説明

燃料タンク

【課題】燃料タンクにキャニスタを一体的に形成し、大気開放用ポートや排出パージポートのポート取付部の空気流通性とシール性とに優れた燃料タンクを提供する。
【解決手段】燃料タンク1は、別々に成形されたアッパーシェル部10とロアシェル部20の接合周縁部が融合して一体に構成される。キャニスタ30は、側壁31がアッパーシェル部の外壁から一体的に垂下して形成され、底壁33はアッパーシェル部とは別体で形成され、底壁33は側壁31の先端に固着される。上部壁37に、大気開放用ポート取付部40と、パージポート取付部50を形成し、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部には、上部壁からポート取付部空間43、53を形成するようにポート取付部側壁41、51を下方に延設し、ポート取付部空間とキャニスタの燃料蒸気吸収部材35の間を仕切るフィルタ44、54をポート取付部側壁41、51の先端に固着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャニスタが一体的に形成された、熱可塑性合成樹脂製の自動車用燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料タンクは、燃料タンク内の蒸気圧に応じてタンク内の空気を、燃料蒸気を取除いて排出しタンク内に大気を導入する大気吸引用ポートと、燃料蒸気をエンジンの吸気系に排出するパージポートが取付けられており、燃料タンク内の空気に含まれる燃料の蒸気を大気開放用ポートから大気に排出しないように取除くキャニスタが取付けられている。
このような燃料タンクは、従来、金属製のものが用いられていたが、近年車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性樹脂製のものが用いられるようになってきた。
【0003】
この熱可塑性樹脂製の燃料タンクは、従来は、中空形状を作りやすいため、ブロー成形で成形されることが多い。しかし、ブロー成形の場合には、内部に補強リブやポンプユニット等を取り付けることが困難であった。
そこで、近年、合成樹脂製燃料タンクを上下に分割して、アッパーシェル部とロアシェル部をそれぞれ別に射出成形等により成形して、その後、そのアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部を相互に溶着して燃料タンクを形成する方法も行われている。
【0004】
この場合には、キャニスタを取り付けるには、図5に示すように、燃料タンク101のアッパーシェル部110にキャニスタ130を収容することができる凹部117を形成し、キャニスタ130と燃料タンク101を連結部118で接続している(例えば、特許文献1参照。)。この場合には、キャニスタ130の発熱、燃料タンク101との干渉、異音の発生等の防止のため燃料タンク101との間に所定のスペースが必要であり、スペースの無駄が生じる。
【0005】
また、燃料タンク101とキャニスタ130との取付構造が必要となり、構造が複雑化して、手間がかかるとともにコストも増加する。
さらに、キャニスタ130と燃料タンク101を連結する連結部118で燃料タンク101に大きな貫通孔が必要となり、シール性確保のために、シール構造が複雑となり、燃料蒸気の漏れを防止するために不利であった。
【0006】
そのために、図6に示すように、キャニスタ230を燃料タンク201に一体的に形成することが行われている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)。
このキャニスタ230は、燃料タンク201とはチューブ205により燃料タンク201内部と連結され、キャニスタ230内の燃料蒸気を含んだ空気をエンジンの吸気系に排出するパージポート250と大気を吸引する大気開放用ポート240が形成されている。
【0007】
これら大気開放用ポート240やパージポート250において、キャニスタ230内部の活性炭が外部に排出されないように大気開放用ポート240やパージポート250の開口先端をフィルタ等で覆っている。しかしながら、開口先端の面積は充分大きくなく、フィルタにより大気開放用ポート240やパージポート250の空気の流通抵抗が大きくなり、効率的ではなかった。
また、大気開放用ポート240やパージポート250をキャニスタ230に取付けるポート取付部においてシール性を確保するためのシール構造も複雑であった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−100513号公報
【特許文献2】特開平11−240344号公報
【特許文献3】米国公開特許2002−0011271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、燃料タンクにキャニスタを一体的に形成し、大気開放用ポートや排出パージポートのポート取付部の空気流通性とシール性とに優れた燃料タンクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、キャニスタが一体的に取付けられた熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクにおいて、
燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合して一体に構成され、
キャニスタは、上部壁がアッパーシェル部の外壁から構成され、側壁がアッパーシェル部の外壁から一体的に垂下して形成され、底壁はアッパーシェル部とは別体で形成され、底壁は側壁の先端に固着され、キャニスタ内部には燃料蒸気吸収部材を充填し、
上部壁に、キャニスタへ空気が出入する大気開放用ポートを取付ける大気開放用ポート取付部と、キャニスタから燃料蒸気を含んだ空気を排出するパージポートを取付けるパージポート取付部を形成し、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部には、それぞれ上部壁からポート取付部空間を形成するようにポート取付部側壁を下方に延設し、ポート取付部空間に大気開放用ポートとパージポートのそれぞれの先端が開口し、ポート取付部空間とキャニスタの燃料蒸気吸収部材の間を仕切るフィルタをそれぞれポート取付部側壁の先端に固着した燃料タンクである。
【0011】
請求項1の本発明では、燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合して一体に構成されている。このため、アッパーシェル部とロアシェル部とを組み合わせて形成された燃料タンクは、寸法精度の高い精密な、かつ強度の高い製品を得ることができる。また、アッパーシェル部とロアシェル部の内部に部品取付部や、補強リブを形成することができ、内蔵部品等を取付けることも、燃料タンクの強度を向上させることも容易にできる。
【0012】
キャニスタは、上部壁がアッパーシェル部の外壁から構成され、側壁がアッパーシェル部の外壁から一体的に垂下して形成されているため、アッパーシェル部を射出成形するときに同時に上部壁と側壁を形成することができる。
底壁はアッパーシェル部とは別体で形成され、底壁は側壁の先端に固着され、キャニスタ内部には燃料蒸気吸収部材を充填する。このため、底壁を固着することで容易にキャニスタの箱形状を形成することができ、その内部に燃料蒸気吸収部材を充填することも容易である。
【0013】
上部壁に、キャニスタへ空気が出入する大気開放用ポートを取付ける大気開放用ポート取付部と、キャニスタから燃料蒸気を含んだ空気を排出するパージポートを取付けるパージポート取付部を形成した。このため、アッパーシェル部を射出成形するときに大気開放用ポート取付部とパージポート取付部をキャニスタの成形と同時に形成することができ、製造が容易である。
【0014】
大気開放用ポート取付部とパージポート取付部には、それぞれ上部壁からポート取付部空間を形成するようにポート取付部側壁を下方に延設したため、アッパーシェル部の成形と同時に、ポート取付部空間を構成する側壁を形成することができるとともに、ポート取付部空間を上部壁に密着して形成することができる。
【0015】
ポート取付部空間に大気開放用ポートとパージポートのそれぞれの先端が開口し、ポート取付部空間とキャニスタの燃料蒸気吸収部材の間を仕切るフィルタをポート取付部側壁の先端に固着した。このため、大気開放用ポートとパージポートの先端をポート取付部空間に位置させて、フィルタが直接塞ぐことがない。また、大気開放用ポートとパージポートの先端にフィルタを取付ける場合よりも、フィルタの面積を大きくすることができ、大気の流通効率が良い。また、大気開放用ポートとパージポートをフィルタとは別にポート取付部に取り付けるため、取り付けが容易である。
【0016】
請求項2の本発明は、大気開放用ポートとパージポートは、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部とはそれぞれ別体で形成され、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部にそれぞれシール部材とともに係止されている燃料タンクである。
【0017】
請求項2の本発明では、大気開放用ポートとパージポートは、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部とはそれぞれ別体で形成されたため、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部の構造が簡単となり、製造が容易である。
大気開放用ポート取付部とパージポート取付部にそれぞれシール部材とともに係止されているため、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部に大気開放用ポートとパージポートを嵌め込むことにより容易に組付けることができるとともに、シール性を確保することができる。
【0018】
