役な位置を形成するとともに、第1レンズ系84を通過した後に全ての画素にて反射されて干渉光となった読み出し光の光線束を前記共役な位置に導く第2レンズ系86とから構成されている。前記共役な位置にはCCD80の受光面が配置されており、レンズ系84,86によって全ての画素とCCD80の複数の受光素子とが光学的に共役な関係となっている。
【0102】
LD83は、第1レンズ系84の光軸Oに関して一方の側(図24中の右側)に配置されており、当該一方の側の領域を読み出し光が通過するように読み出し光を供給する。本例では、LD83が第1レンズ系84の第2レンズ系86側の焦点面付近に配置されて、第1レンズ系84を通過した読み出し光が略平行光束となって全ての画素を照射するようになっている。本例では、放射検出装置100は、その基板1の面が光軸Oと直交するように配置されている。
【0103】
図24に示す映像化装置によれば、LD83から出射した読み出し光の光線束91は、第1レンズ系84に入射し、略平行化された光線束92となる。次に、この略平行化された光線束92は、放射検出装置100の全ての画素に、基板1の法線に対してある角度をもって入射する。
【0104】
一方、結像レンズ82によって、熱源81からの赤外線が集光され、放射検出装置100の赤外線吸収部としてのハーフミラー部61が分布している面上に、熱源81の赤外線画像が結像される。これにより、放射検出装置100の各画素の赤外線吸収部としてのハーフミラー部61に赤外線が入射する。この入射赤外線は、ハーフミラー部61と基板1の上面との間の間隔に変換される。
【0105】
全ての画素に入射した光線束92は、干渉光となって光線束93となり、再び第1レンズ系84に今度はLD83の側とは反対の側から入射して集光光束94となり、この集光光束94の集光点に集光した後に、発散光束95となって第2レンズ系86に入射する。第2レンズ系86に入射した発散光束95は、第2レンズ系86により例えば略平行光束96となってCCD80の受光面に入射する。ここで、各画素とCCD80の受光面とはレンズ系84,86によって共役な関係にあるので、CCD80の受光面上の対応する各部位にそれぞれ画素の像が形成され、全体として、全ての画素の分布像である光学像が形成される。各画素の像の強度は各干渉光の干渉強度に依存する。
【0106】
したがって、CCD80の受光面上に形成された読み出し光による光学像は、放射検出装置100に入射した赤外線像を反映したものとなる。この光学像は、CCD80により撮像される。なお、CCD80を用いずに、接眼レンズ等を用いて前記光学像を肉眼で観察してもよい。
【0107】
以上は映像化装置の例であったが、図24において、放射検出装置100として、単一の画素(素子)のみを有する放射検出装置を用い、2次元CCD80に代えて、単一の受光部のみを有する光検出器を用いれば、赤外線のいわゆるポイントセンサとしての検出装置を構成することができる。この点は、前述した各実施の形態についても同様である。
【0108】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0109】
例えば、本発明では、前記第1の実施の形態による放射検出装置を光読み出し型に変形して前記第4の実施の形態による放射検出装置を得たのと同様に、前記第2及び第3の実施の形態による放射検出装置を光読み出し型に変形してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1の実施の形態による放射検出装置の単位画素を模式的に示す概略平面図である。
【図2】図1中のX1−X2線に沿った概略断面図である。
【図3】図1中のX3−X4線に沿った概略断面図である。
【図4】図1中のY1−Y2線に沿った概略断面図である。
【図5】図1中のA矢視図である。
【図6】比較例による放射検出装置の単位画素を模式的に示す概略平面図である。
【図7】図6中のX9−X10線に沿った概略断面図である。
【図8】図6中のX11−X12線に沿った概略断面図である。
【図9】図6中のY9−Y10線に沿った概略断面図である。
【図10】図6中のB矢視図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態による放射検出装置の単位画素を模式的に示す概略平面図である。
【図12】図11中のX17−X18線に沿った概略断面図である。
【図13】図11中のY17−Y18線に沿った概略断面図である。
【図14】図11中のE矢視図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態による放射検出装置の単位画素を模式的に示す概略平面図である。
【図16】図15中のX21−X22線に沿った概略断面図である。
【図17】図15中のY21−Y22線に沿った概略断面図である。
【図18】図15中のF矢視図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態による放射検出装置の単位画素を模式的に示す概略平面図である。
【図20】図19中のX25−X26線に沿った概略断面図である。
【図21】図19中のX27−X28線に沿った概略断面図である。
【図22】図19中のY25−Y26線に沿った概略断面図である。
【図23】図19中のG矢視図である。
【図24】映像化装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0111】
1 基板
2 被支持部
4 第1の変位部
4−1,4−2,6−1,6−2 個別変位部
5 熱分離部
6 第2の変位部
7 可動電極部
8 固定電極部
9 赤外線吸収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体に支持された被支持部とを備え、
前記被支持部は、熱抵抗の高い熱分離部と、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、第1及び第2の変位部とを含み、
前記第1の変位部及び第2の変位部の各々は、複数の個別変位部を有し、
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有し、
前記第2の変位部の前記複数の個別変位部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有し、
前記第1の変位部は、前記基体に対して、前記熱分離部を介することなく機械的に連続し、
前記放射吸収部及び前記第2の変位部は、前記基体に対して、前記熱分離部及び前記第1の変位部を介して機械的に連続し、
前記第2の変位部は前記放射吸収部と熱的に結合され、
