説明

熱発生性脂肪細胞を増加させるための方法

ある特定の態様では、本発明は、ActRIIBシグナル伝達経路のアンタゴニストを投与することによって、熱発生性脂肪細胞(例えば、褐色脂肪細胞またはUCP−1を発現する他の脂肪細胞)を増加させるための組成物および方法を提供する。そのようなアンタゴニストの例としては、ActRIIBポリペプチド、抗ActRIIB抗体、抗ミオスタチン抗体、抗GDF3抗体、抗Nodal、抗アクチビンおよび抗GDF11抗体が挙げられる。さまざまな代謝障害および他の障害を、熱発生性脂肪細胞の増加を引き起こすことによって処置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、2009年6月8日に出願された米国仮出願第61/268,128号および2009年9月10日に出願された米国仮出願第61/276,422号、および2009年11月3日に出願された米国仮出願第61/280,545号に対する優先権を主張する。上記出願の教示の全ては、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の脂肪細胞(fat cell)は、伝統的に、エネルギーを蓄える白色脂肪細胞またはエネルギーを消費する褐色脂肪細胞のいずれかに分類される。褐色脂肪細胞は、ミトコンドリアのプロトン勾配からのATP産生を脱共役することによって生化学的エネルギーを熱に変換する脱共役タンパク質1(UCP1)を発現する(非特許文献1)。そのような熱発生は、低温の環境条件において体温を維持する、または過剰なカロリー摂取に直面したときにエネルギー平衡を促進する働きをする。褐色脂肪の代謝的な重要性を強調すると、マウスにおいて褐色脂肪を遺伝的除去すると、インスリン抵抗性、高血糖、高脂血症、および高コレステロール血症を伴う重篤な肥満が生じる(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。UCP−1の、重要な脱共役タンパク質としての役割を考慮すると、UCP−1を発現する脂肪細胞は熱発生活性を有する。
【0003】
ヒトにおいて、褐色脂肪組織は、乳児において重要な熱発生の役割を果たしているが、生後発達の間に縮小し、成人においては、まばらであり、臨床的に重要でないものとして歴史的に簡単に片づけられてきた。しかし、最近の発見により、この考えが覆され、成人期の間の褐色脂肪組織の役割(複数可)にかなりの関心が生まれた。特に、腫瘍転移をモニターするための陽電子放出断層撮影法とコンピュータ断層撮影法(PET−CT)の組合せの使用により、かなりの割合の成人における、高度に活性な推定上の褐色脂肪の貯蔵場所が思いがけなく検出された(非特許文献5)。その後の試験により、健康な成人では、これらの貯蔵所が実際にUCP1を発現している機能的な褐色脂肪であることが確認され(非特許文献6)、試験された若年の男性の90%超において、褐色脂肪組織活性が低温曝露の間に観察されたが、熱中性条件では確認されなかった(非特許文献7)。さらに、種々の診断上の理由で実施されたほぼ2千のPET−CTスキャンの遡及的分析により、活性な褐色脂肪の量が、総合的な脂肪症の測定値として広く用いられる肥満度指数と逆相関することが示され、これにより、成人のヒトの代謝における褐色脂肪の重要な有益な役割の可能性が生じている(非特許文献8)。白色脂肪組織とともに散在する熱発生性脂肪細胞(例えば、褐色脂肪細胞または他のUCP−1を発現している脂肪細胞)の役割は明白ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Cannonら、2004年、Physiol Rev 84巻:277〜359頁
【非特許文献2】Lowellら、1993年、Nature 366巻:740〜742頁
【非特許文献3】Hamannら、1995年、Diabetes 44巻:1266〜1273頁
【非特許文献4】Hamannら、1996年、Endocrinology 137巻:21〜29頁
【非特許文献5】Nedergaardら、2007年、Am J Physiol Endocrinol Metab 293巻:E444〜E452頁
【非特許文献6】Virtanenら、2009年、N Engl J Med 360巻:1518〜1525頁
【非特許文献7】van Marken Lichtenbeltら、2009年、N Engl J Med 360巻:1500〜1508頁
【非特許文献8】Cypessら、2009年、N Engl J Med 360巻:1509〜1517頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱発生性脂肪細胞の重要な代謝活性を考慮すると、in vivoで熱発生性脂肪細胞を増加させる(例えば、形成および/または活性の増加によって)作用剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある特定の態様では、本開示は、ActRIIBシグナル伝達経路のアンタゴニストを使用することによって、患者における熱発生性脂肪細胞を増加させるための方法を提供する。そのようなアンタゴニストは、例えば、可溶性のActRIIBタンパク質(例えば、ActRIIB−Fc融合タンパク質)、ActRIIBに結合する、またはActRIIBの発現を阻害するアンタゴニスト、およびActRIIBを通じてシグナルを送り、熱発生性脂肪細胞の制御に関与するリガンドに結合する、またはその発現を阻害するアンタゴニストであってよい。そのようなリガンドとしては、ミオスタチン(すなわち、GDF8)、GDF3、アクチビン(例えば、アクチビンA、B、CまたはE)、GDF11、およびNodalが挙げられる。
【0007】
ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする患者に有効量のActRIIB関連ポリペプチドを投与することによって、熱発生性脂肪細胞を増加させるための方法を提供する。ActRIIB関連ポリペプチドは、GDF3、GDF8、GDF11、アクチビンまたはNodalなどのActRIIBリガンドに結合するActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIBの細胞外ドメインまたはその部分)であってよい。場合によって、ActRIIBポリペプチドは、10マイクロモル未満のKd、または1マイクロモル、100ナノモル、10ナノモルまたは1ナノモル未満のKdでActRIIBリガンドに結合する。種々の適切なActRIIBポリペプチドは、その全てが参照により本明細書に組み込まれる、以下のPCT特許出願公開に記載されている:WO 00/43781、WO 04/039948、WO 06/012627、WO 07/053775、WO 08/097541およびWO 08/109167。場合によって、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBリガンドによって誘発される細胞内のシグナル伝達事象などのActRIIBシグナリングを阻害する。そのような調製物において使用するための可溶性のActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、5、6、12、14および17から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号1、2、5、6、12、14および17から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどの、本明細書で開示されている可溶性のActRIIBポリペプチドのいずれでもあってよい。可溶性のActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、5、6、12、14および17から選択される配列、または配列番号1の配列の少なくとも10アミノ酸、20アミノ酸または30アミノ酸を含み、C末端の1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸または10〜15アミノ酸を欠き、N末端の1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸または5アミノ酸を欠くものなどの、天然のActRIIBポリペプチドの機能的な断片を含んでよい。場合によって、ポリペプチドは、配列番号1と比較して、N末端において2〜5アミノ酸、およびC末端においてわずか3アミノ酸の短縮を含む。別のポリペプチドは、配列番号12として提示されるポリペプチドである。可溶性のActRIIBポリペプチドは、アミノ酸配列に(例えば、リガンド結合ドメインに)、天然に存在するActRIIBポリペプチドと比較して1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の変化を含んでよい。アミノ酸配列における変化により、天然に存在するActRIIBポリペプチドと比較して、例えば、哺乳動物、昆虫または他の真核細胞において産生される際にポリペプチドのグリコシル化が変化する、またはポリペプチドのタンパク質分解性の切断が変化する可能性がある。可溶性のActRIIBポリペプチドは、1つのドメインとして、ActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIBまたはその改変体のリガンド結合ドメイン)、および、例えば、改良された薬物動態、容易な精製、特定の組織に対するターゲティングなどの望ましい特性をもたらす1つまたは複数の追加的なドメインを有する融合タンパク質であってよい。例えば、融合タンパク質のドメインにより、in vivoでの安定性、in vivoでの半減期、取り込み/投与、組織への局在化または分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製の1つまたは複数が増強され得る。可溶性のActRIIB融合タンパク質は、Fcドメイン(野生型または変異体)などの免疫グロブリン定常ドメインまたは血清アルブミンを含んでよい。ある特定の実施形態では、ActRIIB−Fc融合物は、Fcドメインと細胞外のActRIIBドメインとの間に位置する比較的構造化されていないリンカーを含む。この構造化されていないリンカーは、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端(「尾部」)のおよそ15アミノ酸の構造化されていない領域に対応してよい、または、二次的構造が比較的自由な5〜15、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸の人工的な配列であってよい。リンカーは、グリシン残基およびプロリン残基に富んでよく、例えば、トレオニン/セリンおよびグリシンの繰り返し配列、例えば、TGの繰り返し(配列番号18)またはSGの繰り返し(配列番号19)を含有する。融合タンパク質は、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列およびGST融合物などの精製サブシーケンスを含んでよい。場合によって、可溶性のActRIIBポリペプチドは、グリコシル化されたアミノ酸、ペグ化されたアミノ酸、ファルネシル化されたアミノ酸、アセチル化されたアミノ酸、ビオチン化されたアミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸、および有機誘導体化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む。一般に、ActRIIBタンパク質は、患者における好ましくない免疫応答の可能性を減らすために、ActRIIBタンパク質の天然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物の細胞系において発現されることが好ましい。ヒト細胞系およびCHO細胞系が首尾よく使用されており、他の一般的な哺乳動物の発現ベクターが有用であると予想される。
【0008】
ある特定の態様では、本明細書に開示されている化合物は、医薬調製物として製剤化することができる。医薬調製物は、ActRIIBに関連する障害を処置するために使用される化合物などの1種または複数種の追加的な化合物も含んでよい。医薬調製物は、実質的に発熱物質を含まないことが好ましい。
【0009】
ある特定の態様では、本開示は、可溶性のActRIIBポリペプチドをコードし、完全なActRIIBポリペプチドをコードしない核酸を提供する。単離されたポリヌクレオチドは、例えば上記の、可溶性のActRIIBポリペプチドのコード配列を含んでよい。例えば、単離された核酸は、ActRIIBの細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)をコードする配列、および、ActRIIBの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの一部または全部をコードするが、膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインの内部に位置する、または細胞外ドメインと膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインとの間に位置する終止コドンをコードする配列を含んでよい。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号4などの全長のActRIIBポリヌクレオチド配列または部分的に短縮された型を含んでよく、前記単離されたポリヌクレオチドは、3’末端の少なくとも600ヌクレオチド前に転写終結コドンをさらに含む、またはそうでなければ、ポリヌクレオチドの翻訳により、場合によって全長のActRIIBの短縮された部分と融合した細胞外ドメインが生じるように位置付けられている。本明細書に開示されている核酸は、発現させるためのプロモーターに作動可能に連結していてよく、本開示は、そのような組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。細胞は、CHO細胞などの哺乳動物の細胞であることが好ましい。
【0010】
ある特定の態様では、本開示は、可溶性のActRIIBポリペプチドを作製するための方法を提供する。そのような方法は、本明細書に開示されている核酸(例えば、配列番号3)のいずれかを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの適切な細胞において発現させることを含んでよい。そのような方法は、a)可溶性のActRIIB発現構築物で形質転換される細胞を、可溶性のActRIIBポリペプチドを発現させるために適した条件下で培養すること、およびb)そのように発現された可溶性のActRIIBポリペプチドを回収することを含んでよい。可溶性のActRIIBポリペプチドは、タンパク質を得るための周知の技法のいずれかを使用して、粗製物、部分的に精製された画分または高度に精製された画分として細胞培養物から回収することができる。
【0011】
ある特定の態様では、本明細書に記載の化合物を使用して熱発生性脂肪細胞を増加させることは、代謝活性を管理することが有益である種々の疾患を管理することにおいて有用であり得る。例としては、肥満の管理、体脂肪含有量を減少させることまたは体脂肪含有量の増加速度を低下させること、および、肥満、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、II型糖尿病、循環器疾患、癌、高血圧症、脳卒中、呼吸障害、脂質異常症、リポジストロフィー、コルチコステロイド投与の影響および胆嚢疾患などの障害を処置することが挙げられる。
【0012】
ある特定の態様では、本明細書に開示されている可溶性のActRIIBポリペプチドは、筋肉の減少または不十分な筋肉の成長に関連する障害であって、肥満、リポジストロフィー、糖尿病(例えば、II型糖尿病)、悪液質または上記の他の障害などの代謝障害にも関連する障害を有する被験体を処置するための方法において使用することができる。そのような障害としては、筋ジストロフィー、筋肉減少症およびHIV(筋消耗およびリポジストロフィーの両方に関連し得る)が挙げられる。
【0013】
ある特定の態様では、本開示は、細胞におけるActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビン、GDF3、およびNodal)の活性に拮抗するための方法を提供する。方法は、細胞を可溶性のActRIIBポリペプチドと接触させることを含む。場合によって、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドの活性は、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体によって媒介されるシグナル伝達によって、例えば、細胞増殖またはUCP−1の発現のレベルをモニターすることによってモニターする。この方法の細胞としては、骨芽細胞、軟骨細胞、ミオサイト、脂肪細胞および筋肉細胞が挙げられる。
【0014】
ある特定の態様では、本開示は、本明細書に記載の障害または状態を処置するための医薬品を作出するための、可溶性のActRIIBポリペプチドの使用を提供する。
【0015】
ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする患者において熱発生性脂肪細胞を増加させるための方法を提供し、そのような方法は、有効量の、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号3の核酸とハイブリダイズする核酸によってコードされるポリペプチドからなる群から選択される化合物を投与することを含んでよい。ポリペプチドは、異種性の部分を含む融合タンパク質であってよい。ポリペプチドは、二量体であってよい。ポリペプチドは、免疫グロブリンの定常ドメインと融合していてよい。ポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4などの免疫グロブリンのFc部分と融合していてよい。ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸29〜109、29〜128、29〜131、29〜134、25〜109、25〜128、25〜131、25〜134または20〜134の配列と少なくとも80%、90%、93%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含んでよい。ポリペプチドは、配列番号5、6、12、14または17のアミノ酸の配列と少なくとも80%、90%、93%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含んでよい。そのような化合物で処置される患者は、例えば、代謝障害(例えば、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂質異常症またはリポジストロフィー)または代謝障害に関連する筋肉障害(例えば、筋肉減少症の一部の場合)を含めた、本明細書に記載の障害を有する患者であってよい。化合物を投与することにより、処置される患者の脂肪細胞における、場合によって、白色脂肪組織におけるUCP−1の発現を促進することができる。
【0016】
ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする患者において熱発生性脂肪細胞を増加させるための方法であって、有効量の、ActRIIBまたはActRIIBを通じてシグナルを送るリガンドのいずれかをターゲティングすることによってActRIIBシグナル伝達経路を阻害する化合物を投与することを含む方法を提供する。そのような化合物の例としては、ActRIIBのアンタゴニスト;ミオスタチン(すなわち、GDF−8)のアンタゴニスト;アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンCまたはアクチビンE)のアンタゴニスト;GDF−11のアンタゴニスト;Nodalのアンタゴニスト;およびGDF3のアンタゴニストが挙げられる。前述したそれぞれのアンタゴニストは、そのような標的に特異的に結合し、それを阻害する抗体または他のタンパク質(例えば、モノクローナル抗体などの抗体、またはミオスタチンおよびGDF3の場合ではプロペプチド)であってよい。前述のアンタゴニストは、ActRIIBまたはリガンドの発現を阻害する核酸ベースの化合物(例えば、アンチセンス核酸またはRNAi核酸)などの化合物であってもよい。そのような化合物で処置される患者は、例えば、代謝障害(例えば、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂質異常症またはリポジストロフィー)または代謝障害に関連する筋肉障害(例えば、筋肉減少症の一部の場合)を含めた、本明細書に記載の障害を有する患者であってよい。化合物を投与することにより、処置される患者の脂肪細胞における、場合によって、白色脂肪組織におけるUCP−1の発現を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、高脂肪食を与えた雄のマウスの精巣上体の脂肪パッドにおける、脱共役タンパク質1(UCP1)mRNAのレベルに対する60日間のActRIIB(20〜134)−hFc処置の影響を示す図である。RT−PCRデータ(相対的な単位、RUで)は、平均±SEMであり;は、ビヒクルと比較してp<0.05である。ActRIIB(20〜134)−hFcにより、褐色脂肪に対するこの選択マーカーをコードするmRNAにおいてほぼ9倍の増加が引き起こされ、したがって、この白色脂肪の貯蔵所の内部に拡散的に分布した褐色脂肪細胞において熱発生能が上方制御されたことが示されている。
【図2】図2は、高脂肪食を与えたマウスにおいて、60日間のActRIIB(25〜131)−hFc処置によって精巣上体の白色脂肪組織内で誘導された熱発生の組織学的な変化を示す図である。全ての顕微鏡画像が同じ拡大率で示されている。ヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色により、ActRIIB(25〜131)−hFcの、脂肪滴サイズを縮小し、褐色脂肪の特徴である多胞性の脂肪細胞のクラスター(矢印)を誘導する能力が示されている。隣接しない区画の免疫染色により、多胞性脂肪細胞および単房性脂肪細胞の両方において、UCP1(緑色の蛍光)の広範な細胞質誘導が明らかになった。
【図3】図3は、高脂肪食を与えたマウスの精巣上体の白色脂肪におけるUCP1 mRNAのレベルに対する60日間のActRIIB(25〜131)−hFc処置の影響を示す図である。RT−PCRデータ(相対的な単位、RUで)は、平均±SEMであり;n=群当たり6〜7であり;は、p<0.05である。ActRIIB(25〜131)−hFcにより、褐色脂肪に対するこの選択マーカーをコードするmRNAにおいて60倍の増加が引き起こされ、したがって、この白色脂肪の貯蔵所内の熱発生能が上方制御されたことが示されている。