請求項3の本発明は、大気開放用ポートとパージポートは、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部からそれぞれ一体で燃料タンクの外側に延設され形成された燃料タンクである。
【0019】
請求項3の本発明では、大気開放用ポートとパージポートは、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部からそれぞれ一体で燃料タンクの外側に延設され形成されたため、アッパーシェル部を成形するときに、同時に大気開放用ポート、パージポート、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部を形成することができ、製造が容易であるとともに、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部のシール性を確保できる。
【0020】
請求項4の本発明は、大気開放用ポートとパージポートは、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部とはそれぞれ別体で形成され、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部に溶着または接着して取付けられた燃料タンクである。
【0021】
請求項4の本発明では、大気開放用ポートとパージポートは、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部とはそれぞれ別体で形成されたため、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部の構造が簡単となり、製造が容易である。
大気開放用ポート取付部とパージポート取付部に溶着または接着して取付けられたため、大気開放用ポート取付部とパージポート取付部のシール性を確保できる。
【0022】
請求項5の本発明は、キャニスタの上部壁から下方に底壁との間に隙間を有するように仕切壁を延設する燃料タンクである。
【0023】
請求項5の本発明では、キャニスタの上部壁から下方に底壁との間に隙間を有するように仕切壁を延設するため、キャニスタ内部の燃料蒸気吸収部材の中を流通する空気の通過経路を長くすることができ、空気中の燃料蒸気を確実に吸収することができる。
【0024】
請求項6の本発明は、キャニスタの底壁から上方に上部壁との間に隙間を有するように底仕切壁を延設する燃料タンクである。
【0025】
請求項6の本発明では、キャニスタの底壁から上方に上部壁との間に隙間を有するように底仕切壁を延設するため、キャニスタ内部の燃料蒸気吸収部材の中を流通する空気の経路を長くすることができ、空気中の燃料蒸気を確実に吸収することができる。
【0026】
請求項7の本発明は、ポート取付部側壁の先端に固着されたフィルタは、溶着又は嵌合されている燃料タンクである。
【0027】
請求項7の本発明では、ポート取付部側壁の先端に固着されたフィルタは、溶着又は嵌合されているため、フィルタの取り付けが容易である。
【0028】
請求項8の本発明は、キャニスタの内部には、底部にスポンジ部材が設けられ、スポンジ部材の上に燃料蒸気吸収部材として活性炭が充填された燃料タンクである。
【0029】
請求項8の本発明では、キャニスタの内部には、底部に通気性の良いスポンジ部材が設けられ、スポンジ部材の上に燃料蒸気吸収部材として活性炭が充填されたため、キャニスタ内部に充填された活性炭を押し上げて、隙間をなくすことができ、キャニスタを流通する空気から燃料蒸気を確実に除去することができる。
活性炭を使用するため、燃料タンクからキャニスタ内に流入した空気から燃料蒸気を確実に除去することができるとともに、活性炭に吸着した燃料蒸気を空気の流通により容易に除去することができ、繰り返し何度も使用することができる。
【0030】
請求項9の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部は、ポリオキシメチレン(POM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)のうち少なくとも1種類の材料から形成された燃料タンクである。
【0031】
請求項9の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部は、ポリオキシメチレン(POM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)のうち少なくとも1種類の材料から形成された。このため、強度の高い燃料タンクを製造できるとともに、燃料タンクに貯蔵された燃料の透過防止性に優れた、燃料の透過を防止できる燃料タンクを製造することができる。
【0032】
請求項10の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層を高密度ポリエチレン(HDPE)の射出成形で形成し、内側樹脂層の外面を耐燃料透過性多層樹脂シートからなる外側シート層で形成し、耐燃料透過性多層樹脂シートの内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成された燃料タンクである。
