説明

熱膨張性微小球、中空微粒子、その製造方法および用途

【課題】 より球に近い形状を有し、外殻の厚みが均一で、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在することが抑制された熱膨張性微小球、その熱膨張性微小球から得られる中空微粒子、その製造方法および用途を提供する。
【解決手段】 熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、熱膨張させて得られる中空微粒子の繰返し高温耐圧性が75%以上であり、前記熱膨張前後の発泡剤保持率が80%以上である。中空微粒子は、この熱膨張性微小球を加熱膨張してなる。組成物は、熱膨張性微小球および中空微粒子から選ばれる粒状物と、基材成分とを含む。成形物は、組成物を成形してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱膨張性微小球、中空微粒子、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を外殻とし、その内部に発泡剤が封入された構造を有する熱膨張性微小球は、一般に熱膨張性マイクロカプセルと呼ばれている。熱可塑性樹脂としては、通常、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体等が用いられている。また、発泡剤としてはイソブタンやイソペンタン等の炭化水素が主に使用されている(特許文献1参照)。
耐熱性の高い熱膨張性マイクロカプセルとして、たとえば、ニトリル系単量体80重量%以上、非ニトリル系単量体20重量%以下、および、架橋剤を含有する成分から得られる熱可塑性樹脂を外殻とする熱膨張性マイクロカプセルが特許文献2に開示されている。その製造方法は、分散安定剤(懸濁剤)としてのコロイダルシリカと、補助安定剤としてのジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物と、重合助剤とを含有する水系分散媒中で、発泡剤、重合性単量体および重合開始剤を含有する重合性混合物を懸濁重合して熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法である。
【0003】
熱膨張性マイクロカプセルの形状および構造は、理想的には、1)外観は真球で、2)外殻の厚みが均一で、さらに、3)熱可塑性樹脂すべてが外殻を構成して、外殻を構成しない樹脂粒、特に大きな樹脂粒が外殻よりも内部にできるだけ存在しないことが好ましい。しかし、現実には、これらの3つを同時に実現するのは非常に難しい。これまでに、3)については、開始剤としてパーオキシカーボネートを用いて懸濁重合して製造した熱膨張性マイクロカプセルにおいて実現できている(特許文献3参照)。この熱膨張性マイクロカプセルは、外殻の厚みが理論値よりも薄くなりにくく、優れた熱膨張物性を有する。
しかし、上記1)〜3)を同時に満足する熱膨張性マイクロカプセルはなく、熱膨張性マイクロカプセルに期待されるさらなる高い物性の要求から、近年、その開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3615972号明細書
【特許文献2】特開昭62−286534号公報
【特許文献3】国際公開第2007/046273号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より球に近い形状を有し、外殻の厚みが均一で、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在することが抑制された熱膨張性微小球、その熱膨張性微小球から得られる中空微粒子、その製造方法および用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、特定の2つの物性を同時に満足する熱膨張性微小球であれば、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、熱膨張させて得られる中空微粒子の繰返し高温耐圧性が75%以上であり、前記熱膨張前後の発泡剤保持率が80%以上である。
【0007】
前記熱可塑性樹脂が重合性成分を重合して得られ、前記重合性成分が、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スチレン系単量体、酢酸ビニル、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体および塩化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の単量体成分を含むと好ましい。また、前記単量体成分が、ニトリル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含み、前記ニトリル系単量体が単量体成分の80重量%以上を占めると好ましい。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、
【0008】
カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれた親水性官能基が置換したアルキル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有する分子量1000以上のポリアルキレンイミン類と、ポリビニルピロリドンとの存在下、重合性成分および前記発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、10時間半減期温度が63℃以下であるアゾ化合物を必須成分とする重合開始剤を用いて前記重合性成分を重合させる工程を含む製造方法である。
前記アゾ化合物が、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)および/または2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)であると好ましい。また、前記ポリアルキレンイミン類の量が重合性成分100重量部に対して0.0001〜1重量部であると好ましい。
【0009】
前記熱可塑性樹脂が重合性成分を重合して得られ、前記重合性成分が、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スチレン系単量体、酢酸ビニル、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体および塩化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の単量体成分を含むと好ましい。また、前記単量体成分が、ニトリル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含み、前記ニトリル系単量体が単量体成分の80重量%以上を占めると好ましい。
本発明の中空微粒子は、上記熱膨張性微小球および/または上記製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張してなる。
【0010】
この中空微粒子が、前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成されると好ましい。この中空微粒子の製造方法は、上記熱膨張性微小球および/または上記製造方法で得られる熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合する工程と、前記混合工程で得られた混合物を前記熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、前記微粒子充填剤を前記外殻の外表面に付着させる工程とを含むとよい。
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球、上記製造方法で得られる熱膨張性微小球、上記中空微粒子、および、上記製造方法で得られる中空微粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。前記粒状物が中空微粒子であり、前記中空微粒子の含有量が全体の0.1〜10重量%であり、前記基材成分が無機成分であると好ましい。また、前記無機成分が、セメント類、コージェライトおよび炭化珪素から選ばれる少なくとも1種の無機物であるとよい。
本発明の成形物は、上記組成物を成形してなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱膨張性微小球では、以下に示す1)〜3)を満足する。
1)より球に近い形状を有する。
2)外殻の厚みが均一である。
3)外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在することが抑制されている。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、より球に近い形状を有し、外殻の厚みが均一で、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在することが抑制された熱膨張性微小球を、効率よく製造することができる。
【0012】
本発明の中空微粒子は、本発明の熱膨張性微小球および/または本発明の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張して得られるので、軽量で、高温雰囲気下で圧縮されても潰れにくい。
本発明の中空微粒子の製造方法は、軽量で、高温雰囲気下で圧縮されても潰れにくい中空微粒子を効率よく製造することができる。
【0013】
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球および/または中空微粒子を含有するので、成形することによって軽量な成形物を得ることができる。
