説明

熱源機通信システム

【課題】従来の通信速度が遅いハードウェア資源を生かしつつ、高速でのデータ通信にも対応できる熱源機通信システムを提供する。
【解決手段】給湯装置と、この給湯装置とデータ通信を行う1以上の通信端末とで構成される熱源機通信システムにおいて、給湯装置と少なくとも1の通信端末にデータ通信用のクロック周波数を切り替える切替手段5を備えさせる。そして、この切替手段5でクロック周波数を変更することにより、当該切替手段5が備えられた機器間では従来の通信速度とより高速の通信速度の双方でデータ伝送ができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は熱源機通信システムに関し、より詳細には、熱源機と当該熱源機とデータ通信を行う1以上の通信端末とで構成される通信システムにおいて、従来の通信仕様を生かしながらより高速の通信にも対応可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯装置とそのリモコン(遠隔操作装置)のように、熱源機とその通信端末との間ではデータ通信が行われている。
【0003】
給湯装置とそのリモコンを例にとると、給湯装置とリモコンは通信ケーブルで接続されており、リモコンにおいて設定される各種の設定コマンド(給湯温度や風呂湯量などの設定を指示するコマンド)のデータがこの通信ケーブルを介してリモコンから給湯装置に送信されている。また、給湯装置からリモコンに対しては、リモコンの表示部に給湯装置の状態(たとえば、給湯装置が燃焼運転中であること)を表示させるためのデータが送信されている。
【0004】
そして、この種の給湯装置においては、当該給湯装置には複数のリモコン(たとえば、台所に設置されるリモコンと浴室に設置されるリモコン)が接続される場合が多く、その場合、これら給湯装置と各リモコンとは同一の通信ライン上に接続され、1のリモコンから給湯装置に対して送信される設定コマンドのデータは他のリモコンにおいても受信され、当該設定コマンドの内容を他のリモコンでも把握できるとともに、給湯装置から送信される給湯装置の状態を示すデータも同一通信ライン上にある各リモコンに対して一斉に送信される。つまり、給湯装置とそのリモコン間では一斉同報方式でデータ通信が行われるようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
図6は、このような従来の給湯装置とリモコン間での通信システム(熱源機通信システム)において採用されているデータ通信の通信回路(送信回路)を示している。図6(a)に示すように、この種の熱源機通信システムにおいては、変調に用いる搬送波は、図示しないセラミック発振子や水晶発振子などの発振手段から出力されるクロック周波数を分周回路aで分周(図示例では16分周)して変調回路bに入力しており、変調回路bでこの搬送波を送信するデータ信号で変調して通信ラインに乗せている。
【0006】
図6(b)は、搬送波をASK方式(振幅偏移変調)で変調したときの変調信号を示しており、この図に示すように、ASK方式ではデジタルデータに対応して搬送波の断続を行っており、受信側での信号検出/非検出の確定には搬送波の1周期を1波とすると少なくとも数波(たとえば、15波)が必要になる。そのため、たとえば、図6(a)の通信回路においてクロック周波数を4MHzとすると、分周回路aで分周された搬送波の周波数は250KHzであり、受信側での信号検出/非検出の確定に15波が必要であれば、そのときの最大データ伝送速度は、(4MHz/16)/15≒16.67Kbpsとなる(なお、図6(b)では図示の都合上、変調信号を黒塗りで表現しているが、当該黒塗り部分はその下に図示されるように連続した正弦波を示すものである)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−314888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の給湯装置とリモコン間の通信システム(熱源機通信システム)では以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0009】
すなわち、従来の給湯装置とそのリモコン間で送受信されるデータは、上述したように、給湯装置に対する設定コマンドや給湯装置の現在の状況を表示させるためのデータなど比較的データ量の少ないものであったため、給湯装置とそのリモコン間でのデータ通信のデータ伝送速度はそれ程高くなくても支障がなく、古くから用いられている低速の通信仕様が現在までそのまま維持されているが、最近では、給湯装置に接続される通信端末として、従来のように送受信するデータ量の少ない通信端末だけでなく、送受信するデータ量の多い通信端末が接続される場合がある。
