説明

熱線遮蔽材

【課題】可視光透過性、遮熱係数、耐擦傷性および鉛筆硬度の良好な熱線遮蔽材の提供。
【解決手段】少なくとも1種の金属粒子およびバインダーを含有する金属粒子含有層を有し、前記金属粒子含有層の厚みが10nm〜80nmであり、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記金属平板粒子含有層中のバインダーが架橋剤由来の架橋構造を有し、架橋基密度比が0.3〜30である熱線遮蔽材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光透過性、遮熱係数、耐擦傷性および鉛筆硬度が良好な熱線遮蔽材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素削減のための省エネルギー施策の一つとして、自動車や建物の窓に対する熱線遮蔽性付与材料が開発されている。熱線遮蔽性(日射熱取得率)の観点からは、吸収した光の室内への再放射(吸収した日射エネルギーの約1/3量)がある熱線吸収型より、再放射がない熱線反射型が望ましく、様々な提案がなされている。
【0003】
赤外線遮蔽フィルタとして、Ag平板粒子を用いたフィルタが提案されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1に記載の赤外線遮蔽フィルタはプラズマディスプレイパネル(PDP)に用いることを意図したものであり、かかるAg平板粒子は、その配列制御がなされていないことから、主に赤外域の波長光赤外線吸収体として機能し、積極的に熱線を反射する材料として機能するものではなかった。したがって、かかるAg平板粒子からなる赤外線遮蔽フィルタを直射日光の遮熱に使用すると、この赤外線吸収フィルタ自体が暖まることになり、その熱で室温が上昇してしまうために、赤外線遮蔽材としての機能は不十分であった。また、特許文献1の実施例ではAg平板粒子を含む分散液をガラス上に塗布して乾燥させて赤外線遮蔽フィルタを形成しているものの、乾燥膜の厚みは1μm、すなわち1000nmと記載されていた。
【0004】
一方、特許文献2には、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向している熱線遮蔽材が開示されている。特許文献4には金属粒子含有層の厚みの好ましい範囲について記載がなく、また、実施例では金属粒子含有層が0.1〜0.5μm、すなわち100〜500nmである態様が開示されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−178915号公報
【特許文献2】特開2011−118347号公報
【特許文献3】特開2004−1289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の赤外線遮蔽フィルターは赤外線吸収型のため、太陽光の遮熱に使用すると赤外線吸収体が暖まってしまい、室内の温度上昇を起こしてしまう問題があった。また、窓ガラスに貼り合わせたとき、太陽光が当たる場所と当たらない場所で温度上昇が異なる影響でガラスが割れる(熱われ)などの問題が起こる問題があった。
特許文献2に記載の熱線遮蔽材は赤外線を反射でき、赤外線遮蔽フィルムとして有利になるものであった。しかしながら、本発明者らが特許文献2に記載の熱線遮蔽材についてさらに遮熱係数を高めて熱線反射能を改善することを検討したところ、金属平板粒子の配向性は、金属平板粒子液を含む塗布液中の固形分量が少ない(すなわち塗布層厚みが薄い)ほど高くなり、それにより得られる熱線遮蔽材の熱線反射能を高められることを見出すに至った。しかしながら、塗布層の厚みを薄くすると金属平板粒子の配向性が高まる一方で、金属平板粒子が塗布表面に露出しやすくなり、耐擦傷性や鉛筆強度などの膜強度が悪化する問題があることが判明した。
【0007】
一方、特許文献3には、細孔構造を有するアスペクト比が3〜8の平板状アルミナ水和物粒子と水溶性樹脂を含有する塗布液に架橋剤を添加し、得られる塗布層を多孔質層とすることで耐傷性などを向上させた色材受容層を有するインクジェット記録用シートが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の色材受容層はそもそも用途も大きく異なり、インクジェット記録の場合では液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要がある観点から、色材受容層が多孔質層となるように架橋された態様が記載されているのみであり、色材受容層の層厚は10〜50μm(すなわち、10000〜50000nm)程度であった。そのため、さらに薄膜化したときの塗布膜の物性については何ら検討されていなかった。また、特許文献3の発明はインクジェット記録用シート分野の発明であるため、可視光透過性や熱線遮蔽について検討されておらず、またそれに関連する金属平板粒子の詳細な形状やその形状分布については記載がなかった。
以上のように、可視光透過性、遮熱係数、耐擦傷性および鉛筆硬度がいずれも良好である熱線遮蔽材は、従来知られていなかったのが実情であった。
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決することを目的とする。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、可視光透過性、遮熱係数、耐擦傷性および鉛筆硬度が良好な熱線遮蔽材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特許文献2の構成において、金属平板粒子含有層の層厚みを特定の範囲に制御し、バインダーと架橋剤を添加して特定の範囲の架橋基密度比となるように架橋させることで、得られる熱線遮蔽材の膜強度を顕著に改善することができることを見出し、可視光透過性、遮熱係数、耐擦傷性および鉛筆硬度が良好な熱線遮蔽材を提供できることを見出すに至った。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。
[1] 少なくとも1種の金属粒子およびバインダーを含有する金属粒子含有層を有し、前記金属粒子含有層の厚みが10nm〜80nmであり、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記金属平板粒子含有層中のバインダーが架橋剤由来の架橋構造を有し、かつ、該バインダーが2種の架橋基からなる1組の架橋系を有する場合は下記式(1)で計算され、3種以上の架橋基からなる2組以上の架橋系を有する場合は下記式(2)で計算される架橋基密度比が0.3〜30であることを特徴とする熱線遮蔽材。
バインダー架橋基密度比=([B])/[A] ・・・式(1)
(式(1)中、[A]および[B]はそれぞれバインダー中の架橋系AおよびBの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が2種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[B]とする。)
バインダー架橋基密度比=([B]+[C])/[A]・・・式(2)
(式(2)中、[A]、[B]および[C]はそれぞれバインダー中の架橋系A、BおよびCの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が3種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[B]とし、3番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[C]とする。)
[2] [1]に記載の熱線遮蔽材は、前記架橋剤由来の成分が、前記金属平板粒子含有層中に、前記バインダーに対し、0.1〜100質量%含まれることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の熱線遮蔽材は、前記バインダーが水溶性または水分散性を有することが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記バインダーの主ポリマーがポリエステル樹脂であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記架橋剤が前記金属平板粒子含有層中に残留していることが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記架橋剤がカルボジイミド架橋剤系およびオキサゾリン系架橋剤のうち少なくとも一方であることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記架橋基がカルボジイミド基ならびにオキサゾリン基のうち少なくとも一方、および、カルボキシル基を含むことが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均円相当直径の変動係数が30%以下であることが好ましい。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均円相当直径が70nm〜500nmであり、かつアスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)が6〜40であることが好ましい。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均厚みが14nm以下であることが好ましい。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が、少なくとも銀を含むことが好ましい。
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していることが好ましい。
[13] [1]〜[12]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記金属粒子含有層の表面の鉛筆硬度がB以上であることが好ましい。
[14] [1]〜[13]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、赤外光を反射することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可視光透過性、遮熱係数、耐擦傷性および鉛筆硬度が良好な熱線遮蔽材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の熱線遮蔽材の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図3A】図3Aは、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図3B】図3Bは、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図3C】図3Cは、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、本発明の熱線遮蔽材に含まれる平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、円形状の平板状金属粒子を示す。
