説明

熱転写プリンタ

【課題】 本発明は、サイズの異なる2種類の用紙に1種類のインクリボンを用いて印刷すると共に、印刷時間が短縮可能な熱転写プリンタを提供すること。
【解決手段】 小サイズの用紙Sに最初の1色目のインク層34aを印刷時は、第1駆動モータ8により、第1、第2紙送りローラ4、6を回転させて用紙Sを矢印Hの一方向に搬送すると共に、ボビンギア11に直結した巻取りボビン(図示せず)を回転させてインクリボン34を巻取り、1色目のインク層34aの印刷が終了すると、第1駆動モータ8とは異なる第2駆動モータ12により、巻取りボビンを回転させて次の2色目のインク層34bを検出するまでインクリボン34を巻き取ると共に、第1駆動モータ8を反転させて用紙Sを矢印Jの他方向にバックフィードする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写プリンタに係わり、印刷中のインクリボンを適正に巻き取ることが可能なインクリボンの巻取り機構を有する熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱転写プリンタを特許文献1に基づいて説明すると、従来の熱転写プリンタは、図4に示すように、矢印Aの搬送方向に給紙される用紙31は、サーマルヘッド32とプラテンローラ33との間に挟持可能になっている。
また、インクリボン34は、一端部側が供給コア36に巻回され、他端部側が巻取りコア37に巻回されて、リボンカセット35のリボン収納部38に収納されている。前記リボンカセット35を熱転写プリンタのカセット装着部(図示せず)に装着すると、駆動モータにより回転駆動可能な巻取りボビン(図示せず)が巻取りコア37に係合して、インクリボン34を巻取り可能になっている。
【0003】
また、リボンカセット35は、リボン収納部38からサーマルヘッド32の裏面側に延びてガイド部39が形成され、このガイド部の先端部には、ガイドローラ40が回転自在に支持されている。
前記プラテンローラ33から寸法C離れた図示右側の位置には、巻取りボビンの駆動源と同じ駆動モータによって回転駆動可能な紙送りローラ41が配設され、この紙送りローラ41には、回転自在の圧接ローラ42が圧接して配設されている。また、リボンカセット35の下部には、用紙31を矢印A方向に搬送可能な搬送経路43を挟んでガイド板44が配設されている。
【0004】
また、ガイド部39の先端部分には、インクリボン34の後述するマーカ46を検出可能なリボンセンサ45が配設されている。
このような従来の熱転写プリンタは、1個の駆動モータにより、紙送りローラ41、及び巻取りボビン(図示せず)を回転駆動可能になっており、巻取りボビンを回転駆動することで巻取りコア37が回転する。また、駆動モータにより、サーマルヘッド32に対するプラテンローラ33の接離動作も行うようになっている。
【0005】
また、インクリボン34は、図5に示すように、シアンの色からなる1色目のインク層34a、マゼンタの色からなる2色目のインク層34b、イエローの3色目のインク層34c、オーバーコート層からなるインク層34dが連続して繰り返し形成されている。前記インクリボン35のそれぞれのインク層34a〜34d間には、それぞれのインク層34a〜34dを識別するためのマーカ46が形成されている。また、それぞれの色のインク層34a〜34dの長さは、用紙31の長さより長く形成されている。
このような従来の熱転写プリンタは、1種類のインクリボン34で、大きさの異なる2種類の用紙31に印刷できるようになっており、図6に示すように、例えばポストカードサイズ等の大サイズの用紙Tと、Lサイズ等の小サイズの用紙Sに印刷できるようになっている。
【0006】
そして、従来の熱転写プリンタにおいて、図6に示すような、大サイズの用紙Tにカラー画像を印刷する場合は、まず、外部の給紙装置(図示せず)から搬送経路43を経由して矢印A方向に給紙する大サイズの用紙Tは、前端部31cがプラテンローラ33とサーマルヘッド32との間を通過して、時計回り方向に回転駆動される紙送りローラ41と、この紙送りローラ41に圧接する圧接ローラ42との間に圧接挟持されて用紙Tの頭出しが行われる。
同時に、紙送りローラ41を回転駆動する同じ駆動モータにより、巻取りコア37が回転してインクリボン35が巻取りされる。
