説明

熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物

【課題】 ポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂を含んで構成された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物において、加熱処理して得られる硬化膜の表面硬度やタック性を改良することができ、且つ加熱硬化に伴って発生する反りを好適に抑制することができる熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリブタジエンセグメント又はポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂と、グアナミン樹脂とを含有することを特徴とする熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤に可溶であり、電気絶縁性、耐熱性、柔軟性などが優れた熱硬化性変性ポリイミド樹脂の組成物および該組成物からなる硬化膜に関する。この熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理して得られる硬化膜は、特に表面硬度やタック性が良好であり且つ加熱硬化に伴う反りを抑制できるので、柔軟性配線基板の絶縁保護膜として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリカーボネートセグメントやポリブタジエンセグメントからなるソフトセグメントを導入した変性ポリイミド樹脂が記載されている。
特許文献2には、ポリブタジエンセグメントからなるソフトセグメントを導入した変性ポリイミド樹脂及び該変性ポリイミド樹脂からなる熱硬化性組成物が記載されている。
特許文献3には、ポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントを導入した変性ポリイミド樹脂及び該変性ポリイミド樹脂からなる熱硬化性組成物が記載されている。
これらの熱硬化性組成物では、硬化反応を担う成分としてエポキシ樹脂及び/又は多価イソシアネート化合物が用いられているが、得られる硬化膜は、ソフトセグメントのために表面硬度やタック性の面で不十分な場合があり、改良の余地があった。さらに、これらの熱硬化性組成物を用いて表面硬度が高い硬化膜を得ようとすると、加熱硬化に伴う反りを抑制し難いという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−113004号
【特許文献2】特開2006−104462号
【特許文献3】特開2006−307183号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂を含んで構成された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物において、加熱処理して得られる硬化膜の表面硬度やタック性を改良することができ、且つ加熱硬化に伴って発生する反りを好適に抑制することができる熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を提供することである。この熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理して得られる硬化膜は、電気絶縁性、耐熱性、柔軟性などが優れると共に、特に表面硬度、タック性、及び反りが改良されたものであり、柔軟性配線板用の絶縁保護膜として好適に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討した結果、ポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂を含んで構成された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物において、前記変性ポリイミド樹脂と共に、硬化反応を担う成分としてグアナミン樹脂を用いることによって、加熱処理して得られる硬化膜の表面硬度、タック性、及び反りが改良されることを見出して本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の項に関する。
(1) ポリブタジエンセグメント又はポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂と、グアナミン樹脂とを含有することを特徴とする熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物。
(2) さらに、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする前記項1に記載の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物。
(3) 変性ポリイミド樹脂100質量部に対して、グアナミン樹脂を1〜60質量部含有することを特徴とする前記項1または2に記載の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物。
(4) グアナミン樹脂がベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物であることを特徴とする前記項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物。
