説明

熱成形用の装置と成形方法

【課題】
熱成形の賦形から離型の過程において、賦形体を高速で加熱し、あるいは高速で加熱すると共に冷却行程に賦し、特に賦形前の予熱シート温度以上の高温で熱処理を行って離型する熱成形を高速で効率良く連続的に行うことのできる熱成形装置と成形方法を提
供する。
【解決手段】
樹脂シートの圧空ボックスによる圧空成形を行う熱可塑性樹脂シートの熱成形装置において、圧空ボックスとして、1)圧縮気体を加熱するか又は加熱圧縮気体を導入し、これを圧空ボックス内の天面に設けた複数の孔から圧空空間に送出しながら、2)同時並行で、この圧空空間に送出された気体を上記天面に設けた別の複数の孔から収容し外部へ排気するように構成したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑樹脂のシート又はフイルムを用いた熱成型品の製造方法に関るものであり、熱成形中の賦形体を高速で加熱及びまたは冷却することに関し、更には結晶性熱可塑性樹脂の熱成形の過程において、シートの予熱温度より高温の熱処理を行い、耐熱性、透明性等、機械強度等の特性の高い熱成形品を高速で効率よく製造することに関し、なかんずく結晶性樹脂の延伸シートを用いてこの熱成形を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
熱成形法は予熱された熱可塑性樹脂シートまたはフイルムを成形型に押圧または真空引きにて賦形し離型する方法であるが、通常は賦形体は低温の金型で冷却された状態で離型される。金型材料としてはアルミニウム、亜鉛合金などの軽量で加工性がよく、かつ熱伝導率の良い材料が使われ自然放熱で連続成形されることが多い。しかしそれでも特に温度調節を行いたい場合は成形型内部に設けたジャケットに熱媒体を通じて冷却することも行われる。一方、木材、プラスチックのような安価で加工し易い材料が使用されることがあるがこうしたものは、耐久性がなく、また温度調節が難しく熱蓄積などが問題となるため連続大量生産には向かず、枚葉成形機でのサンプル試作あるいは少量生産などに使用が限られる。
そして、特殊な成形方法として成形サイクル中に賦形体を任意に加熱したり冷却しようとするときは、上記のジャケットに通す熱媒を途中で熱媒を変更したり、あるいは賦形体を別に温度調整した金型へ移しかえたりすることが行われる。しかしこのような方法では所望の熱処理を行った成形品を高速で連続的に効率よく製造することはできない。
【0003】
特別な加熱あるいは冷却を必要とする具体的な熱成形方法として、(1)特公昭56−7855号はポリエステルシートを1軸延伸配向させて加熱収縮させたシートを用いて熱成形する方法で、成形時に熱風を用いるなどにより熱固定する方法が開示されているが、熱処理に非常に長い時間がかかっており実用的ではない。また、(2)特公平5−45412号では、特定条件で2軸延伸し熱収縮させたシートを用いて熱成形と熱処理を行う方法が開示されている.ここでは、加熱型へ移し替える方法、熱風、熱水、赤外線になどよる加熱法が提案されているが、具体的には記載されておらず、単純にこれらを実行してもその効果はなく、またあったとしても高速で効率のよい実用的な方法とはならない。(3)特公昭60−031651号も特定のポリエステル延伸シートを熱成形し熱処理する方法で、加熱された金型で成形することは示されているが、金型あるいは成形品を冷却して離型することについては触れられていない。しかし、このような材料の熱処理成形には成形体を少なくとも熱処理温度より低い温度に冷却して離型することが望ましいが、知られた方法でこれを行うとすれば、金型自体を電熱ヒーターで予め加熱しておいて成形直後に金型のジャケットに通水して冷却する方法、あるいは金型マニホールドに高温熱媒、低温熱媒を交互に通ずる方法などが考えられる。しかしこうした方法では高速で連続成形を行うことはできない。また(4)特許2532730号では、非延伸の結晶性PETシートを加熱された雌型で成形しこれを低温の雌型に移して冷却し離型する方法が示されているが、金型移行に際しては、成形品の変形、位置ずれ、シワの発生が問題となり、またそのような操作ができる特殊な専用成形装置をつくる必要がある。
また(5)特公平7−102608号は、高温の雌型で成形し、これに嵌合する低温の雄型に引き取って冷却し離型する方法を示しているが、これも金型移行の方法と云ってよく(4)同様に成形の変形やシワが問題となり、又オフセットやアンダーカットのある成形品には適用し難い。またこうした例とは別に、(4)(5)のようないわゆるCPETの成形では最初から高温の金型で成形すると、金型面で成形材料の滑りが悪いため波や凹凸などの不均一模様が出やすいというような問題もあり、これを避けるために最初低温金型で成形し高温金型に移行するプロセスも知られているが、これもやはり煩雑である。
また(6)特許4044876号の開示は、シート予熱時にサグ(加熱時のシートの垂れ下がり)が問題となりやすい樹脂材料の熱成形に関するもので、このような材料では通常、多孔の加熱板に材料シートを短時間吸着させて後、そこから離して賦形がなされる。この方法の場合は、熱板吸着時の傷あとなどを回避しようとするもので、加温された弱い空気の圧力でシートを下支えしながら加熱し、次いで熱板を通過させた空気で追加予熱しながら圧空成形するもので、賦形後に予熱温度以上の温度で熱処理することも、積極的に冷却して離型することも必要ではなく、これを行う示唆もされていない。なお、本発明の装置で成形する延伸シートは予熱に収縮作用を起こすのでシートを固定してこれを行えば緊張状態となりサグの問題は発生せず、引例の作用機構は必要としない。
また(7) 特許4057487号の開示する方法は、結晶性樹脂の熱成形に関し、加熱板に接触させて予熱されたシートを、熱板を通過する高温空気と成形金型にて圧空賦形し、次いで別に準備した冷却空気噴射の手段を運び込んで冷却するものであるが、この加熱板はシート予熱適温に調整されており、背後から加熱された空気が供給されて加熱圧空がなされる。この場合、加熱気体は加熱板中を通る導管内で冷やされ、また熱処理には非常な高温度気体を通す必要があの、その場合加熱板温度を局部的にして不均一にし、また材料シートを局部的に過熱し良好な成形に支障きたしやすい。また、開示された冷却手段では広い面積を均一に。効率的に冷却できない。また高温気体からの熱は容易に金型に逸散して短時間に容易にシートを高温にできず、高速成形ができない。
なお、(8)本発明の発明者(以下本発明者と称する)は本発明に関わりのある少なくとも8件の先行出願を行っている。これらに関しては、本文中の関連箇所で適宜紹介して説明することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭56−7855号公報
【特許文献2】特公平5−45412号公報
【特許文献3】特公昭60−031651号公報
【特許文献4】特許2532730号公報
【特許文献5】特公平7−102608号公報
【特許文献6】特許4044876号公報
【特許文献7】特許4057487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。その主な目的は、熱成形の賦形から離型までの過程において、賦形体を高速で加熱しそして必要により高速で冷却し、特に賦形前の予熱シート温度以上の高温で熱処理を行って離型する熱成形を高速で効率良く連続的に行うことができ、また均一で良好な状態の成形品が得られる熱成形装置を提供するものである。
【0006】
