説明

熱特性を有する積層体を含む基材

この発明は基材(10)、特に透明なガラス基材に関し、この基材は、薄膜多層[この薄膜多層は、赤外および/または太陽放射における反射特性を有する機能層(40)、特に銀または銀を含む金属合金を主成分とする金属機能層とおよび2つのコーティング(20、60)(このコーティングは、複数の誘電体層(24、26;64)から構成されている。)とを、機能層(40)(機能層(40)は、下にあるコーティング(20)上にそれぞれ直接堆積されたぬれ層(30)そのものの上に堆積されている。)が2つのコーティング(20、60)の間に設けられるように含む。]を備えている。この発明の基材は、下にあるコーティング(20)が、窒化物、特に窒化ケイ素および/または窒化アルミニウムを主成分とする少なくとも1つの誘電体層(24)とおよび混合酸化物から作られた少なくとも1つの非結晶性平滑層(26)(前記平滑層(26)は上にあるぬれ層(30)と接触している。)とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽放射および/または長波長の赤外放射に作用することのできる、金属型の機能層を含む薄膜多層によりコーティングされている透明基材、特にガラスなどの剛性の無機材料から作られているものに関する。
【0002】
本発明は、より特別には、断熱および/または日射防護グレージングを製造するためのこのような基材の使用に関する。このグレージングは、特に、空調負荷を低減させることおよび/または過剰な過熱を防止すること(「ソーラーコントロール」グレージングと呼ばれるグレージング)および/または建築物および車両の客室における板ガラスを嵌め込んだ表面の使用が増大していることにより引き起こされた、外部へ散逸されるエネルギーの量を低減させること(「ローイー」または「低放射率」グレージングと呼ばれるグレージング)を目的として、建築物および車両の両方に装備するように意図され得る。
【0003】
さらに、これらのグレージングは統合されて、例えば、熱せられる窓またはエレクトロクロミックグレージングなどの、特別の機能を有するグレージングユニットになる。
【背景技術】
【0004】
このような特性を基材に与えることで知られている多層の1つの種類は、赤外および/または太陽放射における反射特性を有する金属機能層、特に銀または銀含有金属合金を主成分とする金属機能層から構成される。
【0005】
この金属機能層は、同じく結晶性であり、その上に堆積される金属層の適切な結晶配向を促進するぬれ層の上に、結晶の形で堆積される。
【0006】
この機能層は、金属酸化物または窒化物の種類の誘電体材料からできている2つのコーティングの間に設けられる。この多層は、スパッタリング、場合により磁気強化またはマグネトロンスパッタリング、などの真空技法を用いて実施される一連の堆積操作により、一般に得られる。「ブロッキングコーティング」として知られる1つのまたはさらに2つの、非常に薄い膜も備えることができ、これまたはこれらは、それぞれの銀を主成分とする金属機能層のそれぞれの側の下に、上部にまたは上に直接設けられ、下にあるコーティングは、堆積後に可能性のある熱処理の間保護するための、連接(tie)、核形成および/または保護コーティングとしてのものであり、上にあるコーティングは、上にある層が酸素もしくは窒素の存在下でスパッタリングにより堆積される場合および/または多層が堆積後に熱処理される場合に、銀が損傷されるのを防ぐための「犠牲」または保護コーティングとしてのものである。
【0007】
次のように、酸化亜鉛を主成分とするぬれ層の下で、基材と直接接触している、亜鉛酸化物およびスズ酸化物の混合を主成分とする非晶質層を使用することは、欧州特許出願番号EP803481により知られている。
【0008】
このような非晶質層が、基材上に直接堆積されることはないが、少なくとも1つの下にある誘電体層とぬれ層の間に挿入される場合は、誘電体層と上に位置するぬれ層との界面を改質し、したがってぬれ層の結晶化および金属機能層の結晶化も大幅に改善できることがわかる。
【0009】
