説明

熱物質転写基材フィルム、ドナー要素、並びにそれを作製及び使用する方法

基材フィルム、熱転写ドナー要素、並びにそれらを作製及び使用する方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのような基材フィルム及びドナー要素は、少なくとも2つのダイアドを含み、各ダイアドは、吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層とを含む。また、提供されるのは、本質的に非吸収性の基材、吸収性の第1層及び本質的に非吸収性の第2層を含むドナー要素を作製する方法であり、本質的に非吸収性の基材の組成は、本質的に非吸収性の第2層の組成と本質的に同じである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
熱転写要素からレセプターへの層の熱転写は、例えば、カラーフィルタ、偏光子、プリント基板、液晶表示装置及びエレクトロルミネッセンス表示装置を含む様々な製品の作製を示唆している。これらの製品の多くの場合、解像度及び縁部鮮明度が製品製造時の重要な要因である。別の要因は、所定量の熱エネルギーに対する熱転写要素の転写部分の大きさである。例として、線又は他の形状を転写する際、形状の線幅又は直径は、熱転写要素をパターン化するのに使用される抵抗素子又は光線の大きさに依存する。線幅又は直径は、転写エネルギーに対する熱転写要素の能力にも依存する。抵抗素子又は光線の縁部近くでは、熱転写要素に供給されるエネルギーは、減少させてもよい。熱伝導のよい、熱損失の少ない、転写コーティングの感度のよい及び/又は光−熱変換のよい熱転写要素は、典型的により大きい線幅又は直径をもたらす。従って、線幅又は直径は、熱伝達関数を機能させる時の熱転写要素の効率の反映であることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
熱転写特性を改善できる1つの方法は、転写層材料の処方の改善によるものである。例えば、転写層に可塑剤を包含すると転写特性を改善できる。レーザー誘起熱転写時に転写忠実度を改善する他の方法としては、ドナー媒体に入射するレーザー出力光及び/又はフルエンスを増加させることが挙げられる。しかし、レーザー出力光又はフルエンスを増加させると、ドナー媒体内の1つ以上の層の過熱に起因する画像不具合を部分的にまねくおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの態様では、本発明は、熱転写ドナー要素の基材フィルムを提供する。ある実施形態では、基材フィルムは、少なくとも2つのダイアドを包含する層のスタックを含み、各ダイアドは、吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層を含み、少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層は、本質的に同じ光吸収率を有する。
【0004】
他の態様では、本発明は、熱転写ドナー要素を提供する。ある実施形態では、熱転写ドナー要素は、基材の少なくとも一部に本質的に非吸収性の基材と光−熱変換(LTHC)層とを含む。光−熱変換層は、少なくとも2つのダイアドを包含する少なくとも層の第1スタックを含み、層の第1スタックの少なくとも2つのダイアドの各々が吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層とを含み、少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層が本質的に同じ光吸収率を有する。いくつかの実施形態では、熱転写ドナー要素は、基材と光−熱変換層との間に配置される下部層を更に含む。いくつかの実施形態では、熱転写ドナー要素は、光−熱変換層の少なくとも一部に中間層を更に含む。いくつかの実施形態では、熱転写ドナー要素は、光−熱変換層又は中間層の少なくとも一部に熱転写層を更に含む。
【0005】
他の態様では、本発明は、熱転写ドナー要素の基材を調製する方法を提供する。方法は、少なくとも2つのダイアドを包含する層のスタックを形成する工程を含み、各ダイアドは、吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層とを含み、少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層は、本質的に同じ光吸収率を有する。
【0006】
他の態様では、本発明は、熱転写ドナー要素を調製する方法及びそのようなドナー要素を使用する選択的な熱的物質転写の方法を提供する。ある実施形態では、方法は、本質的に非吸収性の基材をもたらす工程と基材の少なくとも一部に少なくとも2つのダイアドを包含する層のスタックを形成する工程とを含み、少なくとも2つのダイアドの各々は、吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層とを含み、少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層は、本質的に同じ光吸収率を有する。
【0007】
ある他の実施形態では、本発明は、本質的に非吸収性の基材をもたらす工程と基材の少なくとも一部に本質的に非吸収性の第2層とを形成する工程とを含み、本質的に非吸収性の基材の組成が、本質的に非吸収性の第2層の組成と本質的に同じである熱転写ドナー要素を調製する方法を提供する。方法は、所望により熱転写層を形成する工程を更に含む。
【0008】
定義
用語「含む」及びこの変形は、これらの用語が現れる説明及び請求項を制限する意図を持たない。
【0009】
本明細書で使用する時、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」及び「1以上の」は、互換的に使用される。
【0010】
また本明細書において、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含されるすべての数(例えば1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、など)が包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
レーザー誘起熱画像形成(LITI)に使用される熱転写ドナー要素の設計の1つの目標は、ドナー要素をできる限り感度よく調節し、一方で同時に画像品質をできる限り高くすることである。ドナー要素は、完全な状態のままで意図しない熱誘起アーチファクトを被らないことが好ましい。ある実施形態では、転写材料の縁部及び上部表面は、できる限り平滑であることが好ましい。画像形成プロセス時のエネルギー管理の効率が悪い場合、転写材料は、転写材料の所望の平滑な連続的な線(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)カラーフィルタの色の線)よりもむしろ暗い領域を含む不具合をこうむる場合がある。LTHCの典型的な実施形態としては、LTHC層が、光を吸収する材料(例えば、カーボンブラック)が均一に充填されたバインダの単一層(例えば、有機ポリマー−シリカナノ複合材料などのポリマー又は複合材料)を含み、それが典型的に溶液コーティングされる(すなわち、例えば液体コーティング溶液、分散液又は懸濁液を使用した湿式コーティング法)実施形態、及び/又はLTHC層が、類別金属/金属酸化物複合材料(薄いフィルム)を含み、それが典型的に気相蒸着される(例えば、真空蒸着又はスパッタ)実施形態が挙げられる。
【0012】
熱誘起アーチファクトが発生する確率は、LTHC層内で得られる温度特性に依存すると思われる。温度特性は、画像構成時の熱の生成及び拡散により決定され、それは、典型的にドナー要素(転写層を含む)とレセプター基材とを含む。温度特性は、LTHC層の単位体積当たりに吸収された強度にも依存する。LTHC層の深さの関数としての均一に充填されたLTHC層の光の吸収(損失)は、(ファイバー下方の距離の関数として)均一に粗いコア被覆境界面を有する光ファイバーからの光の抽出と類似の観点から評価することができる。カーボンブラック充填LTHC層に対しては、LTHC層のある点でのエネルギー吸収速度は、カーボンブラックの充填量に比例していると考えられる。
【0013】
本明細書に記載されるように、非類別LTHC層と本質的に同じ量のエネルギーを吸収するが、単位体積当たりに吸収される均一強度を有する類別LTHC層を設計することができる。類別LTHC層の単位体積当たりの最大強度(及び従って最大温度)は、非類別LTHC層よりも有意に小さい場合があり、熱誘起アーチファクト発生の確率を低下させる。しかし、コーティング内に吸収性材料を有する溶液コーティングLTHC層の任意の類別は、製造設定で実現するのが困難な場合がある。例えば、類別溶液コーティングLTHC層を調製する1つの方法は、異なる吸収性材料(例えば、カーボンブラック)を有する2つ又はそれ以上の層を上部に互いに連続してコーティングし、多層LTHC層を形成することである。例えば、米国特許番号第6,228,555号、米国特許番号第6,468,715号及び米国特許番号第6,689,538号(全てがホフェンド(Hoffend)Jrら)に記載されている。しかし、前記方法は、各々が異なる吸収性材料の充填量を有する多数の異なるコーティング溶液を調製、貯蔵及びコーティングする必要を来す場合がある。本明細書で議論したように、開示した実施形態の少なくともいくつかが上記問題に対処する。
【0014】
本明細書で開示したある実施形態では、スタックダイアド及び/又はスタックダイアドのスタックバンドを含む多層LTHC層を提供する。本明細書で使用する時、「ダイアド」及び「二分子層」は、交換可能に使用され、ダイアドの全厚さがダイアドを形成する2つの層を組み合わせた厚さであり、一方を他方に積み重ねた2つの層を指す。ある開示された実施形態では、1つ以上のダイアドは、吸収性層と本質的に非吸収性層とを含む。
【0015】
各々が吸収性層と本質的に非吸収性層とを含むスタックダイアドは、単一吸収性層組成物を使用した種々の多層類別LTHC層を形成することができる。例えば、吸収性層がレーザー光線を吸収する材料を均一に充填したバインダを含む場合、吸収性層組成物は、例えばバインダ組成物、吸収性材料組成物及びバインダ内の吸収性材料の充填量を指す。従って、単一吸収性層組成物を使用することで、本明細書に上記した類別多層LTHC層の調製時に遭遇する問題のいくつかに対処することができる。
【0016】
