熱的に結合したMOV過電圧要素とPPTC過電流要素を有する回路保護デバイス
複合電気回路保護デバイス(10)において、PPTC抵抗ホットゾーンは、MOVに対向する主平面箔電極から十分に離れて形成され、それによって、MOVからPPTC抵抗への熱移動を調整できるように、MOV要素からPPTC要素への熱移動を調整するための熱質量体材料(13)を挿入することによって、平面PPTC要素(12)と平面MOV要素(14)との間の熱的結合を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面ポリマー正温度係数(PPTC:polymeric positive temperature coefficient)過電流要素(又は素子)に不可逆的な損傷を生じさせることなく、平面金属酸化物バリスタ(MOV:metal oxide varistor)過電圧要素が不可逆的に損傷を受ける前に、MOV要素内で生じた熱を効果的に移動(又は移送)して、PPTC要素を遮断するように、平面ポリマー正温度係数(PPTC)過電流要素と熱的に結合する、平面金属酸化物バリスタ(MOV)過電圧要素を含み、過電圧/過電流過渡条件に対して保護する、複合電気回路保護デバイス(機器又装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
熱的結合関係にある過電圧保護要素と過電流保護要素を含む複合回路保護デバイスは従来から知られている。このような要素間の熱的結合をもたらす場合、その設計手法は、発熱要素から熱起動要素への熱移動を最大化することである。過電圧保護要素の一例として金属酸化物バリスタ又は“MOV”が知られている。また、過電流保護デバイスの一例としてサーミスタが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2に開示される直列接続サーミスタと、並列又はシャント接続MOVとを用いる複合デバイスは、バルク材料(サーミスタの場合、例えば、チタン酸バリウム)から中実円筒形スラグとして形成されるサーミスタとバリスタを、シート状金属スペーサによって、端と端で接続し、例えば、デジタルマルチメータ等の電子計測デバイスを、測定範囲外の過電圧インパルス事象や測定範囲外の過電流状態から保護するために、「熱移動を最適化するための」複合回路保護デバイスを形成する。
【0003】
サーミスタ−バリスタ複合保護デバイスのもう一つの例が、特許文献3に開示されている。この特許の図3及び図4は、内部の円筒状PPTC要素を囲み、直接接触するMOV円筒状要素を含んで成るヒューズデバイスを説明する。
【0004】
MOVは、典型的には主に酸化亜鉛と他の微量な金属及び酸化物を含む、電圧依存性がある非線形電気要素である。MOVを構成する混合材料は、焼結操作で非常に高い圧力と温度を加えられ、それにより複雑な亜鉛酸化物ミクロ組織を有する薄いディスク(又は円盤)等の最終的な物理形状に成形される。MOVの主面は、そこに作るべき端子リード又は他の接続を可能にするために、導電性金属(例えば、銅又は銀−ガラス)の形成又は堆積が設けられる。MOVは、逆並列接続のツェナーダイオードのなだれ降伏特性に似たI−V特性を有することが望ましい。実際には、各々のMOVは、亜鉛酸化物の粒界に多数の半導体接合部を含むので、電圧を公称レベルに固定しながら円盤の表面全体にわたりかなりの熱を潜在的に発生させて、MOVは、過電圧状態に応じて素早く作動するからである。従って、この分散した熱をより動作の遅い過電流保護要素、最も好ましくはポリマー正温度係数(PPTC)抵抗要素、に効率的な方法で移動し、それによって、PPTC抵抗デバイスが非常に高い抵抗状態になる(又はトリップする:trip)ことを加速することが望ましい。
【0005】
独立型のポリマーPTCデバイスは、既知である。特に有用なデバイスは、PTC導電性ポリマー、即ち、有機ポリマーと、その中に分散又は分布した粒子状導電性充填材(例えば、カーボンブラック)又は金属もしくは導電性金属化合物からできているPTC要素を含む。本明細書では、これらのデバイスを、ポリマーPTC、PPTC抵抗(又は抵抗)、PPTCデバイス及び/又はPPTC要素と呼ぶ。適当な導電性ポリマー組成物及び構成成分並びにその製造方法は、例えば、特許文献4(van Konynenburg他)、特許文献5(Fouts他)、特許文献6(Au他)、特許文献7(Deep他)、特許文献8(van Konynenburg他)、特許文献9(Evans他)、特許文献10(Baigrie他)、特許文献11(Chandler他)、特許文献12(Chu他)、特許文献13(Wartenberg他)及び特許文献14(Toth他)に開示されており、これらの開示は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0006】
本明細書で使用する用語「PTC」とは、R14は、14℃域(幅又は範囲)の終了抵抗値と開始抵抗値との比、R100は、100℃域の終了抵抗値と開始抵抗値との比、R30は、30℃域の終了抵抗値と開始抵抗値との比とする場合、少なくとも2.5のR14値及び/又は少なくとも10のR100値を有する物質組成物を意味し、及び少なくとも6のR30値を有する物質組成物であることが好ましい。一般に本発明のデバイスに用いられる組成物は、これらの最小値よりもはるかに大きな抵抗値の増加を示す。
【0007】
ポリマーPTC抵抗デバイスは様々な用途に使用され、特に回路保護用途に有用であり、過電流及び/又は温度によって生ずる破壊から電気部品を防ぐ為の遠隔リセット可能なデバイスとして機能する。このような方法で保護される部品には、モータ、バッテリー、充電器、スピーカー、自動車の配線用ハーネス、電気通信設備及び回路、並びに他の電気、電子部品、回路及びデバイスが含まれる。このようなPPTC抵抗要素、部品及びデバイスの用途は近年急速に広まっており、増え続けている。
【0008】
PPTC抵抗デバイス又は要素に、ツェナーダイオード、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、及び電圧/電流調整器を形成するより複雑な集積回路等(同一出願人による特許文献15(Thomas他)によって教示及び開示に例示されることによって例示される)の電子部品との保護的な電気接続や熱接触を設けることが知られている。特許文献15の開示は、参照することで、本明細書に組み込まれる。更に、特許文献16(Whitney他)及び特許文献17(Sato)も参照。また、例えば、電圧依存性抵抗器等の他の回路要素と熱伝導性電気絶縁材料によって熱的に結合したPPTC要素を開示する同一出願人による特許文献18(Fahey他)も留意されたい。
【0009】
十分な電流がPPTCデバイスを通過すると、それは臨界値又は遮断値(又はトリップ値:trip value)に達し、ほとんどの場合、非常に大きな熱部分(及び電圧降下)がデバイスの非常に小さな体積部分に起こる。この小さな部分を、本明細書では、「ホットライン」又は「ホットゾーン」と呼ぶ。例えば、特許文献19(Middleman他)を参照されたい。PPTC層の厚さを増大させると保護デバイスが高電圧に耐える能力は増大すると一般に理解されているが、我々は、既存のデバイス構造を用いてPPTC層の厚さを単に増やすことは、十分に高い耐圧を有する回路保護デバイスをもたらさないことを見出した。従って、改良された回路保護デバイスを実現するために、PPTC抵抗要素の過電流保護特性とMOVの過電圧保護特性とを、両保護要素の利益を一つの複合デバイス内に相乗的に実現する、効果的な方法で組み合わせることが望ましい。
【0010】
他のPTC材料として、例えば、チタン酸バリウム等のドープしたセラミックスが知られているが、電源保護用途では、PTC導電性ポリマー材ほど一般に有用とされていない。これは特に、セラミックスの非動作、休止抵抗が高く、またそのキュリー遷移温度レベルがPPTC抵抗の高抵抗状態への遮断に関する遷移温度より高いためである。
【0011】
電気通信分野では、通信機器の突起や環状ワイヤーは、例えば、落雷又はAC電源の誘導又は接触等の高電位源を何らかの理由で誘起する、又は直接これらと接触する場合がある。電気通信用保護デバイスは、高電圧と、このような場合に出会う結果として発生する高電流に耐えることが出来なければならない。従来、高電圧用途、特に電気通信分野において、リード型PPTCデバイスが使用された。従来のリード型PPTCデバイスは、回路基板からリードを介して金属箔電極に電流を送る。リードは、端子として、またPPTCデバイスの金属箔電極への相互接続として、役を果たす。従来のリード型デバイスは、対称性を有するので、電気伝導は、向かい合って面する金属箔電極に直角又は垂直なPTC複合材料を通る方向に起こる。従って、熱ホットゾーン(及び最も電位差の大きなゾーン(又は領域))は、PPTC抵抗器の金属箔から一般的に等間隔かつ平行な薄い平面領域として、見かけ上形成される。
