説明

熱転写シート及び熱転写記録方法

【課題】
基材フィルムの一方の面に、少なくとも染料層が形成され、他方の面に耐熱滑性層が形成されている熱転写シートにおいて、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画像不良を防止した熱転写シート及びそれを用いた熱転写記録方法を提供する。
【解決手段】 基材フィルム1の一方の面に、少なくとも染料層2が形成され、他方の面に耐熱滑性層3が形成されている熱転写シートにおいて、該染料層2が2層からなり、該2層のうちの1層により、検知マーク6が形成され、該検知マークは、検知マークに隣接した箇所との色差で、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式ΔE*ab=1.0〜4.0であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シ−ト及び熱転写記録方法に関し、更に詳しくは、基材フィルムの一方の面に、少なくとも染料層が形成され、他方の面に耐熱滑性層が形成されている熱転写シートにおいて、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画質不良を防止した熱転写シート及びそれを使用した熱転写記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、それらの中でも、昇華転写用染料を記録材とし、これをポリエステルフィルム等の基材上に適当なバインダーで担持させた染料層を有する熱転写シート(昇華熱転写シート)から、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に染料受容層を形成した熱転写受像シート上に昇華染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。この場合には、加熱手段として、プリンターのサーマルヘッドによる加熱によって、3色または4色の多数の加熱量が調整された色ドットを熱転写受像シートの受容層に転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラーを再現するものである。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明で、かつ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、かつフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。
【0003】
従来の昇華熱転写シートは、特許文献1に示すように、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層の3色、またはブラック染料層を加えた4色の染料層を面順次に繰り返し塗布し、3色または4色の染料層の各層に、あるいはイエロー等の印字開始の色の染料層の頭に、検知マークをカーボンブラック、アルミニウム等の顔料を用いたインキにより、印刷形成していた。そして、受像シートに、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像、必要に応じてブラック画像を重ねて転写し、カラー画像を形成する。その際に、まず熱転写シートのイエロー染料層の検知マークを読み取り、そのイエロー染料層と受像シートの印字開始位置を合わせて、印字を始め、次にマゼンタ染料層と受像シートの印字開始位置を合わせて、印字を行う。この時は、熱転写シートを所定の長さを搬送すれば、マゼンタ染料層の位置を示す検知マークは必ずしも必要なく、同様にシアン染料層などを、印字開始位置を合わせて、カラー印字画像を形成していた。
【0004】
しかし、上記従来の熱転写シートでは、検知マークが黒色等の光透過性の低い、つまり隠蔽性の高いインキにより形成されているので、検知マークを基材フィルムに印刷して形成する際に、検知マークとしての正規の箇所だけでなく、インキ飛びなどにより、不要な箇所に印刷され、熱転写画像の欠陥になったりして、問題があった。
【0005】
このような中で、特許文献2には、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層などを有する熱転写染料シートで、イエロー染料層内に、プリンターで検出可能な光学密度の差異を生じるバイナリーコードなどの印刷領域(検知マーク)を、イエロー染料層の厚さを変えて形成することで、人間の肉眼では知覚できないが、プリンターで検出できるようにしたことが記載されている。
【0006】
しかし、この熱転写シートでは、熱転写される染料層自体で、検知マークを形成しているので、その染料層が転写されて形成される熱転写画像に、目視で知覚できないとしているが、画像のムラが生じる可能性が高い問題がある。
【特許文献1】特開平5−155156号公報
【特許文献2】特表2009−541101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記の問題を解決するために本発明の目的は、基材フィルムの一方の面に、少なくとも染料層が形成され、他方の面に耐熱滑性層が形成されている熱転写シートにおいて、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画像不良を防止した熱転写シート及びそれを用いた熱転写記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、
