説明

熱音響装置

【課題】本発明は、熱音響装置に関するものである。
【解決手段】本発明の熱音響装置は、電気信号装置と、ベース及び該ベースの少なくとも一部を被覆させた伝導層を含む音波発生器と、を含む。前記音波発生器は前記電気信号装置に電気的に接続されている。前記ベースは複数のナノレベルの素子を含む。前記複数のナノレベルの素子は、架橋してネット状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱音響装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、音響装置は信号装置及び音波発生器を含む。前記信号装置は、信号を前記音波発生器(例えばスピーカー)に伝送する。スピーカーは電気音響変換器として、電気信号を音に変換することができる。
【0003】
動作原理により、スピーカーは、ダイナミックスピーカー、マグネティックスピーカー、静電気スピーカー、圧電スピーカーなどの多種に分類される。前記多種のスピーカーは、全て機械的振動によって音波を生じ、即ち、電気―機械力―音の変換を実現する。ここで、ダイナミックスピーカーが広く利用されている。
【0004】
しかし、ダイナミックスピーカーは、重いマグネット及び磁場の作用に依存しているので、ダイナミックスピーカーの構造は複雑である。また、ダイナミックスピーカーのマグネットは、スピーカーの近くに配置された電子装置に、悪い影響を与えるという問題がある。さらに、ダイナミックスピーカーは電気信号の入力の条件により作動するので、電気信号を提供しない場合、ダイナミックスピーカーは作動できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−184907号公報(特願2009−8209)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H.D.Arnold、I.B.Crandall, “The thermophone as a precision source of sound”, Phys. 1917年、第10巻, 第22−38頁、
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に、熱音響現象によって製造されたサーモホン(thermophone)が掲載されている。熱音響現象とは、音と熱が関わり合う現象であり、エネルギー変換とエネルギー輸送という2つの側面がある。熱音響装置に信号を転送すると、熱音響装置に熱が生じ、周辺の媒体へ伝播される。伝播された熱によって生じた熱膨張及び圧力波により音波を発生させることができる。ここで、厚さが7×10−5cmの白金片が熱音響部品として利用されている。しかし、厚さが7×10−5cmの白金片に対して、単位面積当たりの熱容量は2×10−4J/cm・Kである。白金片の単位面積当たりの熱容量が非常に高いので、白金片を利用したサーモホンを室外で利用する場合、音が非常に弱いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、軽量な熱音響装置を提供する。本発明の熱音響装置は、磁場に依存せず、機械的振動によらずに音を発生することができる。
【0009】
本発明の熱音響装置は、電磁信号装置と、ベース及び該ベースの少なくとも一部を被覆させた伝導層を含む音波発生器と、を含む。前記音波発生器は、前記電磁信号装置に電気的に接続されている。前記ベースが複数のナノレベルの素子を含む。前記複数のナノレベルの素子が架橋してネット状に形成されている。
【0010】
電磁信号装置と、ベース及び該ベースの少なくとも一部を被覆させた伝導層を含む音波発生器と、を含む。前記ベースは、複数のナノレベルの素子を含む。前記電磁信号装置は、前記音波発生器に電磁信号を送信し、前記音波発生器が前記電磁信号を熱に変換して、媒体に熱音響効果を生じさせる。
【0011】
前記ベースにおける複数のナノレベルの素子は、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、窒化ホウ素ナノワイヤ又はシリコンナノワイヤである。
【0012】
前記ベースは、カーボンナノチューブ構造体を含む。該カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム、又は複数のカーボンナノチューブワイヤ、又は該カーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブワイヤの組合わせである。
【0013】
前記カーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブワイヤは、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。
【発明の効果】
【0014】
従来の技術と比べて、本発明の熱音響装置は次の優れた点がある。第一は、本発明の熱音響装置における音波発生器において、各々のナノレベルの素子の表面に伝導層を形成するので、該音波発生器のオーム抵抗が低くなり、該音波発生器を発声させるための電圧が低くなる。第二は、ナノレベルの素子の比表面積が大きく、該ナノレベルの素子の表面に形成された伝導層の比表面積が大きいので、本発明の音波発生器の単位体積当たりの熱容量が小さく、熱交換の速度が速く、音を良好に発生することができる。第三は、前記ナノレベルの素子は薄いので、透明な音響装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1における熱音響装置の模式図である。
【図2】本発明の実施例1における音波発生器の模式図である。
【図3】本発明におけるドローン構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図4】本発明におけるカーボンナノチューブセグメントの模式図である。
