説明

熱転写シート

【課題】安定的な印画性を有する熱転写シートを提供する。
【解決手段】基材シートの一方の面に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色(またはブラックを含む4色)の熱転写性インク層と、熱転写性保護層を長手方向へ順じ設けた熱転写シートにおいて、基材シートがポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエチレンナフタレートとの共重合体からなり、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレート重合比が異なる二層からなることを特徴とする熱転写シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写シートに関し、熱転写法により得られる保護層付き印画物に使用するための熱転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱転写シートは、サーマルリボンと呼ばれ、熱転写方式のプリンタに使用されているインクリボンのことであり、基材の一方の面に熱転写層、その基材の他方の面にバックコート(耐熱滑性層)を設けたものである。ここで熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを溶融(溶融転写方式)あるいは昇華(昇華転写方式)させ、被転写体側に転写するものである。
【0003】
現在、熱転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便に形成できるため、身分証明書などのカード類をはじめアミューズメント用出力物等広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年ではインク層により形成した画像上に保護層を熱転写によって設けた印画物がかなり普及してきている。
【0004】
熱転写シートの基材シートとしてはポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル類が物理的、化学的性質が優れており好適である。しかしながら近年、転写速度の高速化が顕著でありサーマルヘッドで加熱した際の基材シートの熱変形により、印画シワ、スティッキング等の問題が生じてきた。
【0005】
ポリエチレンナフタレートはポリエチレンテレフタレートと比較して熱寸法安定性に代表される機械特性に優れているが、材料コストが高く転写シートの基材シートとして使用するのは不向きである。このようなポリエチレンナフタレートの特性を活かし安価な基材を提供するために、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートの共押出しフィルムが考案されている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート層とポリエチレンナフタレート層の相溶性の問題で界面の凝集力が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−251777号公報
【特許文献2】特開2004−203023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする基材シートを使用することにより、安定的な印画性を有する熱転写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その請求項1記載の発明は、基材シートの一方の面に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色(またはブラックを含む4色)の熱転写性インク層と、熱転写性保護層を長手方向へ順じ設けた熱転写シートにおいて、基材シートがポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエチレンナフタレートとの共重合体からなり、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレート重合比が異なる二層からなることを特徴とする熱転写シートである。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、二層からなる基材シートが、一方の面側から順じて第一基材と第二基材からなり、第一基材におけるポリエチレンナフタレートの含有量が0.1重量%以上、1重量%以下、第二基材におけるポリエチレンナフタレートの含有量が10重量%以上、45重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱転写シートである。
【0010】
また請求項3記載の発明は、基材シートが共押出し法によって製造されたことを特徴とする請求項1又は2記載の熱転写シートである。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、前記熱転写性インク層が、熱昇華性染料とバインダとからなる昇華性熱転写インク層であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱転写シートである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、基材シートの一方の面に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色(またはブラックを含む4色)の熱転写性インク層と、熱転写性保護層を長手方向へ順じ設けた熱転写シートにおいて、基材シートがポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエチレンナフタレートとの共重合体からなり、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレート重合比が異なる二層からなることを特徴とする熱転写シートにすることにより安価で安定的な印画性を有する熱転写シートを提供することが可能となった。