【0033】
請求項10の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層を高密度ポリエチレン(HDPE)の射出成形で形成したため、燃料タンクの耐衝撃強度を大きくすることができるとともに、溶融樹脂の流動性が高く射出成形が容易である。
内側樹脂層の外面を耐燃料透過性多層樹脂シートからなる外側シート層で形成したため、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されており、燃料タンクの内部に燃料油を入れた場合には、燃料油の透過を防止することができる。
【0034】
耐燃料透過性多層樹脂シートの内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成されたため、内側樹脂層と外側シート層とが強固に融着されることができる。また、耐燃料透過性多層樹脂シートの外側の層を高密度ポリエチレン(HDPE)とすれば、燃料タンクの強度を増加させることができる。
【発明の効果】
【0035】
大気開放用ポート取付部とパージポート取付部には、それぞれ上部壁からポート取付部側壁を下方に延設したため、アッパーシェル部の成形と同時にポート取付部空間を形成することができる。ポート取付部空間に、ポート取付部空間とキャニスタの燃料蒸気吸収部材の間を仕切るフィルタをポート取付部側壁の先端に固着したため、大気開放用ポートとパージポートの先端をフィルタが直接塞ぐことがなく、フィルタの面積を大きくすることができ、大気の流通効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施の形態を図1〜図4に基づき説明する。
図1は本発明のキャニスタ30が使用される燃料タンク1の断面図である。図2〜図4は、本発明の第1〜第3の実施の形態を示すもので、燃料タンク1に取付けたキャニスタ30の断面図である。
【0037】
まず、図1と図2に基づき第1の実施の形態について説明する。
図1に示すように、燃料タンク1は、分割して成形されたアッパーシェル部10とロアシェル部20から構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ、射出成形で形成される内側樹脂層15、25と、内側樹脂層15、25の成形後に、外側に接着又は融着される耐燃料透過性多層樹脂シート3から構成される外側シート層16、26の2層から形成される。
燃料タンク1の分割はアッパーシェル部10とロアシェル部20の2個ばかりでなく3個以上に分割することも可能である。
【0038】
アッパーシェル部10には、図1に示す、燃料タンク1内の燃料蒸気の排出を防ぐキャニスタ30が一体的に形成されている。また、キャニスタ30の上部壁37には、インレット取付部13とブリザーポート取付部14が形成されている。インレット取付部13は、燃料タンク1内に燃料を注入するインレットホース(図示せず)を取付けるものであり、ブリザーポート取付部14は、燃料供給時に燃料タンク1内の空気を逃がすためブリサーホース(図示せず)を取付けるものである。
なお、アッパーシェル部10の上面には、燃料移送用ホース等の各種のホースを保持するホースクランプ(図示せず)を設けてもよい。
【0039】
ロアシェル部20の内面は、サブタンク5が形成され、サブタンク5内に燃料ポンプユニット4が取付けられている。サブタンク5は、車両が傾いたり振動したりしたときに、燃料タンク1内の燃料を燃料ポンプユニット4が確実にエンジンに送り出すことができるように設けられている。燃料ポンプユニット4からパイプが延びて、ロアシェル部20のフューエルメインポート取付部23に接続している。フューエルメインポート取付部23にはエンジンに燃料を送る燃料パイプ(図示せず)が取付けられている。
【0040】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口の全周には、図1に示すように、アッパーシェル部10の接合周縁部11とロアシェル部20の接合周縁部21が形成され、その接合周縁部11、21には、全周に亘りそれぞれ外面から外側に張り出したフランジ部12,22が形成されている。接合周縁部11、21とフランジ部12,22は、それぞれ相互に対向して溶着されている。
フランジ部12,22は、アッパーシェル部10とロアシェル部20の本体とは断面略L字形に形成される。
【0041】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25の外面は、フランジ部12、22の先端まで全体が、耐燃料透過性多層樹脂シート3が一体的に融着されて、上記の通り、外側シート層16、26を構成している。耐燃料透過性多層樹脂シート3の融着は耐燃料透過性多層樹脂シート3の表面を加熱して行うことができる。このため、アッパーシェル部10とロアシェル部20の全体と、フランジ部12、22の先端まで燃料透過を防止することができる。
