説明

熱陰極蛍光ランプ点灯回路およびバックライト装置

【課題】 熱陰極蛍光ランプと回路との接続が簡素な熱陰極蛍光ランプ点灯回路およびバックライト装置を提供する。
【解決手段】 一対のフィラメント21、22を有する熱陰極蛍光ランプ2に電力を供給する放電回路6と、フィラメント21、22に予熱電流を供給する予熱回路7とを具備し、予熱回路7は、第1の予熱回路71と第2の予熱回路72を有し、第1の予熱回路71はフィラメント21側に、第2の予熱回路はフィラメント22側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極蛍光ランプを複数点灯するのに適した点灯回路およびバックライト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶テレビ等の液晶表示装置に用いられるバックライトは、直下型が主流である。この直下型のバックライトは、ケースの内部に蛍光ランプを複数本並列に配置した構成である。この蛍光ランプとして、一本でも大光量が得られる熱陰極蛍光ランプが注目されている。
【0003】
熱陰極蛍光ランプを点灯するための点灯回路としては、例えば特開平8−31582号公報(以下、特許文献1)がある。この特許文献1には、熱陰極蛍光ランプの予熱を1つの予熱手段で行い、熱陰極蛍光ランプの点灯を1つの点灯手段で行うことが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−31582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、熱陰極蛍光ランプの予熱を1つの予熱手段で行っているために、熱陰極蛍光ランプのフィラメントに接続するためのリード線が長くなってしまう。リード線が長くなると、電圧降下が発生して所定の予熱電流が入力されなかったり、リード線が絡まったり、接続が複雑になったりという問題が生じる。この問題は、熱陰極蛍光ランプの長尺化、ランプ本数の増大に伴い、顕著になる。
【0006】
本発明の目的は、熱陰極蛍光ランプとの接続を簡素化可能な熱陰極蛍光ランプ点灯回路およびバックライト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の熱陰極蛍光ランプ点灯回路は、一対のフィラメントを有する熱陰極蛍光ランプに電力を供給する放電回路と、前記フィラメントに予熱電流を供給する予熱回路とを具備し、前記予熱回路は、第1の予熱回路と第2の予熱回路を有し、前記第1の予熱回路は一方の前記フィラメント側に、前記第2の予熱回路は他方の前記フィラメント側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱陰極蛍光ランプとの接続を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の実施の形態の熱陰極蛍光ランプ点灯回路について図面を参照して説明する。図1は、熱陰極蛍光ランプを用いたバックライト装置について説明するための図、図2は、図1のバックライト装置を裏側から見た図、図3は、本発明の第1の実施の形態の熱陰極蛍光ランプ点灯回路について説明するための図である。
【0010】
本実施の形態のバックライト装置は直下型であり、その筐体はフロントフレーム11とバックフレーム12とで構成されている。フロントフレーム11は、蓋体であり、その主面にはバックライトの発光面となる開口面が形成されている。バックフレーム12は、有底開口形状の箱体であり、その底および側壁の内面には高反射性を有する反射シートが形成されている。これらフロントフレーム11とバックフレーム12の材料としては、アルミニウムなどの金属やポリカーボネートなどの白色プラスチックを使用することができる。
【0011】
バックフレーム12の内部には、直管型の熱陰極蛍光ランプ2が複数本、それぞれの管軸がほぼ平行の関係になるように横配置されている。
【0012】
熱陰極蛍光ランプ2は、内部にアルゴン及びネオンの混合ガスと水銀、内面に蛍光体層、両端にフィラメント21、22が配置されてなる。このフィラメント21、22には熱電子放射物質として(Ba,Ca,Sr)Oを主成分とするエミッタが塗布されている。
【0013】
バックフレーム12の開口部分には、光学部材として拡散板3が配置されている。拡散板3としては、発光ムラを低減でき、かつ効率が下がりすぎないよう、50%〜85%の透過率のものを使用するのが望まれる。また、拡散シート、偏光シート、プリズムシートなどの各種光学シートをさらに配設しても良い。
【0014】