本発明の成形物は、上記組成物を成形して得られるので、軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の熱膨張性微小球の模式図の一例である。
【図2】本発明の中空微粒子Aの模式図の一例である。
【図3】繰返し高温耐圧性測定のために、中空微粒子の製造方法に用いる製造装置の発泡工程部の概略図である。
【図4】実施例1で得られた熱膨張性微小球の電子顕微鏡写真である。
【図5】比較例1で得られた熱膨張性微小球の電子顕微鏡写真である。
【図6】比較例3で得られた熱膨張性微小球の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔熱膨張性微小球およびその製造方法〕
本発明の熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される。
本発明の熱膨張性微小球(1)は、理想的には、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル、2)と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤(コア、3)とから構成されたコア−シェル構造となっている。熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。熱可塑性樹脂、重合して熱可塑性樹脂となる重合性成分、発泡剤等については、後述のとおりである。
【0016】
本発明の熱膨張性微小球は、これを熱膨張させて得られる中空微粒子の繰返し高温耐圧性(測定温度:70℃)が、75%以上であり、好ましくは77%以上、より好ましくは79%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは82%以上、最も好ましくは84%以上である。中空微粒子の繰返し高温耐圧性の上限値は100%である。中空微粒子の繰返し高温耐圧性が75%未満であると、熱膨張性微小球は、球に近い形状とはならず、外殻の厚みが均一にならず、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在する。また、中空微粒子の繰返し高温耐圧性が75%未満であると、この熱膨張性微小球を原料として得られる成形品や塗膜等の成形物について、60℃以上の高温雰囲気において、軽量性、多孔性、断熱性、意匠性、強度等の諸物性が低下したり、耐溶剤性能が低くなる。
繰返し高温耐圧性は、熱膨張性微小球を熱膨張させて得られ、真比重が(0.025±0.001)g/ccの中空微粒子について、実施例で詳しく説明する測定方法に従って、70℃で測定される。
【0017】
繰返し高温耐圧性は、熱膨張性微小球の球形状の程度、外殻厚みの均一の程度および外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在する程度の指標の一部であるが、そもそもは、60℃以上の高温雰囲気において、基材成分と中空微粒子とを混合した際や、基材成分と中空微粒子とからなる組成物を成形する際に生じる応力に対する中空微粒子の耐久性を評価する物性値である。繰返し高温耐圧性が高い中空微粒子および/またはその原料である熱膨張性微小球を、基材成分と高温で混合した際や、基材成分と中空微粒子および/または熱膨張性微小球とからなる組成物を高温で成形や塗工する際に、生じる応力に対する耐久性が高くなり、応力を受けることによる破損が生じにくい。
本発明の熱膨張性微小球は、これを熱膨張させて中空微粒子を得る際、熱膨張前後の発泡剤保持率が80%以上であり、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上である。熱膨張前後の発泡剤保持率の上限値は100%である。熱膨張前後の発泡剤保持率が80%未満であると、熱膨張性微小球は、球に近い形状とはならず、外殻の厚みが均一にならず、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在する。また、熱膨張前後の発泡剤保持率が80%未満であると、中空微粒子がへたってしまい、軽量性、多孔性、断熱性、意匠性、強度等の諸物性が低下する。
【0018】
本発明の熱膨張性微小球では、熱膨張させて得られる中空微粒子の繰返し高温耐圧性が75%以上であることと、前記熱膨張前後の発泡剤保持率が80%以上であることを、同時に満足する必要がある。両方を満足する場合には、熱膨張性微小球は、より球に近い形状を有し、外殻の厚みが均一で、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在することが抑制できる。熱膨張性微小球の球形状の程度、外殻厚みの均一の程度および外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在する程度については、熱膨張性微小球の断面を撮影した電子顕微鏡写真を観察することによって判断できる。
【0019】
本発明の熱膨張性微小球では、外殻厚みの均一である。熱膨張性微小球の電子顕微鏡写真を観察すると、同一断面における最大外殻厚み(Dmax)と最小外殻厚み(Dmin)との比率(Dmax/Dmin)は、好ましくは1.6以下、より好ましくは1.4以下、さらに好ましくは1.3以下、特に好ましくは1.2以下、最も好ましくは1.1以下である。Dmax/Dminの下限値は1である。
本発明の熱膨張性微小球では、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在することが抑制されている。熱膨張性微小球の電子顕微鏡写真を観察すると、樹脂粒の最大直径が、好ましくは熱膨張性微小球の粒子径の約25%以下、より好ましくは約20%以下、さらに好ましくは約15%以下、特に好ましくは約13%以下、最も好ましくは約10%以下である。樹脂粒の最大直径の下限値は、熱膨張性微小球の粒子径の0%である。
【0020】
熱膨張性微小球は、以下の諸物性をさらに有すると好ましい。
熱膨張性微小球の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
【0021】
【数1】

【0022】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率については、用途に応じて自由に設計することができるために特に限定されないが、熱膨張性微小球の重量に対して、好ましくは2〜60重量%、さらに好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは8〜45重量%である。
【0023】
本発明の熱膨張性微小球は、以下に詳しく説明する懸濁重合による製造方法によって製造することができるが、この製造方法に限定されず、たとえば、界面重合法、逆相乳化法、乳化重合法等で製造することも可能であると考えられる。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法である。この製造方法は、ポリアルキレンイミン類とポリビニルピロリドンとの存在下、重合性成分および前記発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、重合開始剤を用いて前記重合性成分を重合させる工程(重合工程)を含む。
【0024】
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であれば特に限定はないが、たとえば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3〜13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150〜260℃および/または蒸留範囲70〜360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;それらのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等を挙げることができる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。上記発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
重合性成分は、重合することによって熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。
【0025】
単量体成分は、一般には、重合性二重結合を1個有する(ラジカル)重合性単量体と呼ばれている成分を含む。
単量体成分としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基含有単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の無水カルボン酸系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0026】
単量体成分は、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体および塩化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種をさらに含むと好ましい。
単量体成分がニトリル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含むと、熱膨張性微小球内の発泡剤の保持性、耐熱性の観点から好ましい。その場合、ニトリル系単量体が単量体成分に占める重量割合については特に限定はないが、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。
【0027】
