説明

熱安定酵素の製造方法

高い温度での生物学的処理に有用な、転移温度(Tm)の高い熱安定ブドウ糖酸化酵素の製造方法で、前記製造方法は、活性化ガラスビーズをアセトン中でアミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出によってケイ化する工程、ケイ化されたガラスビーズを約115℃で一晩加熱する工程、加熱処理されたガラスビーズをpH約6.0のリン酸緩衝溶液中でグルタルアルデヒドを用い、真空下および減圧しないでそれぞれ1時間処理する工程、処理されたガラスビーズを約30℃で3〜5時間の保持時間中に間欠的に振とうさせながら酵素にさらす工程、さらにステップ(d)のビーズをシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩を用いて処理することにより、前工程で得られたシッフ塩基を還元する工程、ガラスビーズ上に固定化された熱安定酵素を得る工程、ガラスビーズ上の未使用領域をグリシンでブロック化する工程からなり、また前記熱安定ブドウ糖酸化酵素の使用方法、および熱安定酵素、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の属する分野)
高い温度での生物学的処理に有用な、熱安定酵素である高い転移温度(Tm)を有するブドウ糖酸化酵素の製造方法で、前記製造方法は、活性化ガラスビーズをアセトン中でアミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出によってケイ化する工程、ケイ化されたガラスビーズを約115℃で一晩加熱する工程、加熱処理されたガラスビーズをpH約6.0のリン酸緩衝溶液中でグルタルアルデヒドを用い、真空下および減圧しないでそれぞれ1時間処理する工程、処理されたガラスビーズを約30℃で3〜5時間の保持時間中に間欠的に振とうさせながら酵素にさらす工程、さらにステップ(d)のビーズをシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩(sodium cyanoborohydride)を用いて処理することにより、前工程で得られたシッフ塩基を還元する工程、ガラスビーズ上に固定化された熱安定酵素を得る工程、ガラスビーズ上の未使用領域をグリシンでブロック化する工程からなり、また前記熱安定酵素の使用方法、および熱安定酵素、である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景および従来技術)
参考文献としてここに、M.D.ゴーダ、M.S.タッカおよびN.G.カランスによる「たんぱく質を基にした安定化剤の電流バイオセンサ効果を用いた固定化ブドウ糖酸化酵素の安定化に関する研究」(2001)(エレクトロアナリシス、13巻10号、849〜855頁)を挙げる。筆者らは、たんぱく質を基にした安定化剤を用いることでブドウ糖酸化酵素が熱変性に対して安定性を示すことを報告している。たんぱく質を基にした安定化剤は高価であり、膜上の固定化酵素には適しているが、カラム反応器が固体マトリクス上に固定化される酵素と共に通常用いられるフローインジェクションに基づく分析システムで用いるには適していない。従って、本願発明は、酵素のより簡便な方法による固定化に有用であり、フローインジェクション分析に基づくバイオセンサシステム、あるいはより安定性のある生物変換反応のバイオリアクタに用いられる。
【0003】
参考文献としてここに、L.ボアホン、フ・レンキおよびD.ジャキによる「修飾Y−ゼオライトマトリックス中の酵素の固定化特性とその電流ブドウ糖バイオセンサへの応用」(1997)(アナリティカルケミストリ、69巻、2343〜2348頁)を挙げる。筆者らは、カーボンペースト電極を用いた電流ブドウ糖バイオセンサへ応用するために、修飾Y−ゼオライトマトリクス中での酵素の固定化によって、ブドウ糖酸化酵素を安定化させることを報告している。本研究の欠点は、Y−ゼオライトマトリクスは微粒子形状であり、充填カラム内で液体の流れを妨げるため、フローインジェクション分析システムに適していないことである。
【0004】
