説明

熱履歴検出組成物

【課題】酸素の影響を受けずに迅速に定量的な発色を得易く、かつ、安価で簡易な熱履歴検出組成物を提供する。
【解決手段】キシロースおよびグリシンを含有し、対象物を収容する収容容器の外面或いは内部に備えられ、加熱時の色調変化の程度によって対象物の品質を判断できる熱履歴検出組成物。糖であるキシロースと、アミノ酸であるグリシンとを含有する。糖およびアミノ酸の存在下で加熱すると比較的短時間でメラノイジンという物質が生成する(メイラード反応)。メラノイジンは褐色を呈する。メイラード反応は非酵素的反応であり、酸素や水分の有無による影響を受け難いため、熱履歴検出組成物が褐色を呈すれば、褐変の原因が加熱処理であると判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱時の色調変化の程度によって対象物の品質を判断できる熱履歴検出組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品などの対象物を袋状の収容容器に収容したレトルト食品に対して、対象物を収容容器に充填して密封したのち、加熱および加圧することで殺菌処理(レトルト殺菌)が行われている。
レトルト殺菌は、例えば110〜132℃の温度で、数分〜数十分程度のスチーム処理を行う。殺菌条件は、レトルト食品に対して十分な殺菌が行なえる条件を選択する必要があるが、一方で、殺菌処理後に対象物の品質が劣化しない条件を選択することが重要である。
【0003】
一般に、食品などの対象物は、与えられた積算熱量である熱履歴が小さいほど品質の劣化が少ないと考えられている。熱履歴は、加熱処理時の温度及び時間に依存する。
【0004】
熱履歴は、温度センサを使用して対象物の温度を直接測定することで調べることができる。一方、対象物の品質の変化度を調べるための指標(品質変化指標)を設定することが行なわれている。この手法では、得られた当該指標のデータを基に、殺菌後の対象物の熱履歴を把握し、品質の変化度を間接的に予測する。
例えば、グルコース-グリシン-アスコルビン酸を含んだ組成物を加熱した際の発色の程度を品質変化指標とすれば、組成物の受けた熱履歴を把握することができる。
当該組成物は、糖であるグルコースとアミノ酸であるグリシンを含有するため、加熱により糖-アミノ酸反応が進行して褐変する。即ち、この組成物を対象物と共に熱処理すれば、前記組成物の褐変の程度に応じて、レトルト殺菌処理後の対象物の品質を予測することができる。
【0005】
また、対象物に含まれる成分を測定することによって、レトルト殺菌処理後の対象物の品質を調査する方法が公知である。例えば、加熱により分解性が増すチアミン(ビタミンB1)の残存率を品質変化の指標とする。そして、レトルト殺菌処理後の対象物中のチアミンを測定すれば、対象物の受けた熱履歴を把握し、品質の変化度を予測することができる。
尚、これら従来技術は一般的に広く行なわれる手法であるため、特定の技術文献は示さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
温度センサを使用して対象物の温度を直接測定して熱履歴を調べる方法では、温度の測定結果から品質の変化度を予測しているにすぎず、実際に対象物の品質がどのように変化しているかは不明であった。さらに、高価な温度センサを複数使用する必要があるため、コストが嵩む方法となっていた。
【0007】
グルコース-グリシン-アスコルビン酸を含んだ組成物を使用する方法は、当該組成物の色調の変化によって対象物の品質の変化度を予測するため、簡易かつ短時間で行なうことができる。しかし、当該組成物においては、グルコース-グリシン-アスコルビン酸を使用しているため、酸素が変色の程度に影響を及ぼす虞があるため、良好な発色が得られ難く、定量的な発色は得難い。そのため、グルコース-グリシン-アスコルビン酸を含んだ組成物は、品質変化指標に適しているとは言い難い。
【0008】