(5) 前記項1〜4のいずれかの熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理して得られたことを特徴とする硬化膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、ポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントを導入した変性ポリイミド樹脂を含んで構成された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物において、加熱処理して得られる硬化膜の表面硬度、タック性、及び反りが改良された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を提供することができる。この熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理して得られる硬化膜は、電気絶縁性、耐熱性、柔軟性などが優れると共に、特に表面硬度、タック性及び反りが改良されたものであるから、柔軟性配線板用の絶縁保護膜として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の変性ポリイミド樹脂は、イミド構造を有するハードセグメントに、ポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂である。この変性ポリイミド樹脂は、前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとを併せ持つものであれば特に限定されない。例えば、特許文献1に記載されているように、ジオールとジイソシアネートとから末端イソシアネート基を有するプレポリマーを調製し、前記プレポリマーと芳香族テトラカルボン酸成分とを反応させることによって得ることができる。また、特許文献2及び3に記載されているように、予めアルコール性水酸基末端イミドオリゴマーを調製し、前記アルコール性水酸基末端イミドオリゴマーと、ポリブタジエンジオール又はポリカーボネートジオールと、ジイソシアネートとを反応させて得ることができる。後者の方が、得られる変性ポリイミド樹脂の溶解性と耐熱性とが優れるのでより好ましい。
【0009】
本発明の特徴は、前述のようにして調製されたポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂を含んで構成された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物において、前記変性ポリイミド樹脂と共に、硬化反応を担う成分としてグアナミン樹脂を用いることによって、加熱処理して得られる硬化膜の表面硬度、タック性、及び反りが改良したことにある。
【0010】
以下では、アルコール性水酸基末端イミドオリゴマーを用いて調製された変性ポリイミド樹脂の場合について説明するが、本発明はこのようにして調整された変性ポリイミド樹脂の場合に限定されるものではない。
【0011】
変性ポリイミド樹脂は、好ましくは、ジイソシアネート化合物、ポリブタジエンジオール或いはポリカーボネートジオール、及び下記化学式(1)で示されるアルコール性水酸基末端イミドオリゴマーを反応して得られる。
【0012】
【化1】

式中、Rは2価の炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた4価の基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた2価の基を示し、mは0〜50の整数である。
【0013】
ジイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネ−ト基を2個有するものであればどのようなものでもよい。例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアネ−ト、好ましくはイソシアネート基を除いて炭素数が2〜30の脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアネ−トであり、具体的には1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,5−ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−へキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(イソホロンジイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等を例示することができる。また、前記ジイソシアネ−ト化合物は、イソシアネ−ト基をブロック化剤でブロックしたブロックジイソシアネ−トを好適に用いることができる。
【0014】
ポリブタジエンジオールは、数平均分子量が500〜10000のものが好ましく、1000〜5000のものがより好ましい。数平均分子量が500未満になると好適な柔軟性が得難くなり、また数平均分子量が10000を越えると耐熱性や耐溶剤性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。また、本発明においてポリブタジエンジオールは、分子内に二重結合を有していても、分子内の二重結合を水添したものであってもよいが、分子内に二重結合が残っていると架橋反応を起こして柔軟性がなくなる場合があるので、分子内の二重結合を水添された水添ポリブタジエンジオールが好ましい。本発明で用いられるポリブタジエンジオールとしては、日本曹達株式会社製のGI−1000、GI−2000、出光石油化学株式会社製のR−45EPI、三菱化学株式会社製のポリテールHなどを好適に挙げることができる。
【0015】
ポリカーボネートジオールは、数平均分子量が500〜10000のものが好ましく、1000〜5000のものがよりこのましい。数平均分子量が500未満になると好適な柔軟性が得難くなり、また数平均分子量が10000を越えると耐熱性や耐溶剤性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。また、本発明で用いられるポリカーボネートジオールとしては、宇部興産株式会社製のUH−CARB、UD−CARB、UC−CARB、ダイセル化学工業株式会社製のPLACCEL CD−PL、PLACCEL CD−H、クラレ株式会社製のクラレポリオールCシリーズなどを好適に例示することができる。これらのポリブタジエンジオールやポリカーボネートジオールは、単独で、または二種類以上を組合せて用いられる。
【0016】
前記化学式(1)で示されるアルコール性水酸基末端イミドオリゴマーは、テトラカルボン酸成分と、ジアミン化合物及びアルコール性水酸基を1個有するモノアミン化合物からなるアミン成分とから得られる。前記式中mは0〜50の整数を示し、好ましくは0〜20であり、より好ましくは0〜10であり、特に1〜5である。mが50以上では溶解に時間が掛るようになったり、得られる硬化膜の柔軟性が劣るようになったりするので前記程度のものが好適である。