本明細書で開示したように、種々の多層類別LTHC層は、単一吸収性層組成物を使用し、例えばダイアドのスタックの各ダイアドの吸収性層の厚さを変えること及び/又は本質的に非吸収性層の厚さを変えることにより形成することができる。例えば、吸収性層と本質的に非吸収性層の厚さとを各ダイアドについてそれぞれ変更し、同時にダイアドのスタックの各ダイアドの厚さを本質的に同じに保持することができる。他の例では、各ダイアドの吸収性層の厚さを変更し、同時に各ダイアドの各本質的に非吸収性層の厚さを本質的に同じままにして、異なる厚さを有する各ダイアドをもたらすことができる。他の例の場合は、各ダイアドの吸収性層の厚さを本質的に同じままにし、同時に各ダイアドの各本質的に非吸収性層の厚さを変更して、異なる厚さを有する各ダイアドをもたらすことができる。更に他の例の場合、各ダイアドの吸収性層と本質的に非吸収性層の厚さとを両方とも変更し、異なる厚さを有する各ダイアドをもたらすことができる。前記多層類別LTHC層は、好ましくは、例えばダイアド当たり吸収される一定の強度及び一定の合計エネルギー密度;ダイアド当たり一定の吸収性材料の比率及び一定のダイアド厚さ;ダイアド当たり一定の吸収強度及び吸収性材料の比率;及び/又は本明細書で更に記載するようなこれらの特性の1つ以上を有するダイアドの多数のバンド、を含む1つ以上の特性をもたらすことができる。
【0017】
吸収性層は、広くは光、特にレーザー誘起熱画像形成に有用な波長のレーザー光線を吸収する材料を含む層を指す。いくつかの実施形態では、吸収性層は吸収性材料と本質的に非吸収性材料との両方を含み、一方、その他の実施形態では、吸収性層は吸収性材料だけを含む。例えば、吸収性材料(例えば、染料及び/又はカーボンブラックなどの顔料及び/又は他の光吸収粒子)は、バインダ(例えばポリマー又は複合材料)中に溶解、分散又は懸濁させることができる。他の例の場合、吸収性層は、バインダが存在しない状態で吸収性材料(例えば、ゲルマニウム、ヘキサホウ化ランタン、酸化インジウム−スズ、酸化アルミニウム、(亜)酸化アルミニウム、酸化銀及びこれらの組み合わせなどの金属及び/又は金属酸化物)を含むことができる。吸収性材料は、典型的に少なくとも0.25マイクロメートル−1、より好ましくは少なくとも1マイクロメートル−1及び最も好ましくは少なくとも10マイクロメートル−1の吸収速度を有する。黒体吸収剤(例えば、カーボンブラック)を有するバインダを含む典型的な吸収性材料は、2マイクロメートル−1までの吸収速度を有する。その中に染料、顔料及び/又は光吸収性材料を有するバインダを含むその他の吸収性材料は、3マイクロメートル−1、4マイクロメートル−1又は更にそれ以上までの吸収速度を有することができる。典型的な金属、金属酸化物及び/又は半導性材料は、実質的により高い吸収速度を有することができる。例えば、代表的な画像形成性放射線波長で、ゲルマニウムは、10マイクロメートル−1の吸収速度を有する。
【0018】
代表的な吸収性材料は、例えば、米国特許番号第6,582,876号(ウォルク(Wolk)ら)及び米国特許番号第6,586,153号(ウォルク(Wolk)ら);マツオカ(Matsuoka)、赤外線吸収性材料(Infrared Absorbing Materials)、プレナムプレス(Plenum Press)、ニューヨーク(1990年);マツオカ(Matsuoka)、ダイオードレーザー用染料の吸収スペクトル(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers)、ブンシン・パブリッシング社(Bunshin Publishing Co.)、東京(1990年);ブラックマン(Brackmann)、ランブダクロムレーザー染料(Lambdachrome Laser Dyes)、ランブダ・フィジック社(Lambda Physik GmbH)、ゴエティンゲン(Goettingen)(1997年);ハーブスト(Herbst)ら、工業用有機顔料(Industrial Organic Pigments):製造、性質、用途(Production, Properties, Applications)、VCHパブリッシャー社(VCH Publishers, Inc.)、ニューヨーク(1993年);ハンガー(Hunger)、工業用染料(Industrial Dyes):化学、性質、用途(Chemistry, Properties, Applications)、ワイリー−VCHバーラグ社(Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.)、KGaA、ウェインヘイム(Weinheim)(2003年)に記載されており、これらは、例えばエポリン(Epolin)(ニュージャージー州ネワーク(Newark))及び/又はH.W.サンズ社(H.W. Sands Corp.)(フロリダ州ジュピター(Jupiter))から入手できる。
【0019】
LTHC層の放射線吸収剤として使用されて好適な染料は、粒子状形態で存在してもよいし、バインダ材料に溶解されてもよいし、又は少なくとも部分的にバインダ材料中に分散されてもよい。分散粒子状放射線吸収剤を使用する場合、粒径は、少なくとも場合によっては10マイクロメートル以下であることができ、1マイクロメートル以下であってもよい。好適な染料としては、スペクトルのIR領域で吸収するこれらの染料が挙げられる。前記染料の例は、マツオカ(Matsuoka)、赤外線吸収性材料(Infrared Absorbing Materials)、プレナムプレス(Plenum Press)、ニューヨーク(1990年);マツオカ(Matsuoka)、ダイオードレーザー用染料の吸収スペクトル(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers)、ブンシン・パブリッシング社(Bunshin Publishing Co.)、東京(1990年);米国特許番号第4,772,582号(デボー(DeBoer));米国特許番号第4,833,124号(ラム(Lum));米国特許番号第4,912,083号(チャップマン(Chapman)ら);米国特許番号第4,942,141号(デボー(DeBoer)ら);米国特許番号第4,948,776号(エバンス(Evans)ら);米国特許番号第4,948,778号(デボー(DeBoer)ら);米国特許番号第4,950,639号(デボー(DeBoer)ら);米国特許番号第4950,640号(エバンス(Evans)ら);米国特許番号第4,952,552号(チャップマン(Chapman)ら);米国特許番号第5,023,229号(エバンス(Evans)ら);米国特許番号第5,024,990号(チャップマン(Chapman)ら);米国特許番号第5,156,938号(チャップマン(Chapman)ら);米国特許番号第5,286,604号(シモンズIII(Simmons, III));米国特許番号第5,340,699号(ハレイ(Haley)ら);米国特許番号第5,351,617号(ウイリアムズ(Williams)ら);米国特許番号第5,360,694号(チエン(Thien)ら);及び米国特許番号第5,401,607号(タキフ(Takiff)ら);欧州特許番号321,923(デボー(DeBoer)ら);及び欧州特許番号568,993(ヤマオカ(Yamaoka)ら);並びにベイロK.A.(Beilo, K. A.)ら、J.Chem.Soc.Com.、1993年、452〜454頁(1993年)に見出すことができる。グレンデール・プロテクティブ・テクノロジー社(Glendale Protective Technologies, Inc.)(フロリダ州レイクランド)から商品表記シアソーブ(CYASORB)IR−99、IR−126及びIR165として入手可能なIR吸収剤が使用されてもよい。具体的な染料は、具体的なバインダ及び/又はコーティング溶媒中での溶解度及びそれとの相溶性、並びに吸収の波長範囲などの要因に基づき選択されてもよい。
【0020】
吸収性層とは対照的に、本質的に非吸収性層は、一般に吸収性材料を添加しない本質的に非吸収性材料の層を指す。本質的に非吸収性材料としては、例えば吸収性層のバインダ(例えばポリマー又は複合材料)として使用できる材料が挙げられる。本質的に非吸収性材料は、典型的に0.01マイクロメートル−1まで、より好ましくは0.001マイクロメートル−1まで、及び最も好ましくは0.0001マイクロメートル−1までの吸収速度を有する。
【0021】
層間のある程度の混合が、ダイアドとダイアドのスタックの形成及び処理時に生じてもよいことが理解され予想される。それゆえに、吸収性層と本質的に非吸収性層とを含むダイアドは、吸収性層と本質的に非吸収性層との間の境界面で明確な境界を有するダイアドばかりではなく、吸収性層と本質的に非吸収性層との間の境界面で混合が生じたダイアドも包含することを意味する。同様に、ダイアドのスタックは、それぞれのダイアドの境界面で明確な境界を有するダイアドばかりではなく、1つ以上のダイアドの境界面で混合が生じたダイアドのスタックも包含することを意味する。
【0022】
1つの態様では、本発明は、熱転写ドナー要素の基材フィルムを提供する。ある実施形態では、基材フィルムは、少なくとも2つのダイアドを包含する層のスタックを含み、各ダイアドは、吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層とを含み、少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層は、本質的に同じ光吸収率を有する。本明細書で使用する時、「光吸収率」は、単位厚さ当たりに吸収される光強度率を指す。本質的に同じである光吸収率は、差が最も大きい光吸収率(それらが異なる場合)を有するダイアドの光吸収率の百分率として表わされる場合、好ましくは10%以下だけ、より好ましくは1%以下だけ、最も好ましくは0.1%以下だけ異なる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのダイアドは、吸収性層及び本質的に非吸収性層とを交互に有するスタックを形成する。
【0023】
所望により、基材フィルムは、本明細書に記載したスタックダイアド(すなわち、光学スタック又は光学層)に加えて、例えば1つ以上の表面薄層などの1つ以上の非光学層又は、例えば光学層の包み間の保護境界層などの1つ以上の内部非光学層を更に含む。非光学層は、基材フィルム構造体を提供すること、あるいはそれを処理時若しくは処理後の損害又は損傷から保護するために使用することができる。いくつかの用途に対しては、犠牲保護表面薄層を含むことが望ましい場合があり、表面薄層と光学スタック及び光学中間層との間の層間接着が、表面薄層を光学スタック及び光学中間層からはがすことができるように制御される。特に、押出成形及び共押出成形時に調製される表面薄層は、LITIドナー(光学スタック又は任意の中間層)の最終上部表面の微粒子混入を減少又は除去でき、ドナーフィルムを製造する環境の清浄度要求値を低減させることができる。