【0010】
たとえば、給湯装置の故障探求にあたり、再現性のない故障を解析するために、給湯装置内に蓄積されている大量のデータを吸い出すデータロガー(Data Logger)が接続される場合や、あるいは、給湯装置内に蓄積されている大量のデータを利用する表示機能(たとえば、過去のエネルギ消費量と現在のエネルギ消費量とを対比して表示する機能)を備えたリモコンが接続される場合などである。
【0011】
しかし、従来の熱源機通信システムは、単なる設定コマンドの送受信や情報量の少ない表示用データの送受信など、熱源機とその通信端末間で送受信するデータ量が少ない場合を想定して設計されているため、上述したように送受信するデータ量の多い通信端末が接続された場合にはデータの送受信に長時間を要する。そのため、表示する情報量の多いリモコンが接続された場合には、情報の表示までに時間がかかり、使い勝手が悪いという問題があった。
【0012】
なお、この点については、給湯装置とリモコンとの通信仕様を高速でのデータ通信に対応した通信仕様に変更することが考えられるが、給湯装置には様々なオプション機器(通信端末)が接続されるので、これらすべてのオプション機器の通信仕様まですべて変更するのは設計上容易でないだけでなく、たとえば、給湯装置または給湯装置に接続されるリモコンやオプション機器の一部が故障して高速通信仕様の機器に交換しなければならない場合には、故障による交換対象となる機器以外の機器まで交換しなければならなくなってしまい、ユーザが被る経済的負担が過大となるという問題があった。
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、従来の通信速度が遅いハードウェア資源およびソフトウェア資源を生かしつつ、高速でのデータ通信にも対応できる熱源機通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の熱源機通信システムは、熱源機と、この熱源機とデータ通信を行う1以上の通信端末とで構成される熱源機通信システムにおいて、熱源機および少なくとも1の通信端末がそれぞれデータ通信用のクロック周波数を切り替える切替手段を備え、上記切替手段の設定によって上記熱源機と上記通信端末とのデータ通信時におけるデータ伝送速度を変更するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
そして、その好適な実施態様として、本発明の熱源機通信システムは、第1通信モードと第2通信モードとを備え、上記切替手段は、上記第1通信モードでデータ通信を行うときには上記通信用のクロック周波数を第1周波数とし、上記第2通信モードでデータ通信を行うときには上記通信用のクロック周波数を上記第1周波数よりも高い周波数の第2周波数とすることを特徴とする。
【0016】
そして、上記切替手段を備えた熱源機および通信端末は、一斉同報方式でデータを送信する場合には上記第1通信モードを選択し、上記熱源機の蓄積データを送受信する場合には上記第2通信モードを選択するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
そして、上記切替手段は、マイクロコンピュータにより制御されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱源機および当該熱源機とデータ通信を行う少なくとも1以上の通信端末にデータ通信用のクロック周波数を切り替える切替手段が備えられ、この切替手段の設定によって熱源機と当該切替手段を備えた通信端末とのデータ通信時におけるデータ伝送速度を変更することができるので、データ伝送速度が異なる通信端末が混在しても熱源機と通信端末の通信を確立することができる。
【0019】
また、切替手段によって切り替えるクロック周波数として、第1周波数と当該第1周波数よりも高い周波数の第2周波数を用いることで、大量のデータの送受信を行うときは第2の周波数を選択することにより第1の周波数を採用したときよりも短時間で大量のデータを送受信できる。
【0020】
そのため、熱源機と大量のデータの送受信が必要な通信端末だけを本発明に係る熱源機及び通信端末に交換することで、既設の通信端末を交換することなく、大量のデータの送受信が必要な場合にのみ熱源機と当該通信端末との間で高速の通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る熱源機通信システムにおける通信回路の回路構成の一例を示すブロック図である。
【図2】同熱源機通信システムにおける通信速度の初期選択の手順を示すフローチャートである。