【0017】
前記テトラカルボン酸成分としては、芳香族テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物が好適であり、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ヘキサフルオロプロパン、ピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(3,4−フェノキシジカルボン酸)フェニル〕プロパン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンなどの芳香族テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物を好適に例示できる。また、テトラカルボン酸成分としては、シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2,4,5−テトラカルボン酸などの脂環族テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物を用いることもできる。
【0018】
前記ジアミン化合物としては、芳香族、脂環式及び脂肪族ジアミンを用いることができる。具体的には、芳香族ジアミンとしては1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2,5−ジハロゲノベンゼンなどのベンゼン1個を含むジアミン類、ビス(4−アミノフェニル)エ−テル、ビス(3−アミノフェニル)エ−テル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、o−ジアニシジン、o−トリジン、トリジンスルホン酸類などのベンゼン2個を含むジアミン類、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどのベンゼン3個を含むジアミン類、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセンなどのベンゼン4個以上を含むジアミン類など、脂環式ジアミンとしてはイソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)など、脂肪族ジアミンとしてはヘキサメチレンジアミン、ジアミノドデカンなどを挙げることができる。なかでも脂環式ジアミンは耐熱性と溶解性を併せ持つアルコール性水酸基末端イミドオリゴマー得ることができるので特に好適である。
【0019】
前記アルコール性水酸基を1個有するモノアミン化合物としては、分子中にアルコール性水酸基とアミノ基とを各1個有する炭化水素化合物であり、好ましくは、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノールなどの炭素数が1〜10のアルコール性水酸基を有する脂肪族モノアミン化合物、アミノシクロヘキサノールなどの炭素数が3〜20のアルコール性水酸基を有する脂環式モノアミン化合物を挙げることができる。
【0020】
アルコール性水酸基末端イミドオリゴマーは、テトラカルボン酸成分と、ジアミン化合物及び水酸基を1個有するモノアミン化合物からなるアミン成分とを、テトラカルボン酸成分の酸無水物基(あるいは隣接する二個のカルボキル基等)の当量数と、アミン成分のアミノ基の当量数とが略等量となるようにして、有機溶媒中で重合及びイミド化反応させて得ることができる。具体的には、テトラカルボン酸成分(特にテトラカルボン酸二無水物)と、ジアミン化合物と水酸基を有するモノアミン化合物からなるアミン成分とを、酸無水物基(または隣接するジカルボン酸基)とアミン成分のアミノ基とが略当量となるような割合で使用して、各成分を有機極性溶媒中で、約100℃以下、特に80℃以下の反応温度で反応させてアミド−酸結合を有するオリゴマーを生成し、次いで、そのアミド−酸オリゴマー(アミック酸オリゴマーともいう)を、約0℃〜140℃の低温でイミド化剤を添加するか或いは140℃〜250℃の高温で加熱して脱水・イミド化させる方法によって得ることができる。脱水・イミド化反応のとき、トルエンやキシレンを加えて、共沸によって縮合水を除去しながら反応させてもよい。
【0021】
アルコール性水酸基末端イミドオリゴマーを製造する際に使用される有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、などのアミド類溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホルムアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホンなどの硫黄原子を含有する溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノールなどのフェノール類溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなどのジグライム類溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類溶媒、イソホロン、シクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンなどのケトン類溶媒、ピリジン、エチレングリコール、ジオキサン、テトラメチル尿素などがある。
【0022】
前述のようにして製造したアルコール性水酸基末端イミドオリゴマーは、前記化学式(1)中のmが異なる複数のオリゴマーの混合物になることがある。本発明では、mが異なる複数のイミドオリゴマーからなる混合物を、それぞれのイミドオリゴマーに分離して用いても構わないが、分離しないで混合物のままで好適に用いることができる。なお、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーのm(混合物の場合はmの平均値)は、製造時のアミン成分中のジアミン化合物とモノアミン化合物との仕込み比(モル比)によって制御することができる。
【0023】
