説明

熱融通支援装置および熱融通支援システム

【課題】採熱および排熱が行われる熱融通において、利用態様によらずに、各拠点で利用できる熱の価値を統一された基準によって評価すること。
【解決手段】熱利用を行う複数の拠点間を熱媒が流通する熱媒流通路で接続し、拠点において熱媒からの採熱または熱媒への排熱を可能とした熱媒系統に適用される熱融通支援装置であり、第1通信部12と処理部13とを備えている。第1通信部12は、拠点に設けられた通信装置2から所定の時間間隔で拠点における熱利用に関する情報を受信する。処理部13は、拠点における熱利用に関する情報を用いて、拠点が利用する熱媒のポテンシャルを算出する。熱媒のポテンシャルは、所定の温度を基準としたときの熱媒の価値を数値化したパラメータとされているので、採熱および排熱の利用態様によらずに、各拠点に提供できる熱の価値を統一の基準によって評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱融通支援装置および熱融通支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場プロセスや空調など様々な用途において、ある熱媒への排熱や、熱媒からの採熱が行われる。排熱、採熱される熱の温度や量は様々であり、最近ではある地点で排熱した熱を別の地点で採熱するなどして、熱を有効利用する「熱融通」という考え方が提案され、注目されている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、特許文献1には、工場や地域などの域内で発生した熱を相互に補完するようにエンドループを形成し、複数の地点における熱の有効利用を可能とする技術が開示されている。
このような熱融通は、工場程度の規模から都市のような大規模な場合もあり、規模は様々である。
また、近年、都市などでは、下水処理水や下水などの下水熱を用いた熱融通が期待されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/065034号
【特許文献2】特開2008−241226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
将来、上記のような熱融通が導入された場合には、熱利用が行われる各拠点における熱利用の状況を集約し、各拠点がどの程度の熱利用を行えるのかを把握できるシステムが必要となることが予想される。特に、熱融通では、熱媒から採熱を行う拠点と熱媒に排熱を行う拠点との両方が存在することから、これらの利用態様によらずに、統一された基準に基づいて、各拠点において利用可能な熱の価値を評価する必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、採熱および排熱が行われる熱融通において、利用態様によらずに、各拠点で利用できる熱の価値を統一された基準によって評価することのできる熱融通支援装置および熱融通支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、熱利用を行う複数の拠点間を熱媒が流通する熱媒流通路で接続し、前記拠点において熱媒からの採熱または熱媒への排熱を可能とした熱媒系統に適用される熱融通支援装置であって、前記拠点に設けられた通信装置から所定の時間間隔で前記拠点における熱利用に関する情報を受信する受信手段と、前記拠点における熱利用に関する情報を用いて、前記拠点が利用する熱媒のポテンシャルを算出する処理手段とを備え、前記熱媒のポテンシャルは、所定の温度を基準としたときの熱媒の価値を数値化したパラメータである熱融通支援装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、拠点に設けられた通信装置から所定の時間間隔で送信された熱利用に関する情報が受信手段によって受信される。そして、これらの情報に基づいて、処理手段により、各拠点における熱媒のポテンシャルが算出される。ここで、熱媒のポテンシャルは、所定の温度を基準としたときの熱媒の価値を数値化したパラメータであるので、熱媒からの採熱および熱媒への排熱の両方の利用態様が存在した場合でも、これらの利用態様によらずに、統一された基準を用いて各拠点に供給される熱媒の価値を評価することができる。
【0008】
上記熱融通支援装置において、前記処理手段は、前記拠点に流入する熱媒のポテンシャルと前記拠点で要求される要求ポテンシャルとを比較して、該拠点における熱融通が成立するか否かを判定することとしてもよい。
【0009】
処理手段により、拠点に流入する熱媒のポテンシャルと拠点で要求される要求ポテンシャルとが比較されて、拠点における熱融通が成立するか否かが判定される。これにより、各拠点における熱融通の成立の可否を把握することが可能となる。
【0010】
上記熱融通支援装置において、前記処理手段は、前記拠点における過去の熱媒利用実績から前記要求ポテンシャルを推定し、推定した前記要求ポテンシャルを用いて熱融通が成立するか否かを判定することとしてもよい。
【0011】
各拠点における過去の熱利用実績から要求ポテンシャルが推定されるので、要求ポテンシャルが登録されていなかった場合でも、各拠点における熱融通の成立の可否を判定することが可能となる。
【0012】
上記熱融通支援装置において、前記処理手段は、前記拠点に流入する熱媒の温度および流量を用いて、熱媒の熱量に関するポテンシャルであるポテンシャル熱量を算出し、算出したポテンシャル熱量と要求ポテンシャル熱量とを比較して、該拠点における熱融通が成立するか否かを判定することとしてもよい。
【0013】
採熱および排熱が行われる熱融通において、各拠点に対して提供可能な熱量の情報は、熱媒の価値を評価する上で重要な情報となる。したがって、熱媒の熱量に関するポテンシャル熱量を算出し、これに基づいて熱融通が成立するか否かを判定することとしている。
【0014】