【0024】
材料が、例えば引裂き抵抗、破壊抵抗、強靱性、耐候性及び基材フィルムの耐溶剤性などの特性を付与又は改善する非光学層に選択されてもよい。典型的に、1つ以上の非光学層は、光学層によって透過、偏光又は反射される光の少なくとも一部も、これらの層を通って伝わるように定置される(すなわち、これらの層は、光学層を通って伝わる又は光学層によって反射される光の経路内に定置される)。非光学層は、典型的に関心波長領域にわたって基材フィルムの反射特性に実質的に影響を及ぼさない。結晶化度及び収縮特性などの非光学層の特性を、極度に湾曲した基材に積層される際に亀裂又はしわができない本発明のフィルムを付与する光学層の特性と一緒に、考慮することが必要である。
【0025】
非光学層はあらゆる適当な材料からなり、光学スタックに使用される材料の1つと同様であり得る。もちろん、選択される材料が、光学スタックの材料に有害な光学的性質を有さないことが重要である。非光学層は、光学層に使用されるポリマーの全てを含むポリエステル類などの種々のポリマーから形成されてもよい。いくつかの実施形態では、非光学層に選択される材料は、光学層に選択される材料と類似又は同じである。表面薄層にcoPEN、coPET又は他のコポリマー材料を使用すると基材フィルムの裂け(すなわち、ひずみ誘起結晶化度及び大多数の高分子分子の配向方向への整列によるフィルムの割れ分離)を低減することができる。非光学層のcoPENは、光学層を配向するために所望により使用される条件下で延伸される際、典型的にほとんど配向しないため、ひずみ誘起結晶化はほとんどない。
【0026】
表面薄層及び他の任意の非光学層は、光学層より厚くすること、薄くすること又は同じ厚さにすることができる。表面薄層及び任意の非光学層は、一般に個々の光学層の少なくとも1つの厚さの少なくとも4倍、典型的には少なくとも10倍であり、少なくとも100倍であることができる。非光学層の厚さは、特定の厚さを有する基材フィルムを作製するために変更することができる。
【0027】
追加のコーティングは、非光学層と考えられてもよい。その他の層としては、例えば帯電防止コーティング又はフィルム、難燃剤、UV安定剤、耐磨耗又は硬質コーティング(hardcoat)材料、光学コーティング、かぶり防止材料及びこれらの組み合わせが挙げられる。追加の機能性層又はコーティングが、例えば米国特許番号第6,352,761号(ヘブリンク(Hebrink)ら)、米国特許番号第6,368,699号(ギルバート(Gilbert)ら)、米国特許番号第6,569,515号(ヘブリンク(Hebrink)ら)、米国特許番号第6,673,425号(ヘブリンク(Hebrink)ら)、米国特許番号第6,783,349号(ニイビン(Neavin)ら)及び米国特許番号第6,946,188号(ヘブリンク(Hebrink)ら)に記載されている。これらの機能性構成成分は、1つ以上の表面薄層に組み込まれてもよく、又はそれらは、別のフィルム若しくはコーティングとして適用されてもよい。
【0028】
他の態様では、本発明は、熱転写ドナー要素を提供する。ある実施形態では、熱転写ドナー要素は、基材の少なくとも一部に本質的に非吸収性の基材と光−熱変換層とを含む。光−熱変換層は、少なくとも2つのダイアドを包含する層の第1スタックを少なくとも含み、層の第1スタックの少なくとも2つのダイアドの各々が、吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層とを含み、少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層が、本質的に同じ光吸収率を有する。いくつかの実施形態では、層の第1スタックの少なくとも2つのダイアドが、吸収性層と本質的に非吸収性層とを交互に有する層のスタックを形成する。
【0029】
熱転写ドナー要素のいくつかの実施形態では、層の第1スタックの各ダイアドの全厚さは本質的に同じである。本明細書で使用する時、「本質的に同じ」厚さを有するダイアドは、差が最も大きい厚さ(それらが異なる場合)を有するダイアドの厚さの百分率として表わされる場合、好ましくは10%以下だけ、より好ましくは1%以下だけ、最も好ましくは0.1%以下だけ異なる。
【0030】
熱転写ドナー要素の1つの実施形態では、層の第1スタックの各ダイアドの全厚さは、本質的に同じであり、各ダイアドの第1層の厚さと第2層との厚さは、層の第1スタックの各ダイアドに吸収される全強度が本質的に同じになるように選択される。本明細書で使用する時、「全吸収強度」は、ダイアドのスタック全体により吸収される入射利用可能な光強度率を指す。従って、ダイアドに吸収される全強度は、そのダイアドより吸収される入射利用可能な光強度率である。「本質的に同じ」全吸収強度を有するダイアドに吸収される全強度は、差が最も大きい全吸収強度(それらが異なる場合)を有するダイアドの全吸収強度の百分率として表わされる場合、好ましくは10%以下だけ、より好ましくは1%以下だけ、最も好ましくは0.1%以下だけ異なる。
【0031】
熱転写ドナー要素の他の実施形態では、層の第1スタックの各ダイアドの全厚さは、本質的に同じであり、吸収性材料の比率は、層の第1スタックのダイアド毎に本質的に同じである。本明細書で使用する時、ダイアドの「吸収性材料の比率」は、ダイアドの吸収性層の厚さとダイアドの全厚さの比率を指す。「本質的に同じ」吸収性材料の比率を有するダイアドの吸収性材料の比率は、差が最も大きい吸収性材料の比率(それらが異なる場合)を有するダイアドの吸収性材料の比率の百分率として表わされる場合、好ましくは10%以下だけ、より好ましくは1%以下だけ、最も好ましくは0.1%以下だけ異なる。
【0032】
熱転写ドナー要素の他の実施形態では、吸収性材料の比率は、層の第1スタックのダイアド毎に本質的に同じであり、層の第1スタックの各ダイアドの厚さは、層の第1スタックのダイアド毎に吸収される本質的に同じ全強度をもたらすように選択される。
【0033】
熱転写ドナー要素の更なる実施形態では、光−熱変換層は、少なくとも2つのダイアドを包含する層の第2スタックを更に含み、吸収性材料の比率が、層の第2スタックのダイアド毎に本質的に同じであり、吸収性材料の比率が、層の第1スタックのダイアド毎に本質的に同じである。いくつかの前記実施形態では、層の第1スタックの各ダイアドの全厚さは、本質的に同じであり、層の第2スタックの各ダイアドの全厚さは、本質的に同じであり、層の第1スタックの各ダイアドの全厚さは、層の第2スタックの各ダイアドの全厚さと異なる。
【0034】
所望により、熱転写ドナー要素は、例えば米国特許番号第6,284,425号(スタラル(Staral)ら)に記載されるような基材と光−熱変換層との間に配置される下部層を更に含む。所望の下部層は、例えば、画像形成時、ドナー基材が損傷するのを最小限にするように、コーティングされてもよいし、又は別の方法でドナー基材とLTHC層との間に配置されてもよい。下部層は、ドナー基材要素に対するLTHC層の接着にも影響を及ぼすことができる。典型的に、下部層は、高耐熱性(すなわち、基材よりも低い熱伝導度)を有し、熱絶縁物として作用して、LTHC層内で発生する熱から基材を保護する。あるいは、基材より高い熱伝導度を有する下部層は、LTHC層から基材への熱輸送を強化するのに使用することができ、例えばLTHC層の過熱に起因し得る画像不具合の発生を低減する。
【0035】
好適な下部層としては、例えばポリマーフィルム、金属層(例えば蒸気蒸着金属層)、無機層(例えばゾル−ゲル蒸着層及び無機酸化物の蒸気蒸着層(例えばシリカ、チタニア、アルミニウム酸化物及びその他の金属酸化物))、有機/無機複合材料層、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。下部層材料として好適な有機材料としては、熱硬化性材料と熱可塑性材料との両方が挙げられる。好適な熱硬化性材料としては、架橋された及び/又は架橋性ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリエステル類、エポキシ類、ポリウレタン類及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない熱、放射線及び/又は化学処理により架橋されてもよい樹脂が挙げられる。熱硬化性材料が、例えば熱可塑性前駆体としてドナー基材又はLTHC層にコーティングされ、その後架橋されて、架橋された下部層を形成してもよい。
【0036】
好適な熱可塑性材料としては、例えばポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリスチレン類、ポリウレタン類、ポリスルフォン類、ポリエステル類、ポリイミド類及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの熱可塑性有機材料は、従来のコーティング技術(例えば、溶媒コーティング又はスプレーコーティング)により適用されてもよい。下部層は、画像形成性放射線の1つ以上の波長に対して透過性、吸収性、反射性又はこれらの組み合わせのいずれかであってもよい。
【0037】
下部層材料として好適な無機材料としては、例えば金属類、金属酸化物類、金属硫化物類、無機炭素コーティング類及びこれらの組み合わせが挙げられ、画像形成光波長で透過性、吸収性又は反射性であるこれらの材料を含む。これらの材料は、コーティングされてもよいし、ないしは別の方法で従来技術(例えば真空スパッタリング、真空蒸発及び/又はプラズマジェット蒸着)により適用されてもよい。
【0038】
下部層は、多くの利益をもたらす場合がある。例えば、下部層は、LTHC層とドナー基材との間の熱輸送を管理又は制御するために使用されてもよい。下部層は、LTHC層内で発生する熱から基材を隔離するため、又はLTHC層から離れ基材に向かう熱を吸収するために使用されてもよい。ドナー要素の温度管理及び熱輸送は、層を付加することにより、並びに/あるいは熱伝導度(例えば熱伝導度の値若しくは指向性のいずれか若しくは両方)、吸収剤材料の分布及び/若しくは向き、又は層若しくは層内の粒子のモルホロジー(例えば金属薄膜層若しくは粒子内の結晶成長若しくはグレイン形成の向き)などの層特性を制御することにより、達成することができる。
