説明

燃料チューブ及びそのコネクタ

【課題】複数の層4〜7を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体2の端部にコネクタ3を溶接接合してなる燃料チューブ1において、安価な構成で、使用燃料に応じた高い耐燃料性と耐燃料透過性とを両立する。
【解決手段】コネクタ3の軸心方向の一端面に、チューブ本体2の端部が挿入されてスピン溶接される環状のチューブ挿入溝部11を形成しておき、該チューブ挿入溝部11を、該溝部11の開口側から奥側に向かって径が小さくなる外周側壁面13と、該外周側壁面13の径方向内側に位置し、開口側から奥側に向かって径が略一定となる内周側壁面12と、該内周側壁面12における奥側の端部に接続され、開口側から奥側に向かって径が大きくなる底壁面15とを有するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数の層を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体の端部にコネクタを溶接接合してなる燃料チューブ、及び該コネクタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の層を径方向に積層してなるチューブ本体と、接続用のコネクタとを備えた燃料チューブとして、例えば、コネクタにチューブ本体を圧入固定したものや、コネクタとチューブ本体とを溶接により一体固定したものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す燃料チューブでは、外周部に複数の突起を有するニップルに燃料チューブの端部を圧入して固定するようにしている。また、特許文献2に示す燃料チューブでは、チューブ本体を径方向に積層された三つの層で構成して、その最内層及び最外層を、コネクタに設けられたテーパ部にスピン溶接により溶着するようにしている。
【0004】
上記チューブ本体の最内層は、例えば特許文献3に示すように導電性樹脂で構成される。これにより、最内層と燃料との摩擦により蓄積した電荷が放電して燃料に引火するのを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−146063号公報
【特許文献2】特表2002−504980号公報
【特許文献3】特開2010−54055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に示す燃料チューブでは、チューブ本体の端部をコネクタに圧入するようにしているため、この圧入部(燃料チューブの端部)から燃料が漏れ易く、耐燃料透過性が低いという問題がある。そこで、上記特許文献2に示すように、チューブ本体の端部をコネクタに溶接することで、この端部からの燃料漏れを防止することが考えられる。
【0007】
しかしながら、この燃料チューブでは、最内層が溶接時に溶融するため、最内層の厚みを予め大きくとる必要がある。このため、例えば特許文献3に示すように最内層を構成する樹脂を比較的高価な導電材料で構成した場合、製品コストの増加を招くという問題がある。また、この燃料チューブでは、最内層を構成する樹脂がコネクタに溶接可能な樹脂に限定されるため、最内層に求められる耐燃料性(耐腐食性、耐久性)を確保できない場合があり、耐燃料透過性及び耐燃料性の観点から改良の余地がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用燃料に応じた高い耐燃料性を確保しながら、安価な構成で耐燃料透過性を向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明では、複数の層を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体の端部にコネクタを溶接接合してなる燃料チューブを対象とする。そして、上記コネクタは、上記チューブ本体の端部が挿入されて溶接される環状凹部を有し、上記環状凹部は、該凹部の開口側から奥側に向かって径が小さくなる外周側壁面と、該外周側壁面の径方向内側に位置し、開口側から奥側に向かって径が略一定となる内周側壁面と、該内周側壁面における奥側の端部に接続され、開口側から奥側に向かって径が大きくなる奥側壁面とを有しているものとする。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、チューブ本体は、少なくとも三つの層からなるものであって、最外層が環状凹部の外周側壁面に溶接されるとともに、最内層と最外層との間の一の層が環状凹部の奥側壁面に溶接されるように構成されているものとする。
【0011】
請求項1及び請求項2の構成によれば、チューブ本体の最外層と、該最外層及び最内層の間の一の層とをコネクタに溶接することができる。
【0012】
