説明

熱間等方圧プレスにおける温度制御のための方法並びに熱間等方圧プレス

本発明は、熱間等方圧プレスにおける温度制御のための方法及び熱間等方圧プレスであって、熱間等方圧プレスは圧力容器(1)から成っており、圧力容器は、内部に位置する装填室(19)を有し、かつ装填室との間に配置された絶縁体(8)を備え、絶縁体(8)の内側に加熱要素(4)と、装填物(18)の装填される装填室(19)とが配置され、装填室(19)が、対流間隙(28)の形成のために対流スリーブ(27)によって取り囲まれており、圧力容器(1)及び/又は装填室(19)の内部で、回転流(23)の形成のために、ノズル(13)を介して流体を噴射して、そこにある流体と混合し、同時に、流体は、対流スリーブ(27)に沿って循環流(29)を形成して、対流間隙(28)から装填室(19)内へ流入する。熱間等方圧プレスにおいて、圧力容器(1)の内側に、管路(12)及び、該管路に接続されかつ圧力容器(1)の内部に位置するノズル(13)が配置され、ノズル(13)の流出角は、装填室(19)内に回転流(23)を形成するように構成されており、管路(12)は、圧力容器(1)内の温度の異なる領域に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間等方圧プレスにおける温度制御のための、請求項1の上位概念に記載の形式の方法、並びに請求項12の上位概念に記載の形式の熱間等方圧プレスに関する。
【0002】
熱間等方圧プレス(HIP)若しくは圧力炉(圧力釜)は今日多様に、例えば製品若しくは部品の製造若しくは熱処理等に用いられるようになっている。熱間等方圧プレス等において、固形の材料若しくは粉末から成る成形材は、マトリックスを用いて高圧及び高温下で圧縮される。熱間等方圧プレスにより、同一種若しくは異種の材料を互いに接合することもできる。一般的に、被処理体とも称される材料は、加熱部を備える炉内に装填され、炉は、高圧容器によって取り囲まれている。加熱中若しくは加熱の後に、流体若しくは不活性ガス、多くの場合にアルゴンのあらゆる方向からの圧力により、完全に等方圧的なプレスが行われ、材料が最適に圧縮される。このような方法は、例えばセラミック材料から成る構成部品、例えば股関節プロテーゼや、自動車若しくはエンジン用のアルミニウム製の鋳造品や、自動車用エンジンのシリンダーヘッドや、例えばタービン翼のためのチタン合金から成る精密鋳造品等を、その成形の後に更に圧縮するため、つまり後圧縮するためにも用いられる。高圧及び高温下での後圧縮により、先行の成形過程で発生した気孔が消滅され、内部欠陥が除去され、かつ組織特性が改善される。上記方法は、更に、粉末材料から圧縮及び焼結されて実質的に最終輪郭を有する構成部品の製造にも用いられる。
【0003】
HIP・サイクルは、一般的に著しく長く、数時間から数日を要している。運転温度をプレスが危険なく開かれる許容の温度まで低下させる冷却時間は、長く、サイクル時間の三分の一を占めており、製造効率を低下させている。明らかなように、冷却は、製造すべき部品の材料特性にとって極めて重要である。多くの材料にとっては、材料品質の理由から最大の冷却速度を維持することが必要である。更に冷却に際して、材料を全体的に均一に冷却する必要がある。大きな部品の製造に際して、部分的又は区域毎に異なる温度での冷却に起因して生じる内部応力は、歪みや亀裂を発生させ、ひいては完全な破損につながることになる。このような問題は、小さい部品を炉内のフレーム若しくは棚に載せて処理する場合にも発生している。
【0004】
機械的な補助手段、例えば送風機を用いて或いは用いることなしに熱ガスを循環させる構造の圧力炉(圧力釜)は公知である。機械的な補助手段を用いない構成において、圧力炉(オートクレーブ[autoclave])内の圧力媒体の対流及び再分配は、温度差(外壁の加熱若しくは冷却)によって行われるようになっている。この場合に、温度の低い方(低温)の流体は下降し、温度の高い方(高温)の流体は上昇する。このような流体流は、圧力炉内における均一な加熱循環若しくは冷却循環を達成するために、案内機構の使用によって制御されて用いられるようになっている。従来技術においては、いわゆる案内スリーブ若しくは対流スリーブを使用するようになっており、案内スリーブ若しくは対流スリーブは、上端部及び下端部の開放された管によって形成されている。加熱に際して、炉内の熱源は推進のために作動され、流れは、熱源の配置に依存して形成される。例えば、装填室内(装填物の下方)における加熱により、装填室の中央における上昇流が形成され、かつ壁(低い温度)の外側に下降流が形成される。