【0039】
下部層は、添加剤を含有してもよく、例えば光開始剤類、界面活性剤類、顔料類、可塑剤類、コーティング助剤類及びこれらの組み合わせが挙げられる。下部層の厚さは、例えば下部層の材料、LTHC層の材料及び光学特性、ドナー基材の材料、画像形成性放射線の波長、画像形成性放射線に対する熱転写要素の曝露持続時間、全体的なドナー要素構成及びこれらの組み合わせなどの要因により決められてもよい。ポリマー下部層の場合、下部層の厚さは、典型的に少なくとも0.05マイクロメートル、好ましくは少なくとも0.1マイクロメートル、より好ましくは少なくとも0.5マイクロメートル及び最も好ましくは少なくとも0.8マイクロメートルである。ポリマー下部層の場合、下部層の厚さは、典型的に10マイクロメートルまで、好ましくは4マイクロメートルまで、より好ましくは3マイクロメートルまで及び最も好ましくは2マイクロメートルまでである。無機下部層(例えば金属又は金属化合物下部層)の場合、下部層の厚さは、典型的に少なくとも0.005マイクロメートル、好ましくは少なくとも0.01マイクロメートル及びより好ましくは少なくとも0.02マイクロメートルである。無機下部層の場合、下部層の厚さは、典型的に10マイクロメートルまで、好ましくは4マイクロメートルまで及びより好ましくは2マイクロメートルまでである。
【0040】
所望により、熱転写ドナー要素は、例えば米国特許番号第5,725,989号(チャング(Chang)ら)及び米国特許出願番号2005/0287315(クレイリッチ(Kreilich)ら)に記載されるような光−熱変換層の少なくとも一部に中間層を更に含む。所望の中間層は、転写層の転写部分の損傷及び汚染を最小限にするために使用されてもよく、転写層の転写部分のひずみを減少させてもよい。中間層は、熱転写要素に対する転写層の接着にも影響を及ぼしてもよいし、ないしは別の方法で画像及び非画像領域内の転写層の取り外しを制御してもよい。好ましくは、中間層は、高耐熱性を有し、画像形成条件下で特に転写画像を非機能にする程度に変形又は化学的に分解しない。好ましくは、中間層は、転写プロセス時、LTHC層と接触したままであり、実質的に転写層と共に転写されない。
【0041】
好適な中間層としては、例えばポリマーフィルム、金属層(例えば蒸気蒸着金属層)、無機層(例えばゾル−ゲル蒸着層及び無機酸化物の蒸気蒸着層(例えばシリカ、チタニア、アルミニウム酸化物及びその他の金属酸化物))、有機/無機複合材料層、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。中間層材料として好適な有機材料としては、熱硬化性材料と熱可塑性材料との両方が挙げられる。
【0042】
熱硬化性中間層に包含される好適な材料としては、重合性及び/又は架橋性モノマー類、オリゴマー類、プレポリマー類、及び/又はバインダとして使用され、架橋され、コーティングプロセス後所望の耐熱性反射性中間層を形成してもよいポリマー類を含むが、これらに限定されない熱、放射線及び/又は化学処理により架橋されてもよい、これらの材料が挙げられる。この用途に好適であるモノマー類、オリゴマー類、プレポリマー類、及び/又はポリマー類としては、架橋耐熱及び/又は耐溶媒高分子層を形成し、架橋ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリエステル類、エポキシ類、ポリウレタン類、(メタ)アクリレートコポリマー類、及びこれらの組み合わせを含む中間層を形成できる既知の化学物質が挙げられる。適用を容易にするため、熱硬化性材料は、熱可塑性前駆体としての光−熱変換層に通常コーティングされ、その後架橋されて、所望の架橋中間層を形成する。好適な熱可塑性材料としては、例えばポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリスチレン類、ポリウレタン類、ポリスルフォン類、ポリエステル類、ポリイミド類及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの熱可塑性有機材料は、従来のコーティング技術(例えば、溶媒コーティング又はスプレーコーティング)により適用されてもよい。典型的に、中間層に使用されて好適な熱可塑性材料のガラス転移温度(T)は、25℃以上、より好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上及びより好ましくは150℃以上である。
【0043】
中間層は、画像形成性放射線波長で光学的に透過性、光学的に吸収性、光学的に反射性又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
中間層材料として好適な無機材料としては、例えば金属類、金属酸化物類、金属硫化物類、無機炭素コーティング類及びこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態では、無機中間層は、画像形成性放射線波長で高度に透過性である。他の実施形態では、無機中間層は、画像形成性放射線波長で高度に反射性である。これらの材料は、従来技術(例えば真空スパッタリング、真空蒸発及び/又はプラズマジェット蒸着)により光−熱変換層に適用されてもよい。
【0045】
中間層は、多くの利益をもたらす場合がある。中間層は、LTHC層からの材料の転写に対する障壁であってもよい。熱的に不安定及び/又は温度感受性材料を転写することができるように、転写層で得られる温度を調節してもよい。例えば、中間層は、LTHC層で得られる温度に対して中間層と転写層との境界面で温度を制御する熱拡散器として作用することができ、このことが転写層の品質(すなわち、表面粗さ、縁部粗さ等)を改善してもよい。中間層の存在が、改善されたプラスチックメモリ又は転写材料のひずみの減少をもたらしてもよい。中間層は、熱転写ドナー要素の残部に対する転写層の接着に影響を及ぼす場合があり、従って追加の変数を付与して、LITIドナー/レセプター系転写特性を最適化するように調節してもよい。画像形成がドナー側からの放射により行われる場合、反射中間層は、中間層を通って透過された画像形成性放射線の量を減衰させ、それにより透過された放射線と転写層又はレセプターとの相互作用におそらく起因する全ての転写画像の損傷を減少させ、レセプターが画像形成性放射線を高度に吸収する際に転写画像に生じる場合がある熱損傷低減に特に利益となることができる。しかし、場合によっては、中間層は、必要とされない又は所望されない場合があり、転写層が、直接LTHCにコーティングされる場合がある。中間層は、添加剤を含有してもよく、例えば光開始剤類、界面活性剤類、顔料類、可塑剤類、コーティング助剤類及びこれらの組み合わせが挙げられる。中間層の厚さ及び光学特性(例えば吸収、反射、透過)は、例えば中間層の材料、厚さ、画像形成性放射線吸収特性、LTHC層の材料、転写層の材料、画像形成性放射線の波長、画像形成性放射線に対する熱転写要素の曝露持続時間及びこれらの組み合わせなどの要因により決められてもよい。ポリマー中間層の場合、中間層の厚さは、典型的に少なくとも0.05マイクロメートル、好ましくは少なくとも0.1マイクロメートル、より好ましくは少なくとも0.5マイクロメートル及び最も好ましくは少なくとも0.8マイクロメートルである。ポリマー中間層の場合、中間層の厚さは、典型的に10マイクロメートルまで、好ましくは4マイクロメートルまで、より好ましくは3マイクロメートルまで及び最も好ましくは2マイクロメートルまでである。無機中間層(例えば金属又は金属化合物中間層)の場合、中間層の厚さは、典型的に少なくとも0.005マイクロメートル、好ましくは少なくとも0.01マイクロメートル及びより好ましくは少なくとも0.02マイクロメートルである。無機中間層の場合、中間層の厚さは、典型的に10マイクロメートルまで、好ましくは3マイクロメートルまで及びより好ましくは1マイクロメートルまでである。
【0046】
いくつかの実施形態では、熱転写ドナー要素は、例えば米国特許番号第6,582,876号(ウォルク(Wolk)ら)及び米国特許番号第6,866,979号(チャング(Chang)ら)に記載されるような光−熱変換層又は中間層の少なくとも一部に熱転写層を更に含む。
【0047】
転写層は、該当する画像形成用途(例えば、カラープルーフ、印刷版及びカラーフィルタ)に適切であるように処方できる。転写層は、それ自体熱可塑性及び/又は硬化性材料を含んでもよい。多くの製品用途(例えば、印刷版及びカラーフィルタ用途)では、転写層材料は、画像形成物品の性能を改善するため、レーザー転写後、好ましくは架橋される。転写層に含まれる添加剤は、さらにまた最終用途(例えば、カラープルーフ及びカラーフィルタ用途の着色剤、光架橋した及び/又は光架橋性転写層の光開始剤)に固有ということになり、当業者には既知である。
【0048】
中間層は、熱転写層の温度特性を調節できるため、典型的な顔料よりも熱により敏感な傾向のある材料は、本発明の方法を使用して損傷が低減された状態で転写されてもよい。例えば、医療診断化学は、バインダに包含することができ、医化学に損傷の可能性がほとんどない時に及び/又は試験結果の破損の可能性がほとんどない時に、本発明を使用して医療試験カードに転写できる。化学物質又は酵素表示器は、中間層を従来の熱ドナー要素から転写した同じ材料と比較する時、本発明の使用でほとんど損傷を受けない。
【0049】
熱転写層としては、染料類(例えば可視染料類、紫外線染料類、蛍光染料類、放射−偏光染料類、IR染料類及びこれらの組み合わせ)、光学活性物質類、顔料類(例えば透明顔料類、着色顔料類及び/又は黒体吸収剤類)、磁気の粒子類、電気伝導性又は絶縁性粒子類、液晶材料類、親水性又は親油性材料類、開始剤類、増感剤類、蛍光体類、高分子バインダ類、酵素類、並びにこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない材料の部類が挙げられる。
【0050】