【0013】
請求項2記載の発明は、二層からなる基材シートの第一基材におけるポリエチレンナフタレートの含有量が0.1重量%以上、1重量%以下、第二基材におけるポリエチレンナフタレートの含有量が10重量%以上、45重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱転写シートとすることにより、さらに安定的な印画性を有する熱転写性シートを提供することが可能になった。
【0014】
また請求項3記載の発明は、基材シートが共押出し法によって製造されたことを特徴とする請求項1又は2記載の熱転写シートとすることにより、二層間界面での凝集力の向上をさせることが可能となった。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記熱転写性インク層が、熱昇華性染料とバインダとからなる昇華性熱転写インク層であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の熱転写シートとすることにより、さらに階調性表現を向上させた画像を形成できる熱転写シートを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の熱転写シートの一例を断面図で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の熱転写シートの一例を図1に基づき詳細に説明する。図の熱転写シートは、基材シート1、第一基材2、第二基材3、耐熱滑性層4、熱転写性インク層(イエロー)5、熱転写性インク層(マゼンタ)6、熱転写性インク層(シアン)7、離型層8、熱転写性保護層9の構成である。
【0018】
基材シートを構成するポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエチレンナフタレートとの共重合体は、エチレンテレフタレートとエチレン−2、6−ナフタレートの共重合体からなるポリマーである。また必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、無機
粒子、等の添加剤を配合してもよい。
【0019】
二層からなる基材シートがサーマルヘッドから発せられる熱のエネルギーに耐えるためには、第二基材のポリエチレンナフタレートの重合度を増加させることにより達成される。しかし問題解決のために必要以上のポリエチレンナフタレート成分の増加はコストアップになり好適ではない。また第一基材にポリエチレンナフタレート成分を共重合させるにより、各々の層の相溶性が向上し、シート製膜時の歩留まりやシート内剥離といった不良を防止することができる。
【0020】
第一基材と第二基材の積層方法としては、各々二軸延伸配向熱処理されたフィルムを接着剤等を用いたドライラミネートによる貼り合わせる方法あるいは、二層が押出機のTダイから溶融押出しされる、共押出し法が挙げられるが、生産性や各層の厚みの自由度から共押出し法が好適である。
【0021】
基材シート中の各層の厚みについては特に制限はないが、ポリエチレンナフタレートの重合比の大きい第二基材の厚みを増すことはコストアップになり好適ではない。
基材シートの総厚は、操作性加工性を考慮し、2〜50μmの範囲のものが使用可能であるが、転写適正や加工性等のハンドリング性と考慮すると2〜9μm程度のものが好ましい。
【0022】
基材シートと熱転写性インク層の密着性を向上させるために、基材上に易接着層を設けるのが一般的である。易接着層は、基材シートを製膜後或いは、製膜と同時に形成し、基材シートと易接着層を同時に延伸処理して所定の膜厚にすることによって基材シート上に非常に薄い易接着層を形成することができる。易接着層に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂、或いはそれらの混合物を使用することができ、熱転写性インク層に使用する樹脂あるいは離型層に使用する樹脂の種類に応じて適宜選択すれば良い。
【0023】
耐熱滑性層は本発明の熱転写シートの過熱手段としてサーマルヘッドを用いる場合、必要とされるものであり、サーマルヘッドの融着防止や熱転写シートをロールで巻きとった時に背面の熱転写性保護層、熱転写性インク層の染料あるいは顔料が移行しないように離型性を持たせる役割がある。本発明における耐熱滑性層は特に限定はされるものではないが、熱転写シートの基材、およびサーマルヘッドの過熱量に応じて適宜選択することができる。
【0024】
耐熱滑性層形成用の塗液は、例えば、離型性やすべり性を付与する機能性添加剤、バインダ、硬化剤、溶剤などを配合して調整し、この耐熱滑性層のインクの塗布量は乾燥膜厚で0.1〜2.0μm程度が適当である。
【0025】