【0012】
前述の特許文献3の教示は、ボルト形ヒューズ構造体の内でMOV円筒層と直接接触するPPTC円筒層を説明するが、我々は、例えば、対向するMOVデバイスの平面と直接接続する平面PPTC積層デバイスを配置すること等によって、複合デバイス故障の高い可能性を伴うことなく、MOV要素からPPTC要素への熱移動を最適化又は最大化することによって、満足な結果を得られないことを見出した。我々は、この故障の可能性は、PPTC要素の主箔電極がMOVの主面に直接接触するように位置する場合、MOV内で発生する熱がPPTC抵抗のホットゾーンを主箔電極の近傍に移動して、PPTC要素の電圧破壊とそれに伴う故障を直接もたらすという事実に起因すると考える。
【0013】
逆に言えば、PPTC要素とMOV要素との熱的結合が乏しい又は本質的に存在しない場合、過電圧事象及びPPTC要素の故障によって生ずる過電流により、MOV要素は故障して、不可逆的故障からMOVを保護する十分な時間発熱し、トリップし得る。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,379,176号
【特許文献2】米国特許第5,379,022号
【特許文献3】米国特許第6,282,074号
【特許文献4】米国特許第4,237,441号
【特許文献5】米国特許第4,545,926号
【特許文献6】米国特許第4,724,417号
【特許文献7】米国特許第4,774,024号
【特許文献8】米国特許第4,935,156号
【特許文献9】米国特許第5,049,850号
【特許文献10】米国特許第5,250,228号
【特許文献11】米国特許第5,378,407号
【特許文献12】米国特許第5,451,919号
【特許文献13】米国特許第5,747,147号
【特許文献14】米国特許第6,130,597号
【特許文献15】米国特許第6,518,731号
【特許文献16】米国特許第3,708,720号
【特許文献17】米国特許第6,700,766号
【特許文献18】米国特許第4,780,598号
【特許文献19】米国特許第4,317,027号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
我々は、PPTC抵抗(抵抗器又はレジスタ)のホットゾーンがMOVに対向する箔電極の主平面から確実に(又は常に)離れて形成され、それによって、MOV要素からPPTC抵抗要素への熱移動を厳しく調整できるような方法で、例えば、金属スペーサ及び/又ははんだ(いずれも単独又は伝導性もしくは非伝導性接着剤との組み合わせ)もしくは他の手段等による熱質量体材料を、平面的PPTC要素と平面的MOV要素との間に直接挿入することによって、平面的PPTC要素と平面的MOV要素との間の熱的接続を制御できることを見出した。
【0016】
従って、本発明の一般的な目的は、MOV要素が不可逆的に損傷(又は故障)する前に、それによってPPTC要素に不可逆的な損傷を生じること無く、MOV要素内で発生した熱を効果的に移動して、PPTC要素を遮断するように、MOV要素からの熱の移動を調整して複合電気回路保護デバイスのPPTC要素を遮断するための熱質量体を提供することである。
【0017】
本発明のもう一つの目的は、PPTC要素とMOV要素を分離し、MOV要素からPPTC要素への熱移動を調整するための熱質量体材料を含む単一複合電気回路保護デバイスにおいて、両方の保護要素の十分な利益を相乗的に実現する有効な方法で、PPTC要素の過電流保護特性とMOV要素の過電圧保護特性を結合することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、先行技術の限界と欠点を克服するように、PPTC抵抗の主面と、対向するMOV要素の主面を電気的及び熱的に結合(又は接合)するための熱質量体材料を含む複合電気回路保護デバイスを提供することである。
【0019】
本発明の原理に基づく複合回路保護デバイスは、
第一及び第二主平面、前記第一主平面に形成され、それと電気的に密接接触(又は接続)する第一電極、及び前記第二主平面に形成され、それと電気的に密接接触する第二電極を有するPPTC抵抗要素;
第三及び第四電極主平面を有するMOV要素;
前記PPTC及び前記MOVを分離する空間を形成しそこを占める所定の形状と厚さの熱質量体材料及び前記第二電極と前記第三電極主平面を接続するためのコネクタ要素(又は接続要素);
前記第一電極にデバイス第一端子接続部;及び前記第四電極にデバイス第二端子接続部とを含む。
【0020】
一つの要旨において、本発明は二端子デバイスを含み、もう一つの要旨において、本発明は、第三端子が前記コネクタ要素に設けられる三端子デバイスを含んで成る。
【0021】
関連する要旨において、熱質量体材料は、金属プレート(又は板)もしくははんだ材料、又はコネクタ要素も形成するコネクタリード(又は接続リード)である。代わりに、スペーサ要素は、伝導性又は非伝導性エポキシ樹脂スペーサ材料を囲む、又はこれと協働しても良い。熱質量体材料の厚さは、最も好適には0.28mm(0.011インチ)と2.8mm(0.11インチ)の範囲内にある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のこれ等の目的、利点、要旨及び特徴は、添付図面と併せて示される好適な実施形態の詳細な記述を考察することで、より明確に理解されるであろう。
【0023】
本発明の原理に基づく、二端子電気回路保護デバイス10を、図1の電気回路概略図に示す。複合デバイス10は、平面的PPTC抵抗要素12と平面的MOV要素14を含む。本発明の原理に基づいて、PPTC要素12とMOV要素14は、電気的に直列接続し、更に中間の熱質量体材料13を介して熱的に接続する。二端子複合デバイス10は、第一デバイスコネクタリード又はパッド16と第二デバイスコネクタリード又はパッド18を有する。複合デバイス10は、電源装置導体に接続されるリード16と帰路線又は接地線に接続されるリード18を有するシャント(分路又は分流器:shunt)保護回路として機能することを目的とする。典型的には、二端子デバイス10は、例えばアンダーライター・ラボラトリーズ(Underwriter Laboratories)標準番号UL1449等の種々の工業規格及び規制基準に要求される、過電流/過電圧条件を順守(又は準拠)することを確保するために、例えば、モータ、電源コード、制御システム(又は施設)のサージ保護等の産業用途に使用される。
【0024】
図2の電気回路概略図に、複合三端子回路保護デバイス11を示し、それは、例えば、電気通信センター施設のバッテリー電圧源13等の電源装置に接続した供電入力リード16、PPTC要素12とMOV要素14とに共通する電気的節を例えば、電気通信回路又は設備等の電気負荷15の入力に接続する供電出力リード17、及び電源装置13と電力負荷15の帰路線の両方に接続した帰路リード18を含む。それ以外においてデバイス11は、図1のデバイス10と本質的に同じである。図2は、例えば、雷からの交流電流、交流誘導又はショート等の過電圧/過電流の発生源19、及び常時開スイッチ21として描かれた間欠性の発生源(又は要因)を含む。通常、PPTC要素12は、リード16と17の間で非常に低い直列抵抗を示し、またMOV要素14は、リード17と18の間で非常に高い並列抵抗を示し、保護デバイス11は、休止し、電源13と電気負荷15に対し電気的に透明な状態にある。しかし、過電圧/過電流状態が、発生源19/スイッチ21によって引き起こされた場合、MOV要素14は、非常に素早く作動し、負荷15に到達する電圧を、定格最大電圧レベルに制限する。電圧を制限する際、MOV要素14にはかなりの熱が発生するが、その熱はMOV要素が損傷する前に、PPTC要素が大量の熱を急激に受ける事によって損傷することなく、熱質量体13を経由して制御された状態でPPTC要素12に移送され、PPTC要素の高インピーダンス状態への遮断(又はトリップ)を加速する。三端子デバイス11は、例えば、UL60950、TIA−968−A、ITU−TK.20/K.21等の基準に準拠した電気通信用途、又は遮断表示機能が第三コネクタリード17で検知され、他の表示やアラームの制御に用いられる工業途における過電流及び過電圧複合保護に良く適する。ある種の回路応用では、図2の三端子直列(又は一連)シャント回路保護デバイス11の代わりに、図1のシャント回路保護デバイス10で置き換えることが出来る事は当業者にとって明白であろう。
【0025】