基材フィルムの一方の面に、少なくとも染料層が形成され、他方の面に耐熱滑性層が形成されている熱転写シートにおいて、該染料層が2層からなり、該2層のうちの1層により、検知マークが形成され、該検知マークは、検知マークに隣接した箇所との色差で、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式ΔE*ab=1.0〜4.0であることを特徴とする。これにより、上記課題を解決することができた。
【0009】
前記の染料層は、基材フィルムの一方の面に、2色以上の染料層を面順次に繰り返し、複数組形成され、該2色以上の染料層のうち、いずれかの染料層が2層構成であることを特徴とする。これにより、利用できる範囲が広がり、好ましい。前記の検知マークは単独した層で形成されていることを特徴とする。これにより、より確実に検知マークを安定して形成できる。
【0010】
前記の検知マークと、検知マークに隣接した箇所との色差は、人間の肉眼で知覚できないことを特徴とする。熱転写画像の形成された印画物を形成する際に、熱転写シートの検知マークを検出して、受像シートへの熱転写する画像の位置を合わせる。これに対して、上記の検知マークと、検知マークに隣接した箇所との色差を、人間の肉眼で知覚できない熱転写シートを採用することにより、プリンターとのマッチング性に優れ、プリンタートラブルを防止し、また印字品質に優れた印字物を安定して得ることができる。また、前記の検知マークは、プリンターの検出手段で検出可能であることを特徴とする。これにより、本発明の熱転写シートを用いて、熱転写シートの検知マークをプリンターで読取、検出して、熱転写記録することができる。
【0011】
前記の熱転写シートを使用した熱転写記録方法において、検知マークを有する熱転写シートを用いて、該検知マークと、検知マークに隣接した箇所との色差が、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式におけるΔE*abで、1.0〜4.0であり、該検知マークを、プリンターの検出手段で検出して、該検出信号を利用して、熱転写記録することを特徴とする。これによれば、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画像不良を防止した印画物が安定して得られる。
【発明の効果】
【0012】
上記の熱転写シート及び熱転写記録方法によれば、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画像不良を防止した印画物を安定して形成できる。また、2層からなる染料層のうちの1層で、検知マークの領域として、塗工膜厚を変化させて(膜厚を大きくさせて)、検知マークを形成できるので、熱転写シートを製造する際の印刷ユニット数及び印刷インキを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の熱転写記録方法で使用されるプリンターの検知マークの検出手段を、説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1に本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す。基材フィルム1の一方の面に、耐熱滑性層3を設け、該基材フィルム1の他方の面に、検知マーク6が染料層により、形成され、その検知マーク6を覆って、基材フィルム1の全面に染料層2が形成されている。検知マーク6と染料層2の2層は、光学波長が同波長であり、検知マーク部では、染料層が2層構成になっている。図1で示した検知マーク6は、単独した層で形成されている。
【0015】
図2に本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す。基材フィルム1の一方の面に、耐熱プライマー層5、耐熱滑性層3を順次積層し、該基材フィルム1の他方の面に、染料プライマー層4、さらにその上に、染料層2として、イエロー染料層21、マゼンタ染料層22、シアン染料層23を面順次に繰り返し設けた構成で、染料層のうちマゼンタ染料層22と染料プライマー層4との間に、マゼンタ染料層22の光学波長と同波長となる検知マーク6を形成している。但し、これに限らず、染料層のシアン染料層23や、イエロー染料層21にも、検知マークを形成することができる。図2で示した検知マーク6も、単独した層で形成されている。図1及び図2では、染料層の2層構成で、検知マークが基材フィルム側の染料層で形成されているが、これに限らず、染料層2、22の上に、検知マーク6を設け、検知マークが熱転写シート表面に位置することも可能である。しかし、検知マークの単独層として、熱転写シート表面の凹凸が生じないように、検知マークを染料プライマー層と染料層との間に設けることが、人間の肉眼で知覚される可能性が少ないので、好ましい。
【0016】