耐熱活性層の一例を挙げると、アクリルオリゴマーの紫外線硬化物、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド等の合成樹脂に、シリコーンオイルなどの離型剤を添加したもの、シリコーンを共重合したものを挙げることができる。また必要に応じてフィラーを添加しても問題なく、添加するフィラーの一例としては、シリコーンパウダー、シリカおよびレジンパウダーを挙げることができる。
【0026】
耐熱滑性層を形成するコーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。厚さは、塗液の種類や加工機や加工条件によって最適条件が異なり、特に限定はしない。好ましくは乾燥後の厚さが0.1〜2μmの範囲であり、0.1μm以下の場合は、均一な塗膜が形成されず、十分な耐熱性が得られない場合があるので好ましくない。
【0027】
熱転写性インク層は熱転写可能な染料または顔料を任意のバインダ樹脂で担持させた層である。使用する染料または顔料は、従来公知の熱転写シートに使用されている染料または顔料は、いずれも使用可能であり特に限定されない。
【0028】
昇華性転写層形成用インクに用いられる熱昇華性染料としては、昇華性分散染料が好ましく、一例を挙げると、イエロー成分としては、C.I.ソルベントイエロー56、16、30、93、33、C.I.ディスパースイエロー201、231、33等が挙げられる。マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19が挙げられる。シアン成分としてはC.I.ディスパースブルー354、24、C.I.ソルベントブルー63、36等が挙げられる。そのバインダとしては、特に限定されるものではないが、エチレンセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等である。中でも、ポリビニルブチラール、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂が好適である。
【0029】
感熱溶融転写層形成用インクに用いられる染料としては、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンテン系、アキサジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオロラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等の一般に使用されている感熱転写性染料を広く使用することができる。
【0030】
感熱溶融転写層形成用インクに用いられる顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料を使用することができ、一例を挙げると、カーボンブラック、アゾ系、フタロシアニン系、キクナリドン系、チオインジゴ系、アンスラキノン系、イソインドリン系等の顔料が挙げられる。そのバインダとしては、熱溶融性以外特に限定されるものではないが、一例を挙げると、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類である。中でも、ポリエステル、エポキシ樹脂が好適である。
【0031】
離型層は、熱転写性保護層を基材シートからの剥離の重さを適当な範囲内に調整し、基材シートからの安定的な剥離性を確保するために設けられるものであり、上記の条件さえ満たしていれば必ずしも必要ではない。離型層の材質としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ゴム、環化ゴム等の天然ゴム誘導体や、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類、ニトロセルロース、セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等の繊維素誘導体、アクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアセタール系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体系等の熱可塑性樹脂、メラミン系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂等からなる剥離剤を挙げるこ
とができる。
【0032】
熱転写性保護層としては、熱転写性インク層により被転写体上に形成された画像への紫外線等からの耐久性が要求されると同時に、熱転写法というプロセスにより被転写体上に形成される必要があるため、一般的には紫外線吸収等の保護層としての本来的な性能と同時に被転写体への接着性を兼ね備える接着層、その下層に基材から熱転写時に容易に剥離するための剥離層といった複数の層の積層体から形成されることが一般的である。
【0033】
熱転写性保護層に添加される紫外線吸収剤に関しては、従来、コストや紫外線吸収範囲、種類の多さ、用途範囲の現状から、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の使用が多く、主とされてきていた。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は熱分析(示差熱/熱重量同時測定)から昇華し熱可塑性樹脂から失われる傾向はあるが、例えば、トリアジン系の紫外線吸収剤を使用した場合にトリアジン系の紫外線吸収剤のブリードアウトによる吸収能力の低下は起こらない。熱転写保護層の厚み関しては特に制限はなく、必要とされる紫外線吸収能力などを考慮して任意に選択すれば良い。