ケイ化技術はこれまで、酵素の効率的な固定化のために固体支持体の表面修飾に用いられてきた。この技術では、アルキル基のようなシラン中の非反応基は、疎水性を呈し(スロボディアノコバ、1979)、表面を荷電状態にさせる。この働きの効果は、用いられるシランの表面の粗さ、濃度および型に依存する(バーティア、1999およびクラス、1999)。この目的に用いられるシランの濃度は、通常2%より低い。しかしながら、シランを固定化酵素の安定性を高めるために用いるという報告はない。
【発明の開示】
【0005】
(本願の目的)
本願発明の主な目的は、熱的に安定な酵素を製造する方法を開発することである。
【0006】
本願発明の他の主な目的は、ブドウ糖酸化酵素の熱安定酵素を製造する方法を開発することである。
【0007】
本願発明のさらなる目的は、熱安定酵素を高い温度で用いる方法を開発することである。
【0008】
(本願の要約)
高い温度での生物学的処理に有用な、転移温度(Tm)の高い熱安定酵素の製造方法で、前記製造方法は、活性化ガラスビーズをアセトン中でアミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出によってケイ化する工程、ケイ化されたガラスビーズを約115℃で一晩加熱する工程、加熱処理されたガラスビーズをpH約6.0のリン酸緩衝溶液中でグルタルアルデヒドを用い、真空下および減圧しないでそれぞれ1時間処理する工程、処理されたガラスビーズを約30℃で3〜5時間の保持時間中に間欠的に振とうさせながら酵素にさらす工程、さらにステップ(d)のビーズをシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩を用いて処理することにより、前工程で得られたシッフ塩基を還元する工程、ガラスビーズ上に固定化された熱安定酵素を得る工程、ガラスビーズ上の未使用領域をグリシンでブロック化する工程からなり、また前記熱安定ブドウ糖酸化酵素の使用方法、および熱安定酵素、である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(本願発明の詳細な説明)
従って、本願発明は、高い温度での生物学的処理に有用な、転移温度(Tm)の高い熱安定酵素の製造方法に関し、前記製造方法は、活性化ガラスビーズをアセトン中でアミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出によってケイ化する工程、ケイ化されたガラスビーズを約115℃で一晩加熱する工程、加熱処理されたガラスビーズをpH約6.0のリン酸緩衝溶液中でグルタルアルデヒドを用い、真空下および減圧しないでそれぞれ1時間処理する工程、処理されたガラスビーズを約30℃で3〜5時間の保持時間中に間欠的に振とうさせながら酵素にさらす工程、さらにステップ(d)のビーズをシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩を用いて処理することにより、前工程で得られたシッフ塩基を還元する工程、ガラスビーズ上に固定化された熱安定酵素を得る工程、ガラスビーズ上の未使用領域をグリシンでブロック化する工程からなり、また前記熱安定酵素の使用方法、および熱安定酵素、に関する。
【0010】
高い温度での生物学的処理に有用な、転移温度(Tm)の高い、熱的に安定なブドウ糖酸化酵素を製造する方法は、下記の工程からなる。
【0011】
○活性化ガラスビーズをアセトン中でアミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出によってケイ化する工程、
○ケイ化されたガラスビーズを約115℃で一晩加熱する工程、
○加熱処理されたガラスビーズをpH約6.0のリン酸緩衝溶液中でグルタルアルデヒドを用い、真空下および減圧しないでそれぞれ1時間処理する工程、
○処理されたガラスビーズを約30℃で3〜5時間の保持時間中に間欠的に振とうさせながら酵素にさらす工程、
○ステップ(d)のビーズをシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩を用いて処理することにより、前工程で得られたシッフ塩基を還元する工程、
○ガラスビーズ上に固定化された熱安定酵素を得る工程、