【図5】本発明における超配列カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを引き出すことを示す図である。
【図6】本発明における綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図7】本発明における非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図8】本発明におけるねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図9】本発明における複数のカーボンナノチューブフィルム又は/及びカーボンナノチューブワイヤからなる織物の模式図である。
【図10】本発明の伝導層を含むカーボンナノチューブ複合物の模式図である。
【図11】本発明の伝導層を含むカーボンナノチューブ複合物の模式図である。
【図12】本発明のカーボンナノチューブ複合物のSEM写真である。
【図13】本発明のカーボンナノチューブ複合物のTEM写真である。
【図14】本発明の実施例1における熱音響装置の模式図である。
【図15】本発明の実施例2における熱音響装置の模式図である。
【図16】本発明の実施例3における熱音響装置の模式図である。
【図17】本発明の実施例4における熱音響装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(実施例1)
図1及び図2を参照すると、本発明の熱音響装置10は、信号装置12と、音波発生器14と、第一電極142と、第二電極144と、を含む。前記第一電極142及び第二電極144は所定の距離で離れるように、それぞれ前記音波発生器14に電気的に接続されている。且つ、前記第一電極142及び第二電極144はそれぞれ前記信号装置12に電気的に接続されている。前記第一電極142及び第二電極144により、前記信号装置12からの信号を前記音波発生器14へ転送する。
【0018】
前記音波発生器14はベース146及び該ベース146の表面に形成された伝導構造体(図示せず)を含む。前記ベース146は、ネット状の構造体であることが好ましい。前記ベース146は、複数のナノレベルの素子148が架橋して形成される。前記ナノレベルの素子148はナノワイヤ、ナノチューブのような一次元の構造体であることが好ましい。該ナノレベルの素子は、導電材料、又は、カーボン、窒化ホウ素、シリコンのような絶縁材料からなる。前記ナノレベルの素子148は、複数のカーボンナノチューブ、カーボンファイバー、窒化ホウ素ナノワイヤ又はシリコンナノワイヤを含む場合、前記複数のナノレベルの素子148はそれぞれ接続されてネット状のベース146に形成されている。前記ベース146は複数の前記ナノレベルの素子148を含むので、その比表面積が多く、その厚さが小さい。各々の前記ナノレベルの素子148は、伝導層(図示せず)によって被覆されている。前記伝導層により、前記ナノレベルの素子148の全体を被覆させ、又は前記ナノレベルの素子148の一部を被覆させ、該ナノレベルの素子148の他の部分を露出させることができる。該伝導層は、金属、合金又は他の伝導性材料からなる。前記複数のナノレベルの素子148は架橋してネット状に形成されているので、各々の前記ナノレベルの素子148に被覆された伝導層は、それぞれ接触して、前記伝導構造体に形成されている。該伝導構造体は、前記信号装置12と接続されている。
【0019】
前記ベース146は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体である場合、前記ナノレベルの素子148はカーボンナノチューブである。該カーボンナノチューブ構造体は大きな比表面積(例えば、100m/g以上)を有する。該カーボンナノチューブ構造体の単位体積当たりの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであるが、好ましくは、0(0は含まず)〜1.7×10−6J/cm・Kであり、本実施例では、1.7×10−6J/cm・Kである。前記カーボンナノチューブ構造体には、複数のカーボンナノチューブが均一に分散されている。該複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブ構造体に、前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体は非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブ構造体では、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブ構造体では、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブ構造体において、配向型のカーボンナノチューブ構造体が二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。
【0020】
前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブ構造体は平板型であり、その厚さは0.5nm〜1mmに設けられている。前記カーボンナノチューブ構造体の比表面積が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブ構造体の単位体積当たりの熱容量が高くなる。前記カーボンナノチューブ構造体の単位体積当たりの熱容量が高くなるほど、前記熱音響装置の音圧が低くなる。
【0021】
本発明のカーボンナノチューブ構造体としては、以下の(一)〜(三)のものが挙げられる。
