説明

熱転写受像シート及びその製造方法

【課題】 本発明の目的は、高速印画時に良好な印画特性を有し、熱転写インクシートとの剥離性及び保護シートとの接着性に優れ、長期保存後でもブロッキング耐性に優れた熱転写受像シートとその製造方法を提供することである。
【解決手段】 基材上に1層以上の受像層を有する熱転写受像シートにおいて、該受像層の少なくとも1層が、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上である塗布液を用いて、水系塗布により形成されたことを特徴とする熱転写受像シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写インクシートと重ね合わせて使用される熱転写受像シートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー又はモノクロの画像の形成技術として、加熱により拡散移行する性質を有する熱拡散性色素を含有するインクシートを、熱転写受像シートの色素受容層と対向させて、サーマルヘッドやレーザー等の加熱印字手段を用いて、該色素受容層に該熱拡散性色素を画像様に転写して画像を形成する技術、いわゆる染料熱転写方式が知られている。このような感熱転写方式は、デジタルデータを用いての画像形成を可能とし、現像液等の処理液を使わず、しかも銀塩写真に匹敵する高画質な画像を形成できる方法として定評がある。一方、昨今様々な記録方式のカラーハードコピーが競合している中にあって、プリント速度を速めることの価値は益々高まってきており、上記色素熱転写方式においても例外ではない。
【0003】
一般的には、高速印画でありながら、良好な印画特性と言える十分な印画濃度を得るためには、例えば、熱転写インクシートの色素量をバインダーに対して増やすか、高エネルギーで熱転写する方法が考えられる。熱転写インクシートの色素量とバインダーの比率を変える方法にも、大きく分けて2つあり、バインダー添加量を減らすことなく色素添加量を増やす方法とバインダー添加量を減らすことで比率を変える方法の2つである。しかしながら、前者はコスト的に難があり、後者はロール状態の熱転写インクシートにおいて、背面側に色素が移行し、その色素が更にサーマルヘッドを汚染し、寿命を低下させるという問題が生じる。また、高エネルギーで熱転写させる方法では、熱転写インクシートと熱転写受像シートの間で、しばしば熱融着が生じ異常転写となるという問題があった。
【0004】
これらの問題に対し、例えば、ある種の硬化樹脂に対しフタル酸エステル系等の可塑剤を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法では、第一に、熱転写受像シートを作製する際に、電子線を均一に塗布面に照射する装置等の特殊な設備を新たに導入しなければならないという問題がある。第二に、もともと染着性が比較的高いポリエステル樹脂などを単独に使用した効果に対し、この種の硬化樹脂は可塑剤の併用により漸く同程度の濃度を示しており、高速印画において十分な高濃度を得るには更に可塑剤を添加しなければならず、結局は高エネルギーを与えてバインダーを軟らかくさせる方法と同様、熱転写インクシートと熱転写受像シートの間での熱融着の問題を回避することはできないという問題がある。
【0005】
また、これらの問題を解決する方法として、染料受容層にフェノキシ樹脂と可塑剤を含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)が、この方法では、印画前の熱転写受像シートが重なった状態で保存される様な場合、長期保存時に互いにくっついて剥がれにくくなり、プリンターの搬送性が低下する、いわゆるブロッキングという新たな問題が生じてしまう。
【0006】
更に、染料受像層に特定の離型剤を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)が、この方法では、熱転写インクシートとの剥離性は良好なものの、保護シートとの接着性が劣化するという欠点があり、離型剤の添加量を調整するのみでは、このジレンマを解決することはできなかった。
【0007】
従って、高速印画条件でも良好な印画特性を示し、かつ熱転写インクシートとの剥離性および保護シートとの接着性に優れ、更には印画前に長期間保存されてもブロッキングが生じない熱転写受像シートとその製造方法が開発が求められている。
【特許文献1】特開平5−193279号公報
【特許文献2】特開2001−30639号公報
【特許文献3】特開平11−291644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高速印画時に良好な印画特性を示し、熱転写インクシートとの剥離性及び保護シートとの接着性に優れ、長期保存後でもブロッキング耐性に優れた熱転写受像シートとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
(請求項1)
基材上に1層以上の受像層を有する熱転写受像シートにおいて、該受像層の少なくとも1層が、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上である塗布液を用いて、水系塗布により形成されたことを特徴とする熱転写受像シート。
【0011】
(請求項2)
基材上に2層以上の受像層を有する熱転写受像シートにおいて、全ての該受像層が、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上である塗布液を用いて、水系塗布により形成されたことを特徴とする熱転写受像シート。
【0012】
(請求項3)
全ての前記受像層が、水系同時重層塗布により形成されたことを特徴とする請求項2に記載の熱転写受像シート。
【0013】
(請求項4)
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱転写受像シートを製造する熱転写受像シートの製造方法であって、受容層の支持体への塗布開始から乾燥前の任意の時期に、セット工程を設けて製造することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高速印画時に良好な印画特性を有し、熱転写インクシートとの剥離性及び保護シートとの接着性に優れ、長期保存後でもブロッキング耐性に優れた熱転写受像シートとその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に1層以上の受像層を有する熱転写受像シートにおいて、1)該受像層の少なくとも1層の形成を、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上である塗布液を用いて、水系塗布により行うことを特徴とする熱転写受像シート、あるいは2)基材上に2層以上の受像層を有する熱転写受像シートにおいて、全ての該受像層を、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上である塗布液を用いて、水系塗布により形成されたことを特徴とする熱転写受像シートにより、高速印画時に良好な印画特性を有し、熱転写インクシートとの剥離性及び保護シートとの接着性に優れ、長期保存後でもブロッキング耐性に優れた熱転写受像シートを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0017】
すなわち、本発明に用いられる受容層塗布液としては、40℃で200mPa・s以下の範囲の粘度を持ち、冷却するに従って増粘し、15℃においては、40℃での粘度の20倍以上となることを特徴とする。本発明者らは、鋭意研究の結果、後述する冷却セット工程でのゲル化効果をもたらすための、15℃と40℃の粘度の関係が、およそ3.0msec/lineより高速印画においても、熱転写インクシートとの熱融着を起こさず、かつ保護シートとの接着も良好であり、ブロッキングも生じないための非常に重要なポイントであることを見出した。その機構は未だ不明瞭な部分が多いが、ウェット状の塗膜を直接温風で乾燥させた場合と、温風乾燥前にある程度冷却ゲル化工程を経る場合とでは、少なからず離型剤の表面配向状態が異なり、後者の場合、非常に高い平滑性を維持しながら、しかも均一に離型剤が表面に分布するため、僅かな量でも効率的な剥離性が得られ、かつ保護シートの転写性を阻害しない状態を実現できるものと推定している。これにより、必ずしも可塑剤に頼らず、ブロッキング耐性の良好な高速対応の熱転写受像シートの作製が可能となることを見出した。
【0018】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0019】
《熱転写受像シート》
はじめに、本発明の熱転写受像シートの詳細について説明する。
【0020】
本発明の熱転写受像シートは、基材上に1層以上の受像層を有する。
【0021】
(受像層)
本発明に係る受像層は、水系塗布により、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上である塗布液を用いて形成することを特徴とする。
【0022】
〈バインダー樹脂〉
本発明の熱転写受像シートにおいては、本発明に係る受像層を水系塗布方式で形成することが特徴であり、受容層に用いるバインダーとしてはは、親水性バインダー、あるいは水系溶媒に分散可能な疎水性バインダーなどを用いることが好ましい。
【0023】
本発明に係る受像層に用いることのできる親水性バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平7−195826号公報及び同7−9757号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭62−245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等が単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。本発明で好ましく用いられる親水性バインダーは、ポリビニルアルコールまたはゼラチンである。
【0024】
上記ゼラチンとしては、石灰処理あるいは酸処理等、各種の製造方法により得られる全てのものを用いることができる。塗布性や層間接着性の観点で、断熱層形成技術との相性を考慮し、適宜選択することができる。
【0025】
上記ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を置換したシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0026】
併用するポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられ、ケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものが特に好ましい。
【0027】
水分散型として用いる疎水性バインダーとしては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられ、好ましくはビニル系樹脂及びポリエステル系樹脂である。これらの樹脂を単独使用あるいは複数併用することができる。
【0028】
親水性バインダーまたは水分散型疎水性バインダーを併用する場合、バインダー全体に対する含まれる疎水性バインダーの割合は、十分な濃度を得る上で10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上が更に好ましい。
【0029】
また、本発明では下記のカチオン性ポリマーを用いることもできる。
【0030】
本発明で用いることのできるカチオン性ポリマーは、ポリマー主鎖または側鎖に第1〜3級アミン、第4級アンモニウム塩基、または第4級ホスホニウム塩基などを有するポリマーである。
【0031】
本発明に使用されるカチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。
【0032】