【図4】図4は、食餌と60日間のActRIIB(25〜131)−hFc処置に応じた、マウスの精巣上体の白色脂肪における、サーチュインファミリーのメンバーであるSIRT−1(サイレント情報制御因子2、ホモログ1)をコードするmRNAのレベルを示す図である。RT−PCRデータ(相対的な単位、RUで)は、平均±SEMであり;n=群当たり7であり;は、p<0.05であり;NS=有意でない、である。高脂肪食を与えたマウスでは、ActRIIB(25〜131)−hFcによってSIRT−1 mRNAのレベルが70%超上昇し、それらは標準食を与えたマウスと有意に異ならないレベルまで回復している。
【図5】図5は、食餌と60日間のActRIIB(25〜131)−hFc処置に応じた、マウスの精巣上体の白色脂肪におけるPGC−1α(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ活性化補助因子1α)をコードするmRNAのレベルを示す図である。RT−PCRデータ(相対的な単位、RUで)は、平均±SEMであり;n=群当たり6〜7であり;***は、p<0.001である。高脂肪食を与えたマウスでは、ActRIIB(25〜131)−hFcによってPGC−1α mRNAのレベルが250%超上昇し、それらは標準食を与えたマウスにおけるmRNAのレベルと有意に異ならないレベルまで回復している。
【図6】図6は、食餌と60日間のActRIIB(25〜131)−hFc処置に応じた、マウスの精巣上体の白色脂肪におけるFoxo−1(フォークヘッドボックスを含有する、タンパク質Oのサブファミリー1)をコードするmRNAのレベルを示す図である。RT−PCRデータ(相対的な単位、RUで)は、平均±SEMであり;n=群当たり7であり;**は、p<0.01である。高脂肪食を与えたマウスでは、ActRIIB(25〜131)−hFcによってFoxo−1 mRNAのレベルが90%超上昇し、それらは標準食を与えたマウスにおけるmRNAのレベルと有意に異ならないレベルまで回復している。
【図7】図7は、食餌と60日間のActRIIB(25〜131)−hFc処置に応じた、マウスの精巣上体の白色脂肪におけるアディポネクチンmRNAのレベルを示す図である。RT−PCRデータ(相対的な単位、RUで)は、平均±SEMであり;n=群当たり7であり;は、p<0.05である。高脂肪食を与えたマウスでは、ActRIIB(25〜131)−hFcによってアディポネクチンmRNAのレベルが60%超上昇し、したがって、ActRIIB(25〜131)−hFcはこれらのマウス内を循環しているアディポネクチンの濃度の上昇に寄与している。
【図8】図8は、食餌と60日間のActRIIB(25〜131)−hFc処置に応じたマウスのアディポネクチンの血清レベルを示す図である。主要なオリゴマーのアイソフォームの全て(全アディポネクチン)をELISA測定によって検出し、データは平均±SEMであり;n=群当たり7〜8であり;**は、p<0.01であり;***は、p<0.001である。高脂肪食を与えたマウスでは、ActRIIB(25〜131)−hFcによって、循環しているアディポネクチン濃度が75%超増加し、標準食の対照におけるアディポネクチン濃度を有意に超えた。
【図9】図9は、マウスにおける、食餌と60日間のActRIIB(25〜131)−hFc処置に応じたインスリンの血清濃度を示す図である。データは平均±SEMであり;n=群当たり7〜8であり;**は、p<0.01である。高脂肪食を与えたマウスでは、ActRIIB(25〜131)−hFcにより、インスリン濃度が標準食の対照において観察されたレベルに対して正常化された。
【図10】図10は、食餌と60日間のActRIIB(25〜131)−mFc処置に応じた、肩甲骨間の褐色脂肪の貯蔵所の両側性の対の写真である。高脂肪食により、サイズが増加し、貯蔵所の色が明るくなったが、ActRIIB(25〜131)−mFcにより、これらの変化が大きく逆転した。
【図11】図11は、高脂肪食を与えたマウスにおける肩甲骨間の褐色脂肪の質量に対する60日間のActRIIB(25〜131)−mFc処置の影響を示す図である。データは、左側の貯蔵所と右側の貯蔵所を合わせた平均±SEMであり;***は、p<0.001である。ActRIIB(25〜131)−mFcにより、この褐色脂肪の貯蔵所の質量に対する高脂肪食の影響が逆転した。
【図12】図12は、マイクロコンピュータ断層撮影法(microCT)によって決定された、高脂肪食を与えたマウスにおける肩甲骨間の褐色脂肪の密度に対する60日間のActRIIB(25〜131)−mFc処置の影響を示す図である。データ(平均±SEM)は、骨塩のヒドロキシアパタイト(HA)に対する正の値および水に対するゼロの値に基づいて標準化した単位で表されている;したがって、脂肪の値は負であり、白色脂肪に対する値は、一般には−120に近い。**は、p<0.01である。ActRIIB(25〜131)−mFcにより、この褐色脂肪の貯蔵所の密度に対する高脂肪食の影響が完全に逆転した。
【図13】図13は、ActRIIB(25〜131)−hFcの完全なアミノ酸配列(配列番号14)を示す図である。TPAリーダー(残基1〜22)および短縮されたActRIIB細胞外ドメイン(ネイティブな残基25〜131)のそれぞれに下線が引かれている。配列決定によって成熟融合タンパク質のアミノ酸のN末端であることが明らかになったグルタミン酸が強調されている。
【図14−1】図14は、ActRIIB(25〜131)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示している(コード鎖である配列番号15が上段に示され、相補鎖の配列番号16が下段に示されている、3’−5’)。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)をコードする配列およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードする配列に下線が引かれている。ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示されている。
【図14−2】図14は、ActRIIB(25〜131)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示している(コード鎖である配列番号15が上段に示され、相補鎖の配列番号16が下段に示されている、3’−5’)。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)をコードする配列およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードする配列に下線が引かれている。ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.概要
哺乳動物の脂肪細胞(fat cell)は、エネルギーを蓄える白色脂肪細胞またはエネルギーを消費する褐色脂肪細胞のいずれかに分類することができる。脱共役タンパク質−1(UCP1)は、ミトコンドリアのプロトン勾配からのATP産生を脱共役することによって生化学的エネルギーを熱に変換し、褐色脂肪細胞に対する決定的な機能的マーカーであると広く考えられている。UCP−1を発現している脂肪細胞は、本明細書では「熱発生性脂肪細胞」と称される。マウスにおいて、褐色脂肪組織を遺伝的除去すると、極度の肥満が生じ(Lowellら、1993年、Nature 366巻:740〜742頁)、UCP1を選択的に除去すると、マウスにおけるβ−アドレナリン作動性の刺激に対する発熱応答および抗肥満応答が妨げられ(Inokumaら、2006年、Am J Physiol Endocrinol Metab 290巻:E1014〜E1021頁)、これにより、UCP1がエネルギー消費および脂肪症の制御において重大な分子であることが確証されている(Kozakら、2008年、Int J Obes 32巻:S32〜S38頁)。
【0019】
げっ歯類からヒトに及ぶ哺乳動物では、褐色脂肪細胞は、新生児期に最も顕著な散在性の褐色脂肪組織の貯蔵所において生じ、この年齢期に生存するための熱的な攻撃と一致している。最近の発見により、これらの褐色脂肪の貯蔵所は、ヒトにおいて、成人期の間に熱発生能を持続することが示されており(Nedergaardら、2007年、Am J Physiol Endocrinol Metab 293巻:E444〜E452頁;van Marken Lichtenbeltら、2009年、N Engl J Med 360巻:1500〜1508頁;Cypessら、2009年、N Engl J Med 360巻:1509〜1517頁)、そのような組織を、治療的な利益のために外因的に活性化することができる可能性が生じている。興味深いことに、かなりの数の褐色脂肪細胞が、生後発達初期に一部の「白色」脂肪の貯蔵所内にも一過性に生じ(Xueら、2007年、J Lipid Res 48巻:41〜51頁)、成人期に、ある特定の条件下で白色脂肪の貯蔵所において再出現し得る(Cousinら、1992年、J Cell Sci 103巻:931〜942頁)。ヒトにおいてさえ、限られた証拠により、褐色脂肪細胞を成人期の間に白色脂肪の貯蔵所において誘導することができることが示唆されている(Leanら、1986年、Int J Obes 10巻:219〜227頁)。したがって、治療的な利益のために、「拡散した」熱発生性脂肪細胞を伝統的な白色脂肪の貯蔵所において誘導することができる可能性もある。白色脂肪組織の伝統的な貯蔵所は、実際、散在性の褐色脂肪の貯蔵所においては観察されないある程度の細胞のリモデリング、または表現型の可塑性を示す(Prunet−Marcassusら、2006年、Exp Cell Res 312巻:727〜736頁)。
【0020】
実施例に記載の通り、ActRIIB−Fc融合タンパク質を使用して、高脂肪食を与えたマウスの脂肪の貯蔵所におけるUCP−1のシグナリングを増加させることができる。したがって、ActRIIB由来の作用剤およびActRIIBシグナリングを阻害する他の化合物を使用して、熱発生性脂肪細胞の数および/または活性を増加させることができる。熱発生性脂肪細胞の制御に関係づけられる、ActRIIBに結合するリガンドとしては、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンE)、ミオスタチン(すなわち、GDF−8)、GDF−3、GDF−11、およびNodalが挙げられる。ある特定の態様では、本発明は、ActRIIBポリペプチドに関する。本明細書で使用される、「ActRIIB」という用語は、任意の種に由来する、アクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質のファミリーおよびActRIIB関連タンパク質を指す。ActRIIBファミリーのメンバーは、一般に全て、システインリッチ領域を有するリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測セリン/トレオニンキナーゼ特異性を有する細胞質ドメインで構成される膜貫通タンパク質である。ヒトのActRIIB前駆体は以下のアミノ酸配列を有し、シグナルペプチドに下線が引かれており、細胞外ドメインが太字で示されており、潜在的なN結合グリコシル化部位が枠で囲まれている(配列番号2)(NM_001106、512アミノ酸)。
【0021】
【化1】

ネイティブなリーダーを含む上記の野生型配列を、本開示全体を通して、ActRIIBの種々の短縮、成熟形態および改変体のいずれかのアミノ酸を番号付けするための基本配列として使用する。「ActRIIBポリペプチド」という用語は、ActRIIBファミリーのメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドならびに有用な活性を保持する任意のその改変体(変異体、断片、融合物、およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを指すために使用される。例えば、ActRIIBポリペプチドとしては、ActRIIBポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一である配列、および、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%、99%またはそれを超える同一性を有する、任意の公知のActRIIBの配列に由来するポリペプチドが挙げられる。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、可溶性のActRIIBポリペプチドに関する。本明細書に記載のように、「可溶性のActRIIBポリペプチド」という用語は、概して、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを指す。本明細書で使用される、「可溶性のActRIIBポリペプチド」という用語は、任意の天然に存在するActRIIBタンパク質の細胞外ドメインならびに有用な活性を保持する任意のその改変体(変異体、断片およびペプチド模倣形態を含む)を含む。例えば、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインは、リガンドに結合し、また、一般に可溶性である。以下は、可溶性のActRIIBポリペプチド(配列番号1)(116アミノ酸)の例である。
【0023】
【化2】

可溶性のActRIIBポリペプチドの他の例は、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインに加えて、シグナル配列を含む(実施例1を参照されたい)。シグナル配列は、ActRIIBのネイティブなシグナル配列、または組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のシグナル配列またはミツバチメリチン(HBM)のシグナル配列などの別のタンパク質由来のシグナル配列であってよい。
【0024】
2つの関連するII型受容体、ActRIIAおよびActRIIBが、アクチビン(MathewsおよびVale、1991年、Cell 65巻:973〜982頁;Attisanoら、1992年Cell 68巻:97〜108頁)ならびに種々の他のBMPおよびGDFに対するII型受容体として同定されている。アクチビンに加え、ActRIIAおよびActRIIBは、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含めたいくつかの他のTGF−βファミリーのタンパク質と生化学的に相互作用し得る(Yamashitaら、1995年、J. Cell Biol. 130巻:217〜226頁;LeeおよびMcPherron、2001年、Proc. Natl. Acad. Sci. 98巻:9306〜9311頁;YeoおよびWhitman、2001年、Mol. Cell 7巻:949〜957頁;Ohら、2002年、Genes Dev. 16巻:2749〜54頁)。ある特定の実施形態では、本発明は、ActRIIB受容体のリガンド(ActRIIBリガンドとも称される)を対象のActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)と拮抗させることに関する。したがって、本発明の組成物および方法は、1種または複数種のActRIIB受容体のリガンドの異常な活性に関連する障害を処置するために有用である。典型的なActRIIB受容体のリガンドとしては、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンE)、GDF3、Nodal、GDF8、およびGDF11などのいくつかのTGF−βファミリーのメンバーが挙げられる。
【0025】
アクチビンは、二量体のポリペプチド増殖因子であり、TGF−ベータスーパーファミリーに属する。2つの密接に関連するβサブユニットのホモ二量体/ヘテロ二量体である(ββ、ββおよびββ)3つのアクチビン(A、BおよびAB)がある。TGF−ベータスーパーファミリーにおいて、アクチビンは独特であり、卵巣の細胞および胎盤の細胞におけるホルモンの産生を刺激することができ、神経細胞の生存を支持することができ、細胞周期の進行に、細胞型に応じて正または負の影響を及ぼすことができ、および少なくとも両生類の胚において中胚葉の分化を誘導することができる多機能性因子である(DePaoloら、1991年、Proc SocEp Biol Med. 198巻:500〜512頁;Dysonら、1997年、Curr Biol. 7巻:81〜84頁;Woodruff、1998年、Biochem Pharmacol. 55巻:953〜963頁)。さらに、刺激されたヒトの単球白血病細胞から単離された赤血球分化因子(EDF)がアクチビンAと同一であることが見いだされた(Murataら、1988年、PNAS、85巻:2434頁)。アクチビンAが骨髄における赤血球生成の天然の制御因子として作用することが示唆された。いくつかの組織では、アクチビンのシグナリングは、その関連ヘテロ二量体であるインヒビンにより拮抗される。例えば、下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が放出されている間、アクチビンはFSHの分泌および合成を促進するが、インヒビンはFSHの分泌および合成を妨げる。アクチビンの生物活性を制御する、および/またはアクチビンに結合する他のタンパク質としては、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、α−マクログロブリン、ケルベロス、およびエンドグリンが挙げられ、それらについては下で説明する。
【0026】
骨形成タンパク質7(BMP7)は、骨原性タンパク質1(OP−1)とも称され、軟骨および骨の形成を誘導することが周知である。さらに、BMP7は、幅広い生理的プロセスを制御する。特に、BMP7は、褐色脂肪細胞の分化の重要なプロモーターであることが最近同定された(Tsengら、2008年、Nature 454巻:1000〜1004頁)。本研究において、BMP7を遺伝的除去することにより、マウスの胚において褐色脂肪が欠乏し、UCP1がほぼ完全に存在しなくなった。さらに、マウスにおけるBMP7の発現を、アデノウイルスを投与することによって上方制御することにより、褐色脂肪の質量およびエネルギー消費が増加した。したがって、文献により、ActRIIBポリペプチドまたは抗ActRIIB抗体などのBMP7のアンタゴニストが、UCP1の発現、褐色脂肪細胞の形成、および/または褐色脂肪細胞の活性を促進することが予想されないことが示唆されている。アクチビンと同様に、BMP7も、II型受容体であるActRIIAおよびActRIIBに結合する。しかし、BMP7およびアクチビンは、ヘテロマーの受容体複合体に、別個のI型受容体を動員する。観察された主要なBMP7 I型受容体はALK2であったが、アクチビンはALK4(ActRIIB)に独占的に結合した。BMP7とアクチビンは、別個の生物学的応答を引き出し、異なるSmad経路を活性化した(Macias−Silvaら、1998年、J Biol Chem. 273巻:25628〜36頁)。
【0027】
増殖分化因子3(GDF3)は、Vg1関連2としても公知であり、胚発生において重要な役割を果たし、成人期の間の脂肪生成にも関係づけられている。簡単に述べると、白色脂肪組織におけるGDF3の発現は、体重または肥満と相関し(Weisbergら、2003年、J Clin Invest 112巻:1796〜1808頁)、アデノウイルス媒介性のGDF3の過剰発現により、野生型マウスにおいて高脂肪食条件下で観察される脂肪症の増加が悪化する(Wangら、2004年、Biochem Biophys Res Commun 321巻:1024〜1031頁)。重要なことに、GDF3を遺伝的除去したマウスは健康であり、標準食で維持すると基本的に正常であるが肥満から保護され、高脂肪食で維持すると基礎代謝率の上昇を示す(Shenら、2009年、Mol Endocrinol 23巻:113〜123頁)。総合すると、これらの発見は、特に食餌誘導性の肥満において、より一般的には脂肪症の制御においてGDF3に関係づけられる。
【0028】
Nodalタンパク質は、中胚葉および内胚葉の誘導および形成、ならびにその後の、初期胚形成における心臓および胃などの軸構造の組織化において機能を有する。発生中の脊椎動物の胚における背側の組織が、脊索および脊索前板の軸構造に主に寄与し、同時に周囲の細胞を動員して非軸の胚構造を形成することが実証されている。Nodalは、I型受容体およびII型受容体の両方、およびSmadタンパク質として公知の細胞内エフェクターを通じてシグナリングすると思われる。最近の試験により、ActRIIAおよびActRIIBがNodalに対するII型受容体として機能するという考えが支持される(Sakumaら、Genes Cells. 2002年、7巻:401〜12頁)。Nodalリガンドがそれらの補因子(例えば、クリプト(cripto))と相互作用して、Smad2をリン酸化するアクチビンのI型受容体およびII型受容体を活性化することが示唆されている。Nodalタンパク質は、中胚葉の形成、前側のパターニング、および左右軸の特定化を含めた、初期の脊椎動物の胚にとって重大な多くの事象に関係づけられる。実験的な証拠により、Nodalのシグナリングにより、アクチビンおよびTGF−ベータに特異的に反応することが以前示されたルシフェラーゼレポーターであるpAR3−Luxが活性化することが実証された。しかし、Nodalは、骨形成タンパク質に対して特異的に応答性のレポーターであるpTlx2−Luxを誘導することができない。最近の結果により、アクチビン−TGF−ベータ経路のSmadである、Smad2およびSmad3の両方によってNodalのシグナリングが媒介されることの直接的な生化学的証拠がもたらされた。さらなる証拠により、Nodalのシグナリングに細胞外のクリプト(cripto)タンパク質が必要であることが示され、このことによりアクチビンまたはTGF−ベータのシグナリングとは異なるものになっている。
【0029】
増殖分化因子8(GDF8)は、ミオスタチンとしても公知である。GDF8は、骨格筋量の負の制御因子である。GDF8は、発生中の骨格筋および成人の骨格筋において高度に発現される。トランスジェニックマウスにおけるGDF8のヌル突然変異は、骨格筋の顕著な肥大および過形成を特徴とする(McPherronら、Nature、1997年、387巻:83〜90頁)。同様の骨格筋量の増加が、ウシにおけるGDF8の天然に存在する突然変異において明らかであり(Ashmoreら、1974年、Growth、38巻:501〜507頁;SwatlandおよびKieffer、J. Anim. Sci.、1994年、38巻:752〜757頁;McPherronおよびLee、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997年、94巻:12457〜12461頁;およびKambadurら、Genome Res.、1997年、7巻:910〜915頁)、ヒトにおいて著しい(Schuelkeら、N Engl J Med 2004年;350巻:2682〜8頁)。試験により、ヒトにおけるHIV感染に関連する筋消耗がGDF8タンパク質の発現の増加を伴うことも示されている(Gonzalez−Cadavidら、PNAS、1998年、95巻:14938〜43頁)。さらに、GDF8は筋肉に特異的な酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の産生を調節すること、および筋芽細胞の細胞増殖を調節することができる(WO 00/43781)。GDF8プロペプチドは、成熟GDF8ドメイン二量体に非共有結合することができ、その生物活性を不活性化する(Miyazonoら(1988年)J. Biol. Chem.、263巻:6407〜6415頁;Wakefieldら(1988年)J. Biol. Chem.、263巻;7646〜7654頁;およびBrownら(1990年)Growth Factors、3巻:35〜43頁)。GDF8または構造的に関連するタンパク質に結合し、それらの生物活性を阻害する他のタンパク質としては、フォリスタチン、および潜在的に、フォリスタチン関連タンパク質が挙げられる(Gamerら(1999年)Dev. Biol.、208巻:222〜232頁)。
