説明

熱成形消音性充填熱可塑性ポリオレフィン組成物

本発明は、例えば、エチルビニルアセテートコポリマー、1つ又はそれ以上の直鎖状のエチレンポリマー及び/又は実質的に直鎖状のポリマー、及び充填剤、好ましくは炭酸カルシウムを含む成形自動車用途のための消音シートとして有用な充填熱可塑性ポリオレフィン組成物に関する。前記組成物は、シート押出及びそれからの製品を熱成形するために特に適合するように溶融強度及び伸長の優れた平衡を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書に参照により組み入れられる2009年11月30日に出願された米国仮特許出願第61/265,096号明細書の恩典を主張するものである。
【0002】
本発明は、エチルビニルアセテートコポリマー、1つ又はそれ以上の直鎖状のエチレンポリマー及び/又は実質的に直鎖状のポリマー、及び充填剤、好ましくは炭酸カルシウムを含む消音性複合材料に関する。詳細には、消音性複合材料は、溶融強度及び伸長との優れた平衡を有するので、シート押出及びその後の自動車製品への熱成形のために特に適している。
【背景技術】
【0003】
長年に渡り、音源と静穏に保持すべき領域との間に密集体を介在させることが消音を達成するための効果的手段であることは公知であった。鉛のシートは、薄く柔軟で高度に有効であることが多いが、高価である。従って課題は、騒音源と静寂にすべき領域との間に介在させることのできる高密度で薄く柔軟なシートを手に入れることである。
【0004】
熱可塑性又はゴム様材料のシートは、長年に渡って消音手段として使用されてきた。シートを柔軟、高密度、高強度、及び安価にすることは、何年にも渡って配合技術者に課題を投げかけてきた。一部の使用、例えば自動車用カーペット下張りには、消音シートも成形可能であることが望ましい。
【0005】
充填熱可塑性組成物の複合材料から製造された消音シートは、そのような自動車用途において使用するために周知である。熱可塑性組成物は、典型的に1つ又はそれ以上のポリマー、充填剤、及び任意で可塑剤を含んでいる。そのような高度に充填された熱可塑性組成物に対しては、米国特許第4,191,798号明細書、同第4,222,924号明細書、同第4,263,196号明細書、同第4,379,190号明細書、同第4,403,007号明細書、同第4,430,468号明細書、同第4,434,258号明細書、同第4,438,228号明細書、同第6,472,042号明細書、及び同第6,787,593号明細書によって提示されたように多数の特許が許可されている。可塑剤を含む、及び含まないポリマー及び充填剤の様々な系が提案されている。例えば、上記の特許は、エチレンインターポリマー、例えばエチレン/ビニルエステル、エチレン/不飽和モノ−若しくはジ−カルボン酸、不飽和酸のエステル、メタロセン触媒エチレン−α−オレフィンインターポリマーなどの使用を開示している。そのようなエチレンインターポリマーと他のエラストマー及びポリマーとのブレンドも提案されている。
【0006】
消音性複合材料において使用するための多数の様々なポリマーをベースとする組成物が提案されてきたにもかかわらず、商業ベースではエチレンビニルアセテートが広範に使用されてきた。シート又は平面用途のためには、そのような材料は多数の特性、例えば衝撃強度、引張、伸長、曲げ弾性及び比重の平衡を満たしながら適正な弾性率を示す。しかし、消音性組成物又は複合材料が、成形性が重要な要件である所定の用途、例えば床張り用途に使用される場合は、エチルビニルアセテートをベースとする組成物には、複雑さが極めて低い製品を形成するためにさえ十分な弾性に欠けている。しかし、適正な弾性を備える可塑剤を含む従来型のエチレン−α−オレフィンをベースとする組成物又は複合材料には、熱成形を可能にする十分な溶融強度が欠けている。そこで深絞りを備える消音用途を従来型熱成形法によって成形できるように、十分な溶融強度及び弾性の両方を有する組成物又は複合材料を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,191,798号明細書
【特許文献2】米国特許第4,222,924号明細書
【特許文献3】米国特許第4,263,196号明細書
【特許文献4】米国特許第4,379,190号明細書
【特許文献5】米国特許第4,403,007号明細書
【特許文献6】米国特許第4,430,468号明細書
【特許文献7】米国特許第4,434,258号明細書
【特許文献8】米国特許第4,438,228号明細書
【特許文献9】米国特許第6,472,042号明細書
【特許文献10】米国特許第6,787,593号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物は、素晴らしい消音特性を提供しながら深絞りが可能な優れた溶融強度及び伸長を示す組成物である。本発明の組成物は、シート押出及びその後に熱成形製品を作製するための熱成形法における使用に良好に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施形態では、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物は、
(i)好ましくは少なくとも18%のビニルアセテートを含み、及び好ましくは10〜15重量部の量で存在するエチレン/ビニルアセテートコポリマー、
(ii)1つ又はそれ以上の直鎖状のエチレンポリマー、1つ又はそれ以上の実質的に直鎖状のエチレンポリマー、若しくはそれらの混合物であって、及び好ましくは5〜10重量部の量で存在し、
(ii.a)約0.873g/cc未満〜0.885g/ccの密度、及び/又は
(ii.b)1g/10分超〜5g/10分未満のI
を有すると特徴付けられた、1つ又はそれ以上のエチレンポリマー、1つ又はそれ以上の実質的に直鎖状のエチレンポリマー、若しくはそれらの混合物、
(iii)充填剤、好ましくは炭酸カルシウム、硫酸バリウム、又はそれらの混合物であって、好ましくは65〜80重量部の量で存在する充填剤、及び
(iv)可塑剤であって、好ましくは3〜7重量部の量で存在する可塑剤を含み、
このとき重量部は該充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の総重量に基づく。
本発明の又別の実施形態では、上記に開示した組成物は、押出シートの形態にある。
又別の実施形態では、本発明は、熱成形製品を製造するための方法であって、
(A)上記に開示した充填熱可塑性ポリオレフィン組成物を含むシートを押し出す工程、及び
(B)前記シートを熱成形製品、好ましくは熱成形アンダーフード・インシュレーション、アウター/インナーダッシュ・インシュレーション、アッパー/サイドカウル・インシュレーション、スローマット・アンダーレイ、カーペット・アンダーレイ、フロアダンパー、ドア・インシュレーション、ヘッダ・インシュレーション、リアシートボトム/ストレーナー、リヤクォーター/ピラートリム、パッケージトレイ、リヤホイールハウス、トランクトリム、トランクフロア、又は感圧ダンパーに熱成形する工程