図3に本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す。基材フィルム1の一方の面に、耐熱滑性層3を設け、該基材フィルム1の他方の面に、染料層として、マゼンタ染料層22、シアン染料層23、イエロー染料層21を面順次に繰り返し設けた構成で、染料層のうちマゼンタ染料層が、2層構成になっている。つまり、基材フィルム1上に、検知マーク6を有するマゼンタ染料層22、マゼンタ染料層22´が順次積層されている。この検知マーク6は、例えば、検知マーク6に隣接した箇所(検知マーク以外の部分)のマゼンタ染料層22の厚さよりも、厚さを大きくしたものである。具体的には、検知マーク部分6が、該検知マークに隣接した箇所と比べ、例えばグラビアエッチングである凹部の深度を大きくしたグラビアシリンダーを使用して、グラビア印刷して形成でき、マゼンタ染料層22と検知マーク6とが一体になっている。図3では、マゼンタ染料層22を構成する塗工液で、検知マーク6を形成したが、これに限らず、検知マーク単独層として、検知マークを除く部分には、検知マーク形成用の塗工液が塗布しないようにすることも可能である。なお、マゼンタ染料層22、マゼンタ染料層22´の2層同士は、光学波長が同波長である。図3では、基材フィルム側のマゼンタ染料層22に検知マークを形成したが、これに限らず、マゼンタ染料層22´の方に、検知マークを形成することも可能である。
【0017】
図1、3では、染料プライマー層、耐熱プライマー層を設けていない形態であり、基材フィルムの表面に、コロナ放電処理などを予め施しておくことにより、上記プライマー層は必須のものではない。
以下に、本発明の熱転写シートを構成する各層について、詳しく説明する。
【0018】
(基材フィルム)
本発明の熱転写シートを構成する基材フィルム1としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでも良く、例えば、0.5〜50μm、好ましくは3〜10μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の樹脂フィルムの他に、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類や不織布等、又は紙や不織布と樹脂との複合体であってもよい。
【0019】
(耐熱プライマー層)
耐熱プライマー層5は、基材フィルムと耐熱滑性層の両方に良好な接着性を有するバインダーを主体として形成する。上記バインダーとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体系樹脂等が挙げられる。
【0020】
耐熱プライマー層を形成する方法としては、上記の材料を塗工適性に合うように選択したアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の溶剤又は、水に溶解、或いは分散させて塗工液を作成し、この塗工液をグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバー等の慣用の塗工手段で塗布、乾燥及び固化させて成膜する方法が挙げられる。その塗工量、即ち耐熱プライマー層の厚さは固形分基準で2.0g/m2以下が良く、より好ましくは0.1g/m2以上2.0g/m2以下である。厚さが0.1g/m2以上であれば、耐熱プライマーとしての効果を十分に発揮できる。一方、厚さが2.0g/m2以下であれば、サーマルヘッドからの熱伝達が良好であり、高濃度の印字が可能である。
【0021】
(耐熱滑性層)
耐熱滑性層3は、印画時におけるサーマルヘッドの走行性、耐熱性等を向上させる目的で、形成される。耐熱滑性層を形成するバインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂などを用いることができる。また、これらの樹脂の耐熱性・塗膜性・密着性などを向上させる目的で、種々の架橋剤を用いても良く、一般にポリイソシアネートなどが用いられる。また、走行性を向上させる目的でワックス、高級脂肪酸アミド、エステル、界面活性剤などの離型剤、フッ素樹脂などの有機粉末、シリカ・クレー・タルク・雲母・炭酸カルシウムなどの無機粒子を含有せしめることができる。
【0022】
耐熱滑性層を形成する方法としては、上記耐熱プライマー層で説明した方法と同様の方法が挙げられる。耐熱滑性層の厚さは、固形分の塗工量で、0.5g/m2〜5.0g/m2、好ましくは1.0g/m2〜2.0g/m2である。厚さが0.5g/m2以上であれば、耐熱滑性層としての機能を十分に発揮できる。一方、厚さが2.0g/m2以下であれば、サーマルヘッドからの熱伝達が良好であり、高濃度の印字が可能である。基材フィルム上に耐熱滑性層を設ける場合は、バインダー樹脂とポリイソシアネートとの反応を促進するために加熱することが好ましいが、染料層に熱の影響を及ぼさないようにするために、耐熱滑性層を基材シート上に設けた後で、染料層を設けることが好ましい。
【0023】
(染料層)
基材フィルムの耐熱プライマー層、耐熱滑性層の設けられている面の他方の面に形成する染料層2は、昇華性染料を含む層として形成する。本発明では、基材上に、1層の染料層のみを形成したり、2色以上の染料層を面順次に繰り返し、複数組形成することができる。イエロー、マゼンタ、シアンなどの少なくとも3色の染料層を、基材フィルム上に、面順次に繰り返し、複数組形成することが好ましく、フルカラーの熱転写印画物を形成することができる。染料層が2色以上であっても、いずれかの染料層が2層構成となっている。その2層のうちの1層により、検知マークが形成され、該検知マークは、検知マークに隣接した箇所との色差で、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式ΔE*ab=1.0〜4.0であり、プリンターの検出手段で検出可能なものである。