予測不能な混合流の問題を解決するために、対流スリーブとその外側に同軸に配置された絶縁体との間の対流間隙により、制御された下降流を発生させるようになっており、このような構成により、再び冷めた流体は、確実にまず、加熱室内に流入して、加熱され、次いで再び装填室内に流入するようになっている。冷却プロセスの場合にも、対流スリーブと冷却作用のある外壁/絶縁体との間で冷却された流体は、下降して、低温の流体として、装填室内へ入り込み、その結果、対流スリーブの内部における装填物の周りにある温度の高い流体を上方へ押し動かすことになる。HIP・装置のカバーにおいて、下方から到来する流れは、流体を外周領域に向けて押し動かし、これにより、流体は、外壁又は外周壁と対流スリーブとの間を再び下降することになる。これにより、相応の冷却が生じ、連続的な冷却プロセスが維持されることになる。このような類似の過程が、国際公開第2003/070402A1号明細書に、熱間等方圧プレスにおける冷却のための方法として記載されている。該方法において、高温の流体が装填室から流出して、装填室の外側の冷却作用のある下降する流体と混合され、混合した流体が再び装填室内へ戻される。該方法は、欠点として複雑な条件、ひいては熱間等方圧プレスの、多数の案内薄板の配置される複雑な構造を必要としている。更なる欠点として、混合されて再度導入されるべき流体は、コントロールされることなく装填室内へ流れ込み、そこで、装填室内における正確な貫流が装填物のアンダーカット部若しくは装填物の支持構造体により妨げられることに起因して、種々の冷却速度が生じてしまっている。該方法においては、混合温度に冷却されたガスが、下方から装填室内へ送られており、これにより、装填室の下方の端部と上方の端部との間の避けがたい温度勾配が生じており、従って一様な冷却速度を達成することは不可能である。
【0005】
HIP・装置における急冷のための構成は、例えば独国特許出願公開第3833337A1号明細書により公知である。該構成においては、急冷の実施のために、絶縁フードの内側の高温室と絶縁フードの外側の低温室との間でガス循環を行うようになっており、このために循環回路は容器底部室における弁を介して開かれるようになっている。絶縁フードの上方のカバー(蓋)には、常に開いている開口部を設けてあり、該開口部を経て温度の高い流体が流出するようになっている。該構成の欠点として、温度の著しく低い流体が下方から高温室内へ流れ戻り、直接に炉内の装填物若しくは被処理品と接触している。高温室は、下方から上方へ低温ガスで満たされることになる。これにより更に欠点として、制御不能なパラメータでの急激な冷却が生じ、装填室全体にわたる一様な冷却速度を達成することが不可能である。この場合にも、大きな構成部品においては、前に述べた問題、つまり、歪みや亀裂若しくは破損が発生してしまうことになる。これまでのことから明らかなことは、技術的に重要な温度保持段階では、装填室内の装填物若しくはチャージが、例えば±5℃の狭い許容範囲内に保たれねばならないことである。温度保持段階では、公知の圧力容器システムは、装填室内の高温のガスと低温のガスとを分離してしまう傾向にある。このような作用を防止するために、能動的な加熱要素を用いた対向処置が試みられている。しかしながら圧力容器システムにおいて、加熱要素は、装填室の周壁に作用していて、装填室の中央において分離を完全に防止できるものではない。国際公開第2003/070402A1号明細書に記載の構成においては、装填室を通る強制的な対流が用いられているものの、例えば加熱と冷却との間の保持段階、若しくは温度の段階的な変化の間の保持段階では、必要な加熱出力の減少により、対流はほぼ停止し、従って保持段階では所期の効果はほとんど得られなくなっている。循環用送風機を備える他の圧力容器システムにおいては、流れは全く鉛直に装填室へ向けられている。装填物若しくは使用される装填物支持フレームの各構造若しくは各幾何学形状により、圧力容器内に流動抵抗の互いに異なる区域が生じ、結果として、装填室内には一様でない貫流が生じることになる。つまり、流体流れ(貫流)は、抵抗の小さい経路を通って流れるので、貫流は、流動抵抗の小さい区域に沿って多くかつ高い速度で流れ、従って、流動抵抗の小さい区域は相応に急速に温度制御されることになる。これに対し、貫流又は流体流れをほとんど受けない若しくわずかしか受けない領域は、温度制御されにくく、従って、圧力容器若しくは装填室内には不均一な温度分布が生じてしまうことになる。
【0006】