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】比較例A及びB並びに実施例1及び2についての90℃での伸長力対伸長歪み(ヘンキー歪み)のプロット図である。
【図2】比較例A及びB並びに実施例1及び2についての120℃での伸長粘度対時間のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物は、エチレンのコポリマーを成分(i)として含んでいる。好ましくは、エチレンのコポリマーは、酸部分が4個までの炭素原子を有する飽和カルボン酸のビニルエステル、3〜5個の炭素原子の不飽和モノ−若しくはジカルボン酸、及びアルコール部分が1〜8個の炭素原子を有する前記不飽和モノ−若しくはジカルボン酸のエステルからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーである。エチレン及び上記のコモノマーのターポリマーも適している。さらに、約15重量%までの一酸化炭素を含有するエチレン/ビニルアセテート/一酸化炭素のターポリマーも使用できる。
【0012】
上記によると、適切なエチレンコポリマーの例は、エチル/ビニルアセテート、エチル/アクリル酸、エチル/メタクリル酸、エチル/エチルアクリレート、エチル/イソブチルアクリレート、エチル/メチルメタクリレート、及びエチル/ビニルアセテート/一酸化炭素である。特に適切なコポリマーは、エチル/ビニルアセテート及びエチル/エチルアクリレートコポリマーである。
【0013】
コポリマーのエチレン含量は、60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、及びより好ましくは80%以上である。コポリマーのエチレン含量は、95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、及びより好ましくは82%以下である。
【0014】
コポリマーのコポリマー含量は、5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、及びより好ましくは18%以上である。コポリマーのコポリマー含量は、40%以下、好ましくは30%以下、及びより好ましくは25%以下である。
【0015】
2つ又はそれ以上のエチレンコポリマーの混合物は、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物中において該コノモノマー含量についての平均値が上記に指示した範囲内にある限り、単一コポリマーに代えて使用することができる。
【0016】
190℃、2.16kgの負荷下でのエチレンコポリマーのメルトインデックス若しくはIは、約0.1g/10分〜約150g/10分、好ましくは約0.1g/10分〜約50g/10分、より好ましくは0.1g/10分〜10g/10分、及び一層より好ましくは0.1g/10分〜1g/10分の範囲に及んでよい。
【0017】
物理的特性、特に伸長は、該エチレンコポリマーのメルトインデックスが約30を超えると低いレベルへ低下する。強度を維持するためには、より低いメルトインデックスの範囲、約0.5〜5が最も好ましい。
【0018】
一般に、エチレンコポリマーは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物中において、該充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、約1重量部以上、好ましくは約2重量部以上、より好ましくは約5重量部以上、及び一層より好ましくは約10重量部以上の量で使用される。
【0019】
一般に、エチレンコポリマーは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物中において、該充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、約30重量部以下、好ましくは約25重量部以下、より好ましくは約20重量部以下、及び一層より好ましくは約15重量部以下の量で使用される。
【0020】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物は、エラストマー成分を成分(ii)としてさらに含んでいる。好ましいエラストマー成分は、1つ又はそれ以上の実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は1つ又はそれ以上の直鎖状のエチレンポリマー(S/LEP)、又はそれらの混合物である。実質的に直鎖状のエチレンポリマー及び直鎖状のエチレンポリマーはどちらも公知である。実質的に直鎖状のエチレンポリマー及びそれらの調製方法は、米国特許第5,272,236号明細書及び同第5,278,272号明細書に十分に記載されている。直鎖状のエチレンポリマー及びそれらの調製方法は、米国特許第3,645,992号明細書、同第4,937,299号明細書、同第4,701,432号明細書、同第4,937,301号明細書、同第4,935,397号明細書、同第5,055,438号明細書、欧州特許第129,368号明細書、同第260,999号明細書、及び国際公開第90/07526号パンフレットに十分に開示されている。
【0021】
適切なS/LEPは、重合形態にあり、25℃未満、好ましくは0℃未満、最も好ましくは−25℃未満のTを有する1つ又はそれ以上のC−C20α−オレフィンを含んでいる。本発明のS/LEPがそれから選択されるポリマーの種類の例としては、α−オレフィンのコポリマー、例えばエチレン及びプロピレン、エチレン及び1−ブテン、エチレン及び1−ヘキセン若しくはエチレン及び1−オクテンコポリマー、並びにエチレン、プロピレン及びジエンコモノマー、例えばヘキサジエン若しくはエチリデンノルボルネンのターポリマーが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用する「直鎖状のエチレンポリマー」は、直鎖状骨格(即ち、架橋していない)、長鎖分岐を有していない、狭い分子量分布を有する、並びにα−オレフィンコポリマーについては狭い組成分布を有するエチレンのホモポリマー又はエチレン及び1つ又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーのコポリマーを意味する。さらに、本明細書で使用する「実質的に直鎖状のエチレンポリマー」は、直鎖状骨格を有する、特定の限定された長鎖分岐を有する、狭い分子量分布を有する、並びにα−オレフィンコポリマーについては狭い組成分布を有するエチレンのホモポリマー又はエチレン及び1つ又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーのコポリマーを意味する。