重合性成分は、上記単量体成分以外に、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合させることにより、熱膨張時の内包された発泡剤の保持率の経時的な低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0028】
架橋剤の量については、特に限定はないが、単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部、特に好ましくは0.3〜0.9重量部である。
重合性成分の重合は、重合開始剤を用いて行う。重合開始剤は、10時間半減期温度が63℃以下であるアゾ化合物(以下、簡単のために、「アゾ化合物A」ということがある。)を必須成分とし、また、単量体成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
【0029】
アゾ化合物Aが重合開始剤に占める重量割合については、特に限定はないが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%である。アゾ化合物Aの重量割合が50重量%未満であると、得られる熱膨張性微小球は、球に近い形状とはならず、外殻の厚みが均一にならず、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在するおそれがある。
アゾ化合物Aとしては、たとえば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)〔10時間半減期温度:30℃〕、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)〔10時間半減期温度:51℃〕等を挙げることができる。これらのアゾ化合物Aは、1種または2種以上を併用してもよい。
【0030】
重合開始剤の10時間半減期温度とは、重合開始剤を不活性溶媒中に仕込み、重合開始剤の50%が10時間で熱分解する温度と定義される。本発明では、不活性溶媒として、10時間半減期温度が105℃以下の場合はトルエン、105℃超の場合はエチルベンゼンを用いて測定した値である。なお、上記に示すアゾ化合物Aの10時間半減期温度は、平成22年2月10日現在、和光純薬工業株式会社のホームページ中の化成品ホームの油溶性アゾ重合開始剤の項目に掲載されていた値である。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の10時間半減期温度は、和光純薬工業株式会社のV−65という古いカタログの3ページにも掲載されている(カタログ番号:823010化31Y;昭和58年9月12日入手)。
重合開始剤は、過酸化物や、アゾ化合物A以外のアゾ化合物を含有してもよい。
【0031】
過酸化物としては、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートおよびジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−オクチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート等のパーオキシエステル等を挙げることができる。
アゾ化合物A以外のアゾ化合物としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等を挙げることができる。
【0032】
重合開始剤の量については、特に限定はないが、前記単量体成分100重量部に対して0.3〜10重量部であると好ましい。
重合工程では、油性混合物は連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
【0033】
重合工程は、水溶性化合物としてのポリアルキレンイミン類と分散安定補助剤としてのポリビニルピロリドンとの存在下、油性混合物を分散させた水性分散媒中で前記重合性成分を重合させる工程である。ポリアルキレンイミン類や分散安定補助剤は、水溶性が高く、通常、水性分散媒中に含有されている。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
水性分散媒は油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100〜1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0034】
ポリアルキレンイミン類は、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれた親水性官能基が置換したアルキル基(以下、簡単のために「置換アルキル基(A)」ということがある。)がポリアルキレンイミン類中の窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有している。
ポリアルキレンイミン類は、たとえば、少なくとも1種のアルキレンイミンを重合して得られるN−無置換のポリアルキレンイミンを主骨格とし、その主骨格中の2級アミノ基(−NH−)および1級アミノ基(−NH)から選ばれたアミノ基を、3級アミノ基(−NR−または−NR)および/または2級アミノ基(−NHR)に変換した構造を少なくとも1つ有する化合物と表現することもできる。ここで、Rは置換アルキル基(A)である。
【0035】
ポリアルキレンイミン類は、直線状(アルキレンイミン構造単位がすべて2級アミノ基となっている状態)であってもよいし、分岐状(アルキレンイミン構造単位が2級アミノ基以外に、1級アミノ基および/または3級アミノ基が混在している状態)でもよい。また、ポリアルキレンイミン類は、複数のアルキレンイミンの共重合体を主骨格としてもよい。
ポリアルキレンイミン類の分子量(重量平均分子量)は、通常1000以上、好ましくは1000〜1000000、さらに好ましくは5000〜500000、特に好ましくは8000〜200000、最も好ましくは10000〜100000である。
【0036】
カルボン酸(塩)基とは、カルボン酸基またはカルボン酸塩基を意味する。カルボン酸基はカルボキシル基(−COOH)であり、カルボン酸塩基はカルボキシル基のプロトンが、金属原子、1〜4級アミン基、アンモニウム基(−NH)等で置き換わった基である。
ホスホン酸(塩)基とは、ホスホン酸基またはホスホン酸塩基を意味する。ホスホン酸基は−POであり、ホスホン酸塩基はホスホン基の少なくとも1つのプロトンが、金属原子、1〜4級アミン基、アンモニウム基(−NH)等で置き換わった基である。
【0037】
金属原子としては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属(周期表における1族金属);ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属(周期表における2族金属);鉄、銅、マンガン、亜鉛、コバルト等の遷移金属等を挙げることができる。これらの金属原子なかでも、ナトリウム、カリウム等が好ましい。
1〜4級アミン基については、1級アミン基とは1級アミンにプロトンが反応して得られる全体として+1の電荷を帯びた基であり、2級アミン基とは2級アミンにプロトンが反応して得られる全体として+1の電荷を帯びた基であり、3級アミン基とは3級アミンにプロトンが反応して得られる全体として+1の電荷を帯びた基であり、4級アミン基とは3級アミン基のプロトンが炭化水素基で置換されており、全体として+1の電荷を帯びた基である。
【0038】
1〜3級アミン基の原料となる1〜3級アミンとしては、炭素原子数1〜5の(モノ、ジまたはトリ)アルキルアミン(例えば、エチルアミン、プロピルアミン等)、炭素原子数2〜10の(モノ、ジまたはトリ)アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン等)、モルホリン、炭素原子数5〜20のシクロアルキルアミン(例えば、ジシクロヘキシルアミン等)、3,3−ジメチルプロパンジアミン等がある。
4級アミン基としては、たとえば、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトメチルアンモニウム、牛脂アルキルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウム、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウム、テトラデシルジメチルベンジンアンモニウム、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、ヤシアルキルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ジオレイルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0039】
ポリアルキレンイミン類中のアルキレンは、2価の飽和炭化水素基であれば特に限定はないが、通常、炭素数1〜10の2価の飽和炭化水素基(−C2n−、但しnは1〜10)であり、好ましくは、エチレン、プロピレンおよびブチレン等を挙げることができる。2価の飽和炭化水素基は、ヒドロキシル基、アルコキシ基(たとえば、メトキシ基、エトキシ基等)、ハロゲン原子(たとえば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等の置換基によって置換されていてもよい。
置換アルキル基(A)としては、好ましくは、置換メチル基、置換エチル基および置換プロピル基等を挙げることができる。
置換アルキル基(A)としては、たとえば、下記一般式(1)で表現される基を挙げることができる。
【0040】
【化1】

【0041】
(但し、pは1〜10で、C2pは直線状であっても、分岐状であってもよく、Xはカルボン酸(塩)基またはホスホン酸(塩)基である。)
上記でp=1は置換メチル基、p=2は置換エチル基、p=3は置換プロピル基である。
【0042】