このことにより、サーマルヘッド32と対向する部分のインクリボン34が、用紙Tの給紙方向と同じ矢印A方向に巻取りされて、1色目のインク層34aのマーカ46がリボンセンサ45によりセンシングされて、1色目のインク層34aがサーマルヘッド32の発熱素子と対向する部分に位置する。
【0007】
この状態でプラテンローラ33をサーマルヘッド32側に移動させて、インクリボン34と用紙31aとをサーマルヘッド32に圧接し、印刷情報に基づいてサーマルヘッド32の発熱素子を選択的に発熱すると共に、紙送りローラ41の時計回り方向の回転で、大サイズの用紙Tの印刷領域31aに1色目のインク層34aが熱転写されて、1色目の色であるシアンの色の画像が印刷される。
前記印刷中におけるインクリボン34は、用紙Tを矢印A方向に搬送する紙送りローラ41を回転駆動するものと同じ駆動モータにより、巻取りボビンが回転駆動されて巻取りコア37に巻取りされる。
そして、1色目のインク層34aの印刷が終了すると、プラテンローラ33をサーマルヘッド32から離間させて、インクリボン34を更に巻取ることで、リボンセンサ45により2色目のインク層34bのセンシングが行われる。
【0008】
また、紙送りローラ41を回転駆動する駆動モータは、インクリボン34を巻取る時の駆動モータと同じなので、インクリボン34を巻取る動作と同時に、紙送りローラ41が時計回り方向に回転して、印刷終了後の用紙Tがプラテンローラ33より下流側に搬送される。
そして、大サイズの用紙Tの後端部31dが、紙送りローラ41と圧接ローラ42との間の圧接が外れる前に、インクリボン34のセンシングが行われて、インクリボン34の巻取りがストップすると共に、用紙31の矢印A方向の搬送がストップする。そして、駆動モータを反転させて、巻取りローラ41を反時計回り方向への回転駆動で、用紙31が矢印B方向に所定量バックフィードされる。
その後、前述したような印刷動作と同じ動作で、1色目の画像の上に2色目のインク層35bを重ね印刷し、2色目のインク層の上に3色目のインク層35c、及びオーバーコート層であるインク層35dを重ね印刷することで、用紙Tに所望のカラー画像を印刷することができる。
【0009】
また、小サイズの用紙Sにカラー画像を印刷する場合は、図6に示すように、小サイズの用紙Sに1色目のインク層34aの印刷領域31bの後端部から次の2色目のインク層34bのマーカ46までの寸法Eとプラテンローラ33からリボンセンサ45までの寸法Dとの合計寸法(E+D)が、プラテンローラ33から紙送りローラ41までの寸法Cと印刷領域31bの後端部から小サイズの用紙Sの後端部31fまでの寸法Fとの合計寸法(C+F)より大きくなる。
そのために、それぞれのインク層34a〜34dを用紙31bに印刷終了後に、矢印A方向に搬送する用紙31aの後端部が、紙送りローラ41近傍まで搬送されても、インクリボン34は、マーカ46がリボンセンサ45に届かず、リボンセンシングができてない状態である。
そのために、小サイズの用紙Sに印刷する場合は、1色目のインク層34aの印刷が終了すると、用紙Sの後端部31fを紙送りローラ41近傍まで搬送すると共に、インクリボン34を所定量巻取りする。その後、駆動モータを反転させて小サイズの用紙31bだけを所定量矢印B方向にバックフィードする。
そして、再度、駆動モータを正回転させて、紙送りローラ41を時計回り方向に回転して小サイズの用紙Sを矢印A方向に搬送すると共に、巻取りコア37を回転してインクリボン34を所定量巻取ってリボンセンサ45がマーカ46を検出していた。
【特許文献1】特開2002−160390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の熱転写プリンタは、1個の駆動モータで紙送りローラ41の回転と、インクリボン34の巻取りとを行っていたので、小サイズの用紙Sに画像印刷する場合に、それぞれのインク層34a〜34dの印刷が終了しても、次の色のマーカ46をリボンセンサ45が検出できず、小サイズの用紙Sを矢印B方向にバックフィードして、再度矢印A方向に往復搬送することにより、残りのインクリボン34が巻き取られて、リボンセンサ45がマーカ46を検出していた。
そのために、小サイズの用紙Sに印刷する場合に時間が掛かり、単位時間当たりの印刷枚数が少なくなる問題があった。