また、本発明に係るカチオン性ポリマーとして、膨潤しにくいカチオン性ポリマーが好ましく、特に、アクリル酸類などを共重合したカチオン性ポリマーが好ましい。アクリル酸類としては、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類が挙げられ、更には、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメチルアクリレートが好ましい。
【0033】
または、化学工業時報平成10年8月15日、同25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0034】
本発明に係るカチオン性ポリマーの質量平均分子量としては2000〜50万の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、3000〜10万の範囲である。
【0035】
本発明に係るカチオン性ポリマーは、塗布液に添加してから塗布乾燥してもよいし、受像層を塗布、乾燥した後の皮膜に水溶液として含浸させて添加してもよい。
【0036】
また、本発明に係るカチオン性ポリマーを塗布液にあらかじめ添加する場合、均一に塗布液に添加するのみならず、無機微粒子とともに複合粒子を形成する形で添加してもよい。無機微粒子とカチオン性ポリマーによって複合粒子を作製する方法としては、無機微粒子にカチオン性ポリマーを混合し吸着被覆させる方法、その被覆粒子を凝集させてより高次の複合粒子を得る方法、さらには混合して得られる粗大粒子を分散機によってより均一な複合粒子にする方法などが挙げられる。
【0037】
本発明に係るカチオン性ポリマーは概ね水溶性基を有するために水溶性を示すが、例えば共重合成分の組成によって水に溶解しないことがある。製造の容易性から水溶性であることが好ましいが、水に難溶であっても水混和性有機溶媒を用いて溶解し使用することも可能である。
【0038】
ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して概ね10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0039】
本発明に係る受像層におけるバインダー含有量は、熱転写受像シート1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲である。
【0040】
〈キレート形成可能な染料と反応してキレート化合物を形成し得る金属イオン含有化合物〉
本発明に係る受像層においては、キレート形成可能な染料と反応してキレート化合物を形成し得る金属イオン含有化合物(以下、メタルソースとも記す)を含有することも好ましい態様である。この場合、含有させるメタルソースとしては、金属イオンの無機又は有機の塩及び金属錯体が挙げられ、無機塩の場合はそのままの形、有機塩の場合は、例えばO/W型に分散した形で用いることができる。金属としては、周期律表の第I〜第VIII族に属する1価及び多価の金属が挙げられるが、中でもAl、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Sn、i及びZnが好ましい。
【0041】
メタルソースの具体例としては、Al3+、Mg2+、Ni2+、Cu2+、Cr2+、Co2+及びZn2+との無機、酢酸や乳酸、ステアリン酸等の脂肪族の塩、又は安息香酸、サルチル酸等の芳香族カルボン酸の塩等が挙げられる。
【0042】
本発明においては、下記一般式(I)で表される錯体が受像層中に安定かつ添加でき、かつ実質的に無色であるので特に好ましく用いられる。
【0043】
一般式(I)
〔M(Q1X(Q2Y(Q3ZP+(L-P
上記式中、Mは金属イオンを表し、好ましくはNi2+、Cu2+、Cr2+、Co2+、Zn2+を表す。Q1、Q2、Q3は各々Mで表される金属イオンと配位結合可能な配位化合物を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。これらの配位化合物としては、例えば、キレート科学(5)(南江堂)に記載されている配位化合物から選択することができる。L−は有機アニオン基を表し、具体的にはテトラフェニル硼素アニオンやアルキルベンゼンスルホン酸アニオン等が挙げられる。Xは1、2または3の整数を表し、Yは1、2または0を表し、Zは1または0を表すが、これらは前記一般式で表される錯体が4座配位か、6座配位かによって決定されるか、あるいはQ1、Q2、Q3の配位子の数によって決定される。Pは1または2を表す。この種のメタルソースの具体例は、米国特許4,987,049号明細書に例示されたもの、または特開平10−67181号公報に例示された化合物1〜51などを挙げることができる。
【0044】
メタルソースの添加量は、通常、受像層バインダーに対して5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。また、本発明に用いられるメタルソース化合物の添加量は、通常、0.5〜20g/m2が好ましく、1〜15g/m2がより好ましい。
【0045】
〈離型剤〉
本発明に係る受像層においては、印画時に熱転写インクシートのインク層との熱融着を防止するために、離型剤を含有することが好ましい。
【0046】
離型剤としては、燐酸エステル系可塑剤、フッ素系化合物、シリコーンオイル(反応硬化型シリコーンを含む)等を使用することができるが、この中でもシリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンを始め各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等を用い、これらをブレンドしたり、各種の反応を用いて重合させて用いることもできる。離型剤は1種もしくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は、受像層形成用樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合は、熱転写インクシートと受像シートの受像層との融着もしくは印画感度低下等の問題が生じる場合がある。
【0047】
また、本発明においては、シリコーン系のエマルジョン型の離型剤を用いることも好ましい態様である。シリコーン系のエマルジョン型の離型剤とは、シリコーンオイルを各種乳化剤で乳化したエマルジョン型のシリコーン離型剤のことをいう。好ましくはO/W型のエマルジョン型のシリコーン離型剤で、具体的には、信越化学工業(株)製KM786、KM785、KM860A等が挙げられる。エマルジョン型シリコーン離型剤は1種もしくは2種以上のものが使用される。また、シリコーンオイル型等の他の離型剤と併用しても構わない。なお、これらの離型剤は受像層に添加せず、受像層上に別途離型層として設けてもよい。
【0048】
〈界面活性剤〉
本発明に係る受像層においては、受像層がシリコーン系界面活性剤を含有することも好ましい態様である。
【0049】
本発明で用いることのできるシリコーン系界面活性剤としては、公知のものが使用でき、例えば、「機能性界面活性剤監修/角田光雄、発行/2000年8月、第6章」で紹介されているものを好ましく用いることができる。具体的には、日本エマルジョン株式会社製EMALEX SS−5050K、EMALEX SS−5602等が挙げられる。
【0050】
また、本発明に係る受像層においては、受像層がフッ素系界面活性剤を含有することも好ましい態様である。
【0051】
本発明で用いることのできるフッ素系界面活性剤としては、公知のものが使用でき、例えば、「機能性界面活性剤監修/角田光雄、発行/2000年8月、第5章」で紹介されているものを好ましく用いることができる。具体的には、株式会社ネオス社製フタージェントシリーズ、住友スリーエム株式会社製FC−4430等が挙げられる。これらの界面活性剤は受像層に添加せず、受像層上に別途離型層として設けても良い。
【0052】
本発明の熱転写受像シートにおいては、受像層を2層以上の構成とすることを1つの特徴としているが、各層で異なる機能を持たせることにより、本発明の高速印画時の良好な印画特性(濃度/剥離性/保護シート接着性)及び印画前経時保存でのブロッキング耐性に対する効果を更に高めることができる。複数層構成の視点としては、例えば、2層構成とし、上層に先述離型剤あるいは界面活性剤を添加した薄層を設け、下層にメタルソース含有率の高い層を設けるという構成があるが、これに限定されるものではない。
【0053】
〈硬膜剤〉
本発明に係る受像層においては、水系塗布方式によって形成された層のうちの少なくとも1層に、硬膜剤を含有させることもできる。
【0054】
本発明で用いることのできる硬膜剤としては、バインダーと硬膜反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩、エポキシ系硬膜剤が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0055】
上記硬膜剤の総使用量は、上記バインダー1g当たり1〜1000mgが好ましい。また、バインダーに対する供給量としては、上記バインダー1g当たり100〜1000mgが好ましい。
【0056】
次いで、本発明の熱転写受像シートのその他の構成要素について説明する。
【0057】
〔基材〕
本発明の熱転写受像シートで用いる基材は、受像層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、過熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有する材料であることが好ましい。
【0058】
このような基材の材料としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムが挙げられ、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルムも使用でき、特に限定されない。
【0059】
また、上記基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙或いはセルロース合成紙とプラスチックフィルムとの合成紙が挙げられる。これらの支持体の厚みは任意でよく、通常10〜300μm程度である。
【0060】
より高い印画感度を有すると共に、濃度ムラや白抜けのない高画質を得るためには、基材中に微細空隙を有する層を存在させることが好ましい。微細空隙を有する層としては、内部に微細空隙を有するプラスチックフィルムや合成紙を用いることが出来る。微細空隙を有するプラスチックフィルム又は合成紙を使用する場合は、ポリオレフィン、特にポリプロピレンを主体として、それに無機顔料及び/又はポリプロピレンと非相溶なポリマーをブレンドし、これらをボイド(空隙)形成開始剤として用い、これらの混合物を延伸、成膜したプラスチックフィルム又は合成紙が好ましい。これらがポリエステル等を主体としたものの場合には、その粘弾性的あるいは熱的性質から、クッション性、及び断熱性が、ポリプロピレンを主体としたものに比較して劣るため、印字感度に劣り、濃度ムラなども生じやすい。
【0061】
これらの点を考慮すると、プラスチックフィルム及び合成紙の20℃における弾性率は5×108Pa〜1×1010Paが好ましい。また、これらのプラスチックフィルムや合成紙は、通常、2軸延伸により成膜されたものであるが故に、これらは加熱により収縮する。これらを110℃下で60秒放置した場合の収縮率は0.5〜2.5%である。
【0062】
上述のプラスチックフィルムや合成紙は、それ自体が、微細空隙を含む層の単層であっても良いし、複数の層構成であっても良い。複数の層構成の場合には、その構成する全ての層に微細空隙を含有しても良いし、微細空隙が存在しない層が含有しても良い。このプラスチックフィルムや合成紙には、必要に応じて隠蔽剤として、白色顔料を混入させてもよい。又、白色性を増すために、蛍光増白剤等の添加剤を含有させても良い。微細空隙を有する層は、30〜80μmの厚みが好ましい。
【0063】