【0023】
直鎖状コポリマー内の短鎖分岐は、意図的に加えられたC−C20α−オレフィンモノマーの重合の結果として生じるペンダントアルキル基から発生する。狭い組成分布は、均質な短鎖分岐と呼ばれることもある。狭い組成分布及び均質な短鎖分岐は、該α−オレフィンコモノマーがエチレン及びα−オレフィンコモノマーの所定のコポリマー内に無作為に分布している、及び該コポリマー分子の実質的に全部が同一エチレン対コモノマー比を有するという事実を意味している。組成分布の狭さは、組成分布分岐指数(CDBI)の数値によって示され、短鎖分岐分布指数と呼ばれることもある。CDBIは、メジアンモルコモノマー含量の50%以内のコモノマー含量を有するポリマー分子の重量%であると規定されている。CDBIは、例えばWild, Journal of Polymer Science, Polymer Physics Edition, Volume 20, page 441(1982)、又は米国特許第4,798,081号明細書に記載されたように、昇温溶出分別法によって容易に計算される。本発明における実質的に直鎖状のエチレンコポリマー及び直鎖状のエチレンコポリマーについてのCDBIは、約30%より大きい、好ましくは約50%より大きい、及びより好ましくは約90%より大きい。
【0024】
実質的に直鎖状のエチレンポリマーにおける長鎖分岐は、短鎖分岐以外のポリマー分岐である。典型的に、長鎖分岐は、成長中のポリマー鎖内のβ水素化物排除によるオリゴマーα−オレフィンの現場生成によって形成される。結果として生じる種は、重合すると大きなペンダントアルキル基を生成する比較的高分子量のビニル末端炭化水素である。さらに長鎖分岐は、nマイナス2(「n−2」(式中、nは反応装置へ意図的に加えられる最大α−オレフィンコモノマーの炭素の数である))個の炭素より長い鎖長を有するポリマー骨格への炭化水素分岐であると規定することができる。エチレンのホモポリマー又はエチレン及び1つ又はそれ以上のC−C20α−オレフィンコモノマーのコポリマー内の好ましい長鎖分岐は、少なくとも20個の炭素からより好ましくはそれから分岐が吊り下がっている(ペンダント)ポリマー骨格内の炭素の数までを有する。長鎖分岐は、13C核磁気共鳴分光法を単独で、又はゲル透過クロマトグラフィー−レーザー光散乱(GPC−LALS)法若しくは類似の分析技術と併用して識別することができる。実質的に直鎖状のエチレンポリマーは、少なくとも長鎖分岐0.01個/1000個の炭素及び好ましくは長鎖分岐0.05個/1000個の炭素を含有する。一般に、実質的に直鎖状のエチレンポリマーは、長鎖分岐3個/1000個の炭素以下及び好ましくは長鎖分岐1個/1000個の炭素以下を含有する。
【0025】
好ましい実質的に直鎖状のエチレンポリマーは、プロセス条件下で高分子量α−オレフィンコポリマーを容易に重合することのできるメタロセン系触媒を使用することにより調製される。本明細書で使用するコポリマーは、2つ又はそれ以上の意図的に加えられたコモノマーの、例えばエチレンを少なくとも1つの他のC−C20コモノマーと重合することによって調製できるポリマーを意味する。好ましい直鎖状のエチレンポリマーは、例えば、反応装置に意図的に加えられるモノマー以外のモノマーの重合を許容しない条件下で、メタロセン又はバナジウム系触媒を使用する類似の様式で調製できる。実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマーのその他の基本的な特徴としては、低い残留含量(即ち、ポリマーを調製するために使用される触媒、未反応コモノマー及び重合の経過中に作製される低分子量オリゴマーのその中での低濃度)、及び分子量分布が従来型オレフィンポリマーに比較して狭くても優れた加工性を提供する制御された分子構造が挙げられる。
【0026】
本発明の実施において使用される実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマーには、実質的に直鎖状のエチレンホモポリマー又は直鎖状のエチレンホモポリマーが含まれるが、好ましくは、該実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は該直鎖状のエチレンポリマーは、約50〜約95重量%のエチレン及び約5〜約50重量%、及び好ましくは約10〜約25重量%の少なくとも1つのα−オレフィンコモノマーを含んでいる。実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマー中のコモノマー含量は、一般に反応装置に加えられる量に基づいて計算され、ASTM D2238の方法Bに従って赤外分光法を使用して測定できる。典型的に、実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマーは、エチレン及び1つ又はそれ以上のC−C20α−オレフィンのコポリマー、好ましくはエチレン及び1つ又はそれ以上のC−C10α−オレフィンコモノマーのコポリマー、並びにより好ましくはエチレン及び、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4メチル−1−ペンタン、及び1−オクテンからなる群から選択される1つ又はそれ以上のコモノマーのコポリマーである。最も好ましくは、コポリマーは、エチレン及び1−オクテンコポリマーである。
【0027】
これらの実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマーの密度は、約0.850g/cm以上、好ましくは約0.860g/cm以上、及びより好ましくは約0.873g/cm以上である。一般に、これらの実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマーの密度は、約0.93g/cm以下、好ましくは約0.900g/cm以下、及びより好ましくは約0.885g/cm以下である。実質的に直鎖状のエチレンポリマーについての、I10/Iとして測定されるメルトフロー比は、約5.63以上、好ましくは約6.5〜約15、及びより好ましくは約7〜約10である。Iは、ASTM番号D1238に従って、190℃及び2.16kg質量の条件を使用して測定される。I10は、ASTM番号D1238に従って、190℃及び10.0kg質量の条件を使用して測定される。
【0028】
実質的に直鎖状のエチレンポリマーについてのM/Mは、重量平均分子量(M)を数平均分子量(M)で割った数値である。M及びMは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。実質的に直鎖状のエチレンポリマーについては、I10/I比は、長鎖分岐度を示す。つまり、I10/I比が大きいほど、より多くの長鎖分岐がポリマー内に存在する。好ましい実質的に直鎖状のエチレンポリマーでは、M/Mは、方程式:
/M≦(I10/I)−4.63.