(1)樹脂シートの圧空ボックスによる圧空成形を行う熱成形装置において、圧空ボックスとして、1)圧縮気体を加熱するか又は加熱圧縮気体を導入し、これを圧空ボックス内の天面に設けた複数の孔から圧空空間に送出しながら、2)同時並行で、この圧空空間に送出された気体を上記天面に設けた別の複数の孔から収容し外部へ排出するように構成したものを用いる熱可塑性樹脂シートの成形装置を提供するものである。
なお、上記の圧空ボックス内の天面は、賦形工程で成形型と対向して圧空空間を形成する面である。
なお、上記気体を送出する孔の開口部と収容する孔の開口部は高低差(天面が水平であるとして)がある事が好ましくまた、その何れかが賦形体までの距離が小さいことは望ましい。
なお、上記圧空ボックスは、それ自体としてボックス形状の圧空空間を有してしていなくてもよく、樹脂シートと接触する経過を経ずに実質的な圧空空間を形成できる構造体であればよい。
なお、本発明の構成には冷却媒体を噴射して行う冷却手段を備えることが好ましい。
なお、本発明においては、「賦形」ならびに「賦形工程」は成形工程の中の一部の操作を示し、「賦形体」は、成形型に保持された状態にある離型前の成形品を示すものとする。また圧空成形は圧空工程を含む成形方法を示し、圧空賦形は全成形工程の中の賦形工程の方法を示すものとする。なお、圧空は気体圧を付与すること意味するものとする。
【0007】
(2)冷却媒体を噴射して行う冷却手段を成形型周辺に配置して、上記圧空ボックスの成形型からの離反後に、成形型の上部に対してこの冷却手段を進行させるか、又は上記成形型を上記冷却手段の下部に進行させて賦形体を冷却するように構成したことを特徴とする上記(1)に記載の成形装置を提供するものである。
【0008】
上記圧空ボックスと冷却媒体を噴射して行う冷却手段が一体として成っている
ことを特徴とする上記(1)から(2)の何れかに記載の成形装置を提供するものである。
【0009】
(4)上記冷却手段が、冷却用気体の噴射ノズルと噴射された気体を整流して側面方向に排気する通路を備えた構成のものであることを特徴とする上記(1)から(3)の何れかに記載の成形装置を提供するものである。
なお、ここでいう通路は、固体物体により区画されたものであってもよく、また冷却噴射とは別の流体噴射により形成されたものであってもよい。
なお、上記冷却手段において、上記通路を通ずる排気を吸引して排気を促進する手段を備えたものであることは好ましい。
【0010】
(5)成形型として、熱浸透率(kJ/m2s1/2K)が0.01〜15である材料により少なくとも成形用表面を形成させたものを用いることを特徴とする上記(1)から(4)の何れかに記載の熱成形装置を提供するものである。
なお、ここでいう成形用表面の定義には、成形用表面に塗布される潤滑、離型等のための塗布剤、50μm以下の塗料あるいはメッキは除外される。
この成形型の具体的な構成として上記の材料で単体構成されていてもよいが、1)上記所定材料による表面層と、表面層のそれより大きな熱浸透率を有する材料により表面層に密接した背後層を設けけた構成であることが好ましく、また更に2)表面層の背後に略全面に密接して加熱手段を設けるか又は上記の背後体に加熱手段を設けた構成であることが好ましい。
なお、表面層形成材料の熱浸透率は10以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましい。
【0011】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載の成形装置を用いた樹脂シートの成形方法であって、樹脂シートの予熱工程、賦形工程、このシートの予熱温度以上の高温で熱処理する熱処理工程、そして冷却工程を備える熱可塑性樹脂シートの成形方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の成形装置を用いる熱成形には下記のような効用がある。
1)本発明の装置は、樹脂シートを予熱賦形し離型するまでの過程において樹脂シートの予熱温度を大幅に上回る高温で熱処理し、次いで冷却して離型するプロセスを非常な高速で、連続的に、効率的にそして安定に実行することができる。
2)特に本発明の構成に上記の圧空ボックスを用いることにより、高温気体の噴射の継続とその制御が容易になる。その結果、a)賦形体の均一で強力な加熱昇温ができ、熱処理時間の短縮ができる。b)均一で強力な加熱昇温ができるので、成形型の温度設定を低くすることができ、冷却時間を短縮することができる。c)均一で強力な加熱昇温ができるので成形型構成の設計自由度が大きくなり低価格成形型も利用できる。
3)上記のような成形型を用いることにより、賦形体の加熱冷却を伴う成形を高速で効率行うことができる。そして、応用できる成形材料対象を広げることができ、エネルギー消費を節約した生産を行うことができる。
4)広範囲の樹脂で、容易に熱処理された各種成形品の製造が可能となった。
具体的な用途を挙げると、a)PET等の結晶性樹脂の延伸シートの熱固定を伴う成形、b)結晶核剤添加PET(CPET)等の結晶性樹脂シートの結晶化を伴う成形、あるいはまたc)ポリプロピレンのSPPF成形(固相高圧成形)に伴う残留応力歪緩和してする熱処理成形を提案することができる。d)非結晶性(アモルファス)樹脂の熱成形でも残留歪みをなくし、寸法精度の高い製品をえることができる。
5)特に、延伸PETでは、耐熱性、透明性、剛性等の機械強度の優れた熱成形品を能率よく生産することができ、又、剛性を利用し省材料の成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の成形装置構成例の主要部を示す断面図である。
【図2】図1の圧空ボックスの下面を示す平面図である。
【図3】公知の圧空ボックスを利用した仮の成形装置構成の断面図である。
【図4】本発明に用いる圧空ボックスの別の態様例を示す断面図である。
【図5】本発明の成形装置を構成する冷却手段を示す断面図である。
【図6】本発明の成形装置構成の別の態様例を示す断面図である。
【図7】本発明の成形装置構成の更に別の態様例を示す断面図である。
【図8】本発明の成形装置を構成する成形型を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<成形装置の全体構成>
本発明の成形装置は、熱成形機である真空成型機、圧空成形機若しくは真空圧空成形機を構成するものである。真空賦形機能を持たない圧空成形機等の場合は、少なくとも冷却工程で、賦形体を成形型へ吸引固定する機構を付加して構成させることが好ましい。成形材料である樹脂シートの予熱は、加熱オーブン等を利用する間接加熱、あるいは加熱板に接触させる直接加熱など公知のどのような方式を採用してもよく、また特別な方式として、賦形位置で熱気流あるいは赤外線照射により予熱を行ってもよく、あるいは予熱を行いながら賦形を行うようにしてもよい。
本発明の装置構成に用いる圧空ボックスは、1)圧縮気体を加熱するか又は加熱圧縮気体を導入し、これを圧空ボックス内の天面に設けた複数の孔から圧空空間に送出しながら、2)同時並行で、この圧空空間に送出された気体を上記天面に設けた別の複数の孔から収容し外部へ排気するように構成する。このような構成にすることにより、圧空賦形と同時に、あるいは圧空賦形に続けて送出気体の流れを継続させることができ、賦形体の加熱昇温を効果的に行うことができる。
上記の圧空ボックスは、圧空賦形と賦形後の熱処理昇温に好都合に利用することができる。しかし圧空賦形には利用せず、真空賦形後の熱処理昇温にのみ利用することもできる。また、樹脂シートの予熱にも利用できるように構成することも可能である。