【0022】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、図3に示す、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム143aを含む。このカーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(非特許文献2を参照)から引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む(図5を参照する)。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブがカーボンナノチューブフィルムの表面に平行し、該複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。ここで、極少のカーボンナノチューブは、ランダム配列されている。この極少のカーボンナノチューブより、隣接する平行なカーボンナノチューブを連通させて、前記カーボンナノチューブフィルム143aをネット状構造に形成させることができる。しかし、図3に示されるように、前記極少のカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブフィルム143aの構造に対して影響を与えない。前記カーボンナノチューブフィルム143aの幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。
【0023】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成される。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルムは、隙間なく並列されることもできる。
【0024】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0025】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らなベースを提供し、該ベースはP型のシリコンベース、N型のシリコンベース及び酸化層が形成されたシリコンベースのいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコンベースを選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記ベースの表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成されたベースを700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされたベースを反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、ベースに垂直するように生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0026】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0027】
本実施例から提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもいい。
【0028】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメントからなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0029】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記ベースから脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブセグメントが端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される。図3及び図4を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。有機溶剤に浸漬された前記カーボンナノチューブフィルムの単位体積当たりの熱容量が低くなるので、その熱音響効果を高めることができる。
【0030】
(二)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)である。図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、100nm以上であり、100nm〜10cmであることが好ましい。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10μm以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、0.5nm〜1mmである。
【0031】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0032】
第一ステップでは、カーボンナノチューブ原料(綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの素になるカーボンナノチューブ)を提供する。
【0033】
ナイフのような工具で前記カーボンナノチューブを前記ベースから剥離し、カーボンナノチューブ原料が形成される。前記カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。前記カーボンナノチューブの原料においては、該カーボンナノチューブの長さは、100マイクロメートル以上であり、10マイクロメートル以上であることが好ましい。
【0034】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブ原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブ原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