【図4B】図4Bは、本発明の熱線遮蔽材に含まれる平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、六角形状の平板状金属粒子を示す。
【図5A】図5Aは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属平板粒子を含む金属粒子含有層(基材の平面とも平行)と金属平板粒子の主平面(円相当径Dを決める面)とのなす角度(θ)を説明する図を示す。
【図5B】図5Bは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属粒子含有層の熱線遮蔽材の深さ方向における金属平板粒子の存在領域を示す図である。
【図5C】図5Cは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の一例を示した概略断面図である。
【図5D】図5Dは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の他の一例を示した概略断面図である。
【図5E】図5Eは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の他の一例を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の熱線遮蔽材について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
(熱線遮蔽材)
本発明の熱線遮蔽材は、少なくとも1種の金属粒子およびバインダーを含有する金属粒子含有層を有し、前記金属粒子含有層の厚みが10nm〜80nmであり、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記金属平板粒子含有層中のバインダーが架橋剤由来の架橋構造を有し、かつ、該バインダーが2種の架橋基からなる1組の架橋系を有する場合は下記式(1)で計算され、3種以上の架橋基からなる2組以上の架橋系を有する場合は下記式(2)で計算される架橋基密度比が0.3〜30であることを特徴とする。
バインダー架橋基密度比=([B])/[A] ・・・式(1)
(式(1)中、[A]および[B]はそれぞれバインダー中の架橋系AおよびBの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が2種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[B]とする。)
バインダー架橋基密度比=([B]+[C])/[A]・・・式(2)
(式(2)中、[A]、[B]および[C]はそれぞれバインダー中の架橋系A、BおよびCの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が3種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[B]とし、3番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[C]とする。)
このような構成により、本発明の熱線遮蔽材は可視光透過性、遮熱係数、耐擦傷性および鉛筆硬度が良好となる。ここで、樹脂層の耐擦傷性を架橋剤により向上させる概念は従来知られていたが、本発明のように特定の形状の平板粒子の含有層を性能向上のため薄くした際、表面露出粒子による耐擦傷性が悪化する状況は一般的ではなく、知られていなかった。またこの状況に対して、特定の範囲の架橋基密度比となるように樹脂架橋させることにより、特に大きな硬膜の効果が得られることも知られていなかった。
本発明の熱線遮蔽材は、少なくとも1種の金属粒子およびバインダーを含有する金属粒子含有層を有し、必要に応じて、粘着層、紫外線吸収層、基材、金属酸化物粒子含有層などのその他の層を有する態様も好ましい。
【0015】
前記熱線遮蔽材10の層構成としては、図1に示すように、少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層2を有し、その表面に金属平板粒子3が偏在している態様が挙げられる。また、図2に示すように、金属粒子含有層2と、該金属粒子含有層上にオーバーコート層4とを有し、その表面に金属平板粒子3が偏在している態様が挙げられる。
また、図3Aに示すように、基材1と、該基材上に金属粒子含有層2と、該金属粒子含有層上に粘着層11とを有する態様が好適に挙げられる。
また、図3Bに示すように、基材1と、該基材上に金属粒子含有層2と、該金属粒子含有層上にオーバーコート層4と、該オーバーコート層上に粘着層11とを有する態様が好適に挙げられる。前記図3Aまたは図3Bにおいて、前記オーバーコート層4または、前記粘着層11に紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
また、図3Cに示すように、基材1と、該基材上に金属粒子含有層2と、該金属粒子含有層上にオーバーコート層4と、該オーバーコート層上に粘着層11とを有し、基材1の裏面にハードコート層5を有する態様が好適に挙げられる。
【0016】
<1.金属粒子含有層>
前記金属粒子含有層は、少なくとも1種の金属粒子およびバインダーを含有する層であり、前記金属粒子含有層の厚みが10nm〜80nmであり、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記金属平板粒子含有層中のバインダーが架橋剤由来の架橋構造を有し、かつ、該バインダーが2種の架橋基からなる1組の架橋系を有する場合は前記式(1)で計算され、3種以上の架橋基からなる2組以上の架橋系を有する場合は前記式(2)で計算される架橋基密度比が0.3〜30であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属粒子含有層の厚みをdとしたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在していることが好ましく、前記金属粒子含有層の表面からd/3の範囲に存在することよりが好ましい。いかなる理論に拘泥するものでもなく、また、本発明の熱線遮蔽材は以下の製造方法に限定されるものではないが、前記金属粒子含有層を製造するときに特定のポリマー(好ましくはラテックス)を添加することなどにより、金属平板粒子を前記金属粒子含有層の一方の表面に偏析させることができる。
【0017】
−1−1.金属粒子−
前記金属粒子としては、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属粒子含有層において、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の存在形態としては、金属粒子含有層の一方の表面(本発明の熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していることが好ましい。
なお、前記金属粒子含有層の一方の表面は、フラットな平面であることが好ましい。本発明の熱線遮蔽材の前記金属粒子含有層が仮支持体としての基材を有する場合は、基材の表面とともに略水平面であることが好ましい。ここで、前記熱線遮蔽材は、前記仮支持体を有していてもよく、有していなくてもよい。
前記金属粒子の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、500nm以下の平均粒子径を有するものであってもよい。
前記金属粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の反射率が高い点から、銀、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金などが好ましい。
【0018】
−1−2.金属平板粒子−
前記金属平板粒子としては、2つの主平面からなる粒子(図4A及び図4B参照)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状、円形状、三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、六角形状以上の多角形状〜円形状であることがより好ましく、六角形状または円形状であることが特に好ましい。
本明細書中、円形状とは、金属平板粒子(平板状金属粒子と同義)の平均円相当径の50%以上の長さを有する辺の個数が1個の金属平板粒子当たり0個である形状のことを言う。前記円形状の金属平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本明細書中、六角形状とは、金属平板粒子の平均円相当径の20%以上の長さを有する辺の個数が1個の金属平板粒子当たり6個である形状のことを言う。なお、その他の多角形についても同様である。前記六角形状の金属平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、六角形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状の角が鋭角のものでも、鈍っているものでもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、角が鈍っているものであることが好ましい。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属平板粒子の材料としては、特に制限はなく、前記金属粒子と同じものを目的に応じて適宜選択することができる。前記金属平板粒子は、少なくとも銀を含むことが好ましい。
【0019】
前記金属粒子含有層に存在する金属粒子のうち、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子は、金属粒子の全個数に対して、60個数%以上であり、65個数%以上が好ましく、70個数%以上が更に好ましい。前記金属平板粒子の割合が、60個数%未満であると、可視光線透過率が低くなってしまうことがある。
【0020】
[1−2−1.面配向]
本発明の熱線遮蔽材において、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子は、その主平面が金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して、平均0°〜±30°の範囲で面配向していることが好ましく、平均0°〜±20°の範囲で面配向していることがより好ましく、平均0°〜±10°の範囲で面配向していることが特に好ましい。
前記金属平板粒子の存在状態は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する図5D、図5Eのように並んでいることが好ましい。