対象物中のチアミンの残存率を測定する方法では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用した分析を行なう必要があるため手間がかかり、簡易かつ短時間で測定を行なうことが困難である。
【0009】
従って、本発明の目的は、酸素の影響を受けずに迅速に定量的な発色を得易く、かつ、安価で簡易な熱履歴検出組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る熱履歴検出組成物の第一特徴構成は、キシロースおよびグリシンを含有し、対象物を収容する収容容器の外面或いは内部に備えられ、加熱時の色調変化の程度によって前記対象物の品質を判断できる点にある。
【0011】
本構成の熱履歴検出組成物は、糖であるキシロースと、アミノ酸であるグリシンとを含有する。糖およびアミノ酸の存在下で加熱すると比較的短時間でメラノイジンという物質が生成する(メイラード反応)。メラノイジンは褐色を呈する。メイラード反応は非酵素的反応であり、酸素や水分の有無による影響を受け難いため、熱履歴検出組成物が褐色を呈すれば、褐変の原因が加熱処理であると判断することができる。
褐色の程度は、生成したメラノイジンの量に応じた色調(濃淡)の変化として認識できる。そのため、本構成であれば、加熱処理の開始から迅速、かつ、定量的な発色を得ることができる。
【0012】
品質の同定をすべき対象物が食品の場合、通常、糖およびアミノ酸が含まれる。そのため、糖およびアミノ酸を有する本構成の熱履歴検出組成物では、実際の対象物で起こる化学反応と同等な反応が起こっているとみなすことができる。仮に、当該熱履歴検出組成物が褐変すれば、対象物も同等の加熱処理を受けて同様な化学反応(メイラード反応)が進行したと認めることができる。即ち、本構成の熱履歴検出組成物の色調変化の程度が品質変化の指標となり、実際に対象物が受けた熱履歴の程度(品質の変化度)を正確に予測することができる。
【0013】
また、キシロースおよびグリシンは容易に入手することができ、高価な測定機器を使用する必要がないため、本発明の組成物を使用すれば、安価で簡易な熱履歴検出組成物となる。
【0014】
本発明に係る熱履歴検出組成物の第二特徴構成は、増粘剤あるいはゲル化剤の何れかと、不溶性の白色粉末とを含有した点にある。
【0015】
本構成によれば、増粘剤を添加すれば、熱履歴検出組成物を粘度の高い物質(粘稠物)として提供することができる。一方、ゲル化剤を添加すれば、熱履歴検出組成物を弾力性のある固形物として提供することができる。
【0016】
さらに、本構成では不溶性の白色粉末を添加してあるため熱履歴検出組成物が白色となり、熱履歴検出組成物の発色の程度を認識し易くなる。これにより、色調測定結果を安定させることができる。仮に、白色粉末を添加しない場合は、色調測定の際には熱履歴検出組成物を透過光で測定することとなるが、このとき、透過で測定するには呈色の程度によっては濁度が高くなって測定精度が劣る虞がある。さらに、粉末の色が白色以外であると、色調測定の際には反射光で測定することとなるが、反射光で測定するには、白色以外の色が干渉して熱履歴検出組成物の褐変の程度が認識し難くなる虞がある。
【0017】
また、キシロースおよびグリシンが加熱処理により褐変すると粘度が上昇する虞がある。しかし、本構成のように不溶性の白色粉末を添加すれば、ある程度粘度の上昇を抑制することができる。従って、加熱処理後に、加熱が原因で熱履歴検出組成物の態様(柔軟度など)が変化するのを防止することができる。
【0018】
本発明に係る熱履歴検出組成物の第三特徴構成は、前記白色粉末が、酸化アルミニウム・酸化チタン・酸化亜鉛のうち少なくとも一種を含んだ点にある。
【0019】
酸化アルミニウム・酸化チタン・酸化亜鉛であれば、容易に入手でき、取り扱いが容易である。そのため、本構成であれば、取り扱い易い熱履歴検出組成物とすることができる。