【0035】
前記カーボンナノチューブ原料を前記溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度攪拌又は振動などの方法により、前記カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は水または揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法により、カーボンナノチューブを含む溶剤に対して10〜30分間処理する。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブの間に大きな分子間力が生じるので、前記カーボンナノチューブはそれぞれもつれて、綿毛構造に形成されている。
【0036】
第三ステップでは、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
【0037】
まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を濾紙が置かれたファネルにつぎ、しばらく放置して、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が分離される。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが互いに絡み合って、不規則的な綿毛構造となる。
【0038】
分離された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に置き、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開し、展開された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加え、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を加熱するか、或いは、該溶剤が自然に蒸発すると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0039】
前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開される面積によって、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度を制御できる。即ち、一定の体積を有する前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度が小さくなる。
【0040】
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。具体的には、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、前記微多孔膜を通して前記エアーポンプファネルにつぎ、該エアーポンプファネルに抽気し、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルにされている。前記微多孔膜は平滑な表面を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムは容易に前記微多孔膜から剥落することができる。さらに、前記エアーポンプを利用することにより、前記綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
【0041】
前記カーボンナノチューブ構造体が、一枚の前記カーボンナノチューブフィルムだけを含む場合、該カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記第一電極及び前記第二電極に電気的に接続される。前記カーボンナノチューブ構造体が、少なくとも二枚の積層された複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、隣接するカーボンナノチューブフィルム間におけるカーボンナノチューブ同士の成す角度αは、0°〜90°である。少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記第一電極及び前記第二電極に電気的に接続される。
【0042】
(三)カーボンナノチューブワイヤ
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであり、5×10−5J/cm・Kであることが好ましい。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は4.5nm〜1cmである。図7を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で接続された複数のカーボンナノチューブからなる。この場合、一本のカーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。図8を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。前記カーボンナノチューブ構造体は、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0043】
前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。第三種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0044】