【0030】
増殖分化因子11(GDF11)は、BMP11としても公知であり、分泌タンパク質である(McPherronら、1999年、Nat. Genet. 22巻:260〜264頁)。GDF11は、マウスの発生中に尾芽、肢芽、上顎弓および下顎弓および後根神経節において発現される(Nakashimaら、1999年、Mech. Dev. 80巻:185〜189頁)。GDF11は、中胚葉組織および神経組織の両方のパターニングにおいて独特の役割を果たす(Gamerら、1999年、Dev Biol.、208巻:222〜32頁)。GDF11は、発生中のニワトリの肢における軟骨形成および筋形成の負の制御因子であることが示された(Gamerら、2001年、Dev Biol. 229巻:407〜20頁)。筋肉におけるGDF11の発現によっても、GDF8と同様に筋肉の成長を制御することにおけるその役割が示唆されている。さらに、脳におけるGDF11の発現により、GDF11が神経系の機能に関わる活性も有し得ることが示唆されている。興味深いことに、GDF11は、嗅上皮における神経の発達を阻害することが見いだされた(Wuら、2003年、Neuron. 37巻:197〜207頁)。したがって、GDF11は、筋肉疾患および神経変性疾患(例えば、筋委縮性側索硬化症)などの疾患の処置において、in vitroにおける適用およびin vivoにおける適用を有し得る。
【0031】
ある特定の態様では、本発明は、一般に、ActRIIB活性に関連する任意のプロセスにおけるActRIIBリガンドのシグナリングに拮抗するための、ある特定のActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)の使用に関する。場合によって、本発明のActRIIBポリペプチドは、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンE)、GDF3、Nodal、GDF8、およびGDF11などの1種または複数種のActRIIB受容体のリガンドと拮抗し得、したがって、追加的な障害の処置において有用であり得る。
【0032】
したがって、本開示は、熱発生性脂肪細胞の活性に関連する疾患または状態を処置または予防することにおける、ActRIIBポリペプチドおよびActRIIBまたはActRIIBリガンドのアンタゴニストの使用を意図している。ActRIIBまたはActRIIBリガンドは、多くの重大な生物学的プロセスの制御に関与する。そのような代謝的な障害または状態の例としては、これらに限定されないが、メタボリックシンドローム(シンドロームXとしても公知である)、糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖異常、血漿インスリン濃度の上昇およびインスリン抵抗性、脂質異常症、高脂血症、過食および過食症、結腸癌、前立腺癌、乳癌、子宮内膜癌、腎臓癌、変形性関節症、閉塞性睡眠時無呼吸、胆石症、胆石、高血圧症、心疾患、心臓のリズムの異常および不整脈、心筋梗塞、うっ血性心不全、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、狭心症、突然死、多嚢胞性卵巣疾患、頭蓋咽頭腫、プラダー−ウィリー症候群、フレーリッヒ症候群、GHが欠損している被験体、正常変異低身長、ターナー症候群、ならびに全除脂肪体重の百分率として、代謝活性の低下または安静時エネルギー消費の減少を示している他の病態、例えば、急性リンパ性白血病の小児が挙げられる。さらなる例は、性機能障害および生殖機能障害(不妊症など)、男性における性腺機能低下症および女性における男性型多毛症、胃腸運動障害(肥満に関連する胃食道逆流など、呼吸器疾患(肥満低換気症候群またはピックウィック症候群など)、心血管障害、脳梗塞、脳血栓、一過性脳虚血発作、炎症(脈管構造の全身性炎症など)、動脈硬化症、高コレステロール血症、高尿酸血症、脂肪肝、痛風、胆嚢疾患、整形外科的障害、ならびに腰痛である。これらの障害および状態は、「典型的な治療的使用」の下で、以下に考察する。
【0033】
本明細書で使用される用語は、概して、本発明に関しておよび各用語が使用される特定の文脈において、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。ある特定の用語を、本発明の組成物および方法ならびにそれらの作出および使用の仕方の記載において実践者に追加的な手引きを提供するために、以下または本明細書の他の箇所で考察する。用語の任意の使用の範囲または意味は用語が使用される特定の文脈から明らかになる。
【0034】
「約」および「およそ」は一般に、測定の性質または精度を考慮して、測定量に関して許容できる誤差の程度を意味するものとする。一般には、典型的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内であり、10%以内であることが好ましく、5%以内であることがより好ましい。
【0035】
あるいは、特に生物系では、「約」および「およそ」という用語は、所与の値の1桁以内の値、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。本明細書において示される数値的な量は、別段の指定のない限り概算であり、明示されていなければ「約」または「およそ」という用語を推定してよいことを意味している。
【0036】
本発明の方法は、野生型配列と1種または複数種の変異体(配列改変体)を含めた、配列を互いに比較するステップを含んでよい。そのような比較は、一般には、例えば、当技術分野で周知の配列アラインメントのプログラムおよび/またはアルゴリズム(例えば、2、3挙げると、BLAST、FASTAおよびMEGALIGN)を使用したポリマー配列のアラインメントを含む。当業者は、そのようなアラインメントでは、突然変異が残基の挿入または欠失を含有する場合、配列アラインメントにより、挿入された、または欠失した残基を含有しないポリマー配列に「ギャップ」(一般にはダッシュまたは「A」で表される)が導入されることを容易に理解することができる。
【0037】
本明細書で使用される「糖尿病」という用語は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM、II型糖尿病としても公知である)を指す。I型糖尿病、またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)は、グルコースの利用を制御するホルモンであるインスリンが絶対的に欠乏した結果である。II型糖尿病、またはインスリン依存性糖尿病(すなわち、インスリン非依存性糖尿病)は、インスリンのレベルが正常である、または上昇してさえいるにも関わらず度々起こり、組織がインスリンに適切に応答できないことの結果だと思われる。ほとんどのII型糖尿病患者は、肥満でもある。
【0038】
「相同の」は、その文法形式および綴りの変形全てに関して、同一種の生物体のスーパーファミリーからのタンパク質、ならびに異なる種の生物体からの相同タンパク質を含めた、「共通の進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関連性を指す。そのようなタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、パーセント同一性の単位であろうとなかろうとそれらの配列類似性、または特定の残基またはモチーフおよび保存された位置の存在に反映されるように、配列相同性を有する。
【0039】
「肥満」は、過剰な体脂肪がある状態である。肥満の操作上の定義は、メートルで2乗した身長当たりの体重(kg/m)として算出される肥満度指数(BMI)に基づく。「肥満」は、医師によってそういうものとして診断された状態を指す。一般にヨーロッパ人、アフリカ人、先住アメリカ人またはインド人の血統の患者に対する1つの標準の等級付けシステムが以下に記載され、アジア人の患者に対しては多くの場合代替のシステムが使用される。このシステムに従って、肥満は、30kg/m以上のBMIを有する、他の点では健康な被験体、または、少なくとも1つの併存症を有する被験体が27kg/m以上のBMIを有する状態と定義される。
【0040】
「配列類似性」という用語は、その文法形式の全てに関して、共通の進化的起源を共有してよい、または共有しなくてよい核酸配列間またはアミノ酸配列間の同一性または一致の程度を指す。
【0041】
しかし、一般的な使用において、および本出願において、「相同の」という用語は、「高度に」などの副詞で修飾された場合、配列類似性を指してよく、共通の進化的起源に関係づけてよい、または関係づけなくてよい。
【0042】
2.ActRIIBポリペプチド
ある特定の態様では、本発明は、ActRIIB改変体ポリペプチド(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)に関する。場合によって、断片、機能的改変体、および修飾された形態が、それらの対応する野生型ActRIIBポリペプチドと同様または同一の生物活性を有する。例えば、本発明のActRIIB改変体は、ActRIIBリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF3、Nodal、GDF8、またはGDF11)に結合し、その機能を阻害することができる。場合によって、ActRIIBポリペプチドは、脂肪、筋肉、骨、または軟骨などの組織の成長を調節する。ActRIIBポリペプチドの例としては、ヒトのActRIIB前駆体ポリペプチド(配列番号2)および可溶性のヒトActRIIBポリペプチド(例えば、配列番号1、5、6、12、14、および17)が挙げられる。
【0043】
本開示では、ActRIIBの機能的に活性な部分および改変体を同定する。出願人らは、配列番号2のアミノ酸64に対応する位置にアラニンを有する(A64)、Hildenらによって開示された配列(Blood. 1994年、Apr 15;83巻(8号):2163〜70頁)を有するFc融合タンパク質が、アクチビンおよびGDF−11に対して比較的低い親和性を有することを突きとめた。対照的に、64位にアルギニンを持つ(R64)同じFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF−11に対して低ナノモルから高ピコモルまでの範囲の親和性を有する。したがって、本開示において、R64を有する配列をヒトActRIIBについての野生型参照配列として使用する。
【0044】
Attisanoら(Cell. 1992年、Jan 10;68巻(1号):97〜108頁)は、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットが欠失すると、アクチビンに対する受容体の親和性が低下することを示した。配列番号2のアミノ酸20〜119を含有するActRIIB−Fc融合タンパク質である「ActRIIB(20〜119)−Fc」は、プロリンノット領域および完全な膜近傍ドメインを含むActRIIB(20〜134)−Fcと比較して、GDF−11およびアクチビンに対する結合性が低下している。しかし、ActRIIB(20〜129)−Fcタンパク質は、プロリンノット領域が破壊されているにもかかわらず、野生型と比較していくらか低下しているが同様の活性を保持する。したがって、アミノ酸134、133、132、131、130および129で停止するActRIIB細胞外ドメインは全て活性であると予測されるが、134または133で停止する構築物が最も活性であり得る。同様に、残基129〜134のいずれかにおける突然変異によっては、リガンドの結合親和性が大幅に変化しないことが予想される。これを支持すると、P129およびP130の突然変異によってリガンドの結合性は実質的に減少しない。したがって、ActRIIB−Fc融合タンパク質は、早ければアミノ酸109(最後のシステイン)で終わってよいが、しかし、109〜119で終わる形態はリガンドの結合性が低下していると予想される。アミノ酸119は不十分に保存されていて、したがって容易に変化する、または短縮される。128以降で終わる形態は、リガンドの結合活性を保持する。119〜127で終わる形態は中間の結合能を有することになる。これらの形態のいずれも、臨床的または実験的な状況に応じて、使用するために望ましい可能性がある。
【0045】
ActRIIBのN末端において、アミノ酸29以前で始まるタンパク質はリガンドの結合活性を保持することが予想される。アミノ酸29は、最初のシステインを表す。24位におけるアラニンからアスパラギンへの突然変異により、リガンドの結合性に実質的に影響を及ぼすことなく、N結合グリコシル化配列が導入される。これにより、アミノ酸20〜29に対応する、シグナル切断ペプチドとシステインが架橋した領域との間の領域における突然変異が良好に許容されることが確証された。詳細には、20位、21位、22位、23位および24位で始まる構築物が活性を保持し、25位、26位、27位、28位および29位で始まる構築物も活性を保持すると予測される。
【0046】
総合すると、ActRIIBの活性部分は、配列番号2のアミノ酸29〜109を含み、構築物は、例えば、アミノ酸20〜29に対応する残基で始まり、アミノ酸109〜134に対応する位置で終わる。他の例としては、20位〜29位または21位〜29位で始まり、119位〜134位、119位〜133位または129位〜134位、129位〜133位で終わる構築物が挙げられる。他の例としては、20位〜24位(もしくは21位〜24位、または22位〜25位)で始まり、109位〜134位(もしくは109位〜133位)、119〜134(もしくは119位〜133位)または129位〜134位(もしくは129位〜133位)で終わる構築物が挙げられる。これらの範囲内の改変体、詳細には、配列番号2の対応する部分に対して少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する改変体も意図されている。
【0047】
本開示は、リガンド結合ポケットが、Y31、N33、N35、L38〜T41、E47、E50、Q53〜K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78〜N83、Y85、R87、A92、およびE94〜F101の残基によって定義されることを実証している、複合性のActRIIBの構造の解析結果を含む。これらの位置において、保存された突然変異が許容されるが、K74A突然変異が良好に許容され、R40A、K55A、F82AおよびL79位における突然変異も同じく良好に許容されることが予想される。R40は、アフリカツメガエルではKであり、これは、この位置における塩基性アミノ酸が許容されることを示している。Q53は、ウシのActRIIBではRであり、アフリカツメガエルのActRIIBではKであり、したがって、R、K、Q、NおよびHを含めたアミノ酸がこの位置において許容される。したがって、活性なActRIIB改変体タンパク質についての一般的な処方は、アミノ酸29〜109を含むが、場合によって、20位〜24位または22位〜25位の範囲で始まり、129位〜134位の範囲で終わり、リガンド結合ポケットにおいてわずか1、2、5、10または15の保存されたアミノ酸の変化を含み、リガンド結合ポケットの40位、53位、55位、74位、79位および/または82位においてゼロ、1つまたは複数の保存されていない変化を含むものである。そのようなタンパク質は、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列に対して、80%、90%、95%または99%を超える配列同一性を保持し得る。変動が特に良好に許容され得る結合ポケットの外側の部位としては、細胞外ドメインのアミノ末端およびカルボキシ末端(上記の通り)、ならびに42位〜46位および65位〜73位が挙げられる。65位におけるアスパラギンからアラニンへの変化(N65A)により、実際にA64バックラウンドにおけるリガンドの結合性が改善され、したがって、R64バックラウンドにおけるリガンドの結合性に対して有害な影響はないと予想される。この変化により、おそらくA64バックラウンドのN65におけるグリコシル化が排除され、したがって、この領域における有意な変化が許容される見込みがあることが実証されている。R64Aの変化は許容されにくいが、一方R64Kは良好に許容され、したがって、Hなどの別の塩基性残基が64位において許容され得る。
【0048】
ActRIIBは、ほぼ全ての脊椎動物にわたって良く保存されており、長く伸びた完全に保存された細胞外ドメインを伴う。ActRIIBに結合するリガンドの多くも、高度に保存されている。したがって、種々の脊椎動物生物体由来のActRIIB配列を比較することにより、変化させることができる残基への洞察がもたらされる。したがって、活性な、ヒトActRIIB改変体は、別の脊椎動物のActRIIBの配列からの対応する位置に1つまたは複数のアミノ酸を含んでよい、または、ヒトまたは他の脊椎動物の配列中の残基と類似した残基を含んでよい。以下の実施例は、活性なActRIIB改変体を定義するためにこのアプローチを例示している。L46は、アフリカツメガエルのActRIIBではバリンであり、したがって、この位置は変化させることができ、場合によって、V、IまたはFなどの別の疎水性の残基、または、Aなどの非極性残基に変化させることができる。E52は、アフリカツメガエルではKであり、これは、この部位では、E、D、K、R、H、S、T、P、G、YおよびおそらくAなどの極性残基を含めた多種多様な変化が許容され得ることを示している。T93はアフリカツメガエルではKであり、これは、この位置において、広範な構造的な変動が許容され、S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYなどの極性残基が好ましいことを示している。F108は、アフリカツメガエルではYであり、したがって、Y、またはI、VもしくはLなどの他の疎水性の群が許容されるはずである。E111は、アフリカツメガエルではKであり、これは、この位置において、D、R、KおよびH、ならびにQおよびNを含めた荷電残基が許容されることを示している。R112はアフリカツメガエルではKであり、これは、この位置においてRおよびHを含めた塩基性残基が許容されることを示している。119位のAは比較的不十分に保存されており、げっ歯類ではPとして現れ、アフリカツメガエルではVとして現れ、したがって、この位置では基本的にどんなアミノ酸も許容されるはずである。
【0049】
本開示は、さらにN結合グリコシル化部位(N−X−S/T)を付加することにより、ActRIIB−Fc融合タンパク質の血清中の半減期が、ActRIIB(R64)−Fc形態と比較して増加することを実証している。24位にアスパラギンを導入することにより(A24N構築物)、長い半減期を付与するNXT配列が創出される。他のNX(T/S)配列は、42〜44(NQS)および65〜67(NSS)において見いだされるが、後者は64位のRで効率的にグリコシル化されない可能性がある。N−X−S/T配列は、一般に、リガンド結合ポケットの外側の位置に導入することができる。非内在性のN−X−S/T配列を導入するために特に適した部位としては、アミノ酸20〜29、20〜24、22〜25、109〜134、120〜134または129〜134が挙げられる。N−X−S/T配列は、ActRIIB配列とFcまたは他の融合物の構成要素との間のリンカーに導入することもできる。そのような部位は、既存のSまたはTに対して正しい位置にNを導入することによって、または、既存のNに対応する位置にSまたはTを導入することによって、最小の労力で導入することができる。したがって、N結合グリコシル化部位を創出する望ましい変化は:A24N、R64N、S67N(事によるとN65A変化と組み合わせる)、E106N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112Tである。グリコシル化されると予測されるSはいずれも、グリコシル化によって保護がもたらされるので、免疫原性部位を創出することなくTに変化させることができる。同様に、グリコシル化されると予測されるTはいずれもSに変化させることができる。したがってS67TおよびS44Tの変化が意図されている。同様に、A24N改変体では、S26Tの変化を使用することができる。したがって、ActRIIB改変体は、1つまたは複数の追加的な、非内在性のN結合グリコシル化コンセンサス配列を含んでよい。
【0050】
L79位は、アクチビン−ミオスタチン(GDF−11)結合特性の変化を付与するために変化させることができる。L79AまたはL79Pにより、GDF−11結合性が、アクチビン結合性よりも大きな程度に低下する。L79EまたはL79Dにより、GDF−11結合性が保持される。驚くべきことに、L79E改変体およびL79D改変体では、アクチビン結合性が大いに低下している。in vivoでの実験により、これらの非アクチビン受容体は、筋肉量を増加させる有意な能力を保持することが示されているが、他の組織に対する影響は減少することが示されている。これらのデータにより、アクチビンへの影響が低下したポリペプチドを得ることの望ましさおよび実現性が実証されている。
【0051】
記載の変種は、種々のやり方で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載の突然変異誘発プログラムの結果により、ActRIIbに、多くの場合保存することが有益であるアミノ酸位があることが示されている。これらとしては、64位(塩基性アミノ酸)、80位(酸性アミノ酸または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、特にトリプトファン)、37位(酸性、特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)が挙げられる。したがって、本明細書に開示されている改変体のそれぞれにおいて、本開示は、保存することができるアミノ酸の枠組みを提供する。保存することが望ましい可能性がある他の位置は、以下の通りである:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性の)、98(極性または荷電した、特にE、D、RまたはK)。
【0052】