また、必要に応じて、基材の受像層を設ける側とは反対側の面に、カール防止の目的として、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト等の樹脂や合成紙の層を設けることが出来る。貼り合わせ方法としては、例えば、ドライラミネーション、ノンソルベント(ホットメルト)ラミネーション、ECラミネーション法等の公知の積層方法が使用できるが、好ましい方法はドライラミネーション及びノンソルベントラミネーション法である。ノンソルベントラミネーション法に好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業(株)製のタケネート720L等が挙げられ、ドライラミネーションに好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業(株)製のタケラックA969/タケネートA−5(3/1)、昭和高分子(株)製の、ポリゾール PSA SE−1400、ビニロール PSA AV−6200シリーズ等が挙げられる。これらの接着剤の使用量としては、固形分で約1〜8g/m2、好ましくは2〜6g/m2の範囲である。
【0064】
上述したような、プラスチックフィルムと合成紙、或いはそれら同士、或いは各種紙とプラスチックフィルムや合成紙、等を積層する場合、接着層により貼り合わせることが出来る。
【0065】
上記基材と断熱層もしくは染料受容層との接着強度を大きくする等の目的で、基材の表面に各種プライマー処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0066】
上記説明した各基材の中でも、本発明で好ましく用いられる基材は、紙の両面あるいは片面をプラスチック樹脂で被覆した厚み50〜300μmの樹脂コート紙であり、さらに好ましいのは紙の両面あるいは片面をポリオレフィン樹脂で被覆した厚み50〜300μmの樹脂コート紙である。
【0067】
以下、本発明で特に好ましい支持体である紙の両面あるいは片面をポリオレフィン樹脂で被覆した樹脂コート紙について説明する。
【0068】
本発明に係る樹脂コート紙で用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/またはLDPの比率は10〜70%が好ましい。上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0069】
紙中には、例えば、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0070】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0071】
紙の坪量は50〜300gが好ましく、特に、70〜250gが好ましい。紙の厚さは50〜300μmが好ましい。
【0072】
紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0073】
紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0074】
紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、pH5〜9であることが好ましい。
【0075】
次に、この紙の両面あるいは片面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0076】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。紙表面及び/または裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0077】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0078】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い着色顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0079】
着色顔料としては、例えば、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。
【0080】
蛍光増白剤としては、例えば、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0081】
紙の両面を被覆する場合、表裏のポリエチレンの使用量は、染料受容層側の全層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さは染料受容層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率は染料受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリエチレンの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0082】
更に、上記ポリエチレンで被覆紙支持体は、以下の(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0083】
(1)引っ張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nであることが好ましい
(2)引き裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nが好ましい
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2が好ましい
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2であることが好ましい
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%が好ましい
(8)染料受容層を設ける光沢度(75度鏡面光沢度)は10〜90%が好ましい。
【0084】
(断熱層)
本発明の熱転写受像シートにおいては、基材上に断熱機能を有する層を設けることも、好ましい態様である。断熱機能を持たせる方法としては、上記基材の項で触れたような微細空隙を有するポリオレフィン系のフィルムを紙に貼合した合成紙を用いる方法や、紙の両面あるいは片面をプラスチック樹脂で被覆した厚み50〜300μmの樹脂コート紙などの基材上に、塗布方式で空隙層を形成させる方法などが好ましく用いられる。後者の塗布方式で空隙層を形成させる方法としては、無機微粒子や中空粒子を添加したり、塗布液自体を機械的攪拌により発泡させた後に塗布するなどの方法から、適宜選択/併用できる。
【0085】
無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタニア(二酸化チタン)、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができるが、コストパフォーマンスの観点から、シリカ、アルミナまたはチタニア、あるいはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0086】
上記無機微粒子の形状は、本発明では特に制約を受けず、球状、棒状、針状、平板状、数珠状、中空状、多孔状のいずれであっても良いし、これらの組み合わせでも構わない。
【0087】
また、無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、断熱機能の高い多孔質構造を形成し易いという観点から、3〜100nmであることが好ましい。
【0088】
無機微粒子の添加量は、一般的に、受像シート1m2あたり通常3〜30g、好ましくは5〜25gである。また、無機微粒子と先に記載のバインダーの比率としては、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜12:1であることが好ましい。
【0089】
また、この手段を用いての断熱層形成の際は、断熱層の空隙率は40%以上に調整することが好ましく、更には40〜95%の範囲に調整することが好ましい。空隙率が40%未満では断熱/クッションの機能が十分発現されず、また、95%を越えても断熱効果は高まらず、機械的強度の劣化が顕在してくる。ここでいう空隙率とは、断熱層の体積における空隙の総体積の比率であり、その層の構成物の総体積と層の厚みから計算することができる。空隙率は、選択する無機微粒子、バインダーの種類によって、またはその他の添加剤の量によって適宜調節することができる。
【0090】
断熱機能を持たせる別の方法としては、中空粒子を含有する方法も好ましく用いられる。一般に中空粒子としては、粒子内部の液体が加熱により揮発して中空になるタイプ、あるいは加熱する前から既に中空になっているタイプ、粒子内部の液体が気化膨張して中空になるタイプなどが知られており、本発明に係わる中空粒子はいずれのタイプも用いることはできる。但し、優れた平滑性を持たせる観点からは、気化膨張によって中空になるタイプ以外のものを用いることが好ましい。本発明に用いる中空粒子の平均粒径は、断熱機能、平滑性の観点から0.1μm〜5.0μmであることが好ましく、0.3μm〜3.0μmであることが更に好ましい。本発明の断熱層に使用する中空粒子の中空体積比率は30%以上が好ましい。中空体積比率が30%未満のものでは、断熱機能が不十分であり、高い印画濃度が得られない。また、断熱層における中空粒子含有率は、65質量%〜90質量%であることが好ましい。65質量%未満では気泡含有率が低下し十分な断熱効果が発揮できない。また、90質量%より高い比率では、粒子同士の決着性が弱く、十分な塗膜強度が得られなかったり、局所的な粒子凝集で平滑性が乱れ印画ムラに繋がる可能性が高くなる。中空粒子を含有する断熱層内には、隠蔽性や白色性を付与するために、また、熱転写受像シートの質感を調整するために、無機顔料として、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、酸化チタン、酸化亜鉛、その他公知の無機顔料や蛍光増白剤を含有させてもよい。
【0091】
断熱機能を持たせる更に別の方法としては、例えば、特開平11−301124号公報に開示されているような塗布液を機械的撹拌等の物理的手段によって発泡させる方法が用いられる。
【0092】
次に、断熱層を形成する上で使用するバインダーについて説明する。
【0093】
本発明に係る断熱層で用いることのできるバインダーは、親水性であっても疎水性であってもよいし、これらの併用であっても構わないが、水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂または親水性バインダーであることが好ましい。
【0094】
本発明に係る断熱層に用いられる親水性バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平7−195826号公報及び同7−9757号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭62−245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等が単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。本発明で好ましく用いられる親水性バインダーは、ポリビニルアルコールおよび/またはゼラチンである。
【0095】
上記ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を置換したシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0096】
併用するポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられ、ケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものが特に好ましい。