図3の構造図について、複合電気回路保護デバイス60は、保護用熱質量体13を用いることなく、PPTC要素12をMOV要素14と熱的に直接接触させて配置することに起因する問題を説明する。図3の例示的デバイス60において、平面的PPTC要素12は、コネクタリード16に接続領域を提供する上箔層22、底箔層24、及び上箔層22と底箔層24との間に挟まれたPPTC材料層26を含み、常套のPPTC構造配置である。底箔層24は、例えば、セラミック製MOV14の主面34上に焼き付け印刷することで形成されるガラス−銀隆起平坦接続領域32に直接固定されている。(同様の平坦域36は、MOV14の反対側の主面38にもあり、コネクタリード18のために接続領域を提供する。)公称動作条件では、点線28で示すホットゾーンがPPTC材料層26中で、箔層22と24から等距離の位置に存在する。しかし、デバイスの端子16と18の間で過電圧状態が起こると、MOV14はそのニー電圧(knee voltage)特性で伝導し、かなりの量の電気エネルギーを吸収し始め、吸収されたエネルギーを熱に変換する。この熱は、PPTC要素12に直接移送され、(直線28下方の)破線28Aで示すように、ホットゾーンをMOV要素14側に向けて動かす。ホットゾーンが底箔24に近づくため、PPTC要素の破壊電圧が低くなり、PPTC要素12の不可逆的故障をもたらし得る。本例ではホットゾーンが破線28Aで示すように箔電極24の方向に逸脱するが、アーク放電により炭化し導通化したアーク痕がPPTCポリマー層26中に形成され、PPTC要素12、そして複合デバイス60の不可逆的な故障を招く場合もある。従って、図3は、MOV要素14からPPTC要素12への最適又は最大の熱移動は、一又はそれ以上のPPTC抵抗要素を用いる決して満足なものではない複合回路保護デバイスを生ずる理由を説明する。
【0026】
一方、PPTC要素12が、MOV要素14と熱的に十分結合していない場合、PPTC要素12が、過電流による、その内部からの加熱の結果遮断(又はトリップ:trip)する前に、MOV要素14は、容易に過熱し、故障する。これにより、MOV要素14が不可逆的に故障し、図1の二端子複合保護デバイス10又は図2の三端子複合保護デバイス11が故障する結果となる。
【0027】
本発明をする際に、我々は、平面的PPTC要素への熱移動を、高電圧過渡条件に応じて、MOV要素を特徴付ける温度時間曲線に関して、調整又は制御しなければならないことを見出した。更に我々は、平面的PPTC要素12と平面的MOV要素14との間の空間に、熱移動材料を含む熱質量体13を設けることによって、PPTC要素のホットゾーンを過度に変形することなく、またMOV要素の不可逆的な故障を生ずることなく、PPTC要素へ移送される熱量が適切となるように、MOV要素14からPPTC要素12への熱移動を、調整及び制御することができ、複合デバイス10又は11は、特に高電圧電気通信分野において、回路保護の業界標準に適合するように行えることを見出した。
【0028】
熱質量体の厚さは、使用材料の種類、熱質量体材料の熱伝導性、及びデバイスの形状に依存する。不均一形状や異形(例えば、テーパ形状)にも適合させるために、厚さは平均厚さとする。一般に、熱質量体は、0.013〜6.35mm(0.0005〜0.25インチ)、好ましくは0.025〜5.1mm(0.001〜0.2インチ)、特には0.25〜5.1mm(0.01〜0.2インチ)、とりわけ0.25〜1.3mm(0.01〜0.05インチ)の厚さを有する。MOVの平均厚さは、9.5〜10.1mm(0.37〜0.40インチ)である場合、有用なデバイスが製造されるが、他のMOVの厚さを用いることができる。
【0029】
図4、5、5A、6、及び7A、7B、7C及び7Dでは、図3から本質的に変更されていない要素は、図3で与えた参照符号と同一の符号を有する。図4は、熱質量体がPPTC要素12をMOV要素14から分離するための金属スペーサ42を含んで成るデバイス40を説明する。
【0030】
図5は、熱質量体13が、コネクタリード17の平坦化したパドル部17Aと、この平坦パドル部分17を囲むはんだ充填物46を含むデバイス44を説明する。図5Aは、コネクタリード17が、圧印(鋳造又はコイニング:coining)又は成形(型押し、プレス成形、打ち抜き加工又はスタンピング:stamping)により、わずかにテーパ状(又は先細り)となった端部17Bを有し、PPTC要素12がMOV要素14に対し若干の角度で取り付けられるデバイス44Aを説明する。図5Aは、二つの要素12及び14が、図5の例の場合のように、完全に同一面上である必要はないことを説明する。図5及び5Aの場合、スペーサを形成するワイヤー端部を平坦化することができる、又は鋳造又はプレス成形を用いて又は用いないで、例えば、ジグザグ形状、鉤形状、ループ形状その他好適な形状等の、所望のスペーサを構築する他の適する形状に成形できることは当業者に明らかである。
【0031】
図6は、接着剤の小球又はドット(又は少量)50を、配置し熱硬化することによって、PPTC要素12をMOV14から離すデバイス48を説明する。中央のスペーサ材料50は、熱的及び/又は電気的に伝導性でも非伝導性でもよい。はんだリング52は、中央スペーサドット50を囲み、PPTC要素12とMOV要素14の対向する主面間の電気的接続と同時に制御された熱接続をもたらす熱質量体13を含んで成る。
【0032】
当業者であれば、容易に理解され、正しく認識できるように、本発明の二端子及び三端子複合回路保護デバイスは、コネクタリードと保護コーティング(又は被覆)を用いて形成してよく、又は直接表面実装用に形成してよい。
【0033】
デバイス40、44、44A、48を含む一連の複合保護デバイスを組み立てた。デバイスのいくつか(全てではない)は、一般に本発明の原理に基づき、PPTCチップ12、熱質量体13、及びMOVディスク14を備える。例えば、デバイス40は、約5.5mm×5.5mm×2.2mmの寸法を有するPPTC要素、約0.29mm(0.0115インチ)の厚さを有する金属スペーサ要素42、及び10mmのディスク直径と1.3mmの厚さを有するディスク状(又は円盤状)リード付きMOV要素14を組み合わせて組み立てた。使用したPPTC要素12は、60Vの最大作動電圧、250Vの最大トリップ(又は遮断)電圧、及び3アンペアの最大トリップ電流の公称定格である。使用したMOV要素14は、270ボルトDC(最大175VAC)、455VDCの最大固定電圧、1750アンペアのサージ電流(8×20μs)、及び0.25Wのワット数定格の公称定格である。デバイス40を含むデバイスに、その後、UL60950電気通信標準の試験電流範囲内である、600ボルト/5アンペア/5秒テストを含む試験を行った。本発明の原理に基づくデバイスは、不可逆的故障をすることなくこの試験に合格したが、熱移動を最適化したデバイス(図3)又は熱的に結合されていないデバイスは、この試験に不合格となった。下記表は、図3、4、5、5A及び6に基づくデバイス例及び熱的に結合されていないデバイス例の試験結果を表す。
【0034】
【表1】
*Epibond7275接着剤は、Alpha Metals(a Cookson Co.)から市販の非伝導性表面実装用接着剤である。
【0035】
本発明の原理を具体化する実用的なデバイスを、図7A、7B、7C及び7Dで説明する。ここで、三端子複合回路保護デバイス70は、特に電気通信分野用途に適する。デバイス70は、PPTC要素12とMOV要素14を含む。PPTC要素12とMOV要素14との間に、スペーサが形成される。スペーサは、図4又は6の教示に基づいてよく、図5Aの教示に基づいてわずかにテーパ状(又は先細り)のコネクタリード(又は接続リード)の形状とすることが最も好ましい。スズめっきされた#24ゲージ銅線で形成された端子リード16、17及び18は、複合デバイスを接続して、電子通信設備を保護することを可能とする。MOV要素14は、約10mm(0.39インチ)の外径及び約1.3mmの厚さを有する酸化亜鉛を含んで成る薄いセラミック製ディスク(又は円盤)であることが最も好ましい。PPTC要素12は、一般に矩形、又はわずかにテーパ状の箱形(例えば5.5mm×5.5mm×2.2mm)であり、典型的には箔状電極層とPPTCのサンドイッチシートから成形され、MOV円盤の径内におさまる側寸を有する。複合デバイス70は、約6mm(0.24インチ)の厚さを有する。端末リード16と17の間のPPTC要素12は、例えば、60VDCの公称動作電圧、250VAC RMSの故障電圧、3A RMSの中断又は遮断電流を有する。端子リード17と18の間のMOV要素14は、例えば、175V RMSの公称AC定格電圧を有する。端子リード17は、典型的にはわずかにテーパ状を有する所定の最適な厚さに平坦化又は成形された端部17Bを有し、PPTC要素12とMOV要素14の間に最適なスペースを設けるために初期スペーサを形成する。
