説明

燃料タンクの開閉装置

【課題】燃料タンクの開閉装置10は、部品点数を増やすことなく、簡単な構成でアース経路を確保することができる。
【解決手段】燃料タンクの開閉装置10は、タンク開口形成部材11内に配置され、注入口18Paを開閉する開閉部材21を有するフラップバルブ機構20を備えている。開閉部材21は、給油ノズルFZの先端が当たりかつ導電材料から形成された押圧部材22を有している。タンク開口形成部材11の内壁には、放電突起15bが形成され、押圧部材22の外周部には、放電突起23eが形成され、開閉部材21が閉じ位置にあるときに、放電突起23e、放電突起15bを介してアース経路を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油ノズルの挿入力を利用してフラップバルブを開いて、燃料タンクへ給油するための燃料タンクの開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料タンクの開閉装置として、特許文献1のように、燃料キャップにフラップバルブ機構を設けたものが知られている。フラップバルブ機構は、燃料通路の注入口をフラップバルブで閉じるとともにスプリングで付勢することによりシールしており、給油時に給油ノズルでフラップバルブをスプリングの付勢力に抗して押すことで注入口を開く。こうした燃料タンクの開閉装置において、人に帯電した静電気を車両ボディなどへ導くアース手段が検討されている。こうしたアース手段として、棒状の導電部材を給油口に配置し、この導電部材に給油ノズルを接触させる構成をとっている。
【0003】
しかし、従来の技術の導電部材は、部品点数を増すだけでなく、給油ノズルの挿入時に、給油ノズルの先端に当たることから、損傷しないような機械的強度や形状の設定が面倒であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/02778号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題を解決することを踏まえ、部品点数を増やすことなく、簡単な構成でアース経路を形成することができる燃料タンクの開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、燃料タンクへ燃料を供給する通路を開閉する燃料タンクの開閉装置において、
給油ノズルを挿入するための挿入通路、注入口を経て上記燃料タンクに接続される燃料通路を形成するタンク開口形成部材と、
上記タンク開口形成部材内に配置され、上記注入口を開閉する開閉部材を有するフラップバルブ機構と、
を備え、
上記開閉部材は、上記給油ノズルの先端が当たりかつ導電材料から形成された押圧部材を有し、
上記押圧部材の外周部は、上記開閉部材の閉じ状態にて、上記タンク開口形成部材の一部であって上記挿入通路を形成する内壁に対して第1ギャップを隔てて配置され、
上記タンク開口形成部材の内壁および上記押圧部材の外周部の少なくとも一方に、上記第1ギャップより狭くかつ静電気を放電可能である第2ギャップを隔てるように形成された放電突起を設け、
上記開閉部材が閉じ位置にあるときに、上記押圧部材、上記放電突起および上記タンク開口形成部材により、アース経路を構成すること、
を特徴とする。
【0008】
適用例1にかかる燃料タンクの開閉装置では、給油ノズルをタンク開口形成部材の挿入通路から挿入して、給油ノズルの先端がフラップバルブ機構を構成する開閉部材の押圧部材を押すと、開閉部材が開き動作を行ない、これにより、給油ノズルから燃料通路に給油する。
【0009】
また、適用例1のタンク開口形成部材および押圧部材は、導電性を有する導電材料から形成され、車両の車体側部材へのアース経路を構成している。給油ノズルは、挿入通路への挿入により押圧部材に当たると、押圧部材の外周部とタンク開口形成部材の内壁との第1ギャップより、狭い第2ギャップを形成する放電突起を介して、さらに、タンク開口形成部材を経て車体側部材へのアース経路に接続される。よって、給油ノズルを持った人に静電気が帯電していても、静電気は、アース経路を通じて速やかに除去される。このように燃料タンクの開閉装置のアース経路を確保するのに、給油ノズルの先端が接触する押圧部材を利用しているので、従来の技術のように、別途、アース用の部材を設ける必要がなく、構成が簡単になる。また、給油ノズルが開閉部材を開く前に、押圧部材に当たるから、開閉部材より燃料タンク側で放電されることもない。