上記熱融通支援装置において、前記処理手段は、前記拠点に流入する熱媒の温度を用いて、熱媒の温度に関するポテンシャルであるポテンシャル温度を算出し、算出したポテンシャル温度と要求ポテンシャル温度とを比較して、該拠点における熱融通が成立するか否かを判定することとしてもよい。
【0015】
採熱および排熱が行われる熱融通において、各拠点に対して提供される熱媒の温度は、熱媒の価値を評価する上で重要な情報となる。したがって、熱媒の温度に関するポテンシャル温度を算出し、これに基づいて熱融通が成立するか否かを判定することとしている。
【0016】
上記熱融通支援装置において、前記処理手段によって算出された前記拠点における熱媒のポテンシャルおよび前記拠点における熱融通の成立の可否の判定結果の少なくともいずれか一つを前記拠点のクライアント端末に送信する送信手段を備えることとしてもよい。
【0017】
送信手段により、各拠点における熱媒のポテンシャルおよび熱融通の成立の可否の判定結果の少なくともいずれか一つが拠点のクライアント端末に送信されるので、各拠点において現在の熱融通の状況を把握することができ、また、この情報を考慮して将来における熱利用のスケジューリングなどを行うことが可能となる。
【0018】
上記熱融通支援装置において、前記処理手段は、前記拠点と該拠点に流入する熱媒のポテンシャルとを対応付けて表示した表示情報を作成する表示処理手段を備えることとしてもよい。
【0019】
表示処理手段により、各拠点と各拠点に流入する熱媒のポテンシャルとが対応付けられた表示情報が作成されるので、この表示情報を確認することで、熱媒流通路を流通する熱媒のポテンシャルの様子を全体的に把握することが可能となる。
【0020】
本発明は、上記いずれかに記載の熱融通支援装置と、熱利用を行う拠点に設けられ、前記熱融通支援装置に対して当該拠点における熱利用の情報を送信する通信装置と、前記熱融通支援装置と通信ネットワークを介して接続され、前記熱融通支援装置から受信した情報を表示可能な表示手段を備える前記拠点のクライアント端末とを具備する熱融通支援システムを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、採熱および排熱が行われる熱融通において、利用態様によらずに、各拠点で利用できる熱の価値を統一された基準によって評価することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】熱融通を概念的に示した図である。
【図2】熱媒のポテンシャルの概念について説明するための図である。
【図3】拠点におけるポテンシャル温度およびポテンシャル熱量の算出手法について説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る熱融通支援システムの全体概略構成を示したブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る熱融通支援装置が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図6】図5に示した処理部が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図7】表示処理部によって作成される第1表示情報の一例を示した図である。
【図8】表示処理部によって作成される第2表示情報の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る熱融通支援装置および熱融通支援システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、熱融通を概念的に示した図である。図1に示すように、熱の授受が行われる複数の拠点30が点在しており、拠点30間は熱媒が流通する熱媒流通路40によって接続されている。拠点30は、例えば、ヒートポンプや冷凍機などの熱源機が設置されている場所であり、熱の授受が行われる場所である。図1において、熱媒流通路40に向けて矢印が描かれている拠点30は排熱が行われている拠点であり、熱媒流通路40から拠点30に向けて矢印が描かれている拠点30は採熱が行われている拠点である。
【0024】
図1に示されるように、ある拠点30において排熱されることにより温められた熱媒が他の拠点30において熱源として用いられることにより熱の再利用が行われ、ある拠点において採熱されることにより冷やされた熱媒が他の地点において冷却源として用いられることにより熱の再利用が行われていることがわかる。このような熱融通が行われることにより、エネルギ効率を高めている。また、図1では、熱媒流通路40は閉ループとして表わされており、熱利用が行われながら熱媒が循環していることがわかる。
上記熱融通の一例としては、下水道熱の供給が挙げられる。このような場合、熱融通は、例えば、都市等の下水道局等により運営される。
【0025】
次に、熱媒流通路40を流通する熱媒のポテンシャルの概念について図2を参照して説明する。図2に示すように、熱媒が流通する熱媒流通路40のある最小区間について考えると、この最小区間を出入りする熱媒は、以下の表1に示すような状態量を持っている。
【0026】
【表1】

【0027】
最小区間の入口状態量から算出されるものがその熱媒のポテンシャルであり、区間出口までに外部からの入熱や外部への放熱が行われれば、次の区間の入口における熱媒のポテンシャルは変化する。外部からの入熱や放熱は、新たな熱媒が直接流れ込んでくる場合のほか、熱媒が移動する管路と外部の温度差による伝熱などによりなされる。
【0028】
例えば、熱媒の熱量に関するポテンシャルであるポテンシャル熱量は、入口における状態量を用いて以下の(1)式で表わされる。ここで、熱融通における熱媒の利用は、採熱と放熱とがあるが、本実施形態では、基準温度を設け、この基準温度に対する熱の価値を数値化することで、利用態様によらずに、統一した基準による熱媒の価値の評価を可能としている。基準温度は、任意に設定可能であるが、本実施形態では、一例として0℃に設定している。また、基準温度は常に一定でなくてもよく、例えば、外気温度のように変化する値を用いることとしてもよい。
