説明

熱水温度検知用インジケータ及び熱水消毒確認方法

【課題】変色後の経時的な消色を抑制ないしは防止されたインジケータを提供する。
【解決手段】基材上に1)電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含む感熱変色層、2)透明性保護層、3)接着剤層及び4)ラミネートフィルムが順に形成されている熱水温度検知用インジケータであって、感熱変色層が、基材及び透明性保護層により封止されており、感熱変色層が、透明性保護層を介して接着剤層と隔離されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な熱水温度検知用インジケータ及び熱水消毒確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡、手術器具、麻酔用具等の医療器具においては、その消毒方法のひとつとして熱水による消毒が実施される。この場合、その消毒済みの確認(熱履歴)の有無が必要とされるが、特に感熱層を有するインジケータが利用されている。このようなインジケータとしては、例えば脂肪酸類、脂肪酸塩類、脂肪酸トリグリセリド類、脂肪酸無水物類、ハロゲン含有脂肪酸類、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、アミド類、ニトリル類、不飽和基含有炭化水素類、ハロゲン含有炭化水素類、チオール類、スルフィド類から選ばれる少なくとも一種類の熱溶融性物質と、色素とを含んで着色している熱溶融層が基材上に付され、熱溶融した該物質と該色素とを不可逆的に吸収する不透明な吸収層が該熱溶融層を覆い、該吸収層が透明な保護フィルムで被覆されていることを特徴とする温度履歴インジケータが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−365145
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに対し、本発明者は、1)疑似汚染物により形成された第1層及び2)熱変色性組成物により形成された第2層が基材上に形成されていることを特徴とする洗浄・消毒確認用インジケータを開発し、先に出願している(特願2006−7388号等)。このインジケータは、特に、熱変色性組成物として電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含む組成を採用することによって、より優れた発色性(色差)等を得ることが可能となる。
【0004】
しかしながら、前記のような成分を用いたインジケータは、いったん変色した後、経時的に消色してしまうことがある。このような現象が生じた場合には、熱水消毒を受けたにもかかわらず、未処理という扱いになり、あらためて熱水消毒し直さなければならなくなるおそれが生じる。
【0005】
そこで、本発明者がこの原因について研究したところ、変色層を構成する成分とその上に積層される層の成分とが反応することが原因になっていることを突き止めた。
このような現象が生じた場合には、熱水消毒を受けたにもかかわらず、未処理という扱いになり、あらためて熱水消毒し直さなければならなくなるおそれが生じる。従って、この点において上記インジケータはさらなる改善を必要とする。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、変色後の経時的な消色を抑制ないしは防止されたインジケータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の層構成を有するインジケータが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の熱水温度検知用インジケータ及び熱水消毒確認方法に係る。
1. 基材上に1)電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含む感熱変色層、2)透明性保護層、3)接着剤層及び4)ラミネートフィルムが順に形成されている熱水温度検知用インジケータであって、
感熱変色層が、基材及び透明性保護層により封止されており、
感熱変色層が、透明性保護層を介して接着剤層と隔離されている、
ことを特徴とする熱水温度検知用インジケータ。
2. 透明性保護層が、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル及び石油系樹脂の少なくとも1種の樹脂成分を含む樹脂組成物により形成されている、前記項1に記載の熱水温度検知用インジケータ。
3. 接着剤層が、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の少なくとも1種の樹脂成分を含む樹脂組成物により形成されている、前記項1又は2に記載の熱水温度検知用インジケータ。
4. 被処理体を熱水で消毒するに際し、消毒済みの有無を確認する方法であって、
(1)被処理体を消毒するに先立ち、前記項1〜3のいずれかに記載のインジケータを熱水による消毒が実施される雰囲気下に配置する第1工程、
(2)熱水による消毒を経た後の感熱変色層の変色度合を調べる第2工程
を含むことを特徴とする消毒確認方法。