置換アルキル基(A)がポリアルキレンイミン類中の窒素原子と結合した構造を形成している窒素原子の割合(以下、簡単のために「置換アルキル基(A)の置換率」ということがある。)は、前記ポリアルキレンイミン類の窒素原子全体の好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上、最も好ましくは70%以上である。置換アルキル基(A)の置換率が10%未満であると、本発明の効果が得られないことがある。
ポリアルキレンイミン類としては、たとえば、置換メチル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリエチレンイミン類、置換メチル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリプロピレンイミン類、置換メチル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリブチレンイミン類、置換エチル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリエチレンイミン類、置換エチル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリプロピレンイミン類、置換エチル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリブチレンイミン類、置換プロピル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリエチレンイミン類、置換プロピル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリプロピレンイミン類、置換プロピル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有するポリブチレンイミン類等を挙げることができる。これらのポリアルキレンイミン類は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0043】
ポリアルキレンイミン類の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1重量部、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。ポリアルキレンイミン類の量が少なすぎると、ポリアルキレンイミン類による効果が十分に得られないことがある。また、ポリアルキレンイミン類の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加することがある。
水性分散媒は、分散安定剤等をさらに含有していてもよい。
【0044】
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル等を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
ポリビニルピロリドンは、分散安定補助剤として使用される成分であり、水溶性の高分子でありながら、重合性成分との親和性も高い。ポリビニルピロリドンは、酢酸ビニル等を単量体成分として含有する共重合物であってもよい。
【0045】
ポリビニルピロリドンの量については、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.05〜5重量部、特に好ましくは0.1〜3、最も好ましくは0.2〜1重量部である。
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1〜50重量部含有するのが好ましい。
【0046】
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に乳化分散させる。
油性混合物を乳化分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサー(たとえば、特殊機化工業株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(たとえば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
【0047】
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPaの範囲である。
【0048】
〔中空微粒子およびその製造方法〕
中空微粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球および/または上記で説明した製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張して得られる粒子である。
本発明の中空微粒子は、熱可塑性樹脂からなる外殻およびそれに囲まれた中空部から構成される。中空微粒子は、(ほぼ)球状で、内部に大きな空洞に相当する中空部を有している。中空微粒子の形状を身近な物品で例示するならば、軟式テニスボールを挙げることができる。
【0049】
中空部は、(ほぼ)球状であり、外殻の内表面と接している。中空部は、基本的には発泡剤が気化した気体で満たされており、発泡剤の一部は液化した状態であってもよい。また、発泡剤の全部または一部は空気等の他の気体で置換されていてもよい。中空部は、通常は、大きな中空部1つであることが好ましいが、中空微粒子中に複数あってもよい。
中空微粒子の平均粒子径については特に限定はないが、好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは5〜800μm、特に好ましくは10〜500μmである。また、中空微粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、45%以下が好ましく、さらに好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。
【0050】
中空微粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.005〜0.3、さらに好ましくは0.010〜0.25、特に好ましくは0.015〜0.20である。中空微粒子の真比重が0.005より小さい場合は、耐久性が低くなることがある。一方、中空微粒子の真比重が0.3より大きい場合は、低比重化効果が低くなるため、中空微粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量が大きくなり、非経済的であることがある。
中空微粒子は、図2に示すように、その外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成されていてもよい。以下では、微粒子充填剤が付着した中空微粒子を簡単のために、「中空微粒子A」ということがある。ここでいう付着とは、単に中空微粒子A(4)の外殻(5)の外表面に微粒子充填剤(6および7)が、吸着された状態(6)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、中空微粒子Aの外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(7)であってもよいという意味である。微粒子充填剤の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。
【0051】
中空微粒子Aの真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.01〜0.5であり、さらに好ましくは0.03〜0.4、特に好ましくは0.05〜0.35、最も好ましくは0.07〜0.30である。中空微粒子Aの真比重が0.01より小さい場合は、耐久性が低くなることがある。一方、中空微粒子Aの真比重が0.5より大きい場合は、低比重化効果が低くなるため、中空微粒子Aを用いて組成物を調製する際、その添加量が大きくなり、非経済的であることがある。
微粒子充填剤の平均粒子径については、適宜選択され、特に限定はないが、好ましくは0.001〜30μm、さらに好ましくは0.005〜25μm、特に好ましくは0.01〜20μmである。
【0052】
微粒子充填剤の平均粒子径と中空微粒子Aの平均粒子径との比率(微粒子充填剤の平均粒子径/中空微粒子Aの平均粒子径)は、微粒子充填剤の付着性の観点から好ましくは1以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
微粒子充填剤としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子本体の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
【0053】
微粒子充填剤を構成する無機物としては、たとえば、石灰石(重質炭酸カルシウム)、石英、珪石(シリカ)、ウオラスナイト、石膏、アパタイト、マグネタイト、ゼオライト、クレイ(モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク、雲母、マイカ等)等の鉱物;元素の周期率表において、1族〜16族の金属酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化鉄(磁性酸化鉄を含む)、酸化インジウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化金、水酸化マグネシウム等)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸鉄等)、硫酸金属塩(硫酸アルミニウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸バリウム等)、その他の金属塩(チタン酸塩(チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カリウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アルミニウム、ホウ酸亜鉛等)、燐酸塩(リン酸カルシウム、燐酸ナトリウム、燐酸マグネシウム等)、硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸鉄、硝酸鉛等))等の金属化合物等が挙げられる。