【0021】
ここで、図5A〜図5Eは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図である。図5C、図5Dおよび図5Eは、金属粒子含有層2中における金属平板粒子3の存在状態を示す。図5Aは、基材1の平面と金属平板粒子3の主平面(円相当径Dを決める面)とのなす角度(±θ)を説明する図である。図5Bは、金属粒子含有層2の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示すものである。
図5Aにおいて、基材1の表面と、金属平板粒子3の主平面または主平面の延長線とのなす角度(±θ)は、前記の面配向における所定の範囲に対応する。即ち、面配向とは、熱線遮蔽材の断面を観察した際、図5Aに示す傾角(±θ)が小さい状態をいい、特に、図5Dは、基材1の表面と金属平板粒子3の主平面とが接している状態、即ち、θが0°である状態を示す。基材1の表面に対する金属平板粒子3の主平面の面配向の角度、即ち図5Aにおけるθが±30°を超えると、熱線遮蔽材の所定の波長(例えば、可視光域長波長側から近赤外光領域)の反射率が低下してしまう。
【0022】
前記金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して金属平板粒子の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における金属粒子含有層(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材)及び金属平板粒子を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、熱線遮蔽材を、ミクロトーム、集束イオンビーム(FIB)を用いて熱線遮蔽材の断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0023】
前記熱線遮蔽材において、金属平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤する場合は、液体窒素で凍結した状態の試料を、ミクロトームに装着されたダイヤモンドカッター切断することで、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。また、熱線遮蔽材において金属平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤しない場合は、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。
【0024】
前記の通り作製した断面サンプルまたは断面切片サンプルの観察としては、サンプルにおいて金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して金属平板粒子の主平面が面配向しているかどうかを確認し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FE−SEM、TEM、光学顕微鏡などを用いた観察が挙げられる。前記断面サンプルの場合は、FE−SEMにより、前記断面切片サンプルの場合は、TEMにより観察を行ってもよい。FE−SEMで評価する場合は、金属平板粒子の形状と傾角(図5Aの±θ)が明瞭に判断できる空間分解能を有することが好ましい。
【0025】
[1−2−2.平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子径(平均円相当径)の粒度分布]
前記金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70nm〜500nmが好ましく、100nm〜400nmがより好ましい。前記平均粒子径(平均円相当径)が、70nm未満であると、金属平板粒子の吸収の寄与が反射より大きくなるため十分な熱線反射能が得られなくなることがあり、500nmを超えると、ヘイズ(散乱)が大きくなり、基材の透明性が損なわれてしまうことがある。
ここで、前記平均粒子径(平均円相当径)とは、TEMで粒子を観察して得た像から任意に選んだ200個の平板粒子の主平面直径(最大長さ)の平均値を意味する。
前記金属粒子含有層中に平均粒子径(平均円相当径)が異なる2種以上の金属粒子を含有することができ、この場合、金属粒子の平均粒子径(平均円相当径)のピークが2つ以上、即ち2つの平均粒子径(平均円相当径)を有していてもよい。
【0026】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子の粒度分布における変動係数としては、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。前記変動係数が、30%を超えると、熱線遮蔽材における熱線の反射波長域がブロードになってしまうことがある。
ここで、前記金属平板粒子の粒度分布における変動係数は、例えば前記の通り得た平均値の算出に用いた200個の金属平板粒子の粒子径の分布範囲をプロットし、粒度分布の標準偏差を求め、前記の通り得た主平面直径(最大長さ)の平均値(平均粒子径(平均円相当径))で割った値(%)である。
【0027】
[1−2−3.金属平板粒子の厚み・アスペクト比]
本発明の熱線遮蔽材では、前記金属平板粒子の厚みは14nm以下であることが好ましく、5〜14nmであることが好ましく、5〜12nmであることがより好ましい。
前記金属平板粒子のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、波長800nm〜1,800nmの赤外光領域での反射率が高くなる点から、6〜40が好ましく、10〜35がより好ましい。前記アスペクト比が6未満であると反射波長が800nmより小さくなり、40を超えると、反射波長が1,800nmより長くなり、十分な熱線反射能が得られないことがある。
前記アスペクト比は、金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)を金属平板粒子の平均粒子厚みで除算した値を意味する。平均粒子厚みは、金属平板粒子の主平面間距離に相当し、例えば、図4A及び図4Bに示す通りであり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
前記AFMによる平均粒子厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板に金属平板粒子を含有する粒子分散液を滴下し、乾燥させて、粒子1個の厚みを測定する方法などが挙げられる。
【0028】
[1−2−4.金属平板粒子の存在範囲]
本発明の熱線遮蔽材において、前記金属平板粒子の存在領域の厚みは、5〜60nmであることが好ましく、11〜60nmであることがより好ましく、20〜60nmであることが特に好ましい。
前記熱線遮蔽材では、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在することが好ましく、d/3の範囲に存在することがより好ましく、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が前記金属粒子含有層の一方の表面に露出していることが更に好ましい。金属平板粒子が金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在するとは、金属平板粒子の少なくとも一部が金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に含まれていることを意味する。すなわち、金属平板粒子の一部が、金属粒子含有層の表面よりも突出している図5Eに記載される金属平板粒子も、金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在する金属平板粒子として扱う。なお、図5Eは、各金属平板粒子の厚み方向のごく一部が金属粒子含有層に埋没してことを意味し、各金属平板粒子が金属粒子含有層の表面上に積まれているわけではない。
また、金属平板粒子が前記金属粒子含有層の一方の表面に露出しているとは、金属平板粒子の一方の表面の一部が、金属粒子含有層の表面よりも突出していることを意味する。
ここで、前記金属粒子含有層中の金属平板粒子存在分布は、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
【0029】
前記熱線遮蔽材において、図5Bに示すように、金属粒子含有層2における金属平板粒子3を構成する金属のプラズモン共鳴波長をλとし、金属粒子含有層2における媒質の屈折率をnとするとき、前記金属粒子含有層2が、熱線遮蔽材の水平面からの深さ方向において、(λ/n)/4の範囲で存在することが好ましい。この範囲内であると、熱線遮蔽材の上側と下側のそれぞれの金属粒子含有層の界面での反射波の位相により反射波の振幅が強めあう効果が十分大きく、可視光透過率及び熱線最大反射率が良好となる。
前記金属粒子含有層における金属平板粒子を構成する金属のプラズモン共鳴波長λは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射性能を付与する点で、400nm〜2,500nmであることが好ましく、可視光透過率を付与する点から、700nm〜2,500nmであることがより好ましい。
【0030】
[1−2−5.金属粒子含有層の媒質]
前記金属粒子含有層における媒質としてはバインダーを含むこと以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明の熱線遮蔽材は、前記金属含有層が透明ポリマーを含むことが好ましい。前記バインダーとして用いられるポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等の高分子などが挙げられる。その中でも、本発明では、前記ポリマーの主ポリマーがポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂であることが好ましく、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂であることが前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上を前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在させやすい観点からより好ましく、ポリエステル樹脂であることが本発明の熱線遮蔽材の耐擦傷性や鉛筆強度をより改善する観点から特に好ましい。
前記ポリエステル樹脂の中でも、飽和ポリエステル樹脂であることが二重結合を含まないために優れた耐候性を付与できる観点からより特に好ましい。