すなわち、例えばスピン溶接によりチューブ本体をコネクタに接合する場合、コネクタの環状凹部にチューブ本体の端部を挿入して、コネクタに対してチューブ本体を相対回転させながら開口側から奥側に押し込むことで、チューブ本体とコネクタとの接触面を摩擦熱で溶融させる。このとき、環状凹部の外周側壁面は、開口側から奥側に向かって径が小さくなるよう形成されているため、チューブ本体の最外層が外周側壁面に接触し、その接触面が摩擦により溶融する。こうして、最外層をコネクタに溶着させることができる。一方、環状凹部の内周側壁面は、開口側から奥側に向かって径が略一定になるように形成されているため、チューブ本体の最内層(特に最内層の奥側の端部)と内周側壁面との接触は抑制される。しかし、内側周壁面の奥側端部には、開口側から奥側に向かって径が大きくなる奥側壁面が形成されているため、最内層の奥側の端部がこの奥側壁面に接触する。これにより、最内層の奥側の端部が該奥側壁面により面取り加工するかの如く削られて、この結果、最内層よりも外側に位置する一の層(例えば最内層に隣接する層)が奥側壁面に接触するようになる。したがって、この一の層をコネクタに溶着可能な樹脂で構成しておけば、この一の層と奥側壁面との接触部が摩擦により溶融して、該一の層を奥側壁面に溶着させることができる。
【0013】
よって、最内層をコネクタに溶着させなくとも、最外層と上記一の層とをコネクタに溶着させることができ、これにより、チューブ本体の端部(チューブ本体とコネクタとの接続部)からの燃料漏れを確実に防止することができる。また、最内層を構成する樹脂が、コネクタとの溶着性を有する樹脂に限定されないため、最内層を使用燃料に応じた耐燃料性に優れた樹脂で構成することができる。また、最内層をコネクタに溶接させないのでその厚みを予め大きくとる必要もない。したがって、最内層を構成する樹脂を比較的高価な導電性樹脂で構成した場合でも、そのコスト増加を極力抑制することができる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、チューブ本体は、少なくとも4つの層からなるものであって、最外層と上記一の層との間に位置し且つ耐燃料透過性を有するバリア層を含むものとする。
【0015】
この構成によれば、コネクタに溶着された最外層と一の層との間にバリア層を封じ込むようにしたことで、耐燃料透過性をより一層向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項2又は3の発明において、上記チューブ本体の最外層及び上記一の層は、PA11又はPA12からなるものとする。
【0017】
この構成によれば、最外層及び一の層を構成する樹脂として、安価で加工性に優れた樹脂であるPA11又はPA12を採用することで、燃料チューブの製造コストを低減することができる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項2乃至4のいずれか一つの発明において、上記コネクタは、上記最外層及び上記一の層を構成する樹脂と同じ樹脂からなるものとする。
【0019】
この構成によれば、上記最外層及び上記一の層と、上記コネクタとの接合性を可及的に高めることができる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項1乃至5のいずれか一つの発明において、上記チューブ本体の最内層は、フッ素系樹脂からなるものとする。
【0021】
この構成によれば、最内層を構成する樹脂としてフッ素系樹脂を採用するようにしたことで、アルコール燃料等に対する耐燃料性(耐久性、耐腐食性等)を向上させることができる。多くのフッ素系樹脂は、ナイロン系の樹脂に比べて融点が高いが(熱溶融性が低い)、本発明では、上述の如く最内層をコネクタに溶着させる必要がないため、使用燃料に応じてこのような高融点の樹脂を最内層に使用することができる。さらに、フッ素樹脂は、ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性にも優れているため、燃料チューブの耐サワーガソリン性を向上させることができる。
【0022】
請求項7の発明では、請求項1乃至6のいずれか一つの発明において、上記環状凹部の奥側壁面は、その内周縁が内周側壁面に接続されるとともに、外周縁が外周側壁面に接続されており、上記環状凹部の奥側の端部には、上記外周側壁面と上記奥側壁面と上記チューブ本体の奥側の端面とに囲まれたバリ収容部が設けられているものとする。
【0023】
この構成によれば、例えばスピン溶接によりチューブ本体をコネクタにスピン溶接する場合に、チューブ本体とコネクタとの接触部において生じるバリをバリ収容部に収容することができる。また、このバリ収容部を環状凹部の奥側の端部に形成するようにしたことで、スピン溶接時に生じるバリが燃料通路内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0024】
請求項8の発明では、請求項1乃至7のいずれか一つの発明おいて、上記コネクタに対する上記チューブ本体の引抜き方向の接合力は、上記チューブ本体における該引抜き方向の破断荷重よりも大きいものとする。
【0025】
このように、コネクタに対するチューブ本体の引抜き方向の接合力が、チューブ本体における該引抜き方向の破断荷重を上回るほど、コネクタとチューブ本体とを強固に接合することで、両者の接続部から漏出する燃料の量を可及的に低減することができる。
【0026】