【0024】
染料層に用いられる染料としては、従来、公知の熱転写シートに使用されている染料は、いずれも本発明に使用可能であり、特に限定されない。これらの染料としてはジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン系、アセトフェノンアゾメチン,ピラゾロアゾメチン,イミダゾルアゾメチン,ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン,トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、そしてピリドンアゾ,チオフェンアゾ,イソチアゾールアゾ,ピロールアゾ,ピラゾールアゾ,イミダゾールアゾ,チアジアゾールアゾ,トリアゾールアゾ,ジスアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等があげられる。具体的には次のような染料が用いられる。
【0025】
C.I.(Color Index)ディスパースイエロー51,3,54,79,60,23,7,141,201,231
C.I.ディスパースブルー24,56,14,301,334,165,19,72,87,287,154,26,354
C.I.ディスパースレッド135,146,59,1,73,60,167
C.I.ディスパースオレンジ149
C.I.ディスパースバイオレット4,13,26,36,56,31
C.I.ソルベントイエロー56,14,16,29
C.I.ソルベントブルー70,35,63,36,50,49,111,105,97,11
C.I.ソルベントレッド135,81,18,25,19,23,24,143,146,182
C.I.ソルベントバイオレット13
C.I.ソルベントブラック3
C.I.ソルベントグリーン3
【0026】
例えばイエロー染料としてフォロンブリリアントイエローS−6GL(サンド社製、ディスパースイエロー231)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製、ディスパースイエロー201)、マゼンタ染料としてMS−RED−G(三井東圧化学株式会社製、ディスパースレッド60)、マクロレックスレッドバイオレットR(バイエル社製、ディスパースバイオレット26)、シアン染料はカヤセットブルー714(日本化薬株式会社製、ソルベントブルー63)、フォロンブリリアントブルーS−R(サンド社製、ディスパースブルー354)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製、ソルベントブルー36)等があげられる。
【0027】
検知マークの位置する箇所と、熱転写シートの厚さ方向で、重なるが、検知マークを構成する染料層と、別の染料層を、その色差で、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式ΔE*ab=1.0〜4.0であるように形成する。検知マークは、染料層の塗工液により、形成するが、その染料層塗工液は、バインダーに上記の染料を必須成分として、さらに必要に応じて顔料、導電剤の少なくとも1つを添加することができる。上記の染料を担持するためのバインダー樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース,酢酸セルロース、酢酸・酪酸セルロース等のセルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等があげられるが、これらの中ではセルロース系、ポリウレタン系、ビニル系、アクリル系およびポリエステル系の樹脂が耐熱性、染料移行性などの点で好ましく用いられる。
【0028】
検知マークを形成するための染料層は、使用する染料の色相は、イエロー、マゼンタ、シアンなどが挙げられるが、検知マークのプリンターにおける検出精度を高めるために、特にマゼンタ染料、シアン染料を用いることが好ましい。また、使用する顔料としては、従来から知られたイエロー、マゼンタ、シアンなどの顔料が挙げられる。顔料の場合も、上記の染料で示した理由と同様に、特にマゼンタ顔料、シアン顔料を使用することが好ましい。
【0029】
導電剤としては、アリキレンオキサイド系、グリセリン系及びグリシドール系等のノニオン系界面活性剤;高級アルキルアミン類、第4級アンモニウム塩類、ピリジンその他の複素環化合物の塩類、ホスホニウムまたはスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤;カルボキシル基、リン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等の酸性基を含むアニオン系界面活性剤;アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類等の両性界面活性剤等を挙げることができる。また粒子状の導電剤としては、結晶性金属酸化物の導電性微粒子、イオン性架橋性ポリマー導電性微粒子、スメクタイト族粘土鉱物を挙げることができる。
【0030】
