説明

熱電発電装置

【課題】簡素な構成で熱電変換モジュールの発電効率を増大させることができ、製造コストが増大するのを防止することができる熱電発電装置を提供すること。
【解決手段】熱電発電装置17は、排気管21および冷却水管24を、排気ガスGの排気方向に沿ってテーパ形状に形成し、開口径の大きい排気管21の上流部21aと冷却水管24をブラケット25によって固定し、開口径の小さい排気管21の下流部21bを冷却水管24に対して固定されない自由端から構成している。そして、排気管21の開口径の大きい上流部21aを排気ガスの排気方向の上流側に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電装置に関し、特に、内燃機関から排出される排気ガスを利用して熱電発電を行う熱電発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内燃機関から排出される排気ガス等には、熱エネルギーが含まれているため、排気ガスをそのまま捨てると熱エネルギーの無駄となる。そこで、排気ガスに含まれる熱エネルギーを熱電発電装置によって回収して電気エネルギーに変換し、例えば、バッテリに充電するようにしている。
【0003】
従来のこの種の熱電発電装置としては、内燃機関から排出された排気ガスが導入される排気管の外周面に熱電変換モジュールの高温側の一側面を接触させるとともに、熱電変換モジュールの低温側の他側面を冷却水が流通する冷却水管に接触させたものが知られている。
【0004】
この熱電変換モジュールは、半導体等の熱電変換素子、電極、高温側となる受熱基板および低温側となる放熱基板等を含んで構成されており、ゼーベック効果を利用して温度の高い排気管と温度の低い冷却水管により、熱電変換モジュールの高温側と低温側との間に温度差を生じさせて発電を行うようになっている。
【0005】
また、熱電変換モジュールは、高温側と低温側との温度差が大きい程、発電効率が大きくなる性質を有している。このため、排気管と熱電変換モジュールの高温側との間の接触面圧が低下すると、排気ガスから熱電変換モジュールへの入熱が低下してしまい、熱電変換モジュールの発電効率が減少してしまうことになる。
したがって、排気管と熱電変換モジュールの高温側との接触面圧を増大させる必要がある。
【0006】
従来、排気管と熱電変換モジュールの高温側との接触面圧を増大させることができる熱電発電装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
この熱電発電装置は、エンジンから放出される排気ガスが流通し、断面周状の気体流路を形成する排気管の内周側と外周側とに、それぞれ熱電変換モジュールが設けられており、排気管の内周側に設けられた熱電変換モジュールの内側に、熱電変換モジュールを排気管に対して押圧する押圧部材が設けられている。
【0007】
この押圧部材は、熱電変換モジュールと接触して熱電変換モジュールに押圧力を付与する板ばねと、板ばねに反力を付与するパイプ部材とから構成されており、パイプ部材は、排気管を流通する気体の流れ方向に沿って径が変化するテーパ形状に構成されている。
【0008】
この熱電発電装置は、排気管の内周側に設けられた熱電変換モジュールの内側に、熱電変換素子を排気管に対して押圧する板ばねが設けられているため、排気管の内側に設けられた熱電変換モジュールと排気管との接触面圧を増大させることができ、熱電変換モジュールの発電効率を向上させることができる。
【0009】
また、パイプ部材が、排気管を流通する気体の流れ方向に沿って径が変化するテーパ形状に形成されているため、熱電変換モジュールとパイプ部材との間に板ばねを配置した状態で、パイプ部材を排気管内に挿入するだけで、板ばねによって排気管に熱電変換モジュールを押圧することができ、熱電発電装置の組付け性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−209724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の熱電発電装置にあっては、排気管と熱電変換モジュールとを接触させて熱電変換モジュールに押圧力を付与する板ばねと、板ばねに反力を付与するパイプ部材とを設けているため、排気管と熱電変換モジュールとの接触面圧を増大させるための部品点数が多くなってしまう。このため、熱電発電装置の製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、簡素な構成で熱電変換モジュールの発電効率を増大させることができ、製造コストが増大するのを防止することができる熱電発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る熱電発電装置は、上記目的を達成するため、(1)内燃機関から排出された排気ガスが導入される排気管と、前記排気管の外周部に設けられ、冷却水が流通する冷却水管と、一側面が前記排気管の外周部に接触するとともに他側面が前記冷却水管の内周部に接触し、前記一側面と前記他側面との温度差に応じて熱電発電を行う熱電変換モジュールとを備えた熱電発電装置であって、前記排気管および前記冷却水が、排気ガスの排気方向に沿ってテーパ形状に形成され、前記排気管が前記冷却水管の一部分に固定されるものから構成されている。