請求項9の発明では、チューブの端部に溶接接合されるコネクタを対象とする。そして、上記チューブの端部が挿入されてスピン溶接される環状凹部を有し、上記環状凹部は、該凹部の開口側から奥側に向かって径が小さくなる外周側壁面と、該外周側壁面の径方向内側に位置し、開口側から奥側に向かって径が略一定となる内周側壁面と、該内周側壁面における奥側の端部に接続され、開口側から奥側に向かって径が大きくなる奥側壁面とを有しているものとする。
【0027】
この構成によれば、請求項1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によると、コネクタに形成されるチューブ挿入用の環状凹部を、該凹部の開口側から奥側に向かって径が小さくなる外周側壁面と、該外周側壁面の径方向内側に位置し、開口側から奥側に向かって径が略一定となる内周側壁面と、該内周側壁面における奥側の端部に接続され、開口側から奥側に向かって径が大きくなる奥側壁面とを有するものとしたことで、使用燃料に応じた高い耐燃料性を確保しながら、安価な構成で耐燃料透過性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料チューブのチューブ本体を示す、その軸心方向に垂直な断面図である。
【図2】チューブ本体とコネクタとの接合構造を示す、燃料チューブの軸心方向に沿った断面図である。
【図3】コネクタの側面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】コネクタのチューブ挿入溝部を示す拡大断面図である。
【図6】従来のコネクタを示す図5相当図である。
【図7】燃料の透過メカニズムを説明するための説明図である。
【図8】他の実施形態を示す図5相当図である。
【図9】他の実施形態を示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る燃料チューブ1を示す。この燃料チューブ1は、例えば、自動車の燃料注入配管と燃料タンクとの連絡、或いはエンジンへ燃料を送る連絡配管に用いられるものである。この燃料チューブ1は、液体燃料に限らず気体燃料にも使用することができる。
【0031】
上記燃料チューブ1は、図2に示すように、樹脂製のチューブ本体2と、チューブ本体2を配管等に接続するための(接続用の)コネクタ3とを有している。チューブ本体2とコネクタとは、スピン溶接(摩擦溶接の一種)により一体化されている。
【0032】
チューブ本体2は、内径及び外径が一端側から他端側まで略一定である円管であって、径方向に積層された4つの層4〜7で構成されている。これら4つの層4〜7は、径方向内側から径方向外側に向かって、最内層4、内層5、中間層6、最外層7の順に積層されている。中間層6は、耐燃料透過性を有していて、中間層6の径方向内側に内層5と最内層4との二層が形成されている。
【0033】
上記コネクタ3は、チューブ本体2が挿入されてスピン溶接されるチューブ挿入溝部11を有している。チューブ本体2は、詳細は後述するように、少なくとも最外層7及び内層5を該溝部11内の壁面に溶着させることでコネクタ3に接合されている。
【0034】
上記最外層7は、熱溶融性を有する脂肪族系熱可塑性樹脂で形成することが好ましく、
具体的には、例えば、ナイロン系樹脂(例えば、PA11,PA12,PA6,PA66,PA99,PA610,PA6/66,PA6/12等)で形成することができる。最外層7の融点は、240℃以下であることがより好ましい。このように、最外層7を熱溶融性を有するナイロン樹脂(PA樹脂)で形成することで、最外層7をコネクタ3に対してスピン溶接により溶着することができる。また、PA樹脂は、耐薬品性、耐候性、柔軟性、強度、靱性等の観点から、最外層7に求められる性能を満たしていて、この点からも最外層7の構成樹脂として好ましい。最外層7に使用する樹脂は、コネクタ3に使用する樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。これにより、最外層7とコネクタ3とのスピン溶接による接合性を向上させることができる。
【0035】
上記内層5は、上記最外層7と同様に、熱溶融性を有する脂肪族系熱可塑性樹脂で形成することが好ましい。内層5は、例えば比較的安価なナイロン系熱可塑性樹脂で形成することが好ましく、例えば、ポリアミド(PA)11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド99、ポリアミド610、ポリアミド26、ポリアミド46、ポリアミド69、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド912、ポリアミドTMHT、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド9N、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミド10N、ポリアミド11T、ポリアミド11I、ポリアミド11N、ポリアミド1212、ポリアミド12T、ポリアミド12I、ポリアミド12N、ポリアミドMXD6、ポリアミドPACM12、ポリアミドジメチルPACM12等の脂肪族ポリアミドや芳香族ポリアミド等が挙げられ、少なくとも1種のポリアミドや、これらポリアミドの原料モノマーを数種用いた共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。