【0010】
[適用例2]
適用例2において、上記押圧部材およびタンク開口形成部材は、導電性樹脂から形成することができる。このようにタンク開口形成部材や押圧部材を樹脂で形成している場合に、帯電し易いが、押圧部材などの一部を導電性樹脂で形成することで、確実に除電することができるアース経路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例にかかる燃料タンクの開閉装置を用いた自動車の後部を示し、給油蓋を開いた状態を示す斜視図である。
【図2】燃料タンクの開閉装置の開口部を示す平面図である。
【図3】燃料タンクの開閉装置の給油時における外観図である。
【図4】図2の4−4線に沿った断面図である。
【図5】図2の5−5線に沿った断面図である。
【図6】フラップバルブ機構の周辺部を分解した断面図である。
【図7】フラップバルブ機構の一部を分解した斜視図である。
【図8】燃料タンクの開閉装置において給油している状態を説明する説明図である。
【図9】フラップバルブ機構のノズル位置決めガイド機構の第2支持機構を説明する説明図である。
【図10】フラップバルブ機構のノズル位置決めガイド機構の第3支持機構を説明する説明図である。
【図11】フラップバルブ機構のアース経路を説明する説明図である。
【図12】図11の矢印方向aから見た図である。
【図13】開閉起動機構を分解した斜視図である。
【図14】開閉起動機構の動作を説明する説明図である。
【図15】開閉起動機構の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0013】
(1) 燃料タンクの開閉装置の概略構成
図1は本発明の一実施例にかかる燃料タンクの開閉装置を用いた自動車の後部を示し、給油蓋を開いた状態を示す斜視図である。自動車の車体の後部には、燃料(軽油)を給油するための給油蓋FLが開閉可能に支持されている。給油蓋FLは、車体の外板に倣った蓋本体FLaがヒンジFLbを介して車体の外板に開閉可能に支持されている。給油蓋FLを開いたスペースは、給油室FRになっており、この給油室FR内に、基板BPに支持された燃料タンクの開閉装置10が配置されている。燃料タンクの開閉装置10は、燃料キャップを用いないで、燃料タンクに燃料を供給するための機構であり、給油蓋FLを開いた後に、給油ノズルからの外力で燃料通路を開閉することで、給油ノズルから燃料タンクへ燃料を供給することができる機構である。以下、燃料タンクの開閉装置の詳細な構成について説明する。
【0014】
(2) 各部の構成および動作
図2は燃料タンクの開閉装置10の開口部を示す平面図、図3は燃料タンクの開閉装置10の給油時における外観図、図4は図2の4−4線に沿った断面図、図5は図2の5−5線に沿った断面図である。図4および図5において、燃料タンクの開閉装置10は、燃料タンク(図示省略)に接続される燃料通路11Pを有するタンク開口形成部材11と、フラップバルブ機構20と、フラップバルブ機構20を開閉するための開閉起動機構40と、を備えている。
【0015】
(2)−1 タンク開口形成部材11
図4において、タンク開口形成部材11は、燃料通路11Pを有する管体であり、燃料タンクに接続される金属製の接続管12と、接続管12の上部に固定された開口形成部材13と、接続管12の上部に装着された注入口形成部材18と、注入口形成部材18を接続管12に固定するための嵌合部19とを備えている。
【0016】
接続管12は、燃料タンク側を徐々に縮径した縮径部12aと、縮径部12aに接続された直管部12bとを備え、これらを一体に形成している。開口形成部材13は、接続管12の上部に装着された円筒状の外壁部14と、外壁部14の内側に配置された内壁部15とを備えており、給油ノズルFZを挿入するための挿入通路13Pを形成している。
外壁部14は、導入口13Paを形成している上面部14aと、側面部14bとを備え、カップ形状に形成されている。外壁部14の下部は、やや拡径された拡径部14cから下部円筒部14dになっている。また、拡径部14cの一部には、給油時に溢れた燃料を挿入通路13Pから排出するための排出上管14eが下方に向けて突設されている。