上記の圧空ボックスをプレス機の天板に固定し、その直下の底板には成形型を固定し、天板と底板の少なくとも何れかを上下可動にして、圧空ボックスと成形型の接合離反を可能にする。
そして、冷却媒体を噴射して行う冷却手段を成形型周辺に配置して、上記加熱板の成形型からの離反後に、賦形体を保持した成形型の上部に対してこの冷却手段を進行させるか、又は上記成形型を上記冷却手段の下部に進行させて賦形体の冷却工程を実施できるようする。
あるいはまた、上記圧空ボックスと冷却媒体を噴射して行う冷却手段が一体にして構成する。この場合冷却手段から噴射された気体は圧空ボックスの排気ルートを経て排気することができ、効率的に噴射冷却を継続することができ、好ましい構成とすることができる。
あるいはまた、特別な冷却手段を配置せず、上記圧空ボックスの2種類の多孔群のどちらか一方、好ましくは吸気する多孔群を利用して、賦形体の熱処理後にバルブを切り替えて冷却媒体の噴射すように構成してもよい。この場合他方の多孔群を排気に利用すれば冷却噴射継続して行うことができ好都合である。
成形用の樹脂シートは、予熱され、賦形され、熱処理され、冷却手段により冷却され、離型される。成形終了後は、圧空ボックス、冷却手段、成形型は所定の位置に復帰しているようにする。
なお、本発明の構成においては、賦形体の熱処理を可能にする条件設定が可能であることが必要であり、それはa)賦形体へ向けて送出される高温気体による方法、b)賦形体へ向けて放射される赤外線による方法、c)加熱温調された成形型による方法により行われる。本発明においては、熱処理昇温はa)の方法のみにより行ってもよく、b)あるいはc)の方法と合わせて行ってもよい。 b)については賦形体上空に赤外線放射源を配置しておこなうことができ、圧空ボックス内の底面から赤外線放射ができるようにすれば実施は容易である。c)の成形型については<成形型についての欄>で詳述する。a)、b)については<圧空ボックスについて>の欄で詳述する。
【0015】
上記の全体構成例を図1に示す。この例は、プレス機底板上に成形型構成60が、プレス機天板に排気本体21及び送気本体31からなる圧空ボックス30が固定され、成形型近辺に冷却手段40が水平移動可能に配置された構成である。なお100は成形材料の樹脂シートである。プレス機、予熱手段、高温圧縮気体生成装置等は本図から省かれている。
本図では、予熱された樹脂シート100が成形型60の上部に導入された状態を示しているが、この後圧空ボックス30が降下して高温圧縮気体による圧空賦形と熱処理昇温を行う。このとき送出本体31から高温気体が送出されるが、タイミングをはかり排気本体21の排気バルブを開くと圧空空間の気体は排気更新され効率よく賦形体を加熱することができる。
熱処理が終わって圧空ボックスが上昇した後、側方から冷却手段40が、成形型60の上部に進行してきて冷却媒体噴射による賦形体の冷却がなされて、賦形体の離型が行われる。
成形型構成60は、表面層61と背後層(背後体)62からなる成形型を、加熱熱媒通路65を有する集積プレート66に固定し、収納ボックス67に収納したものである。なお、表面層61は熱浸透率の小さな材料から、また背後層62は熱浸透率の大きな材料からなるものである。
【0016】
なお、圧空ボックスあるいは成形型の移動は、必ずしも垂直な上下動でなくてもよく、それぞれ任意に斜め方向から接合して離反してもよく、また特定の軌道で接合して離反してもよい。なお、賦形手段と成形型の位置関係は相対的なものであり、賦形手段の上昇は成形型の降下と同義であって成形型を降下させてもよく、また両者を倒置して賦形手段を下に成形型上に倒置させてもよい。また、特異な態様として、プレス機を横転させてもよく、重量の大きい成形型等を、軽快に開閉でき好ましい方式として利用できる。
なお、上記のように冷却手段を成形型上部に移動する代わりに、成形型を冷却手段の下部に移動させてもよい。その場合、賦形体を含む成形型を移動させてもよく、加熱板と成形型を保持したプレス機を移動させてもよい。
なお、本発明を構成する熱成形機は、短尺の材料シートを一枚ずつ成形する枚葉成形機であってもよく、また長尺の材料シートを順次成形する連続成形機
でもよい。しかし、後者であることが特に好ましく、本発明の特徴を発揮して高速で効率的な繰り返し成形を可能にする。
【0017】
本発明のこのような構成は、本発明者を発明者とする先行出願、特願2010−118555、特願2010−118490、特願2010−118489、特願2010−118562、特願2011−41294、特願2011−165067、特願2011−165068、特願2011−165069等を更に改良して、製品品質を向上させ、生産性を向上させ、応用分野を拡大するために成されたものである。そして又、それらの具体的な形態を提示するためになされたものである。
【0018】
<圧空ボックスについて>
本発明の構成に用いられる圧空ボックスは、高温圧縮気体を外部から導入するか又は、常温の圧縮気体を導入して内部で加熱して、これを送出することにより少なくとも賦形体の熱処理昇温を効果的に行うことができるように構成される。なお、この圧空ボックスを用い、賦形体の熱処理に先行して、高温圧縮気体による圧空賦形も行うことができ好ましく利用される。
なお、賦形方法としては真空賦形あるいは低温圧縮気体による圧空賦形を
行い、高温圧縮気体による圧空は賦形体の熱処理昇温にのみ利用してもよい。
公知の通常用いられる圧空ボックスの概念は、樹脂シートと挟んで成形型または成形型群を覆い、樹脂シートとの間に閉鎖空間をつくり、この閉鎖空間に圧縮気体を送り込んで圧空成形をおこなうための道具である。通常は常温圧縮気体により圧空が行われ、圧空気体を特別な温度に加熱する構成にはなっていない。
本発明の装置構成と比較するために、上記の公知の圧空ボックスに加熱ヒーターを付加し、更に外部から高温圧縮気体を導入するようにしたものを用いた装置構成を図3に示す。この圧空ボックスは、送気本体31、加熱ヒーター32、高温圧縮気体の導入管33、気体分配通路34、送気孔35、送排気面36、圧空空間(ボックス空間)39からなるものである。図1の場合と同様に圧空ボックスが降下して、すでに予熱されて導入された樹脂シート100を挟み込み、高温圧縮気体により圧空賦形を行い、圧空ボックスの上昇後に進入してきた冷却手段40により冷却を行って離型させることができる。
しかし、このような圧空ボックスでは、最初に送出される高温気体により多少の賦形体の加熱は行うことができても、閉鎖空間への高温気体の送出は継続させることはできず、効果的な熱処理を行うことはできない。
【0019】
上記に対して、本発明の構成に用いられる圧空ボックスは、1)圧縮気体を加熱するかあるいは加熱圧縮気体を導入し、これを圧空ボックス内の印面に設けた複数の孔から圧空空間に送出しながら、2)同時並行で、この圧空空間に送出された気体を上記天面に設けた別の複数の孔から収容し外部へ排出できるように構成する。具体的な例として、前記の図1、及び図2について詳述する。図2は図1の中の圧空ボックスの下面の平面図である。
図1は、予熱された樹脂シート100が成形型60の上部に導入された状態を示しているが、この後圧空ボックス30が降下して、樹脂シート100周辺部を成形収納ボックス67に押さえつけて閉鎖した圧空空間39を形成する。そして外部から導入される高温圧縮気体は、導入管33及び気体分配通路34を経由して送気孔35から送出され圧空賦形がなされる。賦形と同時あるいは賦形直後に排気操作バルブ29を開くと、圧空空間39の中の気体は排気流入管28、排気管23等を経由して外部への排気が行われるので、継続して高温圧縮気体の送出が行われ、賦形体の効果的な昇温熱処理が行われる。