カラープルーフ及びカラーフィルタ要素などの多くの用途の場合、熱転写層は、着色剤を含むことになる。好ましくは、熱転写層は、少なくとも1つの有機又は無機着色剤(すなわち、顔料類又は染料類)及び熱可塑性バインダを含むことになる。IR吸収剤類、分散剤類、安定剤類、可塑剤類、架橋剤類、コーティング助剤類及びこれらの組み合わせなどの他の添加剤類も含まれてよい。任意の顔料が使用されてもよいが、カラーフィルタ要素などの用途の場合、好ましい顔料類は、NPIRI原材料データ便覧(Raw Materials Data Handbook)、4巻(顔料)又はヘルプスト(Herbst)、工業有機顔料(Industrial Organic Pigments)、VCH(1993年)に良好な色耐久性及び透明性を有するとして一覧表示されたものである。非水性又は水性顔料分散液のいずれかが使用されてもよい。顔料は、一般にバインダが分散され、溶媒又は溶媒の混合物中に懸濁された顔料を含む練り顔料の形態で色処方に取り入れられる。顔料の種類及び色は、色コーティングが業界により規定されたあらかじめ設定された色目標又は規格に適合するように選択することができる。分散樹脂の種類及び顔料と樹脂の比率は、顔料の種類、顔料の表面処理、練り顔料生成に使用される分散溶媒及びミリング方法又はこれらの組み合わせに依存することになる。好適な分散樹脂としては、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー類、ポリ(酢酸ビニル)/クロトン酸コポリマー類、ポリウレタン類、スチレン無水マレイン酸半エステル樹脂類、(メタ)アクリレートポリマー類及びコポリマー類、無水物類及びアミン類で変性されたポリ(ビニルアセタール類)、ヒドロキシアルキルセルロース樹脂類、スチレンアクリル樹脂類及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい色転写コーティング組成物は、30〜80重量%の顔料、15〜60重量%の樹脂、並びに0〜20重量%の分散剤及び添加剤を含む。
【0051】
転写層の1つの例は、有機エレクトロルミネセント(OEL)デバイス又はOELデバイスと接続して使用される他のデバイスなどの多層デバイスの少なくとも一部をレセプターに形成するために使用される、単一又は多成分転写ユニットを含む。ある場合には、転写層は、作動デバイスを形成するのに必要な層の全てを含んでよい。他の場合には、転写層は、作動デバイスを形成するのに必要な層の全てよりも少なく含んでもよく、他の層は、1つ以上の他のドナー要素からの転写又はいくつかの他の好適な転写若しくはパターニング法により形成される。更に他の場合には、デバイスの1つ以上の層は、レセプターに設けられてもよく、残りの層は、1つ以上のドナー要素の転写層に包含される。あるいは、デバイスの1つ以上の追加の層は、転写層がパターン化された後、レセプターに転写されてもよい。場合によっては、転写層は、デバイスの単一層を形成するだけのために使用される。
【0052】
1つの実施形態では、代表的な転写層は、多成分転写ユニットを含み、多層デバイスの少なくとも2つの層を形成することができる。多層デバイスのこれらの2つの層は、多くの場合転写層の2つの層に相当する。この例では、多成分転写ユニットの転写により形成される層の1つは、活性層(すなわち、導電、半導電、電子ブロッキング、ホールブロッキング、光発生(例えば、ルミネセンス、発光、蛍光及び/又はりん光)、電子発生及び/又はホール生成層として作用する層)であることができる。多成分転写ユニットの転写により形成される第2層は、他の活性層又は操作層(すなわち、デバイス内の絶縁、導電、半導電、電子ブロッキング、ホールブロッキング、光発生、電子発生、ホール生成、光吸収、反射、回折、相遅延、散乱、分散及び/又は拡散層として作用する層)であることができる。第2層は、非操作層(すなわち、デバイスの操作時機能しないが、例えばパターン化時レセプター基材に対する転写ユニットの転写及び/又は付着を容易にする)であることもできる。多成分転写ユニットは、追加の活性層、操作層及び/又は非操作層を形成するために使用されてもよい。
【0053】
他の態様では、本発明は、熱転写ドナー要素の基材フィルムを調製する方法を提供する。この方法は、少なくとも2つのダイアドを含む層のスタックを形成する工程を含み、各ダイアドは、吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層とを含み、少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層は、本質的に同じ光吸収率を有する。
【0054】
他の態様では、本発明は、熱転写ドナー要素を調製する方法及びそのようなドナー要素を使用した選択的な熱的物質転写の方法を提供する。ある実施形態では、この方法は、本質的に非吸収性の基材をもたらす工程と、少なくとも2つのダイアドを包含する層のスタックを基材の少なくとも一部に形成する工程とを含み、少なくとも2つのダイアドの各々は、吸収性の第1層と本質的に非吸収性の第2層とを含み、少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層は、本質的に同じ光吸収率を有する。
【0055】
幅広い方法が、少なくとも2つのダイアドを包含する層のスタックを含むLTHC層を形成するために使用できる。代表的な方法としては、(i)順次、架橋性バインダ内に分散された吸収剤材料を有する層及び添加吸収剤材料を有しない架橋性バインダの層をコーティングし、各コーティング工程後架橋する又は全ての該当する層をコーティング後多数の層を一緒に架橋する、(ii)順次、吸収性層及び本質的に非吸収性である層を気相蒸着する、(iii)順次、架橋性バインダ内に配置された吸収剤材料を含む層及び本質的に非吸収性気相蒸着層を形成する(架橋性バインダは、その粒子層をコーティング後又は他のコーティング工程が行われた後ただちに架橋されてもよい)、(iv)順次、添加吸収剤材料を有しない架橋性バインダを含む層及び吸収気相蒸着層を形成する(架橋性バインダは、その粒子層をコーティング後又は他のコーティング工程が行われた後ただちに架橋されてもよい)、(v)順次、バインダ内に配置された吸収剤材料を有する層及び添加吸収剤材料を有しないバインダの層を押出成形する、(vi)各ダイアドが吸収性層及び本質的に非吸収性層を包含した状態でダイアドのスタックを押出成形する、及び(vii)上記の任意の好適な組み合わせ又は並べ換えが挙げられる。当該技術分野において既知のそのような方法としては、例えば米国特許番号第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)、米国特許番号第6,352,761号(ヘブリンク(Hebrink)ら)、米国特許番号第6,368,699号(ギルバート(Gilbert)ら)、米国特許番号第6,569,515号(ヘブリンク(Hebrink)ら)、米国特許番号第6,673,425号(ヘブリンク(Hebrink)ら)、米国特許番号第6,783,349号(ニイビン(Neavin)ら)、米国特許番号第6,946,188号(ヘブリンク(Hebrink)ら)及び米国特許出願番号2004/0214031A1(ウィムバーガー−フリードレット(Wimberger-Friedl et)ら)に記載されるような、例えば多層押出成形法が挙げられる。当該技術分野において既知のそのような方法の追加としては、米国特許番号第5,440,446号(シャウ(Shaw)ら)、米国特許番号第5,725,909号(シャウ(Shaw)ら)及び米国特許番号第6,231,939号(シャウ(Shaw)ら)に記載されるような、例えば多層コーティング−蒸着法が挙げられる。
【0056】
例えば米国特許番号第6,045,737号(ハーベイ(Harvey)ら)に記載されるように、所望により、層をその形成時又は後のいずれかで配向させることができる。例えば、配向ポリエステルフィルムは、材料モルホロジー(例えば、結晶化度増加)に影響を及ぼすことができる。更に、配向(例えば、幅出)は、例えば異方性熱伝導度を含む異方性特性をもたらすことができ、熱転写法での転写材料の忠実度に影響を及ぼすことができる。ポリマーの融点未満の温度(すなわち、特定のポリエステルに対して約260℃)での配向は、例えば熱膨張、熱収縮及び物理特性(例えば、弾性率及び弾性)を含む種々の他の特性にも影響を及ぼすこともできる。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つのダイアドの第1層及び第2層を押出成形する工程を含む(例えば第1層及び第2層を好ましくは同時に共押出成形する)。ある実施形態では、少なくとも2つのダイアドの各層は、基材上に同時に押出成形される。ある実施形態では、層の各々が共押出成形される(例えば、同時に共押出成形される)。そのような押出成形法としては、本明細書に記載されたような多層押出成形が挙げられる。
【0058】
ある他の実施形態では、本発明は、本質的に非吸収性の基材をもたらす工程と、基材の少なくとも一部に吸収性の第1層を形成する工程と、吸収性の第1層の少なくとも一部に本質的に非吸収性の第2層を形成する工程とを含み、本質的に非吸収性の基材の組成が、本質的に非吸収性の第2層の組成と本質的に同じである熱転写ドナー要素を調製する方法を提供する。この方法は、所望により熱転写層を形成する工程を含む。ある実施形態では、第1及び/又は第2層を形成する工程は、第1及び/又は第2層を押出成形する工程を含む(例えば、第1層と第2層とを好ましくは同時に共押出成形する)。ある実施形態では、少なくとも2つのダイアドの各層は、基材上に同時に押出成形される。
【0059】
上記の方法は、モノリシックドナー(すなわち、単一層であるように見えるドナー)を調製するために使用することができる。例えば、モノリシックドナーは、一体型のLTHC層と中間層とを有し、それぞれが同じ熱可塑性樹脂に基づく支持体フィルムとして説明することができる。他の例では、モノリシックドナーは、注入又は充填されたレーザー吸収領域を有する単一モノリシック熱可塑性フィルムとして説明することができる。モノリシックドナーは、多数の別個の層を含む当該技術分野において既知のドナーを超える様々な利益を有することができる。例えば、同じ熱可塑性樹脂の3つの熱溶融層に基づく多層ドナーの構造一体化は、溶液コーティングされた構造体のそれよりすぐれていると思われる。更に、本明細書に記載した方法により調製されたモノリシックドナーは、無関係の化合物(例えば、分散剤、界面活性剤、湿潤剤、溶媒及び/又はモノマー)の量を減少させることができ、従来の方法により調製されたドナーの場合に通常生じる脱ガスの減少又は除去をもたらすことができる。更に、本明細書に記載した方法により調製されるモノリシックドナーは、OLEDパターンプロセスで有害である励起状態消滅種であることが知られているアクリレート類が存在しなくても、調製することができる。更に、2溶液コーティング及び複数の巻き戻し、検査、及び/又は洗浄を無くすことができるため、そのような方法の効率を高めることができる。最後に、この方法は、保護ライナー(例えば、ポリプロピレンライナー)の適用に適合することができ、ライナーは超清浄ディスプレイ製造環境で暴露されるまで非常に清浄な境界面を覆い隠す。
