説明

燃料タンク構造

【課題】燃料タンクに連通接続するホースを保護することができて、ホースの耐久性を向上させることができ、しかも、製作コストを低廉化することができる燃料タンク構造を提供する。
【解決手段】燃料タンク1が固定ベルト4で車体に固定され、燃料タンク1に連通接続するホース3が燃料タンク1と固定ベルト4の間を通されている燃料タンク構造であって、燃料タンク1と固定ベルト4の間のホース部分10がプロテクタ9で覆われ、燃料タンク1に固着されたクランプ11でホース部分10がプロテクタ9ごと保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
燃料タンクが固定ベルトで車体に固定され、
前記燃料タンクに連通接続するホースが前記燃料タンクと固定ベルトの間を通されている燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a),図5(b)に示すように、一般的に自動車用の燃料タンク1は金属製の固定ベルト4で車体に固定されている。そして、燃料タンク1に燃料注入用のフィラーホースやブリーザーホース3(共に樹脂製またはゴム製) が連通接続し、ブリーザーホース3が燃料タンク1と固定ベルト4の間を通されている。この構造の一例として特許文献1に記載された構造がある。
従来、この種の構造では、燃料タンク1と固定ベルト4の間のホース部分10は外周面が露出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2009−68349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術によれば、前記燃料タンク1と固定ベルト4の間のブリーザーホース3のホース部分10は外周面が露出していたために、車両衝突時、特に後突時に車両の変形に伴って、固定ベルト4の後ろ側ベルト部4Uの上端部4U1側が車両前方側Fr(白抜き矢印の方向)に移動し、前記後ろ側ベルト部4Uとホース部分10が接触して(接触個所を衝突マークで示す)前記ホース部分10が損傷することがあった。
図5(a),図5(b)において、符号Sは前記上端部4U1に形成されたボルト挿通孔、5はリヤフロア、6はタンクパッド、8はリアクロスメンバ、Rrは車両後方側である。
ブリーザーホース3の損傷を防止する手段として、図5(c)に示すように、燃料タンク1と固定ベルト4の間のホース部分10をプロテクタ9(ハッチングで示す部分)で覆う手段がある。
しかしながら、この手段によれば、車両走行時の振動や衝突時の衝撃でプロテクタ9の位置がずれてしまう虞れがあることから、前記プロテクタ9の長さを長く(例えば固定ベルト4の幅の略4倍長)設定する必要があった。
前記衝撃によるプロテクタ9の位置ずれは、プロテクタ9をブリーザーホース3の外周面に接着した場合であっても同様に生じ、前記位置ずれを防止するのに十分な接着強度を得るには、やはりプロテクタ9の長さを長くする必要があった。
その結果、プロテクタ9に要するコストが高くなっていた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、燃料タンクに連通接続するホースを保護することができて、ホースの耐久性を向上させることができ、しかも、製作コストを低廉化することができる燃料タンク構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
燃料タンクが固定ベルトで車体に固定され、
前記燃料タンクに連通接続するホースが前記燃料タンクと固定ベルトの間を通されている燃料タンク構造であって、
前記燃料タンクと固定ベルトの間のホース部分がプロテクタで覆われ、
前記燃料タンクに固着されたクランプで前記ホース部分が前記プロテクタごと保持されている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、前記燃料タンクと固定ベルトの間のホース部分がプロテクタで覆われているから、車両衝突時、特に後突時に、車両変形に伴って固定ベルトがホース部分に直接接触することを回避でき、ホースの損傷を防止することができて、ホースの耐久性を向上させることができる。
また、前記燃料タンクに固着されたクランプで前記ホース部分が前記プロテクタごと保持されているから、車両走行時の振動や衝突時の衝撃でプロテクタがホースに対して位置ずれすることを抑制することができる。
その結果、プロテクタの長さを設定する際に、衝撃によるプロテクタの位置ずれを考慮しなくても済み、プロテクタの長さを従来よりも短く設定することができて、プロテクタに要するコストを低廉化することができる。