本発明の課題は、熱間等方圧プレスにおける均一な温度制御のための方法を提供すると共に、該方法の実施のために適しているだけではなく、独自に均一な温度制御の利点を伴って運転される熱間等方圧プレスを提供することにある。もちろん、装填室若しくは装填物の均一な冷却を重要視しており、この場合に、低温の流体は、熱間等方圧プレスの圧力容器、有利には装填室内の高温の流体と速やかに混合され、圧力容器全体、特に装填室内における十分に高い速度でかつ確実な循環を達成し、これにより装填物全体の均一な冷却を達成することになる。しかしながら、上記方法は、装填室内の温度均一化を達成するために、熱間等方加圧プロセスにおける加熱及び保持段階にも有利に用いられるものになる。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る方法の構成によれば、圧力容器及び/又は装填室の内部において、回転流の形成のために、少なくとも1つのノズルを介して流体が噴射され、かつ圧力容器及び/又は装填室の内部にある流体と混合され、これにより、流体は、対流スリーブに沿って循環流を形成して、対流間隙から装填室内へ流入するようになっている。圧力容器の上方の領域で装填室の内部において、回転流の形成のために、少なくとも1つのノズルを介して流体を噴射し、噴射された流体は、回転流の循環に伴って絶縁体の近傍で装填物の近くを下降して、装填物の近傍の流体と混合されることになり、この場合に、噴射された流体は、装填室内の流体及び/又は装填物よりも低い温度を有している。
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る方法の実施のためにも適した熱間等方圧プレスの本発明に係る構成によれば、圧力容器から成っており、圧力容器は、内部に位置する装填室を有し、かつ装填室との間に配置された絶縁体を備えており、絶縁体の内側に加熱要素と、装填物の装填される装填室とが配置されており、装填室が、対流間隙の形成のために対流スリーブによって取り囲まれている形式のものにおいて、圧力容器の内側に、少なくとも1つの管路及び、該管路に接続されていて圧力容器の内部に位置する少なくとも1つのノズルが配置されており、ノズルの流出角は、ノズルから流出する流体が装填室内に回転流を形成するように構成され、つまり規定されており、管路は、ノズルとは逆の側で圧力容器内の温度の異なる領域に接続されている。
【0009】
本発明に係る等方圧プレスは、前記方法の実施に適しているものの、独自にも運転されるものである。本発明の技術思想は、自然の対流若しくは強制される対流に加えて、案内装置、加熱体、冷却体、吹き込み装置、噴射装置若しくは循環用送風機等により意図的に、回転流を圧力容器内に形成することを根底にしている。本発明の技術思想によれば、圧力容器内に発生されている鉛直方向の対流若しくは温度差によりすでに存在している自然の鉛直方向の対流に加えて、該対流に対して角度を成して流れる回転流を形成し、該回転流を圧力容器若しくは装填室内の流体と混合することにより、熱が局所的に蓄積されることを避けて、加熱率若しくは冷却率を増大するものである。
【0010】
本発明に基づき有利には急速に行われる冷却若しくは急冷による利点は容易に理解されるものであり、方法の過程及び/又は発生する物理的な作用は、原理的に逆の加熱及び保持段階でも、当業者にとって容易に用いられて実施され得るものである。有利には冷却の場合に回転流により、高温の流体粒子と低温の流体粒子との間の鉛直方向の分離が避けられると共に、装填物から圧力容器の内側における例えば冷却された外周部分へのエネルギー輸送が行われる。回転流により、装填室内に強い渦が生じ、従って、流動距離が長くなり、その結果、流体に、装填物若しくは温度調整された別の面、例えば冷却された外壁に対するエネルギーの授受のためのより長い時間が与えられるようになっている。このような流れは、鉛直な貫流とは異なり、装填室を均一に流過することになり、ガス及び温度交換の乏しい停滞域又はデッド域が生じるようなことはなくなっている。有利には装填室の上方の端部において行われる高い速度での流体噴射により、圧力容器若しくは装填室内にサイクロン効果が発生し、つまり、温度の低い方の流体(低温の流体)は、壁に沿って円運動しつつ、高い流体密度に基づき下降するようになっている。流体噴射は装填室の下方の端部若しくは装填室の外側で行われてもよい。装填室の外側領域若しくは外周領域では、装填物の近傍の高温の流体とサイクロン状に運動する低温の流体との間の混合が行われる。