【0029】
=v×A×ρ×C×(T−T) (1)
【0030】
(1)式において、Qは最小区間入口における熱量(kW)、vは最小区間入口における平均流速(m/s)、Aは最小区間入口の管断面積(m)、ρは最小区間入口における密度(kg/m)、Cは比熱(kJ/kg・K)、Tは最小区間入口における温度(℃)、Tは基準温度(℃)、すなわち、0℃である。
【0031】
入熱や放熱は、直接流れこんでくる場合には以下の(2)式、管路を通じての熱伝導は(3)式で表わされる。
熱伝導は、出入口の平均外周長さと区間長さの積を伝熱面積とし、伝熱は出入口の平均温度と外部の温度差としている。
【0032】
q=v×A×ρ×C×(T−T) (2)
q=(Lr1+Lr2)/2×L×{(T−T)/2−T}×λ (3)
【0033】
(2)式において、v,A,ρ,C,Tは、それぞれ外部における平均流速(m/s)、管断面積(m)、密度(kg/m)、比熱(kJ/kg・K)、温度(℃)である。(3)式において、Lr1は最小区間入口における外周長さ(m)、Lr2は最小区間出口における外周長さ(m)、Lは最小区間長さ(m)、Tは最小区間入口における温度(℃)、Tは最小区間出口における温度(℃)、λは熱伝導率(kW/m・K)である。
【0034】
上記から、最小単位出口におけるポテンシャル熱量は、以下の(4)式で表わされる。
【0035】
=Q+q (4)
【0036】
そして、この最小区間を連続的につなげていくと、ある領域内の各地点における熱媒のポテンシャルを算出することができる。
【0037】
本実施形態に係る熱融通支援システムでは、上述した熱媒のポテンシャルという概念を用いて、図1に示した各拠点30に供給可能な熱媒の価値を把握するとともに、各拠点30において熱融通が成立するか、すなわち、各拠点が所望している熱量などを熱媒から供給可能か否かを判定する。
ここで、ポテンシャルは、上記の表1に示したように、熱媒が有する各状態量において算出可能であるが、特に熱融通では、熱量に関する熱媒のポテンシャルであるポテンシャル熱量および温度に関する熱媒のポテンシャルであるポテンシャル温度が重要な項目となる。したがって、本実施形態に係る熱融通支援システムでは、ポテンシャル熱量およびポテンシャル温度を用いて各拠点における熱融通の成立の可否を判定することとしている。
以下、各拠点30におけるポテンシャル温度およびポテンシャル熱量の算出手法について説明する。
【0038】
今、図3に示すように、隣接する2つの拠点Aと拠点Bについて考える。ここで、拠点Aは拠点Bの上流側に位置している。このとき、拠点Bにおける現在のポテンシャル温度は、以下の(5)式で求められる。
【0039】
=TBin−T (5)
【0040】
(5)式において、Tは拠点Bのポテンシャル温度(℃)、TBinは拠点Bの熱媒入口温度(℃)、Tは基準温度(℃)、すなわち、0℃である。
【0041】
また、拠点Bにおけるポテンシャル熱量は、以下の(6)式で求められる。
PB=T×FAB×C×γ/3600 (6)
【0042】
(6)式において、QPBは拠点Bが利用可能な熱媒のポテンシャル熱量(kW)、Tは拠点Bの現在のポテンシャル温度(℃)、FABは拠点Aと拠点Bとの間の熱媒流量(m/h)、Cは比熱(kJ/kg・K)、γは比重(kg/m)である。
ここで、拠点Aと拠点Bとの間の熱媒流量FABは、熱媒流通路40に流量センサを設け、この流量センサによって測定された値を用いることとしてもよいが、各熱媒流通路40に流量センサを設けずに、以下の(7)式に示した演算式を用いて演算処理により推定することとしてもよい。
【0043】
AB=Q/{(TAOUT−TAIN)×C×γ/3600 (7)
【0044】
(7)式において、Qは拠点Aの排熱量または採熱量(kW)、TAOUTは拠点Aの熱媒出口温度(℃)、TAINは拠点Aの熱媒入口温度(℃)である。
【0045】
上記のように、熱媒流通路40における各拠点のポテンシャル熱量の算出には、その拠点に隣接し、かつ、上流に位置する拠点の熱媒の利用に関する情報を用いればよい。また、拠点が複数の熱媒流通路40が合流する合流点の下流に位置していることから、隣接する上流の拠点が複数存在する場合には、それら複数の拠点における熱媒の利用に関する情報を用いればよい。更に、外部からの入熱や外部への放熱がある場合には、それらを考慮して、ポテンシャル熱量を算出すればよい。
【0046】
このように、各拠点におけるポテンシャル熱量の算出において、隣接する拠点における熱媒の利用に関する情報と当該拠点における熱媒入口温度を用いることにより、複雑な演算式を利用することなく、ポテンシャル熱量を算出することが可能となる。
【0047】
次に、本実施形態に係る熱融通支援装置および熱融通支援システムについて説明する。上述したように、本実施形態に係る熱融通支援装置および熱融通支援システムは、各拠点における熱媒のポテンシャルを算出し、この熱媒のポテンシャルに基づいて、各拠点における熱融通が成立するか否かを判定するものである。
【0048】
図4は、本実施形態に係る熱融通支援システムの全体構成を示したブロック図である。熱融通支援システムは、熱融通支援装置1と、各拠点30に設置された通信装置2と、クライアント端末3とを備えている。
熱融通支援装置1と各拠点30に設置されている複数の通信装置2とは所定の通信ネットワーク6を介して接続されている。この通信ネットワーク6に関しては特に限定されない。熱融通支援装置1とクライアント端末3とは、所定の通信ネットワーク7、例えば、インターネットで接続されている。なお、通信ネットワーク6および通信ネットワーク7とは同一であってもよく、個別のネットワークであってもよい。
【0049】