【0097】
本発明の熱転写受像シートにおいては、硬膜剤を含有することも好ましい態様である。硬膜剤は、熱転写受像シート作製の任意の時期に添加することができ、例えば、断熱層形成用の塗布液に添加することができる。
【0098】
本発明で用いることのできる硬膜剤としては、バインダーと硬膜反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩、エポキシ系硬膜剤が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0099】
上記硬膜剤の総使用量は、上記バインダー1g当たり1〜1000mgが好ましい。また、バインダーに対する供給量としては、上記バインダー1g当たり100〜1000mgが好ましい。
【0100】
(中間層)
本発明においては、基材上に、断熱層と受像層の間に、中間層を設けることが好ましい。
【0101】
本発明に係る中間層の機能としては、耐溶剤性能、バリア性能、接着性能、白色付与能、隠蔽性能、帯電防止機能等が挙げられるが、これらに限定されることなく、従来公知の中間層全てが適用できる。
【0102】
中間層に耐溶剤性能、バリア性能を付与させるためには、水溶性樹脂を用いることが好ましい。水溶性樹脂としては、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂、でんぷん等の多糖類系樹脂、カゼイン等の蛋白質、ゼラチン、寒天、また、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体(例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製ベオパ)、酢酸ビニル(メタ)アクリル共重合体、(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル共重合体、スチレン樹脂等のビニル系樹脂、また、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。ここで言う水溶性樹脂とは、水を主体とする溶媒に、完全溶解(粒径0.01μm以下)、またはコロイダルディスパージョン(0.01〜0.1μm)、またはエマルジョン(0.1〜1μm)、またはスラリー(1μm以上)の状態になる樹脂のことである。これらの水溶性樹脂のなかで、特に好ましいのは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等の汎用溶剤により、溶解はもとより、膨潤さえしない樹脂である。この意味で、水を主体とする溶媒に完全に溶解する樹脂が最も好ましい。特に、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂が挙げられる。
【0103】
中間層に接着性能をもたせるためには、基材シートの種類やその表面処理により異なるが、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が一般的である。また、活性水素を有する熱可塑性樹脂とイソシアネート化合物のような硬化剤を併用すると良好な接着性が得られる。中間層に白色付与能をもたせるためには、蛍光増白剤を用いることができる。使用する蛍光増白剤は、従来公知のいずれの化合物でも使用でき、スチルベン系、ジスチルベン系、ベンゾオキサゾール系、スチリル−オキサゾール系、ピレン−オキサゾール系、クマリン系、アミノクマリン系、イミダゾール系、ベンゾイミダゾール系、ピラゾリン系、ジスチリル−ビフェニル系の蛍光増白剤等が挙げられる。白色度は、これら蛍光増白剤の種類と添加量で調整することができる。蛍光増白剤の添加方法としては、あらゆる方法を用いることができる。すなわち、水に溶解させて添加する方法、ボールミル、コロイドミルによって粉砕分散して添加する方法、高沸点溶媒に溶解して親水性コロイド溶液と混合し、水中油滴型分散物として添加する方法、高分子ラテックス中に含浸させて添加する方法等がある。
【0104】
更に、基材シートのギラつき感や、ムラを隠蔽するために、中間層に酸化チタンを添加してもよい。更に、酸化チタンを用いることで基材シートの選択の自由度が広がる点で好ましい。酸化チタンには、ルチル型酸化チタンと、アナターゼ型酸化チタンの2種類があるが、白色度及び蛍光増白剤の効果を考慮すると、ルチル型よりも紫外部の吸収がより短波長側であるアナターゼ型酸化チタンが好ましい。中間層のバインダー樹脂が水系で、酸化チタンが分散しにくい場合には、表面に親水性処理を施した酸化チタンを用いるか、もしくは、界面活性剤、エチレングリコール等の既知の分散剤により分散することができる。酸化チタンの添加量は、樹脂固形分100質量部に対して酸化チタン固形分として10〜400質量部が好ましい。
【0105】
中間層に帯電防止機能をもたせるためには、導電性無機フィラーや、ポリアニリンスルホン酸のような有機導電材等、従来公知の導電材料を中間層バインダー樹脂に合わせて適宜選択して使用することができる。このような中間層の厚みは、0.1〜10μm程度の範囲で設定することが好ましい。
【0106】
〔塗布方法〕
本発明の熱転写受像シートの製造方法においては、少なくとも受像層が水系塗布方式により形成されることを特徴とするが、必要に応じて適宜設けられるその他の構成層は、公知の塗布方法から適宜選択して形成することができる。但し、作業環境的に非常に安全性が高くかつ安価に製造できるという点で、断熱層、中間層等、基材上の受像層側にある層全てが水系で塗布されることが好ましく、また、生産効率上、これらの層が同時重層塗布されることがより好ましい。本発明に係る受像層が2層以上からなる熱転写受像シートの場合も、同様の理由により、少なくとも複数の受像層の全てを同時重層塗布で形成することが好ましい。
【0107】
上記で規定する塗布形態を採ることにより、均一性が高く、平滑性に優れた塗膜を形成することができる。
【0108】
本発明において用いることのできる塗布方式としては、特に制限はないが、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0109】
本発明に用いられる受像層の塗布液粘度特性として、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上であることを特徴とするが、40℃における粘度V1としては、10mPa・s以上、200mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは20mPa・s以上、150mPa・s以下である。また、温度間での粘度比(粘度V2/粘度V1)は50倍以上、3000倍以下であることが好ましく、より好ましくは100倍以上、1500倍以下である
なお、本発明でいう受像層の粘度(液体粘性率)は、JIS Z 8809に規定されている粘度計校正用標準液で検定されたものであれば特に制限はなく、回転式、振動式や細管式の粘度計を用いることができる。粘度計としては、Saybolt粘度計、Redwood粘度計等で測定でき、例えば、トキメック社製、円錐平板型E型粘度計、東機産業社製のE Type Viscometer(回転粘度計)、東京計器社製のB型粘度計BL、山一電機社製のFVM−80A、Nametore工業社製のViscoliner、山一電気社製のVISCO MATE MODEL VM−1A等を挙げることができる。
【0110】
本発明に用いられる塗布液の粘度は、40℃において200mPa・s以下であることが必要であり、その粘度条件とすることにより、作業性が良好で高速塗布が可能となる。上記の範囲を超える粘度では、特別な塗布装置を備えなければならず、また塗布液流量制御が非常に困難となるため、均一な塗布ができないという問題が生じる。
【0111】
また、高速塗布を実現させる観点からは、急速な乾燥が必要となるが、乾燥は、通常、温度調整した風を吹き付ける方法が効率的で好ましく用いられており、この際、乾燥風によって塗布液が局所的に移動し、液ヨリが起こり、不均一な塗布膜面とならないよう送風条件を最適化する必要がある。
【0112】
本発明の熱転写受像シートの製造方法においては、受容層の支持体への塗布が開始されたから上記乾燥を行う前の任意の時期に、セット工程を設けることを特徴とする。
【0113】
本発明でいうセット工程とは、例えば、冷風等を支持体上の塗膜面に吹き付けて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め、各層間及び各層内の物質流動性を鈍化させるゲル化促進の工程をいう。冷風を用いる場合の温度条件としては、25℃以下が好ましく、10℃以下であることが更に好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗布搬送速度にもよるが、10秒以上、120秒以下であることが好ましい。塗布液のセット性を高める手段としては、塗布液中でのバインダー質量比率を高める方法の他に、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ジェランガム等の各種ゲル化剤を添加する方法が好ましく用いられる。
【0114】
このセット工程をスムーズに進行させる上で、本発明に係る受像層塗布液の15℃での粘度は、40℃での塗布液粘度の20倍以上であることが必要であり、塗布膜面の均一性をさらに高める意味で50倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。20倍未満の場合、塗布試料がセット工程通過時間中に十分ゲル化せず乾燥工程に入るため、塗膜均一性が劣化し十分な剥離効果が得られない。
【0115】
本発明の熱転写受像シートにおいては、少なくとも2層を同時重層塗布することが好ましい態様であるが、最下層を形成する塗布液粘度をη1、該最下層を除く構成層の塗布液粘度をη2とした時、η2>η1の関係を満足する条件で塗布を行うことが、均一、均質な塗膜形成の点で好ましい。
【0116】
上記で規定する条件において、η2とη1の粘度差としては、塗布液温度が40℃の時に、少なくとも2mPa・s以上であり、好ましくは5mPa・s以上である。塗布液粘度の絶対値としては、最下層では200mPa・s以下、その他の層では15mPa・s以上、200mPa・s以下であることが好ましい。塗布液温度としては、25℃〜90℃であることが好ましく、30℃〜80℃であることが更に好ましい。
【0117】
本発明において、上記で規定する粘度条件を達成する方法としては、例えば、各塗布液の粘度を、従来公知の増粘剤、例えば、スチレンとマレイン酸ナトリウム塩コポリマーを主成分とする水溶性増粘剤、あるいは他性能に影響のない範囲での無機塩類の添加等により、容易に調整できる。
【0118】
次いで、画像形成の際に、本発明の熱転写受像シートと共に用いられる熱転写インクシートについて説明する。
【0119】
《熱転写インクシート》
(基材シート)
本発明において、熱転写インクシートに使用される基材シートとしては、従来より熱転写インクシートの基材シートとして公知の材料を用いることができる。好ましい基材シートの具体例は、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙などの薄紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレンの誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等のプラスチックの延伸あるいは未延伸フィルムや、これらの材料を積層したものが挙げられる。この基材シートの厚さは、強度及び耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0120】
また、基材シートの表面に形成するインク層との密着が乏しい場合には、その表面にプライマー処理や、コロナ処理を施すことが好ましい。
【0121】
(インク層、色素)