上記に記載したバインダーと、染料を必須成分として、必要に応じて顔料、導電剤の少なくとも1つを添加した塗工液を用意し、検知マーク部と、その検知マークに隣接した箇所との色差で、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式ΔE*abが1.0〜4.0になるように、検知マークと、その検知マークに隣接した箇所の染料層の厚さを調整することが好ましい。その好ましい調整方法としては、検知マークに隣接した箇所(検知マーク以外の部分)よりも、検知マーク部分の厚さを大きくすることが挙げられる。上記の検知マーク部分の厚さを大きくするには、検知マーク部分が、該検知マークに隣接した箇所と比べて、グラビアエッチングである凹部の深度を大きくしたグラビアシリンダーを使用して、グラビア印刷して形成することが好ましい。
【0031】
上記の検知マーク部と、その検知マークに隣接した箇所との色差をもたせる際、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式におけるΔE*abが1.0〜4.0にすることにより、プリンターの検出手段で検出可能となり、一方で、人の目には知覚可能でないようにすることができる。上記色差は、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式で規定され、ΔE*abである。すなわち、メトリックス明度をL、色相と彩度に関係する量として、a、bがあり、2つの物体の表面色L***を、(L1*,a1*,b1*)及び(L2*,a2*,b2*)として、
ΔE*ab=〔(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2
ΔL*=L2*−L1*
Δa*=a2*−a1*
Δb*=b2*−b1*
【0032】
染料層は、前記基材フィルムの一方の面に、これらの染料及びバインダー樹脂、必要に応じて顔料、導電剤の少なくとも1つを添加して、トルエン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、DMF等の適当な有機溶剤に溶解したり、あるいは有機溶剤や水等に分散させて、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、リバースロールコーティング印刷法等の手段により塗工および乾燥して塗膜を形成することができる。このようにして形成する染料層は、1層の条件で、塗工量の厚さで、乾燥状態で、0.02g/m2〜0.5g/m2であり、また染料層中の昇華性染料は、染料層の質量の5〜90質量%好ましくは10〜70質量%の量で存在するのがよい。
【0033】
染料層の膜厚が0.02g/m2よりも薄い場合は、染料層としての機能である印字濃度が十分ではなく、また0.5g/m2よりも厚いと、染料層へのサーマルヘッドからの熱伝達が悪くなり、印字濃度が低くなるという欠点を生じる。染料層は、少なくとも1色で、2層構成であるが、上記のように、染料層は1層の条件で、塗工量の厚さが、乾燥状態で、0.02g/m2〜0.5g/m2が好ましい。これにより、検知マークの位置する箇所と、該検知マークに隣接した箇所との色差で、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式ΔE*ab=1.0〜4.0に設定することができる。
【0034】
(染料プライマー層)
染料プライマー層4は、基材フィルムと染料層の両方に良好な接着性を有するバインダーを主体として形成する。上記バインダーとしては、耐熱プライマー層で用いられるバインダーと同様のものが使用でき、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体系樹脂等が挙げられる。
【0035】
染料プライマー層を形成する方法としては、上記耐熱プライマー層で説明した方法と同様の方法が挙げられる。染料プライマー層の厚さは、固形分の塗工量で、0.02g/m2〜2.0g/m2である。この膜厚が0.02g/m2よりも薄い場合は、染料プライマー層としての効果が十分ではなく、また2.0g/m2よりも厚いと、染料層へのサーマルヘッドからの熱伝達が悪くなり、印字濃度が低くなるという欠点を生じる。
【0036】
(検知マーク単独層)
染料層において、検知マークの領域で、塗工膜厚を変化させて(膜厚を大きくさせて)、検知マークを形成できるが、上記の層とは別層の単独層として、検知マークを形成することが好ましい。この検知マーク単独層は、基材フィルムの染料層との間、あるいは染料層の上に(熱転写シートの最表面に)、形成できる。
【0037】
検知マーク単独層は、バインダーと染料を必須成分とし、さらに必要に応じて顔料、導電剤の少なくとも1つを添加された塗工液から形成する。そのバインダー、染料、顔料、導電剤としては、上記染料層で用いられるものと同様のものが使用できる。
【0038】
検知マーク単独層は、染料層との色差で、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式ΔE*ab=1.0〜4.0であるように形成する。尚、検知マークの位置する箇所と、熱転写シートの厚さ方向で、重なる染料層の光学波長と同波長となる検知マークを形成する。この場合の検知マークは、検知マーク単独層の塗工液により、形成するが、検知マーク部と、その検知マークに隣接した箇所の色差は、染料層で記載した内容と同様に設定する。