この場合に下降する流体は、装填室の内側領域若しくは内周領域の高温の流体を連行し、つまり一緒に移動させ、これにより混合温度が生じる。このような最適な混合により、かつ装填物を温度の低すぎる流体から物理的な理由で確実に保護することにより、各装填物部分の一様な最適な冷却勾配が保証されるようになっている。装填室の内部における流体の回転運動及び、これに伴って発生する渦流により、上昇若しくは下降する流体のみでは装填物若しくは装填物支持体のアンダーカット部又はニッチ状の凹部に起因して装填室内に生じる温度むらの発生が、確実に避けられるようになっている。流体の回転流及びこれに伴って発生する渦流は、回転流の流体を、装填物のニッチ状の凹部内に滞留する流体と十分に混合させることになり、温度差、つまり温度むらの完全な解消につながっている。このような構成により、アンダーカット部又はニッチ状の凹部若しくは複雑な形状を有する被加工物(被処理物)も均一に冷却(加熱)されるようになっている。更に冷却勾配は、被加工物の周り或いは温度差の形成のための冷却要素又は加熱要素の周りに層状の保護流れが形成されず、かつ、回転流が十分な渦を伴って被加工物或いは冷却体に接して流れるので増大されるようになっている。このように、熱処理中における被加工物に対する熱移動が明確に増大されるようになっている。
【0011】
回転流の効果を高めるために、本発明の有利な形態によれば、装填室(処理室)内に対流スリーブを配置してある。装填室を対流スリーブにより空間的に仕切ることにより、対流間隙内に、少なくとも追加的に、回転される独立の流れを形成することができるようになっている。該流れの流体は、圧力容器の装填室の上方若しくは下方の領域において対流間隙から流出した後に、再び、内側の装填室内に流入して、そこで、内側の装填室内の回転流に捕らえられて、混合されることになる。該構成により、装填室の下方の領域の冷却された流体(温度の低い方の流体)と装填室の上方の領域の温度の高い方の流体、及び冷却段階において圧力容器の容器底部室から新たに送り込まれる流体との最適な混合が行われるようになっている。該構成は、加熱にも逆のプロセスにより用いられるものである。
【0012】
本発明の形態によれば、対流方向に流れる流体は、対流間隙内において動的な手段により推進され若しくは静的な手段(流体の流れの案内のための案内薄板等)により案内されることに基づき回転パルスを受けるようになっている。対流間隙内における回転流も、最適な混合及び温度の均一化に役立ち、局所的な温度差を防止するものである。更に、対流間隙の壁間の熱移動が、渦を発生させる回転流により著しく増大されるようになっている。更に、対流間隙における回転流の流過長さは、相応に長くなっており、これにより、温度調整された面(冷却された圧力容器壁)に対する熱移動の著しい向上、ひいては効果的な冷却を可能にしている。同様のことが、加熱過程及び温度保持過程にも当てはまり、この場合には加熱要素若しくはヒーターの熱出力が回転流によって受け取られるようになっている。本発明の形態によれば、対流間隙内に、静的な手段である案内薄板若しくは同様の機能の抵抗体或いはそらせ部材を設けてあり、このような手段は、回転流を案内し或いはそらせて、上昇中の流体の回転速度の促進若しくは制動を行い、或いは均一な混合の向上につながる渦の発生に役立つものである。
【0013】
有利な別の形態によれば、圧力容器内に2つの循環回路を設けてあり、1つの内側の循環回路は、装填室の領域に配置されており、別の外側の循環回路は圧力容器の壁の領域に配置されており、両方の領域は、肉厚の部材又は厚い壁状の構成部材若しくは絶縁体(断熱体とも称される)によって互いに分離されていてよい。両方の循環回路内における流れの流体状態若しくは循環流量は、簡単な構造の手段、例えば所定の形状の通流開口部若しくは調整手段、例えばバルブを介して調整されるようになっていてよい。開口部は、その開口断面積を装填毎に新たに手動で調節されるようになっていてよい。
【0014】
要約すると、装填室の内部における一様な最適な温度変化が行われ、温度差が、導入される回転流により避けられるようになっている。更に、外側の循環回路と内側の循環回路との間で交換されるべき流体量、つまり外側の循環回路から内側の循環回路へ通流されるべき流体量の調整により、冷却の速度が、極めて速い状態から極めて遅い状態まで調整され、各実施例に簡単に適合されるようになっている。
【0015】