上例のような圧空ボックスは下記の様に態様を変更してもよく、これらの変更は好ましく利用できる。
1)送排気面36は赤外線放射塗料を塗布してもよく、これにより赤外線照射加熱も効果的に行うことができる。なお、送排気面36は背後の加熱ヒーターからの伝熱により十分な高温にされている必要がある。
2)排気本体21に最初は常温の圧縮気体を導入して排気流入管28から送気して圧空賦形を行い、その後排気本体21により排気をしながら、送気本体31から高温圧縮気体を送出し熱処理を行うように構成してもよい。この構成は非常に薄いシートなど過熱に敏感な成形材料の賦形に適する。
3)上記の基本構造をほぼそのままにして、排気本体21と送気本体31の機能を入れ替えて、上段21を送気本体として、下段31を排気本体として構成してもよく、好適に利用することができる。
4)冷却工程で、冷却手段40を用いず、冷却工程で排気本体21から冷却気体を噴出できるようにし、更に送気本体の送気元を切り替えて排気可能に変更することにより、賦形体の冷却を行うこともできる。この構成は設備が簡易で、比較的に軽度の冷却でよい材料の成形に適する。
5)図1の例は外部から高温圧縮気体を導入しているが、この代わりに外部から常温の圧縮気体を導入し送気本体31の内部で高温に加熱して送気を行うようにしてもよい。この場合は、送気本体31内部で気体接触面積を大きくし、付設ヒーター容量を大きくすればよい。
6)別途の予熱装置を装備することなく、上記圧空ボックスを用いて樹脂シートの予熱を行うように構成してもよい。具体的には上記の赤外線照射の方法、あるいは高温圧縮気体を微速で送出しながら予熱を行うことができる。又このような予熱と賦形を同時進行させることもできる。
7)図1の上記説明では、圧空空間から排気はバルブ操作で任意に行うことにしているが、バルブを設けず特定量の排気が常に行われるような機構にしておいてもよい。その場合は、圧空賦形の圧力は低下するがそれを見込んで装置設計すれば問題はない。
8)送排気面36は必ずしも平面でなくてもよい。特に、送気孔部分あるいは 排気流入管の口部分は他より突出していてもよく、あるいは後退していてもよい。成形型の形状合わせ高低差をつけることにより、効果的にあるいは均一に加熱あるいは冷却でき非常に好ましい。
【0020】
上記の8)の例を図4に示す。この圧空ボックス30は、図1のものと同様に排気本体21、排気管23、排気流入空間24、排気流入管28、排気操作バルブ29、送気本体31、加熱ヒーター32、高温圧縮気体の導入管33、気体分配通路34、送気孔35、送排気面36、断熱材37、圧空空間39から構成されている。ただ排気流入管28の先端の流入開口部25の高さが、送排気面36から突出したものとなっている。この高さは図1に示した成形型の窪みの深さに合わせたものであり、このようにすることにより送気孔35から送られる高温気体が十分に賦形体表面に届き、効果的で均一な熱処理昇温ができるので望ましい。
なお、この例では排気流入管の先端部は圧空ボックス壁よりも高く突出しているので、圧空ボックスを降下させたとき樹脂シートを突き刺してしまうことになる。しかし、圧空ボックスの降下に先だって真空賦形を先行させればこの事象は全く問題にならない。
なお、このような態様は、排気流入管28の代わりに送気孔35を含む部分を個別あるいは複数集団で突出させて形成させてもよく同様の効果があり望ましい。
【0021】
熱処理昇温のために導入し圧空送出される加熱気体の温度は、樹脂シートの予熱温度より遙かに高いことが望ましく、具体的には導入される圧縮気体の温度は200〜600℃であることが望ましい。延伸PETシートの予熱温度は90〜100℃程度が適正であるが、これに対してノズル35から送られる気体温度は250〜500℃であることが望ましい。気体の熱容量は小さいので、その熱量は賦形体を通じ成形型に散逸するので、この噴射気体の温度がこれ以下では迅速な昇温ができず、熱固定に必要な150〜180℃に容易に到達しない。
なお、高温圧縮気体は、空気、窒素、二酸化炭素などを圧縮し加熱されたものが利用される。なお、これらに水分を含んだ乾燥過熱蒸気も好ましく利用できる。
【0022】
上記のような圧空ボックスは、本発明者を発明者とする出願2011−41294に開示しているもの等を更に改良したものであり、下記のような効用がある。1)任意に継続して高温気体を送出することができ、迅速かつ効果的に熱処理昇温ができる。2)全成形面均一な温度で熱処理ができる、均一で精度の高い成形品を得ることができる。3)最適の加熱冷却の条件設定ができ、成形サイクルを短くすることができる。4)応用できる成形材料も広くなり応用製品を大きく広げることができる。5)強力な加熱処理ができ、その結果利用できる成形型構成の設計自由度を大きく広げることができる。簡易で低価格成形型も利用できるようになるなどの効用がある。
【0023】
<冷却手段について>
本発明の構成に用いる冷却手段は、冷却媒体を噴射して冷却を行うものであり、成形型又は成形型群の全上面積を有効に冷却できるものであればどのようなものも利用できる。例えば、特許4057487号公報に開示されているものであるが、函体に多数の開孔を設け、この函体に導入した冷却用気体を噴出させるようにした構造のものも利用できる。しかし、この冷却手段は冷却用気体の噴射ノズルと噴射された気体を整流して側面方向に排気する通路を備えた構成であることがより好ましい。
この具体例を図5により説明する。この冷却手段40は、冷却手段本体(平板状)41、圧縮気体の導入路42、冷却用気体の噴射ノズル43、気流ガイド面44、垂直排気路45、水平排気路46から構成されている。噴射気体は、賦形体110で反射された噴射気体は、気流ガイド面44に行く手を阻まれ、垂直排気路45に吸い込まれ、水平排気路46を通って排気される。このように構成された冷却手段では、冷却対象が大面積であっても中央部も排気が行われ、強力で均一な冷却行うことができ好ましい。
本発明に記載する冷却手段には下記の様に態様変更してもよく、これらの変更は好ましく利用できる。
1)排気を促進する手段を付加することは好ましい。このような手段は具体的には排気を吸引する手段であり、それは例えば吸引排気のブロウワーを付設してもよく、あるいは強力な直進噴射流を排気通路内に噴射して周囲の排気を引き込んで排気を促してもよい。
2)排気通路は必ずしも固体物体で形成されていなくてもよく、流体で形成さ
せてもよい。具体的には例えば、強力な水平直進噴射流を、高温気体の送出孔間あるいは、送出先の何処かで噴射すれば排気通路が生まれ、周囲の排気を引き込んで排出させることができる
3)冷却手段の冷却媒体として水あるいはアルコール等の揮発性液体を単独で噴射あるいは噴霧してよい。しかし通常の気体噴射と合わせて揮発性液体を噴射あるいは噴霧することはより好ましい。
【0024】
冷却媒体としては、水やアルコール等の揮発性液体、空気、窒素、二酸化炭素などの圧縮された気体(場合によっては液体)を単独、あるいは併用して用いることができる。揮発性液体の場合は、単独で噴霧してもよく、噴射前の気体中へ噴霧するなどしてもよい。冷却用気体は通常温度のものでもよいが、冷却したものも好ましく利用でき、ドライアイス粒塊を潜らせ冷却した気体噴射、あるいはドライアイスの粉粒の混合した気体噴射も好ましい。