各拠点30に設置された通信装置2は、その拠点30に設置されている熱源機による熱利用に関する情報を熱融通支援装置1に所定の時間間隔で送信する。熱利用に関する情報としては、例えば、排熱前後の温度および排熱量、または、採熱前後の温度および採熱量が一例として挙げられる。
【0050】
排熱量は、例えば、以下の(8)式にて求められる。
Q=(Tout−Tin)×F×C×γ/3600 (8)
(1)式において、Qは排熱量(kW)、Tinは熱源機の冷却水入口温度(℃)、Toutは熱源機の冷却水出口温度(℃)、Fは熱源機の冷却水流量(m/h)、Cは比熱(kJ/kg・K)、γは比重(kg/m)である。
【0051】
採熱量は以下の(9)式にて求められる。
Q=(Tin−Tout)×F×C×γ/3600 (9)
(9)式において、Qは採熱量(kW)、Tinは熱源機の熱源水入口温度(℃)、Toutは熱源機の熱源水出口温度(℃)、Fは熱源機の熱源水流量(m/h)、Cは比熱(kJ/kg・K)、γは比重(kg/m)である。
【0052】
上記排熱量または採熱量の演算は、例えば、熱源機が備える制御基板などで行われ、算出結果が通信装置2に出力されるような構成とされている。
通信装置2は、各熱源機から通知された熱利用に関する情報を所定の時間間隔で通信ネットワーク6を介して熱融通支援装置1へ送信する。なお、複数の熱源機が設けられている拠点については、例えば、平均温度および各熱源機における熱量の合計が熱融通支援装置1へ送信される。
【0053】
熱融通支援装置1は、各拠点30に設置されている通信装置2から受信した熱媒の利用に関する情報に基づいて拠点毎にポテンシャル熱量およびポテンシャル温度を算出し、各拠点において熱融通が成立するか否かを判定する機能を有している。更に、熱融通支援装置1は、各通信装置2から受信した情報および外気情報などに基づいて拠点毎に未利用熱単価を算出する機能や、各拠点30における熱利用の状況を可視化した熱媒系統図を作成する機能を備えている。ここで、未利用熱単価とは、熱媒流通路40を流通する熱媒の単価であり、詳細は後述する。熱融通支援装置1は、拠点毎に算出したポテンシャル熱量や熱融通の成立の可否、拠点毎に作成した表示情報などを各拠点30に提供する。
例えば、熱融通支援装置1は、WEBサーバ4を備えており、WEBサーバ4によりインターネットを通信媒体として各拠点のクライアント端末3に情報を提供する。
【0054】
クライアント端末3は、WEBブラウザを搭載したコンピュータであり、熱融通支援装置1からデータを取得し、表示装置5に表示する機能を有している。すなわち、クライアント端末3がWEBサーバ4の所定のURLにアクセスすることで、当該拠点におけるポテンシャル熱量およびポテンシャル温度や、未利用熱単価が付加された熱媒系統図などを表示装置5に表示させることが可能となる。
また、クライアント端末3は、例えば、各拠点30あるいは各拠点30における熱利用を管理・制御する管理設備内に設置されている。したがって、各拠点の利用者は、表示装置5に現在の熱媒のポテンシャル、未利用熱単価、熱媒系統図などが表示されることにより、これらの情報を総合的に考慮した当該拠点における熱利用の調整や、将来的な熱利用のスケジューリングを行うことが可能となる。
【0055】
図5および図6は、熱融通支援装置1が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図5に示すように、熱融通支援装置1は、第1記憶部11と、第1通信部(受信手段)12と、処理部(処理手段)13と、第2記憶部14と、第2通信部(送信手段)15とを備えている。
【0056】
第1記憶部11には、熱融通支援装置1の担当区域内に存在し、熱の授受が行われる複数の拠点30と、該拠点間をつなぐ熱媒流通路40を含む熱媒系統を示した基本フレームが記憶されている。本実施形態では、所定の担当区域として都市の一区域を想定し、熱媒流通路40として下水網を利用した場合の熱融通を想定している。
【0057】
第2記憶部14には、各拠点30によって登録された熱融通判定条件が格納されている。具体的には、各拠点30が熱利用を行う際の要求ポテンシャル熱量と要求ポテンシャル温度の条件が利用時間と対応付けられて格納されている。
要求ポテンシャル熱量と要求ポテンシャル温度の条件は、例えば、ある範囲をもって設定され、また、予め設定された最少時間単位で、クライアント端末3から設定および更新可能とされている。
【0058】
第1通信部12は、通信装置2との通信インターフェースであり、第2通信部15はクライアント端末3との通信インターフェースである。なお、通信ネットワーク6と通信ネットワーク7とが同一の場合は、第1通信部12および第2通信部15とは共通化されてもよい。
【0059】
処理部13は、図6に示すように、ポテンシャル算出部13a、熱融通成立判定部13b、熱料金算出部13c、および表示処理部13dを備えている。
【0060】
ポテンシャル算出部13aは、第1通信部12により受信された各拠点30の採熱量および採熱前後の温度または排熱量および排熱前後の温度を用いて、各拠点30が利用可能な熱媒のポテンシャル、具体的には、ポテンシャル温度とポテンシャル熱量を算出し、この算出結果を熱融通成立判定部13b、および表示処理部13dに出力する。
具体的には、ポテンシャル算出部13aは、上述した(5)式から(7)式の演算式を保有しており、各拠点30におけるポテンシャル温度とポテンシャル熱量を算出する。算出手法については、上述した通りである。
【0061】
熱融通成立判定部13bは、拠点毎に、ポテンシャル算出部13aによって算出された現在のポテンシャル温度と第2記憶部14に格納されている次時刻の要求ポテンシャル温度の条件とを比較し、現在のポテンシャル温度が要求ポテンシャル温度の条件を満たすか否かを判定する。ここで、次時刻とは、現在から上記最少時間単位後の時刻を意味する。
【0062】