ある特定の実施形態では、単離されたActRIIBポリペプチドの断片は、対応するActRIIBポリペプチドをコードする核酸の断片(例えば、配列番号3および4)から組換えによって作製したポリペプチドをスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、断片は、従来のメリフィールドの固相f−Mocまたはt−Bocの化学などの当技術分野で公知の技法を使用して化学的に合成することができる。断片を作製し(組換えによってまたは化学合成によって)、試験して例えば、ActRIIBタンパク質またはActRIIBリガンドのアンタゴニスト(阻害物質)またはアゴニスト(活性化因子)として機能することができるペプチジル断片を同定することができる。
【0053】
ある特定の実施形態では、ActRIIBポリペプチドの機能的な改変体は、配列番号1、2、5、6、12、14、および17から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する。ある特定の場合では、機能的な改変体は、配列番号1、2、5、6、12、14、および17から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0054】
ある特定の実施形態では、本発明は、治療効果、または安定性(例えば、ex vivoにおける有効期間およびin vivoにおけるタンパク質分解に対する耐性)を増強するような目的のために、ActRIIBポリペプチドの構造を修飾することによって機能的改変体を作出すること意図している。修飾されたActRIIBポリペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加によっても作製することできる。例えば、ロイシンをイソロイシンもしくはバリンと、アスパラギン酸をグルタミン酸と、トレオニンをセリンと、孤立して交換すること、または同様にアミノ酸を構造的に関連するアミノ酸と交換すること(例えば、保存された突然変異)は、生じた分子の生物活性に対して主要な影響を及ぼさないと予想することが合理的である。保存された交換は、それらの側鎖が関連するアミノ酸のファミリー内で行われる交換である。ActRIIBポリペプチドのアミノ酸配列における変化により、機能的なホモログが生じるかどうかを、改変体ActRIIBポリペプチドの、野生型ActRIIBポリペプチドと同様に細胞における応答をもたらすための、または、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンE)、Nodal、GDF3、GDF−11またはミオスタチンなどの1種または複数種のリガンドに、野生型と同様に結合するための能力を評価することによって容易に決定することができる。
【0055】
ある特定の実施形態では、本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を変化させるためのActRIIBポリペプチドの特定の突然変異を意図している。ActRIIBポリペプチドにおける典型的なグリコシル化部位は、配列番号2に例示されている。そのような突然変異は、O結合グリコシル化部位またはN結合グリコシル化部位などの1つまたは複数のグリコシル化部位が導入または排除されるように選択することができる。アスパラギン結合グリコシル化認識部位は、一般に、適切な細胞のグリコシル化酵素によって特異的に認識されるトリペプチド配列であるアスパラギン−X−トレオニン(ここで「X」は任意のアミノ酸である)を含む。変化は、野生型ActRIIBポリペプチドの配列に1つまたは複数のセリン残基またはトレオニン残基を付加すること、または野生型ActRIIBポリペプチドの配列を1つまたは複数のセリン残基またはトレオニン残基で置換することによっても行うことができる(O結合グリコシル化部位について)。グリコシル化認識部位のアミノ酸の1位または3位の一方、または両方における種々のアミノ酸の置換または欠失(および/または2位におけるアミノ酸の欠失)により、修飾されたトリペプチド配列における非グリコシル化がもたらされる。ActRIIBポリペプチドの炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、配糖体をActRIIBポリペプチドに化学的または酵素的に結合(coupling)させることによる。使用する結合方式に応じて、糖(複数可)を(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離のカルボキシル基;(c)遊離のスルフヒドリル基、例えばシステインの遊離のスルフヒドリル基;(d)遊離のヒドロキシル基、例えばセリン、トレオニン、またはヒドロキシプロリンの遊離のヒドロキシル基;(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの芳香族残基;または(f)グルタミンのアミド基に付けることができる。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれている、1987年9月11日公開のWO 87/05330およびAplinおよびWriston(1981年)CRC Crit. Rev. Biochem.、259〜306頁に記載されている。ActRIIBポリペプチドに存在する1つまたは複数の炭水化物部分の除去は、化学的に、および/または酵素的に実現することができる。化学的な脱グリコシルは、例えば、ActRIIBポリペプチドを、化合物のトリフルオロメタンスルホン酸、または相当する化合物に曝露することを含んでよい。この処理により、連結している糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外の大部分または全ての糖が切断されるが、アミノ酸配列は損なわれない。化学的な脱グリコシルは、さらにHakimuddinら(1987年)Arch. Biochem. Biophys. 259巻:52頁、およびEdgeら(1981年)Anal. Biochem. 118巻:131頁に記載されている。ActRIIBポリペプチドの炭水化物部分の酵素的な切断は、Thotakuraら(1987年)Meth. Enzymol. 138巻:350頁に記載の通り、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを使用することによって実現することができる。ActRIIBポリペプチドの配列は、哺乳動物の細胞、酵母細胞、昆虫細胞および植物細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列に影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得るので、必要に応じて、使用する発現系の種類に応じて調整することができる。一般に、ヒトにおいて使用するためのActRIIBタンパク質は、HEK293細胞系またはCHO細胞系などの妥当なグリコシル化をもたらす哺乳動物の細胞系において発現させるが、他の哺乳動物の発現細胞系も同様に有用であると予想される。
【0056】
本開示は、さらに、場合によって短縮型改変体を含む、ActRIIBポリペプチドの改変体、特に、コンビナトリアル改変体のセットを生成する方法を意図している;コンビナトリアル変異体のプールは、機能的な改変体配列を同定するために特に有用である。そのようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、薬物動態の変化またはリガンド結合性の変化などの特性の変化を有するActRIIBポリペプチド改変体を生成することであってよい。種々のスクリーニングアッセイが以下に提供され、そのようなアッセイは、改変体を評価するために使用することができる。例えば、ActRIIBリガンドがActRIIBポリペプチドに結合するのを妨げるために、ActRIIBポリペプチド改変体を、ActRIIBポリペプチドに結合する能力についてスクリーニングすることができる。
【0057】
ActRIIBポリペプチドまたはその改変体の活性は、細胞に基づくアッセイまたはin vivoアッセイにおいても試験することができる。例えば、ActRIIBポリペプチド改変体の、脂肪細胞の分化または機能に関与する遺伝子(例えば、UCP−1)の発現に対する影響を評価することができる。これは、必要に応じて、1つまたは複数の組換えActRIIBリガンドタンパク質(例えば、GDF8)の存在下で実施され、ActRIIBポリペプチドおよび/またはその改変体、ならびに場合によって、ActRIIBリガンドを作製するために、細胞をトランスフェクトすることができる。同様に、ActRIIBポリペプチドをマウスまたは他の動物に投与することができ、褐色脂肪細胞の熱発生などの1つまたは複数の脂肪細胞の特性を評価することができる。同様に、ActRIIBポリペプチドまたはその改変体の活性を、脂肪細胞(fat cell)、筋肉細胞、骨細胞、および神経細胞において、これらの細胞の成長に対する任意の影響について、例えば下記のアッセイによって試験することができる。そのようなアッセイは当技術分野で周知であり、ルーチン的である。SMAD応答性のレポーター遺伝子をそのような細胞系において使用して下流のシグナリングに対する影響をモニターすることができる。
【0058】
天然に存在するActRIIBポリペプチドに対して選択的な効力を有するコンビナトリアルケミストリーで導いた改変体を生成することができる。そのような改変体タンパク質は、組換えDNA構築物から発現されたら、遺伝子療法のプロトコールにおいて使用することができる。同様に、突然変異誘発により、対応する野生型ActRIIBポリペプチドと劇的に異なる細胞内の半減期を有する改変体を生じることができる。例えば、変化したタンパク質に、ネイティブなActRIIBポリペプチドの破壊、またはそうでなければ不活性化をもたらすタンパク質分解または他のプロセスに対する高い安定性または低い安定性のいずれかを与えることができる。そのような改変体およびそれらをコードする遺伝子を利用して、ActRIIBポリペプチドの半減期を調節することによってActRIIBポリペプチドのレベルを変化させることができる。例えば、短い半減期により、一過性の生物学的影響を生じることができ、誘導性の発現系の一部の場合、細胞内の組換えActRIIBポリペプチドのレベルを厳重に調節することが可能になり得る。
【0059】
ある特定の実施形態では、本発明のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドにおいて天然に存在するいずれかに加えて、翻訳後修飾をさらに含んでよい。そのような修飾としては、これらに限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質付加およびアシル化が挙げられる。結果として、修飾されたActRIIBポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸などの非アミノ酸要素を含有してよい。そのような非アミノ酸要素の、ActRIIBポリペプチドの機能性に対する影響を、他のActRIIBポリペプチド改変体に関して本明細書に記載されているように試験することができる。ActRIIBポリペプチドが、細胞においてActRIIBポリペプチドの発生期の形態を切断することによって作製される場合、翻訳後プロセシングは、タンパク質の正しい折りたたみおよび/または機能に対しても重要であり得る。種々の細胞(CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293など)は、そのような翻訳後活性に対して特異的な細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、ActRIIBポリペプチドの正しい修飾およびプロセシングを確実にするために選出することができる。
【0060】
ある特定の態様では、ActRIIBポリペプチドの機能的改変体または修飾された形態は、ActRIIBポリペプチドの少なくとも一部分および1つまたは複数の融合ドメインを有する融合タンパク質を含む。周知のそのような融合ドメインの例としては、これらに限定されないが、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(例えば、Fc)、マルトース結合性タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられる。融合ドメインは、所望の特性を付与するように選択することができる。例えば、いくつかの融合ドメインが、アフィニティークロマトグラフィーによって融合タンパク質を単離するために特に有用である。親和性精製の目的のために、グルタチオンとコンジュゲートした樹脂、アミラーゼとコンジュゲートした樹脂、およびニッケルとコンジュゲートした樹脂またはコバルトとコンジュゲートした樹脂などの、アフィニティークロマトグラフィーのための関連性のあるマトリックスを使用する。そのようなマトリックスの多くは、Pharmacia GST精製システムおよび(HIS)融合パートナーを用いると有用なQIAexpress(商標)システム(Qiagen)などの「キット」形態で入手可能である。別の例として、融合ドメインは、ActRIIBポリペプチドの検出を容易にするように選択することができる。そのような検出ドメインの例としては、さまざまな蛍光タンパク質(例えば、GFP)ならびに通常、特異的な抗体が入手可能な短いペプチド配列である「エピトープタグ」が挙げられる。特異的なモノクローナル抗体が容易に入手可能である周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)、およびc−mycタグが挙げられる。ある場合には、融合ドメインは、関連性のあるプロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによって、そこから組換えタンパク質が遊離することを可能にする、因子Xaまたはトロンビンに対するものなどのプロテアーゼ切断部位を有する。次いで、遊離したタンパク質を、その後のクロマトグラフィーによる分離によって融合ドメインから単離することができる。ある特定の好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドをin vivoで安定化するドメイン(「安定化」ドメイン)と融合している。「安定化すること」は、破壊の減少、腎臓によるクリアランスの減少、または他の薬物動態的な影響によるものであるかどうかは関係なく、血清中の半減期を増加させることのいずれをも意味する。免疫グロブリンのFc部分と融合することにより、広範囲のタンパク質に対して望ましい薬物動態特性が付与されることが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンに融合することによって、望ましい特性を付与することができる。選択することができる他の種の融合ドメインとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)しているドメインおよび機能的ドメイン(筋肉の成長をさらに刺激することなどの追加的な生物学的機能を付与する)が挙げられる。
【0061】
特定の例として、本発明は、Fcドメイン(例えば、配列番号13)と融合した細胞外(例えば、GDF8結合性)ドメインを含むGDF8アンタゴニストとしての融合タンパク質を提供する。
【0062】
【化3】

場合によって、Fcドメインは、Asp−265、リジン322、およびAsn−434などの残基において1つまたは複数の突然変異を有する。ある場合では、これらの突然変異の1つまたは複数(例えば、Asp−265突然変異)を有する変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、Fcγ受容体に対する結合能が低下している。他の場合では、これらの突然変異の1つまたは複数(例えば、Asn−434突然変異)を有する変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、MHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に対する結合能が上昇している。
【0063】
融合タンパク質の種々の要素は、所望の機能性に一致するように任意に配置することができることが理解される。例えば、ActRIIBポリペプチドを、異種ドメインに対してC末端に位置付けることができる、または、その代わりに、異種ドメインを、ActRIIBポリペプチドに対してC末端に位置付けることができる。ActRIIBポリペプチドドメインと異種ドメインは、融合タンパク質において隣接する必要はなく、また、追加的なドメインまたはアミノ酸配列を、いずれかのドメインのC末端もしくはN末端またはドメイン間に含めることができる。
【0064】
ある特定の実施形態では、本発明のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドを安定化することができる1つまたは複数の修飾を含有する。例えば、そのような修飾により、ActRIIBポリペプチドのin vitroにおける半減期が増強される、ActRIIBポリペプチドの循環半減期が増強される、またはActRIIBポリペプチドのタンパク質分解が低下する。そのような安定化修飾としては、これらに限定されないが、融合タンパク質(例えば、ActRIIBポリペプチドおよび安定剤ドメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、グリコシル化部位をActRIIBポリペプチドに付加することを含む)、および炭水化物部分の修飾(例えば、炭水化物部分をActRIIBポリペプチドから除去することを含む)が挙げられる。融合タンパク質の場合では、ActRIIBポリペプチドは、IgG分子などの安定剤ドメイン(例えば、Fcドメイン)と融合している。本明細書で使用される、「安定剤ドメイン」という用語は、融合タンパク質の場合のような融合ドメイン(例えば、Fc)を指すだけでなく、炭水化物部分などの非タンパク質性の修飾、またはポリエチレングリコールなどの非タンパク質性ポリマーを含む。
【0065】
ある特定の実施形態では、本発明により、他のタンパク質から単離された、またはそうでなければ他のタンパク質を実質的に含まない、利用可能なActRIIBポリペプチドの単離および/または精製された形態が作出される。
【0066】
ある特定の実施形態では、本発明のActRIIBポリペプチド(修飾されていない、または修飾された)は、種々の当技術分野で公知の技法によって作製することができる。例えば、そのようなActRIIBポリペプチドは、Bodansky, M. Principles of Peptide Synthesis、Springer Verlag、Berlin(1993年)およびGrant G. A.(編)、Synthetic Peptides:A User’s Guide、W. H. FreemanおよびCompany、New York(1992年)に記載の技法などの標準のタンパク質化学の技法を使用して合成することができる。さらに、自動ペプチド合成機が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。あるいは、ActRIIBポリペプチド、それらの断片または改変体は、当技術分野で周知のさまざまな発現系(例えば、E.coli、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞、バキュロウイルス)を使用して、組換えによって作製することができる(以下も参照されたい)。別の実施形態では、修飾されたActRIIBポリペプチドまたは修飾されていないActRIIBポリペプチドは、天然に存在する、または組換えによって作製した全長のActRIIBポリペプチドを、例えば、プロテアーゼ、例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、または対塩基性アミノ酸変換酵素(PACE)を使用して消化することによって作製することができる。コンピュータ解析(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用する)を使用してタンパク質分解の切断部位を同定することができる。あるいは、そのようなActRIIBポリペプチドは、天然に存在する、または組換えによって作製した全長のActRIIBポリペプチドから、当技術分野で公知の標準の技法など、例えば化学的切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミン)によって作製することができる。
【0067】
3.ActRIIBポリペプチドをコードする核酸
ある特定の態様では、本発明は、本明細書に開示されている任意の改変体を含めた、任意のActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)をコードする、単離された核酸および/または組換え型の核酸を提供する。例えば、以下の配列は、天然に存在するヒトのActRIIB前駆体ポリペプチドをコードする(配列番号4)(NM_001106のヌクレオチド5〜1543、1539bp):
【0068】
【化4】

以下の配列は、ヒトの可溶性の(細胞外)ActRIIBポリペプチドコードする(配列番号3)(348bp)。
【0069】
【化5】

対象の核酸は、一本鎖または二本鎖であってよい。そのような核酸は、DNA分子またはRNA分子であってよい。これらの核酸は、例えば、ActRIIBポリペプチドを作出するための方法において、または直接的な治療剤として(例えば、遺伝子療法による手法)使用することができる。
【0070】
ある特定の態様では、ActRIIBポリペプチドをコードする対象の核酸は、さらに、配列番号3の改変体である核酸を含むと理解されている。改変体ヌクレオチド配列は、対立遺伝子改変体などの、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、付加または欠失によって異なる配列を含み、したがって、配列番号4に示されているコード配列のヌクレオチド配列と異なるコード配列を含む。
【0071】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一である、単離された、または組換え型の核酸配列を提供する。当業者は、配列番号3と相補的な核酸配列、および配列番号3の改変体も本発明の範囲内であることを理解するであろう。別の実施形態では、本発明の核酸配列は、単離されていてよい、組換え型であってよい、および/または異種ヌクレオチド配列と融合していてよい、またはDNAライブラリー内のものであってよい。例えば、本発明は、配列番号10または15と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一である、単離された、または組換え型の核酸配列を提供する。
【0072】