内壁部15は、挿入通路13Pを形成する壁面であり、その開口部には、導入口13Paが形成されている。また、開口形成部材13の導入口13Paの開口周縁部および内壁部15の上部には、ガン用ストッパ13aが形成されている。また、内壁部15には、スリット15aが挿入方向に複数列形成されている。スリット15aは、挿入通路13Pから排出上管14eに接続する通路を形成し、挿入通路13Pに燃料がたまるのを防止している。
【0017】
注入口形成部材18は、筒状に形成された嵌合部19に係合することで接続管12の上部に固定され、フラップバルブ機構20の一部を支持するための部材であり、燃料通路11Pの一部を形成する注入口18Paを有する円板部18aを備えている。
【0018】
(2)−2 フラップバルブ機構20
図6はフラップバルブ機構20を分解した断面図である。フラップバルブ機構20は、開閉部材21と、スプリング33と、ガスケットGSとを備えている。開閉部材21は、注入口形成部材18に軸支され、注入口18Paを開閉する部材である。スプリング33は、弦巻スプリングであり、そのコイル状の一端部が注入口形成部材18に支持され、他端部が開閉部材21に支持されて開閉部材21を閉じる方向に付勢している。開閉部材21は、押圧部材22と、弁室形成部材26と、調圧弁30と、ガスケットGSとを備えている。
【0019】
図7はフラップバルブ機構20の一部を分解した斜視図である。押圧部材22は、給油ノズルFZの押圧力を直接受けるほぼ有底の筒部材であり、導電性樹脂から形成されており、上面部23と、上面部23の外周から突設された側壁部24と、フランジ25とにより形成されている。上面部23には、給油ノズルFZとの当たりをスムーズにするとともに給油ノズルFZを位置決めするための湾曲したガイド曲面23aが形成されている。ガイド曲面23aは、導入ガイド面23bと、傾斜ガイド面23cとを備え、その間が位置決め稜線23dになっている。なお、ガイド曲面23aについて、ノズル位置決めガイド機構で後述する。側壁部24には、通気孔24aが形成され、調圧弁30に通気している。フランジ25は、押圧側ストッパ25bを有し、注入口形成部材18の開口側ストッパ18cに当たることで、開閉部材21の閉じ状態にて、注入口18Paとの間隙をなくし、内部への雨水などの浸入を防止している。
【0020】
弁室形成部材26は、カップ形状であり、調圧弁30を収納する弁室26Sを形成している。弁室形成部材26の外周部には、フランジ26aが形成されている。ガスケットGSは、ゴム材料から形成され、C字形のシール本体GSaと、シール本体GSaの内周部の支持部GSbとを備え、支持部GSbがフランジ26aの内周側の上面とフランジ25のシール押圧部25aとの間で挟持されることで保持され、その外周側の上面がシール部18bとの間でガスケットGSを圧縮することで注入口18Paをシールしている。
【0021】
調圧弁30は、押圧部材22と弁室形成部材26とで囲まれかつ通気孔24aに接続された弁室26S内に収納されており、スプリング31aにより付勢された正圧弁体31bを有する正圧弁31と、スプリング32aにより付勢された負圧弁体32bを有する負圧弁32とを備え、燃料タンクの圧力を両弁体の開閉により燃料タンクのタンク内圧を所定範囲内に調整する。
【0022】
(2)−3 給油ノズルFZの位置決め機構
図8は燃料タンクの開閉装置10に給油している状態を説明する説明図である。燃料タンクの開閉装置10には、給油時における給油ノズルFZを位置決めする位置決め機構が形成されている。位置決め機構は、開口形成部材13、フラップバルブ機構20の上面部23、弁位置決め部材27の各部材が協働することで構成されている。すなわち、開口形成部材13の導入口13Paの開口周縁には、給油ノズルFZのノズル係止部FZsに係合することで給油ノズルFZを挿入方向(抜ける方向)へ位置決めをするガン用ストッパ13aが形成されている(第1支持機構)。また、上面部23のガイド曲面23aには、給油ノズルFZの先端が導入ガイド面23bに倣ってガイドされた後に、給油ノズルFZの外周面に当たることで、給油ノズルFZの左右方向(水平方向)へ位置決めする位置決め稜線23dが形成されている(第2支持機構)。ガイド曲面23aの曲率は、給油ノズルFZの半径Raを考慮して定められており、すなわち、導入ガイド面23bの半径をR1、位置決め稜線23dの半径をR2とすると、半径R1が半径Raより大きく、半径R2が半径Raよりほぼ同じかわずかに大きく、給油ノズルFZの外形に倣うように形成されている。さらに、図10に示すように、押圧部材22の弁室形成部材26の下部には、半円筒の弁位置決め部材27が形成されている(第3支持機構)。弁位置決め部材27は、位置決め本体27aと、弁位置決め部材27の端面に湾曲した当接部27bとを有し、図8に示すように、当接部27bが接続管12の直管部12bに当たることで、押圧部材22は、給油ノズルFZに押されても、それ以上に開度が大きくならない。よって、位置決め稜線23dで位置決めされた給油ノズルFZが上下方向への位置決めされている。