チューブ本体2の耐熱性、機械的強度や、層間接着性の観点から、上記ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6N、ポリアミド9T、ポリアミド9N、ポリアミド12T、ポリアミド12Nが好ましく、この中でもポリアミド11、ポリアミド12がより一層好ましい。内層5を構成する樹脂の融点は240°以下であることがより好ましい。尚、内層5と最外層7とを必ずしも同じ樹脂材で構成する必要はない。
【0036】
中間層6は、主に燃料チューブの周側面からの燃料漏れを防止するためのバリア層としての機能を有している。中間層6は、耐燃料透過性に優れた樹脂であればどのような樹脂で形成してもよく、例えば、後述のフッ素系樹脂や、上述のナイロン系樹脂から選択できるバリア性の高い樹脂、その他にエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリにビルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル(EEA)等が挙げられ、これらは接着機能性官能基を有していても構わないし、1種又は2種以上が重合されていても構わない。さらに、チューブ本体2の耐熱性、機械的強度や、層間接着性の観点から、後述のフッ素系樹脂、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等のバリア性の高い脂肪族ポリアミドや、ポリアミド6T、ポリアミド6N、ポリアミド9T、ポリアミド9N、ポリアミド12T、ポリアミド12N等のバリア性の高い芳香族ポリアミドや、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)がより好ましく、この中でもフッ素系樹脂がより一層好ましい。
【0037】
上記最内層4は、燃料が通過する燃料通路8を形成している。最内層4の内周面は燃料通路8内を流れる燃料と直接接触するため、両者の摩擦により蓄積した電荷がその放電時に燃料に引火する虞がある。したがって、これを防止するために、最内層4は導電性を有する樹脂で形成することが好ましい。但し、燃料チューブ1内を流れる燃料が、引火性の低いものである場合には、必ずしも最内層4を導電材で構成する必要はない。
【0038】
また、最内層4は、上述の如く燃料に直接晒されるため、燃料に対する耐性(耐燃料劣化性、耐燃料腐食性等)に優れた樹脂で形成することが好ましい。したがって、例えば、環境性に優れたアルコール燃料等を使用燃料とした場合には、最内層4は、フッ素系樹脂で形成することが好ましい。フッ素系樹脂は、PA樹脂よりも耐燃料透過性に優れていて、耐燃料透過性の観点からも好ましい。このフッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられ、少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位を有する重合体であり、前記重合体を1種又は2種以上を用いても構わない。最内層4は必ずしもコネクタ3に溶着される必要はなく、少なくとも、最外層7及び内層5がコネクタ3に溶着されていればよい。したがって、最内層4を構成する樹脂は、チューブ本体2とコネクタ3とを溶接させる温度条件よりも高融点の樹脂であってもよい。
【0039】
上記コネクタ3は、樹脂製の一体成型品であって、最外層7及び内層5との溶着性を確保するために、熱溶融性を有する脂肪族系熱可塑性樹脂で形成することが好ましく、具体的には、ナイロン系の樹脂(例えば、PA11,PA12,PA6,PA66,PA99,PA610,PA6/66,PA6/12等)で形成することが好ましい。また、コネクタ3は、内層5及び最外層7を構成する樹脂と同じ樹脂で形成することがより好ましい。
【0040】
コネクタ3は、図2〜4に示すように、燃料パイプ(不図示)を脱着自在な略L字状の所謂クイックコネクタであって、その内部には、チューブ本体2内に連通する燃料通路16が形成されている。
【0041】
具体的には、コネクタ3は、チューブ本体2が挿入(嵌合)されてスピン溶接されるチューブ挿入部10と、このチューブ挿入部10から直角に延び、燃料パイプが取り付けられるパイプ取付部21とを備えている。
【0042】
チューブ挿入部10は、軸心方向の一側に開口する有底円筒状のチューブ挿入溝部11(図5参照)を有している。チューブ挿入溝部11は、その軸心方向から見て円環状をなしている。チューブ挿入溝部11の開口側端部には、その外周を囲むように円環状のバリ収容部14aが形成されている。バリ収容部14aは、チューブ本体2側に開口する皿状の凹部であって、チューブ挿入溝部11に連続して形成されている。尚、このバリ収容部14aは必ずしも設ける必要はない。
【0043】
チューブ挿入溝部11は、チューブ本体2側に開口する有底の円環状凹部であって、内周側壁面12と外周側壁面13と奥側壁面としての底壁面15とを有している。