【図3】同熱源機通信システムにおける通信速度の切替手順を示すフローチャートである。
【図4】同熱源機通信システムを給湯装置とそのリモコンなどに適用したシステム構成の一例を示す説明図であり、図4(a)は、給湯装置に高速・低速双方の通信に対応した熱源機が用いられ、リモコンに低速の通信にのみ対応する通信端末が用いられた場合を示しており、また、図4(b)は、給湯装置およびリモコンの双方に高速・低速双方の通信に対応した熱源機・通信端末が用いられた場合を示している。
【図5】同熱源機通信システムを給湯装置とそのリモコンなどに適用したシステム構成の他の一例を示す説明図であり、図5(a)は、高速・低速双方の通信に対応する給湯装置およびリモコンに、低速の通信にのみ対応する他のリモコンが接続されている場合を示しており、また、図5(b)は、高速・低速双方の通信に対応する給湯装置に、低速の通信にのみ対応するリモコンと、高速・低速双方の通信に対応する通信端末が接続された場合を示している。
【図6】従来の熱源機通信システムにおける通信回路を示す説明図であり、図6(a)は同通信回路の回路構成を示すブロック図であり、図6(b)は変調信号とその検出/非検出の確定の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る熱源機通信システムは、給湯装置(熱源機)1と、この給湯装置1とデータ通信を行う少なくとも1以上のリモコン(通信端末)2および/またはその他の通信端末(たとえば、データロガー3)とで構成される(図4、図5参照)。
【0023】
ここで、給湯装置1とリモコン2(およびその他の通信端末)との接続は、図4および図5に示すように、各リモコン2(およびその他の通信端末)がそれぞれ通信線4を介して給湯装置1と接続されており、該給湯装置1を中心として給湯装置1と各リモコン2(およびその他の通信端末)は同一通信ラインを形成している。
【0024】
このような熱源機通信システムにおいて、本発明は、通信端末のうちの一部に従来の通信仕様(換言すれば、データ伝送速度の遅い低速の通信仕様)よりもデータ伝送速度が速い高速の通信仕様の通信端末が存在する場合に、当該高速の通信仕様の通信端末との間では高速でデータ通信ができる一方、低速の通信仕様の通信端末に対しては低速でデータ通信ができ、かつ、当該低速のデータ通信の内容が上記高速の通信仕様の通信端末においても受信できるようにした熱源機通信システムを提供するものである。
【0025】
そのため、本発明に係る熱源機通信システムでは、給湯装置1と、高速の通信仕様が求められる少なくとも1以上の通信端末の各通信回路には、データ通信用のクロック周波数を切り替える切替手段を備えさせている。すなわち、本発明においては、給湯装置1と、高速の通信仕様が求められる通信端末の通信回路には、データ通信用の搬送波を生成する基になるクロック周波数として2以上の異なる周波数を選択的に切替可能に構成してなる切替手段5が設けられている。
【0026】
具体的には、この切替手段5は、クロック周波数を発生させる発振手段として、たとえば、セラミック発振子や水晶発振子のように発振周波数が固定されたものを用いる場合には、それぞれ異なる周波数の発振子を備えた複数の発振回路(図示せず)と、これら複数の発振回路のうちからいずれか一つの発振回路を選択して当該発振回路から出力される信号をクロック周波数として出力する切替回路(図示せず)とで構成される。なお、この場合の切替回路での発振回路の選択(つまり、出力するクロック周波数の選択)は、当該通信回路が備えられる給湯装置1または通信端末の各制御部を構成するマイクロコンピュータによって行われる。
【0027】
また、発振周波数を任意に変更できる発振手段(たとえば、電圧制御発振器やマイクロコンピュータの出力)を用いる場合には、当該発振手段が上記切替手段5を構成する。なお、この場合も発振手段から出力する周波数の選択(つまり、出力するクロック周波数の選択)は、当該通信回路が備えられる給湯装置1または通信端末の各制御部を構成するマイクロコンピュータによって行われる。
【0028】
そして、このようなクロック周波数の切替手段5から出力されるクロック周波数は、図1に示すように、分周回路6で分周されて搬送波として変調回路7に入力され、当該変調回路7においてデータ信号で変調されて通信線4に乗せられる。なお、この分周回路6および変調回路7の構成は従来の通信回路と同じである。そのため、通信回路に上記切替手段5を有する通信回路を備えた給湯装置および通信端末は、切替手段5でクロック周波数を切り替えることにより、異なる周波数の搬送波を用いてデータ通信ができるように構成される。
【0029】