○ガラスビーズ上の未使用領域をグリシンでブロック化する工程。
【0012】
本願発明の他の実施形態においては、ガラスビーズは直径が0.5〜0.75mmの範囲である。
【0013】
本願発明の他の実施形態においては、アミノプロピルトリエトキシシランの濃度は1〜8%の範囲である。
【0014】
本願発明の他の実施形態においては、処理された酵素は80℃の温度で1〜4時間保持しても安定である。
【0015】
本願発明の他の実施形態においては、グルタルアルデヒドの濃度は2.0〜3.0%の範囲である。
【0016】
本願発明の他の実施形態においては、グルタルアルデヒドの濃度は約2.5%である。
本願発明の他の実施形態においては、リン酸緩衝溶液の濃度は100〜300mMの範囲である。
【0017】
本願発明の他の実施形態においては、ビーズをシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩で1〜3時間の間、約300Cで処理し、さらに約4℃で約12〜24時間処理する。
【0018】
本願発明の他の実施形態においては、シアノ化ホウ化水素のナトリウム塩の濃度は、ガラスビーズ1g当たり25〜75mgの範囲である。
【0019】
本願発明の他の実施形態においては、グリシンの濃度は0.05〜0.5Mである。
本願発明の他の実施形態においては、酵素はブドウ糖酸化酵素である。
【0020】
本願発明の他の実施形態においては、ガラスビーズを約5%の硝酸液中で約80℃で約3時間煮沸させて活性化する。
【0021】
本願発明の他の実施形態においては、ビーズ1gに対し、500〜1500国際単位の範囲の酵素をさらす。
【0022】
本願発明の他の実施形態においては、固定化された酵素は、4℃で、濃度範囲が0.001〜005%のアジ化ナトリウムを含む緩衝液中に保存される。
【0023】
本願発明の他の実施形態においては、熱的に安定な酵素は転移温度(Tm)約80℃を示す。
【0024】
本願発明の他の実施形態においては、熱的に安定なブドウ糖酸化酵素を温度約80℃の酵素的工程において用いる方法であり、その方法は酵素を基質にさらす工程と、所望の製品を得る工程からなる。
【0025】
本願発明の他の実施形態においては、前記酵素はバイオリアクタで用いられる。
本願発明の他の実施形態においては、前記酵素はフローインジェクション分析に基づいたバイオセンサで用いられる。
【0026】
本願発明の他の実施形態においては、酵素的工程は食品加工および醗酵工程である。
本願発明の他の実施形態においては、請求項16に記載の方法において、酵素はブドウ糖酸化酵素である。
【0027】
本願発明の他の実施形態においては、温度約80℃の酵素的工程で有用である。
本願発明の他の実施形態においては、上記記載の酵素はブドウ糖酸化酵素である。
【0028】
本願発明は、バイオリアクタ用途、特にフローインジェクション分析に基づくバイオセンサにおける用途に有用な熱的に安定な酵素の製造工程に関する。
【0029】
本願発明の他の実施形態においては、酵素の熱的安定性は、固定化酵素に基づいたバイオセンサの利用において重要であり、バイオセンサは食品加工および醗酵工程の監視用途に用いられる。ブドウ糖酸化酵素はブドウ糖バイオセンサに用いられる酵素であり、熱安定性の向上が実用化の課題となっている。酵素の熱安定性はまた、より高温を必要とする生化学プロセスでも必要とされている。多くの酵素および生物派生物質は、熱的に不安定で50〜60℃を超える温度では用いることができない。一部の酵素は、安定剤を取り入れる固定化技術を用いることによって安定化させることが可能である。安定化された酵素バイオリアクタは、たんぱく質固定化研究や工程を監視するため、あるいは酵素生物変換反応のためのバイオセンサ用の熱安定プローブの製造のような、より高温での用途に用いられることが可能である。
【0030】
本願発明の他の実施形態においては、本願発明の実施形態において、ガラスビーズのケイ化は、1〜8%ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出によって行われる。
【0031】