【0039】
検知マーク単独層を形成する方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の手段により塗工および乾燥して塗膜を形成することができる。検知マーク単独層の厚さは、固形分の塗工量で、0.02g/m2〜0.5g/m2である。この膜厚が0.02g/m2よりも薄い場合は、検知マークとしての検出機能が十分ではなく、また0.5g/m2よりも厚いと、人間の肉眼で知覚しやすくなる。検知マーク単独層の形状は、検知器(センサー)によって検出可能であればよく、限定されるものではない。1本線のストライプや、2本以上の線のバーコードや、熱転写シートの全巾にわたらない、部分的な位置に四角形、丸形等を設けることも可能である。但し、検知マークは、熱転写画像形成の開始位置を示すものであるため、面順次に設けられている染料層の先頭位置に検知マークを形成することができる。上記の検知マーク単独層の形状は、染料層の中で、検知マークの領域を形成する場合の検知マークの形状でも、同様に適用することができる。
【0040】
(熱転写記録方法)
本発明の熱転写記録方法は、上記に説明した熱転写シートを使用して、検知マークを有する熱転写シートに対し、該検知マークを、検知マークに隣接した箇所との色差により、プリンターの検出手段で検出して、熱転写記録するものからなる。プリンターは、サーマルヘッドとプラテンとの間に、熱転写シートと、染料層からの染料を受容して定着する機能を有した受像シートを重ね合わせて、画像信号に応じたサーマルヘッド加熱により、受像シートに染料を転写して、熱転写画像を形成する。
【0041】
プリンターの検知マークの検出手段について、図4を参照して以下に説明する。
熱転写シートの検知マーク6部の位置で、検出ユニット9の発光部7から、発光した光線(光の強度はI0)が、熱転写シートの検知マーク6を透過して、受光部8で、その透過された光線(光の強度はI)を受光して、検知マークを検出する。その際の光学密度はlog10(I0/I)で示される。また、熱転写シートの検知マーク6に隣接した箇所Aで、上記と同様に検出ユニット9の発光部7から、発光した光線(光の強度はI0)が、熱転写シートの箇所Aを透過して、受光部8で、その透過された光線(光の強度はI´)を受光する。その際の光学密度はlog10(I0/I´)で示される。
【0042】
検知マークを、検知マークに隣接した箇所との色差が、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式におけるΔE*abで、1.0〜4.0である場合に、人の目には知覚可能ではないが、検知マーク位置の光学密度と、検知マークに隣接した箇所の光学密度との差を、プリンターの検出手段で検出でき、その検出信号を利用して、本発明の熱転写シートがプリンターで搬送駆動され、受像シートに熱転写記録が行なわれる。但し、図で示した検知マーク6の位置及び検知マーク6に隣接した箇所Aとは、共に、その位置と熱転写シートの厚さ方向で、重なる染料層は同じ色の染料層である。
【実施例】
【0043】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材フィルムの一方の面に、グラビアコーターを用い、下記耐熱プライマー層塗工液1を固形分換算で0.8g/m2で塗工し、90℃で1分間乾燥させ、耐熱プライマー層を形成した。また、その耐熱プライマー層上に下記耐熱滑性層用塗工液1を固形分換算で1.0g/m2で、グラビアコーターにより、塗布、90℃で2時間乾燥させ、耐熱滑性層を形成した。
【0044】
<耐熱プライマー層塗工液1>
・ポリエステル樹脂 15.0部
(バイロン200 数平均分子量:17000、Tg:67℃ 東洋紡績(株)製)
・メチルエチルケトン 100.0部
・トルエン 100.0部
【0045】
<耐熱滑性層用塗工液1>
・ポリビニルブチラール樹脂 4.55部
(エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)
・ポリイソシアネート 21.0部
(バーノックD750−45、固形分45質量%、大日本インキ化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 3.0部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・タルク(ミクロエースP−3、日本タルク工業(株)製) 0.7部
・メチルエチルケトン 100.0部
・トルエン 100.0部
【0046】
基材シートの他方の面に、グラビア印刷方式で、下記染料プライマー層塗工液1を固形分換算で0.8g/m2で塗工し、90℃で1分間乾燥させ、染料プライマー層を形成した。その染料プライマー層上に、グラビア印刷により、図2に示す配置のように、下記検知マーク用塗工液1を固形分換算で0.05g/m2で塗工、乾燥して、検知マークを形成した。次に、イエロー染料層(Y)、マゼンタ染料層(M)、シアン染料層(C)を、図2に示す配置で、この順に面順次に繰返して形成した。各染料層(Y、M、C)は、下記の各染料層(Y、M、C)用塗工液を用いて、それぞれ固形分換算で0.05g/m2で塗布、乾燥して、実施例1の熱転写シートを作製した。この例の熱転写シートは、マゼンタ染料層が2層構成であり、その2層同士は、光学波長が同波長であり、また該2層のうちの1層により、検知マークが形成されている。