【0036】
デバイス70を組み立てる間に、PPTC要素12とMOV要素14に、例えば、紙テープで遠位端を一緒に共通接続されるコネクタリード16と18を設け、それによって、二つの要素をバネの弱いバイアス力で固定する。その後、コネクタ17のテーパ状パドル端部17Bを、PPTC要素12とMOV要素14の間に挿入して、スペーサを形成する。そして、図7BのX線側面図に示すように、コネクタリード17の平坦化したスペーサ部分17Bによって占められていないMOV要素とPPTCデバイス12の間の空間にはんだ46が流れ込むように、複合デバイス70にフラックスを塗布し、はんだ槽に浸漬する。平坦化したスペーサ部分17Bとはんだ領域46を組み合わせることにより、二つの保護要素12と14の間に非常に良く制御された熱伝導性を提供でき、更にそれらの間の電気接続を提供でき、それによって、図3の例50に示す欠点及び上述した不十分な熱的接続の欠点を克服する。最終的な組み立て及び試験に続いて、典型的には個々のPPTCデバイス及びMOVデバイスに設けられるような、プラスチック製又は樹脂製コーティングを複合保護デバイス70に設けてよい。更に、リード16、17及び18を、例えば、図7B及び7Dに示すような一列に並んだ(又は直列の)配列に形成し、製造工程で使用する紙テープから分離してよい。
【0037】
本発明に基づくデバイスは、600ボルト/5アンペア/5秒試験に合格した。しかし、このようなデバイスは、具体的な回路条件に依存する、例えば、250〜600V、0.5〜40A等の種々の電圧及び電流条件範囲にわたって有用である。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したことで、本発明の目的が十分に達成されることが明らかとなり、また当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明の構成上の変更及び様々な実施形態と用途が数多く存在することを理解するであろう。従って、本明細書の開示と説明は単に説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の原理に基づいて、平面的MOV要素に電気的及び熱的に結合した平面的PPTC抵抗要素を含んで成る複合二端子電気回路保護デバイスの電気回路概略図である。
【図2】図2は、本発明の原理に基づいて、平面的MOV要素に電気的及び熱的に結合した平面的PPTC抵抗要素を含んで成る複合三端子電気回路保護デバイスの電気回路概略図であって、前記保護デバイスは、過電圧/過電流の発生源及び事象に晒される電気回路構成内に接続され動作する電気回路概略図である。
【図3】図3は、PPTC要素ホットゾーンがMOV側に移動し、その結果として生ずるPPTC要素に起こる不可逆的な損傷の可能性を説明する、MOV要素の主面と熱的に直接接続した平面的PPTC要素を示す側面拡大概念図である。
【図4】図4は、本発明の原理に基づいて、平面的PPTC要素とMOV要素の主面との間の金属熱質量体材料(スペーサ要素)を示す拡大側面及び垂直断面構造図である。
【図5】図5は、本発明の原理に基づいて、平面的PPTC要素とMOV要素の主面との間の平坦化されたコネクタリードとはんだ充填物を示す拡大側面及び垂直断面構造図である。
【図5A】図5Aは、本発明の原理に基づいて、図5に示すものと同様な複合デバイスであって、コネクタリードがテーパ形状に平坦化されたものの拡大側面及び垂直断面構造図である。
【図6】図6は、本発明の原理に基づいて、平面的PPTC要素とMOV要素の主面との間の間隙を形成する非導電性スペーサを示す拡大側面概念図であって、該間隙の周辺部は、導電性材料で充填される拡大側面概念図である。
【図7】図7A、7B、7C及び7Dは、本発明の実用的な一形態の底面、側面、上面及びエッジ構造を示す拡大図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面ポリマー正温度係数(PPTC:polymeric positive temperature coefficient)過電流要素(又は素子)に不可逆的な損傷を生じさせることなく、平面金属酸化物バリスタ(MOV:metal oxide varistor)過電圧要素が不可逆的に損傷を受ける前に、MOV要素内で生じた熱を効果的に移動(又は移送)して、PPTC要素を遮断するように、平面ポリマー正温度係数(PPTC)過電流要素と熱的に結合する、平面金属酸化物バリスタ(MOV)過電圧要素を含み、過電圧/過電流過渡条件に対して保護する、複合電気回路保護デバイス(機器又装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
熱的結合関係にある過電圧保護要素と過電流保護要素を含む複合回路保護デバイスは従来から知られている。このような要素間の熱的結合をもたらす場合、その設計手法は、発熱要素から熱起動要素への熱移動を最大化することである。過電圧保護要素の一例として金属酸化物バリスタ又は“MOV”が知られている。また、過電流保護デバイスの一例としてサーミスタが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2に開示される直列接続サーミスタと、並列又はシャント接続MOVとを用いる複合デバイスは、バルク材料(サーミスタの場合、例えば、チタン酸バリウム)から中実円筒形スラグとして形成されるサーミスタとバリスタを、シート状金属スペーサによって、端と端で接続し、例えば、デジタルマルチメータ等の電子計測デバイスを、測定範囲外の過電圧インパルス事象や測定範囲外の過電流状態から保護するために、「熱移動を最適化するための」複合回路保護デバイスを形成する。
【0003】
サーミスタ−バリスタ複合保護デバイスのもう一つの例が、特許文献3に開示されている。この特許の図3及び図4は、内部の円筒状PPTC要素を囲み、直接接触するMOV円筒状要素を含んで成るヒューズデバイスを説明する。
【0004】
MOVは、典型的には主に酸化亜鉛と他の微量な金属及び酸化物を含む、電圧依存性がある非線形電気要素である。MOVを構成する混合材料は、焼結操作で非常に高い圧力と温度を加えられ、それにより複雑な亜鉛酸化物ミクロ組織を有する薄いディスク(又は円盤)等の最終的な物理形状に成形される。MOVの主面は、そこに作るべき端子リード又は他の接続を可能にするために、導電性金属(例えば、銅又は銀−ガラス)の形成又は堆積が設けられる。MOVは、逆並列接続のツェナーダイオードのなだれ降伏特性に似たI−V特性を有することが望ましい。実際には、各々のMOVは、亜鉛酸化物の粒界に多数の半導体接合部を含むので、電圧を公称レベルに固定しながら円盤の表面全体にわたりかなりの熱を潜在的に発生させて、MOVは、過電圧状態に応じて素早く作動するからである。従って、この分散した熱をより動作の遅い過電流保護要素、最も好ましくはポリマー正温度係数(PPTC)抵抗要素、に効率的な方法で移動し、それによって、PPTC抵抗デバイスが非常に高い抵抗状態になる(又はトリップする:trip)ことを加速することが望ましい。
【0005】
独立型のポリマーPTCデバイスは、既知である。特に有用なデバイスは、PTC導電性ポリマー、即ち、有機ポリマーと、その中に分散又は分布した粒子状導電性充填材(例えば、カーボンブラック)又は金属もしくは導電性金属化合物からできているPTC要素を含む。本明細書では、これらのデバイスを、ポリマーPTC、PPTC抵抗(又は抵抗)、PPTCデバイス及び/又はPPTC要素と呼ぶ。適当な導電性ポリマー組成物及び構成成分並びにその製造方法は、例えば、特許文献4(van Konynenburg他)、特許文献5(Fouts他)、特許文献6(Au他)、特許文献7(Deep他)、特許文献8(van Konynenburg他)、特許文献9(Evans他)、特許文献10(Baigrie他)、特許文献11(Chandler他)、特許文献12(Chu他)、特許文献13(Wartenberg他)及び特許文献14(Toth他)に開示されており、これらの開示は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0006】
本明細書で使用する用語「PTC」とは、R14は、14℃域(幅又は範囲)の終了抵抗値と開始抵抗値との比、R100は、100℃域の終了抵抗値と開始抵抗値との比、R30は、30℃域の終了抵抗値と開始抵抗値との比とする場合、少なくとも2.5のR14値及び/又は少なくとも10のR100値を有する物質組成物を意味し、及び少なくとも6のR30値を有する物質組成物であることが好ましい。一般に本発明のデバイスに用いられる組成物は、これらの最小値よりもはるかに大きな抵抗値の増加を示す。