本願発明の他の実施形態においては、本願発明の他の実施形態において、酵素の活性化支持体に対するカップリング反応中に形成されるシッフ塩基の還元に用いられるシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩は、ガラスビーズ1gに対して25〜75mg程度である。
【0032】
さらに本願発明の他の実施形態においては、固定化された酵素支持体上の未使用領域をブロックするために用いられるグリシンの濃度は、0.05〜0.15Mである。
【0033】
ガラスビーズ(直径0.5〜0.75mm)の洗浄は、蒸留水ですすぎ、濃硝酸中で1時間煮沸することによって行われ、5%硝酸溶液中でビーズを80℃で3時間煮沸し、さらに蒸留水で3〜4回すすいで活性化が行われ、そしてアセトン中でアミノプロピルトリエトキシシランを蒸発析出させることによってケイ化が行われる。アミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出は、シランの25ml乾燥アセトン溶液が用いられ、既知の方法(H.ウィータル、(1976)「無機支持体物質のための共有カップリング結合方法」(K.モシュバッハ編、メソッド イン エンザイモロジ、44巻、アカデミックプレス、ニューヨーク、10章、134〜148頁より))によって行われた。
【0034】
本願発明の他の実施形態においては、フラスコ中のシランに、活性化された1グラムのガラスビーズが加えられ、室温で3時間反応が行われた。次に、減圧することによって、アセトンが気化させられ、ガラスビーズ表面のシラン析出物を得た。そしてビーズは、115℃のオーブン内で一晩加熱し、グルタルアルデヒドの2.5%リン酸緩衝溶液を用いて真空下で1時間処理、さらに減圧しないで1時間処理し、蒸留水および緩衝液でそれぞれ3〜4回完全に洗浄して培養された。緩衝液に溶解したブドウ糖酸化酵素1000国際単位をケイ化ビーズ1gに混合し、間欠的に振とうさせながら室温で3時間放置する。次に、生成されたシッフ塩基を還元するために、シアノ化ホウ化水素のナトリウム塩25〜75mgを加え、室温で1〜3時間放置し、さらに4℃で12〜24時間保持した。
【0035】
本願発明の他の実施形態においては、固定化された酵素支持体上の未使用領域は、0.05〜0.15Mグリシン溶液を加え室温で1時間放置し、さらに蒸留水と緩衝液でそれぞれ3回洗浄することによって、ブロックされた。微生物汚染を防止するため、0.002%アジ化ナトリウムを緩衝液に加えた後、固定化された酵素は4℃で貯蔵された。
【0036】
本願発明の他の実施形態においては、ブドウ糖酸化酵素100国際単位をpH6.0の100mMリン酸緩衝溶液1mlに溶解し、その酵素溶液を水浴中で30℃から5℃ずつ3時間保持して75℃まで温度を上げて培養させることによって、溶解性のブドウ糖酸化酵素の熱安定性が確かめられる。30分ごとに試料を採取し、酵素をブドウ糖の50−g/l溶液中で培養して酵素活性化度をチェックし、電流電極によって測定される溶存酸素濃度の低下として活性化度を記録する。
【0037】
本願発明の他の実施形態においては、濃度の異なるシラン溶液を用いてガラスビーズ上に固定化されたブドウ糖酸化酵素の熱安定性が、固定化された酵素溶液をpH6.0の100mMリン酸緩衝溶液に懸濁させ、水浴中で30℃から5℃ずつ3時間保持して75℃まで温度を上げて培養することによって測定される。30分ごとに試料を採取し、固定化酵素試料を内径3.5mm、長さ40mmのポリカーボネートカラムに流し、残留活性化度を決定するが、気泡がカラム内に入らないように注意し、カラムを以下に述べるフローインジェクション分析システムに固定する。
【0038】
本願発明の他の実施形態においては、フローインジェクション分析システムでは緩衝液用と試料用に2つのポンプを用いる。試料はバルブから注入されるが、バルブは自動制御または手動制御が可能である。試料は次に1分間に0.8−mlの速さで流れる緩衝液中で透析される。そして透析された試料は固定化酵素カラムを通るが、固定化酵素カラムでは生化学反応が起こって、溶存酸素濃度の低下を引き起こしているので、溶存酸素電極を用いて電圧低下を測定することによって溶存酸素濃度を測定する。
【0039】