本発明は、前述したような課題を解決するためになされたもので、サイズの異なる2種類の用紙に対して、どちらも短時間で印刷できて、時間当たりの印刷枚数を多くすることができる熱転写プリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための第1の手段として本発明に関する熱転写プリンタは、サーマルヘッドがヘッドアップ/ダウン可能なプラテンローラと、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に搬送される所定サイズの用紙及びインクリボンと、印刷中の用紙を搬送可能な紙送りローラと、長尺状の前記インクリボンの巻取りを行う巻取りボビンとを備え、前記紙送りローラは、第1駆動モータの回転が伝達されて回転駆動可能になっており、前記インクリボンは、長手方向に所定長さで異なる複数色のインク層が繰り返し連続して形成され、
前記用紙に最初の色の前記インク層を印刷時は、前記サーマルヘッドをヘッドダウンして、前記第1駆動モータの回転伝達により、前記紙送りローラが回転して前記用紙を前記下流側に搬送すると共に、前記巻取りボビンが回転して前記インクリボンの巻取りを行い、前記最初の色のインク層の印刷が終了した時点で次の色のインク層の検出が終了していない場合には、前記サーマルヘッドをヘッドアップして、前記第1駆動モータとは異なる第2駆動モータの駆動により、前記巻取りボビンを回転させて次の色のインク層を検出するまで前記インクリボンを巻取ると共に、次の色のインク層を検出した後、前記第1駆動モータを反転させて前記紙送りローラにより前記用紙をバックフィードすることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第2の手段として、前記プラテンローラには、前記第1駆動モータの回転が伝達可能なプラテンギアが軸止され、前記巻取りボビンには、ボビンギアが軸止され、前記プラテンギアと前記ボビンギアとの間には、前記プラテンギアに噛み合うと共に前記ボビンギアに噛み合い可能な揺動ギアが配設され、前記ボビンギアに対して前記揺動ギアが噛み合うと前記揺動ギアを介して前記第1駆動モータの回転が伝達されて前記巻取りボビンが回転し、前記ボビンギアに対しする前記揺動ギアの噛み合いが外れると第2駆動源の回転が伝達されて巻取りボビンが回転するようになっていることを特徴とする。
【0012】
また、前記課題を解決するための第3の手段として、前記紙送りローラは、印刷時における前記用紙搬送方向の前記プラテンローラより上流側に配設した第1紙送りローラと、前記プラテンローラより下流側に配設した第2紙送りローラとを有し、前記第1、第2紙送りローラには、前記用紙を圧接挟持可能な圧接ローラがそれぞれ配設され、前記第2駆動モータにより、前記圧接ローラが前記第1、第2紙送りローラから接離駆動可能になっていることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第4の手段として、搬送中の前記用紙は、前記第1、第2紙送りローラと、前記圧接ローラとの間に圧接する前、又は圧接が外れる前に、前記圧接ローラが前記第1、又は第2紙送りローラから一時的に離間することを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第5の手段として、前記用紙の搬送量は、前記第1モータのステップ数を制御して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱転写プリンタにおいて、用紙に最初の色のインク層を印刷時は、サーマルヘッドをヘッドダウンして、第1駆動モータの回転伝達により、紙送りローラが回転して用紙を下流側に搬送すると共に、巻取りボビンが回転してインクリボンの巻取りを行い、最初の色のインク層の印刷が終了した時点で次の色のインク層の検出が終了していない場合には、サーマルヘッドをヘッドアップして、第1駆動モータとは異なる第2駆動モータの駆動により、巻取りボビンを回転させて次の色のインク層を検出するまでインクリボンを巻取ると共に、次の色のインク層を検出した後、第1駆動モータを反転させて紙送りローラにより用紙をバックフィードするので、用紙に印刷時のインクリボンの巻取りは、第1駆動モータと、圧接ローラを紙送りローラに接離するための第2駆動モータとにより行い、印刷時に発生するインクリボンの巻取り残を、従来例のような用紙を往復搬送しなくても、第2駆動モータで適正に巻き取ることができる。