機能層の下に存在し、非晶質層の下に少なくとも1つの窒化物を主成分とする誘電体層を備えたコーティング内のこのような非晶質層を含めることにより、機能層の結晶化を所望するように改良し、したがって多層全体の抵抗率を所望するように改良することが不可能であることが、意外にもわかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、したがって、前述の型の層を有する多層の新規な型を開発することにより、従来技術の欠点を直すことであり、この多層は、等しい機能層厚さおよびコーティングを有する類似の多層より低い、改善された抵抗率を有する。前記多層は、曲げ、強化またはアニーリング方式の1つの(または複数の)高温熱処理を受けることも受けないこともあるが、この多層が1つの(または複数の)このような処理を受ける場合は、この多層の光学的品質および機械的完全性は維持されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の主題は、最も広い意味で、基材、特に透明なガラス基材であり、この基材は、薄膜多層[この薄膜多層は、赤外および/または太陽放射における反射特性を有する機能層、特に銀または銀を含む金属合金を主成分とする金属機能層とおよび2つのコーティング(このコーティングは、複数の誘電体層から構成されている。)とを、機能層(この機能層は、下にあるコーティング上にそれぞれ直接堆積されたぬれ層そのものの上に堆積されている。)が2つのコーティングの間に設けられるように含む。]を備えており、下にあるコーティングは、窒化物、特に窒化ケイ素および/または窒化アルミニウムを主成分とする少なくとも1つの誘電体層)とおよび混合酸化物から作られた少なくとも1つの非結晶性平滑層(前記平滑層は上にあるぬれ層と接触している。)とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
したがって、本発明の本質的な特徴は、結晶性のぬれ層の下に非結晶性の平滑層を提供し、平滑層が直接またはアンダーブロッキングコーティングを介して接触しているぬれ層の最上部に位置する機能層が適切に成長できるようにすることにある。
【0013】
下にあるコーティングが、窒化物、特に窒化ケイ素および/または窒化アルミニウムを主成分とする、少なくとも1つの誘電体層を含む場合、混合酸化物から作られた非結晶性平滑層を選択すると、基材が、堆積後に熱処理を受けても受けなくても、期待に相応しい多層の良好な抵抗率および光学特性を得ることができたことが明らかになった。
【0014】
したがって、本発明は、例えば同じ建物の前面に、強化基材および非強化基材を含むグレージングを互いの近くに設けることが可能であり、反射色および光反射の単純な目視観察によって互いを区別することが可能でない限り、「強化または非強化」基材として知られる基材に適用される。
【0015】
本発明の意味の範囲内において、層またはコーティング(1つまたは複数の層を含む)の堆積が、別の堆積物の下で直接または上で直接実施されることが記述されている場合、この記述は、他の層が、これら2つの堆積物の間に置かれることは決してないことを意味する。
【0016】
平滑層は、この層が完全に非晶質であることまたは部分的に非晶質であるという意味で、したがって部分的に結晶性であることができるが、この層が全体の厚さにわたって完全に結晶性であることはできないという意味で、「非結晶性」と言われる。この層は、混合酸化物(混合酸化物は、少なくとも2つの元素の酸化物である。)を主成分としているので、金属の性質であることが可能である。
【0017】
平滑層の結晶学的外観は、平滑層が非結晶性であり、ぬれ層は大部分が結晶性であるので、ぬれ層の外観とは必然的に異なり、したがって、この2つの外観は、この観点からして取り違えることはあり得ない。
【0018】
このような平滑層の利点は、あまり粗くない、直接の上にあるぬれ層との界面を得ることを可能にすることである。さらに、この小さな粗さは、透過電子顕微鏡を用いて見ることができる。
【0019】
さらに、ぬれ層は、より良好な組織を有し、加えて、より明白な、優先的な結晶学的配向を有する。
【0020】
したがって、それぞれの平滑層は、結晶学的および化学量論的観点からも、その下に平滑層が直接置かれているぬれ層の材料とも、異なった材料からできている。
【0021】
下にあるコーティングの窒化物を主成分とする層は、加えて平滑層を備え、直接または例えば酸化チタン(TiO)を主成分とする接触層を介して間接的に基材と接触している。
【0022】
この窒化物を主成分とする層の屈折率は、好ましくは、2.2未満である。
【0023】
好ましくは、平滑層は、以下の金属:Sn、Si、Ti、Zr、Hf、Zn、Ga、Inの1種または複数の酸化物を主成分とする混合酸化物層、より厳密には、亜鉛およびスズを主成分とする混合酸化物の層、または、低温で堆積させた混合インジウムスズ酸化物(ITO)の層である。
【0024】
平滑層の屈折率は、好ましくは2.2未満である。
【0025】
加えて、好ましくは、平滑層は、酸素の非化学量論量を有する混合酸化物層、および、さらに、より特別には、アンチモンをドープされた亜鉛およびスズを主成分とする半化学量論的混合酸化物層(SnZnO:Sb、xは数字である。)である。
【0026】
さらに、この平滑層は、好ましくは、0.1から30nmの間のおよびより好ましくは0.2から10nmの間の幾何学的厚さを有する。