微粒子充填剤を構成する無機物は、また、合成炭酸カルシウム、フェライト、ゼオライト、銀イオン担持ゼオライト、ジルコニア、ミョウバン、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミナ繊維、セメント、ゾノトライト、酸化珪素(シリカ、シリケート、ガラス、ガラス繊維を含む)、窒化珪素、炭化珪素、硫化珪素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、活性炭、竹炭、木炭、フラーレン等であってもよい。
【0054】
微粒子充填剤を構成する有機物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
微粒子充填剤を構成する無機物や有機物は、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理されていてもよく、未処理のものでもよい。
【0055】
中空微粒子の製造方法は、熱膨張性微小球を加熱膨張する方法であれば、特に限定はないが、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法のいずれでもよい。
乾式加熱膨張法としては、日本国特開2006−213930号公報に記載されている方法、特に内部噴射方法を挙げることができる。また、別の乾式加熱膨張法としては、日本国特開2006−96963号公報に記載の方法等がある。湿式加熱膨張法としては、日本国特開昭62−201231号公報に記載の方法等がある。
【0056】
中空微粒子Aの製造方法としては、たとえば、上記熱膨張性微小球および/または上記製造方法で得られる熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合する工程(混合工程)と、前記混合工程で得られた混合物を前記熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、前記微粒子充填剤を前記外殻の外表面に付着させる工程(付着工程)とを含む製造方法を挙げることができる。
【0057】
(混合工程)
混合工程は、熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合する工程である。
混合工程における微粒子充填剤と熱膨張性微小球との重量比率(微粒子充填剤/熱膨張性微小球)については、特に限定はないが、好ましくは90/10〜60/40、さらに好ましくは85/15〜65/35、特に好ましくは80/20〜70/30である。微粒子充填剤/熱膨張性微小球(重量比率)が90/10より大きい場合は、中空微粒子Aの真比重が大きくなり、低比重化効果が小さくなることがある。一方、微粒子充填剤/熱膨張性微小球(重量比率)が60/40より小さい場合は、中空微粒子Aの真比重が低くなり、粉立ち等のハンドリングが悪化することがある。
【0058】
混合工程に用いられる装置としては、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)およびハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を用いてもよい。
【0059】
(付着工程)
付着工程は、前記混合工程で得られた、熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを含む混合物を、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱する工程である。付着工程では、熱膨張性微小球を膨張させるとともに、外殻の外表面に微粒子充填剤を付着させる。
加熱は、一般的な接触伝熱型または直接加熱型の混合式乾燥装置を用いて行えばよい。混合式乾燥装置の機能については、特に限定はないが、温度調節可能で原料を分散混合する能力や、場合により乾燥を早めるための減圧装置や冷却装置を備えたものが好ましい。加熱に使用する装置としては、特に限定はないが、たとえば、レーディゲミキサー(株式会社マツボー製)、ソリッドエアー(株式会社ホソカワミクロン)等を挙げることができる。
【0060】
加熱の温度条件については、熱膨張性微小球の種類にもよるが最適膨張温度とするのが良く、好ましくは60〜250℃、より好ましくは70〜230℃、さらに好ましくは80〜220℃である。
【0061】
〔熱膨張性微小球および中空微粒子の応用〕
本発明の組成物は、基材成分と、熱膨張性微小球および/または中空微粒子とを含む。ここで、熱膨張性微小球とは、上記で説明した熱膨張性微小球および/または上記で説明した製造方法で得られる熱膨張性微小球を意味し、中空微粒子とは、上記で説明した中空微粒子および/または上記で説明した製造方法で得られる中空微粒子を意味する。また、以下では、熱膨張性微小球および/または中空微粒子を粒状物と言うことがある。
基材成分としては特に限定はなく、無機成分および/または有機成分であればよい。
【0062】
無機成分としては、特に限定はないが、たとえば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント等のセメント類;高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、電気炉還元スラグ等のスラグ;生石灰、消石灰等の石灰類;チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ジルコン、ジルコン酸バリウム、コージェライト、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、ムライト、酸化亜鉛、酸化錫、炭化珪素、窒化珪素、フェライト等のセラミック類等を挙げることができ、これらの無機成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
無機成分は、上記で具体的に示した無機成分以外の成分であってもよく、たとえば、石灰石(重質炭酸カルシウム)、石英、珪石(シリカ)、ウオラスナイト、石膏、アパタイト、マグネタイト、ゼオライト、クレイ(モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク、雲母、マイカ等)等の鉱物;元素の周期率表において、それぞれ1族〜16族に属する金属を有する、金属酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化鉄(磁性酸化鉄を含む)、酸化インジウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化金、水酸化マグネシウム等)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸鉄等)、硫酸金属塩(硫酸アルミニウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸バリウム等)、その他の金属塩(チタン酸塩(チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カリウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アルミニウム、ホウ酸亜鉛等)、燐酸塩(リン酸カルシウム、燐酸ナトリウム、燐酸マグネシウム等)、硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸鉄、硝酸鉛等))等の金属化合物等の無機物でもよい。これらの無機成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0063】
無機成分が、セメント類、コージェライトおよび炭化珪素から選ばれる少なくとも1種の無機物であると、常温下において中空微粒子と容易に混合および成形が可能であり、かつ水和凝結や焼成等により、基材成分が硬化することで、中空微粒子由来の空隙による多孔化および軽量化が容易であるために好ましい。
有機成分としては、特に限定はないが、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;変性シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系、シリコーン系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系の塗料成分等の有機物を挙げることができ、これらの有機成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0064】
これらの有機成分を基材成分として用いた場合は、一般には、成形時の溶融温度が低く、中空微粒子と配合時に変性が生じにくい等の利点が生じることがある。
本発明の組成物は、基材成分や粒状物以外に、必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート等のバインダーや;エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等の分散剤等を含有していても良い。
【0065】