【0023】
(2)−4 アース経路
図4において、開口形成部材13および開閉部材21の一部は、導電材料から形成されることで、給油時に生じる静電気を、給油ノズルFZや金属製の接続管12を通じて車体側部材に逃がすアース経路を構成している。図11はフラップバルブ機構20の付近を一部破断した斜視図、図12は図11の矢印方向aから見た図である。開閉部材21の押圧部材22は、少なくとも表面が導電材料で形成され、その先端部が尖った放電突起23eとなっている。また、放電突起23eに対向した開口形成部材13の内壁部15には、放電突起15bがリブ状に形成されている。開閉部材21が閉じている状態にて、押圧部材22の外周部と内壁部15とのギャップをGp1とし、放電突起23eと放電突起15bとのギャップをGP2とすると、Gp1>Gp2に形成されている。すなわち、ギャップGp2は、0.5mm以下に設定されており、空気中の絶縁破壊により放電可能になっている。開口形成部材13および押圧部材22を形成する導電材料は、導電性ウイスカ、導電性カーボンまたは導電性グラファイト粉末のうち1つまたは複数を組み合わせて、樹脂材料に混入することで得られ、例えば、ポリアセタールまたはポリアミド(PA)100重量部に対して、導電ウイスカ5重量部、導電カーボン10重量部を混入する。ここで、導電ウイスカとして、(商品名デントール:大塚化学社製)を、導電カーボンとして、(商品名バルカンXC−72:キャボット社製)を用いることができる。なお、導電性を付与するための樹脂としては、ポリアセタール、ポリアミドのほかに、耐燃料性、耐燃料透過性に優れた材料であればよく、例えば、フッ素樹脂(ETFE)などを用いてもよい。
【0024】
(2)−5 開閉起動機構40
図5において、開閉起動機構40は、フラップバルブ機構20の開閉部材21の上方および側方に配置され、給油ノズルFZの先端で押されることにより開き動作を行なう機構であり、その主要な構成として、ノズル検知機構50と、ロック機構60とを備えている。
【0025】
図13は開閉起動機構40を分解した斜視図である。図5および図13において、ノズル検知機構50は、所定の外径の給油ノズルFZの先端で押されることにより、ロック機構60を介してフラップバルブ機構20の開閉部材21のロック位置を解除する機構であり、開口形成部材13に支持されたノズル検知部材51を備えている。ノズル検知部材51は、開口形成部材13の係合部13bに係合される被係合爪52aを有する検知支持体52と、検知支持体52の下部から突設され挿入通路13Pに臨みかつその両側に配置された導入押圧部53と、導入押圧部53の下部に突設された係合円筒部55とを備え、これらが一体に形成されている。各々の導入押圧部53は、押圧支持体53aと、押圧支持体53aから挿入通路13P側に向けかつ下方に向かうにしたがって傾斜した押圧斜面53bとを備えている。押圧斜面53bは、給油ノズルFZの先端の外径が所定径以上の場合に給油ノズルの先端で押されるように配置されている。検知支持体52は、押圧斜面53bが給油ノズルFZで押されたときに、外径方向へ弾性変形して、スプリングとして作用する。
【0026】
ロック機構60は、ロック部材61と、開閉部材21に凹所で形成された被ロック部62とを備えている。ロック部材61は、円弧形状の部材であるロック部材本体61aと、ロック部材本体61aに形成され、係合円筒部55に係合する係合凹所61bと、ロック部材本体61aの内周側に突設されたロック係合部61cとを備えている。被ロック部62は、開閉部材21の押圧部材22の下部に形成されており、ロック係合部61cに係合する部位であり、ロック係合部61cが被ロック部62に係合することで開閉部材21の開き動作を規制するロック位置になり、開閉部材21の中心方向から径外方へ移動することにより、被ロック部62から外れて、非ロック位置になり、開閉部材21の開き動作を許容する。
【0027】
図14および図15はノズル検知機構50を説明する説明図であり、図14は給油ノズルを挿入する前の状態、図15は給油ノズルを挿入した状態を示す。すなわち、導入押圧部53に対向する内端で形成される挿入通路13Pの内径をD0、軽油用の給油ノズル(FZa)の先端の外径をDa、ガソリン用の給油ノズル(FZb)をDbとすると、Db<D0<Daに設定されている。例えば、外径Dbは20mm、内径D0は22mm、外径Daは25mmに設定されている。
【0028】
開閉起動機構40の構成により、図14の状態にて、挿入通路13Pに給油ノズルFZaを挿入して、ノズル検知部材51の導入押圧部53の押圧斜面53bを押圧すると、図13に示すように検知支持体52が開口形成部材13の係合部13bに支持された被係合爪52aを中心に、スプリング力を増しながら弾性変形する。これにより、図15に示すように、ロック部材61が外周方向へ移動し、ロック部材61のロック係合部61cが被ロック部62から外れることでロック位置から非ロック位置へ切り換えられ、つまり、フラップバルブ機構20の開閉部材21のロックが解除され、開閉部材21の開き動作が可能になる。なお、挿入通路13Pの内径D0は、ガソリン用の給油ノズル(FZb)の外径Dbより小さい径とした場合であっても、給油ノズル(FZb)の先端外周部が押圧斜面53bを押圧したときにロックが解除されず、給油可能にならない径であれば、多少の寸法範囲は許容される。
【0029】
(3) 燃料タンクの開閉装置の開閉動作
(3)−1 開き動作
図1に示すように、給油蓋FLを開けると、給油室FR内に配置された燃料タンクの開閉装置10が表れる。図5に示すように給油ノズルFZを開口形成部材13の導入口13Paから挿入して、給油ノズルFZの先端がノズル検知機構50の導入押圧部53に達して、導入押圧部53を押し、押圧斜面53bが給油ノズルFZから径方向の力を受けると、図13および図15に示すようにノズル検知機構50のノズル検知部材51がスプリング力を蓄積するように撓みつつ、被係合爪52aを支点として拡開する。ノズル検知部材51が拡開すると、ノズル検知部材51の下部の係合円筒部55がロック部材61を外径方向へ移動させる。これにより、ロック部材61が被ロック部62から抜けて、非ロック位置に切り換えられる。これにより、開閉部材21は、開き動作が可能になる。
【0030】
さらに、図8に示すように、給油ノズルFZを押し入れると、フラップバルブ機構20の開閉部材21がスプリング33の付勢力に抗して押され、開閉部材21が支持軸を中心に回動し、注入口18Paが開かれる。このとき、開閉部材21は、その開度が大きくなるにつれて、給油ノズルFZの先端が押圧部材22の導入ガイド面23bに倣いつつ開閉部材21が開く。そして、弁位置決め部材27の当接部27bが接続管12の内壁に当たって、開閉部材21の開き動作が完了する。このとき、給油ノズルFZの外周部は、押圧部材22の位置決め稜線23dに当たって、給油ノズルFZが位置決めされる。この状態にて、給油ノズルFZから燃料通路11Pへ給油する。
【0031】
(3)−2 閉じ動作
給油を終えて、給油ノズルFZを注入口18Paから抜くと、フラップバルブ機構20の開閉部材21がスプリング33の復元力により注入口18Paを閉じ、さらに給油ノズルFZが抜かれると、ノズル検知部材51及びロック部材61は、初期位置に戻り、つまり、検知支持体52の弾性力で縮径して導入押圧部53が元の位置に戻るとともに、ロック部材61が開閉部材21の中心方向へ移動して、被ロック部62に係合する。これにより、開閉部材21がロック部材61のロック位置で閉じられる初期状態に戻り、さらに給油蓋FL(図1)を閉じる。
【0032】
(4) 燃料タンクの開閉装置の作用・効果
上記実施例にかかる燃料タンクの開閉装置10により、以下の作用効果を奏する。
(4)−1 図8に示すように、給油ノズルFZは、ノズル位置決めガイド機構により、挿入方向へガイドされ、さらに、挿入完了位置に達したときに燃料通路11P内で位置決めされる。すなわち、ノズル位置決めガイド機構の第1支持機構は、タンク開口形成部材11の挿入通路13Pの導入口13Paの開口周縁に形成されており、給油ノズルFZの外周部を滑らせつつ給油ノズルFZを挿入方向へガイドし、第2支持機構は、開閉部材21の押圧部材22にガイド曲面23aの導入ガイド面23bが給油ノズルFZの先端をガイドしつつ開閉部材21の開き動作をさせ、注入口18Paを開けて、給油ノズルFZをさらに挿入する。そして、給油ノズルFZが挿入完了位置まで挿入されると、開閉部材21の弁位置決め部材27がタンク開口形成部材11の内壁に当たって、それ以上の開き動作が止まる。このとき、給油ノズルは、タンク開口形成部材11の導入口13Paの開口周縁部(第1支持機構)により支持され、さらに開閉部材21の給油ノズルFZの先端の外周部が位置決め稜線23d(第2支持機構)により挿入方向に対して左右方向に位置決めされ、さらに開閉部材21の弁位置決め部材27(第3支持機構)に当たって挿入方向に対して上下方向に位置決めされる。
【0033】
したがって、給油ノズルFZを燃料通路11Pに挿入する際に、給油ノズルFZは、ノズル位置決めガイド機構により、挿入通路13Pから開閉部材21を開けて挿入完了位置に達するまで、振れることなく、ガイドされるから、スムーズで簡単な挿入作業を行なうことができる。しかも、給油ノズルFZは、挿入完了位置にて、3箇所で挿入方向に対して左右および上下方向に対して位置決めされるから、燃料通路11P内の燃料飛沫などに触れて、不用意にオートストップが作動することもなく、正確な量で給油することができる。
【0034】
(4)−2 本実施例では、注入口18Paより外側にガン用ストッパ13aが配置されているために、短い給油ノズルFZを燃料通路11Pに挿入した場合に、給油ノズルFZの先端が燃料通路11Pの奥の位置、つまりフラップバルブ機構20より燃料タンク側の燃料通路11Pに十分に入らない場合がある。こうした場合に対処するために、フラップバルブ機構20の周辺に給油ノズルFZの先端を位置決めする位置決め用部材を設けようとしても、開閉部材21の開閉動作に支障を生じるから、位置決め用部材を設けることができない。しかし、本実施例では、給油ノズルFZの先端が押圧部材22の位置決め稜線23dにより確実に位置決めすることができるから、フラップバルブ機構20の周辺に別途、位置決め用部材を設ける必要もなく、構成を簡単にできる。
【0035】
(4)−3 図5および図13に示すようにノズル検知機構50は、給油ノズルFZの先端の外径が所定径以上の場合に押圧されるように配置されている導入押圧部53を備えているので、軽油用の給油ノズル(FZa)の場合には、フラップバルブ機構20の開閉部材21が開き動作を行うが、ガソリン用の給油ノズル(FZb)の場合には、開閉部材21が開き動作を行わない。したがって、給油ノズルFZの外径によって燃料の種類が異なる場合に、給油ノズルFZを誤って挿入しても、注入口18Paが開かないから、間違った種類の燃料を供給することもない。
【0036】
(4)−4 タンク開口形成部材11および押圧部材22は、導電性を有する導電材料から形成され、車両の車体側部材へのアース経路を構成している。すなわち、図11および図12に示すように、給油ノズルを挿入通路13Pに挿入して、押圧部材22に当たると、給油ノズルは、押圧部材22の外周部とタンク開口形成部材11の内壁との第1ギャップGP1より、狭い第2ギャップGp2を形成する放電突起23eを介して、さらに、タンク開口形成部材11を経て車体側部材へのアース経路に接続される。よって、給油ノズルを持った人に静電気が帯電していても、アース経路を通じて速やかに除去される。このように燃料タンクの開閉装置のアース経路を確保するのに、給油ノズルの先端が最初に接触する押圧部材22を利用しているので、アース線を配線することが不要となり、構成が簡単になる。また、給油ノズルが開閉部材21を開く前に、押圧部材22に当たるから、開閉部材21より燃料タンク側で放電されることもない。
【0037】
(4)−5 放電突起23eの先端および開口形成部材13の放電突起15bが尖っているので、しかも、放電突起23eに沿って放電突起15bが押圧部材22の外形にそって複数配置されているので、アース経路を確実に確保できる。
【0038】
(4)−6 アース手段は、押圧部材22およびタンク開口形成部材11を導電材料で形成しているので、その従来の技術のように注入口の周辺に、別途、導電線を配置することもなく、部品点数が増加することがなく、構成が簡単になる。
【0039】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記実施例のアース手段は、押圧部材を全て導電性樹脂で形成するほか、上面部の表面だけに形成してもよく、また、表面に金属製の薄板などをインサート成形してもよい。さらに、アース経路は、開閉部材21の閉じ状態にて、放電できる位置であれば、押圧部材22の外周部に複数箇所形成してもよい。
さらに、上記実施例では、ノズル検知機構を備えた構成について説明したが、これに限らず、ノズル検知機構を備えていない機構にも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10…燃料タンクの開閉装置
11…タンク開口形成部材
11P…燃料通路
12…接続管
12a…縮径部
12b…直管部
13…開口形成部材
13P…挿入通路
13a…ガン用ストッパ
13b…係合部
13Pa…導入口
14…外壁部
14a…上面部
14b…側面部
14c…拡径部
14d…下部円筒部
14e…排出上管
15…内壁部
15a…スリット
15b…放電突起
18…注入口形成部材
18a…円板部
18b…シール部
18c…開口側ストッパ
18Pa…注入口
19…嵌合部
20…フラップバルブ機構
21…開閉部材
22…押圧部材
23…上面部
23a…ガイド曲面
23b…導入ガイド面
23c…傾斜ガイド面
23d…位置決め稜線
23e…放電突起
24…側壁部
24a…通気孔
25…フランジ
25a…シール押圧部
25b…押圧側ストッパ
26…弁室形成部材
26S…弁室
26a…フランジ
27…弁位置決め部材
27a…位置決め本体
27b…当接部
30…調圧弁
31…正圧弁
31a…スプリング
31b…正圧弁体
32…負圧弁
32a…スプリング
32b…負圧弁体
33…スプリング
40…開閉起動機構
50…ノズル検知機構
51…ノズル検知部材
52…検知支持体
52a…被係合爪
53…導入押圧部
53a…押圧支持体
53b…押圧斜面
55…係合円筒部
60…ロック機構
61…ロック部材
61a…ロック部材本体
61b…係合凹所
61c…ロック係合部
62…被ロック部
BP…基板
FL…給油蓋
FLa…蓋本体
FLb…ヒンジ
FR…給油室
FZ…給油ノズル
FZa…給油ノズル
FZs…ノズル係止部
GS…ガスケット
GSa…シール本体
GSb…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクへ燃料を供給する通路を開閉する燃料タンクの開閉装置において、
給油ノズル(FZ)を挿入するための挿入通路(13P)、注入口(18Pa)を経て上記燃料タンクに接続される燃料通路(11P)を形成するタンク開口形成部材(11)と、
上記タンク開口形成部材(11)内に配置され、上記注入口(18Pa)を開閉する開閉部材(21)を有するフラップバルブ機構(20)と、
を備え、
上記開閉部材(21)は、上記給油ノズル(FZ)の先端が当たりかつ導電材料から形成された押圧部材(22)を有し、
上記押圧部材(22)の外周部は、上記開閉部材(21)の閉じ状態にて、上記タンク開口形成部材(11)の一部であって上記挿入通路(13P)を形成する内壁に対して第1ギャップ(Gp1)を隔てて配置され、
上記タンク開口形成部材(11)の内壁および上記押圧部材(22)の外周部の少なくとも一方に、上記第1ギャップ(Gp1)より狭くかつ静電気を放電可能である第2ギャップ(Gp2)を隔てるように形成された放電突起(15b,23e)を設け、
上記開閉部材(21)が閉じ位置にあるときに、上記押圧部材(22)、上記放電突起(15b,23e)および上記タンク開口形成部材(11)により、アース経路を構成すること、
を特徴とする燃料タンクの開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料タンクの開閉装置において、
上記押圧部材(22)およびタンク開口形成部材(11)は、導電性樹脂から形成されている燃料タンクの開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−213128(P2011−213128A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80261(P2010−80261)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】