本発明に係る構成は、圧力容器内において温度を変化させる場合にも、温度の保持段階でも用いられるものの、特に急冷の場合に用いられ、装填室全体若しくは圧力容器全体にわたる均一な温度分布を達成することができる。同様のことが特に、アンダーカット部を有する被加工物にも当てはまり、更にフレーム若しくは支持装置に載せて装填されねばならない被加工物にも当てはまる。本発明の技術思想により、最新の高出力構造のものに課せられる極めて狭い温度許容範囲及び正確なプロセスを有する熱間等方圧プレスの形成が可能になっている。圧力容器内に設けられて付加的に圧力容器の壁に対して離間される絶縁体若しくは断熱体により、2つの循環回路が形成され、かつ必要に応じて各循環回路に配設される回転回路も形成される。圧力容器の外側部分に沿って流れる回転流は、圧力容器の壁(外側部分)からの熱受容の向上に役立ち、かつ外側の循環回路と内側の循環回路との間の流体の意図的に制御可能な交換により、温度差の値を簡単に調整することができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】外部の流体冷却部を有する圧力容器の中心軸線に沿った概略的な垂直断面図である。
【図2】図1の圧力容器の装填室の上方の領域の噴射平面に沿った水平断面図である。
【図3】圧力容器の絶縁体の外側の領域と内側の領域との間の混合平面に沿った水平断面図である。
【図4】循環装置による内部の急冷装置を有する圧力容器の中心軸線に沿った概略的な垂直断面図である。
【図5】対流スリーブ内に急冷のために装填室内のノズルにより形成された回転流を有する構造の簡略化された実施形態の圧力容器の垂直断面図である。
【0017】
図示の圧力容器1は、通常の構造である内部に位置する装填室19を有していて、該装填室19と圧力容器1の外壁との間に配置された絶縁体8を備えている。対流間隙28の形成のために、装填室19内に対流スリーブ27を配置してある。以下においては、主に圧力容器1における冷却について説明する。加熱された流体による或いは加熱要素による積極的な加熱(能動的な加熱又はアクティブな加熱)は、所定の流れ方向で行われるものである。更に、絶縁体8の内側に加熱要素4を配置してあり、装填物18は、通常のように底部プレート又は装填物支持プレート6上に載せられ、或いは、個品はキャリア(図示省略)を用いて装填物支持プレート上に載せられるようになっている。
【0018】
圧力容器1は更に閉鎖カバー2,3を有しており、該閉鎖カバー(閉鎖蓋又は密閉蓋)は、圧力容器1の装填及び排出のために用いられるようになっていてよいものである。絶縁体8の内側で装填室19内には少なくとも1つのノズル13を設けてあり、該ノズルを介して流体が、回転流23の形成のために有利には高い速度で供給され、つまり噴射されるようになっている。流体は、装填室19内の流体及び/又は装填物18自体よりも低い温度を有していてよいものである。物理的な法則に基づき、温度の低い方の流体(低温の流体)は、回転流23によって絶縁体8の内壁に向けて押される。回転流23は、装填室内を回転しつつ下方へ降下し、同時に、外側を回転する低温の流体は、装填物18の近傍からの温度の高い方の流体(高温の流体)と混合するようになる。従って、圧力容器の中心軸線26に対して垂直な断面で見て、中心軸線26の近傍には、最も高い温度の流体が存在している。つまり、温度は、回転流23の形成中には絶縁体8に向かって減少している。有利な実施形態では、流体は、少なくとも1つのノズル13から圧力容器1の中心軸26に対して水平に送り込まれるようになっている。特に有利なのは、圧力容器1の中心軸線26に対する接線方向の流出、より正確には表現すれば、中心軸線26を中心とする仮想の円又は円弧に対する接線方向の流出である。更に、ノズルからの流出(噴射若しくは送り込み)の際の流体の高い速度及び/又は複数のノズル13の配置も有利(利点)である。ノズルは、対流スリーブ27の内側に配置され、及び/又は対流スリーブ27の外側に配置され、及び/又は絶縁体8の外側に配置されてよいものである。図4の実施形態によれば、流体は、装填室下端部の下側の容器底部室22から低い温度で循環装置5により取り出され、かつ直接に、上昇する管路12内へ供給されるようになっており、或いは、図1に示してあるように、流体は、流出部24を介して圧力容器1の外側の流体冷却器10に送られ、次いで例えばコンプレッサー11により流入部25を介して管路12内へ供給されるようになっている。特に有利な実施形態によれば、冷却されて流入部25を介して圧力容器1内に戻された流体は、吹込み管又は噴射管15及びディフューザー16から成るエジェクターポンプを介して、容器底部室22内の流体と混合した状態で管路12内へ供給(吐出)されるようになっている(図1)。回転流23のための全ての推進手段において、流体は、貫通部7を介して、直接に装填室19から且つ/又は第2の環状間隙17から容器底部室22内へ流れ込むようになっていてよい。このことは、構造的に可能な構成であり、装填室19からの流体が第2の環状間隙17からの流体よりも明らかに高い温度を有しているので、必要な冷却速度に依存して決められるものである。