前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、前記複数のカーボンナノチューブワイヤは平行に並列され、又は交叉して織られ、又はねじれ状とされることができる。図9に複数のカーボンナノチューブワイヤ146からなる織物が示されている。該織物の対向する両端に、それぞれ第一電極142及び第二電極144を設置する。前記第一電極142及び第二電極144は前記カーボンナノチューブワイヤ146と電気的に接続されている。
【0045】
前記カーボンナノチューブ構造体を前記ベース146として利用する場合、前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、前記ナノレベルの素子148として利用されている。図10を参照すると、前記ナノレベルの素子148である一本のカーボンナノチューブ111の表面に、伝導層112が形成されている。本実施例において、前記カーボンナノチューブ111の全体に、少なくとも一つの前記伝導層112が被覆されている。前記カーボンナノチューブ構造体は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムである。
【0046】
前記伝導層112は、Fe、Co、Ni、Pd、Ti、Cu、Ag、Au、Pt、それらの一種の合金、又はそれらの組み合わせからなる。前記伝導層112の厚さは、1nm〜100nmである。本実施例において、前記伝導層112の厚さは20nmより小さい。図11を参照すると、前記伝導層112は、内側から外側に、濡れ層11222と、過渡層1124と、導電層1126と、抗酸化層1128と、を含む。前記濡れ層1122は、最も前記カーボンナノチューブ111の外表面に近く設置され、前記カーボンナノチューブ111の外表面に接触する。前記過渡層1124は、前記濡れ層11222を覆うように設置されている。前記導電層1126は、前記過渡層1124を覆うように設置されている。前記抗酸化層1128は、前記導電層1126を覆うように設置されている。
【0047】
カーボンナノチューブは金属で濡れ難いので、前記濡れ層1122を設置することにより、前記カーボンナノチューブ111と前記導電層1126とを効果的に結合させることができる。前記濡れ層1122は、金(Au)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、チタニウム(Ti)及びそれらの一種の合金からなる。前記濡れ層1122の厚さは、1nm〜10nmである。前記濡れ層1122はニッケルからなる場合、その厚さが2nmである。前記濡れ層1122はAuからなる場合、その厚さは15nmである。前記濡れ層1122を設置しないことができる。
【0048】
前記過渡層1124は、前記濡れ層1122と前記導電層1126とを結合させるために設置されている。前記過渡層1124は、銅、銀及びその一種の合金からなる。前記過渡層1124の厚さは、1nm〜10nmである。本実施形態において、前記過渡層1124は銅からなり、その厚さが2nmである。前記過渡層1124を設置しないことができる。
【0049】
前記導電層1126は、前記線状カーボンナノチューブ構造体の導電性を高めるために設置されている。前記導電層1126は、金、銅、銀及びその一種の合金からなる。前記導電層1126の厚さは、1nm〜20nmである。本実施形態において、前記導電層1126は銀からなり、その厚さが5nmである。
【0050】
前記抗酸化層1128は、前記線状カーボンナノチューブ構造体の酸化を防ぐために設置されている。前記抗酸化層1128は、銅、白金などの抗酸化金属及びその一種の合金からなる。前記抗酸化層1128の厚さは、1nm〜10nmである。本実施形態において、前記抗酸化層1128は白金からなり、その厚さが2nmである。前記抗酸化層1128を設置しないことができる。
【0051】
さらに、前記線状カーボンナノチューブ構造体の強靭性を高めるために、前記抗酸化層1128を覆うように強化層(図示せず)を設置することができる。前記強化層は、ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate,PVA)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride,PVC)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、パラフェニレンベンゾビスオキサゾール(paraphenylene benzobisoxazole,PBO)のいずれか一種からなる。前記強化層の厚さは、0.1μm〜1μmである。本実施形態において、前記強化層はPVAからなり、その厚さが0.5μmである。前記強化層を設置しないことができる。
【0052】
真空蒸着法又はスパッタ法などの物理気相堆積法(physical vapor deposition,PVD)、化学気相堆積法(chemical vapor deposition,CVD)、又は電気メッキのような方法を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に前記伝導構造体を堆積させる。本実施形態において、真空蒸着法を利用する。
【0053】
本実施例において、スパッタ法により、真空容器の中で前記カーボンナノチューブ構造体における各々のカーボンナノチューブ111の外表面に、前記伝導層112を被覆させる。前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、前記複数のカーボンナノチューブフィルムを積層させた後に、前記カーボンナノチューブ構造体対して伝導材料を堆積させる。又は、各々の前記カーボンナノチューブフィルムに伝導材料を堆積させた後、前記複数のカーボンナノチューブフィルムを積層することができる。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、前記カーボンナノチューブワイヤを形成するためのカーボンナノチューブフィルムに伝導材料を堆積させた後、該伝導材料が被覆された前記カーボンナノチューブフィルムをねじって加工する。