また、第2駆動モータは、圧接ローラを紙送りローラに接離するためのものであり、この第2駆動モータを兼用して、インクリボンの巻取り残を巻取るので、部品点数を削減できる。
また、プラテンローラには、第1駆動モータの回転が伝達可能なプラテンギアが軸止され、巻取りボビンには、ボビンギアが軸止され、プラテンギアとボビンギアとの間には、プラテンギアに噛み合うと共にボビンギアに噛み合い可能な揺動ギアが配設され、ボビンギアに対して揺動ギアが噛み合うと第1駆動モータの回転が伝達されて巻取りボビンが回転すると共に、ボビンギアに対しする揺動ギアの噛み合いが外れると第2駆動源の回転が伝達されて巻取りボビンが回転するようになっているので、サイズの異なる2種類の用紙に印刷時に、インクリボンに巻取り残があっても、従来例のように、用紙を往復搬送させることなくインクリボンを適正に巻き取ることができる。そのために、印刷時間を短縮できる。
【0014】
また、紙送りローラは、印刷時における用紙搬送方向のプラテンローラより上流側に配設した第1紙送りローラと、プラテンローラより下流側に配設した第2紙送りローラとを有し、第1、第2紙送りローラには、用紙を圧接挟持可能な圧接ローラがそれぞれ配設され、第2駆動モータにより、圧接ローラが第1、第2紙送りローラからそれぞれ接離駆動可能になっているので、紙送りローラに対して圧接ローラを接離駆動する第2駆動モータにより、インクリボンの巻取り残を適正に巻き取りでき、部品点数を削減できる。
また、搬送中の用紙は、第1、第2紙送りローラと、圧接ローラとの間に圧接する前、又は圧接が外れる前に、圧接ローラが第1、又は第2紙送りローラから一時的に離間するので、用紙の搬送不良の発生が少ない熱転写プリンタを提供できる。
また、用紙の搬送量は、第1モータのステップ数を制御して行うので、用紙の頭出しを行うための用紙センサを不要にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の熱転写プリンタを図面に基づいて説明する。図1は本発明の熱転写プリンタを説明する側面図であり、図2は図1の斜視図であり、図3は本発明に係わる用紙とインクリボンとの関係を説明する概略図である。
また、インクリボンおよび用紙は、従来の技術で説明したものと同じなので、同じ番号を付して説明する。
まず、本発明の熱転写プリンタ1を図1、図2に基づいて説明すると、互いに対向する一対の側板2間(図面では一方の側板2だけで説明する)には、サーマルヘッド(図示せず)と、このサーマルヘッドがヘッドアップ/ダウン可能なプラテンローラ3が配設されている。
そして、一方の側板2には、プラテンローラ3の回転軸が回転自在に支持され、この回転軸には、プラテンギア3aが軸止されている。
また、プラテンローラ3の図示右側の一方側には、第1紙送りローラ4が側板2に回転自在に支持されており、側板2から出っ張る第1紙送りローラ4には、第1LFギア4aが軸止されている。前記第1LFギア4aは、第1アイドルギア5を介してプラテンギア3aに常時噛み合っている。
【0016】
また、プラテンローラ3の図示左側の他方側には、第2紙送りローラ6が側板2に回転自在に支持されており、側板2〜出っ張る第2紙送りローラ6には、第2LFギア6aが軸止されている。前記第2LFギア6aは、第2アイドルギア7を介してプラテンギア3aに常時噛み合っている。
また、第2LFギア6aの図示左上方の側板2には、第1駆動モータ8が配設され、この第1駆動モータ8の回転軸8aの先端側には、ウォームギア8bが軸止されている。前記ウォームギア8bには、第1駆動モータ8の回転をプラテンローラ3に伝達可能な第3アイドルギア9が噛み合い、この第3アイドルギア9の小歯車(図示せず)にプラテンギア3aが噛み合っている。
【0017】
そして、第1駆動モータ8によりプラテンギア3aを時計回り方向に回転させると、第1、第2LFギア4a、6aが同方向の時計回り方向に回転するようになっている。即ち、第1、第2紙送りローラ4、6およびプラテンローラは、同方向に回転するようになっている。