ここで、高速の通信仕様が求められる通信端末としては、給湯装置1または他の通信端末との間で大量のデータを送受信する必要がある通信端末であり、たとえば、給湯装置1の制御部(図示せず)に蓄積されているデータを吸い出すデータロガー3や、給湯装置1に蓄積されている過去の情報(たとえば、過去のエネルギ消費量、より具体的には、家庭で消費された電気使用量や、給湯装置1で消費されたガス・水道の使用量、さらには給湯装置1に発電装置が併設されている場合には当該発電装置での積算発電電力量など)を表示部に表示させる機能を備えたリモコン2などがある(この種のリモコン2において表示される給湯装置1に蓄積されている過去の情報は、まとまった所定期間(たとえば、一か月や一年など)ごとのデータとして蓄積されるのでデータ量が大量になるため、当該データを表示する機能を備えたリモコン2においてそれらのデータを迅速に表示するには、高速の通信仕様が求められる)。
【0030】
しかして、このようにクロック周波数の切替手段5を有する通信回路を備えた給湯装置1および通信端末について、本実施形態では、これらの各通信回路には、データ通信用の搬送周波数の異なる第1通信モードと第2通信モードの2種類の通信モードが設定される。そして、第1通信モードでは、従来から給湯装置1と通信端末との間で行っているデータ通信に用いられている搬送周波数(つまり、データ伝送速度の遅い低速の通信仕様)が採用され、第2通信モードでデータ通信を行うときには、第1通信モードよりも高い周波数の搬送周波数(つまり、データ伝送速度の速い高速の通信仕様)が採用される。
【0031】
これに伴って、第1通信モードが選択されたときは、上記切替手段5は、第1通信モードの搬送周波数に対応したクロック周波数(第1周波数)を出力するように制御され、また、第2通信モードが選択されたときは、当該第2通信モードの搬送周波数に対応したクロック周波数(上記第1周波数よりも高い周波数の第2周波数)を出力するように制御される。
【0032】
たとえば、第1通信モードでの搬送周波数が250KHzである場合、上記分周回路6が16分周する回路であれば、上記切替手段5から出力されるクロック周波数(第1周波数)は4MHzに制御される。これに対して、第2通信モードの搬送周波数が第1通信モードの搬送波周波数の2倍の周波数である500KHzであれば、上記切替手段5から出力されるクロック周波数(第2周波数)は8MHzに制御される。
【0033】
このように、第1通信モードと第2通信モードでデータ通信の搬送周波数を変える(換言すれば、上記切替手段5でクロック周波数を切り替える)ことにより、通信モードを選択することで、最大データ伝送速度を上げることができる。この例では、第1通信モードから第2通信モードに切り替えることにより、クロック周波数が4MHzから8MHzになり、最大データ伝送速度は、(8MHz/16)/15≒33.33Kbpsとなるので、クロック周波数を4MHzとする従来の熱源機通信システムに比して約2倍のデータ伝送速度でデータ通信を行うことができるようになる。なお、図4および図5に示すシステム構成例では、このように通信モードを従来の低速の通信と高速の通信とで切り替える(クロック周波数を4MHzと8MHzとで切り替えられる)機能を備えた機器を「デュアル」と表示している。
【0034】
次に、図2を参照しながら、給湯装置1における通信速度(データ通信用のクロック周波数)の初期選択の手順を説明する。上述したように、本発明の熱源機通信システムは、通信端末のうちの一部に従来の低速の通信仕様よりも通信速度が速い高速の通信仕様の通信端末が存在する場合であっても、高速の通信仕様の通信端末ならびに低速の通信仕様の通信端末の双方とデータ通信ができるようにしていることから、給湯装置1は以下のようにして上記通信モードを選択する。
【0035】
すなわち、給湯装置1は、電源が投入された直後やその後定期的に、該給湯装置1の制御部が接続されている機器の確認を行う(図2ステップS1参照)。
【0036】
そして、給湯装置1に通信端末が接続されている場合には、接続されている通信端末のなかに低速の通信仕様にしか対応していない端末(以下、「低速の通信端末」と称する)が接続されているか否かを判断する(図2ステップS2参照)。なお、図4および図5のシステム構成例では、このような低速の通信端末を「低速」と表示している。
【0037】
そして、上記図2ステップS2の判断の結果、たとえば、図4(a)や図5(a)、(b)に示すように、給湯装置1に1台でも低速の通信端末が接続されていれば(図2ステップS2で「Yes」であれば)、給湯装置1の制御部は、その通信回路の切替手段5を第1通信モード、すなわち、クロック周波数を4MHzに切り替えて(図2ステップS3参照)、その後は、後述する第2通信モードへの切替要求があるまで、各通信端末と低速の通信仕様でデータ通信を行う(図2ステップS4参照)。