【0054】
本実施例の音波発生器14は、一枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。該カーボンナノチューブフィルムにおいて、カーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。図12及び13に示されるように、前記カーボンナノチューブフィルムに伝導層112が形成されている。カーボンナノチューブフィルムに伝導材料を堆積させる方法について、日本特許出願である特許文献1に詳しく説明されている。前記伝導層112及びカーボンナノチューブフィルムは非常に薄いので、前記音波発生器14の単位体積当たりの熱容量が小さい。
【0055】
前記音波発生器14の透明度を高めるために、前記伝導層112を被覆させる前に、レーザーにより前記カーボンナノチューブフィルムを照射することができる。これにより、前記カーボンナノチューブフィルムを薄くさせて、その透明度を高めることができる。本実施例において、最大出力パワーが20mWのレーザー素子を利用して、10mm/sの走査速度により、波長が1064nmの赤外線を照射する。前記カーボンナノチューブフィルムを損傷しないため、前記レーザー素子のフォーカスレンズを取り除くことができる。従って、前記カーボンナノチューブフィルムに照射したレーザーは、直径が3μmのレーザースポットである。レーザーにより前記カーボンナノチューブフィルムを照射することにより、前記カーボンナノチューブフィルムの単位体積当たりの熱容量を下げることができる。
【0056】
前記音波発生器14に対して、次の実験を行った。
【0057】
【表1】

【0058】
前記表1に示すように、伝導層112を被覆させることにより、前記音波発生器14のオーム抵抗を低減させることができる。しかし、同時に、伝導層112を被覆させることにより、前記音波発生器14が厚くなり、前記音波発生器14の透明度及び光透過性が低くなるという課題がある。該課題を解決するために、レーザーにより前記音波発生器14を照射する。これにより、前記音波発生器14の透明度及び光透過性を高めることができる。前記実験のパラメータを調整して実験を行うことにより、前記音波発生器14のオーム抵抗は50Ω〜2000Ω、前記音波発生器14の可視光に対する光透過性は70%〜95%に達することができる。
【0059】
本実施例において、処理しないカーボンナノチューブフィルムのオーム抵抗は1600Ωより大きい。該カーボンナノチューブフィルムにNi/Auを堆積させて複合体を形成した後、この複合体のオーム抵抗はおおよそ200Ωまで低減される。また、該カーボンナノチューブフィルムの可視光に対する光透過性は、90%に達することができる。従って、前記処理を行うことにより、前記カーボンナノチューブフィルムのオーム抵抗を低減でき、その光透過性を高めることができる。
【0060】
本実施例において、前記ベース146はカーボンナノチューブ構造体を含む。カーボンナノチューブ構造体の単位体積当たりの熱容量が小さいので、前記カーボンナノチューブ構造体で生じた温度波により周辺の媒体に圧力振動を発生させることができる。前記カーボンナノチューブ構造体に信号(例えば、電気信号)を転送すると、信号強度及び/又は信号によって前記カーボンナノチューブ構造体に熱が生じる。温度波の拡散により、周辺の空気が熱膨張されて音が生じる。この原理は、従来のスピーカーにおける振動板の機械振動によって生じた圧力波により音を発生させる原理とは大きく異なる。前記入力信号が電気信号である場合、前記カーボンナノチューブ構造体は、電気―熱―音の変換方式によって作動するが、前記入力信号が光学信号である場合、前記カーボンナノチューブ構造体は、光―熱―音の変換方式によって作動する。前記光学信号のエネルギーは前記カーボンナノチューブ構造体で吸収されて、熱として放射される。熱の放射によって周辺媒体(環境)の圧力強度が変化するので、検出可能な信号を発生させることができる。本実施例において、前記カーボンナノチューブ構造体を発声させるための最大パワー密度は、5×10W/mである。
【0061】
前記ベース146に被覆された伝導構造体は非常に薄いので、その比表面積が大きいので、前記伝導構造体は、電気―熱―音の変換方式によって作動できる。従って、前記伝導構造体及び前記カーボンナノチューブ構造体は、同時に発声される。前記音波発生器14の発声効率が高くなる。前記音波発生器14の周波数応答範囲が広く、音圧レベルが高いことが理解できる。前記音波発生器14の音圧レベルは50dB〜105dBである。前記音波発生器14に4.5Wの電圧を印加する場合、前記音波発生器14の周波数応答範囲は、1Hz〜100KHzである。前記音波発生器14の高調波歪みは非常に小さく、例えば、500Hz〜40KHzの範囲においてわずか3%未満である。従って、前記音波発生器14により、人間の耳で聞こえる音声を発声させることができる。
【0062】
前記音波発生器14を発声させるために、前記ベース146及び該ベース146に形成された伝導層112の比表面積は、それぞれ50 m/gより大きく、前記音波発生器14の単位体積当たりの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであることが好ましい。
【0063】