他の実施形態では、本発明の核酸は、高度にストリンジェントな条件下で、配列番号3に示されているヌクレオチド配列、配列番号3の相補配列、またはその断片とハイブリダイズするヌクレオチド配列も含む。上記の通り、当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は変動し得ることを容易に理解するであろう。当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は変動し得ることを容易に理解するであろう。例えば、約45℃、6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でハイブリダイゼーション、その後、50℃、2.0×SSCで洗浄を実施することができた。例えば、洗浄ステップにおける塩濃度は、低ストリンジェンシーの50℃、約2.0×SSC〜高ストリンジェンシーの50℃で約0.2×SSCから選択することができる。さらに、洗浄ステップにおける温度は、低ストリンジェンシー条件の室温、約22℃から、高ストリンジェンシー条件の約65℃まで上昇させることができる。温度と塩の両方が変動してよい、または、他の変量が変化する一方で、温度または塩濃度は一定に保たれてよい。一実施形態では、本発明は、室温で6×SSCの低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし、その後室温で2×SSCで洗浄される核酸を提供する。
【0073】
遺伝暗号における縮重に起因して配列番号3に記載の核酸と異なる単離された核酸も、本発明の範囲内である。例えば、いくつものアミノ酸が2つ以上のトリプレットによって指定される。同じアミノ酸、またはシノニム(例えば、CAUとCACは、ヒスチジンに対するシノニムである)を特定するコドンにより、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」突然変異がもたらされる。しかし、哺乳動物の細胞の間に、対象のタンパク質のアミノ酸配列における変化を導くDNA配列の多型が存在すると予想される。当業者は、天然の対立遺伝子変種に起因して、所与の種の個体の間に、特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(ヌクレオチドの最大約3〜5%)においてこれらの変種が存在することを理解するであろう。任意の全てのそのようなヌクレオチドの変種および生じたアミノ酸の多型は、本発明の範囲内である。
【0074】
ある特定の実施形態では、本発明の組換え型の核酸は、発現構築物中の1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列に作動可能に連結していてよい。制御ヌクレオチド配列は、一般に、発現のために使用する宿主細胞に適している。多数の種類の適切な発現ベクターおよび適切な制御配列は、さまざまな宿主細胞に対して当技術分野で公知である。一般には、前記1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列としては、これらに限定されないが、プロモーター配列、リーダー配列またはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびにエンハンサー配列またはアクチベーター配列を挙げることができる。当技術分野で公知の構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターは、本発明で意図されている。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または2つ以上のプロモーターのエレメントを併せ持つハイブリッドプロモーターのいずれかであってよい。発現構築物は、プラスミドなどのエピソーム上で細胞内に存在してよい、または、発現構築物は、染色体内に挿入することができる。好ましい実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含有する。選択マーカー遺伝子は、当技術分野で周知であり、使用する宿主細胞によって変動する。
【0075】
本発明のある特定の態様では、対象の核酸は、ActRIIBポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、少なくとも1つの制御配列に作動可能に連結した発現ベクター中にもたらされる。制御配列は、当技術分野で認められており、ActRIIBポリペプチドが直接発現されるように選択される。したがって、制御配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現調節エレメントを含む。典型的な制御配列は、Goeddel;Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)に記載されている。例えば、DNA配列に作動可能に連結しているときに、その発現を調節する多種多様な発現調節配列のいずれも、ActRIIBポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるために、これらのベクターに使用することができる。そのような有用な発現調節配列としては、例えば、SV40の初期プロモーターおよび後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルスの最初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TAC系またはTRC系、T7 RNAポリメラーゼによってその発現が導かれるT7プロモーター、ファージラムダの主要なオペレーター領域およびプロモーター領域、fdコートタンパク質の調節領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素に対するプロモーター、Pho5などの酸性ホスファターゼのプロモーター、酵母α接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系のポリヘドロン(polyhedron)プロモーターならびに原核細胞もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を調節することが公知である他の配列、ならびに、それらのさまざまな組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択肢および/または発現されることが望ましいタンパク質の種類などの因子に左右され得ることが理解されるべきでる。さらに、ベクターのコピー数、ベクターにコードされる任意の他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーなどのコピー数および発現を調節する能力も考慮するべきである。
【0076】
本発明の組換え型の核酸は、クローニングされた遺伝子、またはその部分を、原核細胞、真核細胞(酵母細胞、トリの細胞、昆虫細胞または哺乳動物の細胞)のいずれか、またはその両方における発現に適したベクターにライゲーションすることによって作製することができる。組換えActRIIBポリペプチドを作製するための発現ビヒクルは、プラスミドおよび他のベクターを含む。例えば、適切なベクターとしては、以下の種類のプラスミドが挙げられる:E.coliなどの原核細胞において発現させるための、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
【0077】
いくつかの哺乳動物の発現ベクターは、細菌におけるベクターの繁殖を容易にするための原核生物の配列と、真核細胞において発現される1つまたは複数の真核生物の転写ユニットとの両方を含有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHyg由来のベクターは、真核細胞をトランスフェクトするために適した哺乳動物の発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核細胞および真核細胞の両方において複製および薬物耐性選択を容易にするために、pBR322などの細菌のプラスミドからの配列で修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)、またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来の、およびp205)などのウイルスの派生体を、真核細胞においてタンパク質を一過性に発現させるために使用することができる。他のウイルス(レトロウイルスを含む)の発現系の例は、以下の遺伝子療法の送達系の説明において見ることができる。プラスミドの調製において、および宿主生物体の形質転換において利用されるさまざまな方法は、当技術分野で周知である。原核細胞および真核細胞の両方に適した他の発現系、ならびに一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)16章および17章を参照されたい。ある場合には、バキュロウイルスの発現系を使用することによって組換え型のポリペプチドを発現させることが望ましいことがある。そのようなバキュロウイルスの発現系の例としては、pVL由来のベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来のベクター(pAcUW1など)、およびpBlueBac由来のベクター(pBlueBac IIIを含有するβ−galなど)が挙げられる。
【0078】
好ましい実施形態では、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene、La Jolla、Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)およびpCI−neoベクター(Promega、Madison、Wisc.)などのベクターを、対象のActRIIBポリペプチドをCHO細胞において産生させるために設計する。明らかになるように、対象の遺伝子構築物は、精製のために、例えば、融合タンパク質または改変体タンパク質を含めたタンパク質を産生させるために、培養物中で繁殖させた細胞において対象のActRIIBポリペプチドを発現させるために使用することができる。
【0079】
本発明は、1つまたは複数の対象のActRIIBポリペプチドをコードする配列(例えば、配列番号3、4、10、または15)を含む組換え型の遺伝子でトランスフェクトした宿主細胞にも関する。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であってよい。例えば、本発明のActRIIBポリペプチドは、E.coliなどの細菌の細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスの発現系を使用して)、酵母または哺乳動物の細胞において発現させることができる。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0080】
したがって、本発明は、さらに、対象のActRIIBポリペプチドを作製する方法に関する。例えば、ActRIIBポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞は、ActRIIBポリペプチドの発現を起こすのに適した条件下で培養することができる。ActRIIBポリペプチドは、細胞とActRIIBポリペプチドを含有する培地の混合物から分泌させ、単離することができる。あるいは、ActRIIBポリペプチドは、細胞質によって、または膜画分中に保持し、細胞を回収し、溶解させ、タンパク質を単離することができる。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞を培養するために適した培地は、当技術分野で周知である。対象のActRIIBポリペプチドは、細胞培養培地、宿主細胞、またはその両方から、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびActRIIBポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を用いた免疫親和性精製を含めたタンパク質を精製するための当技術分野で公知の技法を使用して単離することができる。好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含有する融合タンパク質である。
【0081】
別の実施形態では、組換えActRIIBポリペプチドの所望の部分のN末端においてポリ(His)/エンテロキナーゼ切断部位の配列などの精製リーダー配列をコードする融合遺伝子により、Ni2+金属樹脂を使用したアフィニティークロマトグラフィーによって発現された融合タンパク質を精製することが可能になり得る。次いで、その後に精製リーダー配列をエンテロキナーゼで処理することによって除去して、精製されたActRIIBポリペプチドをもたらすことができる(例えば、Hochuliら、(1987年)J. Chromatography 411巻:177頁;およびJanknechtら、PNAS USA 88巻:8972頁)を参照されたい)。
【0082】
融合遺伝子を作出するための技法は、周知である。基本的に、異なるポリペプチド配列をコードするさまざまなDNA断片の連結は、従来の技法に従って、ライゲーションのための平滑末端になった末端または付着末端になった末端、適切な末端をもたらすための制限酵素消化、必要に応じて突出末端を埋めること、望ましくない連結を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーションを用いて実施する。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含めた従来の技法によって合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅を、その後にアニーリングしてキメラ遺伝子配列を生成することができる2つの連続した遺伝子断片間の相補的なオーバーハングを生じるアンカープライマーを使用して行うことができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、eds. Ausubelら、John Wiley & Sons:1992年を参照されたい)。
【0083】
4.抗体および他のアンタゴニスト
本発明の別の態様は、本明細書に開示されている標的に結合するタンパク質および本明細書に開示されている標的の発現を阻害する核酸を含めた、抗体および他のアンタゴニストに関する。ActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)に特異的に応答する抗体、およびActRIIBポリペプチドと競合的に結合する抗体を、ActRIIBポリペプチドの活性のアンタゴニストとして使用することができる。例えば、ActRIIBポリペプチドに由来する免疫原を使用することにより、抗タンパク質/抗ペプチドの抗血清またはモノクローナル抗体を、標準のプロトコールによって作出することができる(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual HarlowおよびLane編(Cold Spring Harbor Press:1988年)を参照されたい)。マウス、ハムスターまたはウサギなどの哺乳動物を、免疫原性の形態のActRIIBポリペプチドもしくはActRIIBリガンド、抗体応答を引き出すことができる抗原断片、または融合タンパク質で免疫化することができる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与するための技法としては、担体へのコンジュゲーションまたは当技術分野で周知の他の技法が挙げられる。ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドの免疫原性部分を、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫化の進行を、血漿中または血清中の抗体価を検出することによってモニターすることができる。標準のELISAまたは他の免疫測定法を、抗原として免疫原を用いて使用して、抗体のレベルを評価することができる。
【0084】
ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドの抗原性調製物を用いて動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、望ましい場合には、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。モノクローナル抗体を作製するために、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫化した動物から回収し、標準の体細胞融合手順によって骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合してハイブリドーマ細胞を生じることができる。そのような技法は当技術分野で周知であり、例えば、ハイブリドーマ法(KohlerおよびMilsteinによって最初に開発された、1975年、Nature、256巻:495〜497頁)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbarら、1983年、Immunology Today、4巻:72頁)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV−ハイブリドーマ法(Coleら、1985年、Monoclonal AntibodiesおよびCancer Therapy、Alan R. Liss、Inc. 77〜96頁)が挙げられる。ハイブリドーマ細胞を、ActRIIBポリペプチドに特異的に応答する抗体およびそのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離されたモノクローナル抗体の産生について、免疫化学的にスクリーニングすることができる。
【0085】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、対象のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドにも特異的に応答するその断片を含むものとする。抗体は、従来の技法を使用して断片化することができ、その断片を、有用性について、上記の全抗体についてと同様にスクリーニングすることができる。例えば、抗体をペプシンで処理することによってF(ab)断片を生成することができる。生じたF(ab)断片を処理してジスルフィド架橋を減少させてFab断片を作製することができる。本発明の抗体は、さらに、抗体の少なくとも1つのCDR領域によって付与されるActRIIBポリペプチドに対する親和性を有する二重特異性分子、単鎖分子、およびキメラ分子ならびにヒト化分子を含むものとする。好ましい実施形態では、抗体は、抗体に付き、検出することができる標識をさらに含む(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素の補因子であってよい)。
【0086】
ある特定の好ましい実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、ある特定の実施形態では、本発明は、新規の抗体を生成するための利用可能な方法を作出する。例えば、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成するための方法は、マウスに、ある量の、検出可能な免疫応答を刺激するために有効なActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドを含む免疫原性組成物を投与すること、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓からの細胞)を得ること、抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合して抗体産生ハイブリドーマを得ること、および、抗体産生ハイブリドーマを試験して、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定することを含んでよい。ハイブリドーマが得られたら、それを細胞培養物中で、場合によって、ハイブリドーマ由来の細胞が、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件において、繁殖させることができる。モノクローナル抗体を細胞培養物から精製することができる。
【0087】
抗体に関して使用される形容詞「に特異的に応答する」は、当技術分野で一般に理解されているように、対象の抗原(例えば、ActRIIBポリペプチド)と対象でない他の抗原との間で抗体が十分に選択的であり、抗体が、最低でも、特定の種類の生物試料中の対象の抗原の存在を検出するために有用であることを意味するものとする。治療的適用などの、抗体を使用するある特定の方法では、高い程度の結合の特異性が望ましい場合がある。モノクローナル抗体は、一般に、(ポリクローナル抗体と比較して)所望の抗原と交差反応性のポリペプチドとを有効に識別する傾向が強い。抗体:抗原相互作用の特異性に影響を及ぼす1つの特徴は、抗体の抗原に対する親和性である。所望の特異性はさまざまな異なる親和性で達し得るが、一般に好ましい抗体は、約10−6、10−7、10−8、10−9またはそれ未満の親和性(解離定数)を有する。
【0088】
さらに、望ましい抗体を同定する目的で、抗体をスクリーニングするために使用する技法は、得られる抗体の特性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、抗体を、溶液中の抗原と結合させるために使用する場合、溶液の結合性を試験することが望ましいことがある。さまざまな異なる技法が、特に望ましい抗体を同定するために、抗体と抗原の相互作用を試験するために利用可能である。そのような技法としては、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore結合アッセイ、Bia−core AB、Uppsala、Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.、Gaithersburg、Marylandの常磁性ビーズ系)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織学的検査が挙げられる。
【0089】
ある特定の態様では、本開示は、可溶性のActRIIBポリペプチドまたは可溶性のActRIIBリガンドに結合する抗体を提供する。そのような抗体は、上記したが、可溶性のActRIIBポリペプチドまたは可溶性のActRIIBリガンドまたはその断片を抗原として使用して生成することができる。この種類の抗体は、例えば、生物試料中のActRIIBポリペプチドを検出するために、および/または、個体における可溶性のActRIIBポリペプチドのレベルをモニターするために使用することができる。ある場合では、可溶性のActRIIBポリペプチドまたは可溶性のActRIIBリガンドに特異的に結合する抗体を使用して、ActRIIBポリペプチドおよび/またはActRIIBリガンドの活性を調節し、それによって熱発生性脂肪細胞を増加させることができる。
【0090】
