説明

熱転写記録装置および熱転写記録方法

【課題】被印画媒体の走行性に不具合が生じることがなく、当該被印画媒体上の形成画像につき印画ムラのない良好な画質を得ることを可能にする。
【解決手段】基材、中空粒子を含む層および染料受容層が順に積層されてなる被印画媒体10と、染料層、基材および耐熱滑性層が順に積層されてなる熱転写媒体とを、プラテンローラ1と記録ヘッド2とで挟持し、前記記録ヘッド2からの熱を印加して前記染料層における染料を前記染料受容層に転写することで前記被印画媒体10上に画像を形成するように構成された熱転写記録装置において、前記プラテンローラ1と前記記録ヘッド2とによる挟持圧Fを49〜148N/cmの範囲に設定する。そして、前記プラテンローラ1と前記記録ヘッド2とによる挟持箇所への侵入前の前記被印画媒体10と当該挟持箇所を通過後の前記被印画媒体10とのなす角度θが3〜10°となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印画媒体上に画像を形成する熱転写記録装置および熱転写記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の普及により、デジタル画像をハードコピーする技術として、昇華型熱転写記録が注目されている。昇華型熱転写記録では、染料受容層を有した専用の被印画媒体(例えば印画紙)上に熱転写媒体(例えばインクリボン)の染料を熱転写することで、フルカラーで連続的な階調表現を可能にして、銀塩写真と同等の高品位な画像を再現するようになっている。
【0003】
このような昇華型熱転写記録に関しては、従来、様々な技術が提案されている。例えば、被印画媒体にカールが生じていると印画および給排紙トラブルの原因となり得るため、熱転写媒体から被印画媒体上への染料の熱転写に際しては、被印画媒体の厚さとプラテンローラ径比との比率および被印画媒体がプラテンローラに巻きつけられる角度が所定の範囲内にあるようにすることで、被印画媒体のカール量を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば、表面平滑度の低い被印画媒体にも良好な画像を転写記録すべく、記録ヘッドの押圧力を所定の圧力とする方法も提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006-27264号公報
【特許文献2】特許第2750870号公報
【特許文献3】特開昭62-169684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来における熱転写記録方法では、被印画媒体の走行性に不具合が生じてしまうおそれがある。例えば、上記特許文献1で開示されたように被印画媒体をプラテンローラに巻きつけた場合には、当該被印画媒体のカール量の制御が可能であっても、当該被印画媒体を構成する基材の繊維構造の疎密や温湿度変化等の影響によって、当該被印画媒体とプラテンローラとの間に僅かな隙間が生じてしまい、その結果として当該被印画媒体にテンションをかけたときに送りムラが発生してしまうことが考えられる。また、例えば、上記特許文献2,3で開示されたように記録ヘッドを押圧力した場合には、被印画媒体を構成する中空粒子が潰れてしまい、その結果として被印画媒体の搬送時に当該被印画媒体を構成する基材の繊維構造の凹凸を拾ってしまうことになるため、その影響で当該被印画媒体の送りムラが発生してしまうことが考えられる。このような送りムラは、被印画媒体上に形成される画像の印画ムラ、特にハーフトーン部で地合いのムラを招くため、その発生を回避すべきである。
【0006】
そこで、本発明は、被印画媒体の走行性に不具合が生じることがなく、当該被印画媒体上の形成画像につき印画ムラのない良好な画質を得ることを可能にする熱転写記録装置および熱転写記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために案出された熱転写記録装置である。すなわち、断面円形のプラテンローラと、これに対向する記録ヘッドとを備えるとともに、セルロースパルプを主成分とする紙基材、中空粒子を含む層および染料受容層が順に積層されてなる被印画媒体と、染料層、基材および耐熱滑性層が順に積層されてなる熱転写媒体とを、前記染料受容層と前記染料層とが接するように前記プラテンローラと前記記録ヘッドとで挟持し、前記記録ヘッドからの熱を印加して前記染料層における染料を前記染料受容層に転写することで前記被印画媒体上に画像を形成するように構成された熱転写記録装置であって、前記プラテンローラと前記記録ヘッドとによる挟持圧が49〜148N/cmの範囲に設定されており、前記プラテンローラと前記記録ヘッドとによる挟持箇所を通過する前記被印画媒体が前記プラテンローラの外周に沿って湾曲し、当該挟持箇所への侵入前の前記被印画媒体と当該挟持箇所を通過後の前記被印画媒体とのなす角度が3〜10°であることを特徴とする。
【0008】
上記構成の熱転写記録装置は、被印画媒体が紙基材と染料受容層との間に中空粒子を含む層を備えているので、当該被印画媒体および熱転写媒体がプラテンローラと記録ヘッドとによって挟持される際に、中空粒子を含む層によって紙基材の繊維構造の凹凸やプラテンローラ表面のわずかな凹凸等が吸収されることになり、その凹凸等の影響が染料受容層に及んでしまうことがない。しかも、プラテンローラと記録ヘッドとによる挟持圧が49N/cm(≒0.5kgf/cm)以上であるので、被印画媒体の染料受容層と熱転写媒体の染料層とを均一に密着させ得るようになり、また当該挟持圧が148N/cm(≒1.5kgf/cm)以下であることから、中空粒子が潰れてしまうこともなく、当該中空粒子が上述した凹凸等の影響を確実に吸収し得るようになる。さらには、プラテンローラと記録ヘッドとによる挟持箇所への侵入前の被印画媒体と当該挟持箇所を通過後の被印画媒体とのなす角度が3〜10°であることから、紙基材と染料受容層の間にある中空粒子が適度に伸ばされ、かつ、被印画媒体が急峻または過大に曲がることもなく、当該中空粒子を含む層における空隙が増えることになり、当該層による凹凸等の吸収能力が向上することになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被印画媒体を構成する紙基材の繊維構造の凹凸やプラテンローラ表面のわずかな凹凸等を、当該被印画媒体における中空粒子を含む層に確実に吸収させるので、その凹凸等の影響で当該被印画媒体の送りムラが発生してしまうのを未然に防止することができる。つまり、被印画媒体の走行性に不具合が生じることがないので、当該被印画媒体上の形成画像につき印画ムラのない良好な画質を得ることを可能となり、例えばハーフトーン部を含む画像を形成する場合であっても当該ハーフトーン部で地合いのムラ等が生じてしまうのを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明に係る熱転写記録装置および熱転写記録方法について説明する。
【0011】
〔熱転写記録装置の基本構成の説明〕
先ず、本発明に係る熱転写記録装置の基本構成について説明する。
図1は、本発明に係る熱転写記録装置の概略構成例を示す説明図である。
【0012】
図例の熱転写記録装置は、断面円形のプラテンローラ1と、これに対向する記録ヘッド2と、を備えている。
プラテンローラ1は、図示せぬ駆動源によって回転駆動されるようになっている。
また、記録ヘッド2は、サーマルへッドとも呼ばれ、プラテンローラ1の側に向けて、熱を印加し得るように構成されているとともに、ヘッド圧調整用ばね3によって加圧された状態で配されるようになっている。
【0013】
これらプラテンローラ1および記録ヘッド2の間には、被印画媒体10および熱転写媒体20が位置している。すなわち、被印画媒体10および熱転写媒体20が重なり合った状態で、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所を走行して通過するようになっている。