【0014】
この熱電発電装置は、排気管および冷却水管が、排気ガスの排気方向に沿ってテーパ形状に形成され、排気管が冷却水管の一部分に固定されるので、排気管を流通する排気ガスの熱によって排気管が熱膨張したときに、排気管が、冷却水管に固定されている部分を基点として延伸する。
【0015】
このため、排気管と熱電変換モジュールの接触面圧を増大させ、排気ガスから熱電変換モジュールへの伝熱効率を向上させることができ、熱電変換モジュールの発電効率を向上させることができる。
【0016】
このように、熱電発電装置は、排気管をテーパ管として排気管の一部を冷却水管に固定するだけの簡素な構成によって熱電変換モジュールの発電効率を向上させることができるので、熱電発電装置の部品点数が増加するのを防止して、熱電発電装置の製造コストが増大するのを防止することができる。
【0017】
上記(1)に記載の熱電発電装置において、(2)前記排気管の開口径が大きい排気方向一端部が前記冷却水管に固定され、前記排気管の開口径の小さい排気方向他端部が前記冷却水管に対して固定されない自由端から構成されている。
【0018】
この熱電発電装置は、排気管の開口径が大きい排気方向一端部が冷却水管に固定され、排気管の開口径の小さい排気方向他端部が冷却水管に対して自由端となっているため、排気管を流通する排気ガスの熱によって排気管が熱膨張したときに、排気管が、冷却水管に固定されている排気方向一端部を基端として排気方向他端部に向かって延伸する。
【0019】
このため、排気管が、開口径の大きい側から開口径の小さい側に延伸することになり、排気管と熱電変換モジュールの接触面圧を排気方向一端部から他端部に向かって増大させることができる。この結果、排気ガスから熱電変換モジュールへの伝熱効率をより一層向上させることができ、熱電変換モジュールの発電効率をより一層向上させることができる。
【0020】
上記(2)に記載の熱電発電装置において、(3)前記排気管の開口径の大きい排気方向一端部を排気方向上流側に設置したものから構成されている。
この熱電発電装置は、排気管の開口径の大きい排気方向一端部を排気方向上流側に設置したので、排気管内を流れる排気ガスの流速を上流側から下流側に向かって上昇させることができる。
【0021】
このため、ニュートンの冷却の法則により、排気ガスの流速が上昇すると、排気ガスから下流側の熱電変換モジュールへの伝熱効率を上流側の熱電変換モジュールよりも向上させることができ、結果的に熱電変換モジュールの発電効率を向上させることができる。
【0022】
すなわち、排気管内を流れる排気ガスは、排気ガスの排気方向の上流側の熱電変換モジュールによって排気ガスの熱量の多くが奪われてしまい、排気管の下流側の排気ガスの熱量が低下してしまう。
【0023】
このため、下流側の熱電変換モジュールの発電効率が上流側の熱電変換モジュールの発電効率に比べて低下し、結果的に熱電変換モジュールの全体の発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0024】
本発明の熱電発電装置は、排気ガスの流速を上流側から下流側に向かって上昇させて排気ガスから下流側の熱電変換モジュールへの伝熱効率を上流側の熱電変換モジュールよりも向上させることができるため、下流側の熱電変換モジュールの発電効率を向上させることができ、熱電変換モジュール全体の発電効率が低下するのを防止することができる。
【0025】
上記(1)に記載の熱電発電装置において、(4)前記排気管の排気方向の略中央部が前記冷却水管に固定され、前記排気管の開口径の大きい排気方向一端部および開口径の小さい排気方向他端部が前記冷却水管に固定されない自由端から構成されている。
【0026】
この熱電発電装置は、排気管の排気方向の略中央部が冷却水管に固定され、排気管の開口径の大きい排気方向一端部および開口径の小さい排気方向他端部が冷却水管に固定されない自由端から構成されているので、排気管を流通する排気ガスの熱によって排気管が熱膨張したときに、排気管が、冷却水管に固定されている部分を基点として延伸する。
【0027】
このため、排気管と熱電変換モジュールの接触面圧を増大させ、排気ガスから熱電変換モジュールへの伝熱効率を向上させることができ、熱電変換モジュールの発電効率を向上させることができる。
【0028】
上記(4)に記載の熱電発電装置において、(5)前記排気管の開口径の大きい排気方向一端部が排気方向上流側に設置されるものから構成されている。