ミオスタチンおよびGDF3などのある特定のリガンドは、それぞれのプロペプチドの結合部分、またはその改変体を含むポリペプチドを使用することによって阻害することができる。そのようなプロペプチドは、Fc融合タンパク質を含めた、融合タンパク質として調製することができる。適切なプロペプチドの例は、公開特許出願WO 02/085306およびWO 06/002387に開示されている。
【0091】
さらに、いわゆる「トラップ」(例えば、フォリスタチン、FLRG、FSTL、ケルベロスおよびCoco)、可溶性のI型受容体、例えば、ALK−7などの他の結合性タンパク質を使用することができる。そのようなポリペプチドの例は、公開特許出願WO 05/115439、WO 08/109779、WO 08/067480、WO 07/109686、WO 05/100563、およびWO 05/025601において見ることができる。
【0092】
アンチセンスプローブまたはRNAiプローブなどの核酸(天然に存在するヌクレオチドおよび天然に存在しないヌクレオチドの両方を含んでよい)を使用して、ActRIIBまたは本明細書で考察したリガンドのいずれかの発現を阻害することができる。
【0093】
5.スクリーニングアッセイ
ある特定の態様では、本発明は、ActRIIBポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(作用剤)を同定するための、対象のActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)の使用に関する。このスクリーニングによって同定された化合物は、in vitroで組織の成長を調節するその能力を評価するために、脂肪、筋肉、骨、軟骨、および/またはニューロンなどの組織において試験することができる。場合によって、これらの化合物を、動物モデルにおいてさらに試験して、in vivoで組織の成長を調節するその能力を評価することができる。
【0094】
ActRIIBポリペプチドをターゲティングすることによって組織の成長を調節するための治療剤についてスクリーニングするための多数の手法がある。ある特定の実施形態では、化合物のハイスループットなスクリーニングを行って、脂肪、筋肉、骨、軟骨、および/またはニューロンの成長に対するActRIIB媒介性の影響をかき乱す作用剤を同定することができる。ある特定の実施形態では、アッセイを行って、ActRIIBポリペプチドの、その結合パートナー、例えばActRIIBリガンド(例えば、アクチビン、GDF3、Nodal、GDF8、またはGDF11)などへの結合を特異的に阻害する、または低下させる化合物をスクリーニングし、同定することができる。あるいは、アッセイを使用して、ActRIIBポリペプチドの、その結合性タンパク質、例えばActRIIBリガンドなどへの結合を増強する化合物を同定することができる。別の実施形態では、化合物を、ActRIIBポリペプチドと相互作用するそれらの能力によって同定することができる。
【0095】
さまざまなアッセイ形式が十分であり、本開示に照らして、本明細書に明白に記載されていないアッセイ形式は、それでも、当業者に理解されよう。本明細書に記載のように、本発明の試験化合物(作用剤)は、任意のコンビナトリアルケミストリー法によって創出することができる。あるいは、対象化合物は、in vivoまたはin vitroで合成された天然に存在する生体分子であってよい。組織の成長のモジュレーターとして作用するそれらの能力について試験される化合物(作用剤)は、例えば、細菌、酵母、植物または他の生物体(例えば、天然物)によって産生することができる、化学的に作製することができる(例えば、ペプチド模倣薬を含めた小分子)、または、組換えによって作製することができる。本発明で意図される試験化合物としては、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、糖、ホルモン、および核酸分子が挙げられる。特定の実施形態では、試験作用剤は、約2,000ダルトン未満の分子量を有する小有機分子である。
【0096】
本発明の試験化合物は、単一の、別個の実体として提供することができる、または例えば、コンビナトリアルケミストリーで作出された、複雑さが大きいライブラリー内に提供することができる。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび他のクラスの有機化合物を含んでよい。試験系への試験化合物の提示は、特に最初のスクリーニングステップにおいて、単離された形態または化合物の混合物のいずれかであってよい。場合によって、化合物は、他の化合物で誘導体化されてもよく、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有する。非限定的な誘導体化基の例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位元素、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、光活性化可能な架橋剤またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0097】
化合物のライブラリーおよび天然の抽出物を試験する多くの薬物スクリーニングプログラムでは、所与の期間中に調査される化合物の数を最大にするために、ハイスループットなアッセイが望ましい。精製または半精製されたタンパク質を用いて導くことができるような無細胞系において実施されるアッセイが、試験化合物によって媒介される分子標的における変化の急速な発生および比較的容易な検出が可能になるように生成することができるという点で、多くの場合「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞の毒性または生物学的利用能の影響は、一般に、in vitro系では無視することができ、その代わりに、アッセイは、ActRIIBポリペプチドとその結合性タンパク質(例えば、ActRIIBリガンド)との間の結合親和性の変化において明白であり得る分子標的に対する薬物の影響に主に焦点が置かれている。
【0098】
単に例示するために、本発明の典型的なスクリーニングアッセイでは、アッセイの目的に応じて、対象化合物を、普通はActRIIBリガンドに結合することができる単離され、精製されたActRIIBポリペプチドと接触させる。次いで、化合物の混合物およびActRIIBポリペプチドに、ActRIIBリガンドを含有する組成物を加える。ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の検出および数量化により、ActRIIBポリペプチドとその結合性タンパク質の複合体の形成を阻害すること(または強化すること)における化合物の有効性を決定するための手段がもたらされる。化合物の有効性は、さまざまな濃度の試験化合物を使用して得られたデータから用量応答曲線を生成することによって評価することができる。さらに、対照アッセイも実施して、比較のための基線をもたらすことができる。例えば、対照アッセイでは、単離され、精製されたActRIIBリガンドを、ActRIIBポリペプチドを含有する組成物に加え、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の形成を、試験化合物の非存在下で定量化する。一般に、反応物が混和され得る順番は変動してよく、同時に混和することができることが理解されよう。さらに、精製されたタンパク質の代わりに、細胞抽出物および溶解物を使用して適切な無細胞アッセイ系を提供することができる。
【0099】
ActRIIBポリペプチドとその結合性タンパク質の複合体の形成は、さまざまな技法によって検出することができる。例えば、複合体の形成の調節を、例えば、検出可能な標識タンパク質、例えば、放射標識された(例えば、32P、35S、14CまたはH)、蛍光標識された(例えば、FITC)、または酵素的に標識されたActRIIBポリペプチドまたはその結合性タンパク質などを使用して、免疫測定法によって、またはクロマトグラフィーによる検出によって定量化することができる。
【0100】
ある特定の実施形態では、本発明は、直接的、または間接的のいずれかで、ActRIIBポリペプチドとその結合性タンパク質の相互作用の程度を測定することにおいて、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイの使用を意図している。さらに、光導波路(PCT公開WO 96/26432および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサー、および表面力センサーに基づく検出方式などの他の検出方式が、本発明の多くの実施形態に適合する。
【0101】
さらに、本発明は、ActRIIBポリペプチドとその結合性タンパク質の相互作用を攪乱または強化する作用剤を同定するために、「二重ハイブリッドアッセイ」としても公知である相互作用トラップアッセイの使用を意図している。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら、1993年Cell 72巻:223〜232頁;Maduraら、1993年J Biol Chem 268巻:12046〜12054頁;Bartelら、1993年、Biotechniques 14巻:920〜924頁;およびIwabuchiら、1993年、Oncogene 8巻:1693〜1696頁)を参照されたい。特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドとその結合性タンパク質の相互作用を分離する化合物(例えば、小分子またはペプチド)を同定するために、逆二重ハイブリッド系の使用を意図している。例えば、VidalおよびLegrain、1999年、Nucleic Acids Res 27巻:919〜29頁;VidalおよびLegrain、1999年、Trends Biotechnol 17巻:374〜81頁;および米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照されたい。
【0102】
ある特定の実施形態では、対象化合物を、本発明のActRIIBポリペプチドと相互作用するそれらの能力によって同定する。化合物とActRIIBポリペプチドの相互作用は、共有結合性または非共有結合性であってよい。例えば、そのような相互作用は、光架橋、放射標識したリガンドを結合させること、およびアフィニティークロマトグラフィー(Jakoby WBら、1974年、Methods in Enzymology 46巻:1頁)を含めたin vitroにおける生化学的方法を使用して、タンパク質レベルで同定することができる。ある場合では、化合物を、ActRIIBポリペプチドに結合する化合物を検出するためのアッセイなどのメカニズムに基づくアッセイにおいてスクリーニングすることができる。これは、固相または液相の結合事象を含んでよい。あるいは、ActRIIBポリペプチドをコードする遺伝子を、レポーター系(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)を用いて細胞にトランスフェクトし、ライブラリーと対照してスクリーニングすることができ、ハイスループットなスクリーニングによって、またはライブラリーの個々のメンバーと対照してスクリーニングすることが好ましい。他のメカニズムに基づく結合アッセイ、例えば、自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイを使用することができる。結合アッセイは、ウェル、ビーズまたはチップに固定した標的、または固定化抗体に捕捉された標的を用いて、またはキャピラリー電気泳動で分離することによって実施することができる。結合した化合物は、通常、比色定量または蛍光または表面プラズモン共鳴を使用して検出することができる。
【0103】
ある特定の態様では、本発明は、体重増加および肥満を調節するための方法および作用剤を提供する。細胞レベルでは、追加的な脂肪細胞(fat cell)(脂肪細胞)の生成につながる脂肪細胞の増殖および分化が肥満の発生において重大である。したがって、同定された任意の化合物を、細胞全体または組織全体、in vitroまたはin vivoにおいて試験して、脂肪細胞の増殖または分化を測定することによって脂肪生成を調節するそれらの能力を確証することができる。この目的のために、当技術分野で公知のさまざまな方法を利用することができる。例えば、ActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)または試験化合物の、脂肪生成に対する影響を、細胞に基づくアッセイにおいて、例えば、オイルレッドO染色ベシクル内のトリアシルグリセロールの蓄積を観察することによって、およびFABP(aP2/422)およびPPARγ2などのある特定の脂肪細胞マーカーの出現によって、3T3−L1前脂肪細胞の成熟脂肪細胞への分化を測定することによって決定することができる。例えば、Reuschら、2000年、Mol Cell Biol. 20巻:1008〜20頁;Dengら、2000年、Endocrinology. 141巻:2370〜6頁;Bellら、2000年、Obes Res. 8巻:249〜54頁を参照されたい。細胞に基づくアッセイの別の例としては、ActRIIBポリペプチドおよび試験化合物の、脂肪細胞または脂肪細胞の前駆体細胞(例えば、3T3−L1細胞)の増殖における役割を、例えば、ブロモデオキシウリジン(BrdU)陽性細胞をモニターすることによって分析することが挙げられる。例えば、Picoら、1998年、Mol Cell BioChem. 189巻:1〜7頁;Masunoら、2003年、Toxicol Sci. 75巻:314〜20頁を参照されたい。
【0104】
本発明のスクリーニングアッセイは、対象のActRIIBポリペプチドおよびActRIIBポリペプチドの改変体だけでなく、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBシグナリングのアゴニストおよびアンタゴニストを含めた任意の試験化合物にも適用されることが理解される。さらに、これらのスクリーニングアッセイは、薬物の標的の検証および品質管理の目的のために有用である。
【0105】
6.典型的な治療的使用
ある特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、ActRIIBポリペプチドおよび/またはActRIIBリガンド(例えば、アクチビンまたはGDF8)の異常な活性に関連する疾患または状態を処置または予防するために使用することができる。ある特定の実施形態では、本発明は、処置または予防を必要とする個体を、個体に治療有効量の上記のActRIIBポリペプチドを投与することによって処置または予防する方法を提供する。これらの方法は、特に、動物、より詳細にはヒトの治療的処置および予防的処置を目的とする。
【0106】
本明細書で使用される、障害または状態を「予防する」治療剤は、統計サンプルにおいては、処置されていない対照試料と比較して、処置した試料における障害または状態の発生率を低下させる、または、処置されていない対照試料と比較して、障害または状態の1つまたは複数の症状の発症を遅延させる、もしくはその重症度を低下させる化合物を指す。本明細書で使用される「処置すること」という用語は、言及した状態の予防法、またはいったん確立された状態の寛解または排除を含む。
【0107】
本明細書において実証されている通り、ActRIIB−Fcにより、ミトコンドリアにおける脱共役を媒介するタンパク質であるUCP1の発現が促進され、代謝的に活性な脂肪組織または熱発生脂肪組織が導かれる。したがって、本明細書に開示されている組成物は、褐色脂肪組織または褐色脂肪細胞の欠乏、メタボリックシンドローム(シンドロームXとしても公知である)、糖尿病、高脂血症、高コレステロール血症、過食および過食症、高血圧症、動脈硬化症(冠動脈疾患または冠動脈心疾患)、心筋梗塞、うっ血性心不全、脳梗塞、脳血栓、呼吸器疾患(ピックウィック症候群など)、結腸癌、前立腺癌、乳癌、子宮内膜癌、腎臓癌、成長ホルモンが欠乏している被験体、正常変異低身長、ターナー症候群、ならびに全除脂肪体重の百分率として代謝活性の低下または安静時エネルギー消費の減少を示す他の病態、例えば、急性リンパ性白血病の小児、などのさまざまな障害を処置するために使用することができる。
【0108】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)を熱発生性脂肪細胞の形成および/または活性を促進するために使用する。上記の通り、白色脂肪組織内部の熱発生性、散在性の褐色脂肪組織および褐色脂肪細胞は、多数の、ミトコンドリアで発現されている脱共役タンパク質1(UCP)を含有する。高カロリーを摂取した、褐色脂肪細胞を欠く個体は、過剰なカロリー摂取を熱に変換することができず、したがって、やむを得ず、使用されない生化学的エネルギーを、一般には広がった白色脂肪組織として貯蔵する。1つまたは複数のActRIIBリガンド(例えば、GDF8)の機能に対するin vivoにおける遮断または拮抗により、散在性の貯蔵所内の褐色脂肪細胞または白色脂肪組織内部に分布した褐色脂肪細胞の熱発生活性を有効に増加させることができる。この手法は、本明細書で示されるデータによって確証され、支持され、それによって、ActRIIB−Fcタンパク質により、白色脂肪におけるUCP1の発現が誘導され、体組成全体が増強され、高脂肪食のマウスにおける代謝的な状態が改善されることが示された。
【0109】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)を、循環器疾患およびII型糖尿病が発生する危険性を増加させる障害および危険因子の組合せであるメタボリックシンドローム(シンドロームXおよびインスリン抵抗性シンドロームとしても公知である)の処置の一部として使用する。大部分の患者は高齢であり、肥満であり、座りがちであり、ある程度のインスリン抵抗性を有する。中心の(腹部または内臓の)脂肪症が、このシンドロームの重要な特徴である。
【0110】
関連する実施形態では、本発明の可溶性のActRIIBポリペプチドおよび他の組成物を、インスリン抵抗性および相対的にインスリンが欠乏していることに関連した血糖の上昇を特徴とするII型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病または成人発症型糖尿病としても公知である)の処置の一部として使用することができる。糖尿病における複雑な、多因子性の代謝的な変化は、多くの場合、多くの器官、最も重要なことに心臓血管系の傷害および機能損傷につながる。II型糖尿病は、多くの場合、肥満(腹部または内臓の脂肪症)、高血圧症、コレステロールの上昇、およびメタボリックシンドロームと関連する。II型糖尿病に対する重要な危険因子としては、加齢、高脂肪食、および座りがちな生活習慣が挙げられる。
【0111】
他の関連する実施形態では、本発明の可溶性のActRIIBポリペプチドおよび他の組成物を、多くの場合プラークと称される脂肪性の沈着物が蓄積することによって動脈壁が肥厚する慢性的な炎症性の状態である、アテローム性動脈硬化症の処置の一部として使用することができる。アテローム性動脈硬化症に対する危険因子としては、加齢、糖尿病、異常リポ蛋白血症、肥満(腹部または内臓の脂肪症)、および座りがちな生活習慣が挙げられる。
【0112】
可溶性のActRIIBポリペプチドは、メタボリックシンドロームを伴いやすい、リポジストロフィー障害に対しても使用することができる。重篤なインスリン抵抗性は、リポジストロフィーの遺伝的な形態および先天性の形態の両方に起因し得、後者の場合、抗レトロウイルス療法で処置された患者におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連リポジストロフィーを含む。
【0113】
対象のActRIIBポリペプチドは、さらに、肥満の発生を遅らせる、または予防するための治療剤としても使用することができる。この手法は、本明細書で示されるデータによって確証され、支持され、それによって、ActRIIB−Fcタンパク質により、高脂肪食のマウスにおける代謝的な状態が改善されることが示された。
【0114】
他の実施形態では、本発明は、動物において体脂肪含有量を制御するため、および、それに関連する状態、特に、それに関連する健康を損なう状態を処置または予防するための組成物および方法を提供する。本発明によれば、体重を制御する(調節する)ことは、体重を低下または増加させること、体重増加率を低下または上昇させること、または体重減少率を上昇または低下させることを指してよく、また、体重を積極的に維持すること、または有意に変化させないこと(例えば、別なふうに体重を増加または減少させる外的影響または内的影響に対して)も含む。本発明の一実施形態は、体重を制御することを必要とする動物(例えば、ヒト)に、ActRIIBポリペプチドを投与することによって体重を制御することに関する。
【0115】
特定の一実施形態では、本発明は、動物において体重を低下させる、および/または体重増加を低下させるため、より詳細には、肥満の危険性がある、または肥満に罹患している患者において肥満を処置する、または寛解させるための方法および化合物に関する。別の特定の実施形態では、本発明は、体重を増加させる、または保持することができない動物(例えば、消耗症候群の動物)を処置するための方法および化合物に関する。そのような方法は、体重量および/または体質量を増加させるため、または重量および/または質量の減少を低下させるため、または望ましくなく低い(例えば、不健康な)体重量および/または体質量に関連する、またはそれによって引き起こされる状態を改善するために有効である。
【0116】
WO 2006/012627およびWO 2008/097541において実証されている通り、本明細書に開示されている化合物により、筋肉の成長が刺激される。したがって、これらの化合物は、筋肉機能障害および代謝機能障害が重複している疾患または状態において特に有用であり得る。
【0117】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、可溶性のActRIIBポリペプチド)を、筋ジストロフィーに対する処置の一部として使用する。「筋ジストロフィー」という用語は、徐々に衰弱すること、ならびに骨格筋、および時には心筋および呼吸器筋が衰退することを特徴とする変性筋肉疾患の群を指す。筋ジストロフィーは、筋肉における微小な変化から始まる進行性の筋消耗および脱力を特徴とする遺伝的障害である。時間とともに筋肉が変性するにつれて、その人の筋肉の強度が減退する。さらに、筋肉量が減退すること、および身体活動が減ることが、カロリー摂取とエネルギー消費との間の不均衡に寄与し、過剰なエネルギーが白色脂肪組織として不健康に貯蔵されることにつながる。対象のActRIIBポリペプチドを含むレジメンで処置することができる典型的な筋ジストロフィーとしては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、エメリ−ドレフュス型筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)(ランドジー−デジェリーヌとしても公知である)、筋緊張性ジストロフィー(MMD)(シュタイネルト病としても公知である)、眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)、遠位型筋ジストロフィー(DD)、先天性筋ジストロフィー(CMD)が挙げられる。