【0038】
これに対して、上記図2ステップS2の判断の結果、たとえば、図4(b)に示すように、給湯装置1に低速の通信端末が接続されていなければ、つまり換言すれば、上記切替手段5を有する通信回路を備えた通信端末(以下、「デュアル通信端末」と称する)しか給湯装置1に接続されていなければ(図2ステップS2で「No」であれば)、給湯装置1の制御部は、その通信回路の切替手段5を第2通信モード、すなわち、クロック周波数を8MHzに切り替えて(図2ステップS5参照)、その後は、各通信端末と高速の通信仕様でデータ通信を行う(図2ステップS6参照)。
【0039】
次に、図3を参照しながら、給湯装置1における通信モードの切替手順を説明する。
この通信モードの切り替えは、給湯装置1に接続される通信端末として、低速の通信端末とデュアル通信端末とが混在する場合において、デュアル通信端末から高速でのデータ通信が要求されたときに行われる。すなわち、給湯装置1が上記第1通信モードを選択している状態で、デュアル通信端末から上記第2通信モードでの通信要求があった場合である(図3の「高速モード切替要求」参照)。
【0040】
図3は、デュアル通信端末としてのリモコン2aからこの要求がなされた場合が示されている。この要求は、デュアル通信端末であるリモコン2aが給湯装置1とデータ通信を行う場合に常に要求するように構成することも可能であるが、そうすると、たとえば、図5(a)に示すように、給湯装置1に低速の通信端末(リモコン2b)が接続されていると、当該低速のリモコン2bは、リモコン2aと給湯装置1との通信の内容を受信することができなくなる。
【0041】
そのため、本実施形態では、デュアル通信端末であるリモコン2aやデータロガー3は、他の低速の通信端末とデータを共有しなくてよい場合にこの要求(第2通信モードへの切替要求)を行うようにその制御部が設定されている。たとえば、上述したように、給湯装置1内に蓄積されている大量のデータを受信する場合や、給湯装置1内に蓄積されている過去のデータを受信する場合のように、高速でデータ通信を行う必要がある場合にこの要求を行うように設定される。
【0042】
そして、デュアル通信端末から第2通信モードへの切替要求があると、給湯装置1は当該要求を行った通信端末に対して通信モードを切り替える旨の応答を行う(図3の「高速モード切替応答」参照)。この応答により、第2通信モードへの切替要求を行ったデュアル通信端末は、高速でのデータ受信を準備して、給湯装置1に対してデータの転送を要求する(図3の「データ要求」参照)。
【0043】
給湯装置1は、デュアル通信端末からデータの転送要求を受け付けると、その制御部が通信モードを第1通信モードから第2通信モードに設定して、通信回路の切替手段5のクロック周波数を第2通信モードに対応するクロック周波数である8MHzに切り替え、高速でデータの転送を開始する(図3の「データ転送」参照)。なお、このように給湯装置1から高速でデータの転送が行われている間、他の通信端末は通信を停止させる。
【0044】
そして、第2通信モードへの切替要求を行ったデュアル通信端末へのデータ転送が完了すると、当該デュアル通信端末は、第2通信モードを終了して第1通信モードに復帰するように第1通信モードへの切替要求を行う(図3の「低速モード切替要求」参照)。この要求を受け付けた給湯装置1の制御部は、当該要求を行った通信端末に対して通信モードを切り替える旨の応答を行い(図3の「低速モード切替応答」参照)、通信モードを第2通信モードから第1通信モードに設定して、通信回路の切替手段5のクロック周波数を第1通信モードに対応するクロック周波数である4MHzに切り替え、通信待機状態になる。
【0045】
これに対して、デュアル通信端末であっても他の低速の通信端末とデータを共有する必要がある場合(換言すれば、一斉同報方式で送信する場合)には、デュアル通信端末の制御部は、第2通信モードへの切替要求は行わずに、低速で給湯装置1とデータ通信を行う。この場合、当該デュアル通信端末と給湯装置1や他の通信端末は同一通信ライン上にあることから、デュアル通信端末から低速で送信されたデータは、給湯装置1や他の通信端末においても受信され、給湯装置1および他の通信端末間で当該データが共有される。
【0046】
なお、低速の通信端末とデュアル通信端末が混在する場合において、給湯装置1が一斉同報方式でデータを送信する場合にも、第1通信モードでデータの送信が行われる。この場合も、給湯装置1と各通信端末とは同一通信ライン上にあるので、送信されたデータが共有される。
【0047】