更に、熱融通成立判定部13bは、拠点毎に、ポテンシャル算出部13aによって算出されたポテンシャル熱量と第2記憶部14に格納されている次時刻の要求ポテンシャル熱量の条件とを比較し、現在におけるポテンシャル熱量が要求ポテンシャル熱量の条件を満たすか否かを判定する。
【0063】
上記判定の結果、現在のポテンシャル温度が要求ポテンシャル温度の条件を満たし、かつ、現在のポテンシャル熱量が要求ポテンシャル熱量の条件を満たしていれば、熱融通成立であると判定し、それ以外の場合には熱融通不成立であると判定する。
熱融通成立判定部13bは、この判定結果を拠点30の識別情報に対応付けて第2記憶部14に格納する。
【0064】
熱料金算出部13cは、第1通信部12により受信された各拠点30の排熱量または採熱量および熱媒温度、および外部気温などに基づいて、各拠点30における未利用熱単価を算出する。ここで、未利用熱とは、熱媒流通路40を流通する熱媒が持つ熱を意味し、未利用熱単価は未利用熱の単価を意味する。
【0065】
以下に、未利用熱単価について説明する。
未利用熱単価は、例えば、外気条件によって変動する。
すなわち、夏季などのように、外気温が高い時期には、未利用熱自体も外気の影響を受けて温度が高くなることが考えられ、更に、冷房による冷凍機の需要が増加することから、未利用熱の温度は更に高くなる傾向にある。したがって、熱の需給バランスから、熱媒流通路40に対して排熱を行う拠点に対する未利用熱単価を高く設定する。一方、未利用熱を採熱として用いて、未利用熱の温度を低下させるような拠点は、熱の需給バランスから価値が高く、これらの拠点に対しては低価格で未利用熱を提供する、すなわち、未利用熱単価を低く設定する。なお、熱の需給バランスから価値が高いと判断した拠点に対しては、課金ではなく、利益を還元することとしてもよい。
【0066】
また、冬季などのように、外気温が低い時期には、未利用熱自体も外気の影響を受けて温度が低くなることが考えられ、更に、給湯や暖房などの熱源機の需要が増加することから、未利用熱の温度は更に低下する傾向にある。したがって、熱の需給バランスから、熱媒流通路40から採熱を行う拠点に対する未利用熱単価を高く設定する。一方、未利用熱に対して排熱を行い、未利用熱の温度を上昇させるような拠点は、熱の需給バランスから価値が高く、これらの拠点に対しては低価格の単価を設定する。なお、夏季の場合と同様に、熱の需給バランスから価値が高いと判断した拠点に対しては、課金ではなく、利益を還元することとしてもよい。
【0067】
上記のように、外気条件および熱の需給バランスによって、未利用熱単価が決められる。本実施形態では、未利用熱単価を熱の絶対的な価値と熱の相対的な価値との2つの要素で表現することとしている。
【0068】
未利用熱単価は、以下の(10)式のように、未利用熱の絶対的な価値と相対的な価値とを乗算した値として表わされる。
【0069】
Cf=Cfa×Cfr (10)
【0070】
(10)式において、Cfは未利用熱単価、Cfaは未利用熱の絶対的な価値、Cfrは未利用熱の相対的な価値である。
【0071】
未利用熱の絶対的な価値Cfaは、例えば、以下の(11)式で表現される。
【0072】
Cfa=f(To,Tu) (11)
【0073】
上記(11)式において、Toは外気温度(℃)、Tuは排熱または採熱の温度(℃)である。また、上記ToおよびTuに代えて、外気温度を基準としたポテンシャル温度を用いることとしてもよい。
【0074】
未利用熱の相対的な価値Cfrは、排熱と採熱の需給バランスから決定され、例えば、以下の(12)式で表現される。
【0075】
Cfr=f(Q´) (12)
【0076】
(12)式において、Cfrは未利用熱の相対的な価値、Q´は周囲の利用バランス(kW)である。
【0077】
上記未利用熱の絶対的な価値Cfaをどの程度の金額にするのか、また、周囲の利用バランスを考慮して未利用熱の相対的な価値Cfrをどのように決定するのかについては、熱融通を運用する者が任意に決定することができ、運用に則して具体的な数式を用いることとすればよい。
【0078】
熱料金算出部13cは、上記(10)式から(12)式を保有しており、第1通信部12により受信された各拠点30の排熱量または採熱量および熱媒温度、ならびに、外部サーバなどから受信した外部気温などに基づいて、各拠点30における未利用熱単価を算出し、算出したこれらの情報を各拠点30に割り当てられている識別情報と対応付けて表示制御部13dに出力する。
【0079】
表示処理部13dは、ポテンシャル算出部13aによって算出された各拠点30のポテンシャル熱量に関する情報を視覚化した第1表示情報を作成する機能や、各拠点における熱媒利用の情報などを視覚化した第2表示情報を作成する機能を有している。
【0080】
具体的には、表示処理部13dは、ポテンシャル算出部13aによって算出された各拠点30における現在のポテンシャル熱量が示された「現在のポテンシャル熱量分布」および第2記憶部14に格納されている次時刻における各拠点の要求ポテンシャル熱量が示された「次時刻のポテンシャル熱量分布」ならびに現在のポテンシャル熱量分布から次時刻のポテンシャル熱量分布を減算した「熱融通成立分布」を第1表示情報として作成する。
【0081】
図7は、第1表示情報の一例を示した図である。図7において、上段は現在のポテンシャル熱量分布であり、ポテンシャル算出部13aによって算出された最新のポテンシャル熱量が各拠点と対応付けられて表わされる。図7では、ポテンシャル熱量を山の高さで表わしており、山が高いほどポテンシャル熱量が高くなっている。中段は「要求ポテンシャル熱量分布」であり、採熱が谷、排熱が山で示されている。
【0082】
下段は、「熱融通成立分布」であり、「現在のポテンシャル熱量分布」と「次時刻の要求ポテンシャル熱量分布」とを加算した分布となっている。この分布において、熱融通が成立している拠点については、ポテンシャル熱量が山で表わされ、熱融通が不成立の拠点については、ポテンシャル熱量が谷で表わされている。作成された第1表示情報は所定のURLに対応付けられて第2記憶部14に格納される。