本願発明の他の実施形態においては、ブドウ糖をpH6.5リン酸緩衝溶液を用いてモル濃度50mMとなるように新しく調製し、微生物汚染を防止するため0.002%アジ化ナトリウムを加え、変旋光のために4時間保持し、200μl/分の速度で30秒間注入する。酵素活性化度は、電極の出力電圧が継続的に低下し、上昇前の約2分間で最低を記録する結果となる。ベースラインと応答電圧最低値の違いをブドウ糖濃度に対してプロットする。フローインジェクション分析システムの操作は文献(M.A.カマー、M.S.タッカ、S.センタラン、V.センタラン、N.G.カランス、R.ハッティカール、B.マティアソン、2001)に記載の通りである。
【0040】
本願発明の他の実施形態においては、ブドウ糖の50−g/l溶液を固定化酵素カラムに通し、ブドウ糖酸化酵素の活性化度を、電流電極によって測定された溶存酸素濃度の低下として測定する。
【0041】
本願発明の他の実施形態においては、残留活性化度は下記の式から算出された。
残留活性化度A(%)=(b/a)x100
ここで、a=熱処理前の活性化度、b=熱処理後の活性化度である。
【0042】
全ての酵素安定化実験では、用いられる試料中のブドウ糖濃度は50g/lであり、25〜75℃の範囲において、温度が、異なる濃度のアミノプロピルトリエトキシシラン中のブドウ糖酸化酵素の安定性に与える影響を検討する。
【0043】
転移温度(Tm)は、3時間培養後も酵素が初期活性化度の50%を維持する最高温度である。
【0044】
酵素の半減期(T1/2)は、温度70℃において酵素が初期活性化度の50%を維持する時間である。
【0045】
本願発明の他の実施形態においては、本願発明の新規性は、酵素を修飾しないにもかかわらず、あるいは固定化のために支持体を改良する以外に添加剤を加えないにもかかわらず、固定化酵素が安定化することである。
【0046】
以下に示す実施例は、本願発明を説明するためのものであり、従って本願発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0047】
直径0.5〜0.75mmのガラスビーズ1gを最初に蒸留水で洗浄し、次に濃硝酸中で1時間煮沸し、5%硝酸溶液中でビーズを80℃で3時間煮沸し、さらに蒸留水で4回すすいで活性化した。2%シランをアセトン中で蒸発析出させることによってガラスビーズをケイ化した(ウィータル、1969)。ケイ化された支持体を115℃のオーブン中で一晩加熱し、グルタルアルデヒドの2.5%リン酸緩衝溶液を用いて真空下で1時間処理、さらに減圧しないで1時間処理した。支持体を蒸留水および緩衝液でそれぞれ3回完全に洗浄した。
【0048】
緩衝液に溶解したブドウ糖酸化酵素1000国際単位を、支持体1gに混合し、間欠的に振とうさせながら温度30℃で3時間放置した。そしてこの溶液にシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩50mgを加え、温度30℃で1時間、さらに4℃で19時間放置して、生成されたシッフ塩基を還元した。固定化された酵素支持体を水および緩衝液でそれぞれ5回洗浄した。0.1Mグリシン溶液を加え、温度30℃で1時間放置し、さらに蒸留水と緩衝液でそれぞれ3回洗浄し、支持体上の未使用領域をブロックした。微生物汚染を防止するため、0.002%アジ化ナトリウムを緩衝液に加えた。固定化酵素溶液の熱安定性を前述の方法で測定したところ、転移温度(Tm)は65℃、半減期(T1/2)は1時間半であった。3時間保持後の活性化度は、当初の値の92%であった。
【実施例2】
【0049】
シラン濃度4%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、ブドウ糖酸化酵素の固定化を行った。3時間保持後の活性化度は、当初の値の250%であり、転移温度は75℃に上昇し、半減期(T1/2)は19時間であった。
【実施例3】
【0050】
シラン濃度6%のものを用いた以外は実施例2と同様にして、ブドウ糖酸化酵素の固定化を行った。3時間保持後の活性化度は、当初の値の60%であり、転移温度は70℃で、T1/2は13時間であった。
【実施例4】
【0051】