この熱電発電装置は、排気管の開口径の大きい排気方向一端部が排気方向上流側に設置されるので、排気管を流通する排気ガスの熱によって排気管が熱膨張したときに、排気管が、冷却水管に固定されている略中央部を基点として排気方向一端部および他端部に向かって延伸する。
【0029】
このため、排気管が排気方向の略中央部から開口径の大きい側(上流側)に延伸した場合には、上流側の熱電変換モジュールと排気管との接触面圧が低下し、排気管が排気方向の略中央部から開口径の小さい側(下流側)に延伸した場合には、下流側の熱電変換モジュールと排気管との接触面圧が増大する。
【0030】
ここで、排気ガスの排気方向の上流側の熱電変換モジュールは、下流側の熱電変換モジュールに比べて高温の排気ガスに晒されてしまうため、上流側の熱電変換モジュールが熱害を受け易く、却って発電効率が低下しまうおそれがある。
【0031】
本発明の熱電発電装置は、排気方向上流側の熱電変換モジュールと排気管との接触面圧を低下させることができるため、上流側の熱電変換モジュールの熱電効率を低下させて上流側の熱電変換モジュールが高温の排気ガスによって熱害を受けるのを防止することができる。
【0032】
また、排気管内を流れる排気ガスは、排気ガスの排気方向の上流側の熱電変換モジュールによって排気ガスの熱量の多くが奪われてしまい、排気管の下流側の排気ガスの熱量が低下してしまう。
【0033】
このため、下流側の熱電変換モジュールの発電効率が上流側の熱電変換モジュールの発電効率に比べて低下し、結果的に熱電変換モジュールの全体の発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0034】
本発明の熱電発電装置は、下流側の熱電変換モジュールと排気管との接触面圧を増大させることができるため、下流側の熱電変換モジュールの熱電効率を向上させて下流側の熱電変換モジュールの発電効率を向上させることができ、熱電変換モジュール全体の発電効率が低下するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、簡素な構成で熱電変換モジュールの発電効率を増大させることができ、製造コストが増大するのを防止することができる熱電発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る熱電発電装置の第1の実施の形態を示す図であり、熱電発電装置を備えるエンジンの排気系の概略構成図である。
【図2】本発明に係る熱電発電装置の第1の実施の形態を示す図であり、熱電発電装置の断面図である。
【図3】本発明に係る熱電発電装置の第1の実施の形態を示す図であり、熱電変換モジュールの斜視図である。
【図4】本発明に係る熱電発電装置の第1の実施の形態を示す図であり、他の構成の熱電発電装置の断面図である。
【図5】本発明に係る熱電発電装置の第2の実施の形態を示す図であり、熱電発電装置の断面図である。
【図6】本発明に係る熱電発電装置の第3の実施の形態を示す図であり、熱電発電装置の側面図である。
【図7】本発明に係る熱電発電装置の第3の実施の形態を示す図であり、図6のA−A方向矢視断面図である。
【図8】本発明に係る熱電発電装置の第3の実施の形態を示す図であり、図7のB−B方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る熱電発電装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態では、熱電発電装置を、自動車等の車両に搭載される水冷式の多気筒の内燃機関、例えば4サイクルガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)に適用した場合について説明している。また、エンジンは、ガソリンエンジンに限定されるものではない。
【0038】
(第1の実施の形態)
図1〜図4は、本発明に係る熱電発電装置の第1の実施の形態を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1に示すように、自動車等の車両に搭載される内燃機関としてのエンジン1は、吸気系から供給される空気と燃料供給系から供給される燃料とを適宜の空燃比で混合して成る混合気を燃焼室に供給して燃焼させた後、この燃焼に伴って発生する排気ガスを排気系から大気に放出するようになっている。
【0039】
排気系は、エンジン1に取り付けられたエキゾーストマニホールド2と、このエキゾーストマニホールド2に球面継手3を介して連結された排気管4とを含んで構成されており、エキゾーストマニホールド2と排気管4とによって排気通路が形成されている。
【0040】
球面継手3は、エキゾーストマニホールド2と排気管4との適度な揺動を許容するとともに、エンジン1の振動や動きを排気管4に伝達させないか、あるいは減衰して伝達するように機能する。
【0041】