【0034】
本発明における転写保護層に使用するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を例示でき、これらを単独で又は複数を混合して使用できる。
【0035】
本発明における転写保護層に使用するトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0036】
本発明において熱転写性保護層に使用する紫外線吸収剤は、樹脂100重量部に対し1〜20重量部添加されることが好ましい。添加量が1重量部未満の場合、熱転写性保護層中において十分な紫外線吸収能を発揮することができない場合がある。
【0037】
また、熱転写保護層には、添加剤としてトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の他に、ヒンダードアミン系光安定剤が添加されることが好ましい。
【0038】
熱転写保護層に用いられるヒンダードアミン形の光安定剤としては、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート等を例示でき、これらを単独で又は複数を混合して使用できる。
【0039】
また、熱転写保護層には、紫外線吸収剤、光安定剤の他にも、必要に応じて熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、触媒促進剤、透明性を維持する範囲での着色剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系の酸化防止剤が用いられる。組み合わせは任意の組み合わせが可能であるが、多量添加による表面へのブリードアウトや着色、紫外線吸収剤や光安定剤との相乗・拮抗作用には留意する必要がある。熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系、硫黄系、肥土レジン系等、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシシウム等、クエンチャーとして、Niキレート系を用いることができる。
【0040】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0041】
第一基材としてエチレンテレフタレート99重量%とエチレン−2,6−ナフタレート1重量%の共重合ポリマーと第二基材としてエチレンテレフタレート55重量%とエチレン−2,6−ナフタレート45重量%の共重合ポリマーを120℃で24時間乾燥後、押出し成型機にて295℃でTダイより第一基材と第二基材の厚みの比を4:1になるように共押出し冷却ドラムにキャストし無延伸シートを得た。未延伸シートを縦方向に3.5倍延伸し、ついで横方向に3.5倍延伸したのち、200℃で熱固化を行い、厚さ4.5μmの二軸延伸共ポリエチレンテレフタレートフィルムを作製した。
【0042】
耐熱滑性層としてポリビニルアセタール樹脂を25重量部、イソシアネート硬化剤を1.1重量部、滑剤を1重量部、メチルエチルケトンを36重量部、トルエンを36重量部からなる混合溶剤に溶解させ塗液を作製した。作製した塗液を基材シートの第二基材側にダイレクトグラビアコートにより乾燥膜厚1.0μmになるように形成し、耐熱滑性層を得た。
【0043】
転写性インク層(イエロー)はC.I.ソルベントイエロー93を3.0重量部、C.I.ソルベントイエロー16を1.0重量部、ポリビニルアセタール樹脂を5.0重量部、メチルエチルケトンを45重量部、トルエンを45重量部からなる混合溶剤に溶解させて転写性インク層(イエロー)の塗液を作製した。
【0044】
転写性インク層(マゼンタ)はC.I.ディスパースレッド60を1.5重量部、C.I.ディスパースバイオレット26を1.5重量部、ポリビニルアセタール樹脂を5.0重量部、メチルエチルケトンを46重量部、トルエンを46重量部からなる混合溶剤に溶解させて転写性インク層(マゼンタ)の塗液を作製した。
【0045】
転写性インク層(シアン)はC.I.ソルベントブルー63を1.5重量部、C.I.ソルベントブルー36を1.5重量部、ポリビニルアセタール樹脂を5.0重量部、メチルエチルケトンを46重量部、トルエンを46重量部からなる混合溶剤に溶解させて転写性インク層(シアン)の塗液を作製した。
【0046】
離型層は、ポリビニルアルコールを20重量部、イソプロピルアルコール20重量部、蒸留水60重量部の混合液に溶解させて、離型層の塗液を作製した。
【0047】
熱転写性保護層はアクリル樹脂を30重量部、トリアジン系紫外線吸収剤3重量部、ヒ
ンダードアミン系光安定剤0.1重量部、メチルエチルケトンを50重量部、トルエンを50重量部からなる混合溶剤に溶解させて熱転写性保護層の塗液を作製した。
【0048】
上記のように作製された塗液をグラビアコート方により基材シートの第一基材側に、熱転写性インク層(イエロー)、熱転写性インク層(マゼンタ)、熱転写性インク層(シアン)を乾燥膜厚1.0μmで面順次に形成した後、離型層形成用の塗液を用いて、離型層を乾燥膜厚0.3μmで面順次に形成した後、離型層上に、熱転写性保護層用の塗液を用いて、熱転写性保護層を乾燥膜厚2.0μmで設け、本発明の熱転写シートを作製した。
【実施例2】
【0049】