本発明の組成物において、粒状物が中空微粒子であり、基材成分が無機成分である場合は、不燃性や強度が高く、耐熱性、耐久性および耐候性等に優れる。さらに、本発明の組成物が中空微粒子を含むことによって、軽量化が可能になる。ここで、中空微粒子の含有量については、特に限定はないが、好ましくは、組成物全体の0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.15〜5重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%である。中空微粒子の含有量が、組成物全体の0.1重量%未満であると、軽量化効果が十分得られないことがある。一方、中空微粒子の含有量が、組成物全体の10重量%超であると、組成物に占めるバルーン由来の空隙があまりに多くなり過ぎるため、成形物の強度が低下したり、成形できなくなったりすることがある。
本発明の組成物は、基材成分と熱膨張性微小球および/または中空微粒子とを混合することによって調製することができる。
【0066】
本発明の組成物の用途としては、たとえば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊維組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
本発明の成形物は、この組成物を成形して得られる。本発明の成形物としては、たとえば、成形品や塗膜等の成形物等を挙げることができる。本発明の成形物では、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性/熱伝導性、電気伝導度、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上している。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例で製造した熱膨張性微小球および中空微粒子等について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。
【0068】
〔平均粒子径と粒度分布の測定〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製 HEROS & RODOS)を使用した。乾式分散ユニットの分散圧は5.0bar、真空度は5.0mbarで乾式測定法により測定し、メジアン径(D50値)を平均粒子径とした。
【0069】
〔熱膨張性微小球の含水率の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
【0070】
〔熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率の測定〕
熱膨張性微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(W)を測定した。アセトニトリル30ml加え均一に分散させ、30分間室温で放置した後に、120℃で2時間加熱し乾燥後の重量(W)を測定した。発泡剤の内包率は、下記の式により計算される。
内包率(重量%)=(W−W)(g)/1.0(g)×100−(含水率)(重量%)
(式中、含水率は、上記方法で測定される。)
【0071】
〔真比重の測定〕
熱膨張性微小球およびこれを熱膨張させて得られる中空微粒子の真比重は、以下の測定方法で測定した。
真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100ccの充満されたメスフラスコの重量(WB)を秤量した。
【0072】
また、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50ccの粒子を充填し、粒子の充填されたメスフラスコの重量(WS)を秤量した。そして、粒子の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS)を秤量した。そして、得られたWB、WB、WS、WSおよびWSを下式に導入して、粒子の真比重(d)を計算した。
d={(WS−WS)×(WB−WB)/100}/{(WB−WB)−(WS−WS)}
上記で、粒子として熱膨張性微小球または中空微粒子を用いて、それぞれの真比重を計算した。
【0073】
〔繰返し高温耐圧性〕
繰返し高温耐圧性の測定に用いる中空微粒子の製造方法としては、上述のとおり、日本国特開2006−213930号公報に記載されている内部噴射方法を採用した。具体的には、図3に示す発泡工程部を備えた製造装置を用いて、以下の手順で行った。ついで得られた中空微粒子について、以下の方法で、繰返し高温耐圧性を測定した。
【0074】
(発泡工程部の説明)
この発泡工程部は、出口に分散ノズル(11)を備え且つ中央部に配置された気体導入管(番号表記せず)と、分散ノズル(11)の下流部に設置された衝突板(12)と、気体導入管の周囲に間隔を空けて配置された過熱防止筒(10)と、過熱防止筒(10)の周囲に間隔を空けて配置された熱風ノズル(8)とを備える。この発泡工程部において、気体導入管内の矢印方向に熱膨張性微小球を含む気体流体(13)が流されており、気体導入管と過熱防止筒(10)との間に形成された空間には、熱膨張性微小球の分散性の向上および気体導入管と衝突板の過熱防止のための気体流(14)が矢印方向に流されており、さらに、過熱防止筒(10)と熱風ノズル(8)との間に形成された空間には、熱膨張のための熱風流が矢印方向に流されている。ここで、熱風流(15)と気体流体(13)と気体流(14)とは、通常、同一方向の流れである。過熱防止筒(10)の内部には、冷却のために、冷媒流(9)が矢印方向に流されている。
【0075】
(製造装置の操作)
噴射工程では、熱膨張性微小球を含む気体流体(13)を、出口に分散ノズル(11)を備え且つ熱風流(15)の内側に設置された気体導入管に流し、気体流体(13)を前記分散ノズル(11)から噴射させる。
分散工程では、気体流体(13)を分散ノズル(11)の下流部に設置された衝突板(12)に衝突させ、熱膨張性微小球が熱風流(15)中に万遍なく分散するように操作される。ここで、分散ノズル(11)から出た気体流体(13)は、気体流(14)とともに衝突板(12)に向かって誘導され、これと衝突する。
膨張工程では、分散した熱膨張性微小球を熱風流(15)中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる。その後、得られた中空微粒子を冷却部分に通過させる等して回収する。
【0076】
(中空微粒子の製造条件設定方法)
まず、原料である熱膨張性微小球の供給量、熱風流量や原料分散気体量等のパラメーターを一定に固定し、熱風流の温度(以下、「熱風温度」ということがある。)を変化させる。次に、熱風温度を段階的に変化させ、かつ、他のパラメーターを一定に固定しながら各温度で熱膨張性微小球を膨張させ、得られた微小球の真比重を測定し、熱風温度(x軸)と真比重(y軸)の関係をプロットしたグラフを作成する。
また、所望の真比重((0.025±0.001)g/cc)を有する膨張した微小球を製造する場合は、上記のグラフにおける所望の真比重に対応する熱風温度に設定する。このようにして膨張条件の制御が行われ、真比重が(0.025±0.001)g/ccである中空微粒子を製造する。
【0077】
(繰返し高温耐圧性の測定)
上記で得られた中空微粒子2.00mgを直径6mm(内径5.65mm)および深さ4.8mmのアルミカップに入れ、中空微粒子層の上部に直径5.6mmおよび厚み0.1mmのアルミ蓋を載せたものを試料とする。次いで、DMA(DMAQ800型、TA instruments社製)を使用し、この試料に70℃の環境下で加圧子によりアルミ蓋の上部から2.5Nの力を加えた状態での中空微粒子層の高さLを測定する。その後、中空微粒子層を2.5Nから18Nまで10N/minの速度で加圧後、18Nから2.5Nまで10N/minの速度で除圧する操作を、8回繰り返した後、加圧子によりアルミ蓋上部から2.5Nの力を加えた状態の中空微粒子層の高さLを測定する。そして、次式に示すように、測定した中空微粒子層の高さLとLとの比を繰返し高温耐圧性と定義する。
繰返し高温耐圧性(%)=(L/L)×100
【0078】
〔熱膨張前後の発泡剤保持率〕
熱膨張前後の発泡剤保持率は、熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率(G)と上記中空微粒子に封入された発泡剤の内包率(G)との割合であり、下記の式により計算される。
発泡剤保持率(%)= G/G×100
【0079】
〔実施例1〕
イオン交換水600gに、シリカ有効成分量が20重量%であるコロイダルシリカ80g、ポリビニルピロリドン1gおよびポリエチレンイミン類(置換アルキル基:−CHCOONa、置換率:80%、重量平均分子量:5万)を1g加えた後、得られた混合物のpHを2.8〜3.2に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル150g、メタクリロニトリル105g、イソボルニルメタクリレート13g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1g、発泡剤としてのイソブタン35g、イソペンタン25g、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3gを混合して油性混合物を調製した。水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(特殊機化工業社製、TKホモミキサー)により、回転数8000rpmで5分間分散して、懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で20時間重合反応した。重合反応中のスラリー状態を以下に示す評価基準で判定し、結果を表1に示した。重合後、重合生成物を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得て、その物性を評価し、表1に示した。
【0080】