排気管4上には、2つの触媒5、6が直列に設置されており、この触媒5、6により排気ガスが浄化されるようになっている。
【0042】
この触媒5、6のうち、排気管4において排気ガスの排気方向の上流側に設置される触媒5は、所謂、スタートキャタリスタ(S/C)と呼ばれるものであり、排気管4において排気ガスの排気方向の下流側に設置される触媒6は、所謂、メインキャタリスタ(M/C)またはアンダーフロアキャタリスタ(U/F)と呼ばれるものである。
【0043】
これらの触媒5、6は、例えば三元触媒により構成されている。この三元触媒は、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)を一括して化学反応により無害な成分に変化させるといった浄化作用を発揮する。
【0044】
エンジン1の内部には、ウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケットにはロングライフクーラント(LLC)と呼ばれる冷却液(以下、単に冷却水と言う)が充填されている。
【0045】
この冷却水は、エンジン1に取付けられた導出管8から導出された後、ラジエータ7に供給され、このラジエータ7から冷却水の還流管9を経てエンジン1に戻されるようになっている。
【0046】
ラジエータ7は、ウォータポンプ10によって循環される冷却水を外気との熱交換により冷却するものである。
【0047】
また、還流管9にはバイパス管12が連結されており、このバイパス管12と還流管9との間にはサーモスタット11が介装され、このサーモスタット11によって、ラジエータ7を流通する冷却水量とバイパス管12を流通する冷却水量とが調節されるようになっている。
【0048】
例えば、エンジン1の暖機運転時においてはバイパス管12側の冷却水量が増加されて暖機が促進されるようになっている。
【0049】
バイパス管12にはヒータ配管13が連結されており、このヒータ配管13の途中には、ヒータコア14が設けられている。このヒータコア14は、冷却水の熱を利用して車室内の暖房を行うための熱源である。
【0050】
このヒータコア14によって暖められた空気は、ブロアファン15によって車室内に導入されるようになっている。なお、ヒータコア14とブロアファン15とによりヒータユニット16が構成されている。
【0051】
また、ヒータ配管13には後述する熱電発電装置17に冷却水を供給する上流側配管18aが設けられており、熱電発電装置17と還流管9との間には熱電発電装置17から還流管9に冷却水を排出する下流側配管18bが設けられている。
【0052】
このため、熱電発電装置17において排熱回収動作(この排熱回収動作の詳細については後述する)が行われている場合には、下流側配管18bを流れる冷却水は、上流側配管18aを流れる冷却水の温度よりも高くなる。
【0053】
一方、エンジン1の排気系には、熱電発電装置17が設けられており、この熱電発電装置17は、エンジン1から排出される排気ガスの熱を回収し、排気ガスの熱エネルギーを電気エネルギーに変換するようになっている。
【0054】
図2に示すように、熱電発電装置17は、エンジン1から排出された排気ガスが導入される排気管21を備えており、この排気管21の上流端は、排気管4に連結されているとともに、排気管21の下流端は、テールパイプ19に連結されている。
【0055】
そして、排気管21の内部にはエンジン1から排出された排気ガスGが排気管4を通して導入される排気通路22が形成されており、この排気通路22に導入された排気ガスGは、テールパイプ19を通して外部(大気)に排出される。
【0056】
また、熱電発電装置17は、熱電変換モジュール23と筒状の冷却水管24とを備えている。
【0057】
図3に示すように、熱電変換モジュール23は、高温側の受熱部を構成する絶縁セラミックス製の受熱基板29と、低温側の放熱部を構成する絶縁セラミックス製の放熱基板30との間に、ゼーベック効果により温度差に応じた熱起電力を発生するN型熱電変換素子31およびP型熱電変換素子32が複数個設置されており、N型熱電変換素子31およびP型熱電変換素子32が電極33a、33bを介して交互に直列に接続されている。また、隣接する熱電変換モジュール23は、配線35を介して電気的に連結されている。
【0058】
この熱電変換モジュール23は、一側面である受熱基板29が排気管21の外周部21cに接触するとともに、他側面である放熱基板30が冷却水管24の内周部24cに接触しており、排気ガスGの排気方向に並列に設置されている。なお、図1では、受熱基板29および放熱基板30を省略して熱電変換モジュール23を簡略化している。
【0059】
そして、熱電変換モジュール23は、受熱基板29と放熱基板30との温度差に応じて熱電発電を行うことにより、ケーブル34を介してバッテリに電力を供給するようになっている。
【0060】