固定化されていないブドウ糖酸化酵素100国際単位をpH6.0の100−mMリン酸緩衝溶液1mlに溶解し、熱安定性を測定した。3時間保持後の活性化度は、当初の値の5.2%であり、可溶性酵素の転移温度(Tm)は45.6℃、半減期(T1/2)は1/2時間であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明の主な特徴は以下に示すとおりである。
1.固定化酵素システムは、たんぱく質固定化研究や工程監視に用いられるバイオセンサなどの、高温での用途に用いることが可能である。
2.このシステムは、バイオセンサ用途のための熱安定性に優れたプローブの製造に用いることが可能である。
3.ガラスビーズは経済的に優れた酵素固定化の支持体であり、検体をオンラインで分析するフローインジェクション分析システムに用いられる充填床反応器や充填カラム用途に適している。
4.熱に弱い酵素や生体物質を、適当な濃度のシランを用いて安定化させ、高温で用いることが可能である。ケイ化を用いるこの安定化方法は、固定化マトリクスとして他のケイ酸塩含有材料に対しても使用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約80℃という高い温度での生物学的処理に有用な、高い転移温度(Tm)を有し、熱安定性を有する固定化されたブドウ糖酸化酵素の製造におけるケイ化工程において、
I. 活性化ガラスビーズをアセトン中でアミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出によってケイ化する工程、
II. ケイ化されたガラスビーズを約115℃で一晩加熱する工程、
III. 加熱処理されたガラスビーズをpH約6.0のリン酸緩衝溶液中でグルタルアルデヒドを用い、真空下および減圧しないでそれぞれ1時間処理する工程、
IV. 処理されたガラスビーズを約30℃で3〜5時間の保持時間中に間欠的に振とうさせながら酵素にさらす工程、
V. ステップ(d)のビーズをシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩を用いて処理することにより、前工程で得られたシッフ塩基を還元する工程、
VI. ガラスビーズ上に固定化された熱安定酵素を得る工程、
VII. ガラスビーズ上の未使用領域をグリシンでブロック化する工程
を有することを特徴とするケイ化工程。
【請求項2】
前記ガラスビーズは直径0.5〜0.75mmである請求項1記載の工程。
【請求項3】
前記アミノプロピルトリエトキシシランの濃度が1〜8%の範囲である請求項1記載の工程。
【請求項4】
前記処理された酵素は、80℃の温度で1〜4時間保持しても安定である請求項1記載の工程。
【請求項5】
前記グルタルアルデヒドの濃度が2.0〜3.0%の範囲である請求項1記載の工程。
【請求項6】
前記グルタルアルデヒドの濃度が約2.5%である請求項5記載の工程。
【請求項7】
前記リン酸緩衝溶液の濃度が100〜300mMの範囲である請求項1記載の工程。
【請求項8】
シアノ化ホウ化水素のナトリウム塩を用いて、ビーズを約300Cで1〜3時間、さらに約4℃で約12〜24時間処理する請求項1記載の工程。
【請求項9】
前記シアノ化ホウ化水素のナトリウム塩の濃度が、ガラスビーズ1グラム当たり25〜75mgである請求項1記載の工程。
【請求項10】
前記グリシンの濃度が0.05〜0.5Mの範囲である請求項1記載の工程。
【請求項11】
ガラスビーズを約5%の硝酸液中で約80℃で約3時間煮沸させて活性化する請求項1記載の工程。
【請求項12】
ビーズ1gに対し、500〜1500国際単位の範囲の酵素をさらす請求項1記載の工程。
【請求項13】
固定化された酵素は、4℃で、濃度範囲が0.001〜005%のアジ化ナトリウムを含む緩衝液中に保存される請求項1記載の工程。
【請求項14】
熱的に安定な酵素は転移温度(Tm)約80℃を示す請求項1記載の工程。
【請求項15】
請求項1記載の熱安定酵素を、酵素を基質にさらす工程および所望の製品を得る工程からなる、温度約80℃の酵素的工程において用いる方法。
【請求項16】