なお、本体態様に限らず、本発明の構成に使用する冷却手段の冷却媒体噴射ノズルは、個々に拡散噴射のできる構造であることが好ましい。また、大きい成形型あるいは複数個の成形型を用いる場合は複数の噴射ノズルを有することが好ましい。なおまた、すくなくとも冷却工程では、賦形体を成形型へ吸引固定する機能が作動するように構成することが望ましい。
【0025】
上記のような冷却手段を用いた本発明の装置には下記のような効用がある。1)強力な冷却ができ、成形型の高温設定ができ、その結果利用できる成形型構成の設計自由度が大きくなり低価格成形型も利用できる。また、応用できる成形材料も広くなり製品用途が広がり、また安価で性能のよい製品をつくることができる。2)強力な冷却ができ、冷却時間の短縮ができる。3)均一な冷却ができ、製品の精度、良品効率がよくなるのみならず、結果として冷却時間の短縮ができる。
【0026】
<特別な実施態様1について>
本態様の装置構成は圧空ボックスの内部に冷却手段が収容されて一体となったものを利用する構成である。この例を図6により説明する。本図の圧空ボックスは、図1に示すものとは違い、上段に送気本体、下段に排気本体を配した構造のものである。ボックス内に収容された冷却手段は、操作バルブ49、圧縮気体導入路(管)42、と噴射ノズル43から構成されたものである。冷却工程でノズル43から噴射された気体は賦形体面で反射されて、排気流入孔25に流れ込み排気本体21から排出される。しかしながら、操作バルブ38を操作して送気本体31から排気するようにしてもよく、又、排気本体と送気本体の両者により冷却媒体の排気を可能に構成することはより好ましい。
なおこの場合も、図1の圧空ボックスと同様に、上段に排気本体を置き下段に送気本体を配置してもよい。
【0027】
<特別な実施態様2について>
本態様の装置構成は、単板形状でボックス形状をなしていない構造体を本発明に用いる圧空ボックスとして用い、他の部材と合わせて、ホックス状空間すなわち圧空空間を形成する構成である。
この例を図7により説明する。本図の圧空ボックス30は、送気本体31と排気本体21から構成されたものであるが、図1、4、6等でこれまでに示したものと違い、スカート部分のない単板形状でボックス形状をなしていない。この図の構成は、成形型を成形型より側壁の高い収納ボックスに収納し、予熱されて導入された樹脂シートに成形型側から真空引きを作動させ、その後に圧空ボックス30を降下させ、圧空空間39を形成させたものである。この後の各工程は図1の圧空ボックスと同様に進めればよい。
本図の圧空ボックス30は、ボックスとしての空間形成機能は、成形型収納ボックスの一部に移転してはいるが、本発明を構成する圧空ボックスであるものとする。
【0028】
<成形型について>
本発明の装置構成要素として用いられる成形型は、真空排気孔などの公知の熱成形としての必要要素を備えておればよく特に限定するものではない。
しかし、本発明の装置構成要素として用いられる成形型の特別な態様として、熱浸透率(kJ/m2s1/2K)が0.01〜15である材料により少なくとも成形用表面を形成させたものを用いることは好ましい。
熱浸透率がこのような範囲にある材料として、プラスチックス、セラミックス、選ばれた小数の種類の金属材料等を挙げることができ、これらは熱成形の金型として通常使われるアルミニウム材、亜鉛合金材等よりも小さな値のものである。好ましい範囲の熱浸透率を有する材料例は表1の中からも選ぶことができる。但し表記は一般的な物質あるいは物体を参考ため示したものであり、利用出来るものをこれらに限るものではない。
なお、上記熱浸透率とその数値限定の意義等については後に「本発明の内容についての補足説明」の欄で説明する。
なお、本発明の構成に望ましい態様とし示す成形型は、本発明者を発明者とする先行出願、特願2010−118555、特願2010−118490、特願2010−118489、特願2010−118562及び特願2001−065069の何れかに開示しているものである。
【0029】
本発明の装置構成要素として用いられる成形型の更なる特別な態様として、上記の所定の熱浸透率を有する表面層とこの表面層を背後から定常的に且つ均一に加熱温調する手段から構成されたものを用いることが好ましい。
このためのより具体的な好ましい方法として、1)表面層のそれより大きな熱浸透率を有する材料により、表面層に密接した背後層を設け背後層を加熱温
調する方法、および2)表面層の背後に略全面に密接して加熱手段を設ける方法を挙げることができる。
なおこの場合、表面層形成材料の熱浸透率は10以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましい。またこの表面層の厚みは0.04mm以上であることが必要であり、また0.06mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることが更に好ましい。又同厚みは30mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることが更に更に好ましい。
【0030】
上記1)の場合は、背後層の熱浸透率は、表面層のそれより大きくし、この背後層に加熱温調手段を付加することが必要である。この加熱手段は公知の゛のような方法でもよく、また背後層の中に設けてもよく、また外部に設けてもよい。背後層からの伝導熱により表面層が一定に加熱される。
そして、背後層の熱浸透率は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることか更に更に好ましい。また背後層の熱浸透率は表面層のそれより2倍以上であることが好ましく、10倍以上であることが特に好ましい。
なお、背後層の厚みは限定するものではなく、また一定の厚みあるいは形状に限定するものではない。またこの層を単一材料の層に限定するものではなく任意の多層にしてもよい。
図8に上記1)の構造の例を示す。成形型60は、表面層61と背後層62から構成され、63は真空排気孔、64は排気通路、65は温調用の熱媒通路を示している。この図の構成で、アルミニウム材5052の背後層の上に、0.5mmのエポキシ樹脂層をつくり、背後層と表面層を通じ成形面に微細な熱電対を露出させて製作した成形型は高性能である。なお、この熱媒通路などの温調手段はここに設けず、成形型を固定する固定板を任意の加熱手段を設けるようにしてもよい。
【0031】
上記2)の場合は、上記の所定の熱浸透率を有する表面層の背後の略全面に密接して加熱手段を設ける構成である。この場合の表面層の構成は材料、寸法形状ともに上記1)と同じであり、望ましい構成も同じである。加熱手段の形成は、次に限るものではないが、例えば表面層背後にa)面状発熱層の形成、b)面状高伝熱層を形成し特定位置から熱伝導させる方法などがある。背後層についてはその有無、あるいは材質、形状ともに特に制約するものではない。
なお、この上記2)場合の構成においては、背後層72は特に限定するものではなく、加熱手段の機能を阻害すことなく表面層あるいは加熱手段の層を保持できればよく、表面層の形状保持ができて何処かへ固定できればよい。
【0032】
<成形方法について>
前記した本発明の装置を用いて、樹脂シートの予熱工程、賦形工程、この予熱工程よりも高温で熱処理する熱処理工程と、そして冷却工程を備える熱可塑性樹脂シートの成形方法を実施することができる。又これらの工程を高速で進めることができ、長尺の成形材料樹脂シートを用いて効率的な連続成形を行うことができる。