【0083】
そして、クライアント端末3がWEB上の当該URLにアクセスすることにより、第2記憶部14に格納されている第1表示情報が第2通信部15によってクライアント端末3に送信される。このとき、熱融通成立判定部13bによって判定された熱融通成立、不成立の情報も第1表示情報に付加されてクライアント端末3に送信される。これにより、クライアント端末3の表示装置5に図7に示したような第1表示情報や熱融通成立の可否の判定結果が表示されることとなる。
【0084】
また、表示処理部13dは、第1記憶部11から熱媒系統の基本フレームを読み出し、読み出した基本フレーム上に示された各拠点30に、第1通信部12により受信された各拠点30の排熱量または採熱量および熱媒温度を関連付けて表示することにより、熱媒系統図を作成する。更に、表示処理部13dは、作成した熱媒系統図に、熱料金算出部13cから入力された各拠点における未利用熱単価を付加することにより第2表示情報を作成する。
【0085】
図8は、ある拠点における第2表示情報の一例を示した図である。第2表示情報は、各拠点30に採熱量または排熱量が数値として表示されている。また、採熱か排熱かは矢印の方向によって表わされ、拠点30に向けて矢印が表示されている箇所は採熱が、拠点30から熱媒系統へ向けて矢印が表示されている箇所は排熱が行われている。また、採熱量または排熱量に応じて矢印の太さが変えられている。また、熱媒系統を流通する熱媒温度については、色で表わされている。図8では、温度を複数の温度帯に分割し、各温度帯にそれぞれ異なる色が割り当てられている。熱媒温度は、各拠点30に流入する温度および排出される温度に基づいて決定される。更に、熱媒系統図の左上には、当該拠点における未利用熱単価が表示されている。作成された第2表示情報は、各拠点30に対応して割り付けられたURLに対応付けられて第2記憶部14に格納される。
【0086】
そして、クライアント端末3がWEB上の当該URLにアクセスすることにより、第2記憶部14に格納されている表示情報が第2通信部15によってクライアント端末3に送信される。これにより、クライアント端末3の表示装置5に図8に示したような第2表示情報が表示されることとなる。
【0087】
次に、上記構成を備える熱融通支援システムの動作について説明する。
まず、各拠点30における熱源機の採熱量および採熱前後の熱媒温度または排熱量および排熱前後の熱媒温度が各熱源機の制御基板において取得・算出され、これらの情報が通信装置2に送られる。通信装置2は、入力された情報を当該拠点30の識別情報と対応付けて熱融通支援装置1へ送信する。
【0088】
熱融通支援装置1においては、第1通信部12によって通信装置2から送信された拠点30の識別情報とこの拠点30における熱源機の採熱量および採熱前後の熱媒温度または排熱量および排熱前後の熱媒温度が受信され、この情報がポテンシャル算出部13a、熱料金算出部13cおよび表示処理部13dに出力される。
【0089】
ポテンシャル算出部13aは、各拠点30の通信装置2から受信した情報に基づいて、上述した(5)式から(7)式を用いて各拠点30における現在のポテンシャル温度とポテンシャル熱量とを算出し、算出結果を熱融通成立判定部13bおよび表示処理部13dに出力する。
【0090】
熱融通成立判定部13bは、ポテンシャル算出部13aからポテンシャル温度およびポテンシャル熱量が入力されると、第2記憶部14に格納されている次時刻における各拠点の要求ポテンシャル温度および要求ポテンシャル熱量を読み出す。そして、これらの情報に基づいて熱融通の成立の可否を判定し、判定結果を各拠点30の識別情報に対応付けて第2記憶部14に格納する。
【0091】
熱料金算出部13cは、各拠点30から受信した情報および外部の所定サーバなどから受信した外気温などに関する気象情報に基づいて、上述した(10)式から(12)式を用いて拠点毎に未利用熱単価を算出し、算出した未利用熱単価を表示処理部13dに出力する。
【0092】
表示処理部13dは、ポテンシャル算出部13aから各拠点30のポテンシャル熱量が入力されると、第2記憶部14に格納されている次時刻における要求ポテンシャル熱量の情報を読み出し、これらの情報に基づいて第1表示情報を作成し、これを所定のURLに対応付けて第2記憶部14に格納する。
また、表示処理部13dは、熱料金算出部13cから各拠点30の未利用熱単価が入力されると、第1記憶部11に格納されている熱媒系統の基本フレームを読み出し、基本フレーム上に表示されている各拠点30の場所に、第1通信部12から入力された各拠点30の排熱量または採熱量などを反映させて熱媒系統図を作成するとともに、この熱媒系統図に熱料金算出部13cから入力された各拠点30の未利用熱単価を付加した第2表示情報を拠点毎に作成し、これを各拠点30のURLに対応付けて第2記憶部14に格納する。
【0093】
なお、第2記憶部14において、すでに各拠点30のURLに対応付けて第2表示情報が格納されている場合には、表示処理部13dは、第2記憶部14に格納されている熱媒系統図における各拠点30の熱利用に関する情報および未利用熱単価の情報を更新する処理を行えばよい。
そして、各拠点30における上記の如き処理が、所定の時間間隔で行われることにより、各拠点30における最新の熱利用の情報が反映された第1表示情報および第2表示情報が作成され、第2記憶部14に格納される。
【0094】
そして、クライアント端末3から自身に割り当てられているWEBサーバ上のURLにアクセスすることにより、第2記憶部14に格納されている当該拠点における最新の第1表示情報および第2表示情報が第2通信部15を介してクライアント端末3へ送信され、クライアント端末3の表示装置5に表示されることとなる。
【0095】