前記酵素がバイオリアクタで用いられる請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記酵素がフローインジェクション分析に基づくバイオセンサに用いられる請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記酵素的工程は食品加工および醗酵工程である請求項15記載の方法。
【請求項19】
温度約80℃の酵素的工程で有用な請求項1記載の熱安定性を有する酵素。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約80℃という高い温度での生物学的処理に有用な、高い転移温度(Tm)を有し、熱安定性を有する固定化されたブドウ糖酸化酵素の製造におけるケイ化工程において、
I. 活性化ガラスビーズをアセトン中で1〜8%の範囲のアミノプロピルトリエトキシシランの蒸発析出によってケイ化する工程、
II. ケイ化されたガラスビーズを約115℃で一晩加熱する工程、
III. 加熱処理されたガラスビーズをpH約6.0のリン酸緩衝溶液中でグルタルアルデヒドを用い、真空下および減圧しないでそれぞれ1時間処理する工程、
IV. 処理されたガラスビーズを約30℃で3〜5時間の保持時間中に間欠的に振とうさせながら酵素にさらす工程、
V. ステップ(d)のビーズをシアノ化ホウ化水素のナトリウム塩を用いて処理することにより、前工程で得られたシッフ塩基を還元する工程、
VI. ガラスビーズ上に固定化された熱安定酵素を得る工程、
VII. ガラスビーズ上の未使用領域をグリシンでブロック化する工程
を有することを特徴とするケイ化工程。
【請求項2】
前記ガラスビーズは直径0.5〜0.75mmである請求項1記載の工程。
【請求項3】
前記処理された酵素は、80℃の温度で1〜4時間保持しても安定である請求項1記載の工程。
【請求項4】
前記グルタルアルデヒドの濃度が2.0〜3.0%の範囲である請求項1記載の工程。
【請求項5】
前記グルタルアルデヒドの濃度が約2.5%である請求項記載の工程。
【請求項6】
前記リン酸緩衝溶液の濃度が100〜300mMの範囲である請求項1記載の工程。
【請求項7】
シアノ化ホウ化水素のナトリウム塩を用いて、ビーズを約300Cで1〜3時間、さらに約4℃で約12〜24時間処理する請求項1記載の工程。
【請求項8】
前記シアノ化ホウ化水素のナトリウム塩の濃度が、ガラスビーズ1グラム当たり25〜75mgである請求項1記載の工程。
【請求項9】
前記グリシンの濃度が0.05〜0.5Mの範囲である請求項1記載の工程。
【請求項10】
ガラスビーズを約5%の硝酸液中で約80℃で約3時間煮沸させて活性化する請求項1記載の工程。
【請求項11】
ビーズ1gに対し、500〜1500国際単位の範囲の酵素をさらす請求項1記載の工程。
【請求項12】
固定化された酵素は、4℃で、濃度範囲が0.001〜005%のアジ化ナトリウムを含む緩衝液中に保存される請求項1記載の工程。
【請求項13】
熱的に安定な酵素は転移温度(Tm)約80℃を示す請求項1記載の工程。
【請求項14】
請求項1記載の熱安定酵素を、酵素を基質にさらす工程および所望の製品を得る工程からなる、温度約80℃の酵素的工程において用いる方法。
【請求項15】
前記酵素がバイオリアクタで用いられる請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記酵素がフローインジェクション分析に基づくバイオセンサに用いられる請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記酵素的工程は食品加工および醗酵工程である請求項14記載の方法。
【請求項18】
温度約80℃の酵素的工程で有用な請求項1記載の熱安定性を有する酵素。

【公表番号】特表2006−513715(P2006−513715A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569901(P2004−569901)
【出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000095
【国際公開番号】WO2004/085640
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】