変性ポリイミド樹脂は、ジイソシアネート化合物、ポリブタジエンジオール或いはポリカーボネートジオール、及びアルコール性水酸基末端イミドオリゴマーを同時に反応させてもよいが、好ましくは、ジイソシアネート化合物と、ポリブタジエンジオール或いはポリカーボネートジオールとを、イソシアネート基が水酸基に対して過剰量になるようにして反応させて末端イソシアネート化合物を調製し、次いで、前記末端イソシアネート化合物にアルコール性水酸基末端イミドオリゴマーを反応させることによって好適に得ることができる。これらの反応は無溶媒或いは有機溶媒中で、通常は、反応温度30℃〜150℃、反応時間1〜10時間、好ましくは不活性雰囲気下で行うことができる。有機溶媒は、前述のアルコール性水酸基末端イミドオリゴマーを製造する際に使用される溶媒が好適に使用できる。また、変性ポリイミド樹脂の詳細については特許文献1〜3にさらに詳しく記載されているとおりである。
【0024】
また、本発明の変性ポリイミド樹脂では、ポリブタジエンジオール或いはポリカーボネートジオールの一部(通常はジオール成分中の5〜40モル%程度)を、反応性極性基含有ジオールに置き換えることが、変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理によって硬化させる際に好適である。反応性極性基含有ジオールとしては、置換基として活性水素を有するジオール化合物、例えばカルボキシル基やフェノール性水酸基を持ったジオール化合物が好ましく、特に置換基としてカルボキシル基やフェノール性水酸基を持った炭素数が1〜30更に炭素数が2〜20のジオール化合物が好適である。具体的には、カルボキシル基を有するジオール化合物として、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸などを挙げることができる。フェノール性水酸基を有するジオール化合物として、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールなどを挙げることができる。
【0025】
本発明の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物は、少なくとも(A成分)ポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントを導入した変性ポリイミド樹脂100質量部、(B成分)グアナミン樹脂1〜60質量部、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部、特に好ましくは5〜30質量部、及び有機溶媒を含んで構成される。
(B成分)グアナミン樹脂は、本発明の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物の硬化反応を担う成分である。グアナミン樹脂の含有量が前記範囲未満では本発明の効果を得ることができなくなり、前記範囲を超えるとポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂が有する優れた特性である電気絶縁性、耐熱性、柔軟性などが低下することがある。
【0026】
本発明の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物においては、硬化反応を担う成分として、さらに、(C成分)エポキシ樹脂を、0.1〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部含有することが、低温硬化性を高めることができるので好適である。
【0027】
前記グアナミン樹脂としては、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物であるベンゾグアナミン樹脂が好適である。そして、ベンゾグアナミン樹脂のなかでも、メチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の一部又は全部を低級アルコールによってエーテル化した低級アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂が特に好ましい。
【0028】
ベンゾグアナミン樹脂の具体例としては、日本サイテックインダストリーズ社製の、サイメル1123(メチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、サイメル1123−10(メチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、サイメル1128(ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、マイコート102(メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、マイコート132(メチル・ブチル混合エーテル化のベンゾグアナミン・メラミン共縮合樹脂)、日本サイテックインダストリーズ社製のマイコート136(メチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)等を好適に挙げることができる。
【0029】
エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が100〜4000程度であって、分子量が300〜10000程度である液状又は固体状のエポキシ樹脂が好ましい。例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート806、エピコート825、エピコート828、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1055、エピコート1004AF、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010など)、3官能以上のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート152、エピコート154、エピコート180シリ−ズ、エピコート157シリ−ズ、エピコート1032シリ−ズ、住友化学工業株式会社製:スミエポキシELM100、ダイセル化学工業株式会社製:EHPE3150、チバガイギ−製:MT0163など)、末端エポキシ化オリゴマー(宇部興産株式会社製のハイカーETBN1300×40、ナガセケムテックス株式会社製のデナレックスR−45EPTなど)、エポキシ化ポリブタジエン(日本石油化学株式会社製:E−1000−8、E−1800−6.5、ダイセル化学工業株式会社製:エポリードPB3600など)、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学株式会社性:セロキサイド2021P、セロキサイド2080、エポリードGT400、EHPE)などを挙げることができる。なかでも、エポキシ化ポリブタジエンや脂環式エポキシ樹脂を用いると低ソリ性を得やすいので好適である。