予熱工程は、長尺の樹脂シートを導いて予熱温度に加熱調整されている加熱板の下を潜らせて停止させ、加熱板と成形型をそれぞれ上下動させてこれを挟み、樹脂シートを加熱板側から真空吸着するか、又は成形型側から空気押圧して密着させながら予熱を行う。これに次ぐ賦形工程では、加熱温調された成形型に対して加熱板から放出される空気による圧空賦形、そしてあるいは成形型側からの真空吸引による真空賦形が瞬時になされる。これに次ぐ熱処理工程では、高温の成形型面で、そしてあるいは加熱板から放出される高温気体により賦形体の温度は予熱温度以上に高められる。これに次ぐ冷却工程では、加熱板を上昇させ、開いた加熱板と成形型との間に冷却手段を進入させ、冷却媒体を噴射させて賦形体を冷却し離型させる。なお、賦形体の変形を防ぐために、賦形体を成形型の真空引きによる賦形体の固定を、少なくとも冷却工程を通して行うことが必要であり、なお賦形以後の各工程を通じてこれを行う事が望ましい。
なお、本装置では、真空賦形に続いて、前記の高温圧縮気体による昇温熱処理も行うこともできる。後者の方法は、樹脂シートが薄くて熱に敏感すぎる場合などに好適である。
上記のような成形における装置設定あるいは条件設定は、大きく3つのパターンに分けて説明することができる。成形型の表面温度(T)と成形型の内部温度(S)の変化を見たとき、サインカーブ様の連続成形サイクルを描くことができる。例として、前記のような表面層と背後層からなる成形型を用いた場合を考えてみる。背後層温度をS、成形型表面温度をT、その最高温度をTt 最低温度Tbとする。
パターンAは、Sを、表面温度サイクルのTtとTbの間の一定温度に調整するパターンである。この場合、Ttは高温気体か赤外線照射により到達する温度であり、Tbは冷却手段により到達する温度である。背後層の直接的な温調は行う場合も、行う場合もある。背後そうからあまり熱が逃げない状態で、長時間連続的に成形を続ければ、背後層温度Sは表面温度サイクルのTtとTbに落ち着く。この場合、背後層の熱浸透率があまり大きくなければ、表面層の間近ではSは時間的に直線ではなく、表面層に追従して小さな温度サイクル描く。背後層は積極的に任意に温調することは望ましく、その温度により加熱手段及び冷却手段を最適最短時間にすることができる。
パターンBは、Sを、Tbと同じかそれ以下の一定温度に調整するパターンである。この場合Tbは、主として背後層からの伝熱すなわちSの温度により到達する。冷却手段は必須ではないが使用すればサイクルを縮めることができる。なお、Ttは加熱手段により到達する。
パターンCは、Sを、Ttと同じかそれ以上の一定温度に調整するパターンである。この場合は、の場合Ttは、主として背後層からの伝熱すなわちSの温度により到達する。従って背後層の加熱温調は必須である。上記加熱手段は、
必須ではないが使用すればサイクルを縮めることができる。なお、Tbは冷却手段により到達する。
【0033】
通常の熱成形は、樹脂シートの予熱、賦形、冷却、離型の過程を経てなされる。これに対して本発明の成形方法では賦形から冷却までの間に、樹脂シートの賦形時以上の高温の熱処理を行うことが特徴であり、またこれを高速連続で実施できることが特徴である。
本発明の方法により広範囲の樹脂で、容易に熱処理された各種成形品の製造が可能である。具体的な用途を挙げると、a)PET等の結晶性樹脂の延伸シートの熱固定を伴う成形、b)結晶核剤添加PET(CPET)等の結晶性樹脂シートの結晶化を伴う成形、あるいはまたc)ポリプロピレンのSPPF成形(固相高圧成形)に伴う残留応力歪緩和してする熱処理成形を提案することができる。
特に、延伸PETでは、耐熱性、透明性、剛性等の機械強度の優れた熱成形品を能率よく生産することができる。又、剛性を利用し省材料の成形品を得ることができる。
(本発明の内容についての補足説明)
【0034】
(1)<熱浸透率について>
本発明の規定値として用いた熱浸透率(b値)は接触する物体と界面を通過して移動する熱量にかかわる物体の特性値であり、次の式で求められる。
b= (λρC)1/2 ・・・・・(1)
λ; 熱伝導率(Js−1m−1K−1)
ρ; 密度(kgm−3)
C; 比熱(Jkg−1K−1)
このb値が小さい物体は界面に少ない熱量しか流さず相手物体に大きな温度変化を与えず、また界面間近では相手物体から大きな温度影響をうける。
従って、このb値が小さい材料を成形型表面材料として用いた場合は賦形体からの熱を拡散させないので、高温気体と冷却用気体により賦形体を容易に加熱冷却することができる。しかし背後層の熱を容易に表面層表面(賦形体体との界面)に伝えないので、表面温度の均一性が高く、高速で安定な条件設定のためには、表面層の厚みを小さくするか、あるいはこのb値をある程度大きくすることにより、成形材料に合わせて最適にすることができる。
なお、b値の参考例を示すと例えば、アルミニウム材は17〜23程度、鉄材は13〜16程度、銅34程度、不錆鋼(SUS306)は8.0で、多くの合成樹脂は0.2〜0.8程度、多くのセラミックスは1〜20の間に入る。
なお、表1にいくつかの材料のb値を例示する。なお、b値も測定温度により若干違った値を示すが、本願においては、厳密には20℃の測定値にて規定することする。 ただし、20℃から200℃の間の変化に直線性を有しない材料、例えば相変化を伴う蓄熱剤などとの複合材料の場合は、100℃、150℃の値の平均値を採用することとする。 なお、同じ材質でも、発泡体あるいは多孔体などに形状が変われば、この値が大きく変わることは留意を要する。
【表1】

【0035】
(2)<成形型構成の数値限定の意義について>
上記成形型の表面層として熱浸透率b値の大きな表面材料を用いた場合は、賦形体から容易に熱を背後に分散させてしまうので、熱容量の比較的に熱容量の小さい加熱空気や冷却空気では容易に賦形体を加熱冷却できなくなり、この値が10を超える材料である場合は、能率的に熱処理を行う成形を行うことができない。この値は小さいほうが好ましいが、0.01より小さいものは強度など使用に耐える材料がない。
上記の成形型において2層以上の構造とし、表面層の背面層を一定温度に制御して、賦形体を介して加熱気体および冷却気体により昇温降温変化する表面層の成形面温度を所望の基準温度へ迅速に回帰させることができる。
この場合、表面層の厚みが30mmを超える場合は背後層の制御が、上記表面温度と呼応して定常状態に至る時間がかかりすぎ、実施的に効果がない。また、この厚みが0.03mmを下回る場合は背後層の温度の影響を大きく受けて、迅速な賦形体の昇温降温を促進する効果がなくなる。例えば、公知の成形方法において、潤滑離型のために金型に仮に弗素樹脂等のコートが成されることがあったしても、そのコート厚みは30μm以下の薄いものであり、それを厚くする必要もなく又困難もあって、本発明の効果を発揮させるようなものは従来製作されていない。
なお、上記したように単体一材料のものでも良いが、この場合、成形型への直接の温度制御はあってもよく、またなくてよく、いずれであっても所望表面温度の定常化に多少の時間をかければ、所望の成形は可能である。しかし、この場合、熱浸透率b値(kJ/m2s1/2K)が0.01〜3の単一材料で構成してされたものでは加熱温調機構がないものが好ましく、またそれが3以上の単一材料で構成されたものは加熱温調機構を備えたものがより好ましく使用できる。
なお、上記の成形型は、真空賦形又は賦形時の排気が可能にする微細孔を有し、真空引き可能なように先記成形型収納ボックスに収納されることが望ましい。
【0036】
(3)<賦形体の温度測定について>