本発明において、熱転写インクシートを構成するインク層は、少なくとも色素とバインダー樹脂を含有する熱昇華性色材層である。本発明に係るインク層に使用される色素は、1種のみでも2種以上を併用しても良い。
【0122】
以下に、本発明で用いることのできる色素について説明する。
【0123】
本発明において、熱転写インクシートで用いる色素含有領域は、色相において異なる2以上の色素含有領域とすることができ、例えば、色素含有領域がイエロー色素を含有する領域、マゼンタ色素を含有する領域、及びシアン色素を含有する領域からなり、これらの色素含有領域の次に色素不含有領域が形成された態様、色素含有領域が黒色色素を含有するインク層からなり、該領域の次に色素不含有領域が形成された態様、及び色素含有領域がイエロー色素を含有する領域、マゼンタ色素を含有する領域、シアン色素を含有する領域及び黒色色素を含有する領域からなり、これらの色素含有領域の次に色素不含有領域が形成された態様等が挙げられる。
【0124】
熱昇華性色素層に用いられる色素は、従来公知の感熱昇華転写方式の熱転写インクシートに使用される、アゾ系、アゾメチン系、メチン系、アントラキノン系、キノフタロン系、ナフトキノン系等のあらゆる色素を挙げることができ、特に制限はされない。具体的には、黄色色素として、ホロンブリリアントイエロー6GL、PTY−52、マクロレックスイエロー6G等が挙げられ、赤色色素としてMSレッドG、マクロレックスレッドバイオレットR、セレスレッド7B、サマロンレッドHBSL、SKルビンSEGL等が挙げられ、さらに、青色色素として、カヤセットブルー714、ワクソリンブルーAP−FW、ホロンブリリアントブルーS−R、MSブルー100、ダイトーブルーNo.1等が挙げられる。
【0125】
次に、前記したポストキレート型昇華画像形成に用いられるキレート色素について説明する。
【0126】
はじめに、キレートシアン色素について説明する。
【0127】
キレートシアン色素としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0128】
【化1】

【0129】
上記一般式(1)において、R11、R12及びR13は各々非芳香族炭化水素基を表し、R11、R12及びR13は同じでも異なっていてもよく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基などを挙げることができ、これらのアルキル基に置換しうる基としては、直鎖あるいは分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ドデシル基、及び1−ヘキシルノニル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、及びアダマンチル基等)、及びアルケニル基(例えば、2−プロピレン基、オレイル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、オルト−トリル基、オルト−アニシル基、1−ナフチル基、9−アントラニル基等)、複素環基(例えば、2−テトラヒドロフリル基、2−チオフェニル基、4−イミダゾリル基、2−ピリジル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボニル基(例えば、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル基等のアリールカルボニル基等)、オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基、及び2−ピリジルオキシカルボニル基、1−フェニルピラゾリル−5−オキシカルボニル基などの複素環オキシカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、ジメチルカルバモイル基、4−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)ブチルアミノカルボニル基等のアルキルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、1−ナフチルカルバモイル基等のアリールカルバモイル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、2−エトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ基、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ基等)、複素環オキシ基(例えば、4−ピリジルオキシ基、2−ヘキサヒドロピラニルオキシ基等)、カルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基等)、ウレタン基(例えば、N,N−ジメチルウレタン基等のアルキルウレタン基、N−フェニルウレタン基、N−(p−シアノフェニル)ウレタン基等のアリールウレタン基等)、スルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、n−ドデカンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−ドデシルアミノ基等のアルキルアミノ基、アニリノ基、p−t−オクチルアニリノ基等のアリールアミノ基等)、スルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、ヘプタフルオロプロパンスルホニルアミノ基、n−ヘキサデシルスルホニルアミノ基等のアルキルスルホニルアミノ基、p−トルエンスルホニルアミノ基、ペンタフルオロベンゼンスルホニルアミノ等のアリールスルホニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジメチルスルファモイルアミノ基等のアルキルスルファモイルアミノ基、N−フェニルスルファモイルアミノ基等のアリールスルファモイルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ミリストイルアミノ基等のアルキルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等アリールカルボニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、N,N−ジメチルアミノウレイド基等のアルキルウレイド基、N−フェニルウレイド基、N−(p−シアノフェニル)ウレイド基等のアリールウレイド基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等のアルキルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等のアリールスルホニル基等)、スルファモイル基(例えば、ジメチルスルファモイル基、4−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)ブチルアミノスルホニル基等のアルキルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基等のアリールスルファモイル基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、t−オクチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−チオ基、5−メチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−チオ基等)等が挙げられる。
【0130】
シクロアルキル基、アルケニル基の例としては、上記アルキル基の置換基として挙げたものが挙げられる。また、アルキニル基の例としては、1−プロピン、2−ブチン、1−ヘキシン等が挙げられる。
【0131】
11、R12は結合して非芳香族性の環状構造(例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等)を形成することも好ましい。
【0132】
13は上記非芳香族炭化水素の中でもアルキル基、シクロアルキル基が好ましい。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合、複数のR13は同じでも異なっていてもよい。
【0133】
14はアルキル基であり、その例としては、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ドデシル基、及び1−ヘキシルノニル基等が挙げられる。R14は好ましくは2級または3級アルキル基であり、好ましい2級または3級のアルキル基の例としてはイソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3−ヘプチル基などが挙げられる。R14として最も好ましい置換基はイソプロピル基、tert−ブチル基である。R14のアルキル基は、置換されていても良いが、すべて炭素原子と水素原子からなる置換基で置換されており。その他の原子を含む置換基で置換されるものではない。
【0134】
15はアルキル基であり、その例としては、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ドデシル基、1−ヘキシルノニル基等が挙げられる。R15は好ましくは2級または3級アルキル基であり、好ましい2級または3級のアルキル基の例としてはイソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3−ヘプチル基などが挙げられる。R15として最も好ましい置換基はイソプロピル基、tert−ブチル基である。R15のアルキル基は、置換されていても良いが、すべて炭素原子と水素原子からなる置換基で置換されており。その他の原子を含む置換基で置換されるものではない。
【0135】
16はアルキル基を表し、その例としてはn−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3−ヘプチル基などが挙げられる。R16として特に好ましい置換基は、炭素数3以上の直鎖のアルキル基であり、その例としてはn−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基であり、最も好ましくはn−プロピル基、n−ブチル基である。なお、R16のアルキル基は、置換されていても良いが、すべて炭素原子と水素原子からなる置換基で置換されており、その他の原子を含む置換基で置換されるものではない。
【0136】
次いで、キレートイエロー色素について説明する。
【0137】
キレートイエロー色素としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0138】
【化2】

【0139】
上記一般式(2)において、R1及びR2は置換基を表し、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(炭素数1〜12のアルキル基で、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはカルボニル基で連結する置換基が置換するか、またはアリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基もしくはハロゲン原子が置換していてもよい。例えば、メチル、イソプロピル、t−ブチル、トリフルオロメチル、メトキシメチル、2−メタンスルホニルエチル、2−メタンスルホンアミドエチル等の各基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、3−ニトロフェニル、3−アシルアミノフェニル、2−メトキシフェニル等の各基)、シアノ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、ホスホニル基、アシル基等が挙げられる。
【0140】