5. 被処理体が医療器具である、前記項4に記載の消毒確認方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインジケータによれば、特定の層構成を有し、特に感熱変色層が透明性保護層により接着剤層から隔離されているので、感熱変色層が変色した後であっても、その変色状態を良好に維持することができる。また同時に、接着剤層によって、ラミネートフィルム層と基材との層間強度を保つことできる。
【0010】
本発明者の研究によれば、従来技術のインジケータでは、変色後に経時的な消色が起こるところ、その原因が接着剤層の成分と感熱変色層の成分との反応によるものであることを突き止めた。そこで、本発明では、感熱変色層を接着剤層から隔離することにより、長期間にわたり変色後の色を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.熱水温度検知用インジケータ
本発明の熱水温度検知用インジケータは、1)電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含む感熱変色層、2)透明性保護層、3)接着剤層及び4)ラミネートフィルムが順に形成されている熱水温度検知用インジケータであって、
感熱変色層が、基材及び透明性保護層により封止されており、
感熱変色層が、透明性保護層を介して接着剤層と隔離されている、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態の一例(層構成)を図1に示す。図1では、基材1上に感熱変色層2、透明性保護層3、接着剤層4及びラミネートフィルム5が順に形成されている。
【0013】
感熱変色層2は、基材1の一部に形成されている。特に、周囲に接着剤層4と接触(積層)するための接着しろを基材1上に残しつつ、感熱変色層2を基材1に形成することが好ましい。感熱変色層2は、基材1と透明性保護層3により封止されている。これにより、感熱変色層2は、外部との接触が遮断される。また、感熱変色層2は、透明性保護層3により覆われることにより接着剤層4と隔離され、接着剤層4と接触しないように設計されている。
【0014】
図1に示すように、接着剤層4のうち、透明性保護層3を覆う部分以外の部分a(太線部分)は、基材1と接触するように構成されていることが好ましい。また、接着剤層4は、予めラミネートフィルム5に積層されていても良い。
【0015】
以下、各層の構成について説明する。
【0016】
基材
基材の材質は限定的でなく、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂類;アルミニウム、ステンレス鋼等の金属又は合金;アルミナ、ジルコニア等のセラミックスのほか、ガラス、紙等のいずれも使用することができる。
【0017】
基材の形状は限定されないが、一般的にはシート状、板状又はフィルム状の形態で使用すれば良い。この場合も厚みも制限されず、一般的には0.01〜1mm程度の範囲内で適宜設定すれば良い。
【0018】
感熱変色層
感熱変色層は、熱により変色する層である。感熱変色層は、1)熱により無色から有色に発色する場合、2)熱により有色から無色に消色(退色)する場合及び3)熱により有色から別の有色に変色する場合のいずれも包含する。このような機能を発揮する層として、本発明では、電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含む感熱変色層を採用する。
【0019】
上記層は、例えば電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含む熱変色性組成物により形成される。この場合、電子供与性化合物及び電子受容性化合物の種類、含有量等を変更することによって上記1)〜3)を実施することができる。特に、上記3)の場合は、熱変色性組成物に非変色色素を含有させることにより実施することができる。
【0020】
電子供与性化合物としては、特に限定されない。例えば、トリフェニルフタリド系、フルオラン系、フェニルチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、トリアゼン系、スピロピラン系等を用いることができる。これらは1種又は2種以上で使用できる。
【0021】
本発明では、特にフルオラン系化合物を好適に用いることができる。具体的には、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−P−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、2−{N−(3−トリフルオロメチルフェニル)アミノ}−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−アミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチル−5−クロロ−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−{N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ}−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4´−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−メシチジノ−4´,5´−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2´,5´−ジメチルアニリノ)フルオラン等が例示できる。