【0030】
本発明の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物においては、変性ポリイミド樹脂100質量部に対して1〜50質量部、好ましくは2〜40質量部、より好ましくは5〜30質量部のフェノール性水酸基を2個以上有する化合物を含有することができる。フェノール性水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルや、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール樹脂を挙げることができる。フェノール樹脂としては、明和化成株式会社製フェノールノボラックH−1、H−2、H−3、H−4、H−5、オルソクレゾールノボラックMER−130、トリフェノールメタン型MEH−7500、テトラキスフェノール型MEH−7600、ナフトール型MEH−7700、フェノールアラルキル型MEH−7800、MEH−7851、トリフェノール型R−3、ビスフェノールノボラック型MEP−6309、MEP−6309E、液状フェノールノボラックMEH−8000H、MEH−8005、MEH−8010、MEH−8015、MEH−8205などを挙げることができる。
【0031】
熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物の溶媒としては、変性ポリイミド樹脂を合成する際に使用した有機溶媒をそのまま使用することができるが、好適には、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、含硫黄原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、含酸素溶媒、例えばフェノ−ル系溶媒のクレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ルなど、ジグライム系溶媒のジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(ジグライム)、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(トリグライム)、テトラグライムなど、ケトン系溶媒のアセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、シクロヘキサノン、イソホロンなど、エーテル系溶剤のエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、ラクトン系溶媒のγ−ブチロラクトンなど、を挙げることができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどを好適に使用することができる。
【0032】
本発明の熱硬化変性ポリイミド樹脂組成物は、加熱処理によって架橋反応を促進するための硬化促進触媒などからなる硬化触媒を含有するのが好適である。さらに、変性ポリイミド樹脂組成物は、微細なフィラー、有機着色顔料、無機着色顔料などの顔料、消泡剤やレベリング剤などを含有してもよい。微細なフィラーとしては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カリウム、タルク、硫酸バリウムなどの従来公知の微細な無機充てん材、或いはアクリル樹脂ビーズやウレタン樹脂ビーズなどの微細な有機充てん剤を好適に挙げることができる。
【0033】
前記アクリル樹脂ビーズやウレタン樹脂ビーズは、メタクリル酸メチルなどを懸濁重合させることによって容易に得られる真球状のものが好適である。また、本発明で用いるアクリル樹脂ビーズやウレタン樹脂ビーズは、溶液組成物に充てん材として好適に含有されるものであるから、好ましくは球状の架橋アクリル樹脂ビーズ或いは架橋ウレタン樹脂ビーズである。
【0034】
微細な無機或いは有機充てん剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが0.01〜20μm、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.01〜5μmのものが好適である。
【0035】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、特に限定するものではないが、室温(25℃)での溶液粘度が5〜1000Pa・s、特に10〜100Pa・s、更に10〜60Pa・sであることがスクリーン印刷などの作業性や溶液物性、さらに得られる硬化絶縁膜の特性が良好であることなどから好適である。
【0036】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、ICチップなどのチップ部品を実装する電気電子部品の絶縁膜(保護膜)を形成するために好適に用いることができる。例えば、導電性金属箔で形成された配線パタ−ンを有する絶縁フィルムのパタ−ン面に、乾燥膜の厚さが3〜60μm程度となるようにスクリ−ン印刷などによって印刷して塗布した後、50〜100℃程度の温度で5〜60分間程度加熱処理して溶媒を除去し、次いで100〜210℃程度好適には110〜200℃で5〜120分間好適には10〜60分間程度で加熱処理して硬化させ、好適には弾性率が10〜500MPaの硬化絶縁膜を形成することが好ましい。
本発明の変性ポリイミド樹脂用組成物は、改良された表面硬度やタック性を有し、反りの抑制が容易であり、封止材料や異方性導電材料に対する強い密着性が得られるのみならず、柔軟性が高く、電気特性が優れ、導電性金属、基材との密着性が良好であり、耐熱性、半田耐熱性、耐溶剤性(例えば、アセトン、イソプロパノ−ル、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドンに対する耐溶剤性)、耐薬品性、耐屈曲性などが優れた硬化絶縁膜(保護膜)を形成することができる。