なお、本発明の装置においては、なんらかの方法で成型型表面温度あるいはと型と賦形体の界面温度の変化、または賦形体の温度変化を測定することは重要である。具体的には例えば、成形型の成形面上に、極めて繊細な測定プローブ、例えば線径0.1mm程度の熱電対先端を突出させておいてこれを測定することができる。別の方法としては賦形体を反対面から赤外線温度計非接触で測定する方法がある。しかし、これらには留意すべき点がある。
前記のS線の温度はパターンA、Cでは、成形型自体を積極的に温度調節制御を行うが、それでも成形表面からの距離、あるいは熱源からの距離によっては温度傾斜をもって、成形サイクルを繰り返す中で定常化する値でもある。
賦形材料の熱処理温度あるいは離型可能温度を厳密に考えるとき、これらの温度はここで示される表面温度あるいは界面温度とはかなり乖離があることは留意する必要がある。秒単位あるいはそれ以下の単位で加熱冷却を行う場合は、賦形体の厚み方向で大きな温度傾斜が発生するからである。また、赤外線等で賦形体裏面から温度測定も、材料温度を正確に表すものでなない。また本発明では表面温度(界面温度)で表現しているがこの温度とも乖離があり、相対的な値として考慮する必要がある。
【実施例1】
【0037】
図1及び図2に示す装置構成で、延伸PETシートの熱処理を伴う成形を行った。
1)成形材料;ホモポリエチレンテレフタレート樹脂の2.3倍一軸延伸シート(但し熱固定を行っていないもの)、厚み0.23mm非熱固定品を使用した。
2)成形装置
成形機; 枚葉真空圧空成形機、圧空能力10tonのものを使用した。
圧空ボックス; 図1及び2に示す構造で、アルミニウム製で有効内寸法330× 550mmのボックス体67の中に、炭素鋼製の高温送気本体31と低温送排気本 体(送気機能は必要でない場合もある)21を構成した。そして気体送排出面36 には間隔30mmの碁盤格子の交点毎に径1φmmの高温気体の気体送出孔35を 穿ち、また図2に示す配置で気体送排出通路(送気機能は必要でない場合もある) 28を設けた。低温送排気本体21及び気体送排出通路28は、低温気体による圧 空賦形及び圧空空間からの排気の機能を有する。高温送気本体31及び気体送出孔 35は高温圧縮気体を圧空空間に送出する機能を有する。
なお、低温送排気本体21の送気機能は圧空賦形に使ってもよいが、これは必須で はなく、これを使わない場合は高温送気本体31により圧空賦形と熱処理昇温が行 われる。
なお、送排気面36には、赤外線放射塗料を塗布した。
冷却手段; 図5に示す構造、すなわち噴射された冷却用気体の反射流を、噴射ノズ ル43の間に設けた通路45から吸い込み水平方向に排気する方式で、有効寸法 330×550mmのものを使用した。
成形型; 図8の60に示す表面層/背後層方式のもので、アルミニウムA5052 を背後層とし、その上にPEEK樹脂(b値は0.35)0.15mmの表面層を コーティング焼成法で形成させたものを使用した。
成形物は深さ直径90mm、深さ30mmの丸皿形状物で、成形型の外寸を110 mm角としたもの15個をヒーター内包の固定板に固定し、内寸332×552m mの収納ボックスに収めた。なお、成形型の上面は収納ボックス側壁より5mm低 くなるようにし、又側壁とは1mm間隙を設けた。
温度測定; 成形面には細線熱電対先端露出させて這わせ、成形面温度及び賦形体界 面温度を測定できるようにした。また、同様に細線熱電対を圧空ボックス側壁を貫 通させて圧空温度の測定ができるようにした。
3)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱; 樹脂シートを550℃設定の予熱オーブンで9秒間
予熱して移動させ、成形型上部に乗せた。なお、シート予熱温度は95℃である。
成形型成形面予熱温度; 160℃
加熱板への導入空気; 約450℃、 元圧力0.4MPa
真空圧空賦形;1.0秒、 圧空圧0.4MPa、
高温送気本体31からの送気により行った。
熱処理昇温;2.5秒 圧空圧0.2MPa、
低温送排気本体21からの排気を作動させ、高温送気本体31から高温気体の送気 を続けた。圧空温度は280℃になった。
熱処理温度(界面到達温度);183℃、
賦形時に上記表面温度は瞬間的に約160℃を若干下回る温度に低下したが、昇温 してこの温度になった。
冷却手段作動時間 ; 5秒
離型時に表面(界面)温度は約130℃に低下した。
4)比較テスト;上記の条件で低温送排気本体21からの排気を行わずに高温送気本体 31からの送気による賦形と熱処理を行ったところ界面到達温度到達温度は165℃程度で、圧空時間を延ばしてもあまり効果がなかった。また離型時に変形し、良好な形状の成形品とはならなかった。この条件設定では熱処理効果は不十分であることを意味している。(この昇温には送排気面36からの赤外線放射も加味されている。)
5)成形結果;
得られた成形品は良好な形状、透明なものであった。耐熱140℃のシリコンオイルに2分間浸漬の試験を行い、変形、目立った収縮はなく、耐熱性の優れたものであった。使用した加熱板では、高温気体による熱処理昇温が容易であることがわかった。
なお、比較テストの条件、すなわち公知の圧空ボックスで可能な条件設定では効率的な熱処理効果はあげにくいことがわかった。
【実施例2】
【0038】
実施例1に示す装置構成で操作条件を変更して、同じ延伸PETシートの熱処理を伴う成形を行った。ここでは常温圧縮気体により圧空賦形おこなった。
1)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱;95℃(実施例1と同様の方法で)
成形型表面の予熱温度; 165℃
圧空ボックスへの導入空気; 約450℃、 元圧力0.4MPa
送排気面36は、導入気体とほぼ同温度に調整した。
真空圧空賦形;1.0秒、 圧空圧0.4MPa、
低温送排気本体からの常温圧縮気体の送気により行った。
熱処理昇温;3.0秒 圧空圧0.2MPa、
低温送排気本体21からの排気を作動させて、高温送気本体31から高温気体の送 気を続けた。圧空温度は約280℃になった。
熱処理温度(界面到達温度);181℃、
賦形時に上記表面温度は瞬間的に約150℃に低下したが、昇温してこの温度に なった。
冷却手段作動時間 ; 5秒
離型時に表面(界面)温度は約130℃に低下した。
2)比較テスト;上記の条件で低温送排気本体21からの排気を行わずに高温送気本体31から高温気体の送気をおこなった。成形型表面の温度回復が遅く、熱処理時間を延ばしても予熱温度165℃をすこし超える程度にしか成らなかった。
3)成形結果;
実施例1と同様に良好な成形品が得られた。また熱処理が効率よく行われることがわかった。
【実施例3】
【0039】
実施例1に示す装置構成で操作条件を変更して、同じ延伸PETシートの熱処理を伴う成形を行った。ここでは、樹脂シートの予熱に予熱オーブンを使用せず、圧空ボックスを用いて予熱と賦形をほぼ同時に進行させた。
1)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱;予熱されていないシートを圧空ボックスの下に導入し、予熱と賦 形を同時進行させた。このためには、高温送気本体31から高温気体の送気を少し づつ時間をかけておこなった。この場合の予熱源は、高温気体及び送排出面36か ら赤外線放射である。なお、または成形型からの真空作動バルブを、時間をかけて 開く操作によりこれを行うこともできる。
成形型表面の予熱温度; 160℃
圧空ボックスへの導入空気; 約450℃、 元圧力0.4MPa
送排気面36は、導入気体とほぼ同温度に調整した。
真空圧空賦形;4秒、 圧空圧0.4MPa
低温送排気本体からの常温圧縮気体の送気により行った。
熱処理昇温;2.5秒 圧空圧0.2MPa