【0019】
圧力容器1全体の急冷の更なる最適化のために、互いに平行に配置された2つの環状間隙9,17内における自然の対流により外側の循環回路20を構成してあり、この場合に、循環回路20は、完全に絶縁体8の外側に配置されている。外側の循環回路20の流体と装填室19内を回転する流体とは、装填室19の下側で絶縁体8の貫通部14を介して互いに交換と混合が行われるようになっている。この場合に、回転流23の高温のガスが、貫通部14を経て外側の循環回路20に達し、そこでまず、外側の循環流と混合され、続く圧力容器1に沿った循環に基づき引き続き冷却され、従って、冷却されたガスとして貫通部14を経て装填室19の下側へ流れ戻ることになる。外部で冷却されて流入部25を介して供給される流体、及び/又は外側の環状間隙17内で圧力容器1の壁を介して冷却される流体の混合により、流体の強烈かつ急速な冷却が達成され、ひいては図1若しくは図4の急冷形態における装填室19の強烈かつ急速な冷却が達成される。もちろん、このような急冷形態に関する種々の変化例が当業者には考えられるものである。
【0020】
図4に示してある有利な別の実施形態によれば、装填室19の上側に案内装置30を配置してある。案内装置30は、加熱中若しくは冷却中に、装填室19と対流間隙28との間を移動する流体流を、装填室19のコーナ領域から滑らかに受け取り、或いはコーナ領域へ滑らかに引き渡すようになっている。つまり、流体流は案内装置30によって意図的な方向転換を受けるようになっている。このような構成により、両方の運転形態において、次の有用な利点が得られ、つまり、例えば対流間隙28から装填室19内への低温の流体の移動に際して、低温の流体が、コントロールされることなく装填室19の中央へ、つまり装填物18上へ降下してしまうことを避けることができ、なぜなら、低温の流体は、コーナ近傍で対流スリーブ27の内壁に沿って、対流スリーブ27の内室に流入して、そこに発生している回転流によって連行(同伴)され、つまり引き連れられて運ばれるからであり、或いは装填室19内において推進される回転流自体によって対流スリーブ27の内壁に向けて押されるからである。別の逆の実施形態では、案内装置30を流体力学に基づき適切に構成することにより、対流スリーブ27の内側において予測不能な二次流が中央を上方へ上昇して、そこで冷却され、次いで下方へ降下するようなことを避けることができ、或いは、対流スリーブ内への移動中にコントロールされずに混合の不十分な流れが中心軸26の近傍に発生するようなことを避けることができる。
【0021】
本発明に係る別の有利な実施形態は次の手段を可能にするものである。つまり、ノズル13から流出する低温の流体と絶縁体8の上方部位の近傍にある高温の流体とを直ちに混合するために、流体をノズル13からディフューザー(図示省略)内へ噴射することも考えられる。更に別の変化例によれば、追加的な貫通部7を、外側の環状間隙17と容器底部室22との間に設けてあり、このような構成により、圧力容器1の壁で冷却された流体は、直接に容器底部室22内へ戻されるようになっている(図4)。
【0022】
図5には別の実施形態の圧力容器1を概略的に示してある。この場合に、管路12及びノズル13により流体を意図的に装填室19内へ送り込むことにより、対流スリーブ27内に回転流23を形成するようになっている。装填物18は、噴射管15から管路12内へ噴射されてノズル13から送り込まれる温度の低い流体、並びに、噴射管15及びディフューザー16によって形成されたエジェクターポンプを介して容器底部室22から管路12内へ取り込まれて同じくノズル13から送り込まれる低温の流体により洗われるようになっており、つまり、管路12及びノズル13を介して装填室19内へ送り込まれた該流体は、装填物18に沿って流れるようになっている。同時に装填室19及び対流スリーブ27内には混合温度が生じ、該混合温度により装填物18が緩やかに冷却される。対流スリーブ27は、装填物18の下方で、図示の実施形態では加熱要素4の下方で、流体を対流間隙28内へ流出させるようになっており、対流間隙内へ流出した流体は、対流間隙内を上方へ吸引され、ノズル13の上方で再び装填室19内へ入り込むようになっている。