なお、熱電変換モジュール23は、略正方形のプレート形状をしており、排気管21および冷却水管24の間に密着させる必要があるため、排気管21および冷却水管24は、多角形に形成されている。なお、排気管21および冷却水管24は、円形であってもよい。この場合には、熱電変換モジュール23の受熱基板29および放熱基板30等を湾曲させるようにすればよい。
【0061】
冷却水管24は、上流側配管18aに連結される冷却水導入部24aおよび下流側配管18bに連結される冷却水排出部24bを備えている。
【0062】
この冷却水管24は、冷却水導入部24aから冷却水管24に導入された冷却水Wが排気ガスGの排気方向と同方向、すなわち、上流側から下流側に流れるように、冷却水導入部24aに対して冷却水排出部24bが排気方向下流側に設けられている。
【0063】
また、排気管21および冷却水管24は、排気ガスGの排気方向に沿ってテーパ形状に形成されており、排気管21は、冷却水管24の一部分に環状のブラケット25によって固定されている。
【0064】
すなわち、排気管21は、開口径が大きい排気方向一端部である上流部21aがブラケット25を介して冷却水管24に固定されており、開口径の小さい排気方向他端部である下流部21bが冷却水管24に対して固定されない自由端から構成されている。
【0065】
なお、本実施の形態の排気管21は、上流部21aが排気管4に固定されているが、下流部21bが冷却水管24には固定されていないため、排気管21の下流部21bは、冷却水管24に対しては、自由端であると言える。
【0066】
また、熱電発電装置17は、排気管21の開口径が大きい上流部21aが排気方向上流側に設置されており、排気管4から導入される排気ガスGは、開口径が大きい上流部21aから開口径の小さい下流部21bに流れるようになっている。
【0067】
次に、作用を説明する。
エンジン1の冷間始動時には、触媒5、6、エンジン1の冷却水の全てが低温(外気温程度)になっている。
【0068】
この状態からエンジン1が始動されると、エンジン1の始動に伴いエンジン1からエキゾーストマニホールド2を経て排気管4に、例えば300〜400℃の排気ガスが排出されることになり、2つの触媒5、6が排気ガスにより昇温されることになる。
【0069】
また、冷却水がラジエータ7を通らずにバイパス管12を経てエンジン1に戻されることによって暖機運転が行われることになる。
エンジン1の冷間始動時には、排気管4から排気管21の排気通路22に導入された排気ガスによって冷却水管24を流通する冷却水Wが昇温され、エンジン1の暖機が促される。
【0070】
エンジン1の暖機後には、排気管4から排気管21の排気通路22に導入された排気ガスGの熱エネルギーが、熱電変換モジュール23によって圧力エネルギーに効率よく変換される。
【0071】
また、エンジン1の暖機後には、サーモスタット11によってバイパス管12と還流管9との連通が遮断されるので、エンジン1から導出管8を介して導出された冷却水Wがラジエータ7を介して還流管9に導出される。このため、エンジン1に低温の冷却水Wが供給され、エンジン1の冷却性能を高めることができる。
【0072】
本実施の形態の熱電発電装置17は、排気管21および冷却水管24を、排気ガスGの排気方向に沿ってテーパ形状に形成し、開口径の大きい排気管21の上流部21aと冷却水管24をブラケット25によって固定し、開口径の小さい排気管21の下流部21bを冷却水管24に対して固定されない自由端から構成している。
【0073】
このため、排気管21の排気通路22を流通する排気ガスGの熱によって排気管21が熱膨張したときに、排気管21が、冷却水管24に固定されている開口径の大きい上流部21aを基点として開口径の小さい下流部21bに向かって延伸する(図2に矢印Lで示す)。
【0074】
このため、排気管21と熱電変換モジュール23の受熱基板29との接触面圧を増大させ、排気ガスGから熱電変換モジュール23への伝熱効率を向上させることができ、熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができる。
【0075】
なお、排気管21の開口径の大きい上流部21aを自由端とし、開口径の小さい下流部21bを冷却水管24に固定した場合には、排気管21が、冷却水管24に固定されている開口径の小さい上流部21aを基点として開口径の大きい下流部21bに向かって延伸する。
このため、排気管21と熱電変換モジュール23の受熱基板29との間に隙間が形成されて接触面圧が低下することになり、熱電変換モジュール23の受熱基板29との接触面圧が低下する。
【0076】
このように本実施の形態の熱電発電装置17は、排気管21をテーパ管として排気管21の上流部21aを冷却水管24に固定するだけの簡素な構成によって熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができるので、熱電発電装置17の部品点数が増加するのを防止して、熱電発電装置17の製造コストが増大するのを防止することができる。