【0047】
<染料プライマー層塗工液1>
・ポリエステル樹脂 15.0部
(バイロン200 数平均分子量:17000、Tg:67℃ 東洋紡績(株)製)
・メチルエチルケトン 100.0部
・トルエン 100.0部
【0048】
<検知マーク用塗工液1>
・分散染料(MSレッドG) 1.46部
・分散染料(マクロレックスレッドバイオレットR) 1.94部
・バインダー樹脂 4.5部
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0049】
<イエロー染料層用塗工液(Y)>
・分散染料(ホロンブリリアントイエロー−S−6GL) 5.5部
・バインダー樹脂 4.5部
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0050】
<マゼンタ染料層用塗工液(M)>
・分散染料(MSレッドG) 1.5部
・分散染料(マクロレックスレッドバイオレットR) 2.0部
・バインダー樹脂 4.5部
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0051】
<シアン染料層用塗工液(C)>
・分散染料(カヤセットブルー714) 4.5部
・バインダー樹脂
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製) 4.5部
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0052】
上記作製した実施例1の熱転写シートにおける検知マーク位置と、検知マークに隣接した箇所の色差ΔE*abは、1.4であり、この検知マークを検出可能である検出ユニットを有する熱転写プリンターを用いて、実施例1の熱転写シートを用いて、受像シートとして、白色塩化ビニルカードを用い、印画物を作製したところ、印画物で、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。また得られた印画物は、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画像不良もなく、良好であった。また、実施例1で作製した熱転写シートで、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。
【0053】
(実施例2)
上記の実施例1では、検知マークの位置する箇所は、熱転写シートの厚さ方向で、重なる染料層は、マゼンタ染料層であったが、実施例2では、検知マークの位置する箇所は、熱転写シートの厚さ方向で、重なる染料層は、イエロー染料層になるように作製した。基材フィルム、染料プライマー層、各色の染料層、耐熱プライマー層、耐熱滑性層は、実施例1で使用したものを用い、実施例1と同様に形成して、実施例2の熱転写シートを作製した。但し、染料プライマー層の上に、グラビア印刷方式で、下記検知マーク用塗工液2を、固形分換算で0.05g/m2で塗工、乾燥して、検知マークを形成した。
【0054】
<検知マーク用塗工液2>
・分散染料(ホロンブリリアントイエロー−S−6GL) 5.3部
・バインダー樹脂 4.5部
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0055】
上記作製した実施例2の熱転写シートにおける検知マーク位置と、検知マークに隣接した箇所の色差ΔE*abは、1.9であり、この検知マークを検出可能である検出ユニットを有する熱転写プリンターを用いて、実施例2の熱転写シートを用いて、受像シートとして、白色塩化ビニルカードを用い、印画物を作製したところ、印画物で、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。また得られた印画物は、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画像不良もなく、良好であった。また、実施例2で作製した熱転写シートで、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。
【0056】
(実施例3)
上記の実施例1では、検知マークの位置する箇所は、熱転写シートの厚さ方向で、重なる染料層は、マゼンタ染料層であったが、実施例3では、検知マークの位置する箇所は、熱転写シートの厚さ方向で、重なる染料層は、シアン染料層になるように作製した。基材フィルム、染料プライマー層、各色の染料層、耐熱プライマー層、耐熱滑性層は、実施例1で使用したものを用い、実施例1と同様に形成して、実施例3の熱転写シートを作製した。但し、染料プライマー層の上に、グラビア印刷方式で、下記検知マーク用塗工液3を、固形分換算で0.05g/m2で塗工、乾燥して、検知マークを形成した。
【0057】
<検知マーク用塗工液3>
・分散染料(カヤセットブルー714) 4.3部
・バインダー樹脂
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製) 4.5部
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0058】