本発明の熱線遮蔽材は、前記バインダーが水溶性または水分散性を有することが好ましい。また、前記バインダーは分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つことが、水溶性・水分散性の架橋剤や硬化剤等で硬化させることで高い硬度・耐久性・耐熱性を得られる観点から、より好ましい。さらに本発明では、前記バインダーは分子末端にカルボキシル基を持つことが水溶性・水分散性の架橋剤(特に水溶性の架橋剤)との反応性を高められる観点でより好ましい。
前記バインダーとして用いられるポリマーとしては、商業的に入手できるものを好ましく用いることもでき、例えば、互応化学工業株式会社製の水溶性ポリエステル樹脂である、プラスコートZ−867などを挙げることができる。また、ファインテックスES650、ES2200(大日本インキ化学工業(株)製ポリエステル)、バイロナールMD1400、MD1480(東洋紡(株)製ポリエステル)、プラスコートZ−221、Z−561、Z−730、RZ−142、Z−687(互応化学工業(株)製ポリエステル)なども挙げることができる。
また、本明細書中、前記金属含有層に含まれる前記バインダーとして用いられるポリマーの主ポリマーとは、前記金属含有層に含まれるポリマーの50質量%以上を占めるポリマー成分のことを言う。
前記金属粒子含有層に含まれる前記金属粒子に対する前記ポリエステル樹脂の含有量が1〜10000質量%であることが好ましく、10〜1000質量%であることがより好ましく、20〜500質量%であることが特に好ましい。前記金属粒子含有層に含まれるバインダーを上記範囲以上とすることで、耐擦傷性や鉛筆強度等の物理特性を改善することができる。
前記媒質の屈折率nは、1.4〜1.7であることが好ましい。
前記熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の厚みをaとしたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、厚み方向のa/10以上を前記ポリマーに覆われていることが好ましく、厚み方向のa/10〜10aを前記ポリマーに覆われていることがより好ましく、a/8〜4aを前記ポリマーに覆われていることが特に好ましい。このように前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が前記金属粒子含有層に一定割合以上埋没していることにより、より耐擦傷性を高めることができる。すなわち、前記熱線遮蔽材は、図5Eの態様よりも、図5Dの態様の方が好ましい。
【0031】
[1−2−6.金属平板粒子の面積率]
前記熱線遮蔽材を上から見た時の基材の面積A(金属粒子含有層に対して垂直方向から見たときの前記金属粒子含有層の全投影面積A)に対する金属平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕としては、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。前記面積率が、15%未満であると、熱線の最大反射率が低下してしまい、遮熱効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記面積率は、例えば熱線遮蔽材基材を上からSEM観察で得られた画像や、AFM(原子間力顕微鏡)観察で得られた画像を画像処理することにより測定することができる。
【0032】
[1−2−7.金属平板粒子の平均粒子間距離]
前記金属粒子含有層における水平方向に隣接する金属平板粒子の平均粒子間距離としては、可視光線透過率及び熱線の最大反射率の点から、金属平板粒子の平均粒子径の0.1〜10が好ましい。
前記金属平板粒子の水平方向の平均粒子間距離が、前記金属平板粒子の平均粒子径の1/10以上であると、可視光線透過率をより高めることができる。また、10以下であると熱線反射率をより高めることができる。また、水平方向の平均粒子間距離は、可視光線透過率の点で、不均一(ランダム)であることが好ましい。ランダムでない場合、即ち、均一であると、回折散乱によりモアレ縞が見えることがある。
【0033】
ここで、前記金属平板粒子の水平方向の平均粒子間距離とは、隣り合う2つの粒子の粒子間距離の平均値を意味する。また、前記平均粒子間距離がランダムであるとは、「100個以上の金属平板粒子が含まれるSEM画像を二値化した際の輝度値の2次元自己相関を取ったときに、原点以外に有意な極大点を持たない」ことを意味する。
【0034】
[1−2−8.金属粒子含有層の層構成]
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、図5A〜図5Eに示すように、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の形態で配置される。
前記金属粒子含有層としては、図5A〜図5Eに示すように単層で構成されてもよく、複数の金属粒子含有層で構成されてもよい。複数の金属粒子含有層で構成される場合、遮熱性能を付与したい波長帯域に応じた遮蔽性能を付与することが可能となる。なお、前記金属粒子含有層が複数の金属粒子含有層で構成される場合、熱線遮蔽材は、少なくとも最表面の金属粒子含有層において、該最表面の金属粒子含有層の厚みをd’としたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、該最表面の金属粒子含有層の表面からd’/2の範囲に存在することが好ましい。
【0035】
[1−2−9.金属粒子含有層の厚み]
本発明の熱線遮蔽材は、前記金属粒子含有層の厚みが10〜80nmである。前記金属粒子含有層の厚みは、20〜80nmであることがより好ましく、30〜50nmであることが特に好ましい。前記金属粒子含有層の厚みdは、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の厚みをaとしたとき、a〜10aであることが好ましく、2a〜8aであることがより好ましく、1a〜5aであることが特に好ましい。
【0036】
ここで、前記金属粒子含有層の各層の厚みは、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。前記金属粒子含有層との境界を判別しにくい場合、前記金属粒子含有層の上にカーボン蒸着を施した上でオーバーコート層をコーティングし、断面をSEM観察することにより両層間の界面を認識することができ、前記金属粒子含有層の厚みdを決定することができる。
また、熱線遮蔽材の前記金属粒子含有層の上に、例えば後述するオーバーコート層などの他の層を有する場合においても、他の層と前記金属粒子含有層の境界は同様の方法によって決定することができ、前記金属粒子含有層の厚みdを決定することができる。なお、前記金属粒子含有層に含まれるポリマーと同じ種類のポリマーを用いて、前記金属粒子含有層の上にコーティングをする場合は通常はSEM観察した画像によって前記金属粒子含有層との境界を判別できることができ、前記金属粒子含有層の厚みdを決定することができる。
【0037】
[1−2−10.金属平板粒子の合成方法]
前記金属平板粒子の合成方法としては、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を合成し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形〜三角形状の金属平板粒子を合成後、例えば、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理などを行うことにより、六角形〜三角形状の金属平板粒子の角を鈍らせて、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を得てもよい。
【0038】
前記金属平板粒子の合成方法としては、前記の他、予めフィルム、ガラスなどの透明基材の表面に種晶を固定後、平板状に金属粒子(例えばAg)を結晶成長させてもよい。
【0039】
前記熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。前記更なる処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高屈折率シェル層の形成、分散剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することなどが挙げられる。
【0040】
−1−2−10−1.高屈折率シェル層の形成−
前記金属平板粒子は、可視光域透明性を更に高めるために、可視光域透明性が高い高屈折率材料で被覆されてもよい。
前記高屈折率材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TiOx、BaTiO3、ZnO、SnO2、ZrO2、NbOxなどが挙げられる。
【0041】
前記被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Langmuir、2000年、16巻、p.2731−2735に報告されているようにテトラブトキシチタンを加水分解することにより銀の金属平板粒子の表面にTiOx層を形成する方法であってもよい。
【0042】
また、前記金属平板粒子に直接高屈折率金属酸化物層シェルを形成することが困難な場合は、前記の通り金属平板粒子を合成した後、適宜SiO2やポリマーのシェル層を形成し、更に、このシェル層上に前記金属酸化物層を形成してもよい。TiOxを高屈折率金属酸化物層の材料として用いる場合には、TiOxが光触媒活性を有することから、金属平板粒子を分散するマトリクスを劣化させてしまう懸念があるため、目的に応じて金属平板粒子にTiOx層を形成した後、適宜SiO2層を形成してもよい。
【0043】
−1−2−10−2.各種添加物の添加−
前記金属平板粒子は、該金属平板粒子を構成する銀などの金属の酸化を防止するために、メルカプトテトラゾール、アスコルビン酸等の酸化防止剤を吸着していてもよい。また、酸化防止を目的として、Ni等の酸化犠牲層が金属平板粒子の表面に形成されていてもよい。また、酸素を遮断することを目的として、SiO2などの金属酸化物膜で被覆されていてもよい。
前記金属平板粒子は、分散性付与を目的として、例えば、4級アンモニウム塩、アミン類等のN元素、S元素、及びP元素の少なくともいずれかを含む低分子量分散剤、高分子量分散剤などの分散剤を添加してもよい。
【0044】
[1−2−11.金属粒子含有層の組成]
−1−2−11−1.架橋剤−
本発明の熱線遮蔽材は、前記金属粒子含有層中のバインダーが架橋剤由来の架橋構造を有し、かつ、該バインダーが2種の架橋基からなる1組の架橋系を有する場合は下記式(1)で計算され、3種以上の架橋基からなる2組以上の架橋系を有する場合は下記式(2)で計算される架橋基密度比が0.3〜30である。
バインダー架橋基密度比=([B])/[A] ・・・式(1)
(式(1)中、[A]および[B]はそれぞれバインダー中の架橋系AおよびBの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が2種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[B]とする。)