【0027】
好ましい変形において、少なくとも1つのブロッキングコーティングは、NiまたはTiを主成分とし、またはNiを主成分とする合金を主成分とし、特にNiCr合金を主成分とする。
【0028】
加えて、機能層の下のぬれ層は、好ましくは、酸化亜鉛を主成分とし、このぬれ層は、特に、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛を主成分とすることができる。
【0029】
このぬれ層の幾何学的厚さは、好ましくは2から30nmの間およびより好ましくは3から20nmの間である。
【0030】
本発明によるグレージングは、本発明による多層を支持する基材、場合により少なくとも1つの他の基材と組み合わされた基材を少なくとも組み込む。それぞれの基材は、透明であることまたは着色されることができる。基材の少なくとも1つは、特にバルクの着色ガラスで作ることができる。着色の種類の選択は、光透過の水準および/または、グレージングの製造が完了した後のグレージングにとって望ましい測色による外観に依存する。
【0031】
したがって、車両に装備される予定のグレージングに関して、いくつかの規格は、フロントガラスは約75%の光透過率Tを有しなければならないと指示し、他のいくつかの規格は約65%の光透過率Tを課しており、透過率のこのような水準は、例えばサイドガラスまたはサンルーフに対しては要求されていない。使用され得る着色ガラスは、例えば、4mm厚の場合、65%から95%のT、40%から80%のエネルギー透過率T、470nmから525nmの透過主波長を有し、D65光源下で0.4%から6%の透過純度を伴い、(L、a、b)表色系において、それぞれ−9から0の間および−8から+2の間の、透過におけるaおよびb値を「もたらす」ことができるものである。
【0032】
建築物に装備される予定のグレージングに関して、このグレージングは、好ましくは、「低放射」用途の場合、少なくとも75%以上の光透過率Tを有し、「ソーラーコントロール」用途の場合、少なくとも40%以上の光透過率Tを有する。
【0033】
本発明によるグレージングは、積層構造、特に、ガラス型の少なくとも2つの剛性基材を、熱可塑性ポリマーの少なくとも1つのシートと組み合わせた構造を有し、ガラス/薄膜多層/シート/ガラスの型の構造を有することができる。このポリマーは、特にポリビニルブチラール(PVB)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリ塩化ビニル(PVC)を主成分とすることができる。
【0034】
このグレージングはまた、非対称積層グレージング構造と呼ばれる構造を有することができ、この構造は、ガラス型の剛性基材を、場合により「自己回復」特性を有するポリマーの別の層と組み合わされた、エネルギー吸収特性を有するポリウレタン型のポリマーの少なくとも1つのシートと組み合わせたものである。グレージングのこの型に関するさらなる詳細に関して、読者は、特許EP−0132198、EP−0131523、EP−0389354を特に参照することができる。
【0035】
したがって、このグレージングは、型:ガラス/薄膜多層/ポリマーシートの構造を有することができる。
【0036】
本発明によるグレージングは、薄膜多層を損傷することなしに熱処理を受けることができる。したがって、このグレージングは、曲げられるおよび/または強化されるであろう。
【0037】
このグレージングは、多層を備えた単一基材からなる場合、曲げられるおよび/または強化されることができる。それで、このグレージングは、「一体構造」グレージングと呼ばれる。グレージングが、特に車両用の窓を製造する目的で曲げられる場合、薄膜多層は、好ましくは、少なくとも一部が非平面である面上に存在する。
【0038】
このグレージングはまた、少なくとも多層を支持する基材が曲げられているおよび/または強化されている、多重グレージングユニット、特に二重グレージングユニットであり得る。多重グレージング配置においては、多層が、中間のガス充満空間を向くように設けられることが好ましい。積層構造において、多層を支持する基材は、好ましくはポリマーのシートと接触している。
【0039】
グレージングが一体構造であるまたは二重グレージングもしくは積層グレージング型の多重グレージングの形である場合、少なくとも多層を支持する基材は、曲げまたは強化ガラスから製造することができ、この基材は、多層が堆積される前または堆積された後に曲げることまたは強化することが可能である。
【0040】