【0044】
チューブ挿入溝部11における内周側壁面12と外周側壁面13との間隔は、開口側から奥側に向かって徐々に小さくなるように形成されている。外周側壁面13は、チューブ挿入溝部11の開口側から奥側(底側)に向かって縮径するテーパ面状に形成されている一方、内周側壁面12は、開口側から奥側に向かって径が略一定になる円筒面状に形成されている。チューブ挿入溝部11の外周径(コネクタ3の軸心から外周側壁面13までの距離)の最大値は、チューブ本体2をスピン溶接する前の状態において、チューブ本体2の挿入側端部の外径よりも大きい。チューブ挿入溝部11の外周径の最小値は、チューブ本体2をスピン溶接する前の状態において、チューブ本体2の挿入側端部の外径よりも小さい。チューブ挿入溝部11の内周径(コネクタ3の軸心から内周側壁面12までの距離)は、チューブ本体2をスピン溶接する前の状態において、チューブ本体2の挿入側端部の内径よりも僅かに小さい。
【0045】
上記チューブ挿入溝部11の底壁面15は、その開口側から奥側に向かって径が大きくなるテーパ面状(円錐面状)をなしている。この底壁面15がチューブ挿入溝部11の軸心方向に対してなす傾斜角度αは、外周側壁面13が該軸心方向に対してなす角度βよりも大きい。チューブ挿入溝部11の底部(奥側端部)には、チューブ本体2のコネクタへの溶接時に生じるバリを収容するバリ収容部14bが設けられている。バリ収容部14bは、底壁面15と外周側壁面13とチューブ本体2の端面とによって囲まれた部分からなる(図2参照)。上記底壁面15の傾斜角度αは、バリ収容部14bを確保する観点では小さい方が好ましいが、小さ過ぎると、後述するスピン溶接時にチューブ本体2をチューブ挿入溝部11の開口側から奥側にストロークさせても、最内層4が底壁面15によってあまり削られないので、内層5を底壁面15に溶着(接触)させることができない。したがって、傾斜角度αは、バリ収容部14bの確保と内層5の底壁面15への溶着性とを両立することができる適切な角度とする必要がある。具体的には、このテーパ角度αは、例えば40°〜50°の範囲内とすることが好ましく、本実施形態では45°とされている。
【0046】
以下、チューブ本体2とコネクタ3とをスピン溶接する手順について説明する。先ず、コネクタ3のチューブ挿入溝部11にチューブ本体2の端部を挿入して、チューブ本体2を、その奥側の端部が底壁面15に当接する状態にセットする。そうして、チューブ本体2のセットが完了した後に、チューブ本体2をチューブ挿入溝部11の開口側から奥側に向かって押し込みながら、コネクタ3をその軸心回りに所定回転数(本実施形態では2000rpm)で回転させると、チューブ本体2とコネクタ3との接触面が摩擦熱で溶融し、溶融した接触面が固化することでチューブ本体2がコネクタ3に溶着される。ここで、本実施形態では、チューブ挿入溝部11の外周側壁面13は上述の如くテーパ面状に形成されているため、チューブ本体2の外周面が該チューブ挿入溝部11の外周側壁面13に接触して溶着される。このとき生じるバリの殆どは、挿入溝部11の外周側に位置するバリ収容部14aに排出される。
【0047】
一方、チューブ挿入溝部11の内周側壁面12は、上述の如く、径が略一定の円筒面状に形成されているため、チューブ本体2の最内層4と該挿入溝部11の内周側壁面12との接触は抑制される。しかし、チューブ本体2を溝部11の奥側に押し込むことによって、チューブ本体2の最内層4が、テーパ面状の底壁面15に押し付けられるため、最内層4における底壁面15との接触部分が面取り加工するかの如く削られて、この結果、最内層4に隣接する内層5が底壁面15に接触するようになる。これにより、内層5が底壁面15との接触摩擦により溶融して底壁面15に溶着される。このとき生じるバリは、主に、チューブ挿入溝部11の最奥部に位置するバリ収容部14bに収容される。上記チューブ本体2の押込み量は、内層5を底壁面15に接触させるのに十分な量であればよく、本実施形態では2mmに設定されている。
【0048】
このように、本実施形態では、最内層4をコネクタ3に溶着することができなくても、最内層4に隣接する内層5をコネクタ3に溶着することができるため、チューブ本体2とコネクタ3との接続部から燃料漏れを確実に防止することができる。
【0049】
また、最内層4をコネクタ3に溶着させる必要がなくなったことで、最内層4に使用できる樹脂の選択範囲が広がるため、最内層4を使用燃料に応じた耐燃料性(耐腐食性、耐久性等)の高い樹脂で構成することができ、耐燃料透過性と耐燃料性との両立を図ることが可能となる。また、最内層4の溶融に備えてその厚みを予め大きくとる必要もないので、最内層4を構成する樹脂に比較的高価な導電性樹脂を使用した場合でも、そのコスト増加を極力抑制することができる。
【0050】
また、上記内層5と底壁面15との溶着部には、上記最内層4の削り取られた部分が混ざり込むため、例えば上述した放電対策として最内層4を導電材で構成した場合に、通電経路を確保して放電を促進することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、チューブ挿入溝部11の底部(奥側端部)にバリ収容部14bを形成するようにしたことで、チューブ本体2のコネクタ3へのスピン溶接時に発生したバリが燃料通路8内に排出されるのを確実に防止することができる。これにより、燃料にバリが混入するのを確実に防止することができる。