上記作製した実施例3の熱転写シートにおける検知マーク位置と、検知マークに隣接した箇所の色差ΔE*abは、2.4であり、この検知マークを検出可能である検出ユニットを有する熱転写プリンターを用いて、実施例3の熱転写シートを用いて、受像シートとして、白色塩化ビニルカードを用い、印画物を作製したところ、印画物で、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。また得られた印画物は、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画像不良もなく、良好であった。また、実施例3で作製した熱転写シートで、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。
【0059】
(実施例4)
上記の実施例1の熱転写シートにおいて、検知マーク用塗工液1を、固形分換算で0.14g/m2で塗工、乾燥して、検知マークを形成した。その他は、実施例1と同様にして、実施例4の熱転写シートを作製した。
【0060】
上記作製した実施例4の熱転写シートにおける検知マーク位置と、検知マークに隣接した箇所の色差ΔE*abは、3.7であり、この検知マークを検出可能である検出ユニットを有する熱転写プリンターを用いて、実施例4の熱転写シートを用いて、受像シートとして、白色塩化ビニルカードを用い、印画物を作製したところ、印画物で、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。また得られた印画物は、検知マーク形成の際のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また染料層の濃度ムラによる画像不良もなく、良好であった。また、実施例4で作製した熱転写シートで、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。
【0061】
(比較例1)
上記の実施例1の熱転写シートにおいて、検知マーク用塗工液1を、固形分換算で0.17g/m2で塗工、乾燥して、検知マークを形成した。その他は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを作製した。
【0062】
上記作製した比較例1の熱転写シートにおける検知マーク位置と、検知マークに隣接した箇所の色差ΔE*abは、4.6であり、この検知マークを検出可能である検出ユニットを有する熱転写プリンターを用いて、比較例1の熱転写シートを用いて、受像シートとして、白色塩化ビニルカードを用い、印画物を作製したところ、印画物で、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚できなかった。しかし、比較例1で作製した熱転写シートで、検知マークに相当するものは、人間の肉眼で知覚されてしまった。
【符号の説明】
【0063】
1 基材フィルム
2 染料層
3 耐熱滑性層
4 染料プライマー層
5 耐熱プライマー層
6 検知マーク
7 発光部
8 受光部
9 検出ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に、少なくとも染料層が形成され、他方の面に耐熱滑性層が形成されている熱転写シートにおいて、
該染料層が2層からなり、該2層のうちの1層により、検知マークが形成され、
該検知マークは、検知マークに隣接した箇所との色差で、
国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式ΔE*ab=1.0〜4.0であることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記の染料層は、基材フィルムの一方の面に、2色以上の染料層を面順次に繰り返し、複数組形成され、該2色以上の染料層のうち、いずれかの染料層が2層構成であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記の検知マークは単独した層で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記の検知マークと、検知マークに隣接した箇所との色差は、人間の肉眼で知覚できないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記の検知マークは、プリンターの検出手段で検出可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の熱転写シート。
【請求項6】
前記の請求項1〜5のいずれかの熱転写シートを使用した熱転写記録方法において、検知マークを有する熱転写シートを用いて、該検知マークと、検知マークに隣接した箇所との色差が、国際照明委員会(CIE)のL***表色系の色差式におけるΔE*abで、1.0〜4.0であり、該検知マークを、プリンターの検出手段で検出して、該検出信号を利用して、熱転写記録することを特徴とする熱転写記録方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−171282(P2012−171282A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37178(P2011−37178)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】