【0118】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、フランスの神経科医であるGuillaume Benjamin Amand Duchenneにより、1860年代に最初に記載された。ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、1950年代に、DMDのこの変形について最初に記載したドイツの医師であるPeter Emil Beckerにちなんで名づけられた。DMDは、男性における最も頻度の高い遺伝性疾患の1つであり、3,500人の少年に影響を及ぼしている。DMDは、X染色体の短腕に位置するジストロフィン遺伝子が破損すると起こる。男性はX染色体を1コピーしか有さないので、ジストロフィン遺伝子を1コピーしか有さない。ジストロフィンタンパク質を有さないと、筋肉は収縮と弛緩のサイクルの間に容易に傷害を受ける。この疾患の初期では筋肉は再生によって補償されるが、その後、筋肉前駆細胞は進行中の傷害についていけず、健康な筋肉が、非機能的な線維脂肪性組織に置き換えられる。
【0119】
BMDは、ジストロフィン遺伝子における異なる突然変異に起因する。BMD患者はいくらかのジストロフィンを有するが、数量が不十分であるか、または質が悪いかのいずれかである。いくらかのジスロフィンを有することにより、BMDの人の筋肉は、DMDの人の筋肉と同じくらいひどく、または同じくらい急速に変性することから保護される。
【0120】
例えば、最近の研究により、in vivoでGDF8(ActRIIBリガンド)の機能を遮断または排除することにより、DMD患者およびBMD患者における少なくともある特定の症状を有効に処置することができることが実証されている。したがって、対象のActRIIBポリペプチドは、GDF8阻害物質(アンタゴニスト)として作用し、DMD患者およびBMD患者において、in vivoでGDF8および/またはActRIIBの機能を遮断する代替の手段を成すことができる。この手法は、本明細書で示されるデータによって確証され、支持され、それによって、筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて、ActRIIB−Fcタンパク質によって筋肉量が増加することが示された。
【0121】
同様に、対象のActRIIBポリペプチドにより、筋肉の成長を必要とする他の疾患状態において筋肉量を増加させるための有効な手段がもたらされる。例えば、ルー−ゲーリック病(運動ニューロン疾患)とも称されるALSは、脳と骨格筋をつなぐCNSの構成要素である運動ニューロンを攻撃する、慢性であり、不治であり、かつ止められないCNS障害である。ALSでは、運動ニューロンが変質し、最終的に死に、人の脳は正常に完全に機能性かつ機敏なままであるにもかかわらず、運動の命令が筋肉に到達しない。ALSを生じる大部分の人は40〜70歳である。脱力する最初の運動ニューロンは、腕または脚につながる運動ニューロンである。ALSの人は、歩行困難を有する可能性があり、物を落とす可能性があり、転倒する可能性がある、ろれつが回らない可能性があり、ならびに笑うことおよび泣くことを制御できない可能性がある。最終的に、肢の筋肉は、使われないことから委縮し始める。この筋肉の脱力が、衰弱性になり、人は、車いすが必要になる、またはベッドの外で機能できなくなる。大部分のALS患者は、疾患の発症から3〜5年で、呼吸不全または肺炎のような人工呼吸補助の合併症で死ぬ。この手法は、本明細書で示されるデータによって確証され、支持され、それによって、ActRIIB−Fcタンパク質により、ALSのマウスモデルの外見、筋肉量および寿命が改善されることが示された。
【0122】
ActRIIBポリペプチドによって誘導される筋肉量の増加も、筋消耗疾患に罹患している人のためになり得る。Gonzalez−Cadavidら(上記)は、ヒトにおいて、GDF8の発現が除脂肪体重と逆相関すること、および、AIDS消耗症候群の男性においてGDF8遺伝子の発現の増加が体重減少と関連することを報告した。AIDS患者においてGDF8の機能を阻害することにより、AIDSの少なくともある特定の症状を、完全に排除するとまではいかなくとも、軽減することができ、したがって、AIDS患者の生活の質が著しく改善される。
【0123】
加齢に伴う筋肉の損失である筋肉減少症は、多くの場合、メタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化症、脂質異常症、および他の加齢性の代謝的な状態とも関連する。ActRIIBポリペプチドによって誘導される筋肉量も、筋肉減少症に罹患している人のためになり得る。
【0124】
7.医薬組成物
ある特定の実施形態では、本発明の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)を、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化する。例えば、ActRIIBポリペプチドは、単独で、または医薬製剤(治療組成物)の成分として投与することができる。対象化合物は、ヒト医学または獣医学において使用するための任意の都合のよいやり方で投与するために製剤化することができる。
【0125】
ある特定の実施形態では、本発明の治療方法は、組成物を、移植片またはデバイスとして、局所的に、全身的に、または局部的に投与することを含む。投与する際、本発明において使用するための治療用組成物は、当然、発熱物質を含まない、生理的に許容される形態である。さらに、組成物は、例えば、組織傷害を有する部位である標的組織部位(例えば、骨、軟骨、筋肉、脂肪またはニューロン)に送達するために、被包されていること、または粘性の形態で注射されることが望ましい場合がある。局所投与は、創傷治癒および組織修復に適する場合がある。場合によって上記の組成物に同様に含めることができる、ActRIIBポリペプチド以外の治療的に有用な作用剤は、本発明の方法では、その代わりにまたはそれに加えて、対象化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)と、同時にまたは逐次的に投与することができる。
【0126】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、1種または複数種の治療用化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)を標的組織部位に送達することができ、発生中の組織のための構造をもたらし、最適に体内に再吸収され得るマトリックスを含んでよい。例えば、マトリックスにより、ActRIIBポリペプチドの緩慢な放出をもたらすことができる。そのようなマトリックスは、現在他の移植される医学的アプリケーションのために使用されている材料で形成されてよい。
【0127】
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容的な外見および界面特性に基づく。対象組成物の特定の適用により、適切な製剤が規定される。組成物のための潜在的なマトリックスは、生分解性のおよび化学的に定義された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ酸無水物であってよい。他の潜在的な材料は、生分解性であり、かつ生物学的に明確に定義された、例えば骨または皮膚のコラーゲンなどである。別のマトリックスは、純粋なタンパク質または細胞外基質の構成成分で構成されている。他の潜在的なマトリックスは、非生分解性であり、化学的に定義された、例えば、焼結したヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、または他のセラミックスなどである。マトリックスは、上記の種類の材料のいずれかの組合せ、例えば、ポリ乳酸とヒドロキシアパタイト、またはコラーゲンとリン酸三カルシウムで構成されてよい。バイオセラミックスは、例えばカルシウム−アルミン酸塩−リン酸塩など、組成を変更することができ、加工して孔サイズ、粒子サイズ、粒子の形状、および生分解性を変更することができる。
【0128】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、経口的に、例えば、それぞれが活性成分として所定量の作用剤を含有する、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味を付けた基剤、通常はショ糖およびアラビアゴムまたはトラガントを使用する)、粉末、顆粒の形態で、または、水性液もしくは非水性液中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油エマルション液もしくは油中水エマルション液として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはパステル剤(ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアラビアゴムなどの不活性な基剤を使用する)および/または口内洗浄剤などとして、投与することができる。作用剤は、巨丸剤、舐剤またはペースト剤としても投与することができる。
【0129】
経口投与するための固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒など)では、本発明の1種または複数種の治療用化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1種または複数種の薬学的に許容される担体、および/または以下のいずれかと混合することができる:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸など;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、および/またはアラビアゴムなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロールなど;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸塩、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど;(5)溶解遅延剤、例えばパラフィンなど;(6)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物など;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど;(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土など;(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物など;および(10)着色料。カプセル、錠剤および丸剤の場合では、医薬組成物は、緩衝剤も含んでよい。同種の固体組成物は、乳糖(lactose)または乳糖(milk sugar)などの賦形剤、ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどを使用するソフト充填ゼラチンカプセルおよびハード充填ゼラチンカプセル内の充填剤としても利用することができる。
【0130】
経口投与するための液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤(emulsifier)、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有してよい。不活性な希釈剤に加えて、経口用組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤(emulsifying agent)および懸濁剤、甘味料、調味料、着色料、香料、および保存料なども含んでよい。
【0131】
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにそれらの混合物を含有してよい。
【0132】
本明細書に開示されているある特定の組成物は、皮膚または粘膜のいずれかに局所的に投与することができる。局所用製剤は、皮膚または角質層への浸透賦活剤として有効であることが公知の多種多様の作用剤の1つまたは複数をさらに含んでよい。これらの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルアルコールまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンである。化粧品として許容される製剤を製造するために、追加的な作用剤をさらに含めることができる。これらの例は、脂肪、ワックス、油、色素、芳香剤、保存料、安定剤、および表面活性剤である。当技術分野で公知のものなどの角質溶解薬も含めることができる。その例はサリチル酸および硫黄である。
【0133】
局所投与または経皮投与するための剤形としては、粉末、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤、および吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体と、および必要であり得る任意の保存料、緩衝液、または噴霧剤と混合することができる。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、本発明の対象化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)に加えて、賦形剤、例えば、動物および植物の脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などを含有してよい。
【0134】
粉末およびスプレー剤は、対象化合物に加えて、賦形剤、例えば、乳糖(lactose)、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などを含有してよい。スプレー剤は、通例の噴霧剤、例えばクロロフルオロハイドロカーボンなど、および揮発性の非置換型炭化水素、例えば、ブタンおよびプロパンなどをさらに含有してよい。
【0135】
ある特定の実施形態では、非経口投与に適した医薬組成物は、1種または複数種のActRIIBポリペプチドを、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、意図されたレシピエントの血液との等張性を製剤に与える溶質または懸濁剤もしくは増粘剤を含有し得る、1種または複数種の薬学的に許容される滅菌の等張性の水溶液もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルション、または使用する直前に滅菌の注射可能な溶液または分散液に再構成することができる滅菌粉末と組み合わせて含んでよい。本発明の医薬組成物に利用することができる適切な水性担体および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なそれらの混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、分散液の場合では必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0136】
本発明の組成物は、アジュバント、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤(emulsifying agent)および分散剤なども含有してよい。さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって、微生物の作用を確実に予防することができる。例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤も組成物に含めることが望ましい場合がある。さらに、注射可能な医薬形態の持続的な吸収を、吸収を遅延させる作用剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどを含めることによってもたらすことができる。
【0137】
投薬レジメンは、主治医が本発明の対象化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)の作用を修飾するさまざまな因子を考慮することよって決定されることが理解される。さまざまな因子は、処置される疾患に左右される。
【0138】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示されているActRIIBポリペプチドまたは他の化合物をin vivoで産生させるための遺伝子療法も提供する。そのような療法は、ActRIIBポリヌクレオチド配列を、上で列挙した障害を有する細胞または組織に導入することによってその治療効果が実現される。ActRIIBポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスなどの組換え型の発現ベクターまたはコロイド分散系を使用して実現することができる。ActRIIBポリヌクレオチド配列を治療的に送達するためには、標的リポソームを使用することが好ましい。
【0139】
本明細書で教示した遺伝子療法のために利用することができるさまざまなウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または好ましくはRNAウイルス、例えばレトロウイルスなどが挙げられる。レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリのレトロウイルスの派生体であることが好ましい。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例としては、これらに限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられる。いくつもの追加的なレトロウイルスベクターは、多数の遺伝子を組み入れることができる。これらのベクターは全て、形質導入された細胞を同定し、生成することができるように、選択マーカーの遺伝子を移入すること、または組み入れることができる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を付着させることによって、標的に特異的に作出することができる。好ましいターゲティングは、抗体を使用することによって実現される。当業者は、特異的なポリヌクレオチド配列を、レトロウイルスのゲノムに挿入して、またはウイルス外被に付着させて、ActRIIBポリヌクレオチドを含有するレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にすることができることを理解するであろう。好ましい一実施形態では、ベクターを、骨、軟骨、筋肉またはニューロンの細胞/組織にターゲティングする。
【0140】
あるいは、組織培養細胞を、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって、レトロウイルスの構造遺伝子であるgag、polおよびenvをコードするプラスミドで直接トランスフェクトすることができる。次いで、これらの細胞を、対象遺伝子を含有するベクタープラスミドでトランスフェクトする。生じた細胞は、レトロウイルスベクターを培地中に放出する。
【0141】
ActRIIBポリヌクレオチドのための別の標的送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、巨大分子の複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含めた脂質に基づく系が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vitroおよびin vivoにおいて送達ビヒクルとして有用な人工的な膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンは、水性の内部に被包することができ、生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる(例えば、Fraley、ら、Trends Biochem. Sci.、6巻:77頁、1981年を参照されたい)。リポソームビヒクルを使用して効率的に遺伝子移入するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Mannino、ら、Biotechniques、6巻:682頁、1988年を参照されたい。リポソームの組成物は、通常、一般に、ステロイド、特にコレステロールと組み合わせたリン脂質の組合せである。他のリン脂質または他の脂質も使用することができる。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に左右される。
【0142】
リポソームの作製において有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドなどのホスファチジル化合物が挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。リポソームのターゲティングも、例えば、器官特異性、細胞特異性、および細胞小器官特異性に基づいて可能であり、当技術分野で公知である。
【実施例】
【0143】
本発明は、ここに概して説明され、単に本発明のある特定の実施形態および実施形態を例証する目的で含めた、本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。
【0144】
(実施例1)
ActRIIB−Fc融合タンパク質の生成
出願人らは、中間に最小のリンカー(3つのグリシンアミノ酸)を伴ってヒトまたはマウスのFcドメインと融合したヒトActRIIBの細胞外ドメインを有する可溶性のActRIIB融合タンパク質を構築した。この構築物を、それぞれActRIIB(20〜134)−hFcおよびActRIIB(20〜134)−mFcと称する。
【0145】
CHO細胞系から精製したActRIIB−hFcを以下に示す(配列番号5)
【0146】
【化6】

ActRIIB(20〜134)−hFcタンパク質およびActRIIB(20〜134)−mFcタンパク質を、CHO細胞系において発現させた。3つの異なるリーダー配列を検討した:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号7)
(ii)組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号8)
(iii)ネイティブ:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号9)。
【0147】