低温送排気本体21からの排気を作動させて、高温送気本体31から高温気体の送 気を続けた。圧空温度は約285℃になった。
熱処理温度(界面到達温度);186℃、
賦形時に上記表面温度は瞬間的に約150℃に低下したが、昇温してこの温度に なった。
冷却手段作動時間 ; 5秒
離型時に表面(界面)温度は約130℃に低下した。
2)成形結果;
加熱オーブンを有しない、比較的に簡易な装置でも本発明を有効に実行できることを確認した。
【実施例4】
【0040】
実施例1に示す装置構成で成形型と操作条件を変更して、CPETシートの熱処理を伴う成形を行った。なお、ここでは冷却手段は使用しなかった。
1)成形材料;結晶核剤入り処方の成形用CPETシート(東洋紡製、厚み0.5mm)
2)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱;樹脂シートを550℃設定の予熱オーブンで18秒間予熱して移 動させ、成形型上部に乗せた。なお、シート予熱温度は約100℃である。
成形型温度; 背後体を熱媒オイルで80℃に温調した。このときの成形型表面温度 は約70℃であった。
圧空ボックスへの導入空気; 約300℃、 元圧力0.4MPa
送排気面36は、導入気体とほぼ同温度に調整した。
真空圧空賦形及び熱処理;12秒、 圧空圧0.2MPa、
低温送排気本体21からの排気を作動させて、高温送気本体31から高温気体の送 気を続けた。圧空温度は約250℃になった。
熱処理温度(界面到達温度);195℃、
冷却手段作動時間 ; 0秒
冷却手段を作動させず、賦形体後即時に離型した。
離型後、成形型表面温度は短時間に元の設定温度に低下し、続けて次の成形が可能 な状態となった。
3)参考テスト;
熱処理昇温時間を短縮するために、成形型表面温度を熱処理温度に近ずけ160℃として、熱成形したところ、成形品に凹凸の激しいムラが発生した。CPETの成形にはその予熱温度程度以下の低温の成形型で賦形し、その後昇温して熱処理することが必要であった。
4)成形結果;
精密かつ良好に成形された成形品を得た。有効に熱処理されたことは、賦形体がまだ195℃以上の高温であるにも関わらず、収縮変形することなく離型できたことからも理解される。
公知のCPETの熱成形では、低温の成形型で成形された成形品を高温の型に移して熱処理を行うなど、煩雑で時間のかかる方法が採用されているが、本方法では、簡略で短時間に、予熱温度以上の高温の熱処理を伴う成形を行うことができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明による熱成形には下記のようなことが可能である。
(1)賦形のための予熱温度以上に賦形体の加熱する熱処理と冷却離型を伴う成形プロセスを、非常な高速で、連続的に、効率的にそして安定に実行することができる。
(2)このような熱処理を必要とする具体的な用途には、延伸された結晶性樹脂シートの熱固定を伴う熱成形である。材料してはPET等の熱可塑性ポリエステルの他、PLA樹脂、ポリプロピレン、ポリアミド、PEEK等の結晶性樹脂等の延伸シートを挙げることができる。
(3)その中でも特、延伸PETシートを用いて上記のような熱処理を行う熱成形を行うことにより、耐熱性、透明性、剛性等の機械強度の優れた熱成形品を能率よく生産することができる。又、剛性を利用し省材料の成形品を得ることができ、省資源の社会的ニーズに対応することができる。
(4)延伸処理を行っていない結晶性樹脂シート、例えば結晶核剤の添加されたPET(CPET)の結晶化を伴う成形に利用することができ、これを従来よりも高速して行うことができる。
(5)また、ポリプロピレンのSPPF成形(固相高圧成形)に応用し、この成形方法の欠点を解決(残留応力歪みを緩和して耐熱寸法安定性を向上)する新規の方法等を期待することができる。
(6)熱処理を伴う成形を、精密に、均一に、バラツキなく、高速で、省エネルギーで行うことができ、また、配向及び結晶化による強度剛性等の向上は薄肉化省材料に転換して、省資源の社会的ニーズに貢献することを可能にするものである。
【符号の説明】
【0042】
30 圧空ボックス
21 排気本体(工程中に送気を行う場合もある)
23 排気管
24 排気流入空間
25 排気流入口
27 断熱材
28 排気流入管
29 操作バルブ
31 高温送気本体
32 加熱ヒーター
33 高温圧縮気体の導入管
34 気体分配通路
35 送気孔
36 送排気面(天面)
37 ボックス外壁
38 送気管(工程中に排気を行う場合もある)
39 圧空空間
40 冷却手段
41 冷却手段本体(平板状)
42 圧縮気体の導入路
43 冷却用気体の噴射ノズル
44 気流ガイド面
45 垂直排気路
46 水平排気路
49 操作バルブ
60 成形型(又は成形型群構成)
61 表面層
62 背後層(背後体)
63 真空排気孔
64 排気通路
65 加熱熱媒通路
66 成形型集積プレート
67 成形型収納ボックス
100 熱可塑性樹脂シート(樹脂シート)
110 熱可塑性樹脂シートの賦形体
A 圧縮気体
A‘ 排気
HA 高温圧縮気体


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの圧空ボックスによる圧空成形を行う熱成形装置において、圧空ボックスとして、1)圧縮気体を加熱するか又は加熱圧縮気体を導入し、これを圧空ボックス内の天面に設けた複数の孔から圧空空間に送出しながら、2)同時並行で、この圧空空間に送出された気体を上記天面に設けた別の複数の孔から収容し外部へ排気するように構成したものを用いる熱可塑性樹脂シートの成形装置。
【請求項2】
冷却媒体を噴射して行う冷却手段を成形型周辺に配置して、上記圧空ボックスの成形型からの離反後に、成形型の上部に対してこの冷却手段を進行させるか、又は上記成形型を上記冷却手段の下部に進行させて賦形体を冷却するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
上記圧空ボックスと冷却媒体を噴射して行う冷却手段が一体として成っている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形装置。
【請求項4】
上記冷却手段が、冷却用気体の噴射ノズルと噴射された気体を整流して側面方向に排気する通路を備えた構成のものであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の成形装置。
【請求項5】
成形型として、熱浸透率(kJ/m2s1/2K)が0.01〜15である材料により少なくとも成形用表面を形成させたものを用いることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の成形装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の成形装置を用いた樹脂シートの成形方法であって、樹脂シートの予熱工程、賦形工程、シートの予熱温度以上の高温で熱処理する熱処理工程、そして冷却工程を備える熱可塑性樹脂シートの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67062(P2013−67062A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206514(P2011−206514)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(500044755)
【Fターム(参考)】