熱電式ジェネレータを用いる火炎検知および抑制システム
炎および/または爆発から処理設備を保護するための装置および方法が提供される。特に、前記処理設備の火炎の前面または爆燃波の伝搬性を検知するために、ゼーベックセンサ、または、熱電式ジェネレータを用いる。爆燃波の検知に基づいて、システム制御装置は、ダメージから処理設備を保護するために、化学抑制剤または遮断弁の形をした抑制装置を作動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、全体がここに参照として組み込まれている2008年7月3日に提出された米国仮出願No.61/078,131,の有利性を主張する。
【0002】
本発明の背景
発明の分野
本発明は、概して、炎抑制および爆発防止システムのゼーベックデバイスの使用に向けられたものである。概して、ゼーベックデバイスは、容器などの処理装置中に配置され、パイプラインに接続されており、さらに、爆発の火炎の前面を検知するために用いられる。火炎の前面の検知に基づいて、システムは、周囲または相互接続する設備中への伝搬からの火炎または爆発を防止するために、例えば、抑制力の解放またはバルブのクローズといった抑制メカニズムを作動する。
【背景技術】
【0003】
従来技術の記載
粉塵爆発は、可燃材料を処理する際、不幸な、しかし、現実問題である。複数の実例において、爆発抑制システムの有効性は、関与する粉塵のタイプに起因する。
【0004】
従来の爆発抑制システムは、概して、処理設備内の火炎を「視覚的に」検知するために、光センサを用いる。最も一般的な赤外線を検知する光センサは、かなり簡便かつ安価なデバイスである。光センサは、高速の応答時間を提供する点で有効であるが、これらのセンサも、いくつかの顕著な弱点を呈する。光センサは、「迷」放射線を受ける場合があり、従って、光センサは、センサが環境光に露光されるダクトの出口、または、その付近にも用いることができない。さらに、センサは、処理設備内で生じる粉塵によって「ブラインド」されることがある。
【0005】
圧力センサは、爆発によって生じる圧力の前面を検知するためにも用いることができる。しかしながら、光センサと同じように、圧力センサは、圧力の前面が発展することができない時に、ダクトの出口、または、その付近でも、あまり作動しない。
【0006】
様々なタイプの煙検知器に一般的に用いられるイオン化検知器にも、一定の欠点が存在する。特に、イオン化検知器は、火炎を直ぐに検知せず、かつ、限られた残存性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の概要
一実施形態において、本発明は、処理設備内で使用するための炎および/または爆発の保護システムを指向する。システムは、処理設備内の火炎の検出を信号伝達するための少なくとも1つの検知器で構成される。少なくとも1つの検知器は、2つの対向する基板、および、これらの間に配置される熱電脚ペアのアレイで構成される。少なくとも1つの検知器は、爆燃波によって生じる温度差に反応して電気信号を生成する。
【0008】
本発明に係る他の実施形態においては、処理設備内の爆燃波を検知する方法が提供される。この方法は、2つの対向する基板、および、これらの間に配置されるペアの熱電脚のアレイで構成される、少なくとも1つの検知器を、処理設備内に配置するステップで構成される。少なくとも1つの検知器は、爆燃波によって生じる温度差に反応して電気信号を生成する。
【0009】
本発明に係るもう1つの実施形態においては、炎および/または爆発から処理設備を保護する方法が提供される。この方法は、処理設備内に、2つの対向する基板、および、これらの間に配置されるペアの熱電脚のアレイで構成される、少なくとも1つの検知器を配置するステップで構成される。この検知器は、爆燃波によって生じる温度差に反応して電気信号を生成することにより、爆燃波の存在を検知するために用いられる。信号は、プロセッサで構成される制御ユニットに送信される。プロセッサは、信号を受信し、次いで、信号に反応して抑制装置を作動する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の説明
【図1】図1は、本発明に従って用いられる代表的なゼーベックセンサを図示している。
【図2】図2は、ゼーベック効果を示す熱電脚ペアの概念図である。
【図3】図3は、ゼーベックセンサを用いる代表的な炎/爆発抑制システムの概念図である。
【図4】図4は、炎/爆発抑制システムに用いる代表的なゼーベックセンサデバイスの透視図である。
【図5】図5は、ゼーベックセンサで構成される図4のデバイスの一部の拡大図である。
【図6】図6は、本発明に用いられる「標準」TEGデバイスの層の条件下における応答時間を図示するチャートである。
【図7】図7は、本発明に用いられる「厚みの薄い」TEGデバイスの層の条件下における応答時間を図示するチャートである。
【図8】図8は、二つのTEGデバイスと一般的な光火炎検知器との応答時間を比較するチャートである。
【図9】図9は、本発明で用いられる「標準」TEGデバイスの乱流条件下における応答時間を図示するチャートである。
【図10】図10は、本発明に用いられる「厚みの薄い」TEGデバイスの乱流条件下における応答時間を図示するチャートである。
【図11】図11は、層の条件下におけるTEGデバイスから生じる信号の速度および分布を比較するチャートである。
【図12】図12は、乱流の条件下におけるTEGデバイスから生じる信号の速度および分布を比較するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好適実施形態の詳細な説明
本発明に用いられる検知器は、以下で交互性をもって用いられる用語、熱電式ジェネレータ(TEG)、ゼーベックセンサ、または、ペルチェクーラとして知られる。本発明に従って用いられるTEGは、直接電気へと温度差を変換するゼーベック効果を有する。電圧、熱電式のEMFは、2つの異なる材料または半導体の間の温度差の存在において生成され、連続する電流を生成するために用いられる。ゼーベック効果は、電力源が伝熱式デバイスに対して提供された場合に冷却を生み出すペルチェ効果と対照的である。
【0012】
特定の実施形態においては、TEGは、2つの対向する基板の間に配置された数百のマイクロサイズの熱電対(各熱電対は、個々の熱電脚のペアで構成されている)で構成される。代表的なTEGデバイスを図1に図示し、以下にさらに詳述する。これらのデバイスは、上位および下位の表面または基板間の温度差を電流に変換することが可能である。図2は、代表的な熱電脚と、デバイスの「熱」および「冷」側間の温度差に起因する電圧の発生とを模式的に図示している。確定した電圧は、ロードを通過する電流を生成するために用いられる。
【0013】
図1に示すように、TEGデバイス2は、一対の対向するシリコン基板3および4で構成される。基板3および4の間に挟まれたものは、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、および、セレン(Se)で成るグループから選択された1種類以上の材料で構成される複数の負の脚5および正の脚6である。特定の実施形態においては、脚は、Bi2Te3材料で構成される。脚は、それぞれ、正のコンタクト7または負のコンタクト8に接続される。本発明に用いることが可能な代表的なTEGデバイスは、ドイツのフライブルグ区のMicropelt GmbH社のものが利用可能である。
【0014】