超急冷のために1つの実施形態では、対流スリーブ27の下側領域から流出させられる流体が、部分的に外側の環状間隙17及び内側の環状間隙9内へ入り込むようになっており、そこで流体は、有利には環状間隙9内を絶縁体8の温度の高い周面に沿って上昇することにより、第2の循環回路20を形成するようになっている。該循環回路を流れる流体は、有利には上方で、つまり圧力容器1のカバーの下側で内側の環状間隙9から外側の環状間隙17内へ流れ込むようになっており、該外側の環状間隙は圧力容器1の低温の周面によって画成されている。図示の実施形態では低温の容積を成す外側の環状間隙17は、容器底部室22に通じており、該容器底部室22内の流体は、再び、ディフューザー16により形成されたエジェクターポンプ及び管路12を介してノズル13から直接に、装填室19若しくは対流スリーブ27内へ供給される。冷却に関連して詳細に述べてある上述のシステムは、加熱のためにも相応に用いられるものであり、加熱は従来通りに、純然たる加熱要素若しくはヒーター及び/又は加熱された流体を用いて行われる。圧力容器の高温及び/又は低温の領域からの流体の意図的な再分配は、加熱の場合にも、ノズル13に通じる管路12内への吸引若しくは吐出により行われてよい。
【符号の説明】
【0023】
1 圧力容器、 2,3 閉鎖カバー、 4 加熱要素、 5 循環装置、 6 装填物支持プレート、 7 貫通部、 8 絶縁体、 9 環状間隙、 10 流体冷却器、 11 コンプレッサー、 12 管路、 13 ノズル、 14 貫通部、 15 噴射管、 16 ディフューザー、 17 環状間隙、 18 装填物、 19 装填室、 20 外側の循環流の循環回路、 21 循環回路のための案内薄板、 22 容器底部室、 23 回転流、 24 流出部、 25 流入部、 26 中心軸、 27 対流スリーブ、 28 対流間隙、 29 内側の循環流、 30 案内装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間等方圧プレスにおける温度制御のための方法であって、前記熱間等方圧プレスは圧力容器(1)から成っており、該圧力容器は、内部に位置する装填室(19)を有し、かつ該装填室との間に配置された絶縁体(8)を備えており、該絶縁体(8)の内側に加熱要素(4)と、装填物(18)の装填される1つの装填室(19)とが配置されており、少なくとも該装填室(19)が、対流間隙(28)の形成のために対流スリーブ(27)によって取り囲まれている形式のものにおいて、前記圧力容器(1)及び/又は前記装填室(19)の内部において、回転流(23)の形成のために、少なくとも1つのノズル(13)を介して流体を噴射して、そこにある流体と混合し、これにより、前記流体は、前記対流スリーブ(27)に沿って循環流(29)を形成して、前記対流間隙(28)から前記装填室(19)内へ流入することを特徴とする、熱間等方圧プレスにおける温度制御のための方法。
【請求項2】
前記流体は、前記ノズル(13)から、前記圧力容器(1)の中心軸線(26)を中心とする仮想の1つの円弧に対して接線方向に噴射される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体は、前記ノズル(13)から、水平線に対して傾斜された角度で前記装填室(19)内に噴射される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対流間隙(28)内において、案内薄板によって前記回転流を促進し若しくはそらせる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記温度制御の更なる最適化のために、外側の循環回路(20)を、(互いに平行に配置された2つの環状間隙(9,17)における)自然の対流によって形成し、前記循環回路は、前記圧力容器(1)内の前記絶縁体(8)の完全に外側に配置されている請求項1に記載の方法。
【請求項6】
急冷の場合に、前記ノズル(13)から流出させるべき前記流体を、容器底部室(22)から低い温度で、直接に管路(12)内へ供給する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
急冷の場合に、流体を流出部(24)から、前記圧力容器(1)の外側にある流体冷却器(10)に送り、次いで流入部(25)から管路(12)内へ供給する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