【0052】
次に、実施例(表1参照)について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
最内層4を構成する樹脂として、導電性を有するフッ素系樹脂である導電EFEP(例えば、ダイキン工業社グレード材料:RP5000AS)を採用し、内層5を構成する樹脂として、脂肪族系熱可塑性樹脂であるPA12(例えば、ダイセル・エボニック社グレード材料:LX9011)を採用し、中間層6を構成する樹脂として、フッ素系樹脂である非導電性EFEPを採用し、最外層7を構成する樹脂として、熱溶融性を有する脂肪族系熱可塑性樹脂であるPA12を採用するようにしている。
【0054】
(実施例2)
最内層4を構成する樹脂として、実施例1と同様に導電EFEPを採用し、内層5を構成する樹脂として、実施例1と同様にPA12を採用し、中間層6を構成する樹脂として
、フッ素系樹脂である非導電性PVDFを採用し、最外層7を構成する樹脂として実施例1と同様にPA12を採用するようにしている。
【0055】
(実施例3)
最内層4を構成する樹脂として、導電性を有するポリフェニレンサルファイド(以下、導電PPSという)を採用し、内層5を構成する樹脂として、実施例1と同様にPA12を採用し、中間層6を構成する樹脂として、実施例1と同様に非導電性EFEPを採用し、最外層7を構成する樹脂として実施例1と同様にPA12を採用するようにしている。この実施例3では、上記導電PPSとして、ポリフェニレンサルファイド(PPS)にカーボンブラックを、ポリフェニレンサルファイド100質量部に対して10質量部の割合で配合して分散させたものを使用している。
【0056】
(実施例4)
最内層4を構成する樹脂として、実施例1と同様に導電性EFEPを採用し、内層5を構成する樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とPA12とを混練溶融させたPBT/PA12アロイ樹脂を採用し、中間層6を構成する樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を採用し、最外層7を構成する樹脂としてPA12を採用するようにしている。尚、中間層6と最外層7との間には、両者の接着強度が不足しないようにPBT/PA12アロイ樹脂を0.05mmの厚みで設けるようにしている。
【0057】
(層厚さについて)
上記実施例1及び2では最内層4の厚みを0.10mm、内層5の厚みを0.20mmとし、中間層6の厚みを0.10mmとし、最外層7の厚みを0.60mmとした。
【0058】
上記実施例3では、最内層4の厚みを0.05mm、内層5の厚みを0.20mmとし、中間層6の厚みを0.1mmとし、最外層7の厚みを0.65mmとした。
【0059】
上記実施例4では、最内層4の厚みを0.10mm、内層5の厚みを0.20mmとし、中間層6の厚みを0.20mmとし、最外層7の厚みを0.45mmとした。
【0060】
(比較例について)
次に、比較例(表2参照)について具体的に説明する。比較例1の燃料チューブ1は、最内層に導電性がなく中間層が耐燃料透過性(バリア性)を有する従来のチューブ構成を有している。比較例2〜5はそれぞれ、実施例1〜4に対応する比較例であって、コネクタ3に対してチューブ本体2の最外層7のみを溶着するようにした点で、各実施例1〜4とは異なっている。この比較例2〜5で使用したコネクタ3は、図6に示すように、本実施形態に係るコネクタ3と同様に、テーパ面状の外周側壁面13と円筒面状の内周側壁面12とを有しているが、底壁面15を傾斜させていない。このため、比較例2〜5では、最外層7のみがコネクタ3(外周側壁面13)に溶接されている。各比較例2〜5において、各層4〜7の構成材料や厚みはそれぞれ実施例1〜4と同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0061】
比較例6〜9はそれぞれ、実施例1〜4に対応する比較例であって、コネクタ3に対してチューブ本体2を圧入により接続している点で、各実施例1〜4とは異なっている。各比較例2〜5において、各層4〜7の構成材料や厚みは実施例1〜4と同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0062】
(性能評価)
上記実施例及び比較例について以下に述べる各項目について評価した。評価結果は、表1及び表2に示されている。
(初期接着力)
初期接着力とは、各層4〜7の層間接着力のうち最も小さい値をいう。測定にあたっては、テストチューブを半割りにし、テンシロン万能試験機を用い、30mm/minの引張速度にて180°剥離試験を実施して剥離強度を読み取り、剥離断面長さ(幅)で除した値を初期接着力(初期層間接着力)とした。この初期接着力は、20N/cmよりも大きいことが好ましく、30N/cmよりも大きいとより好ましい。