【0042】
耐燃料透過性多層樹脂シート3は、例えば、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止するバリヤー層と、そのバリヤー層の上下に変性ポリエチレンから形成される接着層と、その接着層のそれぞれの外面にポリエチレン(PE)から形成される外層から構成される5層のシートである。
【0043】
変性ポリエチレンから形成される接着層は、バリヤー層と外層の両方に対して接着性を有している。このため、バリヤー層と外層を強固に接着することができる。
耐燃料透過性多層樹脂シート3の外側の層は、衝撃や磨耗に強いポリエチレン(PE)から形成されることができ、この場合は、燃料タンク1の強度を増加させ、バリヤー層を保護することができる。内側樹脂層15、25と接合する層は、内側樹脂層15、25がオレフィン系合成樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されている場合は、内側樹脂層15、25と融着して、強固に接合されることができる。
【0044】
次に、図2に基づき、第1の実施の形態について、キャニスタ30の構造を中心に説明する。
キャニスタ30は、アッパーシェル部10の外壁の内側に一体的に形成されている。キャニスタ30は、箱状に形成され、上部壁37はアッパーシェル部10の外壁から構成されている。キャニスタ30の側壁31がキャニスタ30の外側面を構成するようにアッパーシェル部10の内側樹脂層15から連続して一体的に垂下して形成されている。
【0045】
さらに、上部壁37の略中央部付近から、後述する底壁33との間に隙間を有するように仕切壁32を下方に延設することができる。仕切壁32と側壁31は、アッパーシェル部10の内側樹脂層15を射出成形するときに同時に成形される。このため成形の手間がかからず容易である。
【0046】
また、底壁33がアッパーシェル部とは別体で形成される。底壁33は、側壁31の先端に溶着又は接着される。このようにして、キャニスタ30の外壁は形成することができる。なお、上記の仕切壁32とキャニスタ30内でずれて、空気の流通経路を形成するように、底壁33から上部壁37との間に隙間を有するように底仕切壁34を上方に延設することができる。
【0047】
底壁33を側壁31の先端に溶着又は接着する前に、キャニスタ30内部には燃料蒸気吸収部材である活性炭35を充填し、底壁33に接する部分には通気性の良いスポンジ部材36が設けられている。このため、使用時の振動等で、キャニスタ30内部の活性炭35の間に隙間が生じないように、スポンジ部材36により活性炭35を押圧することにより、隙間無く充填し続けることができ、キャニスタ30内を流通する空気を確実に活性炭35と接触させることができ、空気から燃料蒸気を確実に除去することができる。
【0048】
活性炭35を使用するため、燃料タンク1からキャニスタ30内に流入する空気から燃料蒸気を確実に除去することができるとともに、エンジンが作動して吸気系に空気を送るように大気からキャニスタ30内へ空気が流入する場合には、活性炭35に吸着した燃料蒸気を空気の流通により容易に除去することができ、再度、活性炭35に燃料蒸気を吸着させることができる。このようにして、活性炭35を繰り返し何度も使用することができる。
【0049】
上部壁37から仕切壁32を形成し、仕切壁32とずらせて、底壁33から底仕切壁34を形成した場合には、図2に示すように、活性炭35中を流通する空気の通過経路を屈曲させて長く形成することができ、燃料蒸気の吸着と脱離が確実に行うことができる。なお、仕切壁32と底仕切壁34は、いずれか一方のみ形成することもできる。また、キャニスタ30を細長く形成し、充分な流通経路を確保できる場合には、仕切壁32と底仕切壁34とをいずれも使用しなくても良い。
【0050】
アッパーシェル部10の内部には、カットオフバルブ61が設けられ、カットオフバルブ61と気液分離室60はチューブ62で連結されている。カットオフバルブ61には、アッパーシェル部10の外壁の内面に取付けられる。カットオフバルブ61は、燃料タンク1から液体燃料がキャニスタ30内に流入しないように、燃料タンク1内の気体のみを通過させるように働く。これにより、燃料タンク1内の燃料の液面レベルにかかわらず、気体のみをキャニスタ30に送ることができる。
【0051】
底壁33のパージポート55寄りには、気液分離室60が形成され、気液分離室60内には両方向チェック弁63が設けられている。気液分離室60は底壁33と連通しており、連通部分にはフィルタ65が取付けられている。
チューブ62から気液分離室60に送られた燃料タンク1内の空気は、気液分離室60内で気体と液体が分離され、気体のみがキャニスタ30内に送られる。
【0052】
キャニスタ30の上部壁37には、キャニスタ30へ空気を出入させる大気開放用ポート45を取付ける大気開放用ポート取付部40と、キャニスタ30からエンジンの吸気系へ空気を排出するパージポート55を取付けるパージポート取付部50を形成している。これにより、燃料タンク1内の気圧が上昇したときは、燃料タンク1内の燃料蒸気を含んだ空気を燃料タンク1内から、カットオフバルブ61と気液分離室60を経由して、キャニスタ30へ排出し、キャニスタ30で燃料蒸気を取除き、大気中に排出することができる。