すなわち、上述した図2ステップS2での判断が肯定的な場合において、一斉同報を行う必要がある場合には給湯装置1およびデュアル通信端末は、必ず低速の通信仕様を使用する。そのため、この場合には低速の通信端末のみならずデュアル通信端末のすべての通信端末(リモコンなど)には最新の情報が同時に共有されることになる。このことから、各通信端末の表示部に表示される情報が統一(共有)されるまでの時間差がなく、情報統一に時間差がかかることによってユーザが違和感を感じることがない。
【0048】
なお、本実施形態では、特定の端末間でのみ通信すればよい場合を除くすべての場合(たとえば、給湯装置1が蓄積するデータを特定の通信端末のみに送信する場合を除く全ての場合)がこの「一斉同報を行う必要がある場合」として設定され、たとえば、給湯装置1における運転状態に関するデータの更新や、リモコンにおける入力操作に関するデータの更新などを送信する場合には一斉同報によりデータの送信が行われる。
【0049】
このように、本発明によれば、給湯装置1および当該給湯装置1とデータ通信を行う少なくとも1以上の通信端末にデータ通信用のクロック周波数を切り替える切替手段5が備えられ、この切替手段5の設定によって給湯装置1と当該切替手段を備えた通信端末とのデータ通信時におけるデータ伝送速度を変更することができるので、データ伝送速度が異なる通信端末が混在しても給湯装置1と通信端末の通信を確立することができる。
【0050】
また、切替手段5によって切り替えられるクロック周波数として、従来の熱源機通信システムで用いられていた周波数と、当該周波数よりも高い周波数とを切り替え可能にすることで、大量のデータの送受信を行うときは高い周波数を選択することにより既存の熱源機通信システムよりも短時間で大量のデータを送受信できる。
【0051】
そのため、たとえば、給湯装置1に蓄積されている大量のデータの送受信が必要な通信端末に上記切替手段5を備えさせることで、既設の通信端末を有効に利用しつつ、大量のデータの送受信が必要な通信端末との間では高速の通信を実現できる。
【0052】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0053】
たとえば、上述した実施形態では、切替手段5で切替可能なクロック周波数が2種類の場合を示したが3種類以上のクロック周波数を切替できるようにすることももちろん可能であり、また、クロック周波数の具体的な数値も適宜変更可能である。
【0054】
また、上述した実施形態では、データ通信用のクロック周波数の切り替えに関して変調用のクロック周波数についての切替手段5を示したが、変調信号を受信する検波回路に同期方式を採用する場合には、当該同期用の周波数の基になるクロック周波数についても上記切替手段5と同様の切替手段が採用される。
【符号の説明】
【0055】
1 給湯装置
2 リモコン(通信端末)
3 データロガー(通信端末)
4 通信ケーブル
5 切替手段
6 分周回路
7 変調回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機と、この熱源機とデータ通信を行う1以上の通信端末とで構成される熱源機通信システムにおいて、
熱源機および少なくとも1の通信端末が、それぞれデータ通信用のクロック周波数を切り替える切替手段を備え、
前記切替手段の設定によって前記熱源機と前記通信端末とのデータ通信時におけるデータ伝送速度を変更するように構成されていることを特徴とする熱源機通信システム。
【請求項2】
第1通信モードと第2通信モードとを備え、
前記切替手段は、前記第1通信モードでデータ通信を行うときには前記通信用のクロック周波数を第1周波数とし、前記第2通信モードでデータ通信を行うときには前記通信用のクロック周波数を前記第1周波数よりも高い周波数の第2周波数とすることを特徴とする請求項1に記載の熱源機通信システム。
【請求項3】
前記切替手段を備えた熱源機および通信端末は、一斉同報方式でデータを送信する場合には前記第1通信モードを選択し、前記熱源機の蓄積データを送受信する場合には前記第2通信モードを選択するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱源機通信システム。
【請求項4】
前記切替手段は、マイクロコンピュータにより制御されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱源機通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119742(P2012−119742A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265025(P2010−265025)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】