本発明はまた、本発明による基材を製造するための方法に関し、この方法の本質的な特徴は、スパッタリングの型の、場合により磁気強化スパッタリングの型の真空技法により、薄膜多層をこの基材上に堆積させること、次いでこのコーティングされた基材の光学的および/または機械的品質を低下させることなく、コーティングされた基材に、曲げ、強化またはアニーリング方式の熱処理を実施することにある。
【0041】
しかし、多層の第1層が別の技法により、例えば熱分解型の熱分解技法により、堆積され得ることを排除するものではない。
【実施例】
【0042】
本発明の詳細および有利な特徴は、添付図を用いて説明される、以下の非限定的な例から明らかになる。
【0043】
図1は、単一のオーバーブロッキング層を有するコーティングを備え、平滑層を備えているまたは備えていない単一機能層を有する多層のシート抵抗の、熱処理前の変化を、下に設けられた誘電体層の厚さの関数として示す。
図2は、平滑層を備えているまたは備えていない、図1と同じ単一機能層を有する多層のシート抵抗の、熱処理後の変化を、下に設けられた誘電体層の厚さの関数として示す。
図3は、単一のオーバーブロッキング層を有するコーティングを備えている単一の機能層を有する多層のシート抵抗の、熱処理前の変化を、平滑層の厚さの関数として示す。
図4は、図3と同じ単一機能層を有する多層のシート抵抗の、熱処理後の変化を、平滑層の厚さの関数として示す図である。
図5は、本発明による、オーバーブロッキングコーティングを備えているがアンダーブロッキングコーティングを備えていない1つの機能層を有する本発明による多層を示す。
図6は、本発明による、アンダーブロッキングブロックコーティングを備えているがオーバーブロッキングコーティングを備えていない1つの機能層を有する多層を示す図である。
図7は、本発明による、アンダーブロッキングコーティングおよびオーバーブロッキングコーティングを備えている1つの機能層を有する多層を示す。
【0044】
多層を例示する図において、様々な材料の厚さは、図をより容易に理解するために、厳密に一定の縮尺比で描かれてはいない。
【0045】
さらに、以下のすべての例において、薄膜多層は、2mmの厚さを有するソーダ石灰ガラスで作られた基材10の上に堆積される。
【0046】
熱処理が基材に適用されたいずれの場合も、この熱処理は、約660℃の温度で約5分間のアニーリング処理後、周囲空気(約20℃)中で冷却するものであった。
【0047】
図1から4の目的は、本発明による多層を示す図5において例示された型の多層中に平滑層が存在することの重要性を説明することである。
【0048】
本発明による単一機能層を有する多層の、1の番号を付けられた実施例は:
基材/Si/SnZnO:Sb/ZnO/Ag/Ti/ZnO/Si
可変/可変/8nm/10nm/2nm/8nm/20nm
の型である。
【0049】
図1および2において、曲線C1およびC11は、多層が平滑層を備えていない場合の、それぞれ熱処理前(BHT)および熱処理後(AHT)の多層のシート抵抗(オームで表す。)の変化を、基材と接触している窒化ケイ素(e Si)を主成分とする誘電体層の厚さの関数として図示する。
【0050】
曲線C2およびC12は、多層がSnZnO:Sb(xはゼロでない数字を意味する。)から作られた6nmの厚さを有する平滑層を備えている場合の、それぞれ熱処理前および熱処理後の、多層のシート抵抗(オームで表す。)の変化を、基材と接触している窒化ケイ素(e Si)を主成分とする誘電体層の厚さの関数として図示する。
【0051】
曲線C3およびC13は、多層がSnZnO:Sbを主成分とする20nmの厚さを有する平滑層を備えている場合の、それぞれ熱処理前および熱処理後の、多層のシート抵抗(オームで表す。)変化を、基材と接触している窒化ケイ素(e Si)を主成分とする誘電体層の厚さの関数として図示する。
【0052】
これらの図1および2を見てわかるように、基材と接触している誘電体層の厚さが同一の場合(例えば20nm)、多層が、基材と接触している窒化ケイ素を主成分とする誘電体層と、銀Agを主成分とする機能層の下にある酸化亜鉛ZnOを主成分とするぬれ層との間に、SnZnO:Sbを主成分とする平滑層を含む場合は、多層のシート抵抗は、曲線C2、C3、C12およびC13に関して、常に低く、したがってより良好であり、多層のシート抵抗は、20nmの平滑層厚さに関して、常に低い(曲線C3およびC13)。
【0053】
混合酸化物から製造された平滑層は、厚さ全体を通して非晶質であるのに対して、ぬれ層および金属機能層は両方とも厚さ全体を通して結晶性であることが検証された。
【0054】
その結果、平滑層が存在すると、下にある誘電体層の同等の厚さに関して、多層のシート抵抗を大幅に改善させ、この改善は、平滑層の厚さが大きい場合、より一層大きい。
【0055】