【0060】
共押出成形法は、実質的にバインダビヒクル材料のより広範な選択肢を可能にする。例えば、808〜1064ナノメートルの光のかなりの量を吸収する染料又は顔料(例えば、カーボンブラック及び/又は銅フタロシアニン)を充填したポリエチレンテレフタレート(PET)ペレットを容易に得ることができる。そのようなペレットは、LTHC層を押出成形するために利用することができ、一方ポリエステルの同じ等級の非顔料ペレットは、ベース層及び/又は中間層を押出成形するために使用することができる。実質的により広範な選択肢からバインダビヒクル材料を選択する能力は、例えば改善された熱安定性、改善された分子量分布、改善された耐溶媒性、低分子量添加剤及び/又は副生成物(例えば、流動化剤、分散剤、光重合開始剤及び/又は未反応モノマー)の減少又は除去、並びにベースフィルムに対する接着に必要な下塗り層及び/又はタイ層の除去を含む様々な利益をもたらすことができる。
【0061】
更にPETは、共押出成形の関心をそそる選択ではあるが、多くの他の押出可能なポリマーも使用でき、ドナーに重要な利益をもたらすことができる。追加のポリマーの選択としては、例えばアクリル類、ウレタン類、ポリエチレンナフタレート、コポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリスルフォン類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ゴム、ポリスチレン、シリコーン類、フッ素重合体類、フェノール樹脂類及び/又はエポキシ類が挙げられる。例えば、屈折率、Tg、融点、分子量分布、寸法安定性、可撓性、剛性及び/又は複屈折を含む種々の要因に基づき、ポリマー又はポリマーブレンドを選択できる。
【0062】
共押出成形を含む方法は、例えば下塗り層及び/又はタイ層の除去、複数のコーター通過の排除、乾燥工程の排除、UV硬化工程の排除、溶液コーティングに関連する収率損失及び/又は追加材料処理損失の排除を含むプロセス効率の潜在的な改善をもたらすことができる。更に、共押出成形を含む方法では、製品パラメーターは、多くの場合容易に調節できる。例えば、モノリシックドナーの各部分の厚さは、共押出成形法で有意に変更できる。長さ配向、幅出、ヒートセット及び/又は結晶化領域などの従来のダウンストリームウェブ加工も共押出成形と併用して使用され、所望の特性(例えば、異方性熱伝導度)をドナーに付与することができる。更に、フラッシュランプ、カレンダー工法及び/又は炎エンボス加工などの表面修正が、共押出成形と併用して使用され、表面粗さの利益になる手直し、モルホロジー及び/又は追加の所望の特性をもたらすことができる。
【0063】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載した熱転写ドナー要素を使用した選択的な熱的物質転写の方法を提供する。代表的な方法は、本明細書に記載した熱転写ドナー要素をもたらす工程と、レセプター基材に隣接してドナー要素の熱転写層を定置する工程と、熱転写層の部分を光−熱変換層により熱に吸収及び変換することができる画像形成性放射線をドナー要素に選択的に放射することによりドナー要素からレセプター基材に熱転写する工程とを含む。熱転写方法は、例えば米国特許番号第7,014,978号(ベルマン(Bellman)ら)に記載されているように当該技術分野において周知である。
【0064】
例えば、本発明の方法では、発光ポリマー(LEPs)又は他の材料を含む放射有機物質は、レセプターに隣接したドナー要素の転写層を定置すること及びドナー要素を選択的に加熱することにより、ドナーシートの転写層からレセプター基材に選択的に転写することができる。例として、ドナー要素は、しばしば別々のLTHC層に配置される光−熱変換材料により吸収され熱に変換され得る画像形成性放射線をドナー要素に放射することにより、選択的に加熱できる。これらの場合、ドナーは、ドナー基材、レセプター又は両方を介して画像形成性放射線に暴露されてもよい。放射線は、1つ以上の波長を含むことができ、例えば、レーザー、ランプ又はその他のそのような放射線源からの可視光線、赤外線又は紫外線が挙げられる。サーマルプリントヘッドを使用した又はサーマルホットスタンプ(例えば、選択的にドナーを加熱するために使用できるレリーフパターンを有する、加熱されたシリコーンスタンプなどのパターン化サーマルホットスタンプ)などのその他の選択性の加熱方法も使用することができる。熱転写層からの材料は、このようにしてレセプターに選択的に転写され、転写材料のパターンをレセプターに画像形式で形成することができる。多くの場合、ドナーをパターン形式で暴露するため、例えばランプ又はレーザーからの光を使用する熱転写は、大抵は達成できる正確さ及び精度のために有利であることができる。転写パターン(例えば、線、円形、正方形又は他の形状)の寸法及び形状は、例えば光線の大きさ、光線の曝露パターン、ドナーシートと接触する向けられた光線の持続時間、並びに/又はドナーシートの材料を選択することにより制御することができる。転写パターンは、マスクを介してドナー要素に放射することによっても制御できる。
【0065】
記載したように、サーマルプリントヘッド又は他の加熱素子(パターン化ないしは別の方法で)は、ドナー要素を選択的に直接加熱するために使用でき、それにより転写層の部分をパターン形式で転写する。そのような場合、ドナーシートの光−熱変換材料は、任意である。サーマルプリントヘッド又は他の加熱素子は、材料の低解像度パターンの作製に、又はその配置が正確に制御される必要がない要素のパターン化に特に適合する場合がある。
【0066】
転写層は、選択的に転写層を転写することなくドナーシートから転写することもできる。例えば、熱転写は、本質的に一時的なライナーとして作用するドナー基材上に形成できるが、それは転写層がレセプター基材に接触後、典型的に熱又は圧力の適用により取り外すことができる。ラミネーション転写と呼ばれるそのような方法は、転写層全体又はその大部分をレセプターに転写するために使用できる。
【0067】
本発明の特定の実施形態を以下に説明する。特定の実施例、材料、量及び手順が本明細書で記載された本発明の範囲及び趣旨により広く解釈されるべきであることが理解されるべきである。
【0068】
本明細書に記載したのは、レーザー誘起熱画像形成(LITI)法を使用して材料をパターン化するために使用されるドナーシートのLTHC層形成に使用される種々の光学材料である。例えば、有機発光デバイス(OLED)材料は、808ナノメートルの画像形成波長及びカーボンブラック又は青色顔料吸収剤などの吸収性材料を充填した高分子マトリックスで構成されるLTHC層を使用して典型的にパターン化できる。これらの所謂「分散粒子吸収剤」は、通常のポリマー、例えば0.5〜2.0マイクロメートル−1及び好ましくは1.0マイクロメートル−1の範囲と比較すると有意であるが、蒸気コーティング法(例えば、808ナノメートルで約10マイクロメートル−1の吸光度を有するゲルマニウム)を使用してコーティングできる光学吸収無機材料と比較すると小さい画像形成波長での光学的吸光度を有する。パターン化OLEDsに使用される典型的なドナーとしては、2.7マイクロメートルの厚さ及び1.0マイクロメートル−1の吸収を有するLTHC層(以下「標準均一LTHC層」)が挙げられる。本明細書に記載したのは、一連の高吸収薄膜層を使用したドナーの例であり、分散粒子吸収剤に基づきドナーの光学特性に近似する。
【0069】
本明細書に記載したのは、一定の吸収aを有する吸収性材料と本質的に非吸収性材料とからなる2つの材料のダイアドの包みを有するLTHC層を使用した例であり、LTHC層の深さxに対する任意の有限非均一吸収特性aNU(x)を有するLTHC層の光学応答に近似する(非均一の場合添え字NU)。非均一吸収特性は、ダイアドの厚さ変化により近似される。比較を容易にするため、いくつかの物理量を以下に記載する。
【0070】
光吸収率は、2つの点の間の距離に対する点xから点xまでの光強度の減衰速度として定義される。これらの2つの点の距離は、入射表面を基準としてLTHC層の深さxにおける点からの距離xである。
【0071】
LTHC層の深さxに対する透過強度率Tは、LTHC層の入射表面での光強度の値に対する標準化された瞬間光強度(ポインティングベクトルの大きさ)である。吸収速度が深さxだけの関数と仮定すると、透過強度率は、
【0072】
【数1】

【0073】
として書き表すことができる。
【0074】
点xまでの全吸収強度率F(x)は、単に透過されない強度又はF(x)=1−T(x)である。
【0075】
深さxに対する吸収強度密度g(x)のプロファイルは、点xで吸収される瞬間強度密度であり、(ポインティングベクトルの発散を引いて)
【0076】
【数2】

【0077】
により与えられる。
【0078】
典型的な均一LTHC層と同じように光学的に作用する多層類別LTHC層を比較するため、光学的に同じLTHC層が同じF(x)及びT(x)量を有した状態で第2の量(透過強度率T)と第3の量(全吸収強度率F(x))のプロットを考察することが便利である。
【0079】
図1を参照すると、プロットは、同じ厚さ(2.7マイクロメートル)を有する標準均一LTHC層(実線)とゲルマニウムの単一層(破線)とに関するLTHC層の深さに対して吸収及び透過強度率を比較している。尚、透過光率は、ゲルマニウムの0.1マイクロメートル対標準均一LTHC層の1マイクロメートルでその初期値の1/e倍に減少している。
【0080】
ゲルマニウムのダイアドとMgFなどの非吸収性材料を使用して調製された多層類別LTHC層を本明細書に理論的に示し、標準均一LTHC層の吸収特性に近似させる。これは、例えば図2に示すように多数のダイアドを有する、例えばLTHC層の実施形態を使用して達成することができる。この設計の場合、ダイアド毎に吸収性層の厚さhと全ダイアド厚さdの比率は、各ダイアドにより吸収される全強度が、標準LTHC層の厚さに等しい単層により吸収される強度と同じであるように設定される。これは、
【0081】
【数3】

【0082】
(式中、aLTHCは、標準均一LTHC層の吸収速度であり、aGeは、ゲルマニウムの吸収速度である)を設定することにより達成される。図2において、各ダイアドの厚さは、必要に応じて変更できる。
【0083】