さらに詳しくは、被印画媒体10は、当該被印画媒体10をロール状に収納した給紙カセット31から繰り出された後、キャプスタンローラ32およびピンチローラ33に案内されて、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所を通過し、その後カッタ34の配置箇所にて所定サイズ(例えば、102×152mmのいわゆるKGサイズ)に切断される。なお、切断後の被印画媒体10は、図示せぬ排紙トレイに排出されるようになっている。また、給紙カセット31は、排出後における被印画媒体10のカール状態を考慮して、後述する染料受容層13を内側に向けた状態で、被印画媒体10をロール状に収納しているものとする。
一方、熱転写媒体20は、サプライローラ35から繰り出された後、ピックアップローラ36、キャプスタンローラ32およびピンチローラ33に案内されて、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所を通過し、剥離ローラ37に案内された後に、テイクアップローラ38によって巻き取られる。
【0014】
このような構成の熱転写記録装置では、被印画媒体10および熱転写媒体20が重なり合った状態でプラテンローラ1と記録ヘッド2とによって挟持し、その挟持箇所を通過するように被印画媒体10および熱転写媒体20を走行させつつ、被印画媒体10上に熱転写媒体20の染料を熱転写することで、フルカラーで連続的な階調表現を可能にして、銀塩写真と同等の高品位な画像を再現するようになっている。
【0015】
〔被印画媒体および熱転写媒体の層構造の説明〕
次に、以上のような構成の熱転写記録装置で用いられる被印画媒体10および熱転写媒体20の層構造について説明する。
図2は、被印画媒体および熱転写媒体の層構造の一具体例を示す説明図である。
【0016】
被印画媒体10は、例えば印画紙に代表されるように、染料の熱転写を経て画像が形成されるものである。そのために、被印画媒体10は、図例のように、プラテンローラ1の側から順に、セルロースパルプを主成分とする紙基材(以下、単に「基材」という。)11、中空粒子を含む層12および染料受容層13が積層されてなる層構造を有している。
【0017】
基材11は、染料受容層13を保持するという役割を有する。また、熱転写時には熱が加えられるため、過熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有することが好ましい。このような基材11の構成材料としては、セルロースパルプを主成分とするものであれば、特に限定されるものではないが、コンデンサペーパ、グラシン紙、硫酸紙、サイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂またはエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙等が挙げられる。また、これらの構成材料の任意の組み合わせによる積層体を使用することも考えられる。このような基材11の構成厚は、任意でよく、通常は10〜300μm程度とすることが考えられる。
なお、より高い印字感度を有するとともに、濃度ムラや白抜けのない高画質を得るためには、微細空隙を有する層を存在させることが好ましい。微細空隙を有する層としては、基材11上にコーティング法によって形成されたものが挙げられる。その場合に、使用するプラスチック樹脂としては、ポリエステル、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の公知の樹脂を単独或いは複数をブレンドして使用することができる。
また、基材11の染料受容層13を設ける側とは反対側の面には、必要に応じて、カール発生の防止を目的として、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂や合成紙の層を設けることも考えられる。その場合の貼り合わせ方法としては、例えば、ドライラミネーション、ノンソルベント(ホットメルト)ラミネーション、ECラミネーション法等の公知の積層方法が使用できるが、好ましい方法はドライラミネーションおよびノンソルベントラミネーション法である。ノンソルベントラミネーション法に好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業社製のタケネート720L等が挙げられ、ドライラミネーションに好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業社製のタケラックA969/タケネートA−5(3/1)、昭和高分子社製の、ポリゾール PSA SE−1400、ビニロール PSA AV−6200シリーズ等が挙げられる。これらの接着剤の使用量としては、固形分で約1〜8g/m2、好ましくは2〜6g/m2の範囲である。
【0018】
染料受容層13は、熱転写された染料を受容するという役割を有する。そのために、染料受容層13は、染料を染着させるためのバインダー樹脂を含んで構成されるものとする。
バインダー樹脂としては、公知のものを用いればよいが、その中でも染料が染着し易いものを用いることが好ましい。具体的には、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリスチレンアクリロニトリル等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノキシ樹脂、エチレンやプロピレンなどのオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アイオノマー、セルロース誘導体等の単体、または混合物を用いることができ、これらの中でもアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂及びセルロース誘導体が好ましい。
また、染料受容層13には、後述する熱転写媒体20の染料層21との熱融着を防止する目的で、離型剤を添加することが好ましい。離型剤としては、燐酸エステル系可塑剤、フッ素系化合物、シリコーンオイル(反応硬化型シリコーンを含む)等を使用することができるが、この中でもシリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンをはじめ各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン等を用い、これらをブレンドしたり、各種の反応を用いて重合させて用いることもできる。離型剤は1種でも、あるいは2種以上のものを併せて用いてもよい。離型剤の添加量は、バインダー樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましい。なお、これらの離型剤は、染料受容層13に添加せず、当該染料受容層13上に別途離型層として設けてもよい。
【0019】
中空粒子を含む層12は、上述した基材11および染料受容層13の間に存在する層のことをいう。この中空粒子を含む層12としては、バインダー樹脂と中空粒子とを主成分として多孔質構造を有したものが挙げられる。このような多孔質構造の中空粒子を含む層12は、クッション性が高いため、シート状支持体として紙基材を使用した場合にも、高感度の被印画媒体10が得られることになる。また、中空粒子を含む層12を設けることにより、記録へッドの形状および熱転写媒体20の形状に対する被印画媒体10の追従性および密着性が向上するので、低エネルギー状態でも染料受容層13に対する記録へッド2の熱効率が向上し、印画濃度を高め、画質を改善することができる。さらには、高速熱転写記録の高エネルギー印加操作において、熱転写媒体20に発生する媒体皺(リボン皺)に起因する印画不良も同時に防止することができる。