得られた熱膨張性微小球に対して、上記繰返し高温耐圧性の測定方法にしたがって熱膨張させて中空微粒子を得た。この中空微粒子の繰返し高温耐圧性および熱膨張前後の発泡剤保持率を測定した。
また、得られた熱膨張性微小球の形状を評価するために、エポキシ系接着剤(ニチバン株式会社製、商品名アラルダイト)5gと熱膨張性微小球50gとを混合し硬化させた。得られた硬化物を切断してサンプルを調製した。サンプルの切断面を観察して、熱膨張性微小球の断面を示す代表的な例を、走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス社製、VE−8800)を用いて、加速電圧20kV、倍率5000倍の条件で撮影した。得られた電子顕微鏡写真を図4に示す。図4を目視で観察して、熱膨張性微小球の形状(球状の程度、外殻厚みの均一性の程度、外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在する程度)を以下に示す評価基準で判定し、結果を表1に示した。
【0081】
〔重合反応中のスラリー状態の評価〕
◎:スケール等無し。
○:一部微小なスケール等発生。
△:大きなスケールがあり、一部凝集等発生。
×:凝集または固化。
【0082】
〔熱膨張性微小球の形状の評価〕
◎:球形に近い形状を示す。外殻厚みが均一。外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在しない。
○:球形では無い。外殻厚みは均一。外殻よりも内部側に大きな樹脂粒は存在しない。
△:球状では無い。外殻厚みが不均一。外殻よりも内部側に大きな樹脂粒は存在しない。
×:球形では無い。外殻厚みが不均一。外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在する。
【0083】
〔実施例2〜9および比較例1〜9〕
実施例2〜9および比較例1〜9では、実施例1において、表1および2に示すように反応条件をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に重合して、熱膨張性微小球および中空微粒子をそれぞれ得た。さらに、その物性を評価し、表1および2に示した。
比較例1および比較例3について、実施例1と同様に撮影した電子顕微鏡写真を図5および図6にそれぞれ示す。
【0084】
図5(比較例1)および図6(比較例3)では、図4(実施例1)と比較して、球形には程遠く、かなり入り組んだ形状になっている。
また、外殻の厚みも不均一である。図4では、同一断面における最大外殻厚み/最小外殻厚み(Dmax/Dmin)は、約1.25であるのに対して、図5および図6では、それぞれ、約2および約1.7である。
外殻よりも内部側に大きな樹脂粒が存在する程度は、図4では、樹脂粒の最大直径は熱膨張性微小球の粒子径の約15%以下であるのに対して、図5および図6では、それぞれ、約33%および約30%である。なお、図5および図6では、熱膨張性微小球は球とは程遠い形状であるので、その粒子径は、熱膨張性微小球のほぼ中心を通過する直線を引いた場合に、その直線が一方の外殻外側面と交わる交点と、もう一方の外殻外側面と交わる交点との距離の最大値とする。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
上記表1および2のいずれかにおいて、以下の略号が使用されている。
CMPEI:ポリエチレンイミン類(置換アルキル基:−CHCOONa、置換アルキル基の置換率:80%、重量平均分子量:5万)。なお、カルボキシメチル化ポリエチレンイミン・Na塩とも表記される。
EDTA:エチレンジアミン4酢酸塩・4Na・4H2O(キレスト株式会社製、商品名:キレスト3D)
AN:アクリロニトリル
MAN:メタクリロニトリル
IBX:イソボルニルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
TMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学(株)製)
V−65:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製)
V−70:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製)
AIBN:2,2’−アゾイソブチルニトリル(日本ヒドラジン工業(株)製)
IPP:ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルIPP−50、純度50%、日本油脂(株)製)
OPP:ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(パーロイルOPP、純度70%、日本油脂(株)製)
S(BP):ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(ルパゾール225またはS(BP)、純度50%、アルケマ吉冨(株)製)
【0088】
〔実施例A1〕
実施例1で得られた熱膨張性微小球(外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点:109℃)20重量部と、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製のホワイトンSBアカ;レーザー回折法による平均二次粒子径約1.8μm)80重量部とをセパラブルフラスコに添加混合した。次いで、攪拌しながら5分間かけて140℃まで加熱して、中空微粒子A(平均粒子径60μm、真比重0.13)を得た。
【0089】
〔比較例A1〕
実施例A1で、実施例1で得られた熱膨張性微小球を比較例5により得られた熱膨張性微小球(外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点:110℃)に変更する以外は、実施例A1と同様にして、添加混合し、加熱したところ、発泡剤が外殻外に漏れる抜け出しが発生した。得られた中空微粒子は、発泡剤の抜け出しのため真比重が大きく、基材成分に混合した場合に軽量化には適さなかった。
中空微粒子は、また、特開昭62−201231号公報記載の湿式加熱膨張法によって、以下のように製造できる。
【0090】
〔実施例B1〕
実施例1で得られた熱膨張性微小球を5重量%含有する水分散液(スラリー)を調製した。特開昭62−201231号公報記載の湿式加熱膨張法に従い、このスラリーをスラリー導入管から発泡管(直径16mm、容積120ml、SUS304TP製)に5L/minの流量を示すように送り込み、さらに水蒸気(温度:147℃、圧力:0.3MPa)を蒸気導入管より供給し、スラリーと混合して、湿式加熱膨張した。なお、混合後のスラリー温度(発泡温度)を115℃に調節した。
得られた中空微粒子を含むスラリーを発泡管突出部から流出させ、冷却水(水温15℃)と混合して、50〜60℃に冷却した。冷却したスラリー液を遠心脱水機で脱水して、湿化した中空微粒子を10重量%含有する中空微粒子組成物B1(水90重量%含有)を得た。
得られた中空微粒子を単離し、その真比重は0.025であった。また、熱膨張前後の発泡剤保持率は100%であった。
【0091】
〔実施例B2〜B4および比較例B1〜B2〕
実施例B2〜B4および比較例B1〜B2では、実施例B1において、表3に示すように、熱膨張性微小球や発泡温度をそれぞれ変更する以外は、実施例B1と同様にして、中空微粒子を含有する中空微粒子組成物を得た。さらに、その物性を評価し、表3に示した。
表3の「使用した熱膨張性微小球」の欄には、それぞれの熱膨張性微小球を製造した実施例および比較例を示した。
【0092】
【表3】

【0093】
〔実施例C1〕
(セメント組成物の製造)
下記に示すセメント、ケイ石、ポリプロピレン繊維、古紙解砕物およびセルロース系バインダーをレディゲミキサー(マツボー製M20)に添加し、5分間攪拌を加え十分に混合した。続いて、実施例B1で得た中空微粒子組成物を入れ、さらに1分間攪拌を加えた後、次いで水を2分間かけて噴霧し、混合した。得られた混合物を10Lの双腕ニーダー(本田鉄工製HBN−10D)に移しかえて1分間さらに混合を行って粘土状のセメント組成物を製造した。セメント組成物に含まれるそれぞれの成分および量(単位:重量部)を表4に示した。
セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント製)
ケイ石:シリカフラワー#200(瑞浪シリカ製)
ポリプロピレン繊維:PZL(大和紡績製)
古紙解砕物:PS(日本製紙製)
セルロース系バインダー:マーポローズME−300000(松本油脂製薬製)
【0094】
(セメント成形物の製造方法)
上記で得られたセメント組成物を、下記の押出成形条件に設定した真空押出成形機(本田鉄工製DE−50D)を用いて押出成形し、次いで、一次養生(70℃、12時間)およびオートクレーブ養生(170℃、10時間)を行い、平板状のセメント成形物を作製した。
〔押出成形条件〕
系内温度:30℃
真空度:−0.096MPa以下
ダイスの大きさ:40mm×10mm
【0095】
得られたセメント成形物を一定体積になるように裁断し、島津製作所(株)社製の上皿電子分析天秤AX200および比重測定キットSMK−301を用いて、その比重を測定した。
セメント成形物の比重が低いほど、中空微粒子の混合および押出成形時に発生する応力による破壊に対する耐久性が優れ、軽量化効果が発揮されるので、セメント成形物の軽量化効果をその比重で評価した。セメント成形物の軽量化効果の評価基準は下記のとおりであり、結果は表4に示すとおりであった。
〔セメント成形物の軽量化効果の評価〕
◎:セメント成形物の比重が1.45未満。
○:セメント成形物の比重が1.45以上1.50未満。
△:セメント成形物の比重が1.50以上1.55未満。
×:セメント成形物の比重が1.55以上。
【0096】
〔実施例C2〜C4および比較例C1〜C2〕