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変位部は、前記放射吸収部が受ける放射の量が少ない所定の状態で前記基体側に湾曲し、
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部のうちの他の少なくとも1つの個別変位部は、前記状態で前記基体とは反対側に湾曲し、
前記第2の変位部の前記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変位部は、前記状態で前記基体側に湾曲し、
前記第2の変位部の前記複数の個別変位部のうちの他の少なくとも1つの個別変位部は、前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する、ことを特徴とする熱型変位素子。
【請求項2】
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部は、前記第1の変位部の始点部から前記第1の変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、
前記第2の変位部の前記複数の個別変位部は、前記第2の変位部の始点部から前記第2の変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、
前記第1の変位部の始点部から前記第1の変位部の終点部へ向かう向きと、前記第2の変位部の始点部から前記第2の変位部の終点部へ向かう向きとが、実質的に逆である、ことを特徴とする請求項1記載の熱型変位素子。
【請求項3】
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部は、前記第1の変位部の始点部から前記第1の変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、
前記第2の変位部の前記複数の個別変位部は、前記第2の変位部の始点部から前記第2の変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、
前記第1の変位部の始点部から前記第1の変位部の終点部へ向かう向きと、前記第2の変位部の始点部から前記第2の変位部の終点部へ向かう向きとが、実質的に同じである、ことを特徴とする請求項1記載の熱型変位素子。
【請求項4】
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部の数及び前記第2の変位部の前記複数の個別変位部の数は、それぞれ2つであり、
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部のうちの前記第1の変位部の始点部側の個別変位部、及び、前記第2の変位部の前記複数の個別変位部のうちの前記第2の変位部の終点部側の個別変位部は、前記状態で前記基体とは反対側に湾曲し、
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部のうちの前記第1の変位部の終点部側の個別変位部、及び、前記第2の変位部の前記複数の個別変位部のうちの前記第2の変位部の始点部側の個別変位部は、前記状態で前記基体側に湾曲する、ことを特徴とする請求項2又は3記載の熱型変位素子。
【請求項5】
前記第1の変位部の前記各個別変位部の始点部から終点部までの長さは互いに実質的に等しく、
前記第2の変位部の前記各個別変位部の始点部から終点部までの長さは互いに実質的に等しい、ことを特徴とする請求項4記載の熱型変位素子。
【請求項6】
前記第1の変位部の前記複数の個別変位部に関して、前記状態で前記基体側に湾曲する個別変位部の前記少なくとも2つの層と前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する個別変位部の前記少なくとも2つの層とは、各層を構成する物質同士が同じであるとともに各物質の層の重なり順序が逆であり、
前記第2の変位部の前記複数の個別変位部に関して、前記状態で前記基体側に湾曲する個別変位部の前記少なくとも2つの層と前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する個別変位部の前記少なくとも2つの層とは、各層を構成する物質同士が同じであるとともに各物質の層の重なり順序が逆である、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱型変位素子。
【請求項7】
基体と、該基体に支持された被支持部とを備え、
前記被支持部は、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、複数の個別変位部を有し前記放射吸収部と熱的に結合された変位部とを含み、
前記複数の個別変位部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有し、
前記複数の個別変位部は、前記変位部の始点部から前記変位部の終点部にかけて、所定の向きに順次機械的に接続され、
前記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変位部は、前記放射吸収部が受ける放射の量が少ない所定の状態で前記基体側に湾曲し、
前記複数の個別変位部のうちの他の少なくとも1つの個別変位部は、前記状態で前記基体とは反対側に湾曲する、ことを特徴とする熱型変位素子。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の熱型変位素子と、前記第2の変位部に対して固定された変位読み出し部材であって、前記第2の変位部に生じた変位に応じた所定の変化を得るために用いられる変位読み出し部材とを備えたことを特徴とする放射検出装置。
【請求項9】
前記変位読み出し部材は受光した読み出し光の一部のみを反射するハーフミラー部であり、該ハーフミラー部と対向するように前記基体に対して固定された反射部を備えたことを特徴とする請求項8記載の放射検出装置。
【請求項10】
前記変位読み出し部材は可動電極部であり、該可動電極部と対向するように前記基体に対して固定された固定電極部を備えたことを特徴とする請求項8記載の放射検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2007−192696(P2007−192696A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11970(P2006−11970)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】