バインダー架橋基密度比=([B]+[C])/[A]・・・式(2)
(式(2)中、[A]、[B]および[C]はそれぞれバインダー中の架橋系A、BおよびCの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が3種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[B]とし、3番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[C]とする。)
上記式(1)および(2)中、最も固形分濃度の高い高分子量体は、バインダーポリマー中の主ポリマーであることが好ましい。
前記架橋基密度比は、0.5〜20であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。
【0045】
本明細書中、架橋系とは、熱線遮蔽材を構成する高分子量体や低分子量体などの有機物中の特定の組み合わせの官能基が、混合や加熱によって反応・結合し、それらの官能基を持つ高分子量体・低分子量体同士を化学的に架橋する系のことを言う。
本発明の熱線遮蔽材は、前記バインダーが有する架橋系については特に制限はないが、架橋系としてはカルボジイミド基およびカルボキシル基の組み合わせの架橋系を含むことが好ましく、さらにカルボジイミド基およびオキサゾリン基の組み合わせの架橋系を含んでいてもよい。すなわち、前記架橋系AおよびBの組み合わせとして、カルボジイミド基およびカルボキシル基の組み合わせが好ましい。また、前記架橋系AおよびCの組み合わせとして、カルボジイミド基およびオキサゾリン基の組み合わせが好ましい。
カルボジイミド基およびカルボキシル基以外の前記バインダーが有する架橋系や架橋基は特に制限はなく、後述の架橋剤由来の基や、前記バインダーとして用いられるポリマー由来の基を挙げることができる。例えば、エポキシ基、水酸基、アミノ基などを挙げることができる。
本明細書中、架橋基とは、前記架橋系を構成する官能基のことを言う。本発明の熱線遮蔽材は、前記架橋基がカルボジイミド基ならびにオキサゾリン基のうち少なくとも一方、および、カルボキシル基を含むことが好ましく、カルボジイミド基およびカルボキシル基を含むことがより好ましく、カルボジイミド基およびカルボキシル基であることが特に好ましい。なお、本明細書中、前記バインダーが有する架橋基という場合、バインダーが該架橋基由来の構造を少なくとも有していればよく、完全に架橋反応が進んで該架橋基自体を有していなくていてもよい。例えば、カルボジイミド基およびカルボキシル基の架橋基の組み合わせの架橋系を前記バインダーが有する場合、カルボジイミド基およびカルボキシル基がN−アシルウレア構造を形成し、カルボジイミド基またはカルボキシル基が該バインダー中に含まれていなくてもよい。
【0046】
前記架橋剤としては特に制限はなく、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。これらの中でカルボジイミド系及びオキサゾリン系架橋剤が好ましく、カルボジイミド系架橋剤がより好ましい。
前記架橋剤は、水溶性または水分散性を有するタイプであることが好ましく、水溶性を有することが好ましい。
前記カルボジイミド系架橋剤の具体例としては、例えばカルボジライトV−02−L2(日清紡績(株)製)などが好ましい。
【0047】
本発明の熱線遮蔽材は、前記架橋剤由来の成分が、該金属平板粒子含有層中に、前記バインダーに対し、0.1〜100質量%含まれることが好ましく、1〜50質量%含まれることがより好ましく、1〜20質量%の架橋剤由来の成分を含有することが特に好ましく、より特に好ましくは2〜20質量%である。
【0048】
さらに、本発明の熱線遮蔽材は、前記架橋剤が前記金属平板粒子含有層中に残留していてもよい。前記架橋剤が前記金属平板粒子含有層中に残留していることにより、本発明の熱線遮蔽材が前記金属平板粒子含有層に架橋構造を有すると判断してもよい。
以下に本発明に用いられる代表的な各架橋残基の定量方法を示す。
・エポキシ当量:JIS K 7236
・水酸基当量/酸化:JIS K 0070またはJIS K 1557−1
・カルボジイミド:赤外分光法によりカルボジイミド基の吸収(2140cm-1)から算出
・アミン価:JIS K 7237
【0049】
−1−2−11−2.界面活性剤−
また、本発明の熱線遮蔽材において、前記金属粒子含有層がポリマーを含む場合、界面活性剤を添加することがハジキの発生を抑えて良好な面状な層が得られる観点から好ましい。界面活性剤を前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる界面活性剤の具体例としては、例えばラピゾールA−90(日油株式会社製)、ナロアクティーHN−100(三洋化成工業株式会社製)などがある。前記金属粒子含有層中の全バインダーに対して0.05〜10質量%の界面活性剤を含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0050】
<2.その他の層>
<<2−1.粘着層>>
前記熱線遮蔽材は、粘着層を有していてもよい。前記粘着層は、紫外線吸収剤を含むことができる。
前記粘着層の形成に利用可能な材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの材料からなる粘着層は、塗布により形成することができる。
さらに、前記粘着層には帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
前記粘着層の厚みとしては、0.1μm〜10μmが好ましい。
【0051】
<<2−2.基材>>
本発明の熱線遮蔽材は、前記金属粒子含有層の一方の表面に基材を有することが好ましく、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が偏在している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面に、基材を有することがより好ましい。
前記基材としては、光学的に透明な基材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線透過率が70%以上のもの、好ましくは80%以上のもの、近赤外線域の透過率が高いものなどが挙げられる。
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材料などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱線遮蔽材の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
この基材フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、日射遮蔽フィルムの使用目的に応じて適宜選択することができ、通常は10μm〜500μm程度であり、12μm〜300μmが好ましく、16μm〜125μmがより好ましい。
【0052】
<<2−3.ハードコート層>>
耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有するハードコート層を含むことも好適である。ハードコート層には金属酸化物粒子を含むことができる。
前記ハードコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜その種類も形成方法も選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。前記ハードコート層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましい。前記ハードコート層上に更に反射防止層及び/又は防眩層を形成すると、耐擦傷性に加え、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。また、前記ハードコート層に前記金属酸化物粒子を含有してもよい。
【0053】
<<2−4.オーバーコート層>>
前記熱線遮蔽材において、物質移動による金属平板粒子の酸化・硫化を防止し、耐擦傷性を付与するため、前記熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が露出している方の前記金属粒子含有層の表面に密接するオーバーコート層を有していてもよい。また、前記金属粒子含有層と後述の紫外線吸収層との間にオーバーコート層を有していてもよい。前記熱線遮蔽材が金属平板粒子が金属粒子含有層の表面に偏在している場合は、金属平板粒子の剥落による製造工程のコンタミ防止、別層塗布時の金属平板粒子配列乱れの防止、などのため、オーバーコート層を有していてもよい。
前記オーバーコート層には紫外線吸収剤を含んでもよい。
前記オーバーコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、バインダー、マット剤、及び界面活性剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。
前記オーバーコート層の厚みとしては、0.01μm〜1,000μmが好ましく、0.02μm〜500μmがより好ましく、0.1〜10μmが特に好ましく、0.2〜5μmがより特に好ましい。
【0054】
<<2−5.紫外線吸収剤>>
前記熱線遮蔽材は、紫外線吸収剤が含まれている層を有していてもよい。
前記紫外線吸収剤を含有する層は、目的に応じて適宜選択することができ、粘着層であってもよく、また、前記粘着層と前記金属粒子含有層との間の層(例えば、オーバーコート層など)であってもよい。いずれの場合も、前記紫外線吸収剤は、前記金属粒子含有層に対して、太陽光が照射される側に配置される層に添加されることが好ましい。
【0055】
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,4ドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0057】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール(チヌビン326)、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−5−ジターシャリーブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0058】
前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物、トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物などが挙げられる。