中空粒子を含む層12において使用される中空粒子は、重合体材料により形成されたシェルと、それにより包囲されている1個以上の中空部とからなるものであり、中空粒子の製造方法については格別の制限はない。平均粒子径は、0.2〜30μmが好ましい。中空粒子の平均粒子径が0.2μm未満の場合には、得られる中空粒子の体積中空率が低いため、断熱性、クッション性が概して低くなり、感度および画質向上効果が十分に得られないことがある。また、平均粒子径が30μmを超えると、得られる中空粒子を含む層12の表面の平滑性が低下し、被印画媒体10の表面の凹凸が増加して、熱転写画像の均一性が不十分で、画質が劣ることがある。中空粒子を含む層12における中空粒子の配合量は、当該層全体の全固形分質量に対する中空粒子質量の比率で30〜75質量%の範囲が好ましく、35〜70質量%の範囲がより好ましい。中空粒子を含む層12が、所望の断熱性、クッション性等の性能を発揮するためには、当該層の膜厚は20〜80μmが好ましい。膜厚が20μm未満では断熱性やクッション性が不足し、感度および画質向上効果が不十分なことがある。また、膜厚が80μmを超えると、クッション性能が飽和してしまう。
また、中空粒子を含む層12は、中空粒子と接着剤樹脂を含有しているものとする。このような中空粒子を含む層12を成膜するための塗料は、中空粒子の耐溶剤性を考慮すると、水性系塗料であることが好ましい。したがって、接着剤樹脂は、水性、有機溶剤性の両者が使用可能であるが、水性系樹脂であることがより好ましい。使用される接着剤樹脂としては、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂及びその誘導体、カゼイン、デンプン誘導体等の親水性高分子樹脂が、成膜性、耐熱性、可撓性の観点から好ましく使用される。また(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の各種樹脂のエマルジョンが、低粘度高固形分の水系樹脂として使用される。なお、中空粒子を含む層12の塗膜強度、接着性、塗工性の面から、当該層に使用される接着剤樹脂は、上記の親水性高分子樹脂と各種樹脂のエマルジョンを併用することが好ましい。
以上のような中空粒子を含む層12には、必要に応じて各種の添加剤、例えば帯電防止剤、無機顔料、有機顔料、樹脂の架橋剤、消泡剤、分散剤、有色染料、離型剤、滑剤等の1種或いは2種以上を、適宜選択して使用してもよい。
【0020】
なお、中空粒子を含む層12および染料受容層13の間には、中間層(ただし不図示)を設けてもよい。中間層の機能としては、耐溶剤性能、バリア性能、接着性能、白色付与能、隠蔽性能、帯電防止機能等が挙げられる。ただし、これらに限定されることはなく、従来公知の中間層としての機能の全てが適用できる。
中間層に耐溶剤性能、バリア性能を付与させるためには、水溶性樹脂を用いることが好ましい。水溶性樹脂としては、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂、でんぷん等の多糖類系樹脂、カゼイン等の蛋白質、ゼラチン、寒天、また、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体(例えば、ジャパンエポキシレジン社製ベオパ)、酢酸ビニル(メタ)アクリル共重合体、(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル共重合体、スチレン樹脂等のビニル系樹脂、また、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。ここでいう水溶性樹脂とは、水を主体とする溶媒に、完全溶解(粒径0.01μm以下)、またはコロイダルディスパージョン(0.01〜0.1μm)、またはエマルジョン(0.1〜1μm)、またはスラリー(1μm以上)の状態になる樹脂のことである。これらの水溶性樹脂のなかで、特に好ましいのは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等の汎用溶剤により、溶解はもとより、膨潤さえしない樹脂である。この意味で、水を主体とする溶媒に完全に溶解する樹脂が最も好ましい。特に、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、セルロース樹脂が挙げられる。中間層に接着性能をもたせるためには、基材11の種類やその表面処理により異なるが、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が一般的である。また、活性水素を有する熱可塑性樹脂とイソシアネート化合物のような硬化剤を併用すると良好な接着性が得られる。
中間層に白色付与能をもたせるためには、蛍光増白剤を用いることができる。使用する蛍光増白剤は、従来公知のいずれの化合物でも使用でき、スチルベン系、ジスチルベン系、ベンゾオキサゾール系、スチリル−オキサゾール系、ピレン−オキサゾール系、クマリン系、アミノクマリン系、イミダゾール系、ベンゾイミダゾール系、ピラゾリン系、ジスチリル−ビフェニル系の蛍光増白剤等が挙げられる。白色度は、これら蛍光増白剤の種類と添加量で調整することができる。蛍光増白剤の添加方法としては、あらゆる方法を用いることができる。すなわち、水に溶解させて添加する方法、ボールミル、コロイドミルによって粉砕分散して添加する方法、高沸点溶媒に溶解して親水性コロイド溶液と混合し、水中油滴型分散物として添加する方法、高分子ラテックス中に含浸させて添加する方法等がある。
また、基材11のギラつき感を隠蔽するために、中間層には、酸化チタンを添加してもよい。さらには、酸化チタンを用いることで、基材11の選択の自由度が広がる点でも好ましい。酸化チタンには、ルチル型酸化チタンと、アナターゼ型酸化チタンの2種類があるが、白色度および蛍光増白剤の効果を考慮すると、ルチル型よりも紫外部の吸収がより短波長側であるアナターゼ型酸化チタンが好ましい。中間層のバインダー樹脂が水系で、酸化チタンが分散しにくい場合には、表面に親水性処理を施した酸化チタンを用いるか、もしくは、界面活性剤、エチレングリコール等の既知の分散剤により分散することができる。酸化チタンの添加量は、樹脂固形分100質量部に対して酸化チタン固形分として10〜400質量部が好ましい。中間層に帯電防止機能をもたせるためには、導電性無機フィラーや、ポリアニリンスルホン酸のような有機導電材等、従来公知の導電材料を中間層バインダー樹脂に合わせて適宜選択して使用することができる。
このような中間層の厚みは、0.1〜10μm程度の範囲で設定することが好ましい。
【0021】
一方、熱転写媒体20は、例えばインクリボンとして広く知られているもので、染料の熱転写元となるものである。そのために、熱転写媒体20は、図例のように、プラテンローラ1の側から順に、染料層21、基材22および耐熱滑性層23が積層されてなる層構造を有している。
【0022】
熱転写媒体20の基材22としては、プラスチックフィルム、紙、合成紙、セロハン等を用いることが考えられるが、記録ヘッド2の加熱温度に耐えるとともに、熱伝達が早く、均一に行えるよう薄膜で厚さむらがなく製造できるものであれば、特に限定されることはない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリブテンー1、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド等の未延伸または延伸フィルムを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性が優れ、厚さのむらが少なく製造できるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやポリエーテルエーテルケトンのプラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムには、その表面に、染料層21あるいは耐熱滑性層23との接着を強固にするためのプライマーコート、コロナ放電処理等や、異物付着防止やシートの走行を安定するための帯電防止等といった表面処理を行うことも好ましい。
このような基材22の厚さは、3.5〜12μmが好ましく、特に好ましくは4.0〜6.0μmである。基材22が薄過ぎると熱転写媒体20の耐熱性が低下し、厚過ぎると被印画媒体10と重ねたときに段差を生じて色調の再現性が低下して好ましくないからである。基材22の破断強度は縦、横ともに10〜40Kg/mm2、破断伸延度が縦、横ともに50〜150%(いずれも、JIS C2318による)ものが好ましい。上記の範囲を外れるものは、巻取りや印画のときに伸びたり、破れたりするというおそれがあることによる。