によってI10/Iと関係付けられる。一般に、実質的に直鎖状のエチレンポリマーについてのM/Mは、少なくとも約1.5、及び好ましくは少なくとも約2.0、約3.5以下であり、より好ましくは約3.0以下である。最も好ましい実施形態では、実質的に直鎖状のエチレンポリマーは、単一DSC溶融ピークによっても特徴付けられる。
【0029】
これらの実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマーについての好ましいI、メルトインデックスは、約0.01g/10分〜約100g/10分、より好ましくは約0.1g/10分〜約10g/10分、及び一層より好ましくは約1g/10分〜約5g/10分である。
【0030】
これらの実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマーについての好ましいMは、約180,000以下、好ましくは約160,000以下、より好ましくは約140,000以下、及び最も好ましくは約120,000以下である。これらの実質的に直鎖状のエチレンポリマー又は直鎖状のエチレンポリマーについての好ましいMは、約40,000以上、好ましくは約50,000以上、より好ましくは約60,000以上、一層より好ましくは約70,000以上、及び最も好ましくは約80,000以上である。
【0031】
実質的に直鎖状のエチレンポリマー及び/又は直鎖状のエチレンポリマーは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物中において、組成物全体の重量に基づいて、約1重量部以上、好ましくは約3重量部以上、より好ましくは約5重量部以上の量で使用される。一般に、実質的に直鎖状のエチレンポリマー及び/又は直鎖状のエチレンポリマーは、組成物全体の重量に基づいて、約20重量部以下、好ましくは約15重量部以下、より好ましくは約10重量部以下の量で使用される。
【0032】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物中の成分(iii)は、1つ又はそれ以上の充填剤である。適切な充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フライアッシュ、タルク、クレイ、マイカ、ウォラストナイト、中空ガラスビーズ、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック、グラスファイバー、チタン酸カリウム、セメント粉塵、長石、ネフェリン、ガラス、ヒュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、ガラスマイクロスフェア、又はチョークである。これらの充填剤中、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、シリカ/ガラス、アルミナ及び二酸化チタン、並びにそれらの混合物が好ましい。これらの内、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムが最も好ましい。例えば、これらの材料及びポリマー樹脂のための充填剤としてのそれらの適合性が一般に記載されている、全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,472,042号明細書、同第5,091,461号明細書、及び同第3,424,703号明細書並びに欧州特許出願第639,613(A1)号明細書及び欧州特許第391,413号明細書を参照されたい。本発明において使用される充填剤は、例えば、脂肪酸を用いてコーティングされていてもされていなくてもよい。
【0033】
その他の特性の中で、選択される充填剤の密度は、本発明による充填熱可塑性ポリオレフィン組成物において最適化された消音性能を得るための充填剤負荷レベルに影響を及ぼす。一般に、充填剤は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも約50重量部、好ましくは少なくとも約60重量部、より好ましくは少なくとも約65重量部、一層より好ましくは少なくとも約70重量部の量で使用される。一般に、組成物の総重量に基づいて、約90重量部以下、好ましくは約85重量部以下、より好ましくは約80重量部以下、より好ましくは約77重量部以下の量の充填剤。
【0034】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の成分(iv)は、可塑剤である。可塑剤成分は、幾つかの群の1つから選択することができる。第1群は、プロセス油として公知の群である。プロセス油の3つの種類は、公知のパラフィン油、芳香油、及びナフタレン油である。これらはいずれも純粋ではない。グレードは存在する主要油種類を識別する。芳香油は、本発明のブレンドから「ブリードする(にじみ出る)」傾向がある。ブリーディングは通常は望ましくないが、特殊な用途、例えば離型特性が重要であるコンクリート形においては有用な場合がある。
【0035】
ナフタレン油及びパラフィン油は、本発明の配合物中では、適正な比率で使用された場合はブリーディングしないので、これは例えば自動車カーペット裏地などの使用のためには好ましい。
【0036】
プロセス油は、粘度範囲によっても分類される。「薄い」油は、100°F(38℃)でのセーボルトユニバーサル流出秒数(SUS)が100〜500と低い可能性がある。「重い」油は、100°F(38℃)で6,000SUSと高い可能性がある。プロセス油、特に100°F(38℃)で約100〜6,000SUSの粘度を備えるナフテン油及びパラフィン油が好ましい。
【0037】
本発明の実施において使用した場合に有効である可塑剤の第2群は、エポキシ化油、例えばエポキシ化大豆油及びエポキシ化亜麻仁油を含む群である。
【0038】
本発明の実施において使用した場合に有効である可塑剤の第3群は、一般に、多塩基酸及びポリオールの液体凝縮生成物であるポリエステルである。本発明の状況における用語「液体」は、室温で注入可能であることを意味するために使用される。酸成分は、最も多くは飽和脂肪族二塩基酸であるが、又は芳香族二塩基酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸、セバシン酸、及びグルタル酸、又はこれらの酸の混合物が一般に使用される。ポリオールは、脂肪族ポリオール又はポリ−オキシアルキレンポリオール、例えばエチレングルコール、プロピレングリコール、1,4−及び1,3−ブタングリコール、ジエチレングリコール、及びポリエチレングリコールであってよい。好ましいポリエステル組成物は、その内の50重量%超が脂肪族ポリオール又は一層より好ましくは脂肪族グリコールである酸成分からなる。最も好ましい組成物は、アジピン酸若しくはアゼライン酸、及びプロピレングリコール又は1,3−若しくは1,4−ブタングリコールをベースとする。これらの可塑剤の分子量は、数百という低分子量から約10,000という高分子量まで様々であってよい。市販製品の分子量が明示されていることはほとんどない。しかし商業では、典型的に、製品の分子量範囲は、低、中、又は高と分類されている。本発明のために好ましい範囲は、中と分類されている範囲である。