【0007】
ポリマーPTC抵抗デバイスは様々な用途に使用され、特に回路保護用途に有用であり、過電流及び/又は温度によって生ずる破壊から電気部品を防ぐ為の遠隔リセット可能なデバイスとして機能する。このような方法で保護される部品には、モータ、バッテリー、充電器、スピーカー、自動車の配線用ハーネス、電気通信設備及び回路、並びに他の電気、電子部品、回路及びデバイスが含まれる。このようなPPTC抵抗要素、部品及びデバイスの用途は近年急速に広まっており、増え続けている。
【0008】
PPTC抵抗デバイス又は要素に、ツェナーダイオード、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、及び電圧/電流調整器を形成するより複雑な集積回路等(同一出願人による特許文献15(Thomas他)によって教示及び開示に例示されることによって例示される)の電子部品との保護的な電気接続や熱接触を設けることが知られている。特許文献15の開示は、参照することで、本明細書に組み込まれる。更に、特許文献16(Whitney他)及び特許文献17(Sato)も参照。また、例えば、電圧依存性抵抗器等の他の回路要素と熱伝導性電気絶縁材料によって熱的に結合したPPTC要素を開示する同一出願人による特許文献18(Fahey他)も留意されたい。
【0009】
十分な電流がPPTCデバイスを通過すると、それは臨界値又は遮断値(又はトリップ値:trip value)に達し、ほとんどの場合、非常に大きな熱部分(及び電圧降下)がデバイスの非常に小さな体積部分に起こる。この小さな部分を、本明細書では、「ホットライン」又は「ホットゾーン」と呼ぶ。例えば、特許文献19(Middleman他)を参照されたい。PPTC層の厚さを増大させると保護デバイスが高電圧に耐える能力は増大すると一般に理解されているが、我々は、既存のデバイス構造を用いてPPTC層の厚さを単に増やすことは、十分に高い耐圧を有する回路保護デバイスをもたらさないことを見出した。従って、改良された回路保護デバイスを実現するために、PPTC抵抗要素の過電流保護特性とMOVの過電圧保護特性とを、両保護要素の利益を一つの複合デバイス内に相乗的に実現する、効果的な方法で組み合わせることが望ましい。
【0010】
他のPTC材料として、例えば、チタン酸バリウム等のドープしたセラミックスが知られているが、電源保護用途では、PTC導電性ポリマー材ほど一般に有用とされていない。これは特に、セラミックスの非動作、休止抵抗が高く、またそのキュリー遷移温度レベルがPPTC抵抗の高抵抗状態への遮断に関する遷移温度より高いためである。
【0011】
電気通信分野では、通信機器の突起や環状ワイヤーは、例えば、落雷又はAC電源の誘導又は接触等の高電位源を何らかの理由で誘起する、又は直接これらと接触する場合がある。電気通信用保護デバイスは、高電圧と、このような場合に出会う結果として発生する高電流に耐えることが出来なければならない。従来、高電圧用途、特に電気通信分野において、リード型PPTCデバイスが使用された。従来のリード型PPTCデバイスは、回路基板からリードを介して金属箔電極に電流を送る。リードは、端子として、またPPTCデバイスの金属箔電極への相互接続として、役を果たす。従来のリード型デバイスは、対称性を有するので、電気伝導は、向かい合って面する金属箔電極に直角又は垂直なPTC複合材料を通る方向に起こる。従って、熱ホットゾーン(及び最も電位差の大きなゾーン(又は領域))は、PPTC抵抗器の金属箔から一般的に等間隔かつ平行な薄い平面領域として、見かけ上形成される。
【0012】
前述の特許文献3の教示は、ボルト形ヒューズ構造体の内でMOV円筒層と直接接触するPPTC円筒層を説明するが、我々は、例えば、対向するMOVデバイスの平面と直接接続する平面PPTC積層デバイスを配置すること等によって、複合デバイス故障の高い可能性を伴うことなく、MOV要素からPPTC要素への熱移動を最適化又は最大化することによって、満足な結果を得られないことを見出した。我々は、この故障の可能性は、PPTC要素の主箔電極がMOVの主面に直接接触するように位置する場合、MOV内で発生する熱がPPTC抵抗のホットゾーンを主箔電極の近傍に移動して、PPTC要素の電圧破壊とそれに伴う故障を直接もたらすという事実に起因すると考える。
【0013】
逆に言えば、PPTC要素とMOV要素との熱的結合が乏しい又は本質的に存在しない場合、過電圧事象及びPPTC要素の故障によって生ずる過電流により、MOV要素は故障して、不可逆的故障からMOVを保護する十分な時間発熱し、トリップし得る。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,379,176号
【特許文献2】米国特許第5,379,022号
【特許文献3】米国特許第6,282,074号
【特許文献4】米国特許第4,237,441号
【特許文献5】米国特許第4,545,926号
【特許文献6】米国特許第4,724,417号
【特許文献7】米国特許第4,774,024号
【特許文献8】米国特許第4,935,156号
【特許文献9】米国特許第5,049,850号
【特許文献10】米国特許第5,250,228号
【特許文献11】米国特許第5,378,407号
【特許文献12】米国特許第5,451,919号
【特許文献13】米国特許第5,747,147号
【特許文献14】米国特許第6,130,597号
【特許文献15】米国特許第6,518,731号
【特許文献16】米国特許第3,708,720号
【特許文献17】米国特許第6,700,766号
【特許文献18】米国特許第4,780,598号
【特許文献19】米国特許第4,317,027号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
我々は、PPTC抵抗(抵抗器又はレジスタ)のホットゾーンがMOVに対向する箔電極の主平面から確実に(又は常に)離れて形成され、それによって、MOV要素からPPTC抵抗要素への熱移動を厳しく調整できるような方法で、例えば、金属スペーサ及び/又ははんだ(いずれも単独又は伝導性もしくは非伝導性接着剤との組み合わせ)もしくは他の手段等による熱質量体材料を、平面的PPTC要素と平面的MOV要素との間に直接挿入することによって、平面的PPTC要素と平面的MOV要素との間の熱的接続を制御できることを見出した。
【0016】
従って、本発明の一般的な目的は、MOV要素が不可逆的に損傷(又は故障)する前に、それによってPPTC要素に不可逆的な損傷を生じること無く、MOV要素内で発生した熱を効果的に移動して、PPTC要素を遮断するように、MOV要素からの熱の移動を調整して複合電気回路保護デバイスのPPTC要素を遮断するための熱質量体を提供することである。
【0017】
本発明のもう一つの目的は、PPTC要素とMOV要素を分離し、MOV要素からPPTC要素への熱移動を調整するための熱質量体材料を含む単一複合電気回路保護デバイスにおいて、両方の保護要素の十分な利益を相乗的に実現する有効な方法で、PPTC要素の過電流保護特性とMOV要素の過電圧保護特性を結合することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、先行技術の限界と欠点を克服するように、PPTC抵抗の主面と、対向するMOV要素の主面を電気的及び熱的に結合(又は接合)するための熱質量体材料を含む複合電気回路保護デバイスを提供することである。
【0019】
本発明の原理に基づく複合回路保護デバイスは、
第一及び第二主平面、前記第一主平面に形成され、それと電気的に密接接触(又は接続)する第一電極、及び前記第二主平面に形成され、それと電気的に密接接触する第二電極を有するPPTC抵抗要素;
第三及び第四電極主平面を有するMOV要素;
前記PPTC及び前記MOVを分離する空間を形成しそこを占める所定の形状と厚さの熱質量体材料及び前記第二電極と前記第三電極主平面を接続するためのコネクタ要素(又は接続要素);
前記第一電極にデバイス第一端子接続部;及び前記第四電極にデバイス第二端子接続部とを含む。
【0020】
一つの要旨において、本発明は二端子デバイスを含み、もう一つの要旨において、本発明は、第三端子が前記コネクタ要素に設けられる三端子デバイスを含んで成る。
【0021】