図3および4において、この曲線は、多層が、基材とSnZnO:Sbを主成分とする層との間に、窒化ケイ素Siを主成分とする20nmの層を備えている場合の、それぞれ熱処理前(BHT)および熱処理後(AHT)の、多層のシート抵抗(オームで表す。)の変化を、アンチモンをドープされた亜鉛およびスズ酸化物(e SnZnO:Sb)を主成分とする平滑層の厚さの関数として図示する。
【0056】
混合酸化物から製造された平滑層が、層の厚さ全体を通して非晶質であるのに対して、ぬれ層および金属機能層は共に厚さ全体を通して結晶性であることも検証された。
【0057】
これらの図3および4を見てわかるように、平滑層が存在すると、>0から4nmの厚さを有する平滑層に関して、多層のシート抵抗を大幅に改善させ、この改善は、平滑層の厚さが大きい場合、より一層大きい。
【0058】
同様の観察を、アンダーブロッキングコーティングを備えているがオーバーブロッキングコーティングを備えていない単一機能層、またはアンダーブロッキングコーティングおよびオーバーブロッキングコーティングを備えている単一機能層を有する多層について行うことができる。
【0059】
試験の別のシリーズが実施された。
【0060】
2、3および4の番号が付けられた3つの実施例は、機能層40がオーバーブロッキングコーティング45を備えている、図5において示された単一機能層を有する多層構造に基づいて製造された。
【0061】
下の表1は、層のそれぞれのナノメートルで表された厚さを示す:
【0062】
【表1】

【0063】
これらの実施例の抵抗率、光学およびエネルギー特性を、下の表2に示す:
【0064】
【表2】

【0065】
このように、本発明による実施例4の、熱処理前および後の両方の多層の抵抗率は、依然として、それぞれ、対照例3および2より低い。
【0066】
さらに、光源D65の下で測定された光反射率R、光透過率T、ならびに層の側で光源D65の下で測定されたLAB系における反射色aおよびbは、本発明による実施例と対照例3および2との間で非常に大きく異なることはない。
【0067】
熱処理前の光学およびエネルギー特性と、熱処理後のこれらの同一特性とを比較することによっては、いかなる大きな劣化も観察されなかった。
【0068】
他の試験が、機能層40が、オーバーブロッキングコーティング45を備えているが、アンダーブロッキングコーティング35を備えていない、図6において図示されている、単一機能層を有する多層構造に基づいて実施された。
【0069】
他の試験が、機能層40が、アンダーブロッキングコーティング35およびオーバーブロッキングコーティング45を備えている、図7において図示されている、1つの機能層を有する多層構造に基づいて実施された。
【0070】
これらの試験は全て、同様の観察をもたらした。
【0071】
さらに試験は、層の粗さを測定するために実施された。
【0072】
下の表3は、X線反射光測定により測定され、nmで表された粗さを示す(基材の粗さは約0.4である。)。
【0073】
【表3】

【0074】
この表を見てわかるように、ガラス上に堆積されただけの、窒化ケイ素Siを主成分とする層の粗さは大きいが、インジウムスズ酸化物SnInO(ITO)を主成分とする層または窒化ケイ素を主成分とする層の上に堆積された、混合亜鉛スズ酸化物SnZnO:Sbを主成分とする層を含む多層の最終の粗さは、小さい。したがって、混合酸化物を主成分とするぬれ層により、ぬれ層に接する界面の粗さを改善することが、この粗さを低減させることによって可能となる。
【0075】
本発明を、一例として上に説明した。当業者は、特許請求の範囲によって定義される本特許の範囲を逸脱することなく、本発明の様々な代替形態を作りだし得ることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】単一のオーバーブロッキング層を有するコーティングを備え、平滑層を備えているかまたは備えていない単一機能層を有する多層のシート抵抗の、熱処理前の変化を、下に設けられた誘電体層の厚さの関数として示す図である。
【図2】平滑層を備えているまたは備えていない、図1と同じ単一機能層を有する多層のシート抵抗の、熱処理後の変化を、下に設けられた誘電体層の厚さの関数として示す図である。
【図3】単一のオーバーブロッキング層を有するコーティングを備えている単一の機能層を有する多層のシート抵抗の、熱処理前の変化を、平滑層の厚さの関数として示す図である。
【図4】図3と同じ単一機能層を有する多層のシート抵抗の、熱処理後の変化を、平滑層の厚さの関数として示す図である。
【図5】本発明による、オーバーブロッキングコーティングを備えているがアンダーブロッキングコーティングを備えていない1つの機能層を有する多層を示す図である。