【0039】
ポリエステル若しくはエポキシ化油と炭化水素油との混合物も、本発明において使用される場合は、有効な可塑剤である。そのような混合物を使用する1つの目的は、高効率の比較的高コストのポリエステル若しくはエポキシ化油を低コストの炭化水素油と結合することである。そのような混合物を用いて可塑化した化合物のコスト/パフォーマンスは、特性をより正確に調整できる、又は充填剤レベルを増加させることができるので、所定の用途に合わせて有意に改良することができる。本発明のブレンドの性能における実際的に確実な利点は、以下で考察するように、そのような混合物が可塑剤として使用された場合に得られる。
【0040】
一般に、エポキシ化油及びポリエステルはどちらも充填エチレン/α−オレフィンインターポリマーを可塑化する際にプロセス油よりも「効率的」である。つまり、同一重量%で使用した場合、それらは可塑剤としてプロセス油を含有する対応するブレンドより柔軟で高い伸長率を有するブレンドを生成する。
【0041】
ポリエステル可塑剤及び炭化水素油の混合物が使用される場合は、これら2つの成分の相対比率は、性能目的に応じて広範囲に渡って変化させることができる。50%又はそれ以下のポリエステルを含有する混合物が経済的理由から好ましく、最も好ましいのはポリエステルであれば20%又はそれ以下を含有する混合物である。
【0042】
第4群の可塑剤、ポリエーテル及びポリエーテルエステルも、本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマー及び充填剤のブレンド中で使用されると、効果的な可塑剤である。一般に、ポリエーテルは、アルキレンオキシドのオリゴマー又はポリマーであり、エチレン若しくはプロピレンオキシドのポリマーが市販で入手できる最も一般的な種類である。ポリエーテルは、様々な種類の触媒を使用するアルデヒドの重合によって、又は例えばアルキレンオキシドの酸若しくは塩基触媒重合によって調製することができる。ポリエーテルは、ジオール(グリコール)、又はグリセロールを備えるアルキレンオキシドの付加化合物、例えばトリオールなどを形成するためにヒドロキシル基を末端とすることができる。ヒドロキシル末端ポリエーテルは、酸、脂肪酸、例えばラウリン酸及びステアリン酸と反応させることもでき、化合物の一般的例は、ポリエチレン若しくはポリプロピレングリコールのモノ−及びジエステルである。ポリエーテルの分子量は、高重合体に典型的な分子量までの範囲に及んでよい。
【0043】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物中において使用される可塑剤は、該充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、約3重量部以上、好ましくは約3.5重量部以上、及びより好ましくは約4重量部以上の量で存在する。本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物中において使用される可塑剤は、該充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、約9重量部以下、好ましくは約7重量部以下、及びより好ましくは約6重量部以下の量で存在する。
【0044】
主張される本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物は、この種類の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物中で一般に使用される1つ又はそれ以上の添加物を任意で含有することもできる。例えば、スリップ剤、好ましいスリップ剤は、飽和脂肪酸アミド若しくはエチレンビス(アミド)、不飽和脂肪酸アミド若しくはエチレンビス(アミド)又はそれらの組合わせである。その他の任意の添加物としては、発火抵抗性添加物、安定剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、耐電防止剤、流動強化剤、離型剤、例えばステアリン酸、ステアリン酸金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム)、清澄剤を含む成核剤などが挙げられるがそれらに限定されない。添加物の好ましい例は、発火抵抗性添加物、例えばハロゲン化炭化水素、ハロゲン化炭酸塩オリゴマー、ハロゲン化ジグリシジルエーテル、有機リン化合物、フッ素化オレフィン、酸化アンチモン及び芳香族硫黄の金属塩であるがそれらに限定されない、又はそれらの混合物を使用できる。さらに、それらに限定されないが熱、光線、及び酸素、又はそれらの混合物によって誘発される分解に対してポリマー組成物を安定化させる化合物を使用できる。
【0045】
そのような添加物は、使用される場合、組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.01重量部、好ましくは少なくとも約0.1重量部、より好ましくは少なくとも約0.5重量部、より好ましくは少なくとも約1重量部、より好ましくは少なくとも約2重量部、及び最も好ましくは少なくとも約5重量部の量で存在してよい。一般に、添加物は組成物の総重量に基づいて、約25重量部以下、好ましくは約20重量部以下、より好ましくは約15重量部以下、より好ましくは約12重量部以下、及び最も好ましくは約10重量部以下の量で存在する。
【0046】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の調製は、反応装置内で調製する、粉末−粉末混合、又は好ましくは個別成分を乾式混合し、その後に(例えば、Banburyミキサー、押出機、ロールミルなどを使用して)溶融混合する工程を含む当分野において公知の任意の適切な混合手段によって実施することができる。本発明の溶融混合された充填熱可塑性ポリオレフィンは、最初にペレットへ細かく砕き、次に引き続いてシートを調製するために押し出す、又はシートを調製するための押出機へ溶融状態で直接的に運ぶことができる。
【0047】
本発明の組成物のための主たる使用は、おそらく特に熱成形に使用するためのシート領域にある。シートを押し出す方法は、当分野において周知である。押出シートは、熱成形法の準備において切断される。シートの寸法(即ち、長さ、幅、及び厚さ)及び/又はシートの重量は、充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の密度並びにそれから製造される熱成形製品に特定の意図される用途に応じて変動する。許容できる寸法及び/又は重量を備えるシートを提供する任意のシート押出法を許容できる。