さらに、プロテクタに加えてクランプでもホースを固定ベルトとの接触から保護でき、ホースの保護性能を向上させることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記クランプは前記固定ベルトの車両前方側に位置していると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記クランプは前記固定ベルトの車両前方側に位置しているから、後突時に車両変形に伴って固定ベルトがホース側に向かってきても、固定ベルトをクランプで受け止めて、固定ベルトがホース部分に直接接触することを回避でき、ホースの保護性能をより向上させることができる。(請求項2)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、
燃料タンクに連通接続するホースを保護することができて、ホースの耐久性を向上させることができ、しかも、製作コストを低廉化することができる燃料タンク構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】燃料タンク構造の平面図
【図2】燃料タンク構造を車両側方側から見た模式図
【図3】クランプの斜視図
【図4】(a)は車両が後突した時の燃料タンク構造の作用を示す平面図、(b)は車両が後突した時の燃料タンク構造の作用を示す側面図
【図5】(a)は車両が後突した時の従来技術の燃料タンク構造の作用を示す平面図、(b)は車両が後突した時の従来技術の燃料タンク構造の作用を示す側面図(c)は車両が後突した時の比較例の燃料タンク構造の作用を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1,図2に自動車の燃料タンク構造を示してある。
この燃料タンク構造は、平面視で車幅方向Wに長い略長方形状の樹脂製の燃料タンク1と、
一端部が燃料タンク1の左側後端部の上面に連通接続し、給油ノズルから供給される燃料を燃料タンク1に導く断面円形のフィーラーパイプ2と、
一端部が燃料タンク1の左側後端部の上面に連通接続し、他端部がフィーラーパイプ2のノズル挿入部に連通接続する断面円形のブリーザーパイプ(ホースに相当)3とを備えている。
フィーラーパイプ2とブリーザーパイプ3は燃料タンク1の上部から斜め上方に延びている。
【0012】
前記燃料タンク1は、下側から左右一対の金属製の固定ベルト4でリヤフロア5(車体に相当)に固定されている。左右一対の固定ベルト4は平面視で車両前方側Frほど車幅方向中央側に位置するように、燃料タンク1の車両前後方向一方側から他方側に傾斜して延びている。
【0013】
一方の固定ベルト4(右側の固定ベルト4)の車両前後方向に対する傾斜角度は小さく設定され、他方の固定ベルト4(左側の固定ベルト4)の車両前後方向に対する傾斜角度は大きく設定されて、左右一対の固定ベルト4の前端部が車幅方向Wの略中央部に互いに近接して位置し、左右一対の固定ベルト4の後端部が車幅方向Wに互いに離間して位置している。
【0014】
前記固定ベルト4は、燃料タンク1の下面をタンクパッド6を介して受け止める下側ベルト部4Sと、下側ベルト部4Sの車両前方側Frの端部から車両前方側上方に向かって立ち上がり、フロントクロスメンバ7の下面に連結する前側ベルト部4Mと、下側ベルト部4Sの車両後方側Rrの端部から車両後方側上方に向かって立ち上がり、リアクロスメンバ8の下面に連結する後ろ側ベルト部4Uとから成る。フロントクロスメンバ7とリアクロスメンバ8はリヤフロア5の下面に固定されている。
【0015】
前側ベルト部4Mの上端部4M1は車両前方側Frに屈曲し、フロントクロスメンバ7の下面に下方から重ねられてボルトBで連結されている。また、後ろ側ベルト部4Uの上端部4U1は車両後方側Rrに屈曲し、リアクロスメンバ8の下面に下方から重ねられてボルトBで連結されている。前側ベルト部4Mの上端部4M1と後ろ側ベルト部4Uの上端部4U1にはボルト挿通孔Sが形成されている。
【0016】
前記リアクロスメンバ8の下面はフロントクロスメンバ7の下面よりも上方に位置している。そのために、後ろ側ベルト部4Uは前側ベルト部4Mよりも上方に長く(高さ寸法が長く)設定されている。
【0017】
リヤフロア5の下面と燃料タンク1の上面との間、及び、フロントクロスメンバ7の側面と燃料タンク1の前面との間にもタンクパッド6が複数個ずつ介在している。
【0018】
図1に示すように、前記ブリーザーパイプ3の一端部3Aは前記他方の固定ベルト4の後端部よりも車幅方向中央側に位置し、前記ブリーザーパイプ3の他端部3Bは前記他方の固定ベルト4の後端部よりも車幅方向外側に位置して、ブリーザーパイプ3の長手方向中間部が燃料タンク1の上端部の後面と前記固定ベルト4の後ろ側ベルト部4Uの上端部との間を通されている。
【0019】
燃料タンク1と固定ベルト4の間のパイプ部分10(ホース部分に相当)はプロテクタ9で全周にわたって覆われている。このプロテクタ9は、メッシュ(網の目)状の合成樹脂繊維で形成され、固定ベルト4の幅の略2倍長に設定されて、前記パイプ部分10の外周面に接着されている。
【0020】