第一基材をエチレンテレフタレート99.9重量%とエチレン−2,6−ナフタレート0.1重量%の共重合ポリマー、第二基材をエチレンテレフタレート90重量%とエチレン−2,6−ナフタレート10重量%の共重合ポリマーにしたこと以外実施例1と同様の方法で実施例2の熱転写シートを作成した。
【実施例3】
【0050】
第一基材をエチレンテレフタレート99.9重量%とエチレン−2,6−ナフタレート0.1重量%の共重合ポリマー、第二基材をエチレンテレフタレート55重量%とエチレン−2,6−ナフタレート45重量%の共重合ポリマーにしたこと以外実施例1と同様の方法で実施例3の熱転写シートを作成した。
【0051】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0052】
<比較例1>
第一基材をポリエチレンテレフタレート、第二基材をエチレンテレフタレート55重量%とエチレン−2,6−ナフタレート45重量%の共重合ポリマーにしたこと以外実施例1と同様の方法で比較例1の熱転写シートを作成した。
【0053】
<比較例2>
第一基材をエチレンテレフタレート99重量%とエチレン−2,6−ナフタレート1重量%の共重合ポリマー、第二基材をポリエチレンテレフタレートにしたこと以外実施例1と同様の方法で比較例2の熱転写シートを作成した。
【0054】
<比較例3>
第一基材をエチレンテレフタレート70重量%とエチレン−2,6−ナフタレート30重量%の共重合ポリマー、第二基材をエチレンテレフタレート55重量%とエチレン−2,6−ナフタレート45重量%の共重合ポリマーにしたこと以外実施例1と同様の方法で比較例3の熱転写シートを作成した。
【0055】
<比較例4>
第一基材、第二基材ともにポリエチレンテレフタレートにしたこと以外実施例1と同様の方法で比較例4の熱転写シートを作成した。
【0056】
<性能比較1>
以上のように作成した実施例1,2,3および比較例1,2,3,4の熱転写シートをサーマルシミュレーターを用い各色、印加出力を100mJ/mmで印画紙への印画テストを行った。得られた印画物から、熱転写シートを剥離、除去し印画シワの有無を確認した。○:印画シワ無し、×:印画シワ有りで評価を行った。
【0057】
<性能比較2>
作成した実施例1,2,3および比較例1,2,3,4の熱転写シートの第一基材と第二基材の凝集力を評価するために、各々の層間で強制剥離の可否を評価した。○:強制剥離不可、×:強制剥離可で評価を行った。
【0058】
<性能比較3>
作成した実施例1,2,3および比較例1,2,3,4の熱転写シートのコストについて評価した。評価の基準は、基材シート中のポリエチレンナフタレート成分の重量%の大小で評価を行った。○:ポリエチレンナフタレート10重量%未満、×:ポリエチレンナフタレート10重量%以上で評価を行った。
【0059】
【表1】

性能比較結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、安価であり、基材の寸法安定性の欠如による印画シワ等発生することなく、安定的な印画性を有する熱転写シートを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0061】
1…基材シート
2…第一基材
3…第二基材
4…耐熱滑性層
5…熱転写性インク層(イエロー)
6…熱転写性インク層(マゼンタ)
7…熱転写性インク層(シアン)
8…離型層
9…熱転写性保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色(またはブラックを含む4色)の熱転写性インク層と、熱転写性保護層を長手方向へ順じ設けた熱転写シートにおいて、基材シートがポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエチレンナフタレートとの共重合体からなり、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレート重合比が異なる二層からなることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
二層からなる基材シートが、一方の面側から順じて第一基材と第二基材からなり、第一基材におけるポリエチレンナフタレートの含有量が0.1重量%以上、1重量%以下、第二基材におけるポリエチレンナフタレートの含有量が10重量%以上、45重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱転写シート。
【請求項3】
二層からなる基材シートが共押出し法によって製造されたことを特徴とする請求項1又は2記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記熱転写性インク層が、熱昇華性染料とバインダとからなる昇華性熱転写インク層であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱転写シート。

【図1】
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【公開番号】特開2011−56838(P2011−56838A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210342(P2009−210342)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】