【0020】
本発明に係る熱履歴検出組成物の第四特徴構成は、前記キシロースおよび前記グリシンが重量比1対1で混合した点にある。
【0021】
本構成のようにキシロースおよびグリシンを1対1の重量比で混合すれば、発色効率に優れたものとなる。
【0022】
本発明に係る熱履歴検出組成物の第五特徴構成は、前記キシロースおよび前記グリシンの濃度をそれぞれ0.5〜1重量%とした点にある。
【0023】
キシロースおよびグリシンの濃度がそれぞれ0.5重量%未満であれば、メイラード反応が起こった後の発色の程度が弱いため、褐変を確実に検出し難くなる。また、キシロースおよびグリシンの濃度がそれぞれ1重量%を超えると、コストが嵩む。そのため、キシロースおよび前記グリシンの濃度をそれぞれ0.5〜1重量%とすれば、色調の測定値が安定し、安価な熱履歴検出組成物とすることができる。
【0024】
本発明に係る熱履歴検出組成物の第六特徴構成は、前記白色粉末の濃度を0.1〜1重量%とした点にある。
【0025】
白色粉末の濃度が0.1重量%未満であれば、熱履歴検出組成物の白色の程度が低くなるため、色調の測定値にばらつきが生じる。また、白色粉末の濃度が1重量%を超えると、コストが嵩む。そのため、添加する白色粉末の濃度を0.1〜1重量%とすれば、色調の測定値が安定し、安価な熱履歴検出組成物とすることができる。
【0026】
本発明に係る熱履歴検出組成物の第七特徴構成は、水に溶解した点にある。
【0027】
本構成のように、熱履歴検出組成物を水に溶解することで、キシロースおよびグリシンを均一に溶媒に分散させることができるため、メイラード反応を均一に進行させることができる。そのため、加熱処理後において、熱履歴検出組成物の褐変の程度を均一化することができるため、色調の測定値が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の熱履歴検出組成物は、加熱時の色調変化の程度によって、食品などの対象物の品質を判断するものである。
対象物は、食品・ソース等の液体調味料などが例示されるが、これらに限定されるものではない。当該対象物は、レトルトパウチなどの収容容器に充填して密封した後、加熱および加圧するレトルト殺菌する。
【0029】
本発明の熱履歴検出組成物は、キシロースおよびグリシンを含有し、対象物を収容する収容容器の外面或いは内部に備える。熱履歴検出組成物は、例えばフィルム状のシートを袋状に製袋した収容材(組成物収容材)に封入した上で、対象物と共にレトルトパウチの内部に収容する、或いは、レトルトパウチの外面に貼着するなどして外面に備える。何れの態様であっても、対象物と熱履歴検出組成物とは、同様の加熱条件で加熱処理を受けることができる。本実施形態では、熱履歴検出組成物を水に溶解させて使用する場合について説明する。
【0030】
当該熱履歴検出組成物は、糖であるキシロースおよびアミノ酸であるグリシンを含有するため、加熱するとメイラード反応により比較的短時間でメラノイジンが生成する。熱履歴検出組成物が褐色を呈すれば、褐変の原因が加熱処理であるものと判断することができる。褐色の程度は生成したメラノイジンの量に応じた色調(濃淡)の変化として認識できる。そのため、本発明の熱履歴検出組成物であれば、加熱処理の開始から迅速に定量的な発色を得ることができる。
品質の同定をすべき対象物が食品であれば、糖およびアミノ酸が含まれるため、糖およびアミノ酸を有する本発明の熱履歴検出組成物では、実際の対象物で起こる化学反応と同等な反応が起こっていると考えることができる。よって、当該熱履歴検出組成物の色調変化の程度が品質変化の指標となり、実際に対象物が受けた熱履歴の程度(品質の変化度)を正確に予測することができる。
【0031】
キシロースおよびグリシンの組成比は特に制限されないが、重量比1対1で混合すると、発色効率に優れたものとなる。
【0032】