(燃料封入20日後の接着力)
燃料封入20日後の接着力は、初期接着力と同じく、各層4〜7の層間接着力のうち最も小さい値をいう。測定にあたっては、テストチューブ内部に、FuelC(イソオクタン:トルエン=50:50体積比)とエタノ−ルとを90:10の体積比で混合したアルコ−ル/ガソリンを封入して60℃の温度に20日間保持した後、上記初期接着力試験と同じ方法で接着力を求めた。初期接着力と同様に、20N/cmよりも大きいことが好ましく、30N/cmよりも大きいとより好ましい。
(燃料透過量について)
両端部にコネクタ3を接続した長さ200mmのテストチューブ(内径6mm,肉厚1mm)を用いて以下の方法により燃料透過量V1〜V3を測定した。
【0063】
すなわち、テストチュ−ブに上記アルコ−ル/ガソリンを封入して全体の重量を測定し、次いで60℃のオ−ブンに入れ、一日毎に重量変化(a)を測定した。一方、上記アルコ−ル/ガソリンを封入していないテストチューブの重量変化(b)についても同様に測定した。この測定を20日間続けて、(a)−(b)により、一日あたりの燃料の重量変化を求めて燃料透過量V1(60°C,E10)とした。
【0064】
また、純エタノールを封入した場合についても同様に燃料の質量変化を算出し、それを燃料透過量V2(60°C,E100)とした。
【0065】
また、10〜30℃を12時間周期で一定の温度下降勾配で変化させたサイクル運転した場合についても同様に燃料の質量変化を算出し、それを燃料透過量V3(10℃〜30℃サイクル,E10)とした。
(チューブコネクタ引抜力)
コネクタ3を固定した状態でチューブ本体2をコネクタ3から引抜く方向に引張って、その引張り荷重を徐々に増加させていく試験を行った。そして、チューブ本体2がコネクタ3から抜ける瞬間の引張り荷重をチューブコネクタ引抜力とした。
【0066】
ここで、表1中の「チューブ切断」とあるのは、引っ張り荷重を増加させていったときにチューブ本体2がコネクタ3から抜けずに破断に至ったことを示している。このことは、換言すると、上記コネクタ3に対する上記チューブ本体2の引抜き方向の接合力が、上記チューブ本体2における該引抜き方向(長さ方向)の破断荷重よりも大きいことを意味している。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
これらの表1及び表2の試験結果より以下のことがわかる。すなわち、コネクタ3の接続方式を圧入方式とした比較例1及び比較例6を比べると、比較例6の方が燃料透過量V1及びV2が大きくなって耐燃料透過性の観点で不利であることがわかる。比較例6の方が比較例1に比べて中間層6の内周面とコネクタの圧入部の外周面との距離が大きい分だけ両者の間から漏出する揮発燃料が多くなるためと考えられる(図7(b)参照)。これに対して、比較例6と同じチューブ構成を有していてコネクタ3の接続方式のみが異なる比較例2(溶接方式を採用した例)では、比較例1よりも燃料透過量V1及びV2が小さくなって耐燃料透過性が改善されていることがわかる。このことから、コネクタ3にチューブ本体2を溶接することで、チューブ本体2とコネクタ3との接続部からの漏れを低減できることがわかる。
【0070】
また、最外層7及び内層5をコネクタ3に溶着させた実施例1〜4の方が、最外層7のみをコネクタ3に溶着させた比較例2〜5と比較して、燃料透過量V1〜V3(特に燃料透過量V3)が減少していることがわかる。具体的には、例えば実施例1では、比較例2と比べて、上記燃料透過量V3が1.3から0.7と約半分程度に減少していることがわかる。
【0071】
また、実施例1〜4では、コネクタ3の接続方式として圧入方式を採用した比較例6〜9に比べて、上記燃料透過量V1〜V3(特に燃料透過量V3)が格段に減少していることがわかる。具体的には、例えば実施例1では、比較例6と比べて、上記燃料透過量V3が5.8から0.7と約1/8に減少していることがわかる。これは、上述したように、圧入方式を採用した燃料チューブ1では、中間層6の内周面とコネクタ3の圧入部の外周面との距離が大きくなって、両者の間から揮発燃料が漏出するのに対し(図7(b)参照)、この実施例では、図7(a)に示すように、内層5及び底壁面15間の溶着部19と、最外層7及び外周側壁面13間の溶着部17との二つの溶着部によって燃料を遮断することができるためと考えられる。
【0072】
このように、上記実施形態及び上記実施例では、上記チューブ本体2の最内層4がコネクタ3(チューブ挿入溝部11の内周側壁面12)に溶着されなくても、内層5がコネクタ3の底壁面15に溶着されるため、燃料チューブ1の端部からの燃料漏れを確実に抑制することができる。したがって、最内層4を必ずしもコネクタ3との溶着性に優れた樹脂で構成する必要がなくなるため、最内層4に使用できる樹脂の選択範囲が広がって、最内層4を使用燃料に応じて耐燃料性に優れた樹脂で構成することができる。