また、基材22に対しては、染料層21の塗布性、接着性を調整する目的で下引き処理を施すことも好ましい。具体的には、基材22に対しコロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理等の樹脂表面改質処理を行った後、下引き液を塗布、または、プラスチックフィルムの溶融押出し成膜時に、未延伸フィルムにした引き液を塗布し、その後に延伸処理して行うことが考えられる。下引き液としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等の樹脂を溶解または分散した塗工液を用い、グラビアコーティング法、ロールコート法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の従来から公知の形成手段により、塗布し、乾燥して、形成することができる。また、下引き液には、必要に応じて、例えば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナ或はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、疑ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機微粒子等の無機微粒子や、下引き層の塗工性や帯電防止機能を付与する目的で従来公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性活性剤などを用いることも好ましい。例えば、ジアリールメタン系、チアゾール系等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、イミダゾールアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、アジン系、チアジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、イソチアゾールアゾ、イミダゾールアゾ、ピロールアゾ、ジスアゾ、トリアゾールアゾ等のアゾ系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系、ローダミンラクタム系等が挙げられる。さらに具体的には、C.I.(Color Index)ディスパースイエロー3、7、23、51、54、60、79、141等、C.I.(Color Index)ディスパースブルー14、19、24、26、56、287、301、354等、C.I.(Color Index)ディスパースレッド1、59、60、73、135、167等、C.I.(Color Index)ディスパースバイオレット4、1326、31、36、56等、C.I.(Color Index)ディスパースオレンジ149等、C.I.(Color Index)ソルベントイエロー14、16、29、56、201等、C.I.(Color Index)ソルベントブルー11、35、36、49、50、63、97、105等、C.I.(Color Index)ソルベントレッド18、19、23、24、25、81、143、182等、C.I.(Color Index)ソルベントバイオレット13等、C.I.(Color Index)ソルベントグリーン3等、C.I.(Color Index)ソルベントブラック3等を挙げることができる。
【0023】
耐熱滑性層23は、記録ヘッド2と基材22との熱融着を防止し、走行を滑らかに行うとともに、記録ヘッド2の付着物を除去する目的で設けられる。
この耐熱滑性層23に用いる樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリルースチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性またはフッ素変性ウレタン等の天然または合成樹脂の単体または混合物が挙げられる。また、耐熱滑性層23の耐熱性をより高めるためには、これらの樹脂のうち、水酸基系の反応性基を有している樹脂を使用し、架橋剤としてポリイソシアネート等を併用して、架橋樹脂層とすることが好ましい。さらに、記録ヘッド2との摺動性を付与するためには、耐熱滑性層23に固形あるいは液状の離型剤または滑剤を加えて耐熱滑性を持たせることも考えられる。離型剤または滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属石鹸、有機カルボン酸及びその誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を用いることができる。耐熱滑性層に含有される滑剤の量は5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%程度である。
このような耐熱滑性層の厚みは、0.1〜10μm程度、好ましくは0.3〜5μm程度とすることが考えられる。
【0024】
染料層21は、染料受容層13へ熱転写する染料(インク)を含む層である。
このような染料層21を成膜するための塗工液中に含有された染料は、染料層21を構成する全成分に対して、5〜90重量%で配合することが好ましく、さらに10〜70重量%であることが好ましい。
また、染料層21に使用するバインダー樹脂としては、従来公知の感熱転写記録用インクシートに使用されるバインダー樹脂を使用することができ、例えば、セルロース付加化合物、セルロースエステル、セルロースエーテル等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸−ポリ塩化ビニル共重合体、ポリアクリルアミド、スチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系エステル、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸共重合体等のビニル系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。特には、これらの樹脂の中でも、保存性の優れたポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタールあるいはセルロース系樹脂が好ましい。さらに、染料層21のバインダー樹脂として、例えば、特公平5−78437号公報に記載のイソシアナート類と、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリエステルポリオールおよびアクリルポリオールから選択される活性水素を有する化合物との反応生成物、イソシアナート類がジイソシアナートまたはトリイソシアナートである上記反応生成物、および活性水素を有する化合物100質量部に対して、10〜200質量部の量である上記反応生成物、天然及び/又は半合成水溶性高分子の分子内水酸基をエステル化及び/又はウレタン化した有機溶媒可溶性高分子、天然及び/又は半合成水溶性高分子、特開平3−264393号公報に記載のアセチル化度が2.4以上かつ総置換度が2.7以上の酢酸セルロース、ポリビニルアルコール(Tg=85℃)、ポリ酢酸ビニル(Tg=32℃)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(Tg=77℃)等のビニル樹脂、ポリビニルブチラール(Tg=84℃)、ポリビニルアセトアセタール(Tg=110℃)等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアクリルアミド(Tg=165℃)等のビニル系樹脂、脂肪族ポリエステル(Tg=130℃)等のポリエステル樹脂等、特開平7−52564号公報に記載のイソシアナート類と、含有するビニルアルコール部分の質量が15〜40%であるポリビニルブチラールとの反応生成物、上記イソシアナート類がジイソシアナートまたはトリイソシアナートである上記反応生成物、特開平7−32742号公報に記載の一般式(I)のフェニルイソシア変性ポリビニルアセタール樹脂、特開平6−155935号公報に記載のイソシアナート反応性セルロースまたはイソシアナート反応性アセタール樹脂の1種と、イソシアナート反応性アセタール樹脂、イソシアナート反応性ビニル樹脂、イソシアナート反応性アクリル樹脂、イソシアナート反応性フェノキシ樹脂およびイソシアナート反応性スチロール樹脂から選ばれる1種の樹脂およびポリイソシアナート化合物を含有する組成物の硬化物、ポリビニルブチラール樹脂(好ましくは分子量が6万以上、ガラス転移温度が60℃以上、より好ましくは70℃以上110℃以下、ビニルアルコール部分の質量%がポリビニルブチラール樹脂中10〜40%、好ましくは15〜30%のもの)、アクリル変性セルロース系樹脂、セルロース系樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酢酸セルロース等のセルロース系樹脂(好ましくはエチルセルロース)等を用いることができる。これら各種のバインダー樹脂は、その1種を単独で使用することもできるし、またその2種以上を併用することもできる。