本発明の変性ポリイミド樹脂絶縁膜用組成物は、120〜160℃程度特に120℃程度(130℃以下)の比較的低温の加熱処理によって前記のような良好な性能を持った絶縁膜を形成することが可能である。従って、多層配線基板の層間接着剤などにも好適に使用することもできる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
以下の各例において測定、評価は次の方法で行った。
〔タック性試験〕
35μm厚のポリイミドフィルム上にアプリケーターを用い試料の変性ポリイミド樹脂組成物の塗膜を形成し、これを80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理して硬化させて、10μm厚の硬化膜を形成した後、このポリイミドフィルムと硬化膜との積層体を、2.5cm×10cmの大きさにカットものを試験片とした。
試験方法は、各設定温度(ここでは、110℃、120℃、130℃、140℃の各温度)に加温したホットプレート上に試験片を置き、ホットプレートと同じ温度に加温したステンレス製の錘(重量300g)を試験片の上に30秒間乗せ錘を引き上げた。錘を引き上げた際に、錘に試験片が引っ付いた状態を不合格(×)とし、ホットプレート上に静置された状態を合格(○)とした。なお、試験は各設定温度で3回行った。
【0039】
〔鉛筆硬度試験〕
50μm厚の銅箔表面にアプリケーターを用い試料の変性ポリイミド樹脂組成物の塗膜を形成し、これを80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理して硬化させて、20μm厚の硬化膜を形成したものを試験片とした。得られた試験片の硬化膜を、装置として鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(東洋精機製作所製)、鉛筆として4B〜2H(三菱UNI)を用いてJIS−K5600−5−4の手順に従い鉛筆硬度の測定を行った。
【0040】
〔ゲル分率の測定〕
剥離剤をコートした硝子上に試料の変性ポリイミド樹脂組成物の塗膜を形成し、これを80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理して硬化させて、60μm厚の硬化膜を形成した後、その硬化膜を硝子から剥離し、5cm×10cmの大きさにカットしたものを試験片とした。
試験片を30分間アセトン中に浸漬し、浸漬前後の試験片の質量を測定し、質量の残存率をゲル分率とした。
ゲル分率(質量%)=[(アセトン浸漬後の質量)/(アセトン浸漬前の質量)]×100
【0041】
〔反り〕
25μm厚のポリイミドフィルム表面に、アプリケ−ターを用いて試料の変性ポリイミド樹脂組成物の塗膜を形成し、これを80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理して硬化させて、10μm厚の硬化膜を形成した。このポリイミドフィルムと硬化膜との積層体を、5cm角に切り出して試験片とした。この試験片を、硬化膜を上にして、水平な台に乗せ試験片の4つの角と水平な台との隙間をノギスで測定し、各隙間の平均値を「反り」量とした。
【0042】
以下の各例で使用した化合物、硬化剤、硬化触媒及び充てん材等について説明する。
〔テトラカルボン酸成分〕
2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(宇部興産株式会社製)
〔ジアミン化合物〕
イソホロンジアミン(和光純薬株式会社製)
〔アルコール性水酸基を1個有するモノアミン化合物〕
3−アミノプロパノール(和光純薬株式会社製)
〔溶媒〕
γ―ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)
〔ポリカーボネートジオール〕
ETERNACOLL UH−200(宇部興産株式会社製、平均分子量1997)
〔反応性極性基含有ジオール〕
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成株式会社製)
〔ジイソシアネート化合物〕
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製)
〔グアナミン樹脂〕
マイコート136 (日本サイテックインダストリーズ株式会社製、メチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂、イミノ基型)
〔メラミン樹脂〕
サイメル211 (日本サイテックインダストリーズ株式会社製、メチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂、イミノ基型)
サイメル236 (日本サイテックインダストリーズ株式会社製、メチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂、完全アルキル化型)
〔エポキシ化合物〕
セロキサイト2021P (ダイセル化学工業株式会社製)
〔ジイソシアネート化合物〕
タケネートB−830 (三井化学ポリウレタン株式会社製、トリレンジイソシアネ−トブロック化体)
〔フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(フェノール樹脂)〕
H−1(明和化成株式会社、フェノールノボラック)
〔微粉状シリカ〕
アエロジルR972(日本アエロジル社製 比表面積(BET法):110m/g)
アエロジル#50(日本アエロジル社製 平均粒径30nm)
サイロホービック100(富士シリシア化学社製 疎水性シリカゲル)
〔硫酸バリウム〕
BARIFINE B−54:(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:1.2μm)
〔硬化触媒〕
キュアゾール2E4MZ(四国化成工業株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)
ジアザビシクロウンデセン(DBU:アルドリッチ社製)
〔消泡剤〕
ディスパロンOX−881(楠本化成社製)
【0043】
〔参考例1〕
アルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液の製造方法