【0073】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、チューブ挿入溝部11の底壁面15を該溝部11の開口側から奥側に向かって拡径するテーパ面状に形成するようにしているが、必ずしもテーパ面状に形成する必要はなく、例えば、図8に示すように、チューブ挿入溝部11内側に凸となる円弧面状に形成するようにしてもよいし、これとは逆側に凸となる円弧面状に形成するようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、テーパ面状の外周側壁面13をチューブ挿入溝部11の開口側から奥側までの全体に亘って形成するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、図9に示すように、テーパ面状の外周側壁面13をチューブ挿入溝部11の奥側端部にのみ形成するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、チューブ本体2をスピン溶接によりコネクタ3に接合するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、超音波溶接や振動溶接により接合するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、複数の層を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体の端部にコネクタを溶接接合してなる燃料チューブ、及び該コネクタに有用であり、特に、4つ以上の層からなる燃料チューブに有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 燃料チューブ
2 チューブ本体
3 コネクタ
4 最内層
5 内層(一の層)
6 中間層(バリア層)
7 最外層
11 チューブ挿入溝部(環状凹部)
12 内周側壁面
13 外周側壁面
14b バリ収容部
15 底壁面(奥側壁面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体の端部にコネクタを溶接接合して構成される燃料チューブであって、
上記コネクタは、上記チューブ本体の端部が挿入されて溶接される環状凹部を有し、
上記環状凹部は、該凹部の開口側から奥側に向かって径が小さくなる外周側壁面と、該外周側壁面の径方向内側に位置し、開口側から奥側に向かって径が略一定となる内周側壁面と、該内周側壁面における奥側の端部に接続され、開口側から奥側に向かって径が大きくなる奥側壁面とを有していることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項2】
請求項1記載の燃料チューブにおいて、
チューブ本体は、少なくとも三つの層からなるものであって、最外層が環状凹部の外周側壁面に溶接されるとともに、最内層と最外層との間の一の層が環状凹部の奥側壁面に溶接されるように構成されていることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項3】
請求項2記載の燃料チューブにおいて、
チューブ本体は、少なくとも四つの層からなるものであって、最外層と上記一の層との間に位置し且つ耐燃料透過性を有するバリア層を含むことを特徴とする燃料チューブ。
【請求項4】
請求項2又は3記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体の最外層及び上記一の層は、PA11又はPA12からなる燃料チューブ。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記コネクタは、上記最外層及び上記一の層を構成する樹脂と同じ樹脂からなることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体の最内層は、フッ素系樹脂からなる燃料チューブ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記環状凹部の奥側の端部には、上記外周側壁面と上記奥側壁面と上記チューブ本体の奥側の端面とに囲まれたバリ収容部が設けられていることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記コネクタに対する上記チューブ本体の引抜き方向の接合力は、上記チューブ本体における該引抜き方向の破断荷重よりも大きいことを特徴とする燃料チューブ。
【請求項9】
チューブの端部に溶接接合されるコネクタであって、
上記チューブの端部が挿入されて溶接される環状凹部を有し、
上記環状凹部は、該凹部の開口側から奥側に向かって径が小さくなる外周側壁面と、該外周側壁面の径方向内側に位置し、開口側から奥側に向かって径が略一定となる内周側壁面と、該内周側壁面における奥側の端部に接続され、開口側から奥側に向かって径が大きくなる奥側壁面とを有していることを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−197806(P2012−197806A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60642(P2011−60642)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】