関連する要旨において、熱質量体材料は、金属プレート(又は板)もしくははんだ材料、又はコネクタ要素も形成するコネクタリード(又は接続リード)である。代わりに、スペーサ要素は、伝導性又は非伝導性エポキシ樹脂スペーサ材料を囲む、又はこれと協働しても良い。熱質量体材料の厚さは、最も好適には0.28mm(0.011インチ)と2.8mm(0.11インチ)の範囲内にある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のこれ等の目的、利点、要旨及び特徴は、添付図面と併せて示される好適な実施形態の詳細な記述を考察することで、より明確に理解されるであろう。
【0023】
本発明の原理に基づく、二端子電気回路保護デバイス10を、図1の電気回路概略図に示す。複合デバイス10は、平面的PPTC抵抗要素12と平面的MOV要素14を含む。本発明の原理に基づいて、PPTC要素12とMOV要素14は、電気的に直列接続し、更に中間の熱質量体材料13を介して熱的に接続する。二端子複合デバイス10は、第一デバイスコネクタリード又はパッド16と第二デバイスコネクタリード又はパッド18を有する。複合デバイス10は、電源装置導体に接続されるリード16と帰路線又は接地線に接続されるリード18を有するシャント(分路又は分流器:shunt)保護回路として機能することを目的とする。典型的には、二端子デバイス10は、例えばアンダーライター・ラボラトリーズ(Underwriter Laboratories)標準番号UL1449等の種々の工業規格及び規制基準に要求される、過電流/過電圧条件を順守(又は準拠)することを確保するために、例えば、モータ、電源コード、制御システム(又は施設)のサージ保護等の産業用途に使用される。
【0024】
図2の電気回路概略図に、複合三端子回路保護デバイス11を示し、それは、例えば、電気通信センター施設のバッテリー電圧源13等の電源装置に接続した供電入力リード16、PPTC要素12とMOV要素14とに共通する電気的節を例えば、電気通信回路又は設備等の電気負荷15の入力に接続する供電出力リード17、及び電源装置13と電力負荷15の帰路線の両方に接続した帰路リード18を含む。それ以外においてデバイス11は、図1のデバイス10と本質的に同じである。図2は、例えば、雷からの交流電流、交流誘導又はショート等の過電圧/過電流の発生源19、及び常時開スイッチ21として描かれた間欠性の発生源(又は要因)を含む。通常、PPTC要素12は、リード16と17の間で非常に低い直列抵抗を示し、またMOV要素14は、リード17と18の間で非常に高い並列抵抗を示し、保護デバイス11は、休止し、電源13と電気負荷15に対し電気的に透明な状態にある。しかし、過電圧/過電流状態が、発生源19/スイッチ21によって引き起こされた場合、MOV要素14は、非常に素早く作動し、負荷15に到達する電圧を、定格最大電圧レベルに制限する。電圧を制限する際、MOV要素14にはかなりの熱が発生するが、その熱はMOV要素が損傷する前に、PPTC要素が大量の熱を急激に受ける事によって損傷することなく、熱質量体13を経由して制御された状態でPPTC要素12に移送され、PPTC要素の高インピーダンス状態への遮断(又はトリップ)を加速する。三端子デバイス11は、例えば、UL60950、TIA−968−A、ITU−TK.20/K.21等の基準に準拠した電気通信用途、又は遮断表示機能が第三コネクタリード17で検知され、他の表示やアラームの制御に用いられる工業途における過電流及び過電圧複合保護に良く適する。ある種の回路応用では、図2の三端子直列(又は一連)シャント回路保護デバイス11の代わりに、図1のシャント回路保護デバイス10で置き換えることが出来る事は当業者にとって明白であろう。
【0025】
図3の構造図について、複合電気回路保護デバイス60は、保護用熱質量体13を用いることなく、PPTC要素12をMOV要素14と熱的に直接接触させて配置することに起因する問題を説明する。図3の例示的デバイス60において、平面的PPTC要素12は、コネクタリード16に接続領域を提供する上箔層22、底箔層24、及び上箔層22と底箔層24との間に挟まれたPPTC材料層26を含み、常套のPPTC構造配置である。底箔層24は、例えば、セラミック製MOV14の主面34上に焼き付け印刷することで形成されるガラス−銀隆起平坦接続領域32に直接固定されている。(同様の平坦域36は、MOV14の反対側の主面38にもあり、コネクタリード18のために接続領域を提供する。)公称動作条件では、点線28で示すホットゾーンがPPTC材料層26中で、箔層22と24から等距離の位置に存在する。しかし、デバイスの端子16と18の間で過電圧状態が起こると、MOV14はそのニー電圧(knee voltage)特性で伝導し、かなりの量の電気エネルギーを吸収し始め、吸収されたエネルギーを熱に変換する。この熱は、PPTC要素12に直接移送され、(直線28下方の)破線28Aで示すように、ホットゾーンをMOV要素14側に向けて動かす。ホットゾーンが底箔24に近づくため、PPTC要素の破壊電圧が低くなり、PPTC要素12の不可逆的故障をもたらし得る。本例ではホットゾーンが破線28Aで示すように箔電極24の方向に逸脱するが、アーク放電により炭化し導通化したアーク痕がPPTCポリマー層26中に形成され、PPTC要素12、そして複合デバイス60の不可逆的な故障を招く場合もある。従って、図3は、MOV要素14からPPTC要素12への最適又は最大の熱移動は、一又はそれ以上のPPTC抵抗要素を用いる決して満足なものではない複合回路保護デバイスを生ずる理由を説明する。
【0026】
一方、PPTC要素12が、MOV要素14と熱的に十分結合していない場合、PPTC要素12が、過電流による、その内部からの加熱の結果遮断(又はトリップ:trip)する前に、MOV要素14は、容易に過熱し、故障する。これにより、MOV要素14が不可逆的に故障し、図1の二端子複合保護デバイス10又は図2の三端子複合保護デバイス11が故障する結果となる。
【0027】
本発明をする際に、我々は、平面的PPTC要素への熱移動を、高電圧過渡条件に応じて、MOV要素を特徴付ける温度時間曲線に関して、調整又は制御しなければならないことを見出した。更に我々は、平面的PPTC要素12と平面的MOV要素14との間の空間に、熱移動材料を含む熱質量体13を設けることによって、PPTC要素のホットゾーンを過度に変形することなく、またMOV要素の不可逆的な故障を生ずることなく、PPTC要素へ移送される熱量が適切となるように、MOV要素14からPPTC要素12への熱移動を、調整及び制御することができ、複合デバイス10又は11は、特に高電圧電気通信分野において、回路保護の業界標準に適合するように行えることを見出した。
【0028】
熱質量体の厚さは、使用材料の種類、熱質量体材料の熱伝導性、及びデバイスの形状に依存する。不均一形状や異形(例えば、テーパ形状)にも適合させるために、厚さは平均厚さとする。一般に、熱質量体は、0.013〜6.35mm(0.0005〜0.25インチ)、好ましくは0.025〜5.1mm(0.001〜0.2インチ)、特には0.25〜5.1mm(0.01〜0.2インチ)、とりわけ0.25〜1.3mm(0.01〜0.05インチ)の厚さを有する。MOVの平均厚さは、9.5〜10.1mm(0.37〜0.40インチ)である場合、有用なデバイスが製造されるが、他のMOVの厚さを用いることができる。
【0029】
図4、5、5A、6、及び7A、7B、7C及び7Dでは、図3から本質的に変更されていない要素は、図3で与えた参照符号と同一の符号を有する。図4は、熱質量体がPPTC要素12をMOV要素14から分離するための金属スペーサ42を含んで成るデバイス40を説明する。
【0030】
図5は、熱質量体13が、コネクタリード17の平坦化したパドル部17Aと、この平坦パドル部分17を囲むはんだ充填物46を含むデバイス44を説明する。図5Aは、コネクタリード17が、圧印(鋳造又はコイニング:coining)又は成形(型押し、プレス成形、打ち抜き加工又はスタンピング:stamping)により、わずかにテーパ状(又は先細り)となった端部17Bを有し、PPTC要素12がMOV要素14に対し若干の角度で取り付けられるデバイス44Aを説明する。図5Aは、二つの要素12及び14が、図5の例の場合のように、完全に同一面上である必要はないことを説明する。図5及び5Aの場合、スペーサを形成するワイヤー端部を平坦化することができる、又は鋳造又はプレス成形を用いて又は用いないで、例えば、ジグザグ形状、鉤形状、ループ形状その他好適な形状等の、所望のスペーサを構築する他の適する形状に成形できることは当業者に明らかである。
【0031】
図6は、接着剤の小球又はドット(又は少量)50を、配置し熱硬化することによって、PPTC要素12をMOV14から離すデバイス48を説明する。中央のスペーサ材料50は、熱的及び/又は電気的に伝導性でも非伝導性でもよい。はんだリング52は、中央スペーサドット50を囲み、PPTC要素12とMOV要素14の対向する主面間の電気的接続と同時に制御された熱接続をもたらす熱質量体13を含んで成る。