以上説明してきたように、本実施形態に係る熱融通支援装置1および熱融通支援システムによれば、所定の温度を基準としたときの熱媒の価値を数値化したパラメータである熱媒のポテンシャルを用いて、各拠点が利用可能な熱媒の価値を評価するので、熱媒からの採熱および熱媒への排熱の両方の利用態様が存在する熱融通において、これらの利用態様によらずに、統一された基準を用いて各拠点に供給される熱媒の価値を評価することが可能となる。
【0096】
また、予め設定されている次時刻の要求ポテンシャルと現在における熱媒のポテンシャルとを比較することにより、次時刻における熱融通の成立の可否を判定し、更に、この判定結果が各拠点30のクライアント端末3へ送信可能な構成とされているので、各拠点30では、熱融通成立の可否を確認することができる。
【0097】
なお、本実施形態では、次時刻における要求ポテンシャル熱量や要求ポテンシャル温度がクライアント端末3から設定され、第2記憶部14に格納されている場合について述べたが、次時刻における要求ポテンシャル熱量および要求ポテンシャル温度を過去の利用実績から推定し、推定したこれらの情報を用いて熱融通の成立の可否を判定することとしてもよい。このようにすることで、例えば、次時刻の要求ポテンシャルが登録されていない場合でも熱融通の成立の可否を判定することができ、また、ユーザによるこれらの情報の登録操作を不要とすることが可能となる。
【0098】
また、本実施形態によれば、各拠点30で行われている熱利用の状況ならびに熱媒の温度が表示された熱媒系統図に、各拠点における未利用熱単価が付加された表示画面をクライアント端末3の表示装置5に表示させるので、熱融通支援装置1の担当区域における熱融通の様子を可視化してユーザに提示することができる。
この結果、ユーザはこの表示画面を確認することにより、未利用熱単価および他の拠点における熱利用の状況を考慮に入れた自身の拠点の熱利用の調整や、今後における熱利用のスケジューリングを行うことが可能となる。
【0099】
例えば、未利用熱を利用するシステムと冷却塔などを利用するシステムとを所有する拠点の場合には、未利用熱単価によって、システムの利用比率を検討することができる。
また、行政等が所有する熱供給公社などの外部設備から既に所望の温度に制御された熱媒を利用する場合と、温度が不安定な未利用熱を拠点において所望の温度とした後に、これを熱媒として利用する場合の両方が可能な拠点では、熱供給公社などの外部設備により設定された熱供給単価と、未利用熱を利用して所望の温度の熱媒を製造した場合の熱製造単価(=未利用熱単価+単位当たりの未利用熱を所望の温度にするのに必要とされる費用)とを比較して、外部設備からの供給熱量と未利用熱からの供給熱量との比率を調整することが可能となる。すなわち、熱製造単価が熱供給単価を上回っている場合には、外部設備からの熱供給を優先させ、熱製造単価が熱供給単価を下回っている場合には、未利用熱を利用することを優先させる。これにより、コスト削減を図ることができる。
【0100】
また、本実施形態においては、熱料金算出部13cが未利用熱単価のみを算出する場合について説明したが、例えば、クライアント端末3からの要求などに応じて、各拠点における課金情報を算出し、この課金情報と未利用熱単価とが付加された熱媒系統図をクライアント端末3に提供することとしてもよい。
【0101】
課金情報は、例えば、以下の(13)式で与えられる。
【0102】
Cqu=Cf×Q=Cfa×Cfr×Q (13)
【0103】
(13)式において、Cquは課金情報、Cfは未利用熱単価、Qは未利用熱利用量(kW)である。
【0104】
また、本実施形態に係る熱融通支援装置1において、各拠点のユーザが、表示装置5に表示された未利用熱単価および周辺拠点における熱需給バランスを考慮して、将来における未利用熱の売買予約を行えるような機能を追加することとしてもよい。
【0105】
例えば、クライアント端末3の表示装置5に表示された表示画面に、売買予約を行う熱売買予約サイトを表示させ、未利用熱の売買予約を設定できるようなWEB上の設計を行っておくこととしてもよい。例えば、売買予約サイトにおいては、売買に関する情報、例えば、未利用熱を利用する期間および希望熱利用単価を対応付けて入力することにより、将来における熱利用の予約を行う。予約された情報は、通信ネットワーク7を介して熱融通支援装置1に送信され、熱融通支援装置1内に予約情報として格納される。
【0106】
そして、熱融通支援装置1は未利用熱を利用する期間が開始された場合には、その時点における未利用熱単価と希望熱利用単価とを比較し、未利用熱単価が希望熱利用単価を下回っており、かつ、熱融通成立判定部13bにより熱融通が成立すると判定されている場合に、熱利用を開始させ、熱利用が開始されたことを拠点のクライアント端末3に通知する。一方、熱融通成立判定部13bにより熱融通が成立すると判定されている場合であっても、未利用熱単価が希望熱利用単価を上回る場合には、熱利用を開始せずに、熱利用が開始されなかった旨をクライアント端末3に対して通知する。
なお、希望熱利用単価および未利用熱を利用する期間の登録は、予め定義された最少契約時間を最少単位として登録・変更させることが可能である。
【0107】
また、本実施形態に係る熱融通では、上述した通り、採熱と排熱の両方が行われるが、夏季のように排熱が活発に行われるような期間においては、熱媒温度を下げる方向に機能する採熱を行う拠点は価値が高く、また、冬季のように採熱が活発に行われるような期間においては、熱媒温度を上げる方向に機能する排熱を行う拠点は価値が高い。
そこで、このような状況を考慮して、熱の需給バランスから、価値が高いと判断した拠点に対しては、課金ではなく、料金を支払う、すなわち、熱を買い取るという料金の仕組みを採用してもよい。
例えば、採熱および排熱のうち、クライアント需要が多い方を課金扱いし、クライアント需要が少ない方から熱を買い取る。採熱及び排熱のうちどちらを課金とし、どちらを買い取りにするかについては、例えば、図7に示した「次時刻の要求ポテンシャル熱量分布」を用いれば容易に判定することが可能である。