キシロースおよびグリシンの濃度は特に制限されないが、それぞれ0.5〜1重量%とすれば、色調の測定値が安定し、安価な熱履歴検出組成物とすることができる。
【0033】
本発明の熱履歴検出組成物は、増粘剤あるいはゲル化剤の何れかと、不溶性の白色粉末とを含有してもよい。
【0034】
増粘剤を添加すれば、熱履歴検出組成物を粘度の高い物質(粘稠物)として提供することができる。
増粘剤としては、添加することで液体が高い粘性を持つようになる物質であれば、特に限定されない。例えば、スターチや、天然由来の多糖類(グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペンチン)などが挙げられる。
【0035】
ゲル化剤を添加すれば、熱履歴検出組成物を弾力性のある固形物として提供することができる。
ゲル化剤としては、添加することで液体をゲル化して固化する物質であれば、特に限定されない。例えば高分子ゲルである寒天やゼラチンなどが挙げられる。
【0036】
不溶性の白色粉末を添加すれば熱履歴検出組成物が白色となり、熱履歴検出組成物の発色の程度を認識し易くなる。これにより、色調測定結果を安定させることができる。
白色粉末は、特に限定されるものではないが、例えば酸化アルミニウム・酸化チタン・酸化亜鉛のうち少なくとも一種を含むようにすればよい。
白色粉末の粒径や比重は特に制限されない。しかし、粒径が小さいほど、或いは、比重が1に近いほど溶媒中での分散状態は安定する。
白色粉末の濃度は0.1〜1重量%とするのが好ましい。
白色粉末の濃度が0.1重量%未満であれば、熱履歴検出組成物の白色の程度が低くなるため、色調の測定値にばらつきが生じる。また、白色粉末の濃度が1重量%を超えると、コストが嵩む。そのため、添加する白色粉末の濃度を0.1〜1重量%とすれば、色調の測定値が安定し、安価な熱履歴検出組成物とすることができる。
【実施例1】
【0037】
熱履歴と色調変化との関係を調べるため、以下の実験を行なった。
キシロースおよびグリシンを水に溶解させた熱履歴検出組成物(液状組成物)を作製した。キシロースおよびグリシンは、それぞれ1.0重量%の濃度となるように調製した。
当該液状組成物をネジ口付きガラス試験管に充填して密封し、所定温度(110℃,120℃)のオイルバス中に所定時間(10〜100分)浸漬して加熱処理を行った。液状組成物の色調変化(ΔEab)は、色差計(Σ90、日本電色工業株式会社製)を使用して適宜測定した。結果を図1に示す。
【0038】
熱履歴は、加熱処理時の温度及び時間に依存する。
図1より、加熱時間が長くなるに従い、色調変化(ΔEab)は大きくなっている。これより、熱履歴と色調変化(ΔEab)との間には正の相関関係が認められた。さらに、温度によって色調変化の変化度(傾き)が異なるため、熱履歴と色調変化(ΔEab)との間には温度依存性も認められた。これより、本発明の熱履歴検出組成物であれば、熱履歴に応じて定量的な発色を得ることができる。
【0039】
温度依存性も認められた図1の結果より、ある基準温度を設定し、その温度における加熱時間である熱履歴値の計算を行なうことができる。即ち、図1の二つのグラフより、直線の傾きを10倍変更する温度差z値は26℃と求めることができる。
z値の算出方法は以下の通りである。
120℃(T1)のときのグラフの傾きは0.4479(K1)、110℃(T2)のときのグラフの傾きは0.1836(K2)である。z値は、これらの傾きが10倍変わるのに必要な温度差であるため、以下の数1により算出することができる。
【0040】
[数1]
K2=K1×10^((T2−T1)/z)
【0041】
これより、実際の計測において、殺菌処理後の熱履歴検出組成物の色調変化(ΔEab)を計測すれば、熱履歴値を算出することができる。
尚、キシロースおよびグリシンをそれぞれ0.5重量%とした場合においても同様の結果が得られた(図2)。
【実施例2】
【0042】
熱履歴検出組成物における酸素の影響を調べるため、以下の実験を行なった。