【0077】
また、本実施の形態の熱電発電装置17は、排気管21の開口径の大きい上流部21aを排気ガスの排気方向の上流側に設置したので、すなわち、開口径の大きい上流部21aから排気管21に排気ガスGを導入するようにしたので、排気管21の排気通路22を流れる排気ガスGの流速を上流部21aから下流部21bに向かって上昇させることができる。
【0078】
このため、ニュートンの冷却の法則により、排気ガスGの流速が上昇すると、排気ガスGから下流側に位置する熱電変換モジュール23への伝熱効率を上流側の熱電変換モジュール23よりも向上させることができ、結果的に熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができる。
【0079】
すなわち、排気管21内を流れる排気ガスGは、排気管21の上流部21aの熱電変換モジュール23によって排気ガスの熱量の多くが奪われてしまい、排気管21の下流部21bの排気ガスGの熱量が低下してしまう。
【0080】
このため、下流側に位置する熱電変換モジュール23の発電効率が上流側に位置する熱電変換モジュール23の発電効率に比べて低下し、結果的に熱電変換モジュール23の全体の発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0081】
本実施の形態の熱電発電装置17は、排気ガスGの流速を排気管21の上流部21aから下流部21bに向かって上昇させて排気ガスGから下流側に位置する熱電変換モジュール23への伝熱効率を上流側に位置する熱電変換モジュール23よりも向上させることができる。このため、下流側に位置する熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができ、熱電変換モジュール23全体の発電効率が低下するのを防止することができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、排気管21の排気方向一端部である開口径の大きい側を上流部21aとし、排気方向他端部である開口径の小さい側を下流部21bとしているが、これに限らず、図4に示すように、排気管21の開口径の小さい側を上流部21dとし、開口径の大きい側を下流部21eとしてもよい。
【0083】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明に係る熱電発電装置の第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
【0084】
図5において、排気管41の上流部41aは、排気管4に連結されており、排気管41の下流部41bは、テールパイプ19に連結されている。
【0085】
排気管41の内部には排気管4およびテールパイプ19に連通する排気通路42が形成されており、排気管4から排出された排気ガスGは、排気通路42を通してテールパイプ19に排気される。
【0086】
この排気管41の排気方向略中央部には環状のブラケット43が設けられており、排気管41は、ブラケット43を介して冷却水管24に固定されている。また、排気管41の排気方向一端部である上流部41aおよび排気方向他端部である下流部41bは、冷却水管24に固定されない自由端から構成されている。
【0087】
なお、本実施の形態の排気管41は、上流部41aが排気管4に固定されているとともに下流部41bがテールパイプ19に固定されているが、上流部41aおよび下流部41bが冷却水管24には固定されていないため、排気管21の上流部41aおよび下流部21bは、冷却水管24に対しては、自由端であると言える。
【0088】
また、排気管41の外周部41cと冷却水管24の内周部24cとの間には図3の同一の構成を有する熱電変換モジュール23が介装されており、この熱電変換モジュール23は、ブラケット43が設けられている排気管41の中央部分には設けられていない。
【0089】
また、排気管41は、開口径の大きい上流部41aが排気ガスGの排気方向上流側に設置されており、排気管4から導入される排気ガスGは、開口径が大きい上流部41aから開口径の小さい下流部41bに流れるようになっている。
【0090】
本実施の形態では、排気管41の排気通路42を流通する排気ガスGの熱によって排気管41が熱膨張したときに、排気管41が、冷却水管24に固定されている略中央部を基点とし、略中央部から上流部41a(矢印L1方向)および下流部41b(矢印L2方向)に向かって延伸する。
【0091】
このため、排気管41と下流側の熱電変換モジュール23の接触面圧を増大させ、排気ガスGから熱電変換モジュール23への伝熱効率を向上させることができ、熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができる。