選択された形態は、TPAリーダーを使用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列を有する:
【0148】
【化7】

このポリペプチドは、以下の核酸配列によってコードされる(配列番号10):
【0149】
【化8】

CHO細胞が産生した物質のN末端を配列決定することにより、主要な配列である−GRGEAEが明らかになった(配列番号11)。特に、文献において報告された他の構築物は、−SGR...配列から始まる。
【0150】
精製は、例えば、任意の順番の以下の3つ以上を含めた、一連のカラムクロマトグラフィーステップによって実現することができた:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィー。精製は、ウイルス濾過および緩衝液の交換で完了することができた。
【0151】
HEK293細胞およびCOS細胞においても、ActRIIB−Fc融合タンパク質を発現させた。全ての細胞系からの材料および合理的な培養条件により、in vivoで筋肉を築く活性を有するタンパク質がもたらされたが、おそらく細胞系の選択および/または培養条件に関連して効力の変動性が観察された。
【0152】
(実施例2)
ActRIIB−Fc変異体の生成
出願人らは、ActRIIBの細胞外ドメインにおいて一連の突然変異を起こさせ、これらの変異体タンパク質を細胞外ActRIIBとFcドメインとの可溶性の融合タンパク質として作製した。バックグラウンドのActRIIB−Fc融合物は以下の配列を有する(Fc部分に下線が引かれている)(配列番号12):
【0153】
【化9】

N末端の短縮およびC末端の短縮を含めた、さまざまな突然変異を、バックグラウンドのActRIIB−Fcタンパク質に導入した。実施例1において提示されたデータに基づいて、これらの構築物は、TPAリーダーを用いて発現させる場合、N末端のセリンを欠くことが予想される。PCR突然変異誘発によってActRIIB細胞外ドメインにおいて突然変異を起こさせた。PCRの後、断片を、Qiagenカラムによって精製し、SfoIおよびAgeIを用いて消化し、ゲル精製した。これらの断片を、ライゲーションするとヒトIgG1との融合キメラが創出されるように、発現ベクターのpAID4(WO2006/012627)にライゲーションした。E.coli DH5 アルファを形質転換したら、コロニーを採集し、DNAを単離した。マウスの構築物(mFc)については、マウスIgG2aでヒトIgG1を代替した。全ての変異体について配列を検証した。
【0154】
変異体は全て、HEK293T細胞において一過性のトランスフェクションによって作製した。要約すると、500mlのスピナ中、HEK293T細胞を、容積250mlのFreestyle(Invitrogen)培地中、細胞6×10個/mlで準備し、一晩成長させた。次の日に、これらの細胞を、DNA:PEI(1:1)複合体を用いて、0.5ug/mlの最終的なDNA濃度で処理した。4時間後、250mlの培地を加え、細胞を7日間成長させた。細胞を遠心沈澱することによって条件培地を回収し、濃縮した。
【0155】
変異体を、例えば、プロテインAカラムを含めたさまざまな技法を使用して精製し、低pH(3.0)のグリシン緩衝液を用いて溶出した。中和した後、これらをPBSに対して透析した。
【0156】
CHO細胞においても、同様の方法体系によって変異体を作製した。
【0157】
変異体を、結合アッセイおよび/またはバイオアッセイで試験した。ある場合には、精製されたタンパク質ではなく条件培地を用いてアッセイを実施した。改変体は、例えば、公開特許出願WO 06/012627およびWO 08/097541に記載されている。そのような改変体は、本明細書に記載の方法において使用することができる。
【0158】
(実施例3)
高脂肪食を与えたマウスにおける、白色脂肪組織の熱発生特性に対するActRIIB(20〜134)−hFcの影響
出願人らは、高脂肪食を与えた雄のマウスにおいて、褐色脂肪細胞および他の代謝的な評価項目に対するActRIIB−Fcの影響を調査した。10週齢のC57BL/6マウスを、体重を釣り合わせ、ActRIIB(20〜134)−hFc(n=10)またはトリス緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクル(n=7)を用いて、10mg/kg、s.c.で、週2回、60日間処置した。この間中、マウスは、4.5%の脂肪を含有する標準の固形飼料の代わりに、58%の脂肪を含有する食餌を無制限に食べることができた。試験終了時に、精巣上体の脂肪パッドを採取し、定量的RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を使用して、白色脂肪の貯蔵所内に拡散的に分布している褐色脂肪細胞における熱発生の能力の、文書により十分に立証されたマーカーである脱共役タンパク質1(UCP1)をコードするmRNAのレベルを測定した(Cousinら、1992年、J Cell Sci 103巻:931〜942頁)。
【0159】
ActRIIB(20〜134)−hFcで処置することにより、一群の注目すべき代謝的な影響が引き起こされた。高脂肪食マウスでは、ActRIIB(20〜134)−hFcにより、精巣上体の脂肪におけるUCP1 mRNAのレベルが、ビヒクルと比較してほぼ9倍に増加し(図1;P<0.05)、これはC57BL/6マウスが、他のマウス系統と比較してひどく鈍い、重要な白色脂肪の貯蔵所内へのUCP1および褐色脂肪細胞の誘導を見せることを考慮すると、特に印象的な影響である(Guerraら、1998年、J Clin Invest 102巻:412〜420頁; Xueら、2007年、J Lipid Res 48巻:41〜51頁)。ActRIIB(20〜134)−hFcにより、有益な、血清を含まない脂肪酸濃度の30%の低下(p<0.001)ももたらされた。重要なことに、UCP1の上方制御には、ベースラインおよび48日目に核磁気共鳴(NMR)によって決定された通り、体組成に対するActRIIB(20〜134)−hFcの有益な影響が付随した。高脂肪食条件下で、ビヒクルで処置した対照における総脂肪量は、この48日の間で3倍になり、ActRIIB(20〜134)−hFcで処置することにより、この増加が40%削減された。48日目までに、総脂肪量はActRIIB(20〜134)−hFcで処置したマウスにおいて体重の26%であったのに対して、対照マウスでは39%であり、一方、除脂肪組織質量は、ActRIIB−Fcで処置したマウスにおいて体重の64%であったのに対して、対照マウスでは55%であった。したがって、最終結果は、高脂肪食の条件下での健康な体組成であった。
【0160】
(実施例4)
高脂肪食を与えたマウスにおける、白色脂肪組織の熱発生特性に対する短縮型改変体ActRIIB(25〜131)−hFcの影響
上記の試験において(実施例3)、出願人らは、高脂肪食条件下での、白色脂肪組織の熱発生特性および他の代謝的な評価項目に対する短縮型改変体ActRIIB(25〜131)−hFcの影響も調査した。
【0161】
出願人らは、短縮型融合タンパク質ActRIIB(25〜131)−hFc(図13〜14)を、ActRIIB(20〜134)−hFcに関して上記したものと同じリーダーおよび方法体系を使用して生成した。CHO細胞において発現させた後に精製した成熟タンパク質は、以下に示す配列を有する(配列番号6):
【0162】
【化10】

10週齢のC57BL/6マウスを、ActRIIB(25〜131)−hFcを10mg/kg、s.c.で用いて、または、トリス緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクルを用いて、週2回、60日間、処置した。この間中、マウスは、4.5%の脂肪を含有する標準の固形飼料の代わりに、58%の脂肪を含有する食餌を無制限に食べることができた。標準の固形飼料の食餌で維持した追加的なマウス群も、TBSビヒクルで処置し、食餌性の対照として追跡した。
【0163】
高脂肪食条件下で、ActRIIB(25〜131)−hFcで処置することにより、組織学的な変化、および熱発生の能力と一致した、白色脂肪組織における遺伝子発現プロファイルが誘発された。図2に示されている通り、精巣上体の白色脂肪の組織学的検査により、ActRIIB(25〜131)−hFcによって脂肪滴サイズが縮小し、褐色脂肪の特徴である多胞性の脂肪細胞のクラスターの形成が引き起こされたことが示された。さらに、この組織の免疫組織化学的な分析により、多胞性脂肪細胞および単房性脂肪細胞の両方において、ActRIIB(25〜131)−hFcによる処置の結果としてUCP1が広範に細胞質誘導されることが明らかになった(図2)。
【0164】
定量的RT−PCRによって決定された通り、付随的なこれらの組織学的な変化は、精巣上体の白色脂肪における重要な熱発生制御遺伝子および代謝制御遺伝子の発現における有意な変化であった。高脂肪食マウスでは、ActRIIB(25〜131)−hFcで処置することにより、UCP1 mRNAのレベルが、ビヒクルと比較して60倍超に上昇し(図3)、これは、上記の通り、この系統のマウスが、他のマウス系統と比較して、ひどく鈍い、重要な白色脂肪の貯蔵所内へのUCP1および褐色脂肪細胞の誘導を見せるので、特に印象的な変化である。さらに、ActRIIB(25〜131)−hFcで処置することにより、高脂肪食によって誘導される代謝的な傷害を防ぎ(Pflugerら、2008年、Proc Natl Acad Sci USA 105巻:9793〜9798頁)、脂肪酸の動員の重要な調節に関係があるとされている(Rodgersら、2008年、FEBS Lett 582巻:46〜53頁)、エネルギー感受性マスター制御因子(脱アセチル化酵素)であるサーチュインSIRT−1(サイレント情報制御因子2、ホモログ1)をコードするmRNAのレベルが上昇した(図4)。著しいことに、ActRIIB(25〜131)−hFcで処置することにより、文書により十分に立証されたSIRT−1の標的であり、今度は、ミトコンドリアの生合成および褐色脂肪組織における熱発生の能力に必要な多くの遺伝子の発現を調節する(Uldryら、2006年、Cell Metab、3巻:333〜341頁)、PGC−1α(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ活性化補助因子1α)をコードするmRNAのレベルも上昇した(図5)。特に、白色脂肪細胞においてPGC−1αを強制的に発現させることにより、褐色脂肪細胞におけるものと酷似している、UCP1を含めた、遺伝子発現の熱発生プログラムが誘導されることが示されている(Hansenら、2006年、Biochem J 398巻:153〜168頁)。本試験では、ActRIIB(25〜131)−hFcにより、高脂肪食条件下での白色脂肪組織におけるPGC−1α遺伝子の発現が、標準食を与えたマウスからの発現と区別できないレベルにまで回復した(図5)。
【0165】
処置に関連づけられる追加的な変化は、白色脂肪組織における発現プロファイルの変化と、有益なホルモンの影響および代謝的な影響との間の顕著な関連を構成する。したがって、精巣上体の白色脂肪において、ActRIIB(25〜131)−hFcにより、SIRT−1の標的およびアディポネクチンの発現の重要な誘導因子のどちらでもある転写因子(Qiaoら、2006年、J Biol Chem 281巻:39915〜39924頁)であるFoxo−1(フォークヘッドボックスを含有する、タンパク質Oサブファミリー1)をコードするmRNAのレベルが上昇した(図6)。アディポネクチンは、脂肪量/肥満と逆に濃度が変動する脂肪由来のホルモンであり、標的組織において重要なインスリン感作作用を発揮する(Yamauchiら、2001年、Nat Med 7巻:941〜946頁; Maedaら、2002年、Nat Med 8巻:731〜737頁; Kadowakiら、2005年、Endocr Rev 26巻:439〜451頁)。Foxo−1 mRNAの誘導と一致して、ActRIIB(25〜131)−hFcで処置することにより、精巣上体の白色脂肪におけるアディポネクチンmRNAのレベル(図7)ならびにアディポネクチンの循環濃度(図8)が上昇した。重要なことに、これらの変化は、ActRIIB(25〜131)−hFcで処置したマウスにおいて、循環インスリン(図9)、トリグリセリド、遊離の脂肪酸、高密度リポタンパク質(HDL)、および低密度リポタンパク質(LDL)の強い減少を伴い、これらのパラメータのほぼ全ての正常化を導いている。最終的に、上述の影響は、ベースラインおよび48日目に核磁気共鳴(NMR)によって決定された通り、体組成における有益な変化を伴った。詳細には、ビヒクルで処置した対照における総脂肪量は、高脂肪食条件下で、この48日の間で3倍になり、ActRIIB(25〜131)−hFcで処置することにより、この増加がほぼ40%削減された。要約すると、高脂肪食条件下で、ActRIIB(25〜131)−hFcで処置することにより、1)熱発生の能力と一致した、白色脂肪組織における組織学的な変化および遺伝子発現プロファイル、2)広範囲のホルモンパラメータおよび代謝的なパラメータにおける有益な変化、および3)体組成の改良がもたらされた。
【0166】
(実施例5)
高脂肪食を与えたマウスにおける、褐色脂肪の貯蔵所に対するActRIIB(25〜131)−mFcの影響
別の試験において、出願人らは、高脂肪食条件下での、肩甲骨内の褐色脂肪の貯蔵所の性質に対する、短縮型改変体ActRIIB(25〜131)−mFcの影響を調査した。9週齢のC57BL/6マウスを、ActRIIB(25〜131)−mFc(n=20)を10mg/kg、s.c.で用いて、またはトリス緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクル(n=10)を用いて、週2回、60日間、処置した。投薬を開始する前の最初の7日間、マウスは、4.5%の脂肪を含有する標準の固形飼料の代わりに、58%の脂肪を含有する食餌を無制限に食べることができた。標準の固形飼料の食餌で維持した追加的なマウス群(n=10)も、TBSビヒクルで処置し、食餌性の対照として追跡した。
【0167】
標準食と比較して、高脂肪食により、肩甲骨間の褐色脂肪組織の貯蔵所においていくつかの注目すべき変化がもたらされ、ActRIIB(25〜131)−mFcで処置することにより、これらの変化のそれぞれが、完全に、または広く逆転した。詳細には、高脂肪食により、その色が赤色から淡紅色に明るくなっただけでなく、肩甲骨間の貯蔵所の明白な拡大が引き起こされた(図10)。この食餌誘導性の拡大は、褐色脂肪の貯蔵所の質量が倍増したこと(図11)および密度が低下したこと(図12)を反映した。貯蔵所の密度は、マウスのサブセット(n=群当たり4)に対するin situでのマイクロコンピュータ断層撮影法(microCT)によって決定し、核磁気共鳴(NMR)によって決定された全体脂肪の百分率は、群の平均に近かった(全てのマウスをNMRによって走査した。どんな場合でも、ActRIIB(25〜131)−mFc処置により、褐色脂肪量(図11)および褐色脂肪密度(図12)における食餌誘導性の変化が完全に逆転したが、貯蔵所のサイズおよび色(図10)における食餌誘導性の変化は大きく逆転した。これらの結果により、高脂肪食条件下で、ActRIIB(25〜131)−mFcにより、健康な褐色脂肪機能と相関する可能性がある性質が大きく、または完全に回復し、したがって、褐色脂肪の貯蔵所の全体のサイズが縮小するにつれて褐色脂肪の質が改善されることが示されている。
【0168】
総合すると、これらのデータにより、可溶性のActRIIB−Fc融合タンパク質を、TGFファミリーのリガンドによるシグナリングのアンタゴニストとして使用して、熱発生褐色脂肪細胞の形成および/または活性を増加させ、およびそれによって、高カロリー摂取、および、その上潜在的に、他の条件によって悪化する代謝的な状態を処置することができることが示されている。
参照による組み込み
本明細書で言及した全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が、具体的にかつ個別に、参照により組み込まれることが示されたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
主題の特定の実施形態が考察されているが、上記の明細書は例示的であり、限定的ではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を概観すれば、多くの変形が当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を、均等物の全範囲と一緒に、および、明細書を、そのような変形と一緒に参照することによって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱発生性脂肪細胞の増加を必要とする患者において熱発生性脂肪細胞を増加させるための方法であって、有効量の、
a.配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号3の核酸とハイブリダイズする核酸によってコードされるポリペプチド
からなる群から選択される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが二量体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、ActRIIBに対して異種性の部分を含む融合タンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、免疫グロブリンの定常ドメインと融合している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、免疫グロブリンのFc部分と融合している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫グロブリンがヒトIgG1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号5または6の配列を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が代謝障害を有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が筋肉障害および代謝障害を有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物を投与することにより、処置される患者の脂肪細胞におけるUCP−1の発現が促進される、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記UCP−1の発現が、白色脂肪組織において増加する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
熱発生性脂肪細胞の増加を必要とする患者において熱発生性脂肪細胞を増加させるための方法であって、有効量の、
a.ActRIIBのアンタゴニスト;
b.ミオスタチンのアンタゴニスト;
c.アクチビンのアンタゴニスト;
d.GDF11のアンタゴニスト;
e.Nodalのアンタゴニスト;および
f.GDF3のアンタゴニスト
からなる群から選択される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記化合物がActRIIBのアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ActRIIBのアンタゴニストが、
ActRIIBに結合する抗体および
ActRIIBをコードする核酸とハイブリダイズし、ActRIIBの産生を阻害する核酸
からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物がミオスタチンのアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ミオスタチンのアンタゴニストが、
ミオスタチンに結合する抗体、
ミオスタチンをコードする核酸とハイブリダイズし、ミオスタチンの産生を阻害する核酸、および
ミオスタチンのプロペプチドまたはその改変体を含むポリペプチド
からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物がアクチビンのアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物が、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンEから選択されるアクチビンタンパク質のアンタゴニストである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アクチビンのアンタゴニストが、
アクチビンに結合する抗体、および
アクチビンをコードする核酸とハイブリダイズし、アクチビンの産生を阻害する核酸
からなる群から選択される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物がGDF3のアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記GDF3のアンタゴニストが、
GDF3に結合する抗体、
GDF3をコードする核酸とハイブリダイズし、GDF3の産生を阻害する核酸、および
GDF3のプロペプチドまたはその改変体を含むポリペプチド
からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物がGDF11のアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記GDF11のアンタゴニストが、
GDF11に結合する抗体、
GDF11をコードする核酸とハイブリダイズし、GDF11の産生を阻害する核酸、および
GDF11のプロペプチドまたはその改変体を含むポリペプチド
からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物がNodalのアンタゴニストである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記Nodalのアンタゴニストが、
Nodalに結合する抗体、
Nodalをコードする核酸とハイブリダイズし、Nodalの産生を阻害する核酸、および
Nodalのプロペプチドまたはその改変体を含むポリペプチド
からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図2】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−529436(P2012−529436A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514233(P2012−514233)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037779
【国際公開番号】WO2010/144452
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】