キシロースおよびグリシンを水に溶解させた熱履歴検出組成物(液状組成物)を作製した。キシロースおよびグリシンは、それぞれ1.0重量%の濃度となるように調製した。
当該液状組成物をネジ口付きガラス試験管に充填して密封した。試験管のヘッドスペースが空気であるサンプル1、および、当該ヘッドスペースが窒素であるサンプル2を作製した。120℃のオイルバス中に所定時間(10〜60分)浸漬して加熱処理を行い、液状組成物の色調変化(ΔEab)を色差計で適宜測定した。結果を図3に示す。
【0043】
図3より、サンプル1およびサンプル2共に同様の測定結果が得られた。そのため、本発明の熱履歴検出組成物は、酸素の影響を受けないものと認められた。また、本実験においても熱履歴と色調変化(ΔEab)との間には正の相関関係が認められた。
尚、結果は示さないが、キシロースおよびグリシンをそれぞれ0.5重量%とした場合においても同様の結果が得られた。
【実施例3】
【0044】
キシロースおよびグリシンのそれぞれを0.5重量%、酸化アルミニウム1重量%の濃度となるようにコーンスターチ液に溶解させた熱履歴検出組成物(粘稠組成物)を作製した。コーンスターチ液は、コーンスターチ(パーマフロー(ワキシーコーンスターチ(糯性)由来の化工デンプン)90%、コーンスターチ10%、日本コーンスターチ株式会社製)を5.1%となるように水に溶解したものである。
当該粘稠組成物をレトルトパウチに充填して120〜126℃で0〜300分の加熱処理を行い、粘稠組成物の色調変化(ΔEab)を色差計で適宜測定した。結果を図4示す。
【0045】
図4より、粘稠組成物とした場合であっても、液状組成物(実施例1,2)の場合と同様に、熱履歴と色調変化(ΔEab)との間には正の相関関係が認められた。
尚、結果は示さないが、キシロースおよびグリシンをそれぞれ1重量%、酸化アルミニウムを0.1重量%とした場合においても同様の結果が得られた。
【比較例1】
【0046】
本発明の熱履歴検出組成物に含まれるキシロースに代えて、グルコースを使用した比較組成物を作製した。
グルコースおよびグリシンのそれぞれを1重量%の濃度となるようにバレイショスターチ液に溶解させた熱履歴検出組成物(比較粘稠組成物1)を作製した。バレイショスターチ液は、バレイショスターチ(日清フーズ株式会社製)を4%となるように水に溶解したものである。
当該比較粘稠組成物1をネジ口付きガラス試験管に充填して密封し、所定温度(110,120℃)のオイルバス中に所定時間(10〜100分)浸漬して加熱処理を行った。比較粘稠組成物の色調変化(ΔEab)は、色差計を使用して適宜測定した(結果は示さない)。
この結果、発色が悪く、熱履歴と色調変化(ΔEab)との間には相関関係が認められなかった。よって、比較粘稠組成物1では、熱履歴に応じて定量的な発色を得ることができない。
【比較例2】
【0047】
本発明の熱履歴検出組成物に含まれるキシロースに代えて、フルクトースを使用した比較組成物を作製した。
フルクトースおよびグリシンのそれぞれを1重量%の濃度となるように、比較例1と同様のバレイショスターチ液に溶解させた熱履歴検出組成物(比較粘稠組成物2)を作製した。加熱処理および色調変化の測定については、比較例1と同様に行なった(結果は示さない)。
この結果、発色が悪く、熱履歴と色調変化(ΔEab)との間には相関関係が認められなかった。よって、比較粘稠組成物2では、熱履歴に応じて定量的な発色を得ることができない。
【比較例3】
【0048】
本発明の熱履歴検出組成物において、キシロースおよびグリシンを添加し、さらに白色粉末(酸化アルミニウム)および増粘剤(コーンスターチ液)を添加した粘稠組成物の実験結果を実施例3に示した。
これに対して、白色粉末を添加しない比較組成物3を作製した。
【0049】
キシロースおよびグリシンのそれぞれを0.5重量%の濃度となるようにコーンスターチ液に溶解させた熱履歴検出組成物(比較粘稠組成物3)を作製し、レトルトパウチに充填した。加熱処理および色調変化の測定については、比較例1と同様に行なった(結果は示さない)。