前記モノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。前記ビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロピルオキシフェニル)−6−(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス[2−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシヘプタエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。前記トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−6−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−6−[2,4−ビス[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0059】
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、2−エチルヘキシルサリチレートなどが挙げられる。
【0060】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0061】
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光透明性や日射透明性が高い方が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。なお、バインダーが熱線を吸収すると、金属平板粒子による反射効果が弱まってしまうことから、熱線源と金属平板粒子との間に形成される紫外線吸収層としては、450nm〜1,500nmの領域に吸収を持たない材料を選択したり、該紫外線吸収層の厚みを薄くしたりすることが好ましい。
前記紫外線吸収層の厚みとしては、0.01μm〜1,000μmが好ましく、0.02μm〜500μmがより好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、紫外線の吸収が足りなくなることがあり、1,000μmを超えると、可視光の透過率が下がることがある。
前記紫外線吸収層の含有量としては、用いる紫外線吸収層によって異なり、一概に規定することができないが、前記熱線遮蔽材において所望の紫外線透過率を与える含有量を適宜選択することが好ましい。
前記紫外線透過率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。前記紫外線透過率が、5%を超えると、太陽光の紫外線により前記金属平板粒子層の色味が変化することがある。
【0062】
<<2−6.金属酸化物粒子>>
前記熱線遮蔽材は、長波赤外線を吸収するために、少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有していても、熱線遮蔽と製造コストのバランスの観点からは好ましい。この場合、例えばハードコート層5に金属酸化物粒子を含むことが好ましい。ハードコート層5は、基材1を介して、前記金属粒子含有層2と積層されていてもよい。金属粒子含有層2が太陽光などの熱線の入射方向側となるように前記熱線遮蔽材を配置したときに、金属粒子含有層2で熱線の一部(または全部でもよい)を反射した後、ハードコート層5で熱線の一部を吸収することとなり、金属酸化物粒子含有層で吸収されずに熱線遮蔽材を透過した熱線に起因して熱線遮蔽材の内側で直接受ける熱量と、熱線遮蔽材の金属酸化物粒子含有層で吸収されて間接的に熱線遮蔽材の内側に伝わる熱量の合計としての熱量を低減することができる。
前記金属酸化物粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錫ドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と略記する。)、錫ドープ酸化アンチモン(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、ガラスセラミックスなどが挙げられる。これらの中でも、熱線吸収能力に優れ、金属平板粒子と組み合わせることにより幅広い熱線吸収能を有する熱線遮蔽材が製造できる点で、ITO、ATO、酸化亜鉛がより好ましく、1,200nm以上の赤外線を90%以上遮蔽し、可視光透過率が90%以上である点で、ITOが特に好ましい。
前記金属酸化物粒子の一次粒子の体積平均粒径としては、可視光透過率を低下させないため、0.1μm以下が好ましい。
前記金属酸化物粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、針状、板状などが挙げられる。
【0063】
前記金属酸化物粒子の前記金属酸化物粒子含有層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1g/m2〜20g/m2が好ましく、0.5g/m2〜10g/m2がより好ましく、1.0g/m2〜4.0g/m2がより好ましい。
前記含有量が、0.1g/m2未満であると、肌に感じる日射量が上昇することがあり、20g/m2を超えると、可視光透過率が悪化することがある。一方、前記含有量が、1.0g/m2〜4.0g/m2であると、上記2点を回避できる点で有利である。
なお、前記金属酸化物粒子の前記金属酸化物粒子含有層における含有量は、例えば、前記熱線遮蔽層の超箔切片TEM像及び表面SEM像の観察から、一定面積における金属酸化物粒子の個数及び平均粒子径を測定し、該個数及び平均粒子径と、金属酸化物粒子の比重とに基づいて算出した質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することができる。また、前記金属酸化物粒子含有層の一定面積における金属酸化物微粒子をメタノールに溶出させ、蛍光X線測定により測定した金属酸化物微粒子の質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することもできる。
【0064】
<3.熱線遮蔽材の製造方法>
本発明の熱線遮蔽材の製造方法としては、前記金属粒子含有層に特定の架橋構造を形成できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布方法により、前記基材の表面に前記金属粒子含有層、前記紫外線吸収層、更に必要に応じてその他の層を形成する方法が挙げられる。
【0065】
−3−1.金属粒子含有層の形成方法−
本発明の金属粒子含有層の形成方法としては、前記金属粒子含有層に特定の架橋構造を形成できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材などの下層の表面上に、前記金属平板粒子および前記バインダーを有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法、LB膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法で面配向させる方法が挙げられる。
【0066】
このとき、本発明の金属粒子含有層の形成方法では、前記架橋剤を上述の範囲で分散液(好ましくは塗布液)中に添加して塗布する方法が好ましい。塗布方法としては特に制限はないが、本発明では前記バインダーとして水溶性または水分散性のバインダーを用い、前記架橋剤として水溶性または水分散性の架橋剤を用いて、水系の塗布液として塗布することが、架橋基密度比を好ましい範囲に調整する観点から好ましい。
なお、塗布条件については特に制限はないが、架橋基密度比を好ましい範囲に調整する観点から、室温で特定の架橋系の反応が高まるように塗布液の温度を調整することも好ましい。例えば、カルボジイミド基およびカルボキシル基の架橋反応が室温で進みやすいカルボジイミド系の架橋剤を用いて、カルボキシル基を有するポリマーをバインダーとして用いて、塗布を室温で行う態様を好ましく挙げることができる。
【0067】
前記熱線遮蔽材を製造するとき、後述の実施例で用いた金属粒子含有層の組成とし、ラテックスを添加する等によって、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在してもよい。前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/3の範囲に存在するようにすることが好ましい。前記ラテックスの添加量に特に制限は無いが、例えば金属平板粒子に対して、1〜10000質量%添加することが好ましい。
【0068】
なお、面配向を促進するために、金属平板粒子を塗布後、カレンダーローラーやラミローラーなどの圧着ローラーを通すことにより促進させてもよい。
【0069】
−3−2.オーバーコート層の形成方法−
オーバーコート層は、塗布により形成することが好ましい。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、前記紫外線吸収剤を含有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法などが挙げられる。
【0070】
−3−3.ハードコート層の形成方法−
ハードコート層は、塗布により形成することが好ましい。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、前記紫外線吸収剤を含有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法などが挙げられる。
【0071】
−3−4.粘着層の形成方法−
前記粘着層は、塗布により形成することが好ましい。例えば、前記基材、前記金属粒子含有層、前記紫外線吸収層などの下層の表面上に積層することができる。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
【0072】
−4−.熱線遮蔽材の特性−
本発明の熱線遮蔽材の可視光線透過率としては、60%であることが実用上求められ、70%以上が好ましく、75%以上であることがより好ましい。前記可視光線透過率が、60%未満であると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に、外部が見にくくなることがある。
本発明の熱線遮蔽材のJIS A5759にしたがって求められる遮蔽係数は0.77以下であることが実用上求められ、0.75以下であることが好ましい。遮蔽係数は0.7以下となることが最も好ましい。
本発明の熱線遮蔽材の前記金属粒子含有層の硬度が鉛筆硬度でB以上であること(HBよりも硬いこと)が実用上求められる。
【0073】
前記熱線遮蔽材の日射反射率としては、600nm〜2,000nmの範囲(好ましくは800nm〜1,800nm)で最大値を有することが、熱線反射率の効率を上げることができる点で好ましい。熱線最大反射率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