【0022】
電子供与性化合物の含有量は限定的ではないが、一般的には熱変色性組成物中0.5〜50重量%、特に10〜40重量%程度とすることが好ましい。
【0023】
電子受容性化合物としては、例えばサリチル酸誘導体、芳香族カルボン酸金属塩、フェノール誘導体、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、活性白土、ベントナイト等が挙げられる。
【0024】
この中でも、フェノール誘導体を好ましい用いることができる。フェノール誘導体としては、例えばフェノール性水酸基を1又は2以上有する化合物を使用できる。すなわち、モノフェノール類、ジフェノール類、トリフェノール類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
モノフェノール類としては、例えばモノヒドロキシフェニル系化合物(例えば、4−ヒドロキシベンゾフェノン、p−ヒドロキシジフェニル、4−ヒドロキシジフェニルアミン、p−クミルフェノール、p−フェノールスルホンアミド、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸メチル、4−ヒドロキシフェニルメチルケトン等)、フェニルカルボン酸系化合物(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等のオキシ安息香酸エステル、2−ヒドロキシフタル酸ジメチルエステル、2−ヒドロキシフタル酸ジフェニルエステル等のオキシフタル酸エステル、4´−ヒドロキシサリチル酸アニリド、5−ベンジルサリチル酸アニリド等)、モノヒドロキシナフタレン系化合物(例えば、α−ナフトール、β−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール等のオキシナフタレン、1−オキシ−2−ナフトエ酸、2−オキシ−3−ナフトエ酸等のオキシナフトエ酸、2−アセトナフトン、ヒドロキシナフタレンスルホン酸等)等が挙げられる。
【0026】
ジフェノール類としては、例えばビスフェノール系化合物、ジヒドロキシナフタレン系化合物(例えば、1,3−ジオキシナフタレン、1,4−ジオキシナフタレン等のジオキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレンモノプロピルエーテル等のジオキシナフタレンアルキルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレンモノベンジルエーテル等のジオキシナフタレンアリールエーテル等)等が挙げられる。
【0027】
ビスフェノール系化合物には、例えば、式(1a)〜(1f)で表される化合物等が含まれる。
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、アルキル基を示す。Rはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基であり、Rはアルキレン基である。nは1〜10の整数である)
式(1a)〜(1f)において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜10程度のアルキレン基が挙げられる。シクロアルキレン基としては、例えばシクロヘキシレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、例えばフェニレン基等が挙げられる。また、nは、1〜10の整数である。
【0030】
より具体的には、ビスフェノール系化合物としては、例えばメチレンビスフェノール、4,4´−エチリデンビスフェノール、4,4´−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール等が挙げられる。
【0031】
トリフェノール類としては、例えば3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸−C1−18アルキルエステル化合物等を使用できる。
【0032】
本発明において、電子受容性化合物としては、ジフェノール類、特にビスフェノール系化合物が好適に使用される。
【0033】
電子受容性化合物の含有量は、一般的には熱変色性組成物中1〜90重量%、特に40〜80重量%程度とすることが好ましい。
【0034】
熱変色性組成物には、必要に応じて非変色色素、増感剤、体質顔料、バインダー等が含まれていても良い。特に、増感剤及び体質顔料の少なくとも1種が含まれることが望ましい。
【0035】
増感剤としては、例えば高級アルコール、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、芳香族エステル、芳香族アミド等の少なくとも1種を用いることができる。増感剤の含有量は、一般的には熱変色性組成物中1〜30重量%程度とすることが望ましい。
【0036】
体質顔料としては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン等の少なくとも1種が挙げられる。体質顔料の含有量は、一般的には熱変色性組成物中5〜50重量%程度とすることが望ましい。