【0048】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物のシート押出は、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、及び最も好ましくは140℃以下の温度で実施される。シート押出は、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、及びより好ましくは130℃以上の温度で実施される。本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物のシート押出のために好ましい目標温度は、140℃である。
【0049】
好ましくは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物を含む切断された押出シートは、熱成形製品を製造するための熱成形法において利用される。シートを成形製品に熱成形するための方法は、周知である。シートは、正熱成形(「雄」熱成形と呼ばれることもある)又は負熱成形(「雌」熱成形と呼ばれることもある)によって製品に成形することができる。
【0050】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物を含むシートの熱成形は、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、及び最も好ましくは130℃以下の温度で実施される。本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物を含むシートの熱成形は、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、及びより好ましくは100℃以上の温度で実施される。本発明のエラストマー組成物を含むシートを熱成形するために好ましい目標温度は、110℃である。
【0051】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物は、他の特性、消音、緩衝、絶縁、及び/又は吸光を提供する自動車製品において成形され、特に熱成形されるのに有用である。例えば、アンダーフード・インシュレーション、アウター/インナーダッシュ・インシュレーション、アッパー/サイドカウル・インシュレーション、スローマット・アンダーレイ、カーペット・アンダーレイ、フロアダンパー、ドア・インシュレーション、ヘッダ・インシュレーション、リアシート・ボトム/ストレーナー、リヤクォーター/ピラートリム、パッケージトレイ、リヤホイールハウス、トランクトリム、トランクフロア、感圧ダンパーなど。
【0052】
本発明者らは、特定の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物が、(1)シートに押出する、及び(2)前記シートを製品に熱成形する両方のためにいかに良好に適合するかを予測する、充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の3つの有用な特性を同定した。これら3つの特性は、組成物のレオロジー特性(それが押し出される条件下でいかに良好に押し出されるかに関する)、その溶融強度(熱成形の加熱工程中のシートのたるみ特性に関する)、及びその伸長(深絞りを有する製品に成形された場合に加熱されたシートがその完全性を維持する能力に関連する)である。
【0053】
試験方法
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物のレオロジーを使用して、本組成物がいかに良好にシートに押し出されるかを予測する。本組成物のレオロジーは、Rubber Process Analyzer(RPA)によるレオロジーによって決定する。RPAは、150℃でAlpha Technologies社製のRubber Process Analyzer上で実施される高温レオロジー測定である。サンプルプラークは、Carver社製卓上プレス上で調製する。材料は、10パスカル(Pa)の圧力で5分間に渡り190℃で溶融物を保持した圧縮チェース内に配置し、40°Fに設定した冷却器を使用しておよそ4分間に渡り冷却する。試験片の厚さは、およそ2mmである。サンプルは、フィクスチャーへの付着を回避するために極薄MYLAR(商標)シート間で圧縮する。レオメーター・オーブンは、150℃で平衡させる。歪みは、0.1rad/s〜100rad/sの周波数掃引を実施する15%に設定する。ダイの型はバイコニカルであり、ダイ間隔は0.487mmである。複素粘度は、パスカル秒(Pas)として報告される。
【0054】
好ましくは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物は、150℃及び100rad/sの剪断速度で2,000Pas以上、好ましくは2,000Pas以上、及びより好ましくは2,100Pas以上の複素粘度を有する。好ましくは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物は、150℃及び100rad/sの剪断速度で2,475Pas以下、好ましくは2,375Pas以下、及びより好ましくは2,325Pas以下の複素粘度を有する。
【0055】
伸長歪み及び伸長力は、TA Instruments社(デラウェア州ニューキャッスル)製のARESレオメーター上に取り付けられたTA Instruments社製の伸長粘度フィクスチャー(EVF)によって、90℃〜120℃で0.1s−1(秒の逆数)のヘンキー歪み速度で測定する。サンプルプラークは、プログラム制御可能な4面体の卓上プレス上で、Teflonコーティングチェースを使用して調製する。このプログラムは、10パスカル(Pa)の圧力で5分間に渡り177℃で溶融物を保持する。プラークを冷却させるために、Teflonコーティングチェースを卓上から取り除く。次に試験片は、パンチプレス及び10×18mm(幅×長さ)の寸法を備える取手付きダイを使用してプラークからダイ切断する。試験片の厚さは、約0.7〜0.9mmである。
【0056】
EVFフィクスチャーを取り囲むレオメーター・オーブンは、フィクスチャーをゼロ化する前に少なくとも60分間に渡り試験温度に応じて90℃、又は120℃の試験温度に設定する。各薄膜の幅及び厚さは、薄膜の3カ所の異なる場所で測定し、平均値を試験プログラム(TA Orchestrator version 7.2)に入力する。サンプルの室温での1.783g/cc及び試験温度での1.4g/ccの密度も、プログラムが試験温度での薄膜の正確な寸法を計算できるように試験プログラムに入力する。薄膜試験片は、ピンによってフィクスチャーの2つのドラム各々に取り付ける。次に、試験開始前に温度を平衡させるためにオーブンを閉鎖する。試験は3つのゾーンに分けられる。第1ゾーンは、11秒間に渡り0.005s−1の超低歪み速度で薄膜を伸長させる予備伸長ゾーンである。この工程の目的は、薄膜に負荷が変えられた時点に導入される薄膜のバックリングを減少させることである。この後に、予備伸長工程において導入される応力を最小限に抑えるための60秒間の弛緩ゾーンが続く。第3ゾーンは、薄膜が事前に設定されたヘンキー歪み速度で伸長される測定ゾーンである。歪み、伸長力、伸長速度、トルク、粘度、時間、及び温度が第3ゾーンで収集され、分析に使用される。