TEGデバイス上の熱電脚ペアの密度は、爆燃波を検知する際の使用において、デバイスの効果にも影響を与える。特定の実施形態においては、TEGは、少なくとも40熱電脚ペア/mm2で構成される。他の実施形態においては、TEGは、少なくとも75脚ペア/mm2、もう一つの実施形態においては少なくとも100脚ペア/mm2、さらに他の実施形態においては、150脚ペア/mm2で構成される。特に好適な実施形態においては、TEGは、約77脚ペア/mm2で構成される。本発明の代替えの実施形態においては、TEGは、約40から約500脚ペア/mm2の間、または、約50から約400脚ペア/mm2の間、または、約70から約300脚ペア/mm2の間の密度で存在する。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、TEGはとても薄く、各基板に25mm2より少ない検知面領域(例えば、熱電脚ペアが占有するTEGの領域)が存在するマイクロサイズのデバイスである。特定の実施形態においては、各基板の検知面領域は、約6.25mm2である。各基板は、600マイクロより小さい厚みを有する。特定の実施形態においては、この厚みは、500マイクロ、または250マイクロ、または200マイクロより小さい。さらに他の実施形態においては、基板の厚みは、約1〜約600マイクロの間、または約5〜500マイクロの間、または約10〜約250マイクロの間である。従って、TEGは、処理設備内においていかなる場所においても実質的に目立たずに用いることが可能である。
【0016】
TEGの物理的寸法は、これらによって提供される極めて低い応答時間に寄与する。「応答時間」は、TEGが、ゼロからそのピーク出力に達するまでの時間を意味している。本発明に用いられるTEGは、概して、10msより短い応答時間を呈する。特定の実施形態においては、応答時間は、5msより短い、または、約2.5msより短くても良い。さらに他の実施形態においては、応答時間は、約0.01から約10msまでの間、または約0.1から約5msまでの間、または約0.5から約2.5msまでの間でも良い。本発明に用いるTEGの特定の実施形態は、基板の厚みが210μmであり、かつ、約2.2msの感知時間である。これは、およそ10ms以上の応答速度を呈する従来の多くの熱流動センサと対比される。
【0017】
図3は、代表的な炎/爆発抑制システムにおけるゼーベックセンサの使用を模式的に表わしている。処理装置10は、建物12内に配置され、建物12を取り囲む雰囲気中に処理装置の排気をさせる排気の導管14(典型的には、ダクトまたはパイプライン)を有する。注意、代替えの実施形態においては、導管14は、付帯的な処理設備に装置10を接続することが可能である。炎/燃焼抑制システム16は、導管14の出口20の近位に取り付けられたゼーベックセンサ18と、導管14の入口の近位に取り付けられた従来の赤外線または光学検知器22とを有することが示されている。ゼーベックセンサ18および赤外線検知器22の両方は、制御装置24に接続可能である。センサ18、検知器22、および制御装置24の間の接続は、特定のアプリケーションに基づいて、ワイヤで接続されても良いし、ワイヤレスで接続されても良い。炎/燃焼抑制装置26は、導管14上にも配置されても良いし、制御装置24に接続可能である。図示される抑制装置26は、抑制剤(限定はされないが、水、粉末およびガスの抑制剤、または、これらの混合物を含む)を保持するコンテナであり、導管14中に抑制剤を導入可能なように、導管14に接続されている。しかしながら、抑制装置26は、機械式の遮断弁(限定はされないが、高速のゲートバルブ、ピンチバルブ、または、その他の高速作用弁を含む)、または、化学的な遮断システムを有する代替えデバイスで構成されてもよいと理解されている。ゼーベックタイプの付加的なセンサ、および/または、典型的な光学または圧力検知器は、保護される装置の全域に渡って様々な位置に取り付け可能であることも挙げられる。さらに、ゼーベックセンサのみで構成される抑制システム16が本発明の範囲内であるとき、ゼーベックセンサは、他のタイプの検知器と接続して用いる必要は無い。
【0018】
稼働中に、ゼーベックセンサ18および光学検知器22は、切迫した火炎または爆発を示すサインのために、継続して受動的に導管14を監視する。光学検知器22は、第1に、例えば、切迫した火炎または爆発を示すことが可能な導管の特定の場所において、赤外光の密度の存在またはその中での変化を検知するために用いられる。検知器22は、しかしながら、建物12の外側の環境から導管14に入る環境光、さらに、おそらく、ほこりまたは岩屑が、発展する火炎および爆発の存在を検知および知らせるための検知器22の性能を妨害する可能性がある場合に、仮に、検知器22が出口20の近位に配置されると、この機能が有効ではなくなる。ゼーベックセンサ18は、しかしながら、同じ欠点を有することはない。むしろ、センサ18は、爆燃波がセンサの対向する基板の間に生じる暫定的な温度勾配の効用によって火炎の前面または爆燃波(本質的な火炎の前面の熱成分)を検知可能である。
【0019】
火炎の前面または爆燃波が通り過ぎ、かつ、導管14内のゼーベックセンサ18に接触する際に、温度勾配がセンサの基板間で生じ、これによって、制御装置24に送信される電流または信号を生成する。電気信号は、制御装置24への途中で増幅されてもされなくても良い。
【0020】
導管14内の火炎の前面または爆燃波の存在を示す信号の検知の際に、制御装置24は抑制装置26を作動し、それによって、炎を消火または切迫した爆発を抑制するために導管14中に抑制剤を解放する。先に述べたように、機械的または化学的に遮断する設備は、他の相互接続された処理設備中に炎または爆発が伝搬することを防ぐために、制御装置26の抑制剤、または、これに加えて用いることができる。
【0021】
TEGデバイスは、熱流動を計測するために用いられる熱電対のデバイスと対比される。熱電対とは異なり、薄膜の熱電式ジェネレータは、動的な温度差に反応して電流を生成するのみである。デバイスの対向面間の温度差がもはや存在しないので、デバイスはもはや電圧を生成しない。TEGデバイスは、デバイスが上昇温度において熱均衡に達する際に、継続している上昇温度に鈍感であり(高い処理温度はセンサによって無視される)、爆発または火炎の通過の際の温度が急速に変化するときにのみ応答する。
【0022】
ゼーベックセンサは、概して、一連に配線された熱電対で構成されているので、熱電対の性質であるEMI/RFIの免疫と同じ好ましいレベルを呈する。さらに、TEGデバイスは、集光のためのレンズを必要とせずに、火炎の熱のサインの特性を検知することができる。センサは、検出される火炎から利用可能な熱から自身のパワーを生成するので、励起電流または電圧は必要とされない。上述のように、TEGデバイスは、排気された容器およびダクト/パイプの出口のように、実質的に圧力が発展しない閉じ込められていない空間、および、環境光(太陽の、蛍光の、白熱の等)に露光される処理設備内の場所における爆発または火炎を感知するために特に適合する。
【0023】
本発明の一実施形態において、さらに、図4および5に示されるように、本発明に係るセンサデバイス18は、TEG2のためにほぼ一定の温度を維持するための標準熱量を提供するプラグ30の端部28に張り付けられるTEG2で構成される。プラグ30は、導管14の側壁を通って取り付けられるように形成される。センサデバイス18が取り付けられる際に、端部28は、TEG2が切迫した炎または爆発を示す火炎の前面または爆燃波を検知するために配置されるので、導管14の内部にさらされる。導管14の内部にさらされないTEG2の一部は、高熱伝導性および電気絶縁性のエポキシで付加的に覆われていても良い。エポキシは、プラグ30およびTEG2間で熱的および構造的に接続を提供する。プラグ30も、導管14に対してプラグ30の締結を促進するためのスレッド32でも構成される。六角形のセグメント34も、レンチが導管14にプラグ30が締結するのを助けるために用いられるので、含まれる。ケーブル36は、プラグ30の末端部38から伸びて、かつ、例えば、制御装置24に対して、TEG2によって生じる電気信号を運ぶ。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、TEG2の電気出力は、プラグ30中の小さい孔を通る細いワイヤによって運ばれ、例えば、メートル比が4〜20mAの電流への増幅および/または変換から信号を決定するPCBに接続される。しかし、前述のとおり、TEGからの信号の強度は、信号の増幅が必ず必要だというわけではない。
【実施例】
【0025】
例
本実施例においては、2つのサイズのTEGデバイスの性能が、簡便な光学センサでテストおよび比較された。TEGデバイスは、炎/爆発抑制システムにおける使用の際にそれらを最適に適合させる優れた応答時間を呈することが見出された。
【0026】
ドイツのフライブルグ区のMicropelt GmbH社によって供給されるTEGデバイスが、テストされた。第1のデバイスは、「標準MPG‐602」と名付けられている、基板(21mils、全体の高さが41mils)当たり520マイクロの厚さを有し、さらに、第2のデバイスは、「200μmMPG−602」と名付けられている、基板(7.9mils、全体の高さが16mils)当たり、200マイクロの厚さを有している。TEGデバイスの応答時間は、火炎抑制および爆発防止システムに用いるための適合性を決定するためにテストされた。各デバイスは、標準温度のために付帯機構および熱量を提供するために、1/8インチNPTのステンレススチールのプラグの末端上に載置される。
【0027】
実験の実施に先立ち、シリコンのような基板材料の熱抵抗が、感知面材料(ビスマス、アンチモン、テルル、および、セレン)のそれよりも著しく高いことを考慮すると、TEG基板の厚みは、デバイスの応答時間に反応する律側因子であることが理論づけられた。構成要件である基板の厚みが減少することにより、応答時間、または、TEGがゼロからの初めの偏位からそれのピーク出力に達するまでの時間が減少することが予期される。しかしながら、何が応答時間における分布を変化させるかは明らかではない。基板の厚みが減少することによって、最大の信号の出力における減少を付随させることが懸念される。これらの理論をテストするために、標準TEGと厚みの薄いTEGとの両方に、各TEGに対する類似の刺激を確保するために、同時にテストをした。
【0028】
両方のTEGは、4インチの直径のポリカーボネートのチューブの同軸位置において、90°(垂直方向からそれぞれ45°)離れて載置された。この軸の位置は、パイプラインの出口からおよそ1つの直径分である。メタンおよび空気は、パイプラインの反対側の端部に注入され、全体で12フィートのパイプラインから空気中に約5.3%メタンの混合物(約0.56の等量比)を生成する。この端部は、最初は、充填を促進するために、セロファンで密封される。パイプライン中の残留乱流(充填プロセスの残余)を消失させるための数秒の遅延の後、混合物は、電気的に発生した閃光の手段によって、充填位置の近くで燃焼する。爆燃を確実にすることによって生じる最初の熱と同様に、この燃焼からの熱は、セロファンのシールを燃やし、燃焼ガスのための回避経路を提供する。これは、約1600K(1327℃)の推定断熱火炎温度と共に、低発光火炎を生成する、強制的でなく接近する層の仕様において、火炎前面をパイプラインの長さ移動させる。
【0029】
乱流の条件は、TEGを含むテスト部分の4フィート上流に取り付けられる小さなワッシャと共に、同様の方法でテストされる。可燃性混合物がパイプライン中で発展する圧力によって前方に強制されるときに、このワッシャは、火炎の前面が接近するので、パイプライン中に乱流を生成する。この座金は、火炎の前面が接近すると、パイプライン中に乱流を生成する。この乱流は、各TEGが火炎と出会う時間を減少させつつ、火炎がテスト部分から伝播する速度を増加させる。
【0030】
層の爆燃
5つのテストが、層状の燃焼形状において行われる。これらのテストの結果は、正規化され(自身のそれぞれの最大に対して)、かつ、各応答波形を得るために平均化された。自身の付随の増減率と同様に、標準TEGの応答波形は、図6に示される。このプロットに見られるように、標準TEGは、高い増減率で初めて反応する。
【0031】
厚みの薄いTEGの図7の応答曲線(5つの異なるテストの一連の平均から生じる)は、同じ刺激に対してとても驚異的に反応していることを示す。この応答曲線は、標準の厚みのTEGの最大2.2倍の応答速度の増加を示す。それは、約3msにおいて、ピークの出力値に到達し、別の3msに戻る。各波形がそのピークの出力値に到達する時間もまた著しい。標準TEGは、20msにおいて、そのピークに到達し、かつ、厚みの薄いTEGは、約3msにおいて、そのピークに到達する。これがTEGの応答時間であると考慮すると、厚みの薄いTEGは、約6.7倍速い応答時間を有する。
【0032】
厚みの薄いTEGは、約7ms後(107msのチャートに示される)に、爆燃自体によって生じる乱流の結果であるTEGの表面の燃焼後の蒸発冷却、および/または、強制的な対流冷却の測定を示す熱拒絶事跡も示す。
【0033】
2つのTEGデバイスの出力波形は、図8に示されるように、インテグラの検知器の変換素子(IREXまたはインテグラセンサとも呼ばれ、ファイク社で利用可能な光学赤外線検知器)の出力波形と比較される。これらの波形間においては、いくつかの明白な差異があり、最も注目に値するのは、厚みの薄いTEGのゼロの値への機敏な反応および戻りである。インテグラ検知器の感知ヘッドは、火炎が実際に直接的にセンサの前面にくる前または後の両方の火炎の前面を「見る」のに対して、TEGはそうではない。TEGは、火炎がTEG表面に接触しているときだけ応答し、それらをはるかに敏感な火炎検知器にさせる。
【0034】
図8に存在するデータは、統計学的に重要な出力波形を達成するために、テストからテストまでの揃えられた時間である。層状のテストにおける平均において、薄い厚みのTEGは、標準TEGの8ms前に火炎の前面に反応し始め、その結果、反応性は、TEGの熱加熱要件の機能であるという理論を確信したことを、発見した。標準TEGが、インテグラ検知器の変換素子の8.4ms後に応答したことも発見された。これは、インテグラ検知器の視野角に主に起因していることがわかる。
【0035】
乱流の爆燃
これらのテストは、乱流の燃焼形状において繰り返され、同様の結果が得られた。結果は、図9および図10にプロットで示される。驚くことに、厚みの薄いTEGの波形は、2マイル/sだけでそのピークの出力値に到達し、2マイル/s以内にゼロより小さい値に戻ったので、火炎の通過にしたがって冷却領域も呈する。これは火炎の幅および伝播速度の現象と一致しているように見える。厚みの薄いTEGは、平均して、標準TEGの約2ms前に応答し始めている。
【0036】
ピークの出力値および応答時間に基づいて厚みの効果を決定するために、これらのパラメータは、全てのテストにおいてプロットされる。図11および12に示されるように、厚みの減少は、TEGの増減速度を増大させる(その結果、応答時間を減少させる)だけではなく、それは出力値も増大させる。この現象は、TEG自身の内部に存在する熱勾配によって説明可能であると思われる。デバイスの全体の厚みが減少し、デバイスを横切る同じ温度差を維持することによって、大きな温度差がTEGの検知面を横切って存在する。その検知面を横切って存在する温度差を電圧に変換することによってTEGは機能するので、これは、出力信号のレベルの増加で説明する。爆燃中に加熱する熱量が少ないため、この熱勾配は、薄い基板中でより早く発展および安定することを予期させる。
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、全体がここに参照として組み込まれている2008年7月3日に提出された米国仮出願No.61/078,131,の有利性を主張する。
【0002】
本発明の背景
発明の分野
本発明は、概して、炎抑制および爆発防止システムのゼーベックデバイスの使用に向けられたものである。概して、ゼーベックデバイスは、容器などの処理装置中に配置され、パイプラインに接続されており、さらに、爆発の火炎の前面を検知するために用いられる。火炎の前面の検知に基づいて、システムは、周囲または相互接続する設備中への伝搬からの火炎または爆発を防止するために、例えば、抑制力の解放またはバルブのクローズといった抑制メカニズムを作動する。
【背景技術】
【0003】
従来技術の記載
粉塵爆発は、可燃材料を処理する際、不幸な、しかし、現実問題である。複数の実例において、爆発抑制システムの有効性は、関与する粉塵のタイプに起因する。
【0004】
従来の爆発抑制システムは、概して、処理設備内の火炎を「視覚的に」検知するために、光センサを用いる。最も一般的な赤外線を検知する光センサは、かなり簡便かつ安価なデバイスである。光センサは、高速の応答時間を提供する点で有効であるが、これらのセンサも、いくつかの顕著な弱点を呈する。光センサは、「迷」放射線を受ける場合があり、従って、光センサは、センサが環境光に露光されるダクトの出口、または、その付近にも用いることができない。さらに、センサは、処理設備内で生じる粉塵によって「ブラインド」されることがある。
【0005】
圧力センサは、爆発によって生じる圧力の前面を検知するためにも用いることができる。しかしながら、光センサと同じように、圧力センサは、圧力の前面が発展することができない時に、ダクトの出口、または、その付近でも、あまり作動しない。
【0006】
様々なタイプの煙検知器に一般的に用いられるイオン化検知器にも、一定の欠点が存在する。特に、イオン化検知器は、火炎を直ぐに検知せず、かつ、限られた残存性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の概要
一実施形態において、本発明は、処理設備内で使用するための炎および/または爆発の保護システムを指向する。システムは、処理設備内の火炎の検出を信号伝達するための少なくとも1つの検知器で構成される。少なくとも1つの検知器は、2つの対向する基板、および、これらの間に配置される熱電脚ペアのアレイで構成される。少なくとも1つの検知器は、爆燃波によって生じる温度差に反応して電気信号を生成する。
【0008】
本発明に係る他の実施形態においては、処理設備内の爆燃波を検知する方法が提供される。この方法は、2つの対向する基板、および、これらの間に配置されるペアの熱電脚のアレイで構成される、少なくとも1つの検知器を、処理設備内に配置するステップで構成される。少なくとも1つの検知器は、爆燃波によって生じる温度差に反応して電気信号を生成する。
【0009】
本発明に係るもう1つの実施形態においては、炎および/または爆発から処理設備を保護する方法が提供される。この方法は、処理設備内に、2つの対向する基板、および、これらの間に配置されるペアの熱電脚のアレイで構成される、少なくとも1つの検知器を配置するステップで構成される。この検知器は、爆燃波によって生じる温度差に反応して電気信号を生成することにより、爆燃波の存在を検知するために用いられる。信号は、プロセッサで構成される制御ユニットに送信される。プロセッサは、信号を受信し、次いで、信号に反応して抑制装置を作動する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の説明
【図1】図1は、本発明に従って用いられる代表的なゼーベックセンサを図示している。
【図2】図2は、ゼーベック効果を示す熱電脚ペアの概念図である。
【図3】図3は、ゼーベックセンサを用いる代表的な炎/爆発抑制システムの概念図である。
【図4】図4は、炎/爆発抑制システムに用いる代表的なゼーベックセンサデバイスの透視図である。
【図5】図5は、ゼーベックセンサで構成される図4のデバイスの一部の拡大図である。
【図6】図6は、本発明に用いられる「標準」TEGデバイスの層の条件下における応答時間を図示するチャートである。
【図7】図7は、本発明に用いられる「厚みの薄い」TEGデバイスの層の条件下における応答時間を図示するチャートである。
【図8】図8は、二つのTEGデバイスと一般的な光火炎検知器との応答時間を比較するチャートである。
【図9】図9は、本発明で用いられる「標準」TEGデバイスの乱流条件下における応答時間を図示するチャートである。
【図10】図10は、本発明に用いられる「厚みの薄い」TEGデバイスの乱流条件下における応答時間を図示するチャートである。
【図11】図11は、層の条件下におけるTEGデバイスから生じる信号の速度および分布を比較するチャートである。
【図12】図12は、乱流の条件下におけるTEGデバイスから生じる信号の速度および分布を比較するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好適実施形態の詳細な説明
本発明に用いられる検知器は、以下で交互性をもって用いられる用語、熱電式ジェネレータ(TEG)、ゼーベックセンサ、または、ペルチェクーラとして知られる。本発明に従って用いられるTEGは、直接電気へと温度差を変換するゼーベック効果を有する。電圧、熱電式のEMFは、2つの異なる材料または半導体の間の温度差の存在において生成され、連続する電流を生成するために用いられる。ゼーベック効果は、電力源が伝熱式デバイスに対して提供された場合に冷却を生み出すペルチェ効果と対照的である。
【0012】
特定の実施形態においては、TEGは、2つの対向する基板の間に配置された数百のマイクロサイズの熱電対(各熱電対は、個々の熱電脚のペアで構成されている)で構成される。代表的なTEGデバイスを図1に図示し、以下にさらに詳述する。これらのデバイスは、上位および下位の表面または基板間の温度差を電流に変換することが可能である。図2は、代表的な熱電脚と、デバイスの「熱」および「冷」側間の温度差に起因する電圧の発生とを模式的に図示している。確定した電圧は、ロードを通過する電流を生成するために用いられる。
【0013】
図1に示すように、TEGデバイス2は、一対の対向するシリコン基板3および4で構成される。基板3および4の間に挟まれたものは、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、および、セレン(Se)で成るグループから選択された1種類以上の材料で構成される複数の負の脚5および正の脚6である。特定の実施形態においては、脚は、Bi2Te3材料で構成される。脚は、それぞれ、正のコンタクト7または負のコンタクト8に接続される。本発明に用いることが可能な代表的なTEGデバイスは、ドイツのフライブルグ区のMicropelt GmbH社のものが利用可能である。
【0014】
TEGデバイス上の熱電脚ペアの密度は、爆燃波を検知する際の使用において、デバイスの効果にも影響を与える。特定の実施形態においては、TEGは、少なくとも40熱電脚ペア/mm2で構成される。他の実施形態においては、TEGは、少なくとも75脚ペア/mm2、もう一つの実施形態においては少なくとも100脚ペア/mm2、さらに他の実施形態においては、150脚ペア/mm2で構成される。特に好適な実施形態においては、TEGは、約77脚ペア/mm2で構成される。本発明の代替えの実施形態においては、TEGは、約40から約500脚ペア/mm2の間、または、約50から約400脚ペア/mm2の間、または、約70から約300脚ペア/mm2の間の密度で存在する。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、TEGはとても薄く、各基板に25mm2より少ない検知面領域(例えば、熱電脚ペアが占有するTEGの領域)が存在するマイクロサイズのデバイスである。特定の実施形態においては、各基板の検知面領域は、約6.25mm2である。各基板は、600マイクロより小さい厚みを有する。特定の実施形態においては、この厚みは、500マイクロ、または250マイクロ、または200マイクロより小さい。さらに他の実施形態においては、基板の厚みは、約1〜約600マイクロの間、または約5〜500マイクロの間、または約10〜約250マイクロの間である。従って、TEGは、処理設備内においていかなる場所においても実質的に目立たずに用いることが可能である。
【0016】
TEGの物理的寸法は、これらによって提供される極めて低い応答時間に寄与する。「応答時間」は、TEGが、ゼロからそのピーク出力に達するまでの時間を意味している。本発明に用いられるTEGは、概して、10msより短い応答時間を呈する。特定の実施形態においては、応答時間は、5msより短い、または、約2.5msより短くても良い。さらに他の実施形態においては、応答時間は、約0.01から約10msまでの間、または約0.1から約5msまでの間、または約0.5から約2.5msまでの間でも良い。本発明に用いるTEGの特定の実施形態は、基板の厚みが210μmであり、かつ、約2.2msの感知時間である。これは、およそ10ms以上の応答速度を呈する従来の多くの熱流動センサと対比される。
【0017】
図3は、代表的な炎/爆発抑制システムにおけるゼーベックセンサの使用を模式的に表わしている。処理装置10は、建物12内に配置され、建物12を取り囲む雰囲気中に処理装置の排気をさせる排気の導管14(典型的には、ダクトまたはパイプライン)を有する。注意、代替えの実施形態においては、導管14は、付帯的な処理設備に装置10を接続することが可能である。炎/燃焼抑制システム16は、導管14の出口20の近位に取り付けられたゼーベックセンサ18と、導管14の入口の近位に取り付けられた従来の赤外線または光学検知器22とを有することが示されている。ゼーベックセンサ18および赤外線検知器22の両方は、制御装置24に接続可能である。センサ18、検知器22、および制御装置24の間の接続は、特定のアプリケーションに基づいて、ワイヤで接続されても良いし、ワイヤレスで接続されても良い。炎/燃焼抑制装置26は、導管14上にも配置されても良いし、制御装置24に接続可能である。図示される抑制装置26は、抑制剤(限定はされないが、水、粉末およびガスの抑制剤、または、これらの混合物を含む)を保持するコンテナであり、導管14中に抑制剤を導入可能なように、導管14に接続されている。しかしながら、抑制装置26は、機械式の遮断弁(限定はされないが、高速のゲートバルブ、ピンチバルブ、または、その他の高速作用弁を含む)、または、化学的な遮断システムを有する代替えデバイスで構成されてもよいと理解されている。ゼーベックタイプの付加的なセンサ、および/または、典型的な光学または圧力検知器は、保護される装置の全域に渡って様々な位置に取り付け可能であることも挙げられる。さらに、ゼーベックセンサのみで構成される抑制システム16が本発明の範囲内であるとき、ゼーベックセンサは、他のタイプの検知器と接続して用いる必要は無い。
【0018】
稼働中に、ゼーベックセンサ18および光学検知器22は、切迫した火炎または爆発を示すサインのために、継続して受動的に導管14を監視する。光学検知器22は、第1に、例えば、切迫した火炎または爆発を示すことが可能な導管の特定の場所において、赤外光の密度の存在またはその中での変化を検知するために用いられる。検知器22は、しかしながら、建物12の外側の環境から導管14に入る環境光、さらに、おそらく、ほこりまたは岩屑が、発展する火炎および爆発の存在を検知および知らせるための検知器22の性能を妨害する可能性がある場合に、仮に、検知器22が出口20の近位に配置されると、この機能が有効ではなくなる。ゼーベックセンサ18は、しかしながら、同じ欠点を有することはない。むしろ、センサ18は、爆燃波がセンサの対向する基板の間に生じる暫定的な温度勾配の効用によって火炎の前面または爆燃波(本質的な火炎の前面の熱成分)を検知可能である。
【0019】
火炎の前面または爆燃波が通り過ぎ、かつ、導管14内のゼーベックセンサ18に接触する際に、温度勾配がセンサの基板間で生じ、これによって、制御装置24に送信される電流または信号を生成する。電気信号は、制御装置24への途中で増幅されてもされなくても良い。
【0020】
導管14内の火炎の前面または爆燃波の存在を示す信号の検知の際に、制御装置24は抑制装置26を作動し、それによって、炎を消火または切迫した爆発を抑制するために導管14中に抑制剤を解放する。先に述べたように、機械的または化学的に遮断する設備は、他の相互接続された処理設備中に炎または爆発が伝搬することを防ぐために、制御装置26の抑制剤、または、これに加えて用いることができる。
【0021】
TEGデバイスは、熱流動を計測するために用いられる熱電対のデバイスと対比される。熱電対とは異なり、薄膜の熱電式ジェネレータは、動的な温度差に反応して電流を生成するのみである。デバイスの対向面間の温度差がもはや存在しないので、デバイスはもはや電圧を生成しない。TEGデバイスは、デバイスが上昇温度において熱均衡に達する際に、継続している上昇温度に鈍感であり(高い処理温度はセンサによって無視される)、爆発または火炎の通過の際の温度が急速に変化するときにのみ応答する。
【0022】
ゼーベックセンサは、概して、一連に配線された熱電対で構成されているので、熱電対の性質であるEMI/RFIの免疫と同じ好ましいレベルを呈する。さらに、TEGデバイスは、集光のためのレンズを必要とせずに、火炎の熱のサインの特性を検知することができる。センサは、検出される火炎から利用可能な熱から自身のパワーを生成するので、励起電流または電圧は必要とされない。上述のように、TEGデバイスは、排気された容器およびダクト/パイプの出口のように、実質的に圧力が発展しない閉じ込められていない空間、および、環境光(太陽の、蛍光の、白熱の等)に露光される処理設備内の場所における爆発または火炎を感知するために特に適合する。
【0023】
本発明の一実施形態において、さらに、図4および5に示されるように、本発明に係るセンサデバイス18は、TEG2のためにほぼ一定の温度を維持するための標準熱量を提供するプラグ30の端部28に張り付けられるTEG2で構成される。プラグ30は、導管14の側壁を通って取り付けられるように形成される。センサデバイス18が取り付けられる際に、端部28は、TEG2が切迫した炎または爆発を示す火炎の前面または爆燃波を検知するために配置されるので、導管14の内部にさらされる。導管14の内部にさらされないTEG2の一部は、高熱伝導性および電気絶縁性のエポキシで付加的に覆われていても良い。エポキシは、プラグ30およびTEG2間で熱的および構造的に接続を提供する。プラグ30も、導管14に対してプラグ30の締結を促進するためのスレッド32でも構成される。六角形のセグメント34も、レンチが導管14にプラグ30が締結するのを助けるために用いられるので、含まれる。ケーブル36は、プラグ30の末端部38から伸びて、かつ、例えば、制御装置24に対して、TEG2によって生じる電気信号を運ぶ。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、TEG2の電気出力は、プラグ30中の小さい孔を通る細いワイヤによって運ばれ、例えば、メートル比が4〜20mAの電流への増幅および/または変換から信号を決定するPCBに接続される。しかし、前述のとおり、TEGからの信号の強度は、信号の増幅が必ず必要だというわけではない。
【実施例】
【0025】
例
本実施例においては、2つのサイズのTEGデバイスの性能が、簡便な光学センサでテストおよび比較された。TEGデバイスは、炎/爆発抑制システムにおける使用の際にそれらを最適に適合させる優れた応答時間を呈することが見出された。
【0026】
ドイツのフライブルグ区のMicropelt GmbH社によって供給されるTEGデバイスが、テストされた。第1のデバイスは、「標準MPG‐602」と名付けられている、基板(21mils、全体の高さが41mils)当たり520マイクロの厚さを有し、さらに、第2のデバイスは、「200μmMPG−602」と名付けられている、基板(7.9mils、全体の高さが16mils)当たり、200マイクロの厚さを有している。TEGデバイスの応答時間は、火炎抑制および爆発防止システムに用いるための適合性を決定するためにテストされた。各デバイスは、標準温度のために付帯機構および熱量を提供するために、1/8インチNPTのステンレススチールのプラグの末端上に載置される。
【0027】
実験の実施に先立ち、シリコンのような基板材料の熱抵抗が、感知面材料(ビスマス、アンチモン、テルル、および、セレン)のそれよりも著しく高いことを考慮すると、TEG基板の厚みは、デバイスの応答時間に反応する律側因子であることが理論づけられた。構成要件である基板の厚みが減少することにより、応答時間、または、TEGがゼロからの初めの偏位からそれのピーク出力に達するまでの時間が減少することが予期される。しかしながら、何が応答時間における分布を変化させるかは明らかではない。基板の厚みが減少することによって、最大の信号の出力における減少を付随させることが懸念される。これらの理論をテストするために、標準TEGと厚みの薄いTEGとの両方に、各TEGに対する類似の刺激を確保するために、同時にテストをした。
【0028】
両方のTEGは、4インチの直径のポリカーボネートのチューブの同軸位置において、90°(垂直方向からそれぞれ45°)離れて載置された。この軸の位置は、パイプラインの出口からおよそ1つの直径分である。メタンおよび空気は、パイプラインの反対側の端部に注入され、全体で12フィートのパイプラインから空気中に約5.3%メタンの混合物(約0.56の等量比)を生成する。この端部は、最初は、充填を促進するために、セロファンで密封される。パイプライン中の残留乱流(充填プロセスの残余)を消失させるための数秒の遅延の後、混合物は、電気的に発生した閃光の手段によって、充填位置の近くで燃焼する。爆燃を確実にすることによって生じる最初の熱と同様に、この燃焼からの熱は、セロファンのシールを燃やし、燃焼ガスのための回避経路を提供する。これは、約1600K(1327℃)の推定断熱火炎温度と共に、低発光火炎を生成する、強制的でなく接近する層の仕様において、火炎前面をパイプラインの長さ移動させる。
【0029】
乱流の条件は、TEGを含むテスト部分の4フィート上流に取り付けられる小さなワッシャと共に、同様の方法でテストされる。可燃性混合物がパイプライン中で発展する圧力によって前方に強制されるときに、このワッシャは、火炎の前面が接近するので、パイプライン中に乱流を生成する。この座金は、火炎の前面が接近すると、パイプライン中に乱流を生成する。この乱流は、各TEGが火炎と出会う時間を減少させつつ、火炎がテスト部分から伝播する速度を増加させる。
【0030】
層の爆燃
5つのテストが、層状の燃焼形状において行われる。これらのテストの結果は、正規化され(自身のそれぞれの最大に対して)、かつ、各応答波形を得るために平均化された。自身の付随の増減率と同様に、標準TEGの応答波形は、図6に示される。このプロットに見られるように、標準TEGは、高い増減率で初めて反応する。
【0031】
厚みの薄いTEGの図7の応答曲線(5つの異なるテストの一連の平均から生じる)は、同じ刺激に対してとても驚異的に反応していることを示す。この応答曲線は、標準の厚みのTEGの最大2.2倍の応答速度の増加を示す。それは、約3msにおいて、ピークの出力値に到達し、別の3msに戻る。各波形がそのピークの出力値に到達する時間もまた著しい。標準TEGは、20msにおいて、そのピークに到達し、かつ、厚みの薄いTEGは、約3msにおいて、そのピークに到達する。これがTEGの応答時間であると考慮すると、厚みの薄いTEGは、約6.7倍速い応答時間を有する。
【0032】
厚みの薄いTEGは、約7ms後(107msのチャートに示される)に、爆燃自体によって生じる乱流の結果であるTEGの表面の燃焼後の蒸発冷却、および/または、強制的な対流冷却の測定を示す熱拒絶事跡も示す。
【0033】
2つのTEGデバイスの出力波形は、図8に示されるように、インテグラの検知器の変換素子(IREXまたはインテグラセンサとも呼ばれ、ファイク社で利用可能な光学赤外線検知器)の出力波形と比較される。これらの波形間においては、いくつかの明白な差異があり、最も注目に値するのは、厚みの薄いTEGのゼロの値への機敏な反応および戻りである。インテグラ検知器の感知ヘッドは、火炎が実際に直接的にセンサの前面にくる前または後の両方の火炎の前面を「見る」のに対して、TEGはそうではない。TEGは、火炎がTEG表面に接触しているときだけ応答し、それらをはるかに敏感な火炎検知器にさせる。
【0034】
図8に存在するデータは、統計学的に重要な出力波形を達成するために、テストからテストまでの揃えられた時間である。層状のテストにおける平均において、薄い厚みのTEGは、標準TEGの8ms前に火炎の前面に反応し始め、その結果、反応性は、TEGの熱加熱要件の機能であるという理論を確信したことを、発見した。標準TEGが、インテグラ検知器の変換素子の8.4ms後に応答したことも発見された。これは、インテグラ検知器の視野角に主に起因していることがわかる。
【0035】
乱流の爆燃
これらのテストは、乱流の燃焼形状において繰り返され、同様の結果が得られた。結果は、図9および図10にプロットで示される。驚くことに、厚みの薄いTEGの波形は、2マイル/sだけでそのピークの出力値に到達し、2マイル/s以内にゼロより小さい値に戻ったので、火炎の通過にしたがって冷却領域も呈する。これは火炎の幅および伝播速度の現象と一致しているように見える。厚みの薄いTEGは、平均して、標準TEGの約2ms前に応答し始めている。
【0036】
ピークの出力値および応答時間に基づいて厚みの効果を決定するために、これらのパラメータは、全てのテストにおいてプロットされる。図11および12に示されるように、厚みの減少は、TEGの増減速度を増大させる(その結果、応答時間を減少させる)だけではなく、それは出力値も増大させる。この現象は、TEG自身の内部に存在する熱勾配によって説明可能であると思われる。デバイスの全体の厚みが減少し、デバイスを横切る同じ温度差を維持することによって、大きな温度差がTEGの検知面を横切って存在する。その検知面を横切って存在する温度差を電圧に変換することによってTEGは機能するので、これは、出力信号のレベルの増加で説明する。爆燃中に加熱する熱量が少ないため、この熱勾配は、薄い基板中でより早く発展および安定することを予期させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理設備に用いられる炎および/または爆燃の保護システムは、
この処理設備内の火炎の検出を信号伝達するための少なくとも1つの検知器と、
前記少なくとも1つの検知器から電気信号を受信および分析するためのプロセッサと、
前記少なくとも1つの検知器からの電気信号に反応して前記プロセッサによって発動される抑制装置と、
で構成され、
前記少なくとも1つの検知器は、
2つの対向する基板、および、これらの間に配置される熱電脚ペアのアレイで構成され、
前記少なくとも1つの検知器は、
爆燃波によって生じる前記基板間の温度差に反応して電気信号を生成することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検知器は、少なくとも40脚ペア/mm2の熱電脚ペアの密度を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの検知器は、少なくとも75脚ペア/mm2の熱電脚ペアの密度を有する請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの検知器は、10msより短い爆燃波に対する応答時間を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記応答時間は、5msより短い請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記応答時間は、2.5msより短い請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記抑制装置は、
前記炎または爆発を抑制するために、前記処理設備内に導入される化学的抑制剤、前記処理設備の一部を遮断するための遮断弁、または、これらを組み合わせたもので構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記基板は、それぞれ、600マイクロより小さい厚みを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記基板は、それぞれ、500マイクロより小さい厚みを有する請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記基板は、それぞれ、250マイクロより小さい厚みを有する請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサからの前記信号は、前記プロセッサより受信する前に、増幅する必要がない請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサからの前記信号は、前記プロセッサへの伝送のために、前記プロセッサによって受信される前にアナログ電圧に変換されて戻るレシオメトリック電流の出力に変換される請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの検知器は、環境光で露光された前記処理設備の領域内に配置される請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
処理装置内の爆燃波を検知する方法であって、
2つの対向する基板、および、これらの間に配置される熱電脚ペアのアレイで構成され、前記爆燃波によって生じる温度差に反応して電気信号を生成する少なくとも1つの検知器を前記処理設備内に配置するステップで構成されることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの検知器は、少なくとも40脚ペア/mm2の熱電脚ペアの密度を有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの検知器は、10msより短い爆燃波に対する応答時間を有する請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記基板は、それぞれ、600マイクロより小さい厚みを有する請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの検知器は、環境光で露光された前記処理設備の領域内に配置される請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの検知器は、前記施設の外側の環境に対する開口に隣接する前記処理設備の領域内に配置される請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの検知器によって生じる前記電気信号は、抑制装置を作動するために用いられる請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記抑制装置は、
前記炎または爆発を抑制するために、前記処理設備内に導入される化学的抑制剤、前記処理設備の一部を遮断するための遮断弁、または、これらを組み合わせたもので構成される請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
炎および/または爆発から処理設備を保護する方法は、
前記処理設備内に、2つの対向する基板、および、これらの間に配置される熱電脚ペアのアレイで構成される、少なくとも1つの検知器を配置するステップと、
爆燃波の存在を検知するために、前記爆燃波によって生じる前記基板間の温度差に反応して電気信号を生成する、前記少なくとも1つの検知器を用いるステップと、さらに、
前記信号を受信し、さらに、これに反応して抑制装置を作動するプロセッサで構成される制御ユニットに対して前記電気信号を伝達するステップと、
で構成されることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの検知器は、少なくとも40脚ペア/mm2の熱電脚ペアの密度を有する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの検知器は、10msより短い爆燃波に対する応答時間を有する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記基板は、それぞれ、600マイクロより小さい厚みを有する請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの検知器は、環境光で露光された前記処理設備の領域内に配置される請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの検知器は、前記施設の外側の環境に対する開口に隣接する前記処理設備の領域内に配置される請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記抑制装置は、
前記処理設備に導入される化学的抑制剤、遮断弁、または、これらを組み合わせたもので構成される請求項22に記載の方法。
【請求項1】
処理設備に用いられる炎および/または爆燃の保護システムは、
この処理設備内の火炎の検出を信号伝達するための少なくとも1つの検知器と、
前記少なくとも1つの検知器から電気信号を受信および分析するためのプロセッサと、
前記少なくとも1つの検知器からの電気信号に反応して前記プロセッサによって発動される抑制装置と、
で構成され、
前記少なくとも1つの検知器は、
2つの対向する基板、および、これらの間に配置される熱電脚ペアのアレイで構成され、
前記少なくとも1つの検知器は、
爆燃波によって生じる前記基板間の温度差に反応して電気信号を生成することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検知器は、少なくとも40脚ペア/mm2の熱電脚ペアの密度を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの検知器は、少なくとも75脚ペア/mm2の熱電脚ペアの密度を有する請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの検知器は、10msより短い爆燃波に対する応答時間を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記応答時間は、5msより短い請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記応答時間は、2.5msより短い請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記抑制装置は、
前記炎または爆発を抑制するために、前記処理設備内に導入される化学的抑制剤、前記処理設備の一部を遮断するための遮断弁、または、これらを組み合わせたもので構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記基板は、それぞれ、600マイクロより小さい厚みを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記基板は、それぞれ、500マイクロより小さい厚みを有する請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記基板は、それぞれ、250マイクロより小さい厚みを有する請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサからの前記信号は、前記プロセッサより受信する前に、増幅する必要がない請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサからの前記信号は、前記プロセッサへの伝送のために、前記プロセッサによって受信される前にアナログ電圧に変換されて戻るレシオメトリック電流の出力に変換される請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの検知器は、環境光で露光された前記処理設備の領域内に配置される請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
処理装置内の爆燃波を検知する方法であって、
2つの対向する基板、および、これらの間に配置される熱電脚ペアのアレイで構成され、前記爆燃波によって生じる温度差に反応して電気信号を生成する少なくとも1つの検知器を前記処理設備内に配置するステップで構成されることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの検知器は、少なくとも40脚ペア/mm2の熱電脚ペアの密度を有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの検知器は、10msより短い爆燃波に対する応答時間を有する請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記基板は、それぞれ、600マイクロより小さい厚みを有する請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの検知器は、環境光で露光された前記処理設備の領域内に配置される請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの検知器は、前記施設の外側の環境に対する開口に隣接する前記処理設備の領域内に配置される請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの検知器によって生じる前記電気信号は、抑制装置を作動するために用いられる請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記抑制装置は、
前記炎または爆発を抑制するために、前記処理設備内に導入される化学的抑制剤、前記処理設備の一部を遮断するための遮断弁、または、これらを組み合わせたもので構成される請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
炎および/または爆発から処理設備を保護する方法は、
前記処理設備内に、2つの対向する基板、および、これらの間に配置される熱電脚ペアのアレイで構成される、少なくとも1つの検知器を配置するステップと、
爆燃波の存在を検知するために、前記爆燃波によって生じる前記基板間の温度差に反応して電気信号を生成する、前記少なくとも1つの検知器を用いるステップと、さらに、
前記信号を受信し、さらに、これに反応して抑制装置を作動するプロセッサで構成される制御ユニットに対して前記電気信号を伝達するステップと、
で構成されることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの検知器は、少なくとも40脚ペア/mm2の熱電脚ペアの密度を有する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの検知器は、10msより短い爆燃波に対する応答時間を有する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記基板は、それぞれ、600マイクロより小さい厚みを有する請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの検知器は、環境光で露光された前記処理設備の領域内に配置される請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの検知器は、前記施設の外側の環境に対する開口に隣接する前記処理設備の領域内に配置される請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記抑制装置は、
前記処理設備に導入される化学的抑制剤、遮断弁、または、これらを組み合わせたもので構成される請求項22に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−526816(P2011−526816A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516870(P2011−516870)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/049488
【国際公開番号】WO2010/003045
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(593224670)ファイク・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】FIKE CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/049488
【国際公開番号】WO2010/003045
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(593224670)ファイク・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】FIKE CORPORATION
【Fターム(参考)】
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