前記第一電極142及び第二電極144は金属、導電接着剤、カーボンナノチューブ、ITOのいずれかの導電材料からなる。本実施例において、前記第一電極142及び第二電極144は棒状の金属電極である。前記音波発生器14はそれぞれ前記第一電極142及び第二電極144に電気的に接続されている。前記音波発生器14に利用したカーボンナノチューブ構造体は接着性を有するので、前記音波発生器14を直接前記第一電極142及び第二電極144に接着させることができる。さらに、前記第一電極142及び第二電極144は、導電線149によってそれぞれ前記信号装置12の両端に接続されている。前記ベース146は絶縁材料からなる場合、前記第一電極142及び第二電極144は、前記伝導層112と電気的接続されている。
【0064】
前記第一電極142又は第二電極144と前記音波発生器14とを良好に電気的に接続させるために、前記第一電極142又は第二電極144と前記音波発生器14との間に導電性接着層(図示せず)を設置することもできる。前記導電性接着層は、前記音波発生器14の表面に設置されることができる。前記導電性接着層は銀ペーストからなる。
【0065】
前記信号装置12は、電気信号装置、直流電流パルス信号装置、交流電流装置、電磁波信号装置(例えば、光学信号装置、レーザー)のいずれかの一種である。前記信号装置12から前記音波発生器14へ転送された信号は、例えば、電磁波(例えば、光学信号)、電気信号(例えば、交流電流、直流電流脈動信号、オーディオ電気信号)又はそれらの混合信号である。前記信号はカーボンナノチューブ構造体に受信されて熱として放射される。熱の放射によって周辺媒体(環境)の圧力強度が変化するので、検出可能信な号を発生することができる。前記熱音響装置10をスピーカーに利用した場合、前記入力信号はAC電気信号又はオーディオ電気信号である。前記熱音響装置10を光音響スペクトルデバイスに利用した場合、前記入力信号は光学信号である。本実施例において、前記信号装置12は光音響スペクトルデバイスであり、入力信号は光学信号である。
【0066】
異なるタイプの前記信号装置12に対して、前記第一電極142及び第二電極144の設置は選択的である。例えば、前記信号装置12からの信号が電磁波又は光である場合、前記信号装置12は前記第一電極142及び第二電極144を利用せず、信号を前記音波発生器14に直接的に転送することができる。
【0067】
さらに、前記カーボンナノチューブ構造体が優れた機械強度及び強靭性を有するので、前記カーボンナノチューブ構造体を、所望の形状及び寸法に設けることが可能であり、これにより、多数の所望の形状及び寸法の熱音響装置10を得ることが可能である。前記熱音響装置10は、例えば音響システム、携帯電話、MP3、MP4、TV、コンピューターなどに利用できる。
【0068】
(実施例2)
図14を参照すると、本実施例の熱音響装置20は、信号装置22と、音波発生器24と、第一電極242と、第二電極244と、第三電極246と、第四電極248と、を含む。本実施例の熱音響装置20の構成、特性、機能は、実施例1の熱音響装置10と同じである。本実施例と実施例1との異なる点は、本実施例の熱音響装置20は四つの電極(第一電極242、第二電極244、第三電極246、第四電極248)を含むことである。前記四つの電極は棒状であり、それぞれ所定の距離で分離して設置されている。前記音波発生器24は前記四つの電極を囲むように、前記四つの電極に電気的に接続されている。さらに、前記第一電極242及び第三電極246は第一導電線249で前記信号装置22の一つの端部に電気的に並列接続されている。前記第二電極244及び第四電極248は第二導電線249’で前記信号装置22のもう一つの端部に電気的に並列接続されている。前記電極を前記信号装置22に並列接続させるので、前記熱音響装置20に印加される電圧が低い。
【0069】
前記四つの電極は同じ平面に設置されることができる。この場合、前記四つの電極に制限されず、前記熱音響装置20に複数の電極を設置することができる。
【0070】
(実施例3)
図15を参照すると、本実施例の熱音響装置30は、信号装置32と、音波発生器34と、第一電極342と、第二電極344と、を含む。本実施例の熱音響装置30の構成、特性、機能は、実施例1の熱音響装置10と同じである。本実施例と実施例1との異なる点は、本実施例の熱音響装置20は支持体36を含むことである。前記音波発生器34は前記支持体36の表面に設置される。前記音波発生器34の形状に応じ、前記支持体36の形状が決定される。前記支持体36は平面状又は/及び湾曲面を有する。前記支持体36は、スクリーン、壁、机、ディスプレイのいずれか一種である。前記音波発生器34を前記支持体36に接触させることができる。
【0071】
前記支持体36は、ダイヤモンド、ガラス、石英のような固い材料、又はプラスチック、樹脂、織物のような柔軟な材料からなる。前記支持体36は熱絶縁性を有し、前記音波発生器34で生じた熱を吸収することができない。さらに、前記支持体36と前記音波発生器34とが接触する表面が粗く設けられることが好ましい。これにより、前記音波発生器34と周辺の媒体とが接触する面積を増加させることができる。前記カーボンナノチューブ構造体は比表面積が大きいので、前記音波発生器34を直接前記支持体36に接着させることができる。
【0072】
前記音波発生器34及び前記支持体36を良好に接続させるために、前記音波発生器34及び前記支持体36の間に接着層(図示せず)を設置することができる。前記接着層は、前記音波発生器34の表面に設置されることができる。本実施例において、前記導電な接着層は銀ペーストからなる。
【0073】
前記第一電極342及び第二電極344は、前記音波発生器34の同じ表面に設置され、又はそれぞれ前記音波発生器34の対向する表面に設置されている。前記二つの電極に制限されず、前記熱音響装置30に複数の電極を設置することができる。前記信号装置32は導電線349によって前記音波発生器34に接続されている。
【0074】
(実施例4)