【0025】
また、熱転写媒体20は、これら染料層21、基材22および耐熱滑性層23に加えて、当該基材22よりもプラテンローラ1の側に、熱転写性の保護層(ただし不図示)を備えていることが好ましい。この保護層は、被印画媒体10上に熱転写して形成された画像の表面を覆って保護する透明樹脂層の形成材料によって構成される。この保護層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、これらの各樹脂のエポキシ変性樹脂、これらの樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等を例示することができる。好ましい樹脂材料としては、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ変性樹脂が挙げられる。
また、熱転写媒体20においては、基材22と保護層との間に、離型層を設けることも好ましい。離型層は、基材22と保護層との離型性が適当でない場合、基材22と保護層との接着性を調整し、保護層の離型を良好に行うために設けられる。離型層は、基材22−離型層間、または離型層−保護層間といった、いずれかの層間の離型を容易化するもので、例えば、シリコーンワックス等の各種ワックス類、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、水溶性樹脂、セルロース誘導体樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸系ビニル樹脂、アクリルビニルエーテル系樹脂、無水マレイン酸樹脂等の各種樹脂等やこれらの混合物から構成される。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリエステルワックス、ポリスチレン系パウダー、オレフィン系パウダー、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトローラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等を挙げることもできる。
さらに、熱転写媒体20においては、保護層の表面側、すなわち被印画媒体10と重なる側の面に、接着層を設けることも好ましい。この接着層は、保護層の画像面への接着の役割を担う。この接着層を構成する樹脂としては、従来公知である粘着剤、感熱接着剤等が配合されている樹脂を使用できるが、ガラス転移温度(Tg)が30〜80℃の熱可塑性樹脂であるのが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。また、接着層には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤等の添加剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が挙げられ、具体的にはTinuvin P、Tinuvin 234、Tinuvin 320、Tinuvin 326、Tinuvin 327、Tinuvin 328、Tinuvin 312、Tinuvin 315(以上、チバガイギー社製)、Sumisorb−110、Sumisorb−130、Sumisorb−140、Sumisorb−200、Sumisorb−250、Sumisorb−300、Sumisorb−320、Sumisorb−340、Sumisorb−350、Sumisorb−400(以上、住友化学工業(株)製)、Mark LA−32、Mark LA−36、Mark 1413(以上、アデカアーガス化学(株)製)等の商品名で市場から入手できるものが挙げられる。さらには、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合したTg60℃以上、好ましくは80℃以上のランダム共重合体を用いることもできる。上記の反応性紫外線吸収剤は、従来公知のサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、或いは、アルコール系水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。具体的には、UVA635L、UVA633L(以上、BASFジャパン(株)製)、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等の商品名で市場から入手できるものが挙げられる。以上のような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体における反応性紫外線吸収剤の量は、10〜90質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲である。また、このようなランダム共重合体の分子量は、5000〜250000程度、好ましくは9000〜30000程度とすることが考えられる。上述した紫外線吸収剤、および、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体は、各々単独で含有させてもよいし、両方を含有させてもよい。反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体の添加量は、含有させる層に対し5〜50質量%の範囲で含有させることが好ましい。もちろん紫外線吸収剤以外にも他の耐光化剤を含有させてもよい。ここで、耐光化剤とは、光エネルギー、熱エネルギー、酸化作用など、染料を変質あるいは分解する作用を吸収または遮断して染料の変質や分解を防止する薬剤であり、具体的には上述した紫外線防止剤の他、従来合成樹脂の添加剤等として知られている酸化防止剤、光安定剤が挙げられる。その場合も、熱転写性保護層の少なくとも1層、すなわち上述した保護層、離型層、接着層のうち少なくとも1層に含有させてよいが、特に好ましくは接着層に含有させるようにする。酸化防止剤としてはフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、アミン系等の一次酸化防止剤、或いは硫黄系、リン系等の二次酸化防止剤が挙げられる。また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系等が挙げられる。上記の紫外線吸収剤を含む、耐光化剤の使用量は特に限定されないが、好ましくは含有させる層を形成する樹脂100質量部当たり0.05〜10質量部、好ましくは3〜10質量部の割合で使用する。使用量が少なすぎると耐光化剤としての効果が得難く、一方多すぎては不経済だからである。また、上記の耐光化剤の他にも、例えば、蛍光増白剤、充填剤等の各種の添加剤も、同時に接着層に適当な量で添加することができる。
なお、以上のような保護層、離型層および接着層(以下「保護層等」という。)については、基材22上に単独で設けてもよいし、例えば染料層21と面順次に設けてもよい。保護層等を染料層21と面順次に設ける場合には、基材22上に、例えばイエローについての染料層21、シアンについての染料層21、マゼンタについての染料層21、保護層等が順に並ぶことになる。
【0026】
〔本実施形態における特徴点の説明〕