この結果、白色粉末を添加していないため、熱履歴検出組成物の発色の程度を認識し難くなり、測定値が安定しなかった。よって、比較粘稠組成物3では、熱履歴と色調変化(ΔEab)との間には明瞭な相関関係が認められなかった。
【比較例4】
【0050】
本発明の熱履歴検出組成物に含まれるグリシンに代えて、アラニンを使用した比較組成物を作製した。
キシロースおよびグリシンのそれぞれを1重量%の濃度となるように、比較例1と同様のバレイショスターチ液に溶解させた熱履歴検出組成物(比較粘稠組成物4)を作製した。加熱処理および色調変化の測定については、比較例1と同様に行なった(結果は示さない)。
この結果、発色が顕著に劣り、熱履歴と色調変化(ΔEab)との間には相関関係が認められなかった。よって、比較粘稠組成物4では、熱履歴に応じて定量的な発色を得ることができない。
【比較例5】
【0051】
本発明の熱履歴検出組成物に含まれるキシロースおよびグリシンに代えて、グルコースおよびグルタミン酸ナトリウムを使用した比較組成物を作製した。
グルコースおよびグルタミン酸ナトリウムのそれぞれを1重量%の濃度となるように、比較例1と同様のバレイショスターチ液に溶解させた熱履歴検出組成物(比較粘稠組成物5)を作製した。加熱処理および色調変化の測定については、比較例1と同様に行なった(結果は示さない)。
この結果、殆ど発色せず、熱履歴に対する色調変化(ΔEab)を検出できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、加熱時の色調変化の程度によって対象物の品質を判断できる熱履歴検出組成物に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】熱履歴と色調変化との関係を調べた結果を示したグラフ(キシロースおよびグリシンをそれぞれ1.0重量%とした場合)
【図2】熱履歴と色調変化との関係を調べた結果を示したグラフ(キシロースおよびグリシンをそれぞれ0.5重量%とした場合)
【図3】熱履歴検出組成物における酸素の影響を調べた結果を示したグラフ
【図4】粘稠組成物とした場合における熱履歴と色調変化との関係を調べた結果を示したグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシロースおよびグリシンを含有し、対象物を収容する収容容器の外面或いは内部に備えられ、加熱時の色調変化の程度によって前記対象物の品質を判断できる熱履歴検出組成物。
【請求項2】
増粘剤あるいはゲル化剤の何れかと、不溶性の白色粉末とを含有する請求項1に記載の熱履歴検出組成物。
【請求項3】
前記白色粉末が、酸化アルミニウム・酸化チタン・酸化亜鉛のうち少なくとも一種を含んでいる請求項2に記載の熱履歴検出組成物。
【請求項4】
前記キシロースおよび前記グリシンが重量比1対1で混合してある請求項1〜3の何れか一項に記載の熱履歴検出組成物。
【請求項5】
前記キシロースおよび前記グリシンの濃度がそれぞれ0.5〜1重量%である請求項1〜4の何れか一項に記載の熱履歴検出組成物。
【請求項6】
前記白色粉末の濃度が0.1〜1重量%である請求項2又は3に記載の熱履歴検出組成物。
【請求項7】
水に溶解してある請求項1〜6の何れか一項に記載の熱履歴検出組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−107226(P2010−107226A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276869(P2008−276869)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(507152970)財団法人東洋食品研究所 (14)
【Fターム(参考)】