3で表されるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基としては、R1及びR2で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基と同じものを挙げることができる。
【0141】
1で表される2個の炭素原子と共に構成される5〜6員の芳香族環としては、具体的には、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾールなどの環を挙げることができ、これらの環は更に他の芳香族環と縮合環を形成してもよい。これらの環上には置換基を有していてもよく、該置換基としてはR1及びR2で表される置換基と同じものを挙げることができる。
【0142】
次いで、キレートマゼンタ色素について説明する。
【0143】
キレートマゼンタ色素としては、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0144】
【化3】

【0145】
上記一般式(3)において、Xは少なくとも2座のキレート形成可能な基または原子の集まりを表し、Yは5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または複素環を形成する原子の集まりを表し、R1、R2は各々水素原子または1価の置換基を表す。nは0、1、2を表す。
【0146】
Xとして特に好ましくは、下記一般式(4)で表される基である。
【0147】
【化4】

【0148】
上記一般式(4)において、Z2は少くとも一つのキレート化可能な窒素原子を含む基で置換された芳香族性含窒素複素環を形成するに必要な原子群を表す。これらの環は、更に他の炭素環(ベンゼン環等)や複素環(ピリジン環等)と縮合環を形成しても良い。
【0149】
上記一般式(3)において、Xは少なくとも2座のキレート形成可能な基または原子の集まりを表し、例えば、5−ピラゾロン、ピリジン、ピリミジン、チアゾール、イミダゾール、ピラゾロピロール、ピラゾロピラゾール、ピラゾロイミダゾール、ピラゾロトリアゾール、ピラゾロテトラゾール、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ローダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、オキサゾロン、イソオキサゾロン、インダンジオン、ピラゾリジンジオン、オキサゾリジンジオン、ヒドロキシピリドン、またはピラゾロピリドンが好ましい。
【0150】
Yは5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または複素環を形成する原子の集まりを表し、該環上には更に置換基を有していても良く、縮合環を有していても良い。該環の具体例としては、3H−ピロール環、オキサゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、3H−ピロリジン環、オキサゾリジン環、イミダゾリジン環、チアゾリジン環、3H−インドール環、ベンズオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、ピリジン環等が挙げられる。これらの環は更に他の炭素環(例えば、ベンゼン環)や複素環(例えば、ピリジン環)と縮合環を形成してもよい。環上の置換基としてはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等であり、それらの基は更に置換されていても良い。
【0151】
1、R2は各々水素原子または1価の置換基を表し、1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルアミノ基等が挙げられる。
【0152】
Xは少なくとも2座のキレート形成可能な基または原子の集まりを表し、一般式(3)として色素を形成できるものなら何でもよく、例えば、5−ピラゾロン、イミダゾール、ピラゾロピロール、ピラゾロピラゾール、ピラゾロイミダゾール、ピラゾロトリアゾール、ピラゾロテトラゾール、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ローダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、オキサゾロン、イソオキサゾロン、インダンジオン、ピラゾリジンジオン、オキサゾリジンジオン、ヒドロキシピリドン、またはピラゾロピリドンが好ましい。
【0153】
(バインダー樹脂)
本発明において、インク層は、上記色素と共にバインダー樹脂を含有する。
【0154】
インク層に使用するバインダー樹脂としては、従来公知の感熱昇華転写方式の熱転写インクシートに使用されるバインダー樹脂を使用することができ、例えば、セルロース系、ポリアクリル酸系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系等の水溶性ポリマー、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネイト、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチルセルロース、ニトロセルロース等の有機溶媒に可溶のポリマーを挙げることができる。これらの樹脂の中でも、保存性の優れたポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールあるいはセルロース系樹脂が好ましい。
【0155】
インク層における色素及びバインダー樹脂の含有量は、特に限定されるものではなく、性能上の観点から適宜設定されることが好ましい。
【0156】
本発明に係るインク層には、上記説明した色素とバインダー樹脂の他に、必要に応じて公知の種々の添加剤を含有することができる。インク層は、例えば、適当な溶剤中に上記の色素、バインダー樹脂、その他の添加剤を溶解または分散させて調製したインク塗布液を、グラビアコート法(グラビア塗布法)等の公知の手段により基材シート上に塗布した後、乾燥させることにより形成することができる。本発明に係るインク層の厚みは、0.1〜3.0μm程度、好ましくは0.3〜1.5μm程度とすることができる。
【0157】
(保護層、転写性保護層)
本発明に係る熱転写インクシートにおいては、熱転写性の保護層を備えていることが好ましい。該熱転写性の保護層(保護層、転写性保護層とも言う)は、熱転写受像シート上に熱転写して形成された画像の表面を覆う保護層となる透明な樹脂層からなる。
【0158】
保護層を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、これらの各樹脂のエポキシ変性樹脂、これらの樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等を例示することができる。好ましい樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、エポキシ変性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ジオール成分および酸成分が一種類以上の脂環族化合物を有する脂環族ポリエステル樹脂が好ましい。ポリカーボネイト樹脂としては、芳香族ポリカーボネイト樹脂が好ましく、特開平11−151867号に記載された芳香族ポリカーボネイト樹脂が特に好ましい。
【0159】
エポキシ変性樹脂としては、エポキシ変性ウレタン、エポキシ変性ポリエチレン、エポキシ変性ポリエチレンテレフタレート、エポキシ変性ポリフェニルサルファイト、エポキシ変性セルロース、エポキシ変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリ塩化ビニル、エポキシ変性ポリカーボネイト、エポキシ変性アクリル、エポキシ変性ポリスチレン、エポキシ変性ポリメチルメタクリレート、エポキシ変性シリコーン、エポキシ変性ポリスチレンとエポキシ変性ポリメチルメタクリレートの共重合体、エポキシ変性アクリルとエポキシ変性ポリスチレンの共重合体、エポキシ変性アクリルとエポキシ変性シリコーンの共重合体が挙げられ、好ましくはエポキシ変性アクリル、エポキシ変性ポリスチレン、エポキシ変性ポリメチルメタクリレート、エポキシ変性シリコーンであり、更に好ましくはエポキシ変性ポリスチレンとエポキシ変性ポリメチルメタクリレートの共重合体、エポキシ変性アクリルとエポキシ変性ポリスチレンの共重合体、エポキシ変性アクリルとエポキシ変性シリコーンの共重合体である。
【0160】
〈電離放射線硬化性樹脂〉
熱転写性保護層として電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱転写性保護層に含有することにより、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れている。電離放射線硬化性樹脂としては公知のものを使用することができ、例えば、ラジカル重合性のポリマーまたはオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを使用することができる。
【0161】
〈紫外線遮断性樹脂〉
紫外線遮断性樹脂を含有する保護層は、印画物に耐光性を付与することを主目的とする。紫外線遮断性樹脂としては、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂または上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系のような従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基等)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものを例示することができる。
【0162】
上記のごとき単層構造の熱転写性保護層または多層構造の熱転写性保護層中に設けられた主保護層は、保護層形成用樹脂の種類にもよるが、通常は0.5〜10μm程度の厚さに形成する。
【0163】
本発明において、熱転写性の保護層は、基材シート上に非転写性の離型層を介して設けることが好ましい。
【0164】
非転写性離型層は、基材シートと非転写性離型層との間の接着力を、非転写性離型層と熱転写性保護層との間の接着力よりも常に充分高くし、且つ、熱を印加する前の非転写性離型層と熱転写性保護層との間の接着力が、熱印加後のそれに対し高くなるようにする目的で、(1)樹脂バインダーと共に、平均粒子径が40nm以下の無機微粒子を30〜80質量%含有しているか、(2)アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、その誘導体、或いはそれらの混合物を合計20質量%以上の割合で含有しているか、或いは(3)アイオノマーを20質量%以上の割合で含有している、ことが好ましい。非転写性離型層には、必要に応じて他の添加物が含有されていてもよい。
【0165】
無機微粒子としては、例えば、無水シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ微粒子や、酸化錫、酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛等の金属酸化物を使用することができる。無機微粒子の粒子径は、保護層の透明性の観点から、40nm以下とすることが好ましい。
【0166】
無機微粒子と混合する樹脂バインダーは特に制限されず、混合可能なあらゆる樹脂を用いることができる。例えば、各種ケン化度のポリビニルアルコール樹脂(PVA);ポリビニルアセタール樹脂;ポリビニルブチラール樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;酢酸セルロース、アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。
【0167】
無機微粒子と樹脂バインダーを主体とする他の配合成分との配合比(無機微粒子/他の配合成分)は、膜形成の観点から、質量比で30/70以上、80/20以下の範囲とすることが好ましい。