図16を参照すると、本実施例の熱音響装置40は、信号装置42と、音波発生器44と、支持体46と、第一電極442と、第二電極444と、第三電極446と、第四電極448と、を含む。本実施例の熱音響装置40の構成、特性、機能は、実施例3の熱音響装置30と同じである。本実施例と実施例3との異なる点は、前記音波発生器44は前記支持体46を囲むように設置されることである。前記支持体46は、例えば、立方体、錐体、円筒状のような三次元又は二次元の構造である。本実施例において、前記支持体46は円筒状であり、第一電極442と、第二電極444と、第三電極446と、第四電極448とは、それぞれ所定の距離で分離して、前記音波発生器44に電気的に接続される。第一電極442、第二電極444、第三電極446、及び第四電極448が前記信号装置42と接続する方式は、実施例1と同じである。勿論、前記四つの電極に制限されず、前記熱音響装置40に複数の電極を設置することができる。
【0075】
(実施例5)
図17を参照すると、本実施例の熱音響装置50は、信号装置52と、音波発生器54と、支持体56と、第一電極542と、第二電極544と、を含む。本実施例の熱音響装置50の構成、特性、機能は、実施例3の熱音響装置30と同じである。本実施例と実施例3との異なる点は、前記音波発生器54の一部を前記支持体56に設置することにより、前記音波発生器54及び前記支持体56から音収集のスペースを形成することである。前記音波発生器54の周辺が前記支持体56に固定され、その他の部分が懸架されているので、前記音波発生器54の懸架された部分が周辺の媒体と接触する面積が大きい。図22を参照すると、二枚の図2に示されたカーボンナノチューブフィルムは、枠部722に接着されている。前記スペースは、閉鎖的な空間又は開放的な空間である。前記支持体56はU形又はL形である。前記熱音響装置50は二つ以上の前記支持体56を含むことができる。前記支持体56は、木、プラスチック、金属、ガラスのいずれか一種である。図14を参照すると、本実施例において、前記支持体56はL形であり、前記音波発生器54は前記支持体の第一端562から前記第二端564に延伸するので、前記音波発生器54及び前記支持体56から音収集のスペースを形成することができる。前記第一電極542及び第二電極544は前記音波発生器54の表面に設置され、且つ前記信号装置52に電気的に接続されている。これにより、前記音波発生器54によって生じた音は、前記支持体56の内壁で反射されるので、前記熱音響装置50の音響機能を高めることができる。
【符号の説明】
【0076】
10 熱音響装置
111 カーボンナノチューブ
112 濡れ層
1124 過渡層
1126 導電層
1128 抗酸化層
12 信号装置
14 音波発生器
142 第一電極
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
144 第二電極
145 カーボンナノチューブ
146 ベース
148 ナノレベルの素子
149 導電線
20 熱音響装置
22 信号装置
24 音波発生器
242 第一電極
244 第二電極
246 第三電極
248 第四電極
249 第一導電線
249’ 第二導電線
30 熱音響装置
32 信号装置
34 音波発生器
342 第一電極
344 第二電極
349 導電線
36 支持体
40 熱音響装置
42 信号装置
44 音波発生器
442 第一電極
444 第二電極
446 第三電極
448 第四電極
449 導電線
50 熱音響装置
52 信号装置
54 音波発生器
542 第一電極
544 第二電極
549 導電線
56 支持体
562 第一端
564 第二端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号装置と、ベース及び該ベースの少なくとも一部を被覆させた伝導層を含む音波発生器と、を含み、
前記音波発生器が前記電気信号装置に電気的に接続され、
前記ベースが複数のナノレベルの素子を含み、
前記複数のナノレベルの素子が架橋してネット状に形成されていることを特徴とする熱音響装置。
【請求項2】
電磁信号装置と、ベース及び該ベースの少なくとも一部を被覆させた伝導層を含む音波発生器と、を含み、
前記ベースが複数のナノレベルの素子を含み、
前記電磁信号装置が、前記音波発生器に電磁信号を送信し、
前記音波発生器が前記電磁信号を熱に変換して、媒体に熱音響効果を生じさせることを特徴とする熱音響装置。
【請求項3】
前記ベースにおける複数のナノレベルの素子は、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、窒化ホウ素ナノワイヤ又はシリコンナノワイヤであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱音響装置。
【請求項4】
前記ベースは、カーボンナノチューブ構造体を含み、
該カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム、又は複数のカーボンナノチューブワイヤ、又は該カーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブワイヤの組合わせであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱音響装置。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブワイヤは、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、請求項4に記載の熱音響装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−206791(P2010−206791A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40243(P2010−40243)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】