【0092】
特に、本実施の形態では、排気管41の開口径の大きい上流部41aを排気方向上流側に設置したので、排気管41が排気方向の略中央部から開口径の大きい上流部41aに延伸した場合には、上流側に位置する熱電変換モジュール23と排気管41との接触面圧を低下させることができる。
【0093】
また、排気管41が排気方向の略中央部から開口径の小さい下流部41bに延伸した場合には、下流側に位置する熱電変換モジュール23と排気管41との接触面圧を増大させることができる。
【0094】
ここで、上流側に位置する熱電変換モジュール23は、下流側に位置する熱電変換モジュール23に比べて高温の排気ガスに晒されてしまうため、上流側に位置する熱電変換モジュールが熱害を受け易く、却って発電効率が低下しまうおそれがある。
【0095】
本実施の形態の熱電発電装置17は、上流側に位置する熱電変換モジュール23と排気管41との接触面圧を低下させることができるため、上流側に位置する熱電変換モジュール23の熱電効率を低下させて上流側に位置する熱電変換モジュール23が高温の排気ガスによって熱害を受けるのを防止することができる。
【0096】
また、排気管41内を流れる排気ガスは、排気管21の上流側に位置する熱電変換モジュール23によって排気ガスの熱量の多くが奪われてしまい、排気管21の下流側の排気ガスの熱量が低下してしまう。
【0097】
このため、排気管41の下流側の熱電変換モジュール23の発電効率が上流側の熱電変換モジュールの23の発電効率に比べて低下し、結果的に熱電変換モジュール23の全体の発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0098】
本実施の形態の熱電発電装置17は、排気管41の下流側に位置する熱電変換モジュール23と排気管41との接触面圧を増大させることができるため、排気管41の下流側に位置する熱電変換モジュール23の熱電効率を向上させて下流側に位置する熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができ、熱電変換モジュール23全体の発電効率が低下するのを防止することができる。
【0099】
(第3の実施の形態)
図6〜図8は、本発明に係る熱電発電装置の第3の実施の形態を示す図である。
図6〜図8において、熱電発電装置51は、エンジン1から排出された排気ガスが導入される多角形状の複数の排気管52を備えており、この排気管52の外周部52cには多角形状の外管53が設けられている。
【0100】
この外管53の上流端は、排気管4に連結されているとともに、外管53の下流端は、テールパイプ19に連結されている。このため、排気管4から外管53の上流端に導入された排気ガスGは、複数の排気管52にそれぞれ導入された後、排気管52の下流端で合流されて外管53の下流端からテールパイプ19に排出されるようになっている。
【0101】
また、熱電発電装置51は、外管53の内部が複数の仕切部材54、55によって排気方向に仕切られており、排気管52は、仕切部材54、55を介して外管53に保持されている。
【0102】
また、外管53の内部には排気管52の外周部52cに位置するようにして複数の内管56が設けられており、この内管56は、外管53の内部を排気方向に仕切る仕切部材57、58によって外管53に保持されている。
【0103】
外管53、内管56および仕切部材57、58によって囲まれる空間は、冷却水Wが流通する冷却水路59を画成している。本実施の形態では、外管53および内管56によって冷却水管が構成されている。
【0104】
また、外管53には上流側配管18aに連結される冷却水導入部53aおよび下流側配管18bに連結される冷却水排出部53bを備えており、冷却水Wは、冷却水導入部53aから冷却水路59に導入された後、冷却水排出部53bから排出される。
【0105】
また、排気管52の外周部52cと内管56の内周部56aとの間には図3に示すものと同一の構成を有する熱電変換モジュール23が介装されている。
【0106】
また、排気管52および内管56は、排気ガスの排気方向に沿ってテーパ形状に形成されており、排気管52の上流部52aは、仕切部材54に固定されている。また、排気管52の下流部52bは、円筒状のメッシュ60を介して仕切部材55に支持されており、排気管52の下流部52bは、仕切部材55に対して固定されない自由端から構成されている。
【0107】
本実施の形態の排気管52は、開口径が大きい排気方向一端部である上流部52aが仕切部材54を介して外管53に固定されており、開口径の小さい排気方向他端部である下流部52bが仕切部材55を介して外管53に固定されない自由端から構成されている。
【0108】