【0032】
当業者であれば、容易に理解され、正しく認識できるように、本発明の二端子及び三端子複合回路保護デバイスは、コネクタリードと保護コーティング(又は被覆)を用いて形成してよく、又は直接表面実装用に形成してよい。
【0033】
デバイス40、44、44A、48を含む一連の複合保護デバイスを組み立てた。デバイスのいくつか(全てではない)は、一般に本発明の原理に基づき、PPTCチップ12、熱質量体13、及びMOVディスク14を備える。例えば、デバイス40は、約5.5mm×5.5mm×2.2mmの寸法を有するPPTC要素、約0.29mm(0.0115インチ)の厚さを有する金属スペーサ要素42、及び10mmのディスク直径と1.3mmの厚さを有するディスク状(又は円盤状)リード付きMOV要素14を組み合わせて組み立てた。使用したPPTC要素12は、60Vの最大作動電圧、250Vの最大トリップ(又は遮断)電圧、及び3アンペアの最大トリップ電流の公称定格である。使用したMOV要素14は、270ボルトDC(最大175VAC)、455VDCの最大固定電圧、1750アンペアのサージ電流(8×20μs)、及び0.25Wのワット数定格の公称定格である。デバイス40を含むデバイスに、その後、UL60950電気通信標準の試験電流範囲内である、600ボルト/5アンペア/5秒テストを含む試験を行った。本発明の原理に基づくデバイスは、不可逆的故障をすることなくこの試験に合格したが、熱移動を最適化したデバイス(図3)又は熱的に結合されていないデバイスは、この試験に不合格となった。下記表は、図3、4、5、5A及び6に基づくデバイス例及び熱的に結合されていないデバイス例の試験結果を表す。
【0034】
【表1】
*Epibond7275接着剤は、Alpha Metals(a Cookson Co.)から市販の非伝導性表面実装用接着剤である。
【0035】
本発明の原理を具体化する実用的なデバイスを、図7A、7B、7C及び7Dで説明する。ここで、三端子複合回路保護デバイス70は、特に電気通信分野用途に適する。デバイス70は、PPTC要素12とMOV要素14を含む。PPTC要素12とMOV要素14との間に、スペーサが形成される。スペーサは、図4又は6の教示に基づいてよく、図5Aの教示に基づいてわずかにテーパ状(又は先細り)のコネクタリード(又は接続リード)の形状とすることが最も好ましい。スズめっきされた#24ゲージ銅線で形成された端子リード16、17及び18は、複合デバイスを接続して、電子通信設備を保護することを可能とする。MOV要素14は、約10mm(0.39インチ)の外径及び約1.3mmの厚さを有する酸化亜鉛を含んで成る薄いセラミック製ディスク(又は円盤)であることが最も好ましい。PPTC要素12は、一般に矩形、又はわずかにテーパ状の箱形(例えば5.5mm×5.5mm×2.2mm)であり、典型的には箔状電極層とPPTCのサンドイッチシートから成形され、MOV円盤の径内におさまる側寸を有する。複合デバイス70は、約6mm(0.24インチ)の厚さを有する。端末リード16と17の間のPPTC要素12は、例えば、60VDCの公称動作電圧、250VAC RMSの故障電圧、3A RMSの中断又は遮断電流を有する。端子リード17と18の間のMOV要素14は、例えば、175V RMSの公称AC定格電圧を有する。端子リード17は、典型的にはわずかにテーパ状を有する所定の最適な厚さに平坦化又は成形された端部17Bを有し、PPTC要素12とMOV要素14の間に最適なスペースを設けるために初期スペーサを形成する。
【0036】
デバイス70を組み立てる間に、PPTC要素12とMOV要素14に、例えば、紙テープで遠位端を一緒に共通接続されるコネクタリード16と18を設け、それによって、二つの要素をバネの弱いバイアス力で固定する。その後、コネクタ17のテーパ状パドル端部17Bを、PPTC要素12とMOV要素14の間に挿入して、スペーサを形成する。そして、図7BのX線側面図に示すように、コネクタリード17の平坦化したスペーサ部分17Bによって占められていないMOV要素とPPTCデバイス12の間の空間にはんだ46が流れ込むように、複合デバイス70にフラックスを塗布し、はんだ槽に浸漬する。平坦化したスペーサ部分17Bとはんだ領域46を組み合わせることにより、二つの保護要素12と14の間に非常に良く制御された熱伝導性を提供でき、更にそれらの間の電気接続を提供でき、それによって、図3の例50に示す欠点及び上述した不十分な熱的接続の欠点を克服する。最終的な組み立て及び試験に続いて、典型的には個々のPPTCデバイス及びMOVデバイスに設けられるような、プラスチック製又は樹脂製コーティングを複合保護デバイス70に設けてよい。更に、リード16、17及び18を、例えば、図7B及び7Dに示すような一列に並んだ(又は直列の)配列に形成し、製造工程で使用する紙テープから分離してよい。
【0037】
本発明に基づくデバイスは、600ボルト/5アンペア/5秒試験に合格した。しかし、このようなデバイスは、具体的な回路条件に依存する、例えば、250〜600V、0.5〜40A等の種々の電圧及び電流条件範囲にわたって有用である。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したことで、本発明の目的が十分に達成されることが明らかとなり、また当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明の構成上の変更及び様々な実施形態と用途が数多く存在することを理解するであろう。従って、本明細書の開示と説明は単に説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の原理に基づいて、平面的MOV要素に電気的及び熱的に結合した平面的PPTC抵抗要素を含んで成る複合二端子電気回路保護デバイスの電気回路概略図である。
【図2】図2は、本発明の原理に基づいて、平面的MOV要素に電気的及び熱的に結合した平面的PPTC抵抗要素を含んで成る複合三端子電気回路保護デバイスの電気回路概略図であって、前記保護デバイスは、過電圧/過電流の発生源及び事象に晒される電気回路構成内に接続され動作する電気回路概略図である。
【図3】図3は、PPTC要素ホットゾーンがMOV側に移動し、その結果として生ずるPPTC要素に起こる不可逆的な損傷の可能性を説明する、MOV要素の主面と熱的に直接接続した平面的PPTC要素を示す側面拡大概念図である。
【図4】図4は、本発明の原理に基づいて、平面的PPTC要素とMOV要素の主面との間の金属熱質量体材料(スペーサ要素)を示す拡大側面及び垂直断面構造図である。
【図5】図5は、本発明の原理に基づいて、平面的PPTC要素とMOV要素の主面との間の平坦化されたコネクタリードとはんだ充填物を示す拡大側面及び垂直断面構造図である。
【図5A】図5Aは、本発明の原理に基づいて、図5に示すものと同様な複合デバイスであって、コネクタリードがテーパ形状に平坦化されたものの拡大側面及び垂直断面構造図である。
【図6】図6は、本発明の原理に基づいて、平面的PPTC要素とMOV要素の主面との間の間隙を形成する非導電性スペーサを示す拡大側面概念図であって、該間隙の周辺部は、導電性材料で充填される拡大側面概念図である。
【図7】図7A、7B、7C及び7Dは、本発明の実用的な一形態の底面、側面、上面及びエッジ構造を示す拡大図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一及び第二主平面、第一主平面と電気的に密接接触し第一主平面に形成される第一電極シート、及び第二主平面と電気的に密接接触し第二主平面に形成される第二電極シートを有するポリマー正温度係数(PPTC)要素;
第三及び第四電極主平面を有する金属酸化物バリスタ(MOV)要素;
MOV要素が故障温度に達する前に、PPTC要素が高抵抗状態になるように、MOV要素からPPTC要素への熱移動を制御するために、及び第二電極シートと第三電極主平面を電気的に接続するために、PPTC要素とMOV要素の対向する第二及び第三主平面の間の所定の厚さ及び形状の熱質量体;
第一電極にデバイス第一端子接続部;及び
第四電極主平面にデバイス第二端子接続部
を含んで成る複合回路保護デバイス。
【請求項2】
第一端子接続部は、第一コネクタリードであり、第二端子接続部は、第二コネクタリードである請求項1に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項3】