【0053】
また、燃料タンク1内の気圧が下降したときは、大気開放用ポート45から空気を、キャニスタ30を経由して流入させることができる。
さらに、エンジン作動中は、キャニスタ30を経由して、パージポート55から空気をエンジンの吸気系に送ることができ、このとき、上述のように、キャニスタ30の活性炭に吸着した燃料蒸気を取除くことができる。
【0054】
大気開放用ポート取付部40とパージポート取付部50は、それぞれ上部壁37からポート取付部空間43、53の外壁を形成するようにポート取付部側壁41、51を下方に延設している。ポート取付部空間43、53は、大気開放用ポート45とパージポート55を取り付けたときに、大気開放用ポート45とパージポート55の先端がポート取付部空間43、53の中に位置することができる大きさに形成する。
【0055】
ポート取付部側壁41、51の内側には内側に向かってそれぞれポート取付部側壁突起42、52が形成されている。ポート取付部側壁41、51とポート取付部側壁突起42、52は、側壁31と同様に、アッパーシェル部10の内側樹脂層15を成形するときに同時に成形することができる。このため、成形が一度にでき、手間がかからない。
ポート取付部側壁41、51の内側とポート取付部側壁突起42、52の上面は、アッパーシェル部10外面から連続して耐燃料透過性多層樹脂シート3製の外側シート層16が延設され、融着されている。
【0056】
ポート取付部側壁41、51の先端には、それぞれフィルタ44、54が接着又は溶着されている。フィルタ44、54は不織布等で形成されている。フィルタ44、54が合成繊維の不織布で形成された場合には、そのままポート取付部側壁41、51の先端に溶着することができる。また、フィルタ44、54を枠に入れてその枠をポート取付部側壁41、51の先端に係止したり接着したりすることもできる。
【0057】
ポート取付部側壁41、51の先端に、それぞれフィルタ44、54を固着したため、ポート取付部空間43、53にキャニスタ30内に充填された活性炭35が進入することがない。また、大気開放用ポート45とパージポート55の先端をフィルタ44,54が直接塞ぐことがなく、大気開放用ポート45とパージポート55の先端にフィルタ44,54を取付けた場合に比べて、フィルタ44,54の面積を大きくすることができ、空気の流通抵抗が少なく、空気の流通効率が良い。
【0058】
大気開放用ポート45とパージポート55は、それぞれ先端部分がポート取付部側壁突起42、52に係止可能な鉤部が形成された脚部46、56を有し、脚部46、56にはスリットが形成されている。脚部46、56にはシール部材であるシールリング47,57がはめ込まれている。
【0059】
大気開放用ポート45とパージポート55とを、それぞれ大気開放用ポート取付部40とパージポート取付部50に挿入すると、脚部46、56が撓んで、ポート取付部側壁突起42、52に係止される。そのとき、シールリング47,57がそれぞれポート取付部側壁突起42、52の上面の外側シート層16に当接して、大気開放用ポート45とパージポート55と、それぞれ大気開放用ポート取付部40とパージポート取付部50との間をシールして、燃料蒸気の透過を防止することができる。
なお、大気開放用ポート45とパージポート55は、耐燃料透過性の合成樹脂で形成することが必要である。
【0060】
さらに、ポート取付部空間43、53に大気開放用ポート45とパージポート55のそれぞれの先端が開口している。このため、大気開放用ポート45とパージポート55の先端をフィルタ44、54が直接塞ぐことがない。さらに、ポート取付部側壁41、51にフィルタ44、54を固着したため、ポート取付部空間43、53を経由して空気が流通するので、空気の流通効率が良い。
【0061】
次に、図3に基づき、本発明の第2の実施の形態について、キャニスタ30の構造を中心に説明する。第2の実施の形態は、アッパーシェル部10が熱可塑性合成樹脂の1層で形成されているとともに、大気開放用ポート45、パージポート55、大気開放用ポート取付部40及びパージポート取付部50の部分が異なり、他の部分は第1の実施の形態と同様である。このため、異なる部分を説明し、同様の部分は説明を省略する。
【0062】
図1に示すように、燃料タンク1は、分割して成形されたアッパーシェル部10とロアシェル部20から構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ、熱可塑性合成樹脂の射出成形で形成される。
熱可塑性合成樹脂は、ポリオキシメチレン(POM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)のうち少なくとも1種類の材料から選ばれた合成樹脂を使用することができる。このため、強度の高い燃料タンクを製造できるとともに、燃料タンクに貯蔵された液体の透過防止性に優れた、液体の透過を防止できる燃料タンクを製造することができる。