【0037】
バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等の少なくとも1種が挙げられる。バインダーの含有量は、一般的には熱変色性組成物中1〜20重量%程度とすることが望ましい。
【0038】
非変色色素は、前記3)のように、感熱変色層が有色から他の有色に変色させる場合に用いることができる。例えば、感熱変色層が熱により有色から無色に消色するような熱変色性組成物において、さらに赤色の非変色色素を含有させれば、熱により赤色に変色するように設計することができる。非変色色素は、熱により変色しないものであれば良く、例えば公知の普通色インキを用いることができる。
【0039】
感熱変色層は、消毒温度に応じて組成を適宜設定すれば良い。特に、所定の消毒温度以上の温度で変色するように設定することが望ましい。例えば、消毒温度が80℃である場合は、80℃付近で変色するように制御すれば良い。変色温度は、顕色剤(電子供与性化合物)、増感剤等の種類又は添加量により適宜制御することができる。
【0040】
感熱変色層の形成方法は特に制限されず、例えば刷毛塗り、ロール法、スプレー法等のほか、公知の印刷方法(スクリーン印刷等)等を採用することができる。
【0041】
感熱変色層の厚みは、被処理体の種類・大きさ、消毒条件等により異なるが、一般的には1〜100μm程度とすれば良い。
【0042】
透明性保護層
本発明の熱水温度検知インジケータでは、感熱変色層が透明性保護層により被覆されている。これにより、洗浄中に感熱変色層が剥離又は変質することを効果的に防止することができる。
【0043】
透明性保護層は、感熱変色層の変色が確認できるような透明性が保たれている限り、その材質は特に制限されない。本発明では、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル及び石油系樹脂の少なくとも1種の樹脂成分を含む樹脂組成物により形成されていることが望ましい。特に、セルロース系樹脂及びポリビニルアルコールの少なくとも1種の樹脂成分を含む樹脂組成物により形成されていることがより望ましい。これらの樹脂成分は、特に水溶性のものが好ましい。
【0044】
前記樹脂組成物は、必要に応じて増感剤、体質顔料等が含まれていても良い。これらは前記の感熱変色層で掲げたものと同様のものを使用することができる。
【0045】
樹脂成分は、水又は有機溶剤(好ましくは水)に溶解させて溶液として使用することが望ましい。これに必要に応じて増感剤、体質顔料等を配合すれば良い。これを用いて感熱変色層上に塗布又は印刷することにより透明性保護層を形成することもできる。
【0046】
透明性保護層の厚みは、その透明性が確保される限り限定されないが、一般的には10〜100μm程度とすれば良い。
【0047】
接着剤層
接着剤層は、公知の接着剤又は粘着剤によって基材及び透明性保護層上に形成するほか、ラミネートフィルムとして一面が予め粘着加工されたもの(粘着剤による層が形成されたもの)を使用することにより形成することもできる。これらの接着剤層を形成する接着剤又は粘着剤としては、例えばアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤等を挙げることができる。特に、本発明では、アクリル系接着剤又は粘着剤に対しても変色後の経時的消色の防止効果がある。
【0048】
接着剤層の厚みは限定されないが、通常は1〜50μm程度の範囲内で適宜設定することができる。
【0049】
ラミネートフィルム
ラミネートフィルムは、公知又は市販の樹脂フィルムから選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン等を挙げることができる。また、前記のとおり、ラミネートフィルムは、積層される面に予め接着剤層(粘着加工された層)を形成されたフィルムを使用することもできる。
【0050】
ラミネートフィルムの厚みは限定されないが、通常は10〜50μm程度の範囲内で適宜設定することができる。
2.消毒確認方法
本発明は、前記インジケータを用いる消毒確認方法も包含する。すなわち、被処理体を熱水で消毒するに際し、消毒済みの有無を確認する方法であって、
(1)被処理体を消毒するに先立ち、前記のインジケータを熱水による消毒が実施される雰囲気下に配置する第1工程、
(2)熱水による消毒を経た後の感熱変色層の変色度合を調べる第2工程
を含むことを特徴とする消毒確認方法。
【0051】
第1工程
第1工程では、被処理体を消毒するに先立ち、前記のインジケータを熱水による消毒工程が実施される雰囲気下に配置する。
【0052】
前記の消毒工程は、公知又は市販の装置で実施される工程の範囲内であればいずれも適用することが可能である。消毒工程としては、例えば80〜93℃程度の熱水による処理工程が挙げられる。
【0053】
配置方法は限定的でなく、洗浄・消毒するための装置の洗浄・消毒室の内壁又は底部に配置することができる。また、被処理体又はその容器(トレイ、ラック等)に設置しても良い。この場合、インジケータは固定しておくことが望ましい。固定方法は限定的でなく、必要に応じて粘着剤、粘着テープ等により固定しても良い。
【0054】
第2工程