また、プラテンギア3aの上方の側板2には、プラテンギア3aの歯山に噛み合った状態で左回り方向および右回り方向に揺動可能な揺動ギア10が配設されている。前記揺動ギア10は、大歯車10aが後述するボビンギア11の大歯車11aに噛み合い可能になっていると共に、小歯車10bがプラテンギア3aに常時噛み合って揺動可能になっている。
【0018】
また、揺動ギア10の右斜め上方の側板2には、揺動ギア10の大歯車10aが噛み合い可能なボビンギア11が配設されている。前記ボビンギア11には、従来の技術で説明したものと同じインクリボン34を巻き取るための巻取りコア(図示せず)を回転駆動可能な巻取りボビン(図示せず)が軸止されている。
そして、プラテンギア3aには、揺動ギア10が常時噛み合っており、プラテンギア3aが時計回り方向に回転すると、揺動ギア10が図示右方向に揺動してボビンギア11に噛み合うようになっている。
また、プラテンギア3aが反時計回り方向に反転すると、揺動ギア10が図示左方向に揺動してボビンギア11との噛み合いが外れるようになっている。
【0019】
そして、揺動ギア10がボビンギア11に噛み合った状態の時に、第1駆動モータ8によりプラテンギア3aを時計回り方向に回転させると、巻取りボビン(図示せず)が時計回り方向に回転する。このことにより、巻取りコア(図示せず)が回転してインクリボン34が巻き取られるようになっている。
また、第1駆動モータ8の反転により、プラテンギア3aが反時計回り方向に反転すると、揺動ギア10とボビンギア11との噛み合いが外れて、巻取りボビンの回転が停止し、インクリボン34の巻取りがストップするようになっている。
【0020】
また、側板2には、第1駆動モータ8とは異なる第2駆動モータ12が配設され、この第2駆動モータ12のピニオンギア12aには、連結ギア13が噛み合って、第2駆動モータ12の回転が、連結ギア13、第1〜第5中間ギア14〜18を介してボビンギア11の小歯車11bに伝達されて、ボビンギア11が時計回り方向に回転するようになっている。
このことにより巻取りボビンが回転して、インクリボン34を巻取り可能になっている。また、第3中間ギア16は、第1中間ギア14に対して接離可能になっている。そのために、第1中間ギア14に第3中間ギア16が噛み合うことで第2駆動モータ12の回転がボビンギア11に伝達可能になっており、第1中間ギア14に対する第3中間ギア16の噛み合いが外れると、揺動ギア10を介して第1駆動モータ8の回転がボビンギア11に伝達可能になっている。
【0021】
また、第1、第2紙送りローラ4、6には、小サイズの用紙S、または大サイズの用紙Tを圧接挟持可能な圧接ローラ(図示せず)がそれぞれ配設され、前記第1中間ギア14に対する第3中間ギア16の噛み合いが外れた状態で第2駆動モータ12を回転駆動すると、それぞれの圧接ローラが第1、第2紙送りローラ4、6から接離するようになっている。
そして、矢印H方向に搬送中、または矢印J方向にバックフィード中の小サイズの用紙S、または大サイズの用紙Tが、第1、第2紙送りローラ4、6と圧接ローラとの間に圧接される直前、又は圧接が外れる直前に、第2駆動モータ12によって、圧接ローラが第1、第2紙送りローラ4、6から一時的に離間するようになっている。
【0022】
そのために、小サイズの用紙S、または大サイズの用紙Tを搬送時、またはバックフィード時に、用紙S、Tの前端部31c、31e、または後端部31d、31fが第1、または第2紙送りローラ4、6に突き当たって反り等の不具合が発生するのを防止できる。即ち、小サイズの用紙S、または大サイズの用紙Tに反り等が発生しないので、高品質の画像印刷を行うことができる。
即ち、圧接ローラ(図示せず)を紙送りローラ4、6から一時的に接離駆動する第2駆動モータ12を兼用して、小サイズの用紙S、または大サイズの用紙Tに印刷中に第1駆動モータ8で巻き取れなかったインクリボンの巻取り残を、印刷後にボビンギア11を回転させて適正に巻き取るようになっている。
また、用紙の搬送量、およびバックフィード量の制御は、ステッピングモータからなる第1駆動モータ8のステップ数を制御して行うようになっている。
【0023】
また、インクリボン34は、従来の技術で説明したものと同じ構成なので、同じ番号を付して図3に基づいて説明すると、長手方向に所定長さの異なる色のインク層34a〜34dが順番に繰り返し連続して形成されている。