【0168】
アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体またはその誘導体としては、例えば、アルキルビニルエーテル部分のアルキル基がメチル基或いはエチル基であるもの、無水マレイン酸部分が部分的にまたは完全にアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等)とのハーフエステルとなったものを用いることができる。
【0169】
離型層は、アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、その誘導体、或いはそれらの混合物だけで形成しても良いが、離型層と保護層の間の剥離力を調整する目的で、他の樹脂または微粒子をさらに加えても良い。その場合、離型層には、アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、その誘導体、或いはそれらの混合物が20質量%以上含有されているのが望ましい。
【0170】
アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体またはその誘導体に配合される樹脂または微粒子としては、混合可能で、被膜形成時に高い膜透明性が得られるもので有れば特に限定されず、あらゆる材料を用いることができる。例えば、前述の無機微粒子及び無機微粒子と混合可能な樹脂バインダーは好ましく用いられる。
【0171】
アイオノマーとしては、例えば、サーリンA(デュポン社製)や、ケミパールSシリーズ(三井石油化学社製)等を使用することができる。また、アイオノマーには、例えば、前述の無機微粒子、無機微粒子と混合可能な樹脂バインダー、或いはその他の樹脂や微粒子をさらに加えることができる。
【0172】
非転写性離型層を形成するには、上記(1)〜(3)のいずれかの成分を所定の配合割合で含有する塗布液を調製し、かかる塗布液を、グラビアコート法(グラビア塗布法)、グラビアリバースコート法のような公知の技術で基材シート上に塗布し、塗布層を乾燥させる。非転写性離型層の厚みは、通常、乾燥後の厚みで0.1〜2μm程度とする。
【0173】
非転写性離型層を介して、あるいは介さずに基材シート上に積層される熱転写性保護層は、多層構造をとっていてもよいし、単層構造をとっていてもよい。多層構造をとる場合には、画像に各種の耐久性を付与するための主体となる主保護層の他、熱転写性保護層と印画物の受像面との接着性を高めるために、熱転写性保護層の最表面に配置される接着層や、補助的な保護層や、保護層本来の機能以外の機能を付加するための層(例えば、偽造防止層、ホログラム層等)が設けられてもよい。主保護層とその他の層の順序は任意であるが、通常は、転写後に主保護層が受像面の最表面となるように、接着層と主保護層との間に他の層を配置する。
【0174】
熱転写性保護層の最表面には接着層が形成されていても良い。接着層は、例えばアクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のような加熱時接着性の良好な樹脂で形成することができる。また、上記樹脂に加え、上述した電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂などを必要に応じて混合してもよい。接着層の厚さは、通常0.1〜5μmとする。
【0175】
非転写性離型層上あるいは基材シート上に熱転写性保護層を形成するには、例えば、保護層形成用樹脂を含有する保護層用塗布液、熱接着性樹脂を含有する接着層用塗布液、その他必要に応じて付加される層を形成するための塗布液をあらかじめ調製し、それらを所定の順序で非転写性離型層上あるいは基材シート上に塗布し、乾燥させる。各塗布液は従来公知の方法で塗布すればよい。また、各層の間には適切なプライマー層を設けても良い。
【0176】
〈紫外線吸収剤〉
熱転写性保護層の少なくとも1層に、紫外線吸収剤が含有されていることが好ましいが、透明樹脂層に含有させた場合、保護層転写後は透明樹脂層が印画物の最表面に存在するため、長期間の間に環境などの影響を受け経時的にその効果が低下することから、特に好ましくは、感熱接着剤層に含有させる。
【0177】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が挙げられ、例えば、Tinuvin P、Tinuvin 234、Tinuvin 320、Tinuvin 326、Tinuvin 327、Tinuvin 328、Tinuvin 312、Tinuvin 315(以上、チバガイギー社製)、Sumisorb−110、Sumisorb−130、Sumisorb−140、Sumisorb−200、Sumisorb−250、Sumisorb−300、Sumisorb−320、Sumisorb−340、Sumisorb−350、Sumisorb−400(以上、住友化学工業(株)製)、Mark LA−32、Mark LA−36、Mark 1413(以上、アデカアーガス化学(株)製)等の商品名で市販品として入手でき、いずれも本発明で使用することができる。
【0178】
また、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合したTg60℃以上、好ましくは80℃以上のランダム共重合体を用いることもできる。
【0179】
上記の反応性紫外線吸収剤は、従来公知のサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、或いは、アルコール系水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。具体的には、UVA635L、UVA633L(以上、BASFジャパン(株)製)、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等の商品名で市場から入手でき、何れも本発明で使用することができる。
【0180】
以上のような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体における反応性紫外線吸収剤の量は10〜90質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲である。また、このようなランダム共重合体の分子量は5000〜250000程度、好ましくは9000〜30000程度とすることができる。上述した紫外線吸収剤、及び、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体は、各々単独で含有させても良いし、両方を含有させても良い。反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体の添加量は、含有させる層に対し5〜50質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0181】
もちろん紫外線吸収剤以外にも他の耐光化剤を含有させても良い。ここで耐光化剤とは、光エネルギー、熱エネルギー、酸化作用など、色素を変質あるいは分解する作用を吸収または遮断して色素の変質や分解を防止する薬剤であり、具体的には上述した紫外線防止剤の他、従来合成樹脂の添加剤などとして知られている光安定剤等が挙げられる。その場合も、熱転写性保護層の少なくとも1層、即ち前記剥離層、透明樹脂層、感熱接着層のうち少なくとも1層に含有させてよいが、特に好ましくは、感熱接着剤層に含有させる。
【0182】
上記の紫外線吸収剤を含む、耐光化剤の使用量は特に限定されないが、耐光化剤としての効果及び経済性の観点から、好ましくは含有させる層を形成する樹脂100質量部当たり0.05〜10質量部、好ましくは3〜10質量部の割合で使用する。
【0183】
また、上記の耐光化剤の他にも、例えば、蛍光増白剤、充填剤等の各種の添加剤も同時に接着剤層に適当な量で添加することができる。
【0184】
保護層転写シートの透明樹脂層は、基材シート上に単独で設けても良いし、熱転写インクシートの色素層と面順次に設けても良い。
【0185】
(耐熱滑性層)
本発明に係る熱転写インクシートにおいて、色素層とは基材シートを挟んで反対側の面に耐熱滑性層を設けることが好ましい。
【0186】
耐熱滑性層は、サーマルヘッド等の加熱デバイスと基材シートとの熱融着を防止し、走行を滑らかに行うとともに、サーマルヘッドの付着物を除去する目的で設けられる。
【0187】
この耐熱滑性層に用いる樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリルースチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性またはフッ素変性ウレタン等の天然または合成樹脂の単体または混合物が用いられる。耐熱滑性層の耐熱性をより高めるために、上記の樹脂のうち、水酸基系の反応性基を有している樹脂を使用し、架橋剤としてポリイソシアネート等を併用して、架橋樹脂層とすることが好ましい。
【0188】
更に、サーマルヘッドとの摺動性を付与するために、耐熱滑性層に固形あるいは液状の離型剤または滑剤を加えて耐熱滑性をもたせてもよい。離型剤または滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属石鹸、有機カルボン酸及びその誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を用いることができる。耐熱滑性層に含有される滑剤の量は5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%程度である。このような耐熱滑性層の厚みは0.1〜10μm程度、好ましくは0.3〜5μm程度とすることができる。
【実施例】
【0189】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0190】
実施例1
《熱転写受像シートの作製》
〔熱転写受像シート1の作製:比較例〕
特開平05−193279号の実施例1に記載されている染料熱転写画像受容シートの作製方法と全く同じ方法で熱転写受像シート1を作製した。
【0191】
〔熱転写受像シート2の作製:比較例〕
特開2001−30639号の実施例4に記載されている熱転写受像シートの作製方法と全く同様に熱転写受像シート2を作製した。
【0192】
〔熱転写受像シート3の作製:比較例〕
特開平11−291644号の実施例5に記載されている印画紙の作製方法と全く同様に熱転写受像シート3を作製した。
【0193】
〔熱転写受像シート4の作製:比較例〕
基材シートとして、厚みが150μmの合成紙(王子油化合成紙(株)製のユポFPG−150)の一方の面に、下記の中間層塗布液1をワイヤーバーコーティング方式にて塗布し、120℃で1分間乾燥させ、乾燥固形分量が1.5g/m2の中間層を形成した。
【0194】
(中間層塗布液1)
水溶性ウレタン(大日本インキ社製ハイドランAP−40 固形分率22.8%)
12質量部
ポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA203 固形分率14%)2.2質量部
針状TiO2(石原産業製 FTL100) 2.9質量部
純水 82.9質量部
次いで、上記中間層上に、下記の組成からなる受像層塗布液1をワイヤーバーコーティング方式にて、乾燥固形分量が3g/m2になるように塗布した後、110℃にて1分間乾燥して、熱転写受像シート4を得た。
【0195】
(受像層塗布液1)
水分散性ポリエステル(東洋紡社製、MD−1335、固形分率30質量%)
16質量部
ポリエーテル変性シリコーン(信越シリコーン社製 KF−6004)0.5質量部
純水 83.5質量部
〔熱転写受像シート5の作製:比較例〕
上記熱転写受像シート4の作製において、受像層塗布液1に代えて、下記組成の受像層塗布液2を用いた以外は同様にして、熱転写受像シート5を得た。
【0196】
(受像層塗布液2)
水分散性ポリエステル(東洋紡社製、MD−1335、固形分率30質量%)