急冷の場合に、前記圧力容器(1)の外側で冷却された前記流体を、容器底部室(22)において、噴射管(15)及びディフューザー(16)から成るエジェクターポンプにより、直接に、若しくは前記容器底部室(22)内の流体と混合して、管路(12)内へ供給する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
急冷の場合に、前記回転流(23)の流体を、前記装填室(19)の下側で該装填室(19)から、前記絶縁体(8)の貫通部(14)を介して、外側の循環回路(20)内へ流入させて、該外側の循環回路(20)の流体と混合し、引き続く循環に基づき前記圧力容器(1)の壁に沿って流過させて、前記貫通部(14)を介して低温の流体として前記装填室(19)の下方へ戻し流す請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記流体は、鉛直に向いている貫通部(7)を介して、前記装填室(19)と前記容器底部室(22)との間で交換され、且つ/又は水平に向いている貫通部(7)と前記容器底部室(22)との間で交換される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
急冷の場合に、内側の前記循環回路(29)の流体は、前記対流間隙(28)からの流出の後に、かつ前記装填室(19)内への流入の前に、少なくとも該装填室(19)の中央では該装填室(19)内へ流れ込まないように、案内装置(30)により一様に方向転換される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
熱間等方圧プレスであって、圧力容器(1)から成っており、該圧力容器は、内部に位置する装填室(19)を有し、かつ該装填室との間に配置された絶縁体(8)を備えており、該絶縁体(8)の内側に加熱要素(4)と、装填物(18)の装填される1つの装填室(19)とが配置されており、少なくとも該装填室(19)が、対流間隙(28)の形成のために対流スリーブ(27)によって取り囲まれている形式のものにおいて、前記圧力容器(1)の内側に、少なくとも1つの管路(12)及び、該管路に接続されていて該圧力容器(1)の内部に位置する少なくとも1つのノズル(13)が配置されており、該ノズル(13)の流出角は、前記装填室(19)内に回転流(23)を形成するように構成されており、前記管路(12)は、前記圧力容器(1)内の温度の異なる領域に接続されていることを特徴とする熱間等方圧プレス。
【請求項13】
前記ノズル(13)の流出方向は、前記圧力容器(1)の中心軸(26)に対して水平に且つ/又は接線方向に配置されている請求項12に記載の熱間等方圧プレス。
【請求項14】
前記ノズル(13)の流出方向は、前記圧力容器(1)の中心軸(26)に対して接線方向に向けられていて、かつ水平線から下方へ若しくは上方へ傾けて配置されている請求項12又は13に記載の熱間等方圧プレス。
【請求項15】
前記装填室(19)の上方の領域及び/又は下方の領域に、該装填室(19)と前記対流間隙(28)との間で交換すべき流体の意図的な方向転換のための案内装置(30)が配置されている請求項13又は14に記載の熱間等方圧プレス。
【請求項16】
前記圧力容器(1)内若しくは少なくとも対流間隙(28)内に、前記回転流の支援若しくは制動のための少なくとも1つの案内薄板が配置されている請求項13に記載の熱間等方圧プレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509191(P2012−509191A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536791(P2011−536791)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008329
【国際公開番号】WO2010/057668
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(508151910)ディーフェンバッハー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】Dieffenbacher GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heilbronner Strasse 20, D−75031 Eppingen
【Fターム(参考)】