【図6】本発明による、アンダーブロッキングブロックコーティングを備えているがオーバーブロッキングコーティングを備えていない1つの機能層を有する多層を示す図である。
【図7】本発明による、アンダーブロッキングコーティングおよびオーバーブロッキングコーティングを備えている1つの機能層を有する多層を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜多層[この薄膜多層は、赤外および/または太陽放射における反射特性を有する機能層(40)、特に銀または銀を含む金属合金を主成分とする金属機能層とおよび2つのコーティング(20、60)(このコーティングは、複数の誘電体層(24、26;64)から構成されている。)とを、機能層(40)(機能層(40)は、下にあるコーティング(20)上にそれぞれ直接堆積されたぬれ層(30)そのものの上に堆積されている。)が2つのコーティング(20、60)の間に設けられるように含む。]を備えており、
下にあるコーティング(20)は、窒化物、特に窒化ケイ素および/または窒化アルミニウムを主成分とする少なくとも1つの誘電体層(24)とおよび混合酸化物から作られた少なくとも1つの非結晶性平滑層(26)(前記平滑層(26)は上にあるぬれ層(30)と接触している。)とを含むことを特徴とする
基材(10)、特に透明なガラス基材。
【請求項2】
平滑層(26)が、以下の金属:Sn、Si、Ti、Zr、Hf、Zn、Ga、Inの1種または複数の酸化物を主成分とする混合酸化物層であることを特徴とする、請求項1に記載の基材(10)。
【請求項3】
平滑層(26)が、場合によりドープされている、亜鉛およびスズを主成分とする混合酸化物の層、または、低温で堆積させた混合インジウムスズ酸化物(ITO)の層であることを特徴とする、請求項2に記載の基材(10)。
【請求項4】
平滑層(26)が、酸素の非化学量論量を有する酸化物層であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の基材(10)。
【請求項5】
1つの平滑層(26)が、0.1から30nmの間、好ましくは0.2から10nmの間の幾何学的厚さを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の基材(10)。
【請求項6】
機能層(40)が、少なくとも1つの下にあるブロッキングコーティング(35)の上に直接および/または少なくとも1つの上にあるブロッキングコーティング(45)の下に直接設けられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の基材(10)。
【請求項7】
少なくとも1つのブロッキングコーティング(35、45)が、NiもしくはTiを主成分とすること、または、Niを主成分とする合金を主成分とすること、特にNiCr合金を主成分とすることを特徴とする、請求項6に記載の基材(10)。
【請求項8】
機能層(40)の下にあるぬれ層(30)が、酸化亜鉛を主成分とすることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の基材(10)。
【請求項9】
少なくとも1つの他の基材と場合により組み合わされた、請求項1から8のいずれか一項に記載の、少なくとも1つの基材(10)を組み込んでいるグレージングユニット。
【請求項10】
少なくとも多層を支持する基材が、曲げられているまたは強化されていることを特徴とする、一体構造の形でまたは二重グレージングまたは積層グレージング型の多重グレージングとして装着されている、請求項9に記載のグレージングユニット。
【請求項11】
薄膜多層が、スパッタリング型の、場合によりマグネトロンスパッタリング型の真空技法によって基材上に堆積されること、次いで、曲げ、強化またはアニーリング方式の熱処理が薄膜多層の光学的および/または機械的品質を低下させることなく基材上で実施されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の基材(10)を製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−528932(P2009−528932A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557807(P2008−557807)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050882
【国際公開番号】WO2007/101964
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】