バックフレーム12の裏側には、第1の基板41および第2の基板42が、熱陰極蛍光ランプ2の両端付近に位置するように、すなわちフィラメント21、22付近に位置するように離間配置されている。この第1の基板41、第2の基板42には、それぞれコネクタ51とコネクタ52が接続されている。コネクタ51には、直流電圧の入力端子である電圧端子Vin、調光信号の入力端子である調光端子DIM、オンオフ信号の入力端子であるコントロール端子CNT、コネクタ52には電圧端子Vinのみが設けられている。つまり、入力端子Vinなどと比較して電圧の低い信号系の端子は、一方のコネクタにだけ設ける構成としている。
【0015】
また、図2のように、第1の基板41には、放電回路6、第1の予熱回路71、遅延回路81、ランプオンオフ制御回路82、PWM波形変換回路83、DC−DCコンバータ84および予熱オンオフ制御回路85、第2の基板42には、第2の予熱回路72、DC−DCコンバータ86および予熱オンオフ制御回路87が配置されている。
【0016】
放電回路6は、熱陰極蛍光ランプ2に電力を供給し、放電を生起するための回路である。この放電回路6は、1つの回路で1本の熱陰極蛍光ランプの点灯が可能であり、すなわち、本実施の形態のように熱陰極蛍光ランプ2を8本点灯する場合には、8つの回路61〜68を使用する。回路61〜68は、図3のように、放電用トランス駆動回路、ランプ駆動制御回路および放電用トランスで構成されている。放電用トランス駆動回路は、放電用トランスを駆動させるための回路である。ランプ駆動制御回路は、放電用トランス駆動回路を制御するための回路であり、各ランプ駆動制御回路は信号線91で結線され、同期がとられている。放電用トランスは、電圧を所望の値に変圧するためのトランスであり、その2次側は熱陰極蛍光ランプ2のフィラメント21に接続されている。
【0017】
第1の予熱回路71は、熱陰極蛍光ランプ2のフィラメント21に予熱電流を供給し、フィラメントに塗布されたエミッタの消耗を抑制するための回路である。この第1の予熱回路71は、1つの回路で2つのフィラメントの予熱を可能としており、すなわち、本実施の形態のように熱陰極蛍光ランプを8本点灯する場合には、4つの回路711〜714を使用する。その回路711〜714は、図3のように、フィラメント予熱用トランス駆動回路、フィラメント予熱制御回路およびフィラメント予熱用トランスで構成されている。フィラメント予熱用トランス駆動回路は、フィラメント予熱用トランスを駆動するための回路である。フィラメント予熱制御回路は、フィラメント予熱用トランス駆動回路を制御するための回路である。フィラメント予熱用トランスは、電圧を所望の値に変圧するためのトランスであり、その2次側は熱陰極蛍光ランプ2のフィラメント21の両端に接続されている。なお、第1の予熱回路71の出力側には、放電回路6の出力側との接続点が設けられており、つまり、フィラメント21は高圧側として使用される。
【0018】
また、第2の予熱回路72も、第1の予熱回路71と同様、4つの回路721〜724で構成されており、その出力側は熱陰極蛍光ランプ2のフィラメント22の両端に接続されている。
【0019】
このように、熱陰極蛍光ランプ2の予熱回路を第1の予熱回路71と第2の予熱回路72とに分け、フィラメント21側に第1の予熱回路71、フィラメント22側に第2の予熱回路72を配置することにより、それぞれのフィラメント21、22を予熱するための予熱電流供給リード線を短くすることができるため、熱陰極蛍光ランプ2との接続を簡素化することができる。つまり、従来、特許文献1のように予熱回路が一つである場合、ランプ個々にはフィラメントを予熱するために、長い予熱電流供給リード線が必要であった。そのため、リード線が長いほど、また高周波であるほど、電圧降下が発生して所定の予熱電流が入力されず、フィラメント21、22で予熱電流の入力が変化するなどが発生したり、リード線が絡まったり、接続が複雑になったりという問題が発生していたが、本発明によりその問題は解消される。
【0020】
次に、熱陰極蛍光ランプ点灯回路の駆動例を説明する。
【0021】
コネクタ51、52の入力端子Vinには24V、調光端子DIMには0〜3.3V(デューティ比を20〜100%に調整可能)、コントロール端子CNTには5Vと0Vの直流電圧が入力される。
【0022】
放電回路6を構成する回路61〜68には、入力端子Vinの直流電圧と、PWM波形変換回路83によってPWM波形に変換された調光端子DIMの調光信号と、遅延回路81、ランプオンオフ制御回路82によって制御されたコントロール端子CNTのオンオフ信号とが入力される。これらの入力は、各回路によって、400〜1200Vrms、70〜150mArms、60〜65Hzの交流に変換され、熱陰極蛍光ランプ2のフィラメント21に入力される。なお、遅延回路81は、フィラメントが予熱電流により十分に温まった後に、放電回路6から熱陰極蛍光ランプ2に電力供給を行うようにするための回路であり、例えばランプの予熱開始後から3〜10s程度の遅延時間が設定されたタイマー回路を使用できる。
【0023】
一方、第1の予熱回路71を構成する回路711〜714には、DC−DCコンバータ84により24Vから20Vに直流変換されたコネクタ51の入力端子Vinの直流電圧と、予熱オンオフ制御回路85によって制御されたコントロール端子CNTのオンオフ信号とが入力される。この入力は、各回路によって、2〜3Vrms、400〜500mArms、20〜40kHzの交流に変換され、熱陰極蛍光ランプ2のフィラメント21の両端に入力される。また、第2の予熱回路72を構成する回路721〜724には、DC−DCコンバータ86により直流変換されたコネクタ52の入力端子Vinの直流電圧と、予熱オンオフ制御回路87によって制御されたコネクタ51のコントロール端子CNTのオンオフ信号とが入力される。この入力は、第1の予熱回路71と同様に交流変換され、熱陰極蛍光ランプ2のフィラメント22の両端に入力される。なお、コネクタ51のコントロール端子CNTのオンオフ信号は、第1の基板41と第2の基板42間に架設された信号線92により伝送されている。
【0024】
上述のような駆動により、エミッタの消耗を抑制するようにフィラメント21、22を予熱しつつ、熱陰極蛍光ランプ2を点灯することができる。
【0025】
したがって、第1の実施の形態では、予熱回路を、第1の予熱回路71と第2の予熱回路72とに分け、第1の予熱回路71はフィラメント21に、第2の予熱回路72はフィラメント22に近接するように第1の基板41上と第2の基板42上とにそれぞれ実装したことにより、第1の予熱回路71とフィラメント21、および第2の予熱回路72とフィラメント22の接続を短いリード線で行うことができるため、熱陰極蛍光ランプ2との接続を簡素化することができる。
【0026】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態の熱陰極蛍光ランプ点灯回路について説明するための図である。これ以降の実施の形態の各部については、第1の実施の形態の熱陰極蛍光ランプ点灯回路の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0027】
この実施の形態では、第2の予熱回路として、コネクタ42の入力端子Vinからの直流電圧を変換する直流電源回路10を接続し、その直流電源回路10の出力側を各熱陰極蛍光ランプ2のフィラメント22の両端に並列接続している。すなわち、フィラメント21には交流、フィラメント22には直流の予熱電流を供給する構成としている。これにより、熱陰極蛍光ランプ2との接続をさらに簡素化することができるとともに、回路構成部品を削減することができる。なお、このような構成は、放電回路6と接続されず、低圧側とされたフィラメント22側だからこそ実現可能であり、放電回路6と接続され、高圧側とされたフィラメント21側では実現不可能である。
【0028】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態のバックライト装置を裏側から見た図、図6は、本発明の第3の実施の形態の熱陰極蛍光ランプ点灯回路について説明するための図である。
【0029】
この実施の形態では、放電回路6を第1の放電回路61と第2の放電回路62とに分け、第1の放電回路61をフィラメント21側に、第2の放電回路62をフィラメント22側に配置している。すなわち、第1の基板41に、第1の放電回路61(回路611〜614)と第1の予熱回路71(回路711〜714)、第2の基板42に、第2の放電回路62(回路621〜624)と第2の予熱回路72(回路721〜724)を配置している。これにより、第1の実施の形態と同様の効果が得られるほか、図6に示すように、放電回路6と予熱回路7の回路構成部品が第1の基板41と第2の基板42とに分配されるため、一方の基板の部品集中を回避でき、両基板上における回路構成部品の配置設計の自由度を高めることができる。また、特に熱を発しやすいトランスが第1の基板41、第2の基板42に均等分配されるため、第1の基板41と第2の基板42近辺の温度を均一化することができる。つまり、本構成は、熱陰極蛍光ランプ2の長尺化に伴ってトランスが大型化したときなどに、特に有利である。
【0030】
また、信号線94を遅延回路81とランプオンオフ制御回路82の間に接続したので、第1の基板41上の回路611〜614と第2の基板42上の回路621〜624を点灯開始後、ほぼ同じタイミングで駆動させることができる。そのため、点灯タイミングが大きく異なるランプが出現しにくくなり、保護回路が異常と判断したことによる誤動作を抑制することができる。