図2を参照すると、多層類別LTHC層20は、ダイアド1、2、3及び4を含む。ダイアド1、2、3及び4はそれぞれ吸収性層と本質的に非吸収性層とを含む。典型的に層のスタックは、吸収性層と本質的に非吸収性層とを交互に含む。例えば、層5、7、9及び11は、吸収性層であることができ、層6、8、10及び12は、本質的に非吸収性層であることができる。あるいは、層5、7、9及び11は、本質的に非吸収性層であることができ、層6、8、10及び12は、吸収性層であることができる。図2には、更に任意の基材30、任意の中間層及び/又は転写層40、並びに任意のレセプター50を示す。
【0084】
ダイアド1、2、3及び4の厚さは、それぞれd、d、d及びdにより表わすことができる。層5、7、9及び11が吸収性層、並びに層6、8、10及び12が本質的に非吸収性層を示す場合、ダイアド毎の吸収性材料の比率(δ)は、ダイアドの厚さで除した吸収性層の厚さの比率により表すことができる(層5、7、9及び11に対してそれぞれh、h、h及びhにより表わされる)。図2に示した実施形態の場合、ダイアド毎の吸収性材料の比率(δ)は、本質的に同じであり、全ダイアド厚さ(d、d、d及びd)は、各ダイアドにより吸収される全強度が本質的に同じであるように調節される。次に、全ダイアド厚さは、LTHC層の深さの関数として増加させなければならないため、ダイアド当たりに吸収される平均強度密度は、LTHC層の深さの関数として減少し、ピーク温度はHTLC内で上昇する。従って第1近似は、LTHC層の深さの関数として減少する。
【0085】
図2に示したような構成は、均一な平均光学及び熱特性を有する材料を構成することが望ましい場合に有用であることができる。更に、転写を引き起こすのを促進する圧力波をもたらす効果を有する、LTHC層内で1つ以上の気泡を生成させるために、温度増加上昇がLTHC層のレーザー入口領域近くで必要な場合は、有用であり得る。LTHC層内の多数の層は、気泡が形成される期待領域を増加又は減少させるように調節でき、多数の本質的に非吸収性領域は、気泡の破裂の防止に役立つ気泡膜として作用できる。
【0086】
図3は、ゲルマニウム−MgFの8ダイアドを有する図2に示した標準均一LTHC層(実線)対多層類別LTHC層(破線)に関する吸収及び透過強度率の比較を示す。各層でのゲルマニウムとMgFの厚さの比は、1:9である(ゲルマニウム層は、各ダイアドの全厚さの0.1である)。図3は、標準均一LTHC層の場合のLTHC層の深さに対する吸収及び透過強度のプロファイルに非常に近似した、8ダイアドを有する多層構造体を示す。換言すれば、8ダイアドを有する多層構造体は、標準均一LTHC層の吸収プロファイルに近似するような方法で、LTHCの深さに対する光学エネルギーの吸収の拡散を可能にする。図3は、図2の例のサブケースであり、各ダイアドの厚さは、同じである必要がある。
【0087】
図4は、吸収性材料の比率(δ)がダイアド毎に本質的に同じであり、ダイアド厚さ(d)がダイアド毎に本質的に同じであることを除いて、図2と類似する多層類別LTHC層の別の例を示す。これは、単位体積当たり平均一定吸収速度を有する複合材料LTHC層をもたらす効果がある。この構成は、例えば、アルミニウム(亜)酸化物の単一厚さ層が余りに大きい吸収速度を有し、従って深刻な熱欠損の影響を受けやすい場合に、アルミニウム(亜)酸化物及びインジウム−スズ酸化物などの真空コーティング材料の多数のダイアドの単位体積当たりの吸収速度を減少させるために使用することができる。図4に示したものなどの構成は、本明細書に記載したように、LTHC層の厚さ及びLTHC層の単位深さ当たりの平均光吸収を制御するのに有用であることができる。
【0088】
図5は、ゲルマニウム−MgFの8ダイアドを有する図4に示した標準均一LTHC層(実線)対多層類別LTHC層(破線)に関する吸収及び透過強度率の比較を示す。
【0089】
図6を参照すると、各ダイアド(d)の厚さが本質的に同じであるようにNダイアドのスタックが配列されることを除いて、別の多層類別LTHC層の例は図2及び4と類似している。吸収性層6、8、10及び12は、変更が可能である厚さ(それぞれ、h、h、h及びh)を有する。吸収性層の厚さは、各ダイアドにより吸収される全強度が本質的に同じであるように選択される。尚、各吸収性層(h1...N)と各本質的に非吸収性層(d−h1...N)の厚さの比率は一定ではない。各ダイアドにより吸収される全強度が本質的に同じであり、各ダイアドが本質的に同じ全体的な厚さを有するため、吸収される全平均強度密度はダイアド毎に本質的に同じである。従って、第1近似に対して、各ダイアドの平均温度上昇は同じとなり、LTHC層の温度上昇はその厚さに対して概ね均一となる。更に、LTHC層のピーク温度は、ダイアド厚さを調節することにより調節できる。
【0090】
図6に示すような多層類別LTHC層は、熱誘起アーチファクト発生の確率の最小化を可能にすることにより有利であることができる。LTHC層の深さの関数としてのピーク温度を深さに対して可能な限り一定にすることにより、LTHC層の深さに対するピーク温度を最小化できる。熱誘起アーチファクト発生の確率はLTHC層のピーク温度と関連しているため、LTHC層の深さの関数としてのピーク温度の最小化はこれらの不具合が発生する確率を最小化できる。図6に示したような多層類別LTHC層の他の利益は、各ダイアドの全体的な厚さの調節がLTHC層の全体的なピーク温度、つまりドナー材料により到達される全体的なピーク温度の調節を可能にすることである。この制御スキームは、ドナー材料の熱損傷の確率を減少させるために使用することができる。
【0091】
図7は、ゲルマニウム−MgFの8ダイアドを有する図6に示した目標線状プロファイルLTHC層(実践)対多層類別LTHC層(破線)に関する吸収及び透過強度率の比較を示す。図7は、8ダイアドを有する図6に示した実施形態が、吸収及び透過強度の線状プロファイルに近似できるが、これは単一ダイアド又は単一層を使用しては達成できないことを示す。図7に示した例の透過性は、それを標準均一LTHC層に適合させるために調節されている。
【0092】
図8を参照すると、別の多層類別LTHC層20の例が、ダイアド25及び125の2つのバンドを含んで示されている。示されていないが、多層類別LTHC層は、所望により追加のダイアドのバンド(複数)を含むことができる。更に、各バンドのダイアドの数は、説明の目的のためだけであり、ダイアドの各バンドは、独立して図8に示したものより多い又は少ないダイアドを含むことができる。
【0093】
図8を参照すると、バンド25は、ダイアド1、2、3、4及び5を含む。ダイアド1、2、3、4及び5のそれぞれは、吸収性層と本質的に非吸収性層とを含む。典型的に、ダイアドのバンドは、吸収性層と本質的に非吸収性層とを交互に含む。例えば、層6、8、10、12及び14が吸収性層であり、層7、9、11、13及び15が本質的に非吸収性層であることができる。あるいは、層6、8、10、12及び14が本質的に非吸収性層であり、層7、9、11、13及び15が吸収性層であることができる。ダイアド1、2、3、4及び5の厚さは、dにより表すことができる。層6、8、10、12及び14が吸収性層を表し、層7、9、11、13及び15が本質的に非吸収性層を表す場合、ダイアド毎の吸収性材料の比率(δ)は、ダイアドの厚さで除した吸収性層の厚さの比率で表すことができる(h)により表される)。
【0094】
再び図8を参照すると、バンド125は、同じようにダイアド101、102、103、105、105及び106を含む。ダイアド101、102、103、104、105及び106は、それぞれ吸収性層と本質的に非吸収性層とを含む。典型的にダイアドのバンドは、吸収性層と本質的に非吸収性層とを交互に含む。例えば、層107、109、111、113、115及び117が吸収性層であり、層108、110、112、114、116及び118が本質的に非吸収性層であることができる。あるいは、層107、109、111、113、115及び117が本質的に非吸収性層であり、層108、110、112、114、116及び118が吸収性層であることができる。ダイアド101、102、103、105、105及び106は、dにより表すことができる。層107、109、111、113、115及び117が吸収性層を表し、層108、110、112、114、116及び118が本質的に非吸収性層を表す場合、各ダイアド毎の吸収性材料の比率(δ)は、ダイアドの厚さで除した吸収性層の厚さの比率(hにより表される)で表すことができる。
【0095】
図8は、更に任意の基材30、任意の中間層及び/又は転写層40、並びに任意のレセプター50を示す。
【0096】
図8に示した実施形態の場合、各ダイアド毎の吸収性材料の比率(δ)は本質的に同じであり、バンド25の各ダイアドは本質的に同じ厚さdを有し、バンド125の各ダイアドは本質的に同じ厚さdを有し、一定の強度がバンド毎に吸収され、最小ピーク強度がバンド毎に吸収される。図8に示した構成は、図6に示したものと類似する構成を併せ持ち、例えば米国特許番号第6,228,555号、米国特許番号第6,468,715号及び米国特許番号第6,689,538号(全てがホッフェンド(Hoffend)Jr)に記載されるような重層(例えば二重層)LTHC層を有するダイアドの単一スタック内の単位深さ当たりの厚さ及び平均光吸収を制御することができる。図8に示したような二重又は多バンドLTHC層は、さもなければ熱誘起アーチファクトをもたらすことになる材料の多数の薄膜層から形成することができる。
【0097】
図9は、それぞれがゲルマニウム−MgFの8ダイアドを含む2つのバンドを有する図8に示したような目標線状プロファイルLTHC層(実線)対多層類別LTHC層(破線)に関する吸収及び透過強度率の比較を示す。図9では、各バンドは、図4に示したものと類似する構成を使用することにより一定の吸収速度を有するように選択された。2つのバンドの吸収速度の組み合わせは、線状プロファイルに近似するように選択された。
【0098】
本明細書で引用されたすべての特許、特許出願及び刊行物並びに電子的に入手可能な資料の完全な開示は、ここで引用したことで援用したものとする。前述の説明及び実施例は理解を明確化するためにのみ提示した。本明細書から無用の限定を解するべきではない。本発明は、表示及び説明されている厳密な詳細事項に限定すべきでない。当業者に明白な変形物が、特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲内に含まれるためである。
【0099】