第2工程では、熱水による消毒を経た後の感熱変色層の変色度合を調べる。変色度合いは、市販の色差計を用いて色差保持率を求めることにより測定できる。試験前後の変色を、JIS Z 8729に準じて、L*a*b*表色系にて、下記式(1)を用いた色差保持率により評価する。完全に変消色したときのL*a*b*における明度L*をL1,赤方向の色度a*をa1,黄方向の色度b*をb1とし、テスト前の塗膜のL*a*b*のL*をLs,a*をas,b*をbsとし、テスト後の塗膜のL*a*b*のL*をLt,a*をat,b*をbtとして、テスト前後の変色色差保持率を下記式(1)により求める。なお、色差保持率は高いほど、変色が少ない。
【数1】

【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0056】
実施例1〜4
(1)熱変色性組成物の調製
クリスタルバイオレットラクトン、ビスフェノールA又はステアリン酸アミドの20gを5%ポリビニルアルコール水溶液100gとともに一昼夜かけてボールミルで攪拌し、3つの分散液をそれぞれ得た。また、炭酸カルシウム30gを5%ポリビニルアルコール水溶液100gとともにホモジナイザーで分散し、炭酸カルシウム分散液を得た。
【0057】
このようにして得られたクリスタルバイオレットラクトン分散液15g、ビスフェノールA分散液30g、ステアリン酸アミド分散液30g及び炭酸カルシウム分散液25gを混合して熱変色性組成物(熱水温度検知用インキ)を作製した。
(2)透明保護層用インキの調製
表1に示す成分を均一に混合することにより、透明保護層用インキを調製した。樹脂成分は、溶剤又は水に溶解させて用いた。
【0058】
【表1】

【0059】
(3)試験用サンプルの作製
ポリエチレンテレフタレート製シート(5cm×5cm×厚み188μm)に対して、熱水温度検知用インキを用いてシルクスクレーン印刷(100メッシュ)を行い、50℃で乾燥して感熱変色層(1.5cm×1.5cm×厚み10μm)を形成した。感熱変色層及び前記シートの上に、透明保護層用インキを用いてシルクスクレーン印刷(100メッシュ)を行い、50℃で乾燥して透明性保護層(2cm×2cm×厚み20μm)を形成した。次いで、片面が粘着加工されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(リンテック製、製品名「PET25 PAT1」、5cm×5cm×厚み25μm)を粘着加工面が透明性保護層と接するように貼着して積層した。こうして、試験用サンプル(熱水温度検知用インジケータ)を得た。
【0060】
比較例1
透明性保護層を形成しなかったほかは、実施例1と同様にしてインジケータを作製した。
【0061】
試験例1
各実施例及び比較例で得られた試験用サンプルを90℃の熱水に1分、10分及び30分間浸漬した。その後、それぞれのサンプルを取り出して変色色差を測定した。その結果を表1に示す。
【0062】
表1の結果からも明らかなように、比較例1では経時的に消色していくのに対し、実施例1〜4ではいずれも30分浸漬しても色に変化は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す図(インジケータの断面図)である。
【符号の説明】
【0064】
1 基材
2 感熱変色層
3 透明性保護層
4 接着剤層
5 ラミネートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に1)電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含む感熱変色層、2)透明性保護層、3)接着剤層及び4)ラミネートフィルムが順に形成されている熱水温度検知用インジケータであって、
感熱変色層が、基材及び透明性保護層により封止されており、
感熱変色層が、透明性保護層を介して接着剤層と隔離されている、
ことを特徴とする熱水温度検知用インジケータ。
【請求項2】
透明性保護層が、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル及び石油系樹脂の少なくとも1種の樹脂成分を含む樹脂組成物により形成されている、請求項1に記載の熱水温度検知用インジケータ。
【請求項3】
接着剤層が、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の少なくとも1種の樹脂成分を含む樹脂組成物により形成されている、請求項1又は2に記載の熱水温度検知用インジケータ。
【請求項4】
被処理体を熱水で消毒するに際し、消毒済みの有無を確認する方法であって、
(1)被処理体を消毒するに先立ち、請求項1〜3のいずれかに記載のインジケータを熱水による消毒が実施される雰囲気下に配置する第1工程、
(2)熱水による消毒を経た後の感熱変色層の変色度合を調べる第2工程
を含むことを特徴とする消毒確認方法。
【請求項5】
被処理体が医療器具である、請求項4に記載の消毒確認方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−14353(P2009−14353A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173176(P2007−173176)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】