次に、本実施形態における特徴点の説明、すなわち本実施形態で例に挙げる熱転写記録装置の特徴的な構成例について説明する。
図3は、本発明に係る熱転写記録装置の要部構成例を示す説明図である。
【0027】
図例の熱転写記録装置は、記録ヘッド2がヘッド圧調整用ばね3によってプラテンローラ1の側に向けて加圧され、これにより重なり合った状態の被印画媒体10および熱転写媒体20をプラテンローラ1と記録ヘッド2とで挟持するようになっているが、その挟持箇所における挟持圧Fが、線圧で、49〜148N/cm(≒0.5〜1.5kgf/cm)の範囲に設定されている。この挟持圧Fの設定は、ヘッド圧調整用ばね3による加圧力を調整することによって行えばよい。
【0028】
さらに、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所では、当該挟持箇所を通過する被印画媒体10がプラテンローラ1の外周に沿って湾曲している。そして、その湾曲によって、当該挟持箇所への侵入前の被印画媒体10と当該挟持箇所を通過後の被印画媒体10とのなす角度θが3〜10°となるように、被印画媒体10の走行経路が設定されている。なお、プラテンローラ1は、その直径が10〜30mmであるものとする。
【0029】
また、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所では、被印画媒体10および熱転写媒体20が重なり合った状態で当該挟持箇所を通過することになるが、記録ヘッド2と当該記録ヘッド2の側に位置する熱転写媒体20との間、さらに詳しくは記録ヘッド2と熱転写媒体20における耐熱滑性層23との間の動摩擦係数が、0.1〜0.5となるように、さらに好ましくは0.2〜0.4となるように設定されているものとする。この動摩擦係数の設定は、耐熱滑性層23の構成材料を適宜選択することによって行えばよい。
【0030】
続いて、以上のような特徴的な構成の熱転写記録装置による処理動作例、すなわち本実施形態で例に挙げる熱転写記録方法について説明する。
【0031】
被印画媒体10上への画像の形成を行う際には、プラテンローラ1上に、染料受容層13を有する被印画媒体10と、染料層21を有する熱転写媒体20とを重ね合わせ、これらを記録ヘッド2で挟持して熱エネルギーを印加して、熱転写媒体20の染料層21から被印画媒体10の染料受容層13へ染料を移行させる。つまり、重なり合った状態の被印画媒体10および熱転写媒体20がプラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所を通過するときに、当該熱転写媒体20の染料層21が当該被印画媒体10の染料受容層13と接し、当該熱転写媒体20の他の面側に位置する耐熱滑性層23が記録ヘッド2と接するようにする。
【0032】
このとき、被印画媒体10は、基材11と染料受容層13との間に、中空粒子を含む層12を備えている。したがって、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所を通過するときには、その中空粒子を含む層12によって、基材11の繊維構造の凹凸やプラテンローラ1の表面のわずかな凹凸(プラテンローラ1の表面をゴム等でコーティングされている場合には、そのゴム等の硬度バラツキに起因する凹凸を含む)等が吸収されることになる。つまり、その凹凸等の影響が、中空粒子を含む層12によって吸収されるので、染料受容層13に及んでしまうことがなく、その影響で被印画媒体10および熱転写媒体20に送りムラが発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0033】
しかも、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fは、49N/cm以上に設定されている。したがって、被印画媒体10の染料受容層13と熱転写媒体20の染料層21とを均一に密着させ得るようになり、当該被印画媒体10と当該熱転写媒体20とが均一に密着できずにムラが生じてしまうといったことを未然に防止できる
さらに、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fは、148N/cm以下に設定されている。したがって、中空粒子を含む層12における中空粒子が潰れてしまうこともなく、当該中空粒子が上述した凹凸等の影響を確実に吸収し得るようになる。
【0034】
また、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所を通過する前後において、被印画媒体10には、3〜10°という角度θが与えられている。すなわち、当該挟持箇所への侵入前の被印画媒体10と当該挟持箇所を通過後の被印画媒体10とのなす角度θが3〜10°である。したがって、当該挟持箇所を通過する際に、被印画媒体10では、基材11と染料受容層13の間にある中空粒子が適度に伸ばされ、かつ、当該被印画媒体10が急峻または過大に曲がること(当該曲がりによって中空粒子が潰れてしまうこと)もなく、当該中空粒子を含む層12における空隙が増えることになる。そして、空隙が増えることによって、クッション性が向上して、凹凸等の吸収能力が向上することになる。さらには、空隙が蓄熱機能を発揮して、より少ないエネルギーで低〜中階調の発色性が向上し、形成画像の画質が良化することも期待できる。
【0035】
また、被印画媒体10が上述した角度θを有するように巻きつけられるプラテンローラ1は、その直径が10〜30mmである。つまり、プラテンローラ1の直径が10mm以上であることから、当該プラテンローラ1外周に沿って湾曲させることで被印画媒体10に上述した角度θを与える場合であっても、その被印画媒体10が急峻または過大に曲がってしまうこと(当該曲がりによって中空粒子が潰れてしまうこと)を回避し得るようになる。さらに、プラテンローラ1の直径が30mm以下であることから、装置の小型化が困難になったり、慣性モーメントの増大に伴う駆動力や消費電力等の増大を招いたりすることもない。
【0036】
また、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所では、当該記録ヘッド2と熱転写媒体20における耐熱滑性層23との間の動摩擦係数が、0.1〜0.5となるように、さらに好ましくは0.2〜0.4となるように設定されている。したがって、記録ヘッド2と耐熱滑性層23とが接していても、被印画媒体10の走行性に不具合が生じてしまうのを回避し得るようになる。例えば、動摩擦係数が0.1未満であると、記録ヘッド2と耐熱滑性層23との間の摩擦が小さいため、熱転写媒体20が蛇行したり、当該熱転写媒体20に皺が生じたりするおそれがあり、その結果として被印画媒体10上の形成画像の画質低下を招き得るからである。その一方で、例えば、動摩擦係数が0.5を超えていると、記録ヘッド2と耐熱滑性層23との間の摩擦が大きいため、当該耐熱滑性層23が削り取られて、その削りカスが記録ヘッド2の表面に付着してしまい、熱転写の際に付着物に熱が集中したり、尾引きの発生や印画紙表面に傷が入ったり、熱転写媒体20にダメージに加わり最悪媒体切れが発生してしまう、といったことも考えられるため好ましくないからである。
【0037】
以上のように、本実施形態で説明した熱転写記録を行えば、被印画媒体10を構成する基材11の繊維構造の凹凸やプラテンローラ1の表面のわずかな凹凸等を、当該被印画媒体10における中空粒子を含む層12に確実に吸収させることになるので、その凹凸等の影響で当該被印画媒体10の送りムラが発生してしまうのを未然に防止することができる。つまり、被印画媒体10の走行性に不具合が生じることがないので、当該被印画媒体10上の形成画像につき印画ムラのない良好な画質を得ることを可能となり、例えばハーフトーン部を含む画像を形成する場合であっても当該ハーフトーン部で地合いのムラ等が生じてしまうのを回避することができる。
【実施例】
【0038】
次に、以上に説明した熱転写記録について、具体的な実施例を挙げて、さらに詳しく説明する。
なお、以下の説明において、「%」および「部」は、特に断らない限り、溶剤に関するものを除いて、固形分の「質量%」および「質量部」を示しているものとする。