すなわち、内管56は、仕切部材57、58を介して外管53に固定されており、排気管52は、上流部52aが仕切部材54を介して外管53に固定されているとともに、下流部52bが仕切部材55を介して外管53に固定されない自由端から構成されていることになる。したがって、排気管52の上流部52aは、内管56に固定され、排気管52の下流部52bは、内管56に対して固定されない自由端となる。
【0109】
また、熱電発電装置51は、排気管52の開口径が大きい上流部52aが排気方向上流側に設置されており、排気管4から導入される排気ガスGは、開口径が大きい上流部52aから開口径の小さい下流部52bに流れるようになっている。
【0110】
本実施の形態では、排気管52を流通する排気ガスGの熱によって排気管52が熱膨張したときに、排気管52が、仕切部材54を介して外管53に固定されている上流部52aを基点とし、上流部52aから下流部52bに向かって延伸する(図7にL3で示す)。
【0111】
このため、排気管52と熱電変換モジュール23の接触面圧を増大させ、排気ガスGから熱電変換モジュール23への伝熱効率を向上させることができ、熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができる。
【0112】
特に、本実施の形態では、排気管52の開口径の大きい上流部52aを排気方向上流側に設置したので、ニュートンの冷却の法則により、排気ガスGの流速が上昇すると、排気ガスGから下流側に位置する熱電変換モジュール23への伝熱効率を上流側の熱電変換モジュール23よりも向上させることができ、結果的に熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができる。
【0113】
このため、排気管52の下流側に位置する熱電変換モジュール23の熱電効率を向上させて下流側に位置する熱電変換モジュール23の発電効率を向上させることができ、熱電変換モジュール23全体の発電効率が低下するのを防止することができる。
なお、排気管52および内管56は、円形であってもよい。この場合にも熱電変換モジュール23の受熱基板29および放熱基板30等を湾曲させるようにすればよい。
【0114】
以上のように、本発明に係る熱電発電装置は、簡素な構成で熱電変換モジュールの発電効率を増大させることができ、製造コストが増大するのを防止することができる熱電発電装置を提供することができるという効果を有し、内燃機関から排出される排気ガスを利用して熱電発電を行う熱電発電装置等として有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 エンジン(内燃機関)
17、51 熱電発電装置
21、41 排気管
21a、21d、41a、52a 上流部
21b、21e、41b、52b 下流部
21c、41c、52c 外周部
21d 上流部
23 熱電変換モジュール
24 冷却水管
24c 内周部
53 外管(冷却水管)
56 内管(冷却水管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスが導入される排気管と、前記排気管の外周部に設けられ、冷却水が流通する冷却水管と、一側面が前記排気管の外周部に接触するとともに他側面が前記冷却水管の内周部に接触し、前記一側面と前記他側面との温度差に応じて熱電発電を行う熱電変換モジュールとを備えた熱電発電装置であって、
前記排気管および前記冷却水が、排気ガスの排気方向に沿ってテーパ形状に形成され、前記排気管が前記冷却水管の一部分に固定されることを特徴とする熱電発電装置。
【請求項2】
前記排気管の開口径が大きい排気方向一端部が前記冷却水管に固定され、前記排気管の開口径の小さい排気方向他端部が前記冷却水管に対して固定されない自由端から構成されることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記排気管の開口径の大きい排気方向一端部を排気方向上流側に設置したことを特徴とする請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記排気管の排気方向の略中央部が前記冷却水管に固定され、前記排気管の開口径の大きい排気方向一端部および開口径の小さい排気方向他端部が前記冷却水管に固定されない自由端から構成されることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項5】
前記排気管の開口径の大きい排気方向一端部が排気方向上流側に設置されることを特徴とする請求項4に記載の熱電発電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−99201(P2013−99201A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242361(P2011−242361)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)