【0057】
120℃で0.1s−1の歪み速度での伸長粘度を使用して、材料がオーブンから深絞り熱成形ツールへ移動させられた場合に充填熱可塑性ポリオレフィン組成物が十分な溶融強度を有するかどうかが決定される。好ましくは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物についての120℃で0.1s−1の歪み速度での伸長粘度は、5秒で200,000Pas以上、好ましくは5秒で225,000Pas以上、及びより好ましくは5秒で250,000Pas以上である。好ましくは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物についての120℃で0.1s−1の歪み速度での伸長粘度は、5秒で350,000Pas以下、好ましくは5秒で325,000Pas以下、及びより好ましくは5秒で300,000Pas以下である。
【0058】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の歪み曲線に対する90℃で0.1s−1重量の歪み速度での伸長粘度からの最大伸長力を使用して、本組成物がリッピングを伴わずに深絞り領域において完全に引き下ろすために十分に弾性でありながら、熱成形ツールのポートから引き抜かれるにつれて増加する真空圧に抵抗するために十分な強度を有するかどうかが予測される。好ましくは、本発明の充填熱可塑性組成物は、90℃で0.1s−1の歪み速度で、約30重量グラム以上、好ましくは約31重量グラム以上、及びより好ましくは約32重量グラム以上の伸長力を有する。好ましくは、本発明の充填熱可塑性組成物は、90℃で0.1s−1の歪み速度で、約42重量グラム以下、好ましくは約40重量グラム以下、及びより好ましくは約38重量グラム以下の伸長力を有する。
【0059】
本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物についての90℃で0.1s−1の歪み速度での伸長粘度からのヘンキーの伸長歪みは、好ましくは約3.86以上、好ましくは3.89以上、及びより好ましくは3.92以上である。好ましくは、本発明の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物についての90℃で0.1s−1の歪み速度での伸長粘度からのヘンキーの伸長歪みは、約4.1以下、より好ましくは約4.07以下、及びより好ましくは約4.04以下である。
【0060】
本発明の実施を説明するために、以下では、好ましい実施形態の実施例を記載する。しかしこれらの実施例は、決して本発明の範囲をいかなる様式によっても限定するものではない。
【実施例】
【0061】
比較例A及びB並びに実施例1及び2は、EVA、エラストマー、炭酸カルシウム、及び油成分を含んでいる。全成分は、以下の手順を使用して乾式混合する。EVA、エラストマー、及びカラー濃縮物を計量し、容器1内で一緒に乾式混合する。CaCOの半量、油の半量及びステアリン酸の全量を容器2内で乾式混合する。残りのCaCO及び油は、容器3内で混合する。Kobelco型OM実験室用ミキサーを使用して、材料を溶融混合し、加熱装置を98℃に設定した。容器1内の内容物をKobelco混合チャンバ内へ入れ、ポリマーを融解させるためにおよそ3分間に渡り75rpmで回転させた。回転を停止させ、容器2の内容物、油の半量、CaCoの半量、及びステアリン酸の全量を加える。機械を85rpmに設定し、混合物をさらに1.5分間に渡り混合する。装置を停止させ、シュートに付着している粉末混合物を取り除くためにラムシュート(ram chute)の側面を削り取る。装置は、さらに1.5分間に渡り85rpmで逆回転させる。容器3の内容物であるCaCO及び油混合物の残りの半量を加え、さらに2分間回転させる。この装置をさらに1.5分間後にさらに2回掃引する。全混合時間は、15分間を超えてはならない。ブレンドは、チャンバ内で溶融温度が180℃に達するまで、及びその後さらに2分間に渡り混合し続ける。装置が180℃に達せずにブレンドの粘度が低い場合は、回転数を調整してより高い剪断熱を適用することができる。
【0062】
高温混合材料をミキサーから取り出し、手作業でKobelco型OP2軸ロールミル上のロールの一番上に置く。ロール温度を45℃に設定すると55℃の実際温度となる。材料がロールから排出されるにつれて、出口方向へ垂直に方向を変えて再びミルを通過するために十分に小さなサイズに折り畳まれる。各材料にミルを3回通過させるために同一手順を繰り返す。これでシートから全ての空隙が押し出されることが保証される。材料は冷却するに任せる。
【0063】
サンプルは、上記に記載したように特性評価を行うために圧縮成形する。
【0064】
比較例A及びB並びに実施例1及び2についての組成物は、全組成物の重量に基づいて重量部で以下の表1に提示した。表1では、
「EVA」は、190℃、2.16kgの負荷下で0.941g/ccの密度、0.7g/10分のIを有するDuPont社からELVAX(商標)470として入手できる18重量%のビニルアセテートを含有するエチレン−ビニルアセテートコポリマーである、
「SLEP−1」は、190℃、2.16kgの負荷下で0.885g/cmの密度及び1g/10分のMFRを有する、Dow Chemical社からENGAGE(商標)8003ポリオレフィンエラストマーとして入手できる、実質的に直鎖状のエチレン−オクテンコポリマーである、
「SLEP−2」は、190℃、2.16kgの負荷下で0.870g/cmの密度及び5g/10分のMFRを有する、Dow Chemical社からENGAGE8200ポリオレフィンエラストマーとして入手できる、実質的に直鎖状のエチレン−オクテンコポリマーである、
「SLEP−3」は、190℃、2.16kgの負荷下で0.875g/cmの密度及び3g/10分のMFRを有する、Dow Chemical社からENGAGE8452ポリオレフィンエラストマーとして入手できる、実質的に直鎖状のエチレン−オクテンコポリマーである、
「CaCO」は、粒子の内の少なくとも90%はサイズが5ミクロン以下であるCarmeuse Natural Chemicals社から入手できるコーティングされていない炭酸カルシウムである、
「油」は、ASTM D341に従って40℃で471センチストーク(cSt)の粘度及び15.6℃で0.894の比重を有する、Ergon−West Virginia社からのHYPRENE(商標)P150BSとして入手できるパラフィン油である、
「ステアリン酸」は、ACME Hardesty社から70%ステアリン酸VEG−FGKとして入手できる、及び
「ブラック」のカラー濃縮物は、A.Schulman社からPOLYBLACK(商標)46515Fとして入手できる。