【0108】
更に、熱の買い取りの場合においても、上述した課金の場合と同様に、希望単価に応じて熱利用を開始させるか否かを判定することとしてもよい。この場合、例えば、各拠点は、上記希望熱利用単価に加えて、または、代えて、希望熱買取単価を未利用熱を利用する期間と対応付けて登録する。登録されたこれらの情報は、熱融通支援装置1の第2記憶部14に格納される。そして、熱融通支援装置1は、未利用熱を利用する期間が開始された場合に、その時点における熱の買取単価と希望熱買取単価とを比較し、熱の買取単価が希望熱買取単価を上回っており、かつ、熱融通成立判定部13bにより熱融通が成立すると判定されている場合に、熱利用(熱の買い取り)を開始させ、熱利用が開始されたことを拠点のクライアント端末3に通知する。一方、熱融通成立判定部13bにより熱融通が成立すると判定されている場合であっても、熱の買取単価が希望熱買取単価を下回る場合には、熱利用を開始せずに、熱利用が開始されなかった旨をクライアント端末3に対して通知する。
【符号の説明】
【0109】
1 熱融通支援装置
2 通信装置
3 クライアント端末
4 WEBサーバ
5 表示装置
11 第1記憶部
12 第1通信部
13 処理部
13a ポテンシャル算出部
13b 熱融通成立判定部
13c 熱料金算出部
13d 表示処理部
14 第2記憶部
15 第2通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱利用を行う複数の拠点間を熱媒が流通する熱媒流通路で接続し、前記拠点において熱媒からの採熱または熱媒への排熱を可能とした熱媒系統に適用される熱融通支援装置であって、
前記拠点に設けられた通信装置から所定の時間間隔で前記拠点における熱利用に関する情報を受信する受信手段と、
前記拠点における熱利用に関する情報を用いて、前記拠点が利用する熱媒のポテンシャルを算出する処理手段と
を備え、
前記熱媒のポテンシャルは、所定の温度を基準としたときの熱媒の価値を数値化したパラメータである熱融通支援装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記拠点に流入する熱媒のポテンシャルと前記拠点で要求される要求ポテンシャルとを比較して、該拠点における熱融通が成立するか否かを判定する請求項1に記載の熱融通支援装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記拠点における過去の熱媒利用実績から前記要求ポテンシャルを推定し、推定した前記要求ポテンシャルを用いて熱融通が成立するか否かを判定する請求項2に記載の熱融通支援装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記拠点に流入する熱媒の温度および流量を用いて、熱媒の熱量に関するポテンシャルであるポテンシャル熱量を算出し、算出したポテンシャル熱量と要求ポテンシャル熱量とを比較して、該拠点における熱融通が成立するか否かを判定する請求項2または請求項3に記載の熱融通支援装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記拠点に流入する熱媒の温度を用いて、熱媒の温度に関するポテンシャルであるポテンシャル温度を算出し、算出したポテンシャル温度と要求ポテンシャル温度とを比較して、該拠点における熱融通が成立するか否かを判定する請求項2から請求項4のいずれかに記載の熱融通支援装置。
【請求項6】
前記処理手段によって算出された前記拠点における熱媒のポテンシャルおよび前記拠点における熱融通の成立の可否の判定結果の少なくともいずれか一つを前記拠点のクライアント端末に送信する送信手段を備える請求項2から請求項5のいずれかに記載の熱融通支援装置。
【請求項7】
前記処理手段は、前記拠点と該拠点に流入する熱媒のポテンシャルとを対応付けて表示した表示情報を作成する表示処理手段を備える請求項1から請求項6のいずれかに記載の熱融通支援装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の熱融通支援装置と、
熱利用を行う拠点に設けられ、前記熱融通支援装置に対して当該拠点における熱利用の情報を送信する通信装置と、
前記熱融通支援装置と通信ネットワークを介して接続され、前記熱融通支援装置から受信した情報を表示可能な表示手段を備える前記拠点のクライアント端末と
を具備する熱融通支援システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50287(P2013−50287A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189917(P2011−189917)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度、平成23年度、平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代型ヒートポンプシステム研究開発/都市域における下水管路網を活用した下水熱利用・熱融通技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願(委託先:公立大学法人大阪市立大学、関西電力株式会社、株式会社総合設備コンサルタント、中央復建コンサルタンツ株式会社、再委託先:株式会社NTTファシリティーズ総合研究所、三菱重工業株式会社))
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(591124846)株式会社総合設備コンサルタント (6)
【出願人】(593122310)中央復建コンサルタンツ株式会社 (5)
【出願人】(000128083)株式会社 NTTファシリティーズ総合研究所 (42)
【Fターム(参考)】