16質量部
アルカリ処理ゼラチン 0.2質量部
ポリエーテル変性シリコーン(信越シリコーン社製 KF−6004)0.5質量部
純水 83.3質量部
〔熱転写受像シート6の作製:本発明〕
上記熱転写受像シート4の作製において、受像層塗布液1に代えて、下記組成の受像層塗布液3を用いた以外は同様にして、熱転写受像シート6を得た。
【0197】
(受像層塗布液3)
水分散性ポリエステル(東洋紡社製、MD−1335、固形分率30質量%)
16質量部
アルカリ処理ゼラチン 1.7質量部
ポリエーテル変性シリコーン(信越シリコーン社製 KF−6004)0.5質量部
純水 81.8質量部
〔熱転写受像シート7の作製:本発明〕
上記熱転写受像シート4の作製において、中間層までは同様に形成した後、下記の組成からなる受像層塗布液4(下層塗布液)及び受像層塗布液5(上層塗布液)を、スライドホッパー方式の多層塗布装置を用いて2層同時重層塗布を行い、その後、5℃の冷風を1分間塗布面に当て、更に110℃にて1分間乾燥して熱転写受像シート7を得た。尚、このときの受像層の乾燥固形分量は下層2.5g/m2、上層0.5g/m2となるように塗布した。
【0198】
(受像層塗布液4:下層塗布液)
水分散性ポリエステル(東洋紡社製、MD−1335、固形分率30質量%)
16質量部
アルカリ処理ゼラチン 1.7質量部
純水 82.3質量部
(受像層塗布液5:上層塗布液)
アルカリ処理ゼラチン 1.7質量部
ポリエーテル変性シリコーン(信越シリコーン社製 KF−6004)0.5質量部
純水 97.8質量部
〔熱転写受像シート8の作製:本発明〕
厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(受像層側のポリエチレン中には8%のアナターゼ酸化チタン含有、受像層面側には0.05g/m2のポリビニルアルコール下引き層を有し、受像層とは反対の面にはTgが約80℃のラテックス性ポリマーを含むバック層を0.2g/m2として有する)の一方の面に、下記組成からなる断熱層塗布液1、中間層塗布液2及び熱転写受像シート6の作製に用いた受像層塗布液3を、スライドホッパー方式の多層塗布装置を用いて3層同時重層塗布し、その後、5℃の冷風を1分間塗布面に当て、更に110℃にて1分間乾燥して熱転写受像シート8を得た。尚、このときの各層の乾燥固形分量は、断熱層が25g/m2、中間層が1g/m2、受像層が3g/m2となるように塗布した。
【0199】
(断熱層塗布液1)
スチレン−アクリル共重合系中空粒子(Rohm and Haas社製 HP−1055 固形分率30%) 60質量部
ポリビニルアルコール(クラレ工業製 平均重合度3500)8%水溶液
30質量部
アルカリ処理ゼラチン 2質量部
純水 8質量部
(中間層塗布液2)
水溶性ウレタン(大日本インキ社製ハイドランAP−40 固形分率22.8%)
12質量部
ポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA203 固形分率14%)2.2質量部
アルカリ処理ゼラチン 1.6質量部
純水 84.2質量部
〔熱転写受像シート9の作製:本発明〕
上記熱転写受像シート8の作製において、受像層塗布液3に代えて、下記組成からなる受像層塗布液6を用いた以外は同様にして、熱転写受像シート9を得た。
【0200】
(受像層塗布液6)
水分散性ポリエステル(東洋紡社製、MD−1335、固形分率30質量%)
16質量部
アルカリ処理ゼラチン 1.7質量部
メタルソース:NiCl2 0.6質量部
ポリエーテル変性シリコーン(信越シリコーン社製 KF−6004)0.5質量部
純水 81.2質量部
〔熱転写受像シート10の作製:本発明〕
上記熱転写受像シート8の作製において、受像層の構成を、下記組成からなる受像層塗布液7(下層塗布液)と熱転写受像シート7の作製に用いた受像層塗布液5(上層塗布液)の2層構成とし、断熱層、中間層、受像層上層及び下層の4層同時重層塗布とした以外は同様にして、熱転写受像シート10を得た。但し、各層の乾燥固形分量は、断熱層、中間層は、熱転写受像シート8に同じとし、受像層上層及び下層は熱転写受像シート7と同じとした。
【0201】
(受像層塗布液7:下層塗布液)
水分散性ポリエステル(東洋紡社製、MD−1335、固形分率30質量%)
16質量部
アルカリ処理ゼラチン 1.7質量部
メタルソース(*1:MS−1) 2.3質量部
ジブチルフタレート 0.6質量部
酢酸エチル 2.3質量部
サポニン 0.1質量部
純水 79.3質量部
ここで、メタルソース、ジブチルフタレート及び酢酸エチルは混合し、サポニンとゼラチンを含有する水溶液中に投入し、分散液として用いた
*1)MS−1:Ni2+〔C715COC(COOCH3)O-2
〔熱転写受像シート11の作製:比較例〕
厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(受像層側のポリエチレン中には8%のアナターゼ酸化チタン含有、受像層面側には0.05g/m2のポリビニルアルコール下引き層を有し、受像層とは反対の面にはTgが約80℃のラテックス性ポリマーを含むバック層を0.2g/m2として有する)の一方の面に、断熱層塗布液1、中間層塗布液2を、スライドホッパー方式の多層塗布装置を用いて2層同時に重層塗布し、その後5℃の冷風を1分間塗布面に当て、更に110℃にて1分間乾燥して中間層塗布済み試料を得た。この試料の上に下記組成の受像層塗布液8をワイヤーバーコーティング方式で塗布し、その後110℃にて1分間乾燥して熱転写受像シート11を得た。このときの各層の乾燥固形分量は、断熱層が25g/m2、中間層が1g/m2、受像層が3g/m2となるように塗布した。
【0202】
(受像層塗布液8)
水分散性ポリエステル(東洋紡社製、MD−1335、固形分率30質量%)
16質量部
メタルソース:NiCl2 0.6質量部
ポリエーテル変性シリコーン(信越シリコーン社製 KF−6004)0.5質量部
純水 82.9質量部
〔受像層塗布液粘度の測定〕
上記の各熱転写受像シートの作製に用いた受像層塗布液について、東京計器社製のB型粘度計BLを用いて、40℃における粘度V1及び15℃における粘度V2を測定し、粘度比V2/V1を求め、得られた結果を表1に示した。
【0203】
【表1】

【0204】
《熱転写受像シートの評価》
〔画像形成〕
抵抗体形状がスクエア(主走査方向長80μm×副走査方向長120μm)、300dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)ラインヘッドのサーマルヘッドを搭載した熱転写記録装置に、上記作製した各熱転写受像シートの受像層部と、下記の熱転写受像インクシートのインク層を重ね合わせてセットし、サーマルヘッドとプラテンロールで圧接しながら、順次印加エネルギーを増加させ、イエロー、マゼンタ、シアン、ニュートラル(イエロー、マゼンタ、シアンの3色重ね)の各ステップパターンパッチを、送り速度1.0msec/line、1ライン当たりの送り長さを85μmで、インク層の背面側から加熱して、熱転写受像シートの受像層上に各色素を転写させて、画像1〜11を形成した。
【0205】
熱転写シートA:オリンパス社製 CAMEDIA P−400用の熱転写インクシートで、熱転写受像シート1〜8との組合せで用いた
熱転写シートB:コニカミノルタフォトイメージング社製 Pe602用の熱転写インクシートで、熱転写受像シート9〜11との組合せで用いた。
【0206】
〔剥離性の評価〕
上記のように画像形成した際の熱転写インクシートと熱転写受像シートとの剥離性について感覚評価を行い、下記の基準に従って剥離性の評価を行った。
【0207】
◎:熱転写インクシートと熱転写受像シートとの間で熱融着等の異常転写箇所が全く認められない
○:熱転写インクシートと熱転写受像シートとの間で熱融着等の異常転写箇所が殆ど認められない
△:熱転写インクシートと熱転写受像シートとの間で熱融着等の異常転写箇所が若干認められる
×:熱転写インクシートと熱転写受像シートとの間で熱融着等の異常転写箇所が多数認められる
〔溶融転写性の評価〕
上記のように画像形成した際の熱転写保護シートの熱転写受像シートへの溶融転写性について感覚評価を行い、下記の基準に従って溶融転写性の評価を行った。
【0208】
◎:保護シートが熱転写受像シートに転写されていない箇所が全く認められない
○:保護シートが熱転写受像シートに転写されていない箇所が殆ど認められない
△:保護シートが熱転写受像シートに転写されていない箇所が若干認められる
×:保護シートが熱転写受像シートに転写されていない箇所が多数認められる
〔印画濃度の評価〕
上記のようにして形成したニュートラル画像の光学反射濃度を、反射濃度計(Gretag Machbeth社製 X−rite310)を用いて測定し、下記の基準に従って印画濃度を評価した。
【0209】
○:最高濃度が2.00以上である
×:最高濃度が2.00未満である
〔ブロッキング耐性の評価〕
上記方法で画像を形成する前の各熱転写受像シートについて、下記方法によりブロッキング耐性を評価した。
【0210】
各熱転写受像シートを20枚重ね、1cm2当たり300gの荷重をかけた状態で、60℃のオーブン内で1週間放置した後、積層した各熱転写受像シートを、1枚づつ剥がしてブロッキングの有無を目視観察し、下記の基準に従って、ブロッキング耐性の評価を行った。
【0211】
○:全くブロッキング現象がの発生が認められない
△:若干のブロッキング現象の発生が認められた
×:強いブロッキング現象が発生している
以上により得られた各評価結果を、表2に示す。
【0212】
【表2】

【0213】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の熱転写受像シートは、高速印画条件において、高濃度を維持しながら、インクシートとの剥離性及び保護シートの溶融転写性(保護シートと熱転写受像シートとの接着性)に優れ、かつ過酷な条件下で長期間保存した後でも、ブロッキングを起こしにくいことが分かる。
【0214】
以上のように、受像層を水系塗布により形成し、かつその受像層塗布液の40℃での粘度が200mPa・s以下であり、15℃での粘度と40℃での粘度の比が20倍以上であるとき、本発明の目的効果を達成できることを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に1層以上の受像層を有する熱転写受像シートにおいて、該受像層の少なくとも1層が、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上である塗布液を用いて、水系塗布により形成されたことを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項2】
基材上に2層以上の受像層を有する熱転写受像シートにおいて、全ての該受像層が、40℃における粘度V1が200mPa・s以下であり、かつ15℃における粘度V2が該粘度V1の20倍以上である塗布液を用いて、水系塗布により形成されたことを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項3】
全ての前記受像層が、水系同時重層塗布により形成されたことを特徴とする請求項2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱転写受像シートを製造する熱転写受像シートの製造方法であって、受容層の支持体への塗布開始から乾燥前の任意の時期に、セット工程を設けて製造することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法。

【公開番号】特開2006−130810(P2006−130810A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323303(P2004−323303)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】