【0031】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0032】
熱陰極蛍光ランプ2としては、その形状は直線状に限定されず、例えば、S字やL字等のランプであってもよい。要は、一対のフィラメント21、22が十分な距離をおいて離間配置される熱陰極蛍光ランプの場合、本発明は特に有効である。
【0033】
また、熱陰極蛍光ランプ2は、一対のフィラメント21、22の他に、さらにフィラメントを有する構成であってもよい。
【0034】
コネクタ51、52は、一つにまとめても良い。
【0035】
図2や図5の信号線92や信号線94を、第1の基板41のランプオンオフ制御回路82や予熱オンオフ制御回路85の後、かつ各回路に枝分かれする前の線と接続して、第2の基板42のランプオンオフ制御回路87や予熱オンオフ制御回路88を省略する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】熱陰極蛍光ランプを用いたバックライト装置について説明するための図。
【図2】図1のバックライト装置を裏側から見た図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の熱陰極蛍光ランプ点灯回路について説明するための図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の熱陰極蛍光ランプ点灯回路について説明するための図。
【図5】本発明の第3の実施の形態の熱陰極蛍光ランプ点灯回路について説明するための図。
【図6】本発明の第3の実施の形態のバックライト装置を裏側から見た図。
【符号の説明】
【0037】
11 フロントフレーム
12 バックフレーム
2 蛍光ランプ
21、22 フィラメント
41 第1の基板
42 第2の基板
51、52 コネクタ
6 放電回路
61〜68 回路
71 第1の予熱回路
711〜714 回路
72 第2の予熱回路
721〜724 回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフィラメントを有する熱陰極蛍光ランプに電力を供給する放電回路と、前記フィラメントに予熱電流を供給する予熱回路とを具備し、
前記予熱回路は、第1の予熱回路と第2の予熱回路を有し、前記第1の予熱回路は一方の前記フィラメント側に、前記第2の予熱回路は他方の前記フィラメント側に配置されていることを特徴とする熱陰極蛍光ランプ点灯回路。
【請求項2】
一方の前記フィラメント側を高圧側としたとき、他方の前記フィラメント側には直流の予熱電流が供給されることを特徴とする請求項1に記載の熱陰極蛍光ランプ点灯回路。
【請求項3】
前記放電回路は、第1の放電回路と第2の放電回路を有し、前記第1の放電回路は一方の前記フィラメント側に、前記第2の放電回路は他方の前記フィラメント側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱陰極蛍光ランプ点灯回路。
【請求項4】
前記放電回路の入力側には遅延回路が配置されており、前記遅延回路は前記第1、第2の予熱回路が駆動してから所定時間後に前記放電回路を駆動させることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の熱陰極蛍光ランプ点灯回路。
【請求項5】
筐体と、前記筐体内に複数並列に配置された一対のフィラメントを有する直管型の熱陰極蛍光ランプと、複数の前記熱陰極蛍光ランプの一方の前記フィラメントに沿うように前記筐体に配置された第1の基板と、複数の前記熱陰極蛍光ランプの他方の前記フィラメントに沿うように前記筐体に配置された第2の基板と、前記第1の基板または第2の基板上に配置され、前記熱陰極蛍光ランプに電力を供給する放電回路と、前記第1の基板上に配置され、一方の前記フィラメントに予熱電流を供給する第1の予熱回路と、前記第2の基板上に配置され、他方の前記フィラメントに予熱電流を供給する第2の予熱回路とを具備していることを特徴とするバックライト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−158455(P2009−158455A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100218(P2008−100218)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】