デバイス第三端子接続部は、第二電極シートと第三電極主平面の間に設けられ、好ましくは、第三端子接続部は、第三コネクタリードを含んで成る請求項1に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項4】
熱質量体材料は、金属プレートを含んで成り、好ましくは、金属プレートは、約0.025mm〜約2.5mm(0.001〜0.100インチ)の平均厚さを有する請求項1に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項5】
熱質量体材料は、第三コネクタリードの端部と、その端部によって占められない第二及び第三主平面によって規定される空間を満たすはんだ材料を含んで成る請求項3に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項6】
端部は、平坦化形状に形成され、好ましくは、その平坦化形状は、テーパーを有する請求項5に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項7】
端部は、0.25mm(0.010インチ)と0.51mm(0.020インチ)の範囲内の厚さを有する請求項5に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項8】
第二及び第三主平面は、中央に配置される接着材料のドットによって隔てられ、熱質量体材料は、ドットを包囲し、そのドットによって占められない第二及び第三主平面の間の空間を満たすはんだ材料を含んで成り、好ましくは、接着材料は、0.25mm(0.01インチ)と5mm(0.2インチ)の範囲内の厚さを有する請求項1に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項9】
公称量の動作電力を供給する電源装置;
動作電力を受容するために通常接続される電気負荷;及び
電源装置と電気負荷の間に接続される直列シャント複合回路保護デバイスであって、そのデバイスと電源装置の間の電気回路に生ずる過渡的過電圧/過電流条件発生源に応答するためのデバイス
を含んで成る電気回路であって、
該複合回路保護デバイスは、
電源装置と電気負荷の間に直列に接続されるポリマー正温度係数(PPTC)要素であって、第一及び第二主平面、第一主平面と電気的に密接接触し第一主平面に形成される第一電極シート、及び第二主平面と電気的に密接接触し第二主平面に形成される第二電極シートを有するポリマー正温度係数要素;
電気負荷に並列に接続され、第三及び第四電極主平面を有する金属酸化物バリスタ(MOV)要素;及び
MOV要素が故障温度に達する前に、PPTC要素が高抵抗状態になるように、該過電圧/過電流状態から結果として生ずるMOV要素からPPTC要素への熱移動を制御するために、及び第二電極シートと第三電極主平面を電気的に接続するために、PPTC要素とMOV要素の対向する第二及び第三主平面の間の所定の厚さ及び形状の熱質量体
を含んで成る、電気回路。
【請求項10】
電源装置、電気負荷、及び直列シャント複合回路保護デバイスは、電気通信施設の部分である請求項9に記載の電気回路。
【請求項1】
第一及び第二主平面、第一主平面と電気的に密接接触し第一主平面に形成される第一電極シート、及び第二主平面と電気的に密接接触し第二主平面に形成される第二電極シートを有するポリマー正温度係数(PPTC)要素;
第三及び第四電極主平面を有する金属酸化物バリスタ(MOV)要素;
MOV要素が故障温度に達する前に、PPTC要素が高抵抗状態になるように、MOV要素からPPTC要素への熱移動を制御するために、及び第二電極シートと第三電極主平面を電気的に接続するために、PPTC要素とMOV要素の対向する第二及び第三主平面の間の所定の厚さ及び形状の熱質量体;
第一電極にデバイス第一端子接続部;及び
第四電極主平面にデバイス第二端子接続部
を含んで成る複合回路保護デバイス。
【請求項2】
第一端子接続部は、第一コネクタリードであり、第二端子接続部は、第二コネクタリードである請求項1に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項3】
デバイス第三端子接続部は、第二電極シートと第三電極主平面の間に設けられ、好ましくは、第三端子接続部は、第三コネクタリードを含んで成る請求項1に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項4】
熱質量体材料は、金属プレートを含んで成り、好ましくは、金属プレートは、約0.025mm〜約2.5mm(0.001〜0.100インチ)の平均厚さを有する請求項1に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項5】
熱質量体材料は、第三コネクタリードの端部と、その端部によって占められない第二及び第三主平面によって規定される空間を満たすはんだ材料を含んで成る請求項3に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項6】
端部は、平坦化形状に形成され、好ましくは、その平坦化形状は、テーパーを有する請求項5に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項7】
端部は、0.25mm(0.010インチ)と0.51mm(0.020インチ)の範囲内の厚さを有する請求項5に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項8】
第二及び第三主平面は、中央に配置される接着材料のドットによって隔てられ、熱質量体材料は、ドットを包囲し、そのドットによって占められない第二及び第三主平面の間の空間を満たすはんだ材料を含んで成り、好ましくは、接着材料は、0.25mm(0.01インチ)と5mm(0.2インチ)の範囲内の厚さを有する請求項1に記載の複合回路保護デバイス。
【請求項9】
公称量の動作電力を供給する電源装置;
動作電力を受容するために通常接続される電気負荷;及び
電源装置と電気負荷の間に接続される直列シャント複合回路保護デバイスであって、そのデバイスと電源装置の間の電気回路に生ずる過渡的過電圧/過電流条件発生源に応答するためのデバイス
を含んで成る電気回路であって、
該複合回路保護デバイスは、
電源装置と電気負荷の間に直列に接続されるポリマー正温度係数(PPTC)要素であって、第一及び第二主平面、第一主平面と電気的に密接接触し第一主平面に形成される第一電極シート、及び第二主平面と電気的に密接接触し第二主平面に形成される第二電極シートを有するポリマー正温度係数要素;
電気負荷に並列に接続され、第三及び第四電極主平面を有する金属酸化物バリスタ(MOV)要素;及び
MOV要素が故障温度に達する前に、PPTC要素が高抵抗状態になるように、該過電圧/過電流状態から結果として生ずるMOV要素からPPTC要素への熱移動を制御するために、及び第二電極シートと第三電極主平面を電気的に接続するために、PPTC要素とMOV要素の対向する第二及び第三主平面の間の所定の厚さ及び形状の熱質量体
を含んで成る、電気回路。
【請求項10】
電源装置、電気負荷、及び直列シャント複合回路保護デバイスは、電気通信施設の部分である請求項9に記載の電気回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【公表番号】特表2009−503872(P2009−503872A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524161(P2008−524161)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029272
【国際公開番号】WO2007/014302
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(399132320)タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション (234)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029272
【国際公開番号】WO2007/014302
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(399132320)タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション (234)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
【Fターム(参考)】
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