本発明は様々な変更例及び代替形状に柔軟に従うことができるが、それらの細目は図面で例を用いてこれまでに示したし、また詳細に記述されるであろう。しかしながら、その意図は、記述した特定の実施形態に本発明を限定することではないことを理解するべきである。逆に本発明は、本発明の精神及び範囲内にある全ての変更形態、等価形態、及び代替形態を網羅するはずである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】同じ厚さ(2.7マイクロメートル)を有する標準均一LTHC層(実線)とゲルマニウムの単一層(破線)に関するLTHC層の深さに対する吸収及び透過強度率を比較したプロット。
【図2】吸収性層及び本質的に非吸収性層の多数のダイアドを含む多層類別LTHC層の実施形態の図。
【図3】ゲルマニウム−MgFの8ダイアドを有する図2に示した標準均一LTHC層(実線)対多層類別LTHC層(破線)に関する吸収及び透過強度率を比較したプロット。
【図4】吸収性層及び本質的に非吸収性層の多数のダイアドを含む多層類別LTHC層の別の実施形態の図。
【図5】ゲルマニウム−MgFの8ダイアドを有する図4に示した標準均一LTHC層(実線)対多層類別LTHC層(破線)に関する吸収及び透過強度率の比較を示す。
【図6】吸収性層及び本質的に非吸収性層の多数のダイアドを含む多層類別LTHC層の別の実施形態の図。
【図7】ゲルマニウム−MgFの8ダイアドを有する図6に示した目標線状プロファイルLTHC層(実線)対多層類別LTHC層(破線)に関する吸収及び透過強度率を比較したプロット。
【図8】ダイアドの2つのバンドを含む多層類別LTHC層の実施形態の図である。各ダイアドは、吸収性層と本質的に非吸収性層とを含む。
【図9】それぞれがゲルマニウム−MgFの8ダイアドを含む2つのバンドを有する図8に示した目標線状プロファイルLTHC層(実線)対多層類別LTHC層(破線)に関する吸収及び透過強度率を比較したプロット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのダイアドを含む層のスタックを備える熱転写ドナー要素の基材フィルムであって、各ダイアドが、
吸収性の第1層と、
本質的に非吸収性の第2層とを含み、
前記少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層が、本質的に同じ光吸収率を有する、基材フィルム。
【請求項2】
前記少なくとも2つのダイアドが、吸収性層と本質的に非吸収性層を交互に有するスタックを形成する、請求項1に記載の基材フィルム。
【請求項3】
前記フィルムの少なくとも1つの表面に表面薄層を更に含む、請求項1に記載の基材フィルム。
【請求項4】
前記フィルムの両方の表面に表面薄層を更に含む、請求項1に記載の基材フィルム。
【請求項5】
本質的に非吸収性の基材と、
前記基材の少なくとも一部に光−熱変換層と
を含む熱転写ドナー要素であって、前記光−熱変換層が、少なくとも2つのダイアドを含む層の少なくとも第1スタックを備え、前記層の第1スタックの前記少なくとも2つのダイアドのそれぞれが、
吸収性の第1層と、
本質的に非吸収性の第2層と
を備え、前記少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層が、本質的に同じ光吸収率を有する、熱転写ドナー要素。
【請求項6】
前記基材と前記光−熱変換層との間に配置される下部層を更に含む、請求項5に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項7】
前記光−熱変換層の少なくとも一部に熱転写層を更に含む、請求項5に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項8】
前記光−熱変換層の少なくとも一部に中間層を更に含む、請求項5に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項9】
前記中間層の少なくとも一部に熱転写層を更に含む、請求項8に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項10】
前記層の第1スタックの前記少なくとも2つのダイアドが、吸収性層と本質的に非吸収性層を交互に有する層のスタックを形成する、請求項5に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項11】
前記層の第1スタックの各ダイアドの全厚さが、本質的に同じである、請求項5に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項12】
各ダイアド毎の前記第1層の厚さ及び前記第2層の厚さが、前記層の第1スタックのダイアド毎に吸収される全強度が本質的に同じであるように選択される、請求項11に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項13】
吸収性材料の比率が、前記層の第1スタックのダイアド毎に本質的に同じである、請求項11に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項14】
吸収性材料の比率が、前記層の第1スタックのダイアド毎に本質的に同じであり、前記層の第1スタックの各ダイアド厚さが、前記層の第1スタックのダイアド毎に吸収される本質的に同じ全強度をもたらすように選択される、請求項5に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項15】
少なくとも2つのダイアドを備える層の第2スタックを更に含み、吸収性材料の比率が、前記層の第2スタックのダイアド毎に本質的に同じであり、更に吸収性材料の比率が、前記層の第1スタックのダイアド毎に本質的に同じである、請求項5に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項16】
前記層の第1スタックの各ダイアドの全厚さが本質的に同じであり、前記層の第2スタックの各ダイアドの全厚さが本質的に同じであり、前記層の第1スタックの各ダイアドの全厚さが前記層の第2スタックの各ダイアドの全厚さと異なる、請求項15に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項17】
熱転写ドナー要素の基材フィルムを調製する方法であって、
少なくとも2つのダイアドを備える層のスタックを形成する工程
を含み、各ダイアドが、
吸収性の第1層と、
本質的に非吸収性の第2層と
を含み、前記少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層が、本質的に同じ光吸収率を有する、方法。
【請求項18】
前記層のスタックを形成する工程が、前記少なくとも2つのダイアドとベース層を共押出成形する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
熱転写ドナー要素を調製する方法であって、
本質的に非吸収性の基材をもたらす工程と、
前記基材の少なくとも一部に少なくとも2つのダイアドを備える層のスタックを形成する工程と
を含み、前記少なくとも2つのダイアドの各々が、
吸収性の第1層と、
本質的に非吸収性の第2層と
を含み、前記少なくとも2つのダイアドの各吸収性第1層が、本質的に同じ光吸収率を有する、方法。
【請求項20】
形成工程が、少なくとも1つのダイアドの第1層及び第2層を押出成形する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
押出成形工程が、前記少なくとも1つのダイアドの第1層及び第2層を共押出成形する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
形成工程が、前記基材上に前記少なくとも2つのダイアドの各層を共押出成形する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記光−熱変換層の少なくとも一部に熱転写層を形成する工程を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
熱転写ドナー要素を調製する方法であって、
本質的に非吸収性の基材をもたらす工程と、
前記基材の少なくとも一部に吸収性の第1層を形成する工程と、
前記吸収性第1層の少なくとも一部に本質的に非吸収性の第2層を形成する工程と
を含み、前記本質的に非吸収性基材の組成が、前記本質的に非吸収性第2層の組成と本質的に同じである、方法。
【請求項25】
前記第1層を形成する工程が、前記第1層を押出成形する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2層を形成する工程が、前記第2層を押出成形する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第1層を形成する工程及び前記第2層を形成する工程が、前記第1層及び前記第2層を共押出成形する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第1層を形成する工程及び前記第2層を形成する工程が、前記第1層及び前記第2層を前記基材上に共押出成形する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記第1層を形成する工程及び前記第2層を形成する工程が、前記第1層、前記第2層、及び前記基材を共押出成形する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記第2層の少なくとも一部に熱転写層を形成する工程を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
選択的な熱的物質転写の方法であって、
請求項7に記載の熱転写ドナー要素をもたらす工程と、
レセプター基材に隣接して前記ドナー要素の熱転写層を定置する工程と、
前記熱転写層の部分を、前記光−熱変換層により熱に吸収及び変換することができる画像形成性放射線を前記ドナー要素に選択的に放射することにより、前記ドナー要素から前記レセプター基材に熱転写する工程と
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−538761(P2009−538761A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513363(P2009−513363)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/068526
【国際公開番号】WO2007/143322
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】