また、以下の説明では、図1〜3に示した構成の熱転写記録装置にて、厚さ4.5μmのポリエステルフィルム上にイエロー、マゼンタ、シアンの染料を含む染料層を設けたインクリボンを熱転写媒体20として用いて、被印画媒体10としての印画紙上に、熱転写記録を行った場合を例に挙げる。
【0039】
〔実施例1〕
先ず、第1の実施例(以下、単に「実施例1」という。)の条件について説明する。
実施例1では、インクリボンの染料層を設けていない面に耐熱滑性層を塗布し、当該耐熱滑性層として以下の組成を乾燥圧1μmとなるように塗布している。
・ポリアセタール樹脂(デンカブチラール#3000K、電気化学工業製);5部
・ポリイソシアネート(コロネートL、日本ポリウレタン製);0.5部
・球状シリカ(トスパール105、GE東芝シリコーン製);0.1部
・ヘキサステアリン酸POE(6)ソルビット(Nikkol GS-6、日光ケミカルズ製);20部
このような組成のものを実施例1におけるインクリボンとする。
一方、印画紙は、基材として厚さ150μmのアート紙(商品名:OK金藤N、174g/m2、王子製紙製)を使用して、下記組成の塗工液を低密度層(40g/m2)、受容層(4g/m2)の順に塗布し、溶媒を乾燥したものを用いる。
(低密度層塗工液)
・スチレンアクリル中空粒子(商品名:SX866(B)、JSR製);35部
・ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、クラレ製);15部
・スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:PT1004、旭化成製);50部
・水;200部
(受容層塗工液)
・ポリエステル樹脂(商品名:バイロン200、東洋紡製);100部
・シリコーンオイル(商品名:KF6002,信越化学工業製);5部
・ポリイソシアネート(商品名:タケネートD−140N、三井化学ポリウレタン製);5部
・トルエン/メチルエチルケトン=1/1(質量比)混合液;400部
また、実施例1で用いる熱転写記録装置は、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持箇所への侵入前の印画紙(以下「印画前印画紙」という。)と当該挟持箇所を通過後の印画紙(以下「印画後印画紙」という。)とのなす角度θが5°、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fが78N/cm(≒0.8kgf/cm)である。
そして、以上のような条件によれば、白から黒のステップ印画をした際の記録ヘッド2と耐熱滑性層との動摩擦係数は、0.15〜0.38となる。
【0040】
〔実施例2〕
続いて、第2の実施例(以下、単に「実施例2」という。)の条件について説明する。
実施例2では、インクリボンの染料層を設けていない面に耐熱滑性層を塗布し、当該耐熱滑性層として以下の組成を乾燥圧1μmとなるように塗布している。
・ポリアセタール樹脂(デンカブチラール#3000K、電気化学工業製);5部
・ポリイソシアネート(コロネートL、日本ポリウレタン製);0.5部
・球状シリカ(トスパール105、GE東芝シリコーン製);0.1部
・ヘキサステアリン酸POE(60)ソルビット(Nikkol GS460、日光ケミカルズ製);20部
このような組成のものを実施例2におけるインクリボンとする。
一方、印画紙および熱転写記録装置は、実施例1と同様のものを使用する。
以上のような条件によれば、白から黒のステップ印画をした際の記録ヘッド2と耐熱滑性層との動摩擦係数は、0.18〜0.45となる。
【0041】
〔実施例3〕
続いて、第3の実施例(以下、単に「実施例3」という。)の条件について説明する。
実施例3では、実施例1と同様のインクリボンを使用する。
一方、印画紙は、低密度層塗工液以外は、実施例1と同様である。
(低密度層塗工液)
・塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体中空粒子(マツモトマイクロフェアー F30、松本油脂製薬製);30部
・ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ製);20部
・スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:PT1004、旭化成製);50部
・水;200部
熱転写記録装置についても、実施例1と同様である。
【0042】
〔実施例4〕
続いて、第4の実施例(以下、単に「実施例4」という。)の条件について説明する。
実施例4におけるインクリボンおよび印画紙は、いずれも、実施例1と同様のものを使用する。
ただし、実施例4で使用する熱転写記録装置は、印画前印画紙と印画後印画紙とのなす角度θが7°、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fが78N/cm(≒0.8kgf/cm)である。
【0043】
〔実施例5〕
続いて、第5の実施例(以下、単に「実施例5」という。)の条件について説明する。
実施例5におけるインクリボンおよび印画紙は、いずれも、実施例1と同様のものを使用する。
ただし、実施例5で使用する熱転写記録装置は、印画前印画紙と印画後印画紙とのなす角度θが5°、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fが138N/cm(≒1.4kgf/cm)である。
【0044】
〔比較例1〕
次に、以上のような実施例1〜5に対する比較例の条件について説明する。
第1の比較例(以下、単に「比較例1」という。)では、インクリボンの染料層を設けていない面に耐熱滑性層を塗布し、当該耐熱滑性層として以下の組成を乾燥圧1μmとなるように塗布している。
・ポリアセタール樹脂(デンカブチラール#3000K、電気化学工業製);5部
・ポリイソシアネート(コロネートL、日本ポリウレタン製);0.5部
・球状シリカ(トスパール105、GE東芝シリコーン製);0.1部
・ミリスチン酸(ルナックMY-98、花王製);20部
このような組成のものを比較例1におけるインクリボンとする。
一方、印画紙および熱転写記録装置は、実施例1と同様のものを使用する。
以上のような条件によれば、白から黒のステップ印画をした際の記録ヘッド2と耐熱滑性層との動摩擦係数は、0.19〜0.67となる。
【0045】
〔比較例2〕
続いて、第2の比較例(以下、単に「比較例2」という。)の条件について説明する。
比較例2では、実施例1と同様のインクリボンおよび熱転写記録装置を使用する。
一方、印画紙については、実施例1と同様の基材に、当該実施例1と同様の受容層塗工液を用いて当該実施例1と同様に塗布するが、低密度層塗工液は塗布していない。
【0046】
〔比較例3〕
続いて、第3の比較例(以下、単に「比較例3」という。)の条件について説明する。
比較例3では、実施例1と同様のインクリボンおよび熱転写記録装置を使用する。
一方、印画紙については、実施例1と同様の受容層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする発泡フィルム(ルミラーE63S、東レ製)に塗布するが、低密度層塗工液は塗布していない。
【0047】
〔比較例4〕
続いて、第4の比較例(以下、単に「比較例4」という。)の条件について説明する。
比較例4におけるインクリボンおよび印画紙は、いずれも、実施例1と同様のものを使用する。
ただし、比較例4で使用する熱転写記録装置は、印画前印画紙と印画後印画紙とのなす角度θが0°、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fが78N/cm(≒0.8kgf/cm)である。
【0048】
〔比較例5〕
続いて、第5の比較例(以下、単に「比較例5」という。)の条件について説明する。
比較例5におけるインクリボンおよび印画紙は、いずれも、実施例1と同様のものを使用する。