【0063】
大気開放用ポート取付部40とパージポート取付部50は、それぞれ上部壁37からポート取付部空間43、53を形成するようにポート取付部側壁41、51を下方に延設している。ポート取付部空間43、53は、大気開放用ポート45とパージポート55を取り付けたときに、大気開放用ポート45とパージポート55の先端がポート取付部空間43、53の中に位置することができる大きさに形成する。しかし、ポート取付部側壁41、51の内側にはそれぞれポート取付部側壁突起42、52が形成されていない。
【0064】
ポート取付部側壁41、51は、側壁31と同様に、アッパーシェル部10の内側樹脂層15を成形するときに同時に成形することができる。このため、成形が一度にでき、手間がかからない。
ポート取付部側壁41、51の先端には、それぞれフィルタ44、54が接着又は溶着されている。フィルタ44、54は不織布等で形成されている。フィルタ44,54の取り付けは、第1の実施の形態と同様である。
【0065】
大気開放用ポート45とパージポート55は、それぞれ上部壁37の大気開放用ポート取付部40とパージポート取付部50の部分から、一体的に燃料タンク1の外部方向に延設して形成されている。このため、アッパーシェル部10を射出成形するときに、大気開放用ポート45とパージポート55と同様に、同時に成形することができ、成形が容易である。
また、大気開放用ポート取付部40と大気開放用ポート45のシール、及びパージポート取付部50とパージポート55は、接続部分がなく、シール部材を必要とせず、確実に燃料蒸気の透過を防止できる。
【0066】
さらに、大気開放用ポート45とパージポート55の先端は、それぞれポート取付部空間43、53に対して開口しており、大気開放用ポート45とパージポート55の先端をフィルタ44,54が直接塞ぐことがなく、第1の実施の形態と同様に、フィルタ44,54の面積を大きくすることができ、大気の流通効率が良い。また、大気開放用ポート45とパージポート55には、それぞれ屈曲したチューブを挿入することができる。
【0067】
次に、図4に基づき、第3の実施の形態について、キャニスタ30の構造を中心に説明する。第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様に、アッパーシェル部10が熱可塑性合成樹脂の1層で形成されている。しかし、大気開放用ポート45とパージポート55が大気開放用ポート取付部40及びパージポート取付部50とは別に形成されていることが異なり、他の部分は第2の実施の形態と同様である。このため、第2の実施の形態と異なる部分を説明し、同様の部分は説明を省略する。
【0068】
大気開放用ポート取付部40及びパージポート取付部50において、ポート取付部側壁41、51、ポート取付部空間43、53とフィルタ44、54は第2の実施の形態と同様である。
大気開放用ポート45とパージポート55は、それぞれ大気開放用ポート取付部40とパージポート取付部50とは別に成形されている。
【0069】
大気開放用ポート45とパージポート55は、脚部46、56において、外周にフランジ48、58が形成されている。
大気開放用ポート45とパージポート55をそれぞれ大気開放用ポート取付部40とパージポート取付部50に挿入すると、大気開放用ポート45とパージポート55の脚部46、56の先端は、ポート取付部空間43、53に開口し、フランジ48、58が上部壁37の外面に当接する。このため、大気開放用ポート45とパージポート55の先端をフィルタ44,54が直接塞ぐことがなく、フィルタ44,54の面積を大きくすることができ、大気の流通効率が良い。
【0070】
大気開放用ポート45とパージポート55のフランジ48、58は、上部壁37に溶着又は、接着される。アッパーシェル部10は1層で形成され、外側シート層16がない。このため、大気開放用ポート取付部40と大気開放用ポート45及びパージポート取付部50とパージポート55はアッパーシェル部10とそれぞれ強固に固定される。また、それぞれの大気開放用ポート取付部40と大気開放用ポート45及びパージポート取付部50とパージポート55の接続は、シール部材を必要とせず、確実である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の態様を示すもので、燃料タンクに一体的に形成されたキャニスタの断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の態様を示すもので、燃料タンクに一体的に形成されたキャニスタの断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の態様を示すもので、燃料タンクに一体的に形成されたキャニスタの断面図である。
【図5】従来の燃料タンクを示すもので、上方から見た斜視図である。