前記それぞれのインク層34a〜34dの長さ寸法は、大きさの異なる例えばポストサイズ等の大サイズの用紙Tと、Lサイズ等の小サイズの用紙Sの2種類に対して全面印刷可能な長さに形成されている。
そして、図3に示すように、小サイズの用紙Sに、画像印刷後のインクリボン34には、後端部31fから次の色のインク層34bのマーカ46までに、寸法Gの巻取り残が発生するようになっている。
また、大サイズの用紙Tに画像印刷後のインクリボン34には、後端部31dから次の色のインク層34bのマーカ46までに、寸法Jの巻取り残が発生するようになっている。
【0024】
前記インクリボン34を用いて本発明の熱転写プリンタPにより、小サイズの用紙Sに対する印刷動作を説明すると、まず、第1駆動モータ8を回転駆動させて、第1、第2紙送りローラ4、6およびプラテンローラ3を反時計回り方向に回転している時に、図1に示す熱転写プリンタ1の右側から、小サイズの用紙Sを後端部31f側から給紙する。
すると、小サイズの用紙Sは、第1紙送りローラ4、プラテンローラ、第2紙送りローラ6によって、矢印J方向に搬送される。
このときの揺動ギア10は、プラテンギア3aに噛み合った状態で図示左方向に揺動してボビンギア11との噛み合わせが外れている。
また、用紙Sを矢印J方向に給紙中のサーマルヘッド(図示せず)は、プラテンローラ3から離間(ヘッドアップ)している。
【0025】
次に、第1駆動モータ8を、予め制御部(図示せず)に入力しているステップ数まで回転させると、小サイズの用紙3の頭出しが行われて用紙Sの前端部31eがプラテンローラ3上に位置する。また、インクリボン(図示せず)は、1色目のインク層34aのマーカ46がリボンセンサ(図示せず)に位置合わせされて、リボン頭出しが行われている。
このような用紙頭出しとリボン頭出しとが行われると、ヘッドアップしているサーマルヘッドをヘッドダウンさせてインクリボンの1色目のインク層34aを用紙Sに圧接する。
【0026】
前記サーマルヘッドの複数の発熱素子を、印刷情報に基づいて選択的に発熱させて、第1駆動モータ8により、第1、第2紙送りローラ4、6、およびプラテンローラ3を時計回り方向に回転させる。このことにより、小サイズの用紙Sが矢印Hの一方側に搬送されて、最初の1色目のインク層34aが、用紙S全面に選択的に熱転写されて、1色目の画像が全面印刷される。印刷中の用紙Sの搬送量は、第1駆動モータ8のステップ数を制御して行われている。
また、小サイズの用紙Sに印刷中の揺動ギア10は、図示右回り方向に揺動してボビンギア11に噛み合い、第1駆動モータから回転伝達されたボビンギア11が、プラテンギア3aと同方向の時計回り方向に回転して、印刷中のインクリボン34が巻取りコアに巻取りされる。
【0027】
次に、小サイズの用紙Sへの1色目の画像印刷が終了すると、サーマルヘッドをヘッドアップすると共に、第1駆動モータ8を反転させて、第1、第2紙送りローラ4、6、およびプラテンローラ3を反時計回り方向に反転させる。
このことにより、1色目の画像が印刷された用紙Sが矢印Jの他方側にバックフィードされると共に、揺動ギア10がプラテンギア3aの外周を図示左回り方向に揺動して、ボビンギア11との噛み合いが外れる。
前記用紙Sの矢印J方向へのバックフィード量は、第1駆動モータ8を反転させるステップ数が所定の数になると、前端部31eがプラテンローラ3上に位置して用紙頭出しが行われて、第1駆動モータ8の反転が停止する。
【0028】
この時の第2駆動モータ12の連結ギア13は、第1〜第5中間ギア14〜18を介してボビンギア11に連結されており、第2駆動モータ12の回転がボビンギア11(巻取りボビン)に伝達されることで、インクリボン43の寸法Gの巻取り残が巻取りボビンに巻取りされる。
このことにより、次の色の2色目のインク層34bのマーカ46がリボンセンサで検出されて、2色目のインク層34bのリボン頭出しが行われる。
その後、サーマルヘッドをヘッドダウンさせると共に、第1駆動モータ8の回転により、第1、第2紙送りローラ4、6およびプラテンローラ3を時計回り方向に回転させて、用紙Sを矢印H方向に搬送する。このことにより、1色目の画像の上に2色目のインク層34bが重ね印刷されて、小サイズの用紙Sの全面に2色目の画像印刷が行われる。
【0029】
前記2色目の画像印刷中のインクリボン34は、第1駆動モータ8の回転が揺動ギア10を介してボビンギア11に伝達されて巻取りボビンに巻取りされる。
その後、同様の印刷動作を繰り返して、2色目の画像の上に3色目のインク層34cを重ね印刷して3色目の画像を印刷すると共に、3色目の画像の上に4色目のインク層34dを重ね印刷することで、所望のカラー画像が小サイズの用紙Sに全面印刷されて、熱転写プリンタ1の図示右側から外部に排紙される。
【0030】
また、大サイズの用紙Tにカラー画像を印刷する場合は、1色目のインク層34aのリボン頭出しを行うと共に、用紙Tの前端部31cの用紙頭出しを行ってサーマルヘッドをヘッドダウンする。
そして、第1駆動モータ8により第1、第2紙送りローラ4、6およびプラテンローラ3を時計回り方向に回転させて、大サイズの用紙Tを矢印Hの一方向に搬送する。このことにより、1色目のインク層34aが用紙Tに熱転写されて、大サイズの用紙Tの前端部31cから後端部31dまでの全面に1色目の画像印刷が行われる。
【0031】
前記大サイズの用紙Tに印刷中のインクリボン34は、揺動ギア10がボビンギア11に噛み合っているので、第1駆動モータ8の回転が巻取りボビンに伝達されて巻取りコアに巻取りされる。
前記1色目のインク層34aの印刷が終了すると、サーマルヘッドをヘッドアップさせると共に、第1駆動モータ8により揺動ギア10を介して巻取りボビンを回転させる。このことにより、巻取りボビンにインクリボン34の寸法Jの巻取り残が巻取りされて、次の色である2色目のインク層34bのリボン頭出しが行われる。
【0032】
その後、第1駆動モータ8を反転させると、第1、第2紙送りローラ4、6およびプラテンローラ3を反時計回り方向に反転して、1色目の画像印刷された大サイズの用紙Tが矢印Jの他方向にバックフィードされる。
そして、反転する第1駆動モータ8のステップ数を制御して2色目のインク層34bを印刷するための用紙頭出しを行うと、サーマルヘッドをヘッドダウンして、第1駆動モータ8により大サイズの用紙Tを矢印Hの一方向に搬送する。
このことにより、1色目の画像の上に2色目のインク層34bが熱転写されて2色目の画像印刷が行われる。
【0033】
その後、同様の動作を繰り返して、2色目の画像の上に3色目のインク層34cを重ね印刷して3色目の画像を印刷すると共に、3色目の画像の上に4色目のインク層34dを重ね印刷することで、所望のカラー画像が大サイズの用紙Tに全面印刷される。このような、大サイズの用紙Tに画像印刷するときは、第1駆動源8の回転だけで用紙Tの搬送およびバックフィードと、インクリボン34の巻取りとを行うようになっている。
【0034】
尚、本発明の実施の形態では、大サイズの用紙Tに印刷時のインクリボン34の寸法Gの巻取り残を、第1駆動モータ8によりボビンギア11を回転させて巻き取ることで説明したが、インクリボン34の先頭側で、巻取りボビン(図示せず)に巻取りした巻取り径が小さい場合には、印刷後の用紙Tを第1紙送りローラ4で矢印H方向に搬送する量だけでは完全に巻取りできないことがある。
このような時は、第2駆動モータ12により、完全に巻取りできなかった寸法Gの巻取り残を巻き取るようになっている。
即ち、本発明の熱転写プリンタ1は、大サイズ、または小サイズの用紙に、例えば最初の色のインク層の印刷が終了した時点で、次の色のインク層の検出が終了していない場合は、サーマルヘッドをヘッドアップして、第2駆動モータ12の駆動により、巻取りボビンを回転させて次の色のインク層を検出するまでインクリボンを巻き取ると共に、次の色のインク層を検出した後、第1駆動モータ8を反転させて第1、第2紙送りローラ4、6により大サイズ、または小サイズの用紙をバックフィードするようになっている。
【0035】
また、本発明の実施の形態では、2つの第1、第2紙送りローラ4、6で用紙S、Tを搬送及びバックフィードすることで説明したが、1つの紙送りローラ(図示せず)でも良い。
また、用紙S、Tを熱転写プリンタ1の図示右側から矢印J方向に給紙することで説明したが、熱転写プリンタ1の図示左側から矢印H方向に給紙するようにしたものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の熱転写プリンタを説明する側面図である。
【図2】図1の斜視図である。
【図3】本発明に係わる用紙とインクリボンとの関係を説明する概略図である。
【図4】従来の熱転写プリンタを説明する側面図である。
【図5】従来のインクリボンを説明する概略図である。
【図6】従来のインクリボンと用紙との関係を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1 熱転写プリンタ
2 一方の側板
3 プラテンローラ
3a プラテンギア
4 第1紙送りローラ
4a 第1LFギア
5 第1アイドルギア
6 第2紙送りローラ
6a 第2LFギア
7 第2アイドルギア
8 第1駆動モータ
8b ウォームギア
9 第3アイドルギア
10 揺動ギア
11 ボビンギア
12 第2駆動モータ
13 連結ギア
14 第1中間ギア
15 第2中間ギア
16 第3中間ギア
17 第4中間ギア
18 第5中間ギア
S 小サイズの用紙
T 大サイズの用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドがヘッドアップ/ダウン可能なプラテンローラと、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に搬送される所定サイズの用紙及びインクリボンと、印刷中の用紙を搬送可能な紙送りローラと、長尺状の前記インクリボンの巻取りを行う巻取りボビンとを備え、
前記紙送りローラは、第1駆動モータの回転が伝達されて回転駆動可能になっており、前記インクリボンは、長手方向に所定長さで異なる複数色のインク層が繰り返し連続して形成され、
前記用紙に最初の色の前記インク層を印刷時は、前記サーマルヘッドをヘッドダウンして、前記第1駆動モータの回転伝達により、前記紙送りローラが回転して前記用紙を前記下流側に搬送すると共に、前記巻取りボビンが回転して前記インクリボンの巻取りを行い、前記最初の色のインク層の印刷が終了した時点で次の色のインク層の検出が終了していない場合には、前記サーマルヘッドをヘッドアップして、前記第1駆動モータとは異なる第2駆動モータの駆動により、前記巻取りボビンを回転させて次の色のインク層を検出するまで前記インクリボンを巻取ると共に、次の色のインク層を検出した後、前記第1駆動モータを反転させて前記紙送りローラにより前記用紙をバックフィードすることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
前記プラテンローラには、前記第1駆動モータの回転が伝達可能なプラテンギアが軸止され、前記巻取りボビンには、ボビンギアが軸止され、前記プラテンギアと前記ボビンギアとの間には、前記プラテンギアに噛み合うと共に前記ボビンギアに噛み合い可能な揺動ギアが配設され、前記ボビンギアに対して前記揺動ギアが噛み合うと前記揺動ギアを介して前記第1駆動モータの回転が伝達されて前記巻取りボビンが回転し、前記ボビンギアに対しする前記揺動ギアの噛み合いが外れると第2駆動源の回転が伝達されて巻取りボビンが回転するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記紙送りローラは、印刷時における前記用紙搬送方向の前記プラテンローラより上流側に配設した第1紙送りローラと、前記プラテンローラより下流側に配設した第2紙送りローラとを有し、前記第1、第2紙送りローラには、前記用紙を圧接挟持可能な圧接ローラがそれぞれ配設され、前記第2駆動モータにより、前記圧接ローラが前記第1、第2紙送りローラから接離駆動可能になっていることを特徴とする請求項1、または2に記載の熱転写プリンタ。
【請求項4】
搬送中の前記用紙は、前記第1、第2紙送りローラと、前記圧接ローラとの間に圧接する前、又は圧接が外れる前に、前記圧接ローラが前記第1、又は第2紙送りローラから一時的に離間することを特徴とする請求項3に記載の熱転写プリンタ。
【請求項5】
前記用紙の搬送量は、前記第1モータのステップ数を制御して行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱転写プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−90649(P2007−90649A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282688(P2005−282688)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】