前記熱線遮蔽材の紫外線透過率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。前記紫外線透過率が、5%以下であると、太陽光の紫外線による前記金属平板粒子層の色味変化が生じ難い。
前記熱線遮蔽材のヘイズは、20%以下であることが好ましい。前記ヘイズが20%以下であると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に外部が見やすくなるなど、安全上好ましい。
【0074】
[熱線遮蔽材及び貼合せ構造体の使用態様]
−ドライラミネーションによる粘着剤層積層−
本発明の熱線遮蔽材を使って、既設窓ガラスの類に機能性付与する場合は、粘着剤を積層してガラスの室内側に貼り付けることができる。その際、反射層をなるべく太陽光側に向けた方が発熱を防ぐことになるので、前記金属粒子含有層(好ましくは銀ナノディスク粒子層)の上に粘着剤層を積層し、その面から窓ガラスへ貼合するのが適切である。
前記金属粒子含有層表面への粘着剤層積層に当っては、当該表面に直接粘着剤入りの塗布液を塗工することもできるが、粘着剤に含まれる各種添加剤、可塑剤や、使用溶剤などが、場合によっては前記金属粒子含有層の配列を乱したり、前記平板金属粒子自身を変質させたりすることがある。そうした弊害を最小限に留めるためには、粘着剤を予め離型フィルム上に塗工及び乾燥させたフィルムを作製しておいて、当該フィルムの粘着剤面と前記熱線遮蔽材の前記金属粒子含有層表面とをラミネートすることにより、ドライな状態のままの積層をすることが有効である。
【0075】
[貼合せ構造体]
本発明の熱線遮蔽材と、ガラス及びプラスチックのいずれかとを貼り合わせてなる貼合せ構造体を製造することができる。
前記貼合せ構造体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述のように製造した本発明の熱線遮蔽材を、自動車等の乗り物用ガラスまたはプラスチックや、建材用ガラスまたはプラスチックに貼合せる方法などが挙げられる。
【0076】
本発明の熱線遮蔽材は、熱線(近赤外線)を選択的に反射または吸収するために使用される態様であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、乗り物用フィルムや貼合せ構造体、建材用フィルムや貼合せ構造体、農業用フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、省エネルギー効果の点で、乗り物用フィルムや貼合せ構造体、建材用フィルムや貼合せ構造体であることが好ましい。
なお、本発明において、熱線(近赤外線)とは、太陽光に約50%含まれる近赤外線(780nm〜1,800nm)を意味する。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0078】
[比較例1]
−金属平板粒子の合成−
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した。
反応釜中の2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLにイオン交換水87.1mLを添加し、35℃まで加熱した。反応釜中の上記溶液に10mMのアスコルビン酸水溶液を2mL添加し、前記種溶液を21.2mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液79.6mLを10mL/minで攪拌しながら添加した。30分間攪拌した後、0.35Mのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を71.1mL反応釜に添加し、7質量%ゼラチン水溶液200gを反応釜に添加した。反応釜中の上記溶液に、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47Mの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加した。前記白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.83MのNaOH水溶液72mLを反応釜に添加した。このときpHが10を超えないように添加速度を調節しながらNaOH水溶液を添加した。これを300分間攪拌し、銀平板粒子分散液を得た。
【0079】
得られた銀平板粒子分散液中の金属粒子について以下の方法で特性を評価したところ、この銀平板粒子分散液中には、平均円相当径300nmの銀の六角平板粒子(以下、六角銀平板粒子と称する)が生成していることを確認した。また、六角平板粒子の厚みは、平均19nmであり、アスペクト比が15.8の平板粒子が生成していることが分かった。
【0080】
−金属粒子の評価−
(平板粒子の割合、平均粒子径(平均円相当径)、変動係数)
Ag平板粒子の形状均一性は、観察したSEM画像から任意に抽出した200個の粒子の形状を、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子をA、涙型などの不定形形状及び六角形未満の多角形状の粒子をBとして画像解析を行い、Aに該当する粒子個数の割合(個数%)を求めたところ、78%であった。
また同様にAに該当する粒子100個の粒子径をデジタルノギスで測定し、その平均値を平板粒子Aの平均粒子径(平均円相当径)とし、粒径分布の標準偏差を平均粒子径(平均円相当径)で割った平板粒子Aの平均円相当直径(粒度分布)の変動係数(%)を求めたところ、38%であった。
【0081】
(平均粒子厚み)
得られた金属平板粒子を含む分散液を、ガラス基板上に滴下して乾燥し、Aに該当する金属平板粒子1個の厚みを、原子間力顕微鏡(AFM)(NanocuteII、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。なお、AFMを用いた測定条件としては、自己検知型センサー、DFMモード、測定範囲は5μm、走査速度は180秒/1フレーム、データ点数は256×256とした。得られたデータの平均値を平板粒子Aの平均粒子厚みとした。
なお、あわせて得られたAに該当する金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子厚みから、平均粒子径(平均円相当径)を平均粒子厚みで除算して、平板粒子Aのアスペクト比を算出した。
【0082】
−金属粒子含有層の作製−
前記銀平板粒子分散液500mLを、遠心分離器(コクサン社製H−200N、アンブルローターBN)で7,000rpm30分間遠心分離を行い、六角銀平板粒子を沈殿させた。遠心分離後の上澄み液450mLを捨て、純水を200mL添加し、沈殿した六角銀平板粒子を再分散させ、銀平板分散液を調製した。
さらに以下の化合物を添加して塗布液を調製した。
・銀平板分散液 250ml(銀4.2g)
・ポリエステル樹脂バインダー:プラスコートZ−687(互応化学工業株式会社製)
108.8g
・界面活性剤A:ラピゾールA−90(日油株式会社製)
0.14g
・界面活性剤B:ナロアクティーHN−100(三洋化成工業株式会社製)
0.18g
・下記化合物1 0.18g
【化1】

【0083】
この塗布液をワイヤー塗布バーNo.14(R.D.S Webster N.Y.社製)を用いてPETフイルム(コスモシャインA4300、東洋紡(株)製、厚み:75μm)上に塗布し、乾燥させて、表面に六角銀平板粒子が固定されたフイルムを得た。
得られたPETフイルムに厚み20nmになるようにカーボン薄膜を蒸着した後、SEM観察(日立製作所製、FE−SEM、S−4300、2kV、2万倍)した。結果を図6に示す。PETフイルム上に六角銀平板粒子が凝集なく固定されており、上記のようにして測定した六角銀平板粒子の基板表面に占める面積率は45%であることが分かった。以上により、比較例1の熱線遮蔽材を作製した。
【0084】
(平板粒子の存在領域の厚み)
得られた比較例1の熱線遮蔽材について、平板粒子の存在領域の厚みを以下の方法で測定した。得られた結果を下記表1に記載した。
エポキシ樹脂にて塗布試料を包埋した後、ミクロトームを用いて超薄切片を作成した後、日立ハイテクノロジーズ社製S−5500方FE−SEMを用いて、STEM観察を行った。
【0085】
(架橋基の密度比)
得られた比較例1の熱線遮蔽材について、バインダーの架橋基の密度を以下の方法で測定した。なお、架橋系Aの架橋基はカルボキシル基であり、架橋系Bの架橋基はカルボジイミド基であった。また、架橋系Cは検出されなかったため、前記式(1)を採用することとした。
架橋系Aの架橋基(カルボキシル基)密度は、赤外分光法によりカルボキシル基の吸収(1700cm-1)を検出・定量した値、および数平均分子量から算出した。また、架橋系Bの架橋基(カルボジイミド基)密度は、赤外分光法によりカルボキシル基の吸収(2140cm-1)を検出・定量した値、および数平均分子量から算出した。
測定した架橋系AおよびBの架橋基密度[A]および[B]から、下記式(1)にしたがってバインダーの架橋基の密度比を計算した。このとき、架橋系AおよびBは、2種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれていなかった。最も固形分濃度の高い高分子量体はポリエステル樹脂バインダーであり、2番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体はカルボジイミド基含有架橋剤であった。
バインダー架橋基密度比=([B])/[A] ・・・式(1)
(式(1)中、[A]および[B]はそれぞれバインダー中の架橋系AおよびBの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が2種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[B]とする。)
得られた結果を下記表1に記載した。
【0086】
(熱線遮蔽材の作成)
PETフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡(株)製、厚み:75μm)の表面上に、塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の平均厚みが下記表1に記載の平板粒子含有層の厚みになるよう塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、金属粒子含有層を形成し、比較例1の熱線遮蔽材を得た。なお、光学性能を測定する際は、3mm厚のガラス板に粘着シート(パナック製PD−S1)を用いて塗布層側をガラス板側にして貼り合わせた。
【0087】
[比較例2および3]
比較例1において塗布液に含まれるプラスコートZ687の添加量を調節して、表1に示す比較例2および3の熱線遮蔽材試料を調製した。
【0088】
[比較例4]
比較例1における塗布液にカルボジライトV−02−L2を以下の量で添加し、表1に示す比較例4の熱線遮蔽材試料を調製した。