攪拌機、窒素導入管、ディーンスタークレシバーを備えた容量5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物1471g(5モル)、エタノール507g(11モル)及びγ−ブチロラクトン2092gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で1時間撹拌した。次いで、3−アミノプロパノール376g(5モル)、イソホロンジアミン426g(2.5モル)を仕込み、窒素雰囲気下、120℃で2時間、180℃2時間加熱し、イミド化反応により生じた水を反応液中に窒素を吹き込むことで除去した。このアルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液は、固形分51.6%であった。
【0044】
〔参考例2〕
変性ポリイミド樹脂溶液の製造方法
攪拌機、窒素導入管を備えた容量5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、ETERNACOLL UH−200 1198.20g(0.60モル)、参考例1で合成したアルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液 974.13g、2,2−ビス(4−ヒドロキシメチル)プロピオン酸 80.48g(0.60モル)及びγ−ブチロラクトン2228.90gを仕込み、窒素雰囲気下、50℃で1時間撹拌した。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 429.00g(1.71モル)を加え、60℃で3時間、80℃で10時間撹拌した。得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ポリマ−固形分濃度45.7重量%、粘度389Pa・sの溶液であった。
【0045】
〔実施例1〕
ガラス製容器に、参考例2で得た変性ポリイミド樹脂溶液に、変性ポリイミド樹脂100質量部に対して、グアナミン樹脂のマイコート136(M136)を20質量部、エポキシ樹脂のセロキサイト2021Pを4.1質量部、フェノール樹脂のH−1を2.5質量部、及びアミン系硬化触媒の2E4MZを0.5質量部、ジアザビシクロウンデセンを0.5質量部、更にアエロジルR972を7質量部、サイロホビック100を5質量部、消泡剤のOX881を7.5質量部加え、攪拌・混練して、均一に混合された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を得た。また、この熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物の硬化膜について、タック性、鉛筆硬度、ゲル分率、反りについて評価した。それらの結果を表1に示す。
【0046】
〔実施例2〕
グアナミン樹脂のマイコート136(M136)を5質量部に変更し、充てん材としてアエロジルR972を7質量部、アエロジル#50を25質量部、及び硫酸バリウムB54を30重量部、を用いたこと以外は実施例1と同様にして変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この変性ポリイミド樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。
【0047】
〔比較例1〕
硬化成分のグアナミン樹脂の代わりに、ジイソシアネート化合物であるB830を4.5質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。
【0048】
〔比較例2〕
硬化成分のグアナミン樹脂の代わりに、メラミン樹脂のサイメル211(C211)を20質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。
【0049】
〔比較例3〕
硬化成分のグアナミン樹脂の代わりに、メラミン樹脂のC236を20質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によって、ポリブタジエンセグメント或いはポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントを導入した変性ポリイミド樹脂を含んで構成された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物において、加熱処理して得られる硬化膜の表面硬度、タック性、及び反りが改良された熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を提供することができる。この熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理して得られる硬化膜は、電気絶縁性、耐熱性、柔軟性などが優れると共に、特に表面硬度、タック性及び反りが改良されたものであるから、柔軟性配線板用の絶縁保護膜として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエンセグメント又はポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが導入された変性ポリイミド樹脂と、グアナミン樹脂とを含有することを特徴とする熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項3】
変性ポリイミド樹脂100質量部に対して、グアナミン樹脂を1〜60質量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項4】
グアナミン樹脂がベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの熱硬化性変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理して得られたことを特徴とする硬化膜。

【公開番号】特開2010−163607(P2010−163607A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283114(P2009−283114)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】