ただし、比較例5で使用する熱転写記録装置は、印画前印画紙と印画後印画紙とのなす角度θが15°、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fが78N/cm(≒0.8kgf/cm)である。
【0049】
〔比較例6〕
続いて、第6の比較例(以下、単に「比較例6」という。)の条件について説明する。
比較例6におけるインクリボンおよび印画紙は、いずれも、実施例1と同様のものを使用する。
ただし、比較例6で使用する熱転写記録装置は、印画前印画紙と印画後印画紙とのなす角度θが5°、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fが20N/cm(≒0.2kgf/cm)である。
【0050】
〔比較例7〕
続いて、第7の比較例(以下、単に「比較例7」という。)の条件について説明する。
比較例7におけるインクリボンおよび印画紙は、いずれも、実施例1と同様のものを使用する。
ただし、比較例7で使用する熱転写記録装置は、印画前印画紙と印画後印画紙とのなす角度θが3°、プラテンローラ1と記録ヘッド2とによる挟持圧Fが296N/cm(≒3.0kgf/cm)である。
【0051】
〔実施例1〜5と比較例1〜7との比較評価〕
次に、以上のような実施例1〜5と比較例1〜7とのそれぞれに関し、印画紙上への熱転写記録を行った場合の評価について説明する。
【0052】
図4は、熱転写記録についての評価結果の一具体例を示す説明図である。
図例のように、熱転写記録の評価は、スティッキング、ハーフトーン画質、印画後カールおよび走行性の各項目について行っている。
スティッキングについては、印画紙の長手方向右半分をグレー、左半分を白、グレーおよび黒で印画して、右半分のグレー部分への線状の印画ムラ発生の有無を評価者の目視で評価し、スティッキングが発生していない場合(印画ムラ発生無しの場合)は「〇」を、スティッキングが発生している場合(印画ムラ発生有りの場合)は「×」を、それぞれ付与している。
ハーフトーン画質については、印画紙上の全面をグレーベタで印画して、その画像品位を評価者の目視で評価し、ムラがなく均一なグレーである場合は「〇」を、紙基材起因によるランダムなムラやヘッドあたり不均一性によるムラ等がある場合は「×」を、それぞれ付与している。
印画後カールについては、印画後における印画紙のカール状態を、印画から所定時間(例えば3分)経過後の四隅の高さ(カール量)を測定して、その平均値を求め、その結果が−2mm<平均値≦+5mmであれば「〇」を、平均値≧−2mmまたは平均値>+5mmであれば「×」を、それぞれ付与している。なお、カール量についての判断の際には、染料受容層を表にした際に凸型となるカール状態を+方向、凹型となるカール状態を−方向としているものとする。
走行性については、印画紙の長手方向右半分を白ベタ、左半分を黒ベタとするというパターンでの印画を所定枚数分(例えば50枚分)連続して行った後、全面黒ベタというパターンでの印画を所定枚数分(例えば5枚分)だけ行い、その全面黒ベタで印画された印画紙につき、ヘッド付着物起因による印画紙傷発生の有無を評価者の目視で評価し、傷が発生していない場合は「〇」を、ヘッド付着物起因の傷が発生している場合は「×」を、それぞれ付与している。
【0053】
図例からも明らかなように、これらの各項目ついての評価の結果、比較例1〜7に関してはいずれかの項目で「×」が存在しているのに対して、実施例1〜5に関しては、いずれの項目についても、「〇」となっている。つまり、実施例1〜5に関しては、スティッキング、ハーフトーン画質、印画後カールおよび走行性の各項目のいずれについても、良好な評価結果が得られていることが分かる。
【0054】
以上のように、上述した実施形態を具現化した実施例1〜5によれば、一方の側に染料層を設けたインクリボンと、紙を基材として一方の側に染料受容層を設けた印画紙とを重ね合わせ、記録ヘッドからの熱を印加して当該印画紙上に画像を形成する熱転写記録を行う場合において、印画紙の基材と染料受容層との間に少なくとも中空粒子を含む層が介在しているとともに、プラテンローラと記録ヘッドとによる挟持圧と、印画前印画紙と印画後印画紙との角度とが、所定の範囲に属するように設定されており、またインクリボンの記録ヘッドと接する側に耐熱滑性層が設けられており、その耐熱滑性層と記録ヘッドとの間の動摩擦係数が所定の範囲に属していることにより、印画紙等の走行性に不具合が生じることがなく、当該印画紙上の形成画像につき印画ムラのない良好な画質を得ることが可能になる。
【0055】
なお、上述した実施形態および各実施例では、本発明の好適な実施具体例を説明したが、本発明はその内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る熱転写記録装置の概略構成例を示す説明図である。
【図2】被印画媒体および熱転写媒体の層構造の一具体例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る熱転写記録装置の要部構成例を示す説明図である。
【図4】熱転写記録についての評価結果の一具体例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1…プラテンローラ、2…記録へッド、3…ヘッド圧調整用ばね、10…被印画媒体、11…基材、12…中空粒子を含む層、13…染料受容層、20…熱転写媒体、21…染料層、22…基材、23…耐熱滑性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形のプラテンローラと、これに対向する記録ヘッドとを備えるとともに、セルロースパルプを主成分とする紙基材、中空粒子を含む層および染料受容層が順に積層されてなる被印画媒体と、染料層、基材および耐熱滑性層が順に積層されてなる熱転写媒体とを、前記染料受容層と前記染料層とが接するように前記プラテンローラと前記記録ヘッドとで挟持し、前記記録ヘッドからの熱を印加して前記染料層における染料を前記染料受容層に転写することで前記被印画媒体上に画像を形成するように構成された熱転写記録装置であって、
前記プラテンローラと前記記録ヘッドとによる挟持圧が49〜148N/cmの範囲に設定されており、
前記プラテンローラと前記記録ヘッドとによる挟持箇所を通過する前記被印画媒体が前記プラテンローラの外周に沿って湾曲し、当該挟持箇所への侵入前の前記被印画媒体と当該挟持箇所を通過後の前記被印画媒体とのなす角度が3〜10°である
ことを特徴とする熱転写記録装置。
【請求項2】
前記プラテンローラの直径が10〜30mmである
ことを特徴とする請求項1記載の熱転写記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドと前記熱転写媒体における前記耐熱滑性層との間の動摩擦係数が0.1〜0.5である
ことを特徴とする請求項1記載の熱転写記録装置。
【請求項4】
セルロースパルプを主成分とする紙基材、中空粒子を含む層および染料受容層が順に積層されてなる被印画媒体と、染料層、基材および耐熱滑性層が順に積層されてなる熱転写媒体とを、前記染料受容層と前記染料層とが接するように、断面円形のプラテンローラとこれに対向する記録ヘッドとで挟持し、前記記録ヘッドからの熱を印加して前記染料層における染料を前記染料受容層に転写することで前記被印画媒体上に画像を形成する熱転写記録方法であって、
前記プラテンローラと前記記録ヘッドとによる挟持圧を49〜148N/cmの範囲に設定し、
前記プラテンローラと前記記録ヘッドとによる挟持箇所を通過する前記被印画媒体が前記プラテンローラの外周に沿って湾曲し、当該挟持箇所への侵入前の前記被印画媒体と当該挟持箇所を通過後の前記被印画媒体とのなす角度が3〜10°となるようにする
ことを特徴とする熱転写記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−154411(P2009−154411A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335883(P2007−335883)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】