実施例C2〜C4および比較例C1〜C2では、実施例C1において、セメント組成物に含まれるそれぞれの成分および量を表4に示すようにそれぞれ変更する以外は、実施例C1と同様にしてセメント成形物を作製した。
【0097】
【表4】

【0098】
表4の結果より、本発明の中空微粒子およびセメント等の無機成分を含むセメント組成物は、優れた性能を有することが明らかである。
【0099】
〔実施例D1〕
(セラミック組成物およびセラミック成形物の製造)
無機成分でセラミック材料として用いられるコージェライト、セルロース系バインダーおよび実施例B1で得られた中空微粒子組成物および水を混練して、セラミック組成物を調製した。セラミック組成物に含まれるそれぞれの成分および量(単位:重量部)を表5に示した。
得られたセラミック組成物を押出成形法により賦形して、未焼成のセラミック成形物を成形した。
【0100】
実施例C1と同様にして、得られたセラミック成形物の比重を測定し、下記に示す評価基準にて軽量化効果を評価した。結果は表5に示すとおりであった。
〔セラミック成形物の軽量化効果の評価〕
◎:セラミック成形物の比重が1.4未満。
○:セラミック成形物の比重が1.4以上1.6未満。
△:セラミック成形物の比重が1.6以上1.7未満。
×:セラミック成形物の比重が1.7以上。
【0101】
〔実施例D2〜D4および比較例D1〜D2〕
実施例D2〜D4および比較例D1〜D2では、実施例D1において、セラミック組成物に含まれるそれぞれの成分および量を表5に示すようにそれぞれ変更する以外は、実施例D1と同様にしてセラミック成形物を作成した。
【0102】
【表5】

【0103】
表5の結果より、本発明の中空微粒子およびセラミック材料等の無機成分を含むセラミック組成物は、優れた性能を有することが明らかである。
【0104】
〔実施例E1〕
(接着剤組成物の製造)
実施例B1で得られた中空微粒子組成物を乾燥した中空微粒子と、有機成分である1液タイプ変性シリコーンシーリング材(日本シーカ製のSikaflex−M1、比重1.40)とを予備混合した。その後、得られた混合物を、コンディショニングミキサー(株式会社シンキー製のAR−360)を用いて、自転500rpmおよび公転2000rpmの回転条件下で、150秒間攪拌、脱泡して、接着剤組成物を得た。接着剤組成物に含まれるそれぞれの成分および量(単位:重量部)を表6に示した。
得られた接着剤組成物の比重をJIS A 1439に記載の方法で評価した結果、接着剤組成物比重は1.21であり、下記に示す評価基準にて軽量化効果を評価した。結果は表6に示すとおりであった。
【0105】
〔接着剤組成物の軽量化効果の評価〕
◎:接着剤組成物の比重が1.23未満。
○:接着剤組成物の比重が1.23以上1.26未満。
△:接着剤組成物の比重が1.26以上1.29未満。
×:接着剤組成物の比重が1.29以上。
【0106】
〔実施例E2〜E4および比較例E1〜E2〕
実施例E2〜E4および比較例E1〜E2では、実施例E1において、接着剤組成物に含まれるそれぞれの成分および量を表6に示すようにそれぞれ変更する以外は、実施例E1と同様にして評価を行った。
【0107】
【表6】

【0108】
表6の結果より、本発明の中空微粒子では、接着剤組成物の製造段階においても破壊されることなく、接着剤組成物の軽量化に寄与していることが明らかである。
【符号の説明】
【0109】
1 熱膨張性微小球
2 外殻(シェル)
3 発泡剤(コア)
4 中空微粒子A
5 外殻
6 微粒子充填剤(吸着された状態)
7 微粒子充填剤(めり込み、固定された状態)
8 熱風ノズル
9 冷媒流
10 過熱防止筒
11 分散ノズル
12 衝突板
13 熱膨張性微小球を含む気体流体
14 気体流
15 熱風流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、
熱膨張させて得られる中空微粒子の繰返し高温耐圧性が75%以上であり、前記熱膨張前後の発泡剤保持率が80%以上である、熱膨張性微小球。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が重合性成分を重合して得られ、前記重合性成分が、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スチレン系単量体、酢酸ビニル、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体および塩化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の単量体成分を含む、請求項1に記載の熱膨張性微小球。
【請求項3】
前記単量体成分が、ニトリル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含み、前記ニトリル系単量体が単量体成分の80重量%以上を占める、請求項2に記載の熱膨張性微小球。
【請求項4】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、
カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれた親水性官能基が置換したアルキル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有する分子量1000以上のポリアルキレンイミン類と、ポリビニルピロリドンとの存在下、重合性成分および前記発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、
10時間半減期温度が63℃以下であるアゾ化合物を必須成分とする重合開始剤を用いて前記重合性成分を重合させる工程を含む、
熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項5】
前記アゾ化合物が、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)および/または2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)である、請求項4に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項6】
前記ポリアルキレンイミン類の量が重合性成分100重量部に対して0.0001〜1重量部である、請求項4または5に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項7】
前記重合性成分が、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スチレン系単量体、酢酸ビニル、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体および塩化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の単量体成分を含む、請求項4〜6のいずれかに記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項8】
前記単量体成分が、ニトリル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含み、前記ニトリル系単量体が単量体成分の80重量%以上を占める、請求項7に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性微小球および/または請求項4〜8のいずれかに記載の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張してなる、中空微粒子。
【請求項10】
前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成される、請求項9に記載の中空微粒子。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性微小球および/または請求項4〜8のいずれかに記載の製造方法で得られる熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合する工程と、前記混合工程で得られた混合物を前記熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、前記微粒子充填剤を前記外殻の外表面に付着させる工程とを含む、請求項10記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性微小球、請求項4〜8のいずれかに記載の製造方法で得られる熱膨張性微小球、請求項9または10に記載の中空微粒子、および、請求項11に記載の製造方法で得られる中空微粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む、組成物。
【請求項13】
前記粒状物が中空微粒子であり、前記中空微粒子の含有量が全体の0.1〜10重量%であり、前記基材成分が無機成分である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記無機成分が、セメント類、コージェライトおよび炭化珪素から選ばれる少なくとも1種の無機物である、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載の組成物を成形してなる、成形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−195813(P2011−195813A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23474(P2011−23474)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】