・銀平板分散液 250ml(銀4.2g)
・プラスコートZ687(互応化学工業株式会社製) 27.19g
・カルボジイミド系架橋剤:カルボジライトV−02−L2(日清紡ホールディングス(株)社製)
0.014g
・ラピゾールA−90(日油株式会社製) 0.14g
・ナロアクティーHN−100(三洋化成工業株式会社製) 0.18g
・上記化合物1 0.18g
【0089】
[実施例1〜4および比較例5]
比較例4における塗布液に含まれるプラスコートZ687およびカルボジライトV−02−L2について、合計固形分重量は一定のまま、それらの比率を調製し、表1に示す実施例1〜4および比較例5の熱線遮蔽材試料を調製した。
【0090】
[比較例6および7]
実施例3の塗布液に含まれるプラスコートZ687およびカルボジライトV−02−L2について、比率を一定のままそれらの添加量を調節して、表1に示す比較例6および7の試料を調整した。
【0091】
[実施例5〜8]
比較例1において種溶液の添加量を53mLにしたこと、白色沈殿物混合液を添加した後に0.83MのNaOH水溶液72mLの替わりに0.12MのNaOH水溶液72mLを反応釜に添加したことおよびプラスコートZ687の添加量を表1に示す塗布層厚みになるように変更した以外は、比較例1と同様にして、表1に示す実施例5〜8の熱線遮蔽材試料を調製した。
【0092】
[実施例9〜12]
比較例1において、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLおよびイオン交換水を添加しないこと、種溶液の添加量を350mLに変更したこと、白色沈殿物混合液を添加した後に0.83MのNaOH水溶液72mLを反応釜に添加しないことおよびプラスコートZ687の添加量を表1に示す塗布層厚みになるように変更した以外は、比較例1と同様にして、表1に示す実施例9〜12の熱線遮蔽材試料を調製した。
【0093】
[評価]
−光学性能(可視光透過率および遮蔽係数)評価−
可視光透過率:
作製した各熱線遮蔽材について、380nm〜780nmまで測定した各波長の透過率を、各波長の分光視感度により補正した値を可視光線透過率とした。得られた結果を下記表1に記載した。
遮蔽係数:
作製した各熱線遮蔽材について、350nm〜2100nmまで測定した各波長の透過率、および反射率から、JIS A5759にしたがって遮蔽係数を算出した。得られた結果を下記表1に記載した。
【0094】
−耐擦傷性−
作成した各熱線遮蔽材について、4cm×12cmに切り出し、これを擦り試験機(テスター産業製AB−301)にセットし、1.5cm×2cmサイズのダンボールを擦り端子として500gの加重をかけて、各サンプル表面を3往復させた。この試験後のサンプルにおいて、擦り端子が通過する表面積あたりの擦傷面積が、
1/5以下・・・・・○
1/5以上1/2以下・・・・・△
1/2以上・・・・・×
を基準として判定した。得られた結果を下記表1に記載した。
【0095】
−鉛筆硬度測定法−
鉛筆硬度計(安田精機製)にて、膜質を評価した。得られた結果を下記表1に記載した。
【0096】
【表1】

【0097】
上記表1に示すように、各実施例では、バインダーと架橋剤を用いて、本発明で規定する範囲以下の薄層かつ架橋構造の金属粒子含有層となるように塗布することで、可視光透過性、遮熱係数、耐擦傷性および鉛筆硬度が同時に改善された熱線遮蔽材を得られることがわかった。金属平板粒子を表面偏在させるための機構は十分に解明されていないが、塗布乾燥時に液面上に金属粒子を浮かせることが必須であり、乾燥時に変化するであろう表面張力のバランスが取れていることが重要と考えている。なお、各実施例の熱線遮蔽材の金属粒子含有層について、その断片を前述の方法により測定したところ、カルボジイミド架橋剤が残留していることを確認した。
一方、比較例1および2より、塗布層全体の厚みが本発明で規定する範囲の上限値を超え、架橋基密度比が本発明で規定する範囲の下限値を下回る場合は、遮蔽係数が悪化してしまうことがわかった。比較例3および4より、塗布層全体の厚みが本発明で規定する範囲としても、架橋基密度比が本発明で規定する範囲の下限値を下回る場合は、耐擦傷性が悪化してしまうことがわかった。比較例5より、塗布層全体の厚みが本発明で規定する範囲としても、架橋基密度比が本発明で規定する範囲の上限値を超える場合は、耐擦傷性が悪化してしまうことがわかった。比較例6および7より、塗布層全体の厚みが本発明で規定する範囲の上限値を超える場合は、架橋基密度比を本発明の範囲内としても、遮蔽係数が悪化してしまうことがわかった。
【0098】
さらに、エポキシ樹脂で各実施例および比較例で得られた熱線遮蔽材を包埋処理した後、液体窒素で凍結した状態で剃刀で割断し、熱線遮蔽材の垂直方向断面試料を作製した。この垂直方向断面試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、100個の金属平板粒子について、基板の水平面に対する傾角(図5Aにおいて±θに相当)を平均値として算出した。その結果、いずれの熱線遮蔽材においても、粒子傾き角が±30°以内であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の熱線遮蔽材は、可視光透過性及び遮熱係数が高く、耐擦傷性に優れ、鉛筆硬度が高いために金属平板粒子の配列を維持できるので、例えば自動車、バス等の乗り物用フィルムや貼合せ構造体、建材用フィルムや貼合せ構造体などとして、熱線の透過を防止することの求められる種々の部材として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 基材
2 金属粒子含有層
2a 金属粒子含有層の表面
3 金属平板粒子
4 オーバーコート層(紫外線吸収剤を含むことが好ましい)
5 ハードコート層
10 熱線遮蔽材
11 粘着層
D 直径
L 厚み
F(λ) 粒子存在域厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の金属粒子およびバインダーを含有する金属粒子含有層を有し、
前記金属粒子含有層の厚みが10nm〜80nmであり、
前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、
前記金属平板粒子含有層中のバインダーが架橋剤由来の架橋構造を有し、かつ、
該バインダーが2種の架橋基からなる1組の架橋系を有する場合は下記式(1)で計算され、3種以上の架橋基からなる2組以上の架橋系を有する場合は下記式(2)で計算される架橋基密度比が0.3〜30であることを特徴とする熱線遮蔽材。
バインダー架橋基密度比=([B])/[A] ・・・式(1)
(式(1)中、[A]および[B]はそれぞれバインダー中の架橋系AおよびBの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が2種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[B]とする。)
バインダー架橋基密度比=([B]+[C])/[A]・・・式(2)
(式(2)中、[A]、[B]および[C]はそれぞれバインダー中の架橋系A、BおよびCの架橋基密度(単位:mol/g)を表す。但し、前記架橋基が3種類以上の高分子量体または低分子量体中にそれぞれ含まれる場合は、最も固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[A]とし、2番目に固形分濃度の高い高分子量体中の架橋基密度を[B]とし、3番目に固形分濃度の高い高分子量体または低分子量体中の架橋基密度を[C]とする。)
【請求項2】
前記架橋剤由来の成分が、前記金属平板粒子含有層中に、前記バインダーに対し、0.1〜100質量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽材。
【請求項3】
前記バインダーが水溶性または水分散性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽材。
【請求項4】
前記バインダーの主ポリマーがポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項5】
前記架橋剤が前記金属平板粒子含有層中に残留していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項6】
前記架橋剤がカルボジイミド架橋剤系およびオキサゾリン系架橋剤のうち少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項7】
前記架橋基がカルボジイミド基ならびにオキサゾリン基のうち少なくとも一方、および、カルボキシル基を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項8】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均円相当直径の変動係数が30%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項9】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均円相当直径が70nm〜500nmであり、かつアスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)が6〜40であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項10】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均厚みが14nm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項11】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が、少なくとも銀を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項12】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項13】
前記金属粒子含有層の表面の鉛筆硬度がB以上であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項14】
赤外光を反射することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【公開番号】特開2013−83974(P2013−83974A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−216768(P2012−216768)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】