比較例A及びB並びに実施例1及び2の特性は、以下の試験に従って決定する。結果は、表1に列挙した。
「RPA」レオロジーは、上記に記載したようにRubber Process Analyzer法によって決定する、及び
「ヘンキー歪み」及び「最大伸長力」は、上記に記載したように伸長粘度フィクスチャー(EVF)によって測定する。図1は、比較例A及びB並びに実施例1及び2についての90℃での伸長力対伸長歪み(ヘンキー歪み)のプロット図である。図2は、比較例A及びB並びに実施例1及び2についての120℃での伸長粘度対時間のプロット図である。
【0065】
実施例3は、実施例2と同一組成物を含むが、市販サイズに規模が拡大されている。EVA、ENGAGE 8452エラストマー、CaCO、油、ステアリン酸、及びカーボンブラックのカラー濃縮物を乾式混合し、Farrel Continuous Mixer(FCM)へ連続的に供給する。ミキサーは、全ポリマーを融解させて粉末を分散させ、押出機が供給不足とならない速度でさらに回転させるために材料を十分に長時間混合するために十分に大きな放出開口サイズを用いて370rpmで回転させる。
【0066】
溶融材料は、およそ150℃に温度制御されて24rpmで回転する単軸押出機へ運ばれる。材料は、ダイ、及び次に4℃の設定点を備える冷却器を有するカレンダーロールを通して押し出される。カレンダーロールは材料を、トリミング後に約72.5インチ×約40.5インチ×約0.12インチのサイズのシートを生じさせる、およそ1.0lb/ftの密度の最終シートに圧縮した。シートの厚さは、充填剤の負荷、及び従ってシートに作製される材料の密度に依存する。例えば、充填剤の濃度が高くなり、密度が高くなると、結果として生じるシートは適切な仕様のためには1lb/ftを維持するために薄くなる。
【0067】
生じたシートは、ダッシュマットに熱成形する。シートを熱成形するための温度は、オーブン内の素子の出力及び時間量が制御される変量であるオーブン内で調節する。この用途では、シートはオーブン内で、シートがオーブンから出るシートの前縁での90℃からシートの後縁での130℃の温度で加熱する。オーブンは、32秒間は80%の出力で稼働させ、シートは、持ち上げて移動させて工具の上方へわずかに伸長させたときに垂れ下がるほど十分柔軟であるが、工具の上にゆったりと掛ける前に伸長し続けて裂けるほどは柔軟ではない。
【0068】
吸着カップを備えるロボットがシートの方に移動し、オーブンコンベヤからシートを持ち上げて工具の上方に移動させる。材料を引き延ばして工具上に降ろす。ロボットは真空が適用されるまで材料を工具に保持するのを補助し、材料は最深絞りセクションが完了するまで工具へ空気圧により保持される。真空はパーツが形成されるときに減速されないので、真空圧は熱成形法中に多数のポートが遮断されるにつれて増加する。パーツが形成された後、パーツを工具から取り除く。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填熱可塑性ポリオレフィン組成物であって、
(i)エチレン/ビニルアセテートコポリマー、
(ii)1つ又はそれ以上の直鎖状のエチレンポリマー、1つ又はそれ以上の実質的に直鎖状のエチレンポリマー、又はそれらの混合物であって、これは、
(ii.a)約0.873g/cc未満から0.885g/ccの密度、及び/又は
(ii.b)1g/10分超から5g/10分未満のI
を有すると特徴付けられ、
(iii)充填剤、及び
(iv)可塑剤
を含む、充填熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の充填熱可塑性ポリオレフィン組成物であって、
(i)前記エチレン/ビニルアセテートコポリマーは、10〜15重量部の量で存在し、
(ii)前記1つ又はそれ以上の直鎖状のエチレンポリマー、1つ又はそれ以上の実質的に直鎖状のエチレンポリマー、若しくはそれらの混合物は、5〜10重量部の量で存在し、
(iii)前記充填剤は、65〜80重量部の量で存在し、そして
(iv)前記可塑剤は、3〜7重量部の量で存在し、
このとき重量部は充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の総重量に基づく、充填熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項3】
前記エチレン/ビニルアセテートコポリマーは、少なくとも18%のビニルアセテートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
押出シートの形態にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
熱成形製品を製造するための方法であって、
(A)充填熱可塑性ポリオレフィン組成物を含むシートを押し出す工程であって、該組成物は、
(i)10〜15重量部のエチレン/ビニルアセテートコポリマー、
(ii)5〜10重量部の1つ又はそれ以上の直鎖状のエチレンポリマー、1つ又はそれ以上の実質的に直鎖状のエチレンポリマー、又はそれらの混合物であって、これは、
(ii.a)約0.873g/cc未満から0.885g/ccの密度、及び/又は
(ii.b)1g/10分超から5g/10分未満のI
を有すると特徴付けられ、
(iii)65〜80重量部の充填剤、及び
(v)3〜7重量部の可塑剤
を含み、このとき重量部は充填熱可塑性ポリオレフィン組成物の総重量に基づき、そして、
(B)前記シートを熱成形製品に熱成形する工程
を含む、方法。
【請求項7】
熱成形製品の形態にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
熱成形アンダーフード・インシュレーション、アウター/インナーダッシュ・インシュレーション、アッパー/サイドカウル・インシュレーション、スローマット・アンダーレイ、カーペット・アンダーレイ、フロアダンパー、ドア・インシュレーション、ヘッダ・インシュレーション、リアシート・ボトム/ストレーナー、リヤクォーター/ピラートリム、パッケージトレイ、リヤホイールハウス、トランクトリム、トランクフロア、又は感圧ダンパーの形態にある、請求項1に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−512309(P2013−512309A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541120(P2012−541120)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057319
【国際公開番号】WO2011/066177
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【出願人】(512140201)エントウィックラングスゲゼルシャフト フルール アクスティク エムベーハー (1)
【Fターム(参考)】