【図6】従来の他の燃料タンクを示すもので、キャニスタ部分の断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 燃料タンク
10 アッパーシェル部
15、25 内側樹脂層
16、26 外側シート層
20 ロアシェル部
30 キャニスタ
31 側壁
32 仕切壁
33 底壁
34 底仕切壁
35 燃料蒸気吸収部材(活性炭)
36 スポンジ部材
37 上部壁
40 大気開放用ポート取付部
41、51 ポート取付部側壁
43、53 ポート取付部空間
44、54 フィルタ
45 大気開放用ポート
50 パージポート取付部
55 パージポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャニスタが一体的に取付けられた熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクにおいて、
該燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合して一体に構成され、
上記キャニスタは、上部壁が上記アッパーシェル部の外壁から構成され、側壁が上記アッパーシェル部の外壁から一体的に垂下して形成され、底壁は上記アッパーシェル部とは別体で形成され、上記底壁は上記側壁の先端に固着され、上記キャニスタ内部には燃料蒸気吸収部材を充填し、
上記上部壁に、上記キャニスタへ空気が出入する大気開放用ポートを取付ける大気開放用ポート取付部と、上記キャニスタから燃料蒸気を含んだ空気を排出するパージポートを取付けるパージポート取付部を形成し、該大気開放用ポート取付部とパージポート取付部には、それぞれ上記上部壁からポート取付部空間を形成するようにポート取付部側壁を下方に延設し、上記ポート取付部空間に上記大気開放用ポートとパージポートのそれぞれの先端が開口し、上記ポート取付部空間と上記キャニスタの燃料蒸気吸収部材の間を仕切るフィルタをそれぞれの上記ポート取付部側壁の先端に固着したことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
上記大気開放用ポートとパージポートは、上記大気開放用ポート取付部とパージポート取付部とはそれぞれ別体で形成され、上記大気開放用ポート取付部とパージポート取付部にそれぞれシール部材とともに係止されている請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
上記大気開放用ポートとパージポートは、上記大気開放用ポート取付部とパージポート取付部からそれぞれ一体で上記燃料タンクの外側に延設され形成された請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項4】
上記大気開放用ポートとパージポートは、上記大気開放用ポート取付部とパージポート取付部とはそれぞれ別体で形成され、上記大気開放用ポート取付部とパージポート取付部に溶着または接着して取付けられた請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項5】
上記キャニスタの上部壁から下方に上記底壁との間に隙間を有するように仕切壁を延設する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項6】
上記キャニスタの底壁から上方に上記上部壁との間に隙間を有するように底仕切壁を延設する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項7】
上記ポート取付部側壁の先端に固着されたフィルタは、溶着又は嵌合されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項8】
上記キャニスタの内部には、底部にスポンジ部材が設けられ、該スポンジ部材の上に燃料蒸気吸収部材として活性炭が充填された請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項9】
上記アッパーシェル部とロアシェル部は、ポリオキシメチレン(POM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)のうち少なくとも1種類の材料から形成された請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項10】
上記アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層を高密度ポリエチレン(HDPE)の射出成形で形成し、該内側樹脂層の外面を耐燃料透過性多層樹脂シートからなる外側シート層で形成し、上記耐燃料透過性多層樹脂シートの上記内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成された請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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