図1に示すように、燃料タンク1の左側後端部の上面であって前記固定ベルト4の車両前方側Frの上面に樹脂製のクランプ11が熱溶着(固着に相当)され、前記クランプ11で前記パイプ部分10がプロテクタ9ごと保持されている。
【0021】
図1,図3に示すように、前記クランプ11は、燃料タンク1の左側後端部の上面に下面が熱溶着される断面円形の台座12と、この台座12の上面から立ち上がり、前記パイプ部分10を弾性挟持する一対の互いに対向した挟持片13とから成る。一対の挟持片13は、互い対向する方向とは反対側に凸の円弧状に形成されている。
【0022】
一対の挟持片13の立ち上がり方向の端部13A同士の間隔は前記パイプ部分10の外径よりも狭く設定されている。そして、一対の挟持片13の立ち上がり方向の端部13Aが、互いに離間する方向に屈曲し、前記パイプ部分10を一対の挟持片13間にガイドするガイド部に構成されている。
【0023】
図1に示すように、前記パイプ部分10を含むブリーザーパイプ3の燃料タンク1側の部分は、車両前方側Frほど車幅方向内側に位置するように傾斜しており、前記クランプ11は、このように傾斜するパイプ部分10に対応した姿勢に設定されている。すなわち、クランプ11の一対の挟持片13同士は、前記パイプ部分10の軸芯方向と直交する方向で対向するとともに、台座12から車幅方向内側上方に向かって立ち上がっている。
【0024】
クランプ11に前記パイプ部分10を挟持させる場合、前記パイプ部分10を一対の挟持片13の立ち上がり方向の端部13Aの外方側から一対の挟持片13間に、一対の挟持片13の弾性力に抗しながら挿入し、一対の挟持片13の弾性復元力でパイプ部分10を挟持させる。
【0025】
上記の構成によれば、
前記燃料タンク1と固定ベルト4の間のパイプ部分10がプロテクタ9で覆われているから、車両衝突時、特に後突時に、車両変形に伴って固定ベルト4がブリーザーパイプ3に直接接触することを回避でき、パイプ部分10の損傷を防止することができて、ブリーザーパイプ3の耐久性を向上させることができる。
また、前記燃料タンク1に固着されたクランプ11で前記パイプ部分10が前記プロテクタ9ごと保持されているから、車両走行時の振動や衝突時の衝撃でプロテクタ9がブリーザーパイプ3に対して位置ずれすることを抑制することができる。
その結果、プロテクタ9の長さを設定する際に、前記衝撃によるプロテクタ9の位置ずれを考慮しなくても済み、プロテクタ9の長さを従来よりも短く(例えば固定ベルト4の幅の略2倍長)設定することができて、プロテクタ9に要するコストを低廉化することができる。
さらに、プロテクタ9に加えてクランプ11でもブリーザーパイプ3を固定ベルト4との接触から保護でき、ブリーザーパイプ3の保護性能を向上させることができる。
すなわち、図4(a),図4(b)に示すように、前記クランプ11は固定ベルト4の車両前方側Frに位置しているから、後突時に車両変形に伴って固定ベルト4の後ろ側ベルト部4Uがブリーザーパイプ3のパイプ部分10側(白抜き矢印方向)に向かってきても、後ろ側ベルト部4Uをクランプ11で受け止めて、後ろ側ベルト部4Uがパイプ部分10に直接接触することを回避でき、ブリーザーパイプ3の保護性能をより向上させることができる。
【0026】
[別実施形態]
(1) 前記燃料タンク1は金属製であってもよい。
この場合、例えば、金属製のブラケットを燃料タンク1に溶接固着しておき、そのブラケットにクランプ11を取り付ける。クランプ11にはブラケットに取り付けるためのクリップ部を一体に設ける。又は、クランプ11をブラケットにスクリュー締めとする。
(2) 上記の実施形態ではホースの一例としてブリーザーパイプ3を挙げて説明したが、前記ホースは、エバポホース・前記フィーラーパイプ2等、燃料タンク1に連通接続される別のホースであってもよい。
(3) 前記プロテクタ9はゴムや合成樹脂の弾性体、合成樹脂のフィルムで形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 燃料タンク
4 固定ベルト
5 車体(リヤフロア)
3 ホース(ブリーザーパイプ)
9 プロテクタ
10 ホース部分(パイプ部分)
11 クランプ
Fr 車両前方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクが固定ベルトで車体に固定され、
前記燃料タンクに連通接続するホースが前記燃料タンクと固定ベルトの間を通されている燃料タンク構造であって、
前記燃料タンクと固定ベルトの間のホース部分がプロテクタで覆われ、
前記燃料タンクに固着されたクランプで前記ホース部分が前記プロテクタごと保持されている燃料タンク構造。
【請求項2】
前記クランプは前記固定ベルトの車両前方側に位置している請求項1記載の燃料タンク構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate