説明

燃料ポンプ

【課題】フィルタ装置内で発生した気泡のポンプ装置の吸入部への流入を抑制し、ポンプ吐出流量の低下を抑制できる燃料ポンプを提供する。
【解決手段】燃料供給装置11は、電動ポンプ12と、電動ポンプ12が吸引する燃料を濾過するフィルタ装置40と、を備えている。フィルタ装置40は、装置40の外殻を形成するフィルタエレメント41と、弁装置60と、を備えている。フィルタエレメント41の内側には、フィルタエレメント41にて濾過された燃料を電動ポンプ12に導く燃料通路50と、燃料通路50を流れる燃料中に含まれる気泡が移動可能に燃料通路50と連通して気泡を溜める気泡溜め室51が形成される。弁装置60は、フィルタエレメント41の平坦部42bに設けられ、気泡溜め室51内に気泡が溜まることにより気泡溜め室51とフィルタ装置40の外側とを連通し、気泡を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(以下、単にエンジンという)へ燃料を供給する燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
吸入部から燃料を吸入する燃料吸引力を発生し、当該吸入部から吸入した燃料を吐出部より吐出するポンプ装置と、このポンプ装置の吸入部に接続され、ポンプ装置が吸入する燃料を濾過するフィルタ装置と、を備える燃料ポンプが知られている。
【0003】
一般に、ポンプ装置が吸入部より吸入する燃料中に気泡が混入していると、ポンプ装置は少なくとも気泡の体積分の燃料を吐き出すことができなくなり、気泡が混入していない燃料を吸入する場合に比べ、ポンプ装置のポンプ吐出流量が低下してしまう。そこで、ポンプ装置への気泡が混入した燃料の流入を防止すべく、種々の構成が開示されている(特許文献1および2を参照)。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポンプ装置が吸入する燃料を濾過する袋状に形成された吸入フィルタの上面側に、ポンプ装置が吐き出した燃料の圧力を調整する調圧弁から排出された燃料が流入する膨張室を設けた装置が開示されている。この装置では、この膨張室に流入した燃料中に含まれる気泡を分離し、分離された燃料を吸入フィルタ内に流入させることにより、ポンプ装置作動時の吸入フィルタ内における負圧の状態を緩和する。この負圧の緩和作用により、吸入フィルタ内での気泡の発生を抑制することができる。
【0005】
一方、特許文献2には、ポンプ装置が吸入する燃料を濾過するメッシュフィルタにて形成されたフィルタ本体の上面側に、当該メッシュフィルタを隔壁とするリターン燃料室を設け、リターン燃料をリターン燃料室に導入する構造が開示されている。この構造では、リターン燃料中に含まれる気泡をリターン燃料室にて分離し、上記隔壁を通じてリターン燃料のみをフィルタ本体内に流入させ、その流入した燃料を再びポンプ装置に吸入させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−29317号公報
【特許文献2】特開平7−180632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置では、吸入フィルタ内の負圧を緩和できるため、ある程度までは気泡の発生を抑制することができるが、例えば、ガソリン燃料中に含まれる比較的沸点の低いアルコール燃料の含有量や、燃料温度によっては、気泡が発生することがある。そして、不織布などにより形成されているフィルタエレメントを吸入フィルタに使用すると、燃料が当該フィルタに浸み込んだ場合、吸入フィルタの表面上に燃料液膜が形成され、燃料の通過は許容するももの気泡の通過が実質的に妨げられてしまう。したがって、吸入フィルタ内で発生した気泡は、当該フィルタの外側に排出されず当該フィルタ内に止まってしまうこととなる。
【0008】
よって、発生した気泡は、当該フィルタ内のポンプ装置の吸入部に向う燃料流れに乗り、ポンプ装置の内部に流入してしまう。その結果、ポンプ装置のポンプ吐出流量が低下してしまう。
【0009】
また、特許文献2に開示されている構造では、リターン燃料中に含まれる気泡を分離することはできても、ポンプ装置が作動することによりフィルタ本体内で発生した気泡は、前述した理由により、リターン燃料室との間に設けられている隔壁を通過することができず、フィルタ本体内に止まってしまう。
【0010】
よって、発生した気泡がフィルタ本体内に止まってしまうと、その気泡は、フィルタ本体内のポンプ装置の吸入部に向う燃料流れに乗り、ポンプ装置の内部に流入してしまう。その結果、ポンプ吐出流量が低下してしまう。
【0011】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、フィルタ装置内で発生した気泡のポンプ装置の吸入部への流入を抑制し、ポンプ吐出流量の低下を抑制できる燃料ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、吸入部から燃料を吸入する燃料吸引力を発生し、当該吸入部から吸入した燃料を吐出部より吐出するポンプ装置と、吸入部に接続されポンプ装置が吸入する燃料を濾過するフィルタ装置とを備える燃料ポンプにおいて、
フィルタ装置は、フィルタ装置の外殻をなす外殻壁であって、ポンプ装置が吸入する燃料を濾過する膜状のフィルタエレメントを少なくとも一部に有し、フィルタエレメントにて濾過された燃料をポンプ装置の吸入部に導く燃料通路、および燃料通路の上方において、燃料通路を流れる燃料中に含まれる気泡が移動可能に燃料通路と連通して気泡を溜める気泡溜め室のそれぞれを内側に形成する外殻壁と、外殻壁に設けられ、気泡溜め室内に気泡が溜まることにより気泡溜め室と外殻壁の外側とを連通する弁装置と、を備えることを特徴としている。
【0013】
この発明では、ポンプ装置の吸入部にフィルタ装置が接続されているため、フィルタ装置の内側の燃料圧力は、ポンプ装置が作動することにより発生する燃料吸引力により、フィルタ装置の外側の燃料圧力よりも低下する。外殻壁の少なくとも一部は、燃料を濾過する膜状のフィルタエレメントとなっているため、フィルタ装置の外側の燃料はこのフィルタエレメントを通過して燃料通路に流入する。燃料通路には、ポンプ装置が作動している場合、ポンプ装置の吸入部に向う流れが形成される。燃料通路に流入した燃料は、その燃料流れに乗り、ポンプ装置の吸入部に流入する。
【0014】
しかしながら、フィルタ装置の内側の燃料圧力は外側の燃料圧力よりも低くなっているため、燃料がフィルタエレメントを通過し、濾過される際、その濾過燃料に気泡が発生することがある。以下、フィルタエレメントを通過し濾過された燃料を濾過燃料という。この発明では、外殻壁は、燃料通路の上方において、燃料通路を流れる燃料中に含まれる気泡が移動可能に燃料通路と連通して当該気泡を溜める気泡溜め室を内側に形成する。この構成によれば、濾過燃料に気泡が発生したとしても、その気泡は浮力により上方に浮上し、気泡溜め室に溜まる。すなわち、この構成によれば、濾過燃料中に含まれる気泡をフィルタ装置内で濾過燃料から分離させることができる。
【0015】
このように、このフィルタ装置は、装置内で発生した気泡を気泡溜め室に溜めることで、濾過燃料と気泡とを分離する。よって、フィルタ装置内で発生した気泡のポンプ装置の吸入部への流入を抑制することができ、ひいてはポンプ吐出流量の低下を抑制することができる。
【0016】
ところが、気泡溜め室は、気泡が移動可能となるように燃料通路と連通しているため、例えば、発生する気泡の量が気泡溜め室の気泡収容能力を超えると、気泡溜め室より気泡が溢れ、燃料通路に流出するおそれがある。
【0017】
これに対し、この発明では、気泡溜め室に気泡が溜まることにより、気泡溜め室とフィルタ装置の外側とを連通し、溜まった気泡を気泡溜め室より排出する弁装置が、外殻壁における気泡溜め室を形成する部位に設けられている。この構成によれば、気泡溜め室に気泡が溜まると、溜まった気泡は、弁装置を介してフィルタ装置の外側に排出される。これによれば、気泡溜め室より気泡が溢れ、分離させた気泡が燃料通路に流出してしまうという問題の発生を抑制でき、ポンプ吐出流量の低下を抑制する効果を長期に亘り発揮できる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、フィルタエレメントは、燃料が浸み込むことにより、表面に燃料液膜を形成して、燃料を通過を許容するとともに、実質的に気泡の通過を妨げることを特徴としている。
【0019】
フィルタエレメントとして、上述したような性質を有するフィルタエレメントを使用すると、フィルタ装置内において発生した気泡は、フィルタエレメントを通じて外側へ排出されなくなる。気泡溜め室の気泡収容能力を超えると燃料通路に気泡が流入するおそれがある。しかしながら、フィルタ装置は気泡溜め室と外側とを連通する弁装置を有しているため、気泡収容能力を超える前に気泡をフィルタ装置の外側に排出することが可能となる。したがって、上述したような性質を有するフィルタエレメントであっても、ポンプ装置に気泡が流入することによるポンプ吐出流量の低下を抑制する効果を長期に亘り発揮できる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、外殻壁の上部に、弁装置に向かうほど上方に傾斜する傾斜部を有することを特徴としている。気泡は、浮力の働きにより上方に浮上しようとする。この発明では、外殻壁の上部に、弁装置に向うほど上方に傾斜する傾斜部を有しているため、気泡は浮力により傾斜部に沿って弁装置に向って移動することとなる。この構成によれば、気泡を弁装置の周囲に確実に誘導することができ、誘導した気泡を速やかにフィルタ装置の外側に排出することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、傾斜部は、フィルタエレメントにより形成されていることを特徴としている。この発明では、外殻壁の傾斜部はフィルタエレメントにより形成されているため、フィルタエレメントを通過した燃料は気泡溜め室よりも下方に流入することとなる。このように燃料が気泡溜め室よりも下方に流入するため、気泡溜め室に溜まっている気泡は、この流入した燃料からの圧力を受け、弁装置より効果的にフィルタ装置の外側に排出される。
【0022】
請求項5に記載の発明は、傾斜部は、吸入部から離れるほど上方に傾斜していることを特徴としている。この発明によれば、気泡が浮力により傾斜部に沿って移動すると、気泡はポンプ装置の吸入部から遠ざかることとなる。このため、吸入部への気泡の流入を抑制する効果が高くなる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、弁装置は、外殻壁の上部の最も高い位置に設けられており、傾斜部は、弁装置に向うほど上方に傾斜していることを特徴としている。弁装置が外殻壁の上部の最も高い位置に設けられている場合、外殻壁が、その上部に弁装置に向うほど上方に傾斜する傾斜部を有していると、外殻壁の上部に溜まった気泡は、浮力により傾斜部に沿って弁装置に向うこととなる。これによれば、フィルタ装置内で発生した気泡を弁装置の周囲に確実に誘導することができ、誘導した気泡を速やかにフィルタ装置の外側に排出することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、弁装置は、フィルタ装置の外側に面する表面上に形成される弁座、および弁座の内周側に形成され、気泡溜め室とフィルタ装置の外側とを連通する連通孔を有し、外殻壁に設けられる弁座部材と、当該表面側に配置され、気泡溜め室内の気泡に押され、弁座より離座し、気泡溜め室からフィルタ装置の外側への気泡の排出を許容し、気泡溜め室内の気泡の量の低下により、弁座に着座し、フィルタ装置の外側から内側への燃料の流入を妨げる弁部材と、を備えることを特徴としている。
【0025】
この発明では、弁部材が、弁座を有する弁座部材のフィルタ装置の外側に配置され、弁座部材に形成されている連通孔が弁座の内周側に形成されているため、弁部材は、フィルタ装置の内側より外側に向って流出しようとする気泡に押され弁座より離座する。このため、気泡溜め室内の気泡はフィルタ装置の外側へ排出される。また、反対に、気泡溜め室内の気泡の量が低下すると、弁部材は弁座に着座する。このため、フィルタ装置の外側の燃料が連通孔を介して内側に流入しようとしてもフィルタ装置の内側への燃料の流入が妨げられることとなる。
【0026】
以上説明したように、この発明の構造によれば、気泡溜め室に溜まった気泡はフィルタ装置の外側に排出することができるので、溜まった気泡が再び燃料通路に流出してしまうことを抑制できる。また、フィルタ装置の外側から内側への燃料の流入を妨げることができるので、確実にフィルタエレメントにて濾過された燃料をポンプ装置に流入させることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、燃料通路は、第一燃料通路、および第一燃料通路とポンプ装置の吸入部とを連通する第二燃料通路からなっており、外殻壁は、内側において第一燃料通路を形成するフィルタエレメントと、流体の通過を禁止する材料からなり、内側において第二燃料通路、および第二燃料通路の上方において連通する気泡溜め室を形成するタンク壁とよりなっており、フィルタエレメントは、第一燃料通路と第二燃料通路とが連通するようにタンク壁の下端に設けられ、弁装置は、タンク壁における気泡溜め室を形成する部位に設けられていることを特徴としている。
【0028】
この発明では、内側に第一燃料通路を形成するフィルタエレメントは、当該第一燃料通路と、タンク壁が形成する第二燃料通路とが連通するようにタンク壁の下端に設けられている。このため、ポンプ装置が作動することにより発生する燃料吸引力により、フィルタ装置の外側の燃料がフィルタエレメントを通過し、第一燃料通路に流入する。そして、第一燃料通路に流入した燃料は、連通している第二燃料通路を通り、ポンプ装置の吸入部に流入する。燃料がフィルタエレメントを通過する際に発生した気泡は、第一燃料通路を通り、第二燃料通路に流入する。
【0029】
第二燃料通路に流入した気泡は、浮力により、第二燃料通路の上方に設けられている気泡溜まり室に溜まる。気泡溜まり室は、流体(燃料および気泡)の通過を禁止するタンク壁の内側に形成されているため、溜まった気泡タンク壁を介して外側には排出できない。したがって、気泡はタンク壁に設けられている弁装置より排出される。
【0030】
このように、フィルタ装置の外殻壁がフィルタエレメントとタンク壁からなっている場合であっても、フィルタ装置内で濾過燃料から気泡を分離することができ、ポンプ装置の吸入部への気泡の流入を抑制することができる。また、この効果を長期に亘り発揮できる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、弁装置は、フィルタ装置の外側に面する表面上に形成される弁座、および弁座の内周側に形成され、気泡溜め室とフィルタ装置の外側とを連通する連通孔を有し、タンク壁に設けられる弁座部材と、当該表面側に配置され、気泡溜め室内の気泡に押され、弁座より離座し、気泡溜め室からフィルタ装置の外側への気泡の排出を許容し、気泡溜め室内の気泡の量の低下により、弁座に着座し、フィルタ装置の外側から内側への燃料の流入を妨げる弁部材と、を備えることを特徴としている。
【0032】
この発明では、弁部材が、弁座を有する弁座部材のフィルタ装置の外側に配置され、弁座部材に形成されている連通孔が弁座の内周側に形成されている。この構成によれば、弁部材は、フィルタ装置の内側より外側に向って流出しようとする気泡に押され弁座より離座する。このため、気泡溜め室内の気泡はフィルタ装置の外側へ排出される。また、反対に、気泡溜め室内の気泡の量が低下すると、弁部材は弁座に着座する。このため、フィルタ装置の外側の燃料が連通孔を介して内側に流入しようとしても、フィルタ装置の内側への燃料の流入が妨げられることとなる。
【0033】
このように弁装置は作用するため、フィルタ装置の周囲の燃料の液位がタンク壁の内側の燃料の液位よりも下回っても、タンク壁の内側に燃料を蓄えておくことができる。この蓄積機能は、ポンプ装置が非作動中であっても機能する。
【0034】
請求項10に記載の発明は、第一燃料通路と第二燃料通路との間に設けられ、一方の端部が第一燃料通路に開口し、他方の端部が第二燃料通路に開口する通路を形成するスロート部と、通路内に設置され、第二燃料通路への開口部位に向けて燃料を噴出する噴出部と、を有する補助ジェットポンプを備えることを特徴としている。
【0035】
この発明では、噴出部は第二燃料通路への開口部位に向けて燃料を噴出するようにスロート部の通路内に設置されているので、噴出部から燃料が噴出されると、噴出部の周囲の燃料圧力が低下し、第一燃料通路内の燃料を吸い込む燃料吸引力が補助ジェットポンプに発生する。
【0036】
この燃料吸引力によれば、第一燃料通路内の燃料がスロート部の通路に流入することとなるため、第一燃料通路の燃料圧力が低下する。これにより、フィルタ装置の外側の燃料がフィルタエレメントを通過し、第一燃料通路に流入する。一方、スロート部の通路に流入した燃料は、噴出部から噴出される噴出燃料とともに、第二燃料通路に流入する。
【0037】
以上説明したように、この発明の補助ジェットポンプによれば、噴出部から燃料を噴出することにより発生する燃料吸引力を利用して、強制的に第一燃料通路の燃料を第二燃料通路に供給することができる。このため、タンク壁の内側を燃料で満たすことが可能となる。
【0038】
よって、上述したようにフィルタ装置周囲の液位が低くなっても、タンク壁内側の液位をフィルタ装置周囲の液位以上に保っておくことが可能となる。また、補助ジェットポンプは強制的に第二燃料通路に燃料を吐き出すものであるため、弁装置を介して気泡溜め室に溜められた気泡を強制的に、かつ速やかにフィルタ装置の外側に排出することもできる。
【0039】
請求項11に記載の発明は、フィルタ装置の内側には、外殻壁の内側の面を支える骨格部が設置されていることを特徴としている。
【0040】
一般に、膜状に形成されているフィルタエレメントは、装置の外殻壁として使用するには機械的強度が弱いため、フィルタ装置の外殻を維持するのが困難である。
【0041】
この発明によれば、フィルタ装置の内側に、外殻壁の内側の面を支える骨格部が設置されているので、何らかの外力が外殻壁に加わったとしても、形状を維持することができる。このため、フィルタ装置の内側に形成されている燃料通路および気泡溜め室の形状を維持することができる。
【0042】
請求項12に記載の発明は、ポンプ装置は、吸入部から燃料を吸入する燃料吸引力を電動機の作動により発生し、吸入部より吸入した燃料を加圧して吐出部より吐出する電動ポンプであることを特徴としている。
【0043】
電動機の作動により発生した燃料吸引力により吸入部から吸入した燃料を加圧して吐出部より吐出する電動ポンプでは、吸入部から吸入する燃料に気泡が混入していると、電動ポンプから吐き出されるポンプ吐出流量が少なくとも気泡分だけ減ってしまう。
【0044】
この発明では、請求項1から11のいずれか一項に記載の特徴を有するフィルタ装置に接続されるポンプ装置が電動機の駆動により吸入部から吸入した燃料を加圧して吐出部より吐出する電動ポンプであるため、気泡がポンプ内部に流入してしまうことによる、ポンプ吐出流量の低下を効果的に抑制することができる。
【0045】
また、請求項13に記載の発明は、ポンプ装置は、吸入部および、吐出部を有する通路を形成するスロート部と、通路内に設置され、吐出部に向けて燃料を噴出する噴出部と、を有し、吸入部から燃料を吸入する燃料吸引力を噴出部からの燃料の噴出により発生し、吸入部より吸入した燃料を吐出部より吐出するジェットポンプであることを特徴としている。
【0046】
吸入部および吐出部を有する通路を形成するスロート部と、通路内に設置され、吐出部に向けて燃料を噴出する噴出部と、備えるジェットポンプでは、噴出部より燃料を噴出することにより、噴出部の周囲の圧力が低下し、吸入部より燃料を吸引させる燃料吸引力が発生する。このジェットポンプは、噴出部から噴出される燃料とともに吸入部より吸入した燃料を吐出部より吐出する。仮に、吸入する燃料に気泡が混入していると、噴出部の周囲の圧力を十分に低下させることができず、燃料吸引力が低下する。このため、ジェットポンプのポンプ吐出流量が低下してしまう。
【0047】
この発明では、請求項1から11のいずれか一項に記載の特徴を有するフィルタ装置に接続されるポンプ装置が上述したようなジェットポンプであるため、気泡が通路内部に流入してしまうことによる、ポンプ吐出流量の低下を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料供給装置を備える燃料供給システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す燃料供給装置の構造を示す断面図である。
【図3】第2実施形態による燃料供給装置の構造を示す断面図である。
【図4】図3に示す燃料供給装置のIV方向の矢視図である。
【図5】第2実施形態の変形例による燃料供給装置のフィルタ装置の要部を拡大した断面図である。
【図6】第3実施形態による燃料供給装置の構造を示す断面図である。
【図7】第3実施形態の変形例による燃料供給装置の構造を示す断面図である。
【図8】第4実施形態による汲上燃料ポンプを備える燃料供給装置の構造を示す断面図である。
【図9】第4実施形態の変形例による汲上燃料ポンプを備える燃料供給装置の構造を示す断面図である。
【図10】第5実施形態による移送燃料ポンプを備える燃料供給システムの概略構成を示す図である。
【図11】図10に示す移送燃料ポンプの構造を示す断面図である。
【図12】第5実施形態の変形例による移送燃料ポンプを備える燃料供給システムの概略構成を示す図である。
【図13】図12に示す移送燃料ポンプの移送用ジェットポンプを拡大した断面図である。
【図14】図12に示す移送燃料ポンプのフィルタ装置を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0050】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態による燃料供給装置11を備えている燃料供給システム10の概略構成を示している。
【0051】
燃料供給システム10は、燃料タンク24の内部の燃料を外部のエンジンに供給する。本実施形態の燃料供給システム10は、エンジン30にて消費されない余剰燃料を燃料タンク24の内部で処理するようにして、エンジン30から当該余剰燃料を戻さないように構成された、所謂リターン燃料供給システムである。燃料供給システム10は、燃料供給装置11、圧力調整装置22および燃料供給管23などから構成されている。
【0052】
次に、図2を用いて燃料供給装置11および圧力調整装置22を説明する。図2は、燃料供給装置11の縦断面を示している。燃料供給装置11、圧力調整装置22および燃料供給管23の一部は、燃料タンク24の内部に設置されている。燃料供給装置11は、燃料タンク24の底部25側に設けられ当該底部25に向って開口する吸入口20から燃料タンク24の内部の燃料を吸入し、吸入した燃料を加圧して、当該底部25と反対側に設けられ燃料タンク24の天井部26に向って開口する吐出口21より加圧した燃料を圧力調整装置22に向けて吐き出す。吐出口21は、燃料タンク24の底部25とは反対側に設けられた燃料タンク24の天井部26に向って開口している。また、吐出口21には、エンジン30に通じる燃料供給管23が接続されている。
【0053】
圧力調整装置22は、燃料供給管23の途中に設けられており、燃料供給装置11が吐出した燃料圧力を調整し、エンジン30に向けて吐き出す。この実施形態における圧力調整装置22は、吐出燃料の圧力を調整する際に発生するエンジン30に向けて吐き出された燃料から分流される余剰燃料と呼ばれる燃料をそのまま燃料タンク24に排出するように構成されている。
【0054】
燃料供給装置11は、電動ポンプ12およびフィルタ装置40などから構成されている。電動ポンプ12は、電動機13およびポンプ部16などから構成されており、筒状のハウジング19内に収容されている。
【0055】
電動機13は、図示しないバッテリからの電力の供給により駆動する直流モータであり、ポンプ部16を駆動する。電動機13は、電力が供給されることにより回転するロータ14およびロータとともに回転するシャフト15を備えている。本実施形態では、電動機13は、ロータ14およびシャフト15の回転軸が燃料タンク24の天地方向に沿うように燃料タンク24内に設置されている。
【0056】
ポンプ部16は、インペラを備えるウエスコ式のポンプであって、電動機13の燃料タンク24底部25側の軸方向端部に設けられている。ポンプ部16は、円盤状のインペラを回転駆動可能に収容するポンプハウジング17を有している。インペラは、外周縁の回転軸方向両側に複数の羽根溝が周方向に並んで設けられている。ポンプハウジング17は、インペラを回転駆動可能に収容するとともに、羽根溝を回転軸方向両側から覆う円弧状の昇圧流路、および昇圧流路に通じる吸入口20およびポンプ部吐出口18を形成している。
【0057】
図2に示すように、吸入口20は昇圧流路の始端側に通じるように、ポンプハウジング17の燃料タンク24の底部25側の端面に設けられ、ポンプ部吐出口18は昇圧流路の終端側に通じるように、ポンプハウジング17の吸入口20が設けられている側とは反対側のもう一方の端面に設けられている。
【0058】
この構成により、電動機13にてインペラが回転駆動されると、ポンプ部16に燃料吸引力が発生する。このため、吸入口20の周囲の燃料は、吸入口20を通じて昇圧流路の始端側に流入する。昇圧流路に流入した燃料は、昇圧流路の終端側に向うにしたがい圧力が高められ、ポンプ部吐出口18より吐き出される。ポンプ部吐出口18より吐き出された燃料は、ハウジング19における電動機13が収容されている空間に流入し、ハウジング19のポンプ部16とは反対側の端部に設けられている吐出口21より吐き出される。上記説明はインペラ式ポンプの説明であるが、インペラの代わりにトロコイドギヤで構成するトロコイドポンプでも構わない。
【0059】
なお、本実施形態では、電動ポンプ12およびフィルタ装置40から構成される燃料供給装置11が特許請求の範囲に記載の燃料ポンプに相当し、電動ポンプ12が特許請求の範囲に記載のポンプ装置に相当する。また、本実施形態では、吸入口20が特許請求の範囲に記載の吸入部に相当し、吐出口21が特許請求の範囲に記載の吐出部に相当する。
【0060】
フィルタ装置40は、電動ポンプ12が吸入口20より吸入する燃料中の異物を捕捉するものであって、吸入口20に接続されている。フィルタ装置40は、フィルタエレメント41、接続部46、フィルタフレーム52および弁装置60などから構成されている。図2に示すように、フィルタエレメント41は、樹脂製の繊維からなる膜状の不織布からなり、燃料タンク24の底部25に沿った方向に延びるよう扁平に、かつ袋状に形成したものであり、燃料を通過させることにより、燃料中の異物を捕捉する。
【0061】
なお、本実施形態のフィルタエレメント41は、燃料に浸み込むなどして燃料を含んでいると、フィルタエレメント41の表面に燃料による燃料液膜が形成される。この燃料液膜がフィルタエレメント41の表面に形成されると、燃料は、フィルタエレメント41を通過するものの、空気などの気泡は、通過が妨げられてしまう。
【0062】
フィルタエレメント41は、燃料タンク24の天井部26側に配置される上部エレメント42および燃料タンク24の底部25側に配置される下部エレメント44からなっている。フィルタエレメント41は、これら二枚の膜状に形成された各エレメント42、44を重ね合わせ、それぞれの外周縁部を加熱して、溶着することにより袋状に形成される。
【0063】
上部エレメント42は、燃料タンク24の天井部26に向って突き出るような形状となっており、電動ポンプ12側の部位に、フィルタ装置40の内側と外側とを連通する部品であり電動ポンプ12の吸入口20に接続される接続部46が設けられている。そして、上部エレメント42は、接続部46から電動ポンプ12より離れるにしたがい天井部26に向って上方に傾斜する傾斜部42aを有している。さらに、上部エレメント42は、傾斜部42aの電動ポンプ12とは反対側に接続され後述する弁装置60が設けられる平坦部42bを有している。下部エレメント44は、燃料タンク24の底部25に向って突き出るような有底筒状となっている。このようにして二つの部材が組み合わされ、袋状に形成されたフィルタエレメント41の内側には、燃料通路50と気泡溜め室51が形成される。
【0064】
燃料通路50は、フィルタエレメント41を通過して濾過された燃料を電動ポンプ12の吸入口20に導く通路であり、下部エレメント44側に形成される。気泡溜め室51は、燃料通路50を流れる濾過燃料中に含まれる気泡を溜めるための領域であって、燃料通路50の上方において、当該気泡が移動可能に燃料通路50と連通している。本実施形態では、上部エレメント42が有する傾斜部42aおよび平坦部42bにて気泡溜め室51の一部を形成している。
【0065】
ここで、濾過燃料中に含まれる気泡について説明する。例えば、ガソリン燃料にアルコール燃料が含まれている燃料の蒸気圧曲線は、アルコール燃料の含有量によってはガソリン燃料の蒸気圧曲線よりも大きくなっており、ある温度に対する蒸気圧は、ガソリン燃料よりもアルコール燃料をある程度含んだ燃料の方が高くなる。また、燃料の温度が高くなればなるほど蒸気圧は高くなる。上述したように電動ポンプ12が作動すると電動ポンプ12に燃料吸引力が発生するため、フィルタ装置40の内側における燃料圧力が外側の燃料圧力に比べ、低下する。これにより、当該外側に存在する燃料がフィルタエレメント41を通過する。ところが、上述したように、フィルタ装置40内側の燃料圧力は、外側の燃料圧力に比べ低下するため、内側の燃料圧力またはその時の燃料温度によっては、内側の燃料圧力が使用燃料の蒸気圧を下回ると、フィルタエレメント41を通過することにより濾過された濾過燃料中に気泡が発生する。
【0066】
燃料通路50および気泡溜め室51には、樹脂製のフィルタフレーム52が設けられている。フィルタエレメント41は不織布からなっているため、機械的強度が比較的弱い。このため、本実施形態のようにフィルタ装置40の外殻をフィルタエレメント41にて構成すると、外力が加わった場合、フィルタエレメント41の形状を維持することが困難となる。フィルタ装置40の内側に形成されている燃料通路50および気泡溜め室51の形状維持が困難となる。
【0067】
本実施形態では、フィルタ装置40の内側にフィルタフレーム52が設置されているため、フィルタエレメント41の内側の面を支えることができ、その形状を維持することができる。したがって、電動ポンプ12の燃料吸引力により、フィルタ装置40の内側の燃料圧力が外側の燃料圧力よりも低くなり、フィルタエレメント41に内側に向う方向の力が作用したとしても、フィルタエレメント41の形状を維持することができ、ひいては燃料通路50および気泡溜め室51の形状も維持することができる。また、フィルタフレーム52によれば、このようにフィルタエレメント41の形状を維持することができるので、フィルタ装置40の外殻のほとんどをフィルタエレメント41とすることができる。つまり、フィルタ装置40の濾過面積を大きくすることができる。
【0068】
弁装置60は、平坦部42bに設置されている。弁装置60は、気泡溜め室51とフィルタ装置40の外側とを連通し、気泡溜め室51に溜まった気泡を外側に排出する装置である。
【0069】
弁装置60は、弁座部材61および弁部材62から構成されている。弁座部材61は、円盤状に形成された樹脂製の部品であり、平坦部42bに形成されている開口部に設けられている。弁座部材61は、弁部材62が着座する環状の弁座61aと、気泡溜め室51とフィルタ装置40の外側とを連通する連通孔61bとを有する。弁座61aは弁座部材61におけるフィルタ装置40の外側に面する表面61cに形成されており、連通孔61bは弁座61aよりも内周側に形成されている。
【0070】
弁部材62は、可撓性を有する材料より形成されており、連通孔61bを開閉する。弁部材62は、フィルタ装置40の外側に配置される傘部62aと、傘部62aを弁座部材61に固定する軸部62bとを有する。図2に示すように、傘部62aは、その外周縁部が弁座61aに着座するように構成されている。また、軸部62bは、傘部62aの中心より弁座部材61に向って延び、弁座部材61に固定されている。
【0071】
このように構成されている弁装置60では、気泡溜め室51に気泡が溜まった場合、気泡は連通孔61bを通じて、傘部62aの内側の面と弁座部材61の外側の面にて形成される空間に流入する。そして、気泡溜め室51に溜まる気泡の量が所定量を超えると、気泡は、浮力により、傘部62aの外周縁部が弁座61aから離座する方向に傘部62aを押し上げ、傘部62aを弁座61aから離座させ、フィルタ装置40の外側に流出する(図2中の一点鎖線を参照)。なお、気泡溜め室51内の気泡は、フィルタエレメント41を通過して流入する燃料に押されて弁装置60より排出される場合もある。
【0072】
気泡溜め室51内の気泡の量が低下すると、気泡が傘部62aを押し上げる力が弱くなるため、傘部62aは元の状態、つまり弁座61aに着座する形状に戻ろうとする。これにより、傘部62aは弁座61aに着座し、フィルタ装置40の内側と外側との連通が遮断される。したがって、フィルタ装置40の内側よりも外側の燃料圧力が高く、フィルタ装置40の外側の燃料が弁装置60を通過して内側に流入しようとしても、燃料圧力差により、傘部62aには傘部62aが弁座61aに着座する方向の力が作用することとなるため、弁装置60の閉弁状態が維持される。これにより、フィルタ装置40の外側の燃料は、弁装置60を介して内側に流入しない。
【0073】
つまり、この弁装置60によれば、気泡溜め室51からフィルタ装置40の外側への気泡の排出を許容し、フィルタ装置40の外側から気泡溜め室51への燃料の流入を妨げることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、フィルタエレメント41がフィルタ装置40の外殻を形成する特許請求の範囲に記載の外殻壁に相当する。本実施形態では、フィルタ装置40の外殻を形成する外殻壁を全てフィルタエレメント41にて形成する例を示している。また、フィルタフレーム52が特許請求の範囲に記載の骨格部に相当する。
【0075】
フィルタエレメント41はフィルタ装置40の外殻の一部となっていればよい。少なくとも一部にフィルタエレメント41を有していれば、フィルタ装置40としての機能を発揮させることは可能である。好ましくは、本実施形態のように全体をフィルタエレメント41にて形成するのが良い。フィルタ装置40の大きさは限られており、フィルタ装置40の外殻壁をフィルタエレメント41とすることで濾過面積を極力大きくすることができるからである。
【0076】
次に、燃料供給装置11の作動について説明する。燃料供給装置11において、電動ポンプ12が作動すると、電動ポンプ12に燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、フィルタ装置40の内側の燃料圧力が外側の燃料圧力より低下するため、燃料タンク24内におけるフィルタ装置40の外側の燃料が、フィルタエレメント41を通過し、燃料通路50に流入する。燃料通路50に流入した燃料は、吸入口20からポンプ部16内に流入する。ポンプ部16内に流入した燃料は、ポンプ部16内にて圧力が高められポンプ部吐出口18より吐き出され、ハウジング19の電動機13が収容されている空間に流入し、その後、電動ポンプ12の吐出口21より吐き出される。そして、吐出口21より吐き出された燃料は、圧力調整装置22にて圧力が調整され、燃料供給管23を経て燃料タンク24外のエンジン30に供給される。
【0077】
燃料吸引力により、フィルタ装置40の内側の燃料圧力が外側の燃料圧力よりも低下するため、燃料がフィルタエレメント41を通過する際、濾過燃料に気泡が発生する。発生した気泡は、フィルタ装置40の内側において、浮力により、燃料通路50の上方に形成されている気泡溜め室51に向って移動し、気泡溜め室51に溜まる。これにより、燃料通路50に流入した濾過燃料より、気泡が分離される。
【0078】
また、図2に示すように接続部46付近で発生した気泡は、傾斜部42aに沿い、弁装置60に向って移動し、弁装置60に誘導される。この傾斜部42aによれば、気泡を確実に弁装置60に誘導することができる。
【0079】
また、本実施形態では、傾斜部42aは接続部46から離れるほど上方に傾斜しているため、気泡が傾斜部42aに沿って移動すると、気泡は接続部46から遠ざかることとなる。これによれば、極力気泡を接続部46から遠ざけることができるので、吸入口20への気泡の流入防止効果を高めることができる。
【0080】
気泡が分離された濾過燃料は、図2中の白抜き矢印で示すように、電動ポンプ12が発生する燃料吸引力により形成される燃料流れに乗り吸入口20に向って流れ、電動ポンプ12内部に流入する。
【0081】
電動ポンプ12が吸入する濾過燃料中に気泡が混入していると、少なくとも気泡の体積分の燃料を吐き出すことができなくなり、気泡が混入していない場合に比べポンプ吐出流量が低下してしまう。本実施形態のフィルタ装置40によれば、濾過燃料中に含まれる気泡をフィルタ装置40内で濾過燃料から分離することができるので、電動ポンプ12の吸入口20への気泡の流入を抑制することができ、電動ポンプ12のポンプ吐出流量の低下を抑制することができる。
【0082】
気泡が混入した燃料を電動ポンプ12に流入させる場合では、流入させない場合に比べ、電動ポンプ12のポンプ吐出流量が低下する。必要なポンプ吐出流量を得るには、電動ポンプ12へ供給する電力を高め、インペラをより高速回転させることが必要となる。このため、電動ポンプ12の消費電力が多くなり車両の省電力化を妨げてしまう。
【0083】
これに対し、本実施形態のフィルタ装置40によれば、電動ポンプ12のポンプ吐出流量の低下を抑制することができるので、少ない電力にて必要なポンプ吐出流量を確保することができ、車両の省電力化に貢献できる。また、電動ポンプ12の消費電力を少なくすることができるので、より小型の電動ポンプを採用することができる。
【0084】
ところが、気泡溜め室51が、気泡が移動可能となるように燃料通路50と連通しており、フィルタエレメント41に燃料液膜が形成されている状態では気泡はフィルタエレメント41を通過できないため、気泡溜め室51に溜められる気泡の量は気泡の発生とともに増加する一方である。
【0085】
発生する気泡の量が気泡溜め室51の気泡収容能力を超えると、気泡溜め室51より気泡が溢れ、燃料通路50に流入するおそれがある。具体的には、気泡の量が図中に示す破線の位置である上部エレメント42の接続部46と弁装置60との間における最も低い位置を下回ると、分離させた気泡が燃料通路50に流入してしまう。
【0086】
本実施形態では、フィルタ装置40に気泡溜め室51とフィルタ装置40の外側とを連通する弁装置60が設けられている。気泡溜め室51に溜まる気泡の量が所定量を超えると、気泡は、弁装置60の傘部62aを押し上げ、フィルタ装置40の外側に流出する。上述したようにフィルタエレメント41に傾斜部42aを有していると、気泡は弁装置60に誘導されるため、気泡を速やかに排出することができる。
【0087】
このように、本実施形態のフィルタ装置40は気泡溜め室51に溜まった気泡をフィルタ装置40の外側に排出するような構成を有しているため、分離させた気泡が燃料通路50に流入してしまうという問題の発生を抑制できる。ゆえに、ポンプ吐出流量の低下を抑制する効果を長期に亘り発揮できる。
【0088】
また、本実施形態では、傾斜部42aもフィルタエレメント41にて形成されているため、燃料は気泡溜め室51に溜められている気泡よりも下方に流入することとなる。このため、気泡は、この傾斜部42aより流入した燃料の圧力を受け、弁装置60から押し出されるようにして効果的にフィルタ装置40の外側に排出される。
【0089】
また、本実施形態では、フィルタエレメント41の傾斜部42aは弁装置60に向うほど上方に傾斜しているため、弁装置60の周囲に気泡を確実に誘導することができ、誘導した気泡を速やかにフィルタ装置40の外側に排出することができる。
【0090】
また、本実施形態の弁装置60は、フィルタ装置40の外側から気泡溜め室51への燃料の流入を妨げられる構造となっている。このため、燃料は必ずフィルタエレメント41を通過することとなる。よって、この弁装置60によれば、フィルタエレメント41を通過せずにフィルタエレメント41の内側に流入してしまうことを阻止でき、確実にフィルタエレメント41にて濾過された燃料を電動ポンプ12に流入させることができる。
【0091】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。第2実施形態では、フィルタ装置140の外観が第1実施形態のフィルタ装置40と異なる。なお、電動ポンプ12、圧力調整装置22および燃料供給管23の構造は、第1実施形態のものと同じである。図3は、第2実施形態による燃料供給装置111の縦断面を示し(図4中のIII−III線の断面)、図4は、図3中のIV方向から見た燃料供給装置111を示している。
【0092】
本実施形態における燃料供給装置111のフィルタ装置140は、フィルタエレメント141、接続部146、フィルタフレーム152および弁装置60などから構成されている。フィルタエレメント141は、第1実施形態のフィルタエレメント41と同様、樹脂製の繊維からなる膜状の不織布からなっている。そして、フィルタエレメント41は、電動ポンプ12の燃料タンク24の底部25側の軸方向端部および径方向側壁面の少なくとも一部を覆うように、かつ袋状に形成したものであり、燃料を通過させることにより燃料中の異物を捕捉する。
【0093】
フィルタエレメント141は、燃料タンク24の天井部26側に配置される上部エレメント142、および燃料タンク24の底部25側に配置される下部エレメント144からなっている。フィルタエレメント141は、これら二枚の膜状に形成された各エレメント142、144を重ね合わせ、それぞれの外周縁部を加熱して、溶着することにより袋状に形成される。
【0094】
上部エレメント142は、円形部142a、内筒部142b、上端部142cおよび外筒部142dを有する。円形部142aは、電動ポンプ12の上記軸方向端部の下方に位置している。内筒部142bは、円形部142aの外周縁部より燃料タンク24の天井部26に向って延び、かつ電動ポンプ12の径方向側壁面の少なくとも一部を覆う。外筒部142dは内筒部142bと間隔をあけて配置されている。外筒部142dの周方向両端部は、内筒部142bの周方向両端部と接続されている。そして、内筒部142bと外筒部142dの上端部同士は、円弧状の上端部142cによって接続されている。
【0095】
図3に示すように、下部エレメント144は、燃料タンク24の底部25に向って突き出るような有底筒状となっている。接続部146は、上記円形部142aに設けられている。図3および4に示すように、上端部142cには、第1実施形態にて説明した弁装置60と同じ構造を有する弁装置60が設けられている。弁装置60は、上端部142cの最も高い位置に設けられている。上端部142cは、弁装置60に向うほど上方に傾斜している。なお、このように形成されている上端部142cが特許請求の範囲に記載の傾斜部に相当する。
【0096】
このようにして二つの部材が組み合わされ、袋状に形成されたフィルタエレメント141の内側には、燃料タンク24の底部25側に燃料通路150が形成され、その燃料通路150の上方である内筒部142b、上端部142cおよび外筒部142dにて囲まれる位置に気泡溜め室151が形成される。
【0097】
そして、燃料通路150および気泡溜め室151には、フィルタフレーム152が設けられている。フィルタフレーム152は、樹脂材料よりなり、フィルタエレメント141を内側より支え、フィルタエレメント141の形状を維持する。フィルタエレメント141が燃料通路150および気泡溜め室151に設置されているので、電動ポンプ12の燃料吸引力により、フィルタエレメント141の内側の燃料圧力が外側の燃料圧力よりも低くなり、フィルタエレメント141に内側に向う方向の力が作用したとしても、フィルタエレメント141の形状を維持することができる。
【0098】
この実施形態でも第1実施形態と同様に、フィルタエレメント141が特許請求の範囲に記載のフィルタ装置140の外殻を形成する外殻壁として機能する。本実施形態でも、フィルタ装置140の外殻を形成する外殻壁のほとんどをフィルタエレメント141にて形成する例を示している。
【0099】
次に、燃料供給装置111の作動について説明する。電動ポンプ12の作動は第1実施形態における電動ポンプ12の作動と同じであるため、ここでは、電動ポンプ12の吸入口20以降の燃料の流れについての説明は省略し、フィルタ装置140における燃料および気泡の流れについてのみ説明する。
【0100】
電動ポンプ12が作動し、電動ポンプ12に燃料吸引力が発生すると、フィルタ装置140の外側の燃料がフィルタエレメント141を通過し、燃料通路150に流入する。燃料吸引力により、フィルタ装置140の内側の燃料圧力が外側の燃料圧力より低下するため、燃料がフィルタエレメント141を通過する際、濾過燃料に気泡が発生する。発生した気泡は、フィルタ装置140の内側において、浮力により、燃料通路150の上方に形成されている気泡溜め室151に向って移動し、気泡溜め室151に溜まる。これにより、燃料通路150に流入した濾過燃料より、気泡が分離される。
【0101】
上端部142cは上述したように弁装置60に向うにしたがい上方に傾斜しているため、気泡溜め室151に溜められた気泡は、上端部142cの内壁に沿って弁装置60に向って移動することとなる。この上端部142cの傾斜構造によれば、気泡が効果的に弁装置60の周囲に確実に誘導することができ、誘導した気泡を速やかにフィルタ装置140の外側に排出することができる(図4中の破線矢印を参照)。
【0102】
気泡が分離された濾過燃料は、図3中の白抜き矢印で示すように、電動ポンプ12が発生する燃料吸引力により形成される燃料流れに乗り吸入口20に向って流れ、電動ポンプ12内部に流入する。
【0103】
この構成によれば、濾過燃料中に含まれる気泡をフィルタ装置140内で濾過燃料から分離することができ、電動ポンプ12の吸入口20への気泡の流入を抑制することができる。その結果、電動ポンプ12のポンプ吐出流量の低下が抑制される。
【0104】
また、気泡溜め室151に溜まる気泡の量が所定量を超えると、気泡は、浮力により、弁装置60の傘部62aを押し上げ、フィルタ装置140の外側に流出する。このように、本実施形態においても、気泡溜め室151に溜まった気泡をフィルタ装置140の外側に排出することができる。このため、分離させた気泡が燃料通路150に流入してしまうという問題の発生を抑制できる。ゆえに、ポンプ吐出流量の低下を抑制する効果を長期に亘り発揮することができる。
【0105】
(第2実施形態の変形例)
以下、本発明の第2実施形態の変形例を図面に基づいて説明する。第2実施形態の変形例では、弁装置60の設置場所が第2実施形態のものと異なる。なお、電動ポンプ12、圧力調整装置22および燃料供給管23の構造は、第1実施形態のものと同じである。図5は、第2実施形態の変形例による燃料供給装置211のフィルタ装置240の要部を拡大した縦断面を示している。なお、図5に図示するフィルタ装置240を構成する弁装置160を除く各部位は第2実施形態のものと同じである。
【0106】
本変形例では、第2実施形態のフィルタ装置140とは異なり、上部エレメント142の外筒部142dの径方向側面に弁装置160を設置している。この変形例で適用する弁装置160も、第1実施形態の弁装置60と同様、気泡溜め室151に溜められた気泡をフィルタ装置240の外側に排出することを許容するとともに、フィルタ装置240の外側から内側への燃料の流入を妨げる。
【0107】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。第3実施形態は、第1、2実施形態とは異なり、当該外殻壁をフィルタエレメント341aとタンク壁341bにて形成することを特徴としている。タンク壁341bは、フィルタエレメント341aとは異なり、燃料や空気などの流体の通過を実質的に禁止する樹脂製の壁部材である。なお、この実施形態においても、電動ポンプ12、圧力調整装置22および燃料供給管23の構造は、第1、2実施形態のものと同じである。図6は、第3実施形態による燃料供給装置311の縦断面を示している。
【0108】
本実施形態における燃料供給装置311のフィルタ装置340は、フィルタ部340a、タンク部340bおよび弁装置60などから構成されている。フィルタ装置340は、電動ポンプ12の径方向外側に配置されている。
【0109】
フィルタ部340aは、その外殻を形成する外殻壁が樹脂製の繊維からなる膜状の不織布であるフィルタエレメント341aからなっており、燃料を通過させることにより燃料中の異物を捕捉する。フィルタエレメント341aは、燃料タンク24の底部25に沿った方向に延びるよう扁平に、かつ袋状に形成されている。このフィルタエレメント341aは、第1、第2実施形態と同様、膜状に形成された二枚のフィルタエレメントからなっており、これら二枚のフィルタエレメントを重ね合わせ、それぞれの外周縁部を加熱して、溶着することにより袋状に形成されている。
【0110】
このようにして袋状に形成されたフィルタエレメント341aの内側には、濾過燃料が流入する第一燃料通路350aが形成される。なお、フィルタエレメント341aの内側には、フィルタエレメント341aの形状を維持するための図示しないフィルタフレームが設置されている(第1実施形態のフィルタフレーム52を参照)。
【0111】
フィルタ部340aの上方には、このフィルタ部340aに接続されるタンク部340bが配置されている。タンク部340bは、タンク壁341b、フィルタ接続部346a、ポンプ接続部346bを有している。タンク部340bの上部には、弁装置60が設けられている。タンク部340bは、フィルタ部340aにて濾過された燃料を電動ポンプ12に導くとともに、フィルタ部340aが燃料を濾過する際に発生した気泡を溜める。
【0112】
タンク壁341bは、上端部342、下端部343、側部344を有し、内側に第二燃料通路350bおよび気泡溜め室351を形成する。第二燃料通路350bは、下端部343側に設けられ、気泡溜め室351は、第二燃料通路350bの上方において、第二燃料通路350bを流れる濾過燃料中に含まれる気泡が移動可能に第二燃料通路350bと連通して設けられる。気泡溜め室351は、上端部342側に設けられる。
【0113】
下端部343には、フィルタ部340aに接続されるフィルタ接続部346aが設けられている。これにより、フィルタ部340aの第一燃料通路350aとタンク部340bの第二燃料通路350bとが連通する。第一燃料通路350aに流入した濾過燃料は、このフィルタ接続部346aを通って第二燃料通路350bに流入する。また、下端部343には、電動ポンプ12の吸入口20に接続されるポンプ接続部346bが設けられている。これにより、第二燃料通路350bと吸入口20とが連通する。第二燃料通路350bに流入した濾過燃料は、このポンプ接続部346bを通って吸入口20より電動ポンプ12内部に流入する。上端部342には、弁装置60が設けられている。
【0114】
弁装置60は、第1実施形態の弁装置60と同じ構造である。本実施形態では、弁座部材61は、タンク部340bの上端部342に一体的に形成されている。弁装置60におけるその他の構造については説明を省略する(第1実施形態の弁装置60を参照)。
【0115】
次に、燃料供給装置311の作動について説明する。電動ポンプ12の駆動は第1、第2実施形態における電動ポンプ12の作動と同じであるため、ここでは、電動ポンプ12の吸入口20以降の燃料の流れについての説明は省略し、フィルタ装置340における燃料および気泡の流れについてのみ説明する。
【0116】
電動ポンプ12が作動し、電動ポンプ12に燃料吸引力が発生すると、フィルタ装置340の外側、特にフィルタ部340aの外側の燃料がフィルタエレメント341aを通過し、第一燃料通路350aに流入する。燃料吸引力により、フィルタ部340aの内側の燃料圧力が外側の燃料圧力よりも低下するため、燃料がフィルタエレメント341aを通過する際、濾過燃料に気泡が発生する。発生した気泡は、フィルタ部340aの内側において、第二燃料通路350bに向う第一燃料通路350a内の燃料流れに乗り、濾過燃料とともに第二燃料通路350bに流入する。
【0117】
第二燃料通路350bに流入した濾過燃料中に含まれる気泡は、電動ポンプ12が発生する燃料吸引力によって形成されている燃料流れ(図中、白抜き矢印を参照)には乗らずに、浮力により、気泡溜め室351に向って上方に移動し、気泡溜め室351に溜まる。これにより、第二燃料通路350bに流入した濾過燃料より、気泡が分離される。
【0118】
気泡が分離された濾過燃料は、図6中の白抜き矢印で示すように、当該燃料流れに乗りポンプ接続部346bを通って吸入口20より電動ポンプ12内部に流入する。
【0119】
この構成によっても、濾過燃料中に含まれる気泡をフィルタ装置340(特に、タンク部340b)内で濾過燃料から分離することができ、電動ポンプ12の吸入口20への気泡の流入を抑制することができる。その結果、電動ポンプ12のポンプ吐出流量の低下が抑制される。
【0120】
また、気泡溜め室351に溜まる気泡の量が所定量を超えると、気泡は、浮力により、弁装置60の傘部62aを押し上げ、フィルタ装置340の外側に流出する。このように、本実施形態においても、気泡溜め室351に溜まった気泡をフィルタ装置340の外側に排出することができる。このため、分離させた気泡が第二燃料通路350bに流入してしまうという問題の発生を抑制できる。ゆえに、ポンプ吐出流量の低下を抑制する効果を長期に亘り発揮することができる。
【0121】
また、この実施形態では、第1、第2実施形態のフィルタ装置40、140とは異なり、フィルタ装置340がタンク部340bを有している。この構成にれば、燃料タンク24内の燃料の液位が低下して、フィルタ装置340周囲の液位がタンク部340b内の液位よりも下回ったとしても、フィルタエレメント341aが燃料に浸っている限り、タンク部340bに燃料を溜めておくことができる。
【0122】
これは、タンク部340bが実質的に燃料および空気の通過を禁止する材料にて形成されていることと、タンク部340bの上部に設けられている弁装置60に外側から内側への燃料および空気の流入を妨げる機能を有していることによる。なお、フィルタ装置340周囲の液位の低下は、例えば車両が旋回運動を行うことにより、燃料に水平方向の力が作用し、燃料が燃料タンク24の端に片寄ることにより発生する。
【0123】
(第3実施形態の変形例)
以下、本発明の第3実施形態の変形例を図面に基づいて説明する。第3実施形態の変形例では、フィルタ装置440が、タンク部340bとフィルタ部340aとの間に、タンク部340bへの燃料の供給を補助する補助ジェットポンプ470を備えている点が第3実施形態のフィルタ装置340と異なる。なお、本変形例においても、電動ポンプ12、圧力調整装置22および燃料供給管23の構造は、第1実施形態のものと同じである。図7は、第3実施形態の変形例による燃料供給装置411の縦断面を示している。ここでは、補助ジェットポンプ470を主に説明する。
【0124】
補助ジェットポンプ470は、燃料吸引力を発生し、第一燃料通路350aより吸入した燃料を第二燃料通路350bに向けて吐出し、タンク部340bへの燃料の供給を補助する。補助ジェットポンプ470は、スロート部471および噴出部475などから構成されている。スロート部471は、樹脂材料より管状に形成された管部材であり、内部に通路471aを形成する。この通路471aは、第一燃料通路350aと、第二燃料通路350bとを連通させる。スロート部471は、通路の方向が燃料タンク24の天地方向に沿うようにタンク部340bに接続される。スロート部471は、上端の開口部471bが第二燃料通路350b内に配置され、下端の開口部471cがタンク部340bの外側に配置されるように、タンク部340bの下端部343に設けられている開口部346cに支持されている。スロート部471の下端の開口部471cはフィルタ部340aに接続されている。これにより、通路471aと、フィルタ部340aの第一燃料通路350aとが連通する。図7に示すように、通路471aの内壁には、中心軸に向って隆起する部位が形成されている。
【0125】
噴出部475は、通路471aにおいて、隆起部位よりも下側に設置され、上端の開口部471bに向けて圧力調整装置22から排出される余剰燃料を噴出する。噴出部475には、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部475に導くホース476が接続されている。
【0126】
なお、本変形例では、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部475に導いている例で説明しているが、エンジン30に供給される燃料から分流した圧力調整装置22から排出される燃料とは別の燃料、またはエンジン30に供給されたもののエンジン30の燃焼室に供給されずに燃料タンク24に戻される燃料を噴出部475に導くような構成であっても良い。具体的には、ポンプ部16において昇圧途中に発生したベーパを含んだ燃料を排出するためのポンプ部16に設けられるベーパ排出口(図示せず)から排出される燃料を噴出部475に導いたり、エンジン30からのリターン燃料を噴出部475に導く。
【0127】
なお、本実施形態では、スロート部471および噴出部475から構成される補助ジェットポンプ470が特許請求の範囲に記載の補助ジェットポンプに相当し、下端の開口部471cが特許請求の範囲に記載の補助ジェットポンプにおける第一燃料通路に開口する一方の端部に相当し、上端の開口部471bが特許請求の範囲に記載の補助ジェットポンプにおける第二燃料通路に開口する他方の端部に相当する。
【0128】
次に、燃料供給装置411の作動について説明する。燃料供給装置411において、電動ポンプ12が作動すると、電動ポンプ12に燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、タンク部340b内の燃料が、ポンプ接続部346bを介して電動ポンプ12内に流入する。その後、電動ポンプ12の吐出口21より圧力が高められた燃料が圧力調整装置22に向けて吐き出される。圧力調整装置22に流入した燃料は、圧力調整装置22にて燃料圧力が調整され、エンジン30に向けて吐き出される。
【0129】
圧力調整装置22から排出される余剰燃料は、ホース476を介して噴出部475に流入する。噴出部475からは余剰燃料が噴出される。これにより、噴出部475の周囲の圧力が第一燃料通路350a内の圧力よりも低下し、燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、第一燃料通路350a内の燃料圧力が、フィルタ部340aの外側の燃料圧力よりも低下するため、フィルタ部340aの外側の燃料がフィルタエレメント341aを通過して、第一燃料通路350aに流入する。
【0130】
第一燃料通路350aに流入した燃料は、図7中の白抜き矢印で示すように、スロート部471の下端より通路471a内に流入し、噴出部475から噴出される噴出燃料とともにスロート部471の上端から吐き出される。このようにして、補助ジェットポンプ470にて汲み上げられた燃料が第二燃料通路350bを形成するタンク部340bに流入する。
【0131】
なお、本変形例でも、フィルタエレメント341aを燃料が通過する際、第3実施形態と同様、濾過燃料中に気泡が発生する。この気泡を含んだ濾過燃料は、スロート部471を介して第二燃料通路350bに流入することとなる。第二燃料通路350bに流入した気泡は、浮力により、第二燃料通路350bの上方に設けられている気泡溜め室351に向って移動し、気泡溜め室351に溜まる。これにより、第二燃料通路350bに流入した濾過燃料より、気泡が分離される。気泡が分離された濾過燃料は、図7中の白抜き矢印で示すように、燃料吸引力により形成される燃料流れに乗りポンプ接続部346bを通って吸入口20より電動ポンプ12内部に流入する。
【0132】
本変形例では、フィルタ装置440は補助ジェットポンプ470を備えているため、強制的に、第一燃料通路350aの燃料を第二燃料通路350b、つまりタンク部340b内に燃料を汲み上げている。このため、気泡溜め室351に溜められた気泡は、この汲み上げられた燃料により押し出されるようにして、弁装置60より排出されることとなる。よって、本実施形態のフィルタ装置440によれば、気泡溜め室351に溜められた気泡を速やかに排出することが可能となる。
【0133】
タンク部340bの構造は第3実施形態と同じであるため、本変形例のフィルタ装置440も、タンク部340bに燃料を蓄える機能を有する。
【0134】
本変形例では補助ジェットポンプ470を備えている点が第3実施形態と異なる。補助ジェットポンプ470は、電動ポンプ12が作動している間、作動する。これによれば、タンク部340b内を燃料で満たすことが可能となる。タンク部340b内を燃料で満たすことができるため、燃料タンク24内の燃料総量が減ったり、車両が旋回運動して燃料タンク24内の燃料が片寄ったりして、フィルタ装置440周囲の液位がタンク部340b内の液位よりも下回ったとしても、フィルタエレメント341aが燃料に浸っている限り、タンク部340bに燃料を溜めておくことができる。
【0135】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。第4実施形態は、第1実施形態おける、フィルタエレメント41を通過する際に発生した気泡をフィルタ装置40の内側にて気液分離するとともに、溜まった気泡を外側に排出するという原理を燃料供給装置511のタンク装置580に燃料を汲み上げる汲上燃料ポンプ570に適用した例である。
【0136】
第4実施形態における燃料供給装置511は、電動ポンプ12、タンク装置580、および汲上燃料ポンプ570などから構成されている。この実施形態における電動ポンプ12、圧力調整装置22および燃料供給管23は、第1〜3実施形態のものと同じである。図8は、第4実施形態による汲上燃料ポンプ570を備える燃料供給装置511の縦断面を示している。
【0137】
タンク装置580は、電動ポンプ12が吸い込む燃料を溜める装置であり、電動ポンプ12の径方向外側に配置されている。タンク装置580は、樹脂製であって、上端部581、下端部582、側部583を有し、内側に燃料を蓄積する蓄積室584を形成する。上端部581には、開口部581aが形成されている。開口部581aには樹脂製の繊維からなる膜状のフィルタ581bが設けられている。このフィルタ581bは、比較的目が粗いメッシュ状のフィルタであって、タンク装置580の上方より、燃料タンク24の底部25に向って沈降する比較的大きな異物のタンク装置580内への侵入を阻止するものである。このフィルタ581bは、比較的目が粗いため、燃料中にあっても、燃料は勿論、気泡を通過させるとができるものである。
【0138】
下端部582には、第3実施形態と同様、電動ポンプ12の吸入口20に接続されるポンプ接続部582aが設けられている。これにより、蓄積室584と吸入口20とが連通する。蓄積室584内の燃料は、このポンプ接続部582aを通って吸入口20より電動ポンプ12内部に流入する。また、下端部582には、後述する汲上燃料ポンプ570が接続される開口部582bが設けられている。この開口部582bを介して汲上燃料ポンプ570より汲み上げられた燃料が蓄積室584内に流入する。
【0139】
汲上燃料ポンプ570は、圧力調整装置22からの余剰燃料を利用して、タンク装置580の蓄積室584に燃料を汲み上げるポンプである。汲上燃料ポンプ570は、このポンプ570の燃料汲上量が、電動ポンプ12が吸入口20より吸入する燃料吸入量よりも多くなるように構成されている。ここで、上記燃料汲上量とは、汲上燃料ポンプ570が蓄積室584に燃料を汲み上げることができる燃料量である。このため、蓄積室584の燃料圧力は、タンク装置580の外側の燃料圧力よりも高くなる。よって、蓄積室584の燃料は、上端部581の開口部581aより溢れ出ることとなる。このときの蓄積室584内の状態を正圧の状態と呼ぶ。
【0140】
汲上燃料ポンプ570は、汲上用ジェットポンプ571およびフィルタ装置540などから構成されている。汲上用ジェットポンプ571は、第3実施形態の補助ジェットポンプ470と同じ原理で作動する。汲上用ジェットポンプ571は、燃料吸引力を発生し、フィルタ装置540の内側に形成されている燃料通路550より吸入した燃料を蓄積室584に向けて吐き出す。
【0141】
汲上用ジェットポンプ571は、スロート部572および噴出部574などから構成されている。スロート部572は、樹脂材料より管状に形成された管部材であり、内部に通路572aを形成する。この通路572aは、燃料通路550と、蓄積室584とを連通する。スロート部572は、通路572aの方向が燃料タンク24の天地方向に沿うようにタンク装置580に接続されている。スロート部572は、上端の開口部572bが蓄積室584内に配置され、下端の開口部572cがタンク装置580の外側に配置されるように、タンク装置580の開口部582bに支持されている。スロート部572の下端の開口部572cはフィルタ装置540に接続されている。これにより、通路572aと、フィルタ装置540の燃料通路550とが連通する。図8に示すように、通路572aの内壁には、中心軸に向って隆起する部位が形成されている。
【0142】
噴出部574は、通路572aおいて、隆起部位よりも下側に設置され、上端の開口部572bに向けて圧力調整装置22から排出される余剰燃料を噴出する。噴出部574には、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部574に導くホース576が接続されている。
【0143】
なお、本実施形態では、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部574に導いている例で説明しているが、エンジン30に供給される燃料から分流した圧力調整装置22から排出される燃料とは別の燃料、またはエンジン30に供給されたもののエンジン30の燃焼室に供給されずに燃料タンク24に戻される燃料を噴出部574に導くような構成であっても良い。具体的には、ポンプ部16において昇圧途中に発生したベーパを含んだ燃料を排出するためのポンプ部16に設けられるベーパ排出口(図示せず)から排出される燃料を噴出部574に導いたり、エンジン30からのリターン燃料を噴出部574に導く。
【0144】
フィルタ装置540は、汲上用ジェットポンプ571が開口部572cより吸入する燃料中の異物を捕捉するものであって、当該開口部572cに接続されている。フィルタ装置540は、フィルタエレメント541および弁装置60などから構成されている。フィルタエレメント541は、樹脂製の繊維からなる膜状の不織布からなり、燃料タンク24の底部25に沿った方向に延びるよう扁平に、かつ袋状に形成したものであり、燃料を通過させることにより、燃料中の異物を捕捉する。フィルタエレメント541は、燃料タンク24の天井部26側に配置される上部エレメント542および燃料タンク24の底部25側に配置される下部エレメント544からなっている。フィルタエレメント541は、これら二枚の膜状に形成された各エレメント542、544を重ね合わせ、それぞれの外周縁部を加熱して、溶着することにより袋状に形成される。
【0145】
上部エレメント542は、燃料タンク24の天井部26に向って突き出るような形状となっており、汲上用ジェットポンプ571側の部位が開口部572cに接続されている。上部エレメント542は、当該ジェットポンプ571より離れるにしたがい天井部26に向って上方に傾斜する傾斜部542aおよび傾斜部542aの当該ジェットポンプ571とは反対側に接続される平坦部542bを有している。平坦部542bには、第1実施形態と同じ弁装置60が設けられている。
【0146】
下部エレメント544は、燃料タンク24の底部25に向って突き出るような有底筒状となっており、汲上用ジェットポンプ571側の部位が開口部572cに接続されている。このようにして二つの部材が組み合わされ、袋状に形成されたフィルタエレメント541の内側には、燃料通路550と気泡溜め室551が形成される。
【0147】
燃料通路550は、フィルタエレメント541を通過して濾過された燃料を当該ジェットポンプ571に導く通路であり、下部エレメント544側に形成される。気泡溜め室551は、燃料通路550を流れる濾過燃料中に含まれる気泡を溜めるための領域であって、燃料通路550の上方において、当該気泡が移動可能に燃料通路550と連通している。本実施形態では、第1実施形態のフィルタ装置40と同様、上部エレメント542が有する傾斜部542aおよび平坦部542bにて気泡溜め室551の一部を形成している。
【0148】
弁装置60は、第1実施形態の弁装置60と同じ構造であるため、ここでは弁装置60の構造についての説明は省略する。なお、フィルタエレメント541の内側には、フィルタエレメント541の形状を維持するための図示しないフィルタフレームが設置されている(第1実施形態のフィルタフレーム52を参照)。
【0149】
なお、本実施形態では、汲上用ジェットポンプ571およびフィルタ装置540にて、特許請求の範囲に記載の燃料ポンプを構成する。すなわち、汲上用ジェットポンプ571が特許請求の範囲に記載のポンプ装置に相当し、フィルタ装置540が特許請求の範囲に記載のフィルタ装置に相当する。また、本実施形態では、スロート部572の通路572aが特許請求の範囲に記載の通路に相当し、スロート部572の下端の開口部572cが特許請求の範囲に記載の吸入部に相当し、スロート部572の上端の開口部572bが特許請求の範囲に記載の吐出部に相当する。
【0150】
次に、燃料供給装置511の作動について説明する。燃料供給装置511において、電動ポンプ12が作動すると、電動ポンプ12に燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、タンク装置580における蓄積室584の燃料が、ポンプ接続部582aを介して電動ポンプ12内に流入する。その後、電動ポンプ12の吐出口21より圧力が高められた燃料が圧力調整装置22に向けて吐き出される。圧力調整装置22に流入した燃料は、圧力調整装置22にて燃料圧力が調整され、エンジン30に向けて吐き出される。圧力調整装置22から排出される余剰燃料は、ホース576を介して噴出部574に流入する。噴出部574からは余剰燃料が噴出される。
【0151】
噴出部574から余剰燃料が噴出されると、噴出部574の周囲の燃料圧力がフィルタ装置540の内側の燃料圧力よりも低下し、燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、フィルタ装置540の内側の燃料圧力が、外側の燃料圧力よりも低下するため、フィルタ装置540の外側の燃料がフィルタエレメント541を通過して、燃料通路550に流入する。燃料がフィルタエレメント541を通過する際、気泡が発生する。発生した気泡は、フィルタ装置540の内側において、浮力により、燃料通路550の上方に形成されている気泡溜め室551に向って移動し、気泡溜め室551に溜まる。これにより、燃料通路550に流入した濾過燃料より、気泡が分離される。
【0152】
気泡が分離された濾過燃料は、図8中の白抜き矢印で示すように、汲上用ジェットポンプ571が発生する燃料吸引力により形成される燃料流れに乗りスロート部572の下端の開口部572cより通路572a内に流入する。そして、通路572aに流入した燃料は、噴出部574から噴出される噴出燃料とともにスロート部572の開口部572bから吐き出され、蓄積室584に流入する。
【0153】
上述したように、汲上用ジェットポンプ571では、噴出燃料により、噴出部574の周囲の圧力を低下させて燃料吸引力を発生している。この燃料吸引力が弱ければ弱いほど、当該ジェットポンプ571から吐出される吐出燃料量が低下してしまう。また、当該ジェットポンプ571に流入する燃料および噴出燃料に気泡が混入していると、噴出部574の周囲の圧力を十分に低下させることができず、当該ジェットポンプ571が発生する燃料吸引力が低下してしまう。
【0154】
本実施形態のフィルタ装置540によれば、濾過燃料中に含まれる気泡をフィルタ装置540内で濾過燃料から分離することができるので、汲上用ジェットポンプ571への気泡の流入を抑制することができ、汲上用ジェットポンプ571のポンプ吐出流量の低下を抑制することができる。
【0155】
気泡が混入した燃料を汲上用ジェットポンプ571に流入させる場合では、流入させない場合に比べ、汲上用ジェットポンプ571のポンプ吐出流量が低下する。必要なポンプ吐出流量を得るには、より多くの余剰燃料が必要となる。多くの余剰燃料を得るには、電動ポンプ12の吐出能力を高めなければならない。このため、電動ポンプ12の消費電力が多くなり車両の省電力化を妨げてしまう。
【0156】
これに対し、本実施形態のフィルタ装置540によれば、汲上用ジェットポンプ571のポンプ吐出流量の低下を抑性することができるので、少ない余剰燃料にて必要なポンプ吐出流量を確保することができ、電動ポンプ12の省電力化に貢献することができる。また、電動ポンプ12の消費電力を少なくすることができるので、より小型の電動ポンプを採用することができる。
【0157】
また、気泡溜め室551に溜まる気泡の量が所定量を超えると、気泡は、浮力により、弁装置60の傘部62aを押し上げ、フィルタ装置540の外側に流出する。このように、本実施形態においても、気泡溜め室551に溜まった気泡をフィルタ装置540の外側に排出することができる。このため、分離させた気泡が燃料通路550に流入してしまうという問題の発生を抑制できる。ゆえに、ポンプ吐出流量の低下を抑制する効果を長期に亘り発揮することができる。
【0158】
本実施形態では、上述したように、汲上用ジェットポンプ571が作動している間、蓄積室584内は、正圧の状態となっている。このため、電動ポンプ12が作動しているときであっても、タンク装置580の蓄積室584を燃料で満たすことが可能となる。タンク装置580の蓄積室584内を燃料で満たすことができるため、燃料タンク24内の燃料総量が減ったり、車両が旋回運動して燃料タンク24内の燃料が片寄ったりして、汲上燃料ポンプ570周囲の液位が低下したとしても、電動ポンプ12は蓄積室584内の燃料を吸入することができる。このため、エンジン30への燃料供給が滞ってしまう問題を回避することができる。
【0159】
また、本実施形態のタンク装置580の上端部581には、開口部581aが形成されている。この構造によれば、万が一、汲上用ジェットポンプ571が気泡を吸い込み、蓄積室584に向けて吐き出したとしても、蓄積室584に流入した気泡は、浮力により開口部581aに向って浮上する。開口部581a付近まで移動した気泡は、汲上燃料ポンプ570より供給される燃料に押し出されるようにして開口部581aのフィルタ581bを通過し、タンク装置580の外側に排出される。
【0160】
(第4実施形態の変形例)
以下、本発明の第4実施形態の変形例を図面に基づいて説明する。第4実施形態の変形例では、フィルタ装置540の気泡溜め室551より排出される気泡の排出先が第4実施形態と異なる。本変形例においても、電動ポンプ12、圧力調整装置22および燃料供給管23の構造は、第1〜4実施形態のものと同じである。図9は、第4実施形態の変形例による燃料供給装置611縦断面を示している。ここでは、第4実施形態と異なる点を主に説明する。
【0161】
タンク装置580の下端部582には、ポンプ接続部582aおよび開口部582bの他に、弁装置660を支持する開口部582cが設けられている。汲上燃料ポンプ670は、汲上用ジェットポンプ571およびフィルタ装置540などから構成されている。汲上用ジェットポンプ571は、燃料吸引力を発生し、フィルタ装置540の内側に形成されている燃料通路550より吸入した燃料を蓄積室584に向けて吐き出す。
【0162】
汲上用ジェットポンプ571は、スロート部572および噴出部575などから構成されている。スロート部572は、樹脂材料より管状に形成された管部材であり、内部に通路572aを形成する。この通路572aは、燃料通路550と、蓄積室584とを連通する。スロート部572は、通路572aの方向が燃料タンク24の天地方向に沿うようにタンク装置580に接続されている。スロート部572は、上端の開口部572bが蓄積室584内に配置され、下端の開口部572cがタンク装置580の外側に配置されるように、タンク装置580の開口部582bに支持されている。スロート部572の下端の開口部572cはフィルタ装置540に接続されている。これにより、通路572aと、フィルタ装置540の燃料通路550とが連通する。図9に示すように、スロート部572が形成する通路572aの内壁には、中心軸に向って隆起する部位が形成されている。
【0163】
噴出部575は、通路572aにおいて、隆起部位よりも下側に設置され、上端の開口部572bに向けて圧力調整装置22から排出される余剰燃料を噴出する。噴出部575には、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部575に導くホース576が接続されている。
【0164】
なお、本実施形態では、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部575に導いている例で説明しているが、エンジン30に供給される燃料から分流した圧力調整装置22から排出される燃料とは別の燃料、またはエンジン30に供給されたもののエンジン30の燃焼室に供給されずに燃料タンク24に戻される燃料を噴出部575に導くような構成であっても良い。具体的には、ポンプ部16において昇圧途中に発生したベーパを含んだ燃料を排出するためのポンプ部16に設けられるベーパ排出口(図示せず)から排出される燃料を噴出部575に導いたり、エンジン30からのリターン燃料を噴出部575に導く。
【0165】
フィルタ装置540は、汲上用ジェットポンプ571が開口部572cより吸入する燃料中の異物を捕捉するものであって、当該開口部572cに接続されている。フィルタ装置540は、フィルタエレメント541および弁装置660などから構成されている。フィルタエレメント541は、樹脂製の繊維からなる膜状の不織布からなり、燃料タンク24の底部25に沿った方向に延びるよう扁平に、かつ袋状に形成したものであり、燃料を通過させることにより、燃料中の異物を捕捉する。フィルタエレメント541は、燃料タンク24の天井部26側に配置される上部エレメント542および燃料タンク24の底部25側に配置される下部エレメント544からなっている。フィルタエレメント541は、これら二枚の膜状に形成された各エレメント542、544を重ね合わせ、それぞれの外周縁部を加熱して、溶着することにより袋状に形成される。
【0166】
上部エレメント542は、燃料タンク24の天井部26に向って突き出るような形状となっており、汲上用ジェットポンプ571側の部位が開口部572cに接続されている。上部エレメント542は、当該ジェットポンプ571より離れるにしたがい天井部26に向って上方に傾斜する傾斜部542aを有している。そして、傾斜部542aの当該ジェットポンプ571と反対側の端部には、弁装置660が接続されている。
【0167】
下部エレメント544は、燃料タンク24の底部25に向って突き出るような有底筒状となっており、汲上用ジェットポンプ571側の部位が開口部572cに接続されている。このようにして二つの部材が組み合わされ、袋状に形成されたフィルタエレメント541の内側には、燃料通路550と気泡溜め室551が形成される。
【0168】
燃料通路550は、フィルタエレメント541を通過して濾過された燃料を当該ジェットポンプ571に導く通路であり、下部エレメント544側に形成される。気泡溜め室551は、燃料通路550を流れる濾過燃料中に含まれる気泡を溜めるための領域であって、燃料通路550の上方において、当該気泡が移動可能に燃料通路550と連通している。本実施形態では、第1実施形態のフィルタ装置40と同様、上部エレメント542が有する傾斜部542aにて気泡溜め室551の一部を形成している。
【0169】
弁装置660は、弁座部材661および弁部材662から構成されている。弁座部材661は、燃料通路550に向って開口する有底円筒状に形成されており、底部が蓄積室584に配置され、かつ開口側の端部がフィルタ装置540の外側に配置されるようにタンク装置580の開口部582cに支持されている。弁座部材661は、弁部材662が着座する環状の弁座661aと、気泡溜め室551とフィルタ装置540の外側とを連通する連通孔661bとを底部に有する。弁座661aは、弁座部材661の底部外側の端面661cに形成されており、連通孔661bは弁座661aよりも内側に形成されている。
【0170】
弁部材662は、可撓性を有する材料りより形成されており、連通孔661bを開閉する。弁部材662は、フィルタ装置540の外側に配置される傘部662aと、傘部662aを弁座部材661に固定する軸部662bとを有する。図9に示すように、傘部662aは、その外周縁部が弁座661aに着座するように構成されている。また、軸部662bは、傘部662aの中心より弁座部材661に向って延び、弁座部材661に固定されている。
【0171】
このように構成されている弁装置660では、気泡溜め室551に気泡が溜まった場合、気泡は連通孔661bを通じて、傘部662aの内側の面と弁座部材661の外側の面にて形成される空間に流入する。そして、気泡溜め室551に溜まる気泡の量が所定量を超えると、気泡は、浮力により、傘部662aをを押し上げ、フィルタ装置540の外側に流出する。
【0172】
気泡溜め室551内の気泡の量が低下すると、気泡が傘部662aを押し上げる力が弱くなるため、傘部662aは元の状態、つまり弁座661aに着座する形状に戻ろうとする。これにより、フィルタ装置540の外側の燃料は、弁装置660を介して内側への流入しない。
【0173】
つまり、この弁装置660によれば、気泡溜め室551からフィルタ装置540の外側への気泡の排出を許容し、フィルタ装置540の外側から気泡溜め室551への燃料の流入を妨げることができる。
【0174】
なお、フィルタエレメント541の内側には、フィルタエレメント541の形状を維持するための図示しないフィルタフレームが設置されている(第1実施形態のフィルタフレーム52を参照)。
【0175】
次に、燃料供給装置611の作動について説明する。燃料供給装置611において、電動ポンプ12が作動し、圧力調整装置22より余剰燃料が排出されると、汲上用ジェットポンプ571の噴出部575より当該余剰燃料が噴出される。すると、噴出部575の周囲の圧力が燃料通路550内の圧力よりも低下し、燃料吸引力が発生する。
【0176】
この燃料吸引力により、フィルタ装置540の内側の燃料圧力が、外側の燃料圧力よりも低下するため、フィルタ装置540の外側の燃料がフィルタエレメント541を通過して、燃料通路550に流入する。燃料がフィルタエレメント541を通過する際、気泡が発生する。発生した気泡は、フィルタ装置540の内側において、浮力により、燃料通路550の上方に形成されている気泡溜め室551に向って移動し、気泡溜め室551に溜まる。これにより、燃料通路550に流入した濾過燃料より、気泡が分離される。
【0177】
気泡が分離された濾過燃料は、図9中の白抜き矢印で示すように、汲上用ジェットポンプ571が発生する燃料吸引力により形成される燃料流れに乗りスロート部572の下端の開口部572cより通路572a内に流入する。そして、通路572aに流入した燃料は、噴出部575から噴出される噴出燃料とともにスロート部572の上端の開口部572bから吐き出され、蓄積室584に流入する。
【0178】
気泡溜め室551に溜まる気泡の量が所定量を超えると、気泡は、弁装置660より排出される。弁装置660より排出された気泡は、蓄積室584に流入する。蓄積室584に流入した気泡は、浮力によりタンク装置580の開口部581aに向って浮上する。開口部581a付近まで移動した気泡は、汲上燃料ポンプ670より供給される燃料に押し出されるようにして、開口部581aのフィルタ581bを通過し、タンク装置580の外側に排出される。
【0179】
(第5実施形態)
以下、本発明の第5実施形態を図面に基づいて説明する。第5実施形態は、第4実施形態の汲上燃料ポンプ570を、二つの燃料室728、729を有する所謂鞍型の燃料タンク724において、一方の燃料室729から他方の燃料室728に燃料を移送する移送燃料ポンプ770として利用した例である。
【0180】
図10は、本実施形態の移送燃料ポンプ770を備える燃料供給システム710の概略構成を示している。燃料供給システム710は、所謂鞍型燃料タンク724に設けられている。鞍型燃料タンク724は、四輪駆動車や車両前方にエンジンを配置させ後輪を駆動させるフロントエンジンリアドライブ車(FR車)などに設けられているプロペラシャフト27を通すために、底部725を天井部726側に突出させた凸部727を有し、凸部727の両側に燃料を溜める第一燃料室728、第二燃料室729を形成している。
【0181】
燃料供給システム710は、燃料供給装置711、圧力調整装置22、燃料供給管23および移送燃料ポンプ770などから構成されている。燃料供給装置711は、第一燃料室728に設けられ、電動ポンプ12を内蔵している。燃料供給装置711は、電動ポンプ12が発生する燃料吸引力により、第一燃料室728内の燃料を吸入し、吸入した燃料を加圧して、燃料供給管23に設けられた圧力調整装置22に向けて吐き出す。
【0182】
圧力調整装置22は、燃料供給管23の途中に設けられており、燃料供給装置711が吐出した燃料圧力を調整し、エンジン30に向けて吐き出す。なお、圧力調整装置22にてエンジン30に向けて吐き出す燃料の圧力を調整する際に発生する余剰燃料(第1実施形態を参照)は、後述する移送燃料ポンプ770に供給される。
【0183】
図11は、移送燃料ポンプ770の縦断面を示している。移送燃料ポンプ770は、第二燃料室729に設置され、燃料供給装置711に第二燃料室729の燃料を吸わせるために、圧力調整装置22からの余剰燃料を利用して、第二燃料室729の燃料を第一燃料室728に移送するポンプである。
【0184】
移送燃料ポンプ770は、移送用ジェットポンプ771およびフィルタ装置740などから構成されている。移送用ジェットポンプ771は、第4実施形態の汲上用ジェットポンプ571と同じ原理で作動する。移送用ジェットポンプ771は、燃料吸引力を発生し、フィルタ装置740の内側に形成されている燃料通路750より吸入した燃料を第一燃料室728に移送する。移送用ジェットポンプ771は、スロート部772、移送配管773および噴出部775などから構成されている。
【0185】
スロート部772は、樹脂材料より管状に形成された管部材であり、内部に通路772aを形成する。スロート部772は、通路772aの方向が燃料タンク724の天地方向に沿うように第二燃料室729に設置されている。スロート部772の上端の開口部772bには、第一燃料室728に通じる内部に移送通路773aを形成する移送配管773が接続されている。これにより、通路772aと、移送通路773aとが連通する(図10を参照)。移送通路773aにおけるスロート部772とは反対側の端部の開口部773bは、第一燃料室728に配置されている。スロート部772の下端の開口部772cには、フィルタ装置740が接続されている。これにより、通路772aと、フィルタ装置740内の燃料通路750とが連通する。図11に示すように、通路772aの内壁には、中心軸に向って隆起する部位が形成されている。
【0186】
噴出部775は、通路772aにおいて、隆起部位よりも下側に設置され、上端の開口部772bに向けて圧力調整装置22から排出される余剰燃料を噴出する。噴出部775には、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部775に導くホース776が接続されている。
【0187】
なお、本実施形態では、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部775に導いている例で説明しているが、エンジン30に供給される燃料から分流した圧力調整装置22から排出される燃料とは別の燃料、またはエンジン30に供給されたもののエンジン30の燃焼室に供給されずに燃料タンク724に戻される燃料を噴出部775に導くような構成であっても良い。具体的には、ポンプ部16において昇圧途中に発生したベーパを含んだ燃料を排出するためのポンプ部16に設けられるベーパ排出口(図示せず)から排出される燃料を噴出部775に導いたり、エンジン30からのリターン燃料を噴出部775に導く。
【0188】
フィルタ装置740は、移送用ジェットポンプ771が開口部772cより吸入する燃料中の異物を捕捉するものであって、当該開口部772cに接続されている。フィルタ装置740は、フィルタエレメント741および弁装置60などから構成されている。フィルタエレメント741は、樹脂製の繊維からなる膜状の不織布からなり、第二燃料室729の底部725bに沿った方向に延びるよう扁平に、かつ袋状に形成したものであり、燃料を通過させることにより、燃料中の異物を捕捉する。フィルタエレメント741は、燃料タンク724の天井部726側に配置される上部エレメント742および第二燃料室729の底部725b側に配置される下部エレメント744からなっている。フィルタエレメント741は、これら二枚の膜状に形成された各エレメント742、744を重ね合わせ、それぞれの外周縁部を加熱して、溶着することにより袋状に形成される。
【0189】
上部エレメント742は、燃料タンク724の天井部726に向って突き出るような形状となっており、移送用ジェットポンプ771側の部位が開口部772cに接続されている。上部エレメント742は、当該ジェットポンプ771より離れるにしたがい天井部726に向って上方に傾斜する傾斜部742aおよび傾斜部742aの当該ジェットポンプ771とは反対側に接続される平坦部742bを有している。平坦部742bには、第1実施形態と同じ弁装置60が設けられている。
【0190】
下部エレメント744は、燃料タンク724の底部725に向って突き出るような有底筒状となっており、移送用ジェットポンプ771側の部位が開口部772cに接続されている。このようにして二つの部材が組み合わされ、袋状に形成されたフィルタエレメント741の内側には、燃料通路750と気泡溜め室751が形成される。
【0191】
燃料通路750は、フィルタエレメント741を通過して濾過された燃料を当該ジェットポンプ771に導く通路であり、下部エレメント744側に形成される。気泡溜め室751は、燃料通路750を流れる濾過燃料中に含まれる気泡を溜めるための領域であって、燃料通路750の上方において、当該気泡が移動可能に燃料通路750と連通している。本実施形態では、第1実施形態のフィルタ装置740と同様、上部エレメント742が有する傾斜部742aおよび平坦部742bにて気泡溜め室751の一部を形成している。
【0192】
弁装置60は、第1実施形態の弁装置60と同じ構造であるため、ここでは弁装置60の構造についての説明は省略する。
【0193】
なお、本実施形態では、移送用ジェットポンプ771およびフィルタ装置740にて、特許請求の範囲に記載の燃料ポンプを構成する。すなわち、移送用ジェットポンプ771が特許請求の範囲に記載のポンプ装置に相当し、フィルタ装置740が特許請求の範囲に記載のフィルタ装置に相当する。また、本実施形態では、スロート部772の通路772aおよび移送通路773aが特許請求の範囲に記載の通路に相当し、スロート部772の下端の開口部772cが特許請求の範囲に記載の吸入部に相当し、移送配管773の開口部773bが特許請求の範囲に記載の吐出部に相当する。
【0194】
次に、燃料供給システム710の作動について説明する。燃料供給装置711において、電動ポンプ12が作動すると、電動ポンプ12に燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、第一燃料室728の燃料が、電動ポンプ12内に流入する。電動ポンプ12にて圧力が高められた燃料が、燃料供給装置711より圧力調整装置22に向けて吐き出される。圧力調整装置22に流入した燃料は、圧力調整装置22にて燃料圧力が調整され、エンジン30に向けて吐き出される。圧力調整装置22から排出される余剰燃料は、ホース776を介して噴出部775に流入する。噴出部775からは余剰燃料が噴出される。
【0195】
噴出部775から余剰燃料が噴出されると、噴出部775の周囲の燃料圧力がフィルタ装置740の内側の燃料圧力よりも低下し、燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、フィルタ装置740の内側の燃料圧力が、外側の燃料圧力よりも低下するため、フィルタ装置740の外側の燃料がフィルタエレメント741を通過して、燃料通路750に流入する。燃料がフィルタエレメント741を通過する際、気泡が発生する。発生した気泡は、フィルタ装置740の内側において、浮力により、燃料通路750の上方に形成されている気泡溜め室751に向って移動し、気泡溜め室751に溜まる。これにより、燃料通路750に流入した濾過燃料より、気泡が分離される。
【0196】
気泡が分離された濾過燃料は、図11中の白抜き矢印で示すように、移送用ジェットポンプ771が発生する燃料吸引力により形成される燃料流れに乗りスロート部772の下端の開口部772cより通路772a内に流入する。そして、通路772aに流入した燃料は、噴出部775から噴出される噴出燃料とともにスロート部772の上端の開口部772bから吐き出され、移送通路773aに流入する。移送通路773aに流入した燃料は、開口部773bより第一燃料室728の底部725aに向って吐き出され、第一燃料室728に流入する。
【0197】
本実施形態のフィルタ装置740によれば、濾過燃料中に含まれる気泡をフィルタ装置740内で濾過燃料から分離することができるので、移送用ジェットポンプ771への気泡の流入を抑制することができ、移送用ジェットポンプ771のポンプ吐出流量の低下を抑制することができる。
【0198】
気泡が混入した燃料を移送用ジェットポンプ771に流入させる場合では、流入させない場合に比べ、移送用ジェットポンプ771のポンプ吐出流量が低下する。必要なポンプ吐出流量を得るには、より多くの余剰燃料が必要となる。多くの余剰燃料を得るには、電動ポンプ12の吐出能力を高めなければならない。このため、電動ポンプ12の消費電力が多くなり車両の省電力化を妨げてしまう。
【0199】
これに対し、本実施形態のフィルタ装置740によれば、移送用ジェットポンプ771のポンプ吐出流量の低下を抑制することができるので、少ない余剰燃料にて必要なポンプ吐出流量を確保することができ、電動ポンプ12の省電力化に貢献することができる。また、電動ポンプ12の消費電力を少なくすることができるので、より小型の電動ポンプを採用することができる。
【0200】
また、気泡溜め室751に溜まる気泡の量が所定量を超えると、気泡は、浮力により弁装置60の傘部62aを押し上げ、フィルタ装置740の外側に流出する。このように、本実施形態においても、気泡溜め室751に溜まった気泡をフィルタ装置740の外側に排出することができる。このため、分離させた気泡が燃料通路750に流入してしまうという問題の発生を抑制できる。ゆえに、ポンプ吐出流量の低下を抑制する効果を長期に亘り発揮することができる。
【0201】
(第5実施形態の変形例)
以下、本発明の第5実施形態の変形例を図面に基づいて説明する。第5実施形態の変形例では、移送用ジェットポンプ871の形態が第5実施形態の移送用ジェットポンプ771のものと異なる。本変形例では、燃料供給装置711、圧力調整装置22、燃料供給管23、およびホース776の構造は、第5実施形態のものと同じである。
【0202】
図12は、本変形例の移送燃料ポンプ870を備える燃料供給システム810の概略構成を示している。燃料供給システム870が設置される燃料タンク724は、第5実施形態の鞍型燃料タンク724と同じ鞍型燃料タンクである。燃料供給システム870は、燃料供給装置711、圧力調整装置22、燃料供給管23および移送燃料ポンプ870などから構成されている。ここでは、移送燃料ポンプ870についてのみ説明する。
【0203】
図13は、移送燃料ポンプ870の移送用ジェットポンプ871を拡大した縦断面を示し、図14は、移送燃料ポンプ870のフィルタ装置740を拡大した縦断面を示している。移送燃料ポンプ870は、移送用ジェットポンプ871およびフィルタ装置740などから構成されている。移送用ジェットポンプ871は、スロート部872、移送配管873、導入部874および噴出部875などから構成されている。
【0204】
スロート部872は、樹脂材料より管状に形成された管部材であり、内部に通路872aを形成する。スロート部872は、通路872aの方向が燃料タンク724の天地方向に沿うように第一燃料室728に設置されている。スロート部872の上端の開口部872bには、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出する噴出部875が挿入されている。スロート部872の下端の開口部872cは、第一燃料室728の底部725aに向って開口している(図12を参照)。図13に示すように、通路872aの内壁には、中心軸に向って隆起する部位が形成されている。また、スロート部872は、通路872aと連通する接続通路872eを形成する接続部872dを有している。接続部872dには、後述する移送配管873が接続されている。接続通路872eのスロート部872側は、当該隆起部位よりも上側の当該通路872aの内壁に開口している。
【0205】
噴出部875は、通路872aにおいて、隆起部位よりも上側であって、接続通路872eの通路872a側の開口部よりも下側に噴出口が配置されるように設置され、下端の開口部872cに向けて圧力調整装置22から排出される余剰燃料を噴出する。噴出部875には、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部875に導くホース776が接続されている。
【0206】
なお、本変形例では、圧力調整装置22からの余剰燃料を噴出部875に導いている例で説明しているが、エンジン30に供給される燃料から分流した圧力調整装置22から排出される燃料とは別の燃料、またはエンジン30に供給されたもののエンジン30の燃焼室に供給されずに燃料タンク724に戻される燃料を噴出部875に導くような構成であっても良い。具体的には、ポンプ部16において昇圧途中に発生したベーパを含んだ燃料を排出するためのポンプ部16に設けられるベーパ排出口(図示せず)から排出される燃料を噴出部875に導いたり、エンジン30からのリターン燃料を噴出部875に導く。
【0207】
一方、第二燃料室729には、接続部872dと、移送通路873aを形成する移送配管873を介して接続される導入部874が設置されている(図12および図14を参照)。導入部874は、樹脂材料より管状に形成された管部材であり、内部に導入通路874aを形成する。導入部874は、導入通路874aの方向が燃料タンク724の天地方向に沿うように第二燃料室729に設置されている。導入部874の上端の開口部874bには移送配管873が接続されている。これにより、導入通路874aと移送通路873aとが連通する。導入部874の下端の開口部874cにはフィルタ装置740が接続されている。これにより、導入通路874aとフィルタ装置740内の燃料通路750とが連通する。
【0208】
フィルタ装置740は、移送用ジェットポンプ871が導入部874の開口部874cより吸入する燃料中の異物を捕捉するものであって、当該開口部874cに接続されている。フィルタ装置740は、フィルタエレメント741および弁装置60などから構成されている。フィルタエレメント741は、樹脂製の繊維からなる膜状の不織布からなり、第二燃料室729の底部725bに沿った方向に延びるよう扁平に、かつ袋状に形成したものであり、燃料を通過させることにより、燃料中の異物を捕捉する。フィルタエレメント741は、燃料タンク724の天井部726側に配置される上部エレメント742および第二燃料室729の底部725b側に配置される下部エレメント744からなっている。フィルタエレメント741は、これら二枚の膜状に形成された各エレメント742、744を重ね合わせ、それぞれの外周縁部を加熱して、溶着することにより袋状に形成される。
【0209】
上部エレメント742は、燃料タンク724の天井部726に向って突き出るような形状となっており、移送用ジェットポンプ871側の部位が開口部874cに接続されている。上部エレメント742は、当該ジェットポンプ871より離れるにしたがい天井部726に向って上方に傾斜する傾斜部742aおよび傾斜部742aの当該ジェットポンプ871とは反対側に接続される平坦部742bを有している。平坦部742bには、第1実施形態と同じ弁装置60が設けられている。
【0210】
下部エレメント744は、燃料タンク724の底部725に向って突き出るような有底筒状となっており、移送用ジェットポンプ871側の部位が開口部874cに接続されている。このようにして二つの部材が組み合わされ、袋状に形成されたフィルタエレメント741の内側には、燃料通路750と気泡溜め室751が形成される。
【0211】
燃料通路750は、フィルタエレメント741を通過して濾過された燃料を当該ジェットポンプ871に導く通路であり、下部エレメント744側に形成される。気泡溜め室751は、燃料通路750を流れる濾過燃料中に含まれる気泡を溜めるための領域であって、燃料通路750の上方において、当該気泡が移動可能に燃料通路750と連通している。本実施形態では、第1実施形態のフィルタ装置740と同様、上部エレメント742が有する傾斜部742aおよび平坦部742bにて気泡溜め室751の一部を形成している。
【0212】
弁装置60は、第1実施形態の弁装置60と同じ構造であるため、ここでは弁装置60の構造についての説明は省略する。
【0213】
なお、本実施形態では、移送用ジェットポンプ871およびフィルタ装置740にて、特許請求の範囲に記載の燃料ポンプを構成する。すなわち、移送用ジェットポンプ871が特許請求の範囲に記載のポンプ装置に相当し、フィルタ装置740が特許請求の範囲に記載のフィルタ装置に相当する。また、本実施形態では、スロート部872の通路872a、接続通路872e、移送通路873aおよび導入通路874aが特許請求の範囲に記載の通路に相当し、導入部874の下端の開口部874cが特許請求の範囲に記載の吸入部に相当し、スロート部872の下端の開口部872cが特許請求の範囲に記載の吐出部に相当する。
【0214】
次に、燃料供給システム870の作動について説明する。燃料供給装置711において、電動ポンプ12が作動すると、電動ポンプ12に燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、第一燃料室728の燃料が、電動ポンプ12内に流入する。電動ポンプ12にて圧力が高められた燃料が、燃料供給装置711より圧力調整装置22に向けて吐き出される。圧力調整装置22に流入した燃料は、圧力調整装置22にて燃料圧力が調整され、エンジン30に向けて吐き出される。圧力調整装置22から排出される余剰燃料は、ホース776を介して噴出部875に流入する。噴出部875からは余剰燃料が噴出される。
【0215】
噴出部875から余剰燃料が噴出されると、噴出部875の周囲の燃料圧力がフィルタ装置740の内側の燃料圧力よりも低下し、燃料吸引力が発生する。この燃料吸引力により、フィルタ装置740の内側の燃料圧力が、外側の燃料圧力よりも低下するため、フィルタ装置740の外側の燃料がフィルタエレメント741を通過して、燃料通路750に流入する。燃料がフィルタエレメント741を通過する際、気泡が発生する。発生した気泡は、フィルタ装置740の内側において、浮力により、燃料通路750の上方に形成されている気泡溜め室751に向って移動し、気泡溜め室751に溜まる。これにより、燃料通路750に流入した濾過燃料より、気泡が分離される。
【0216】
気泡が分離された濾過燃料は、図13中の白抜き矢印で示すように、移送用ジェットポンプ871が発生する燃料吸引力により形成される燃料流れに乗り導入部874の下端の開口部874cより導入通路874a内に流入する。導入通路874a内に流入した濾過燃料は、移送通路873aおよび接続通路872eを通って通路872aに流入する。通路872aに流入した濾過燃料は、噴出部875から噴出される噴出燃料とともにスロート部872の下端の開口部872cから第一燃料室728の底部725aに向って吐き出され、第一燃料室728に流入する。
【0217】
本変形例では、第5実施形態とは異なり、第一燃料室728にスロート部872と噴出部875を配置させているので、噴出部875と圧力調整装置22とを接続するホース776も第一燃料室728に配置されることとなる。このことによれば、鞍型燃料タンク724の凸部727を跨ぐ部材が移送配管873のみとなり、燃料供給システム870の構造を簡単にすることができる。
【0218】
(その他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0219】
上記第1〜4実施形態の燃料供給装置11、111、211、311、411、511のいずれかを、上記第5実施形態およびその変形例の燃料供給システム710、810に採用しても良い。
【0220】
また、上記第1〜5実施形態の燃料供給装置11、111、211、311、411、511、711が備える電動ポンプ12の形態は問わない。例えば、電動式のギヤポンプであっても良いし、電動式のプランジャポンプであっても良いし、電動式のトロコイドポンプであっても良い。
【0221】
さらに、上記第1〜5実施形態における燃料供給装置11、111、211、311、411、511、711と圧力調整装置22との間に、各実施形態のフィルタ装置40、140、240、340、440、540、740におけるフィルタエレメント41、141、341a、541、741が捕捉できる異物のよりも小さい異物や、電動機で発生するブラシ摩耗粉などの異物などを捕捉可能な目の細かい燃料フィルタを設けても良い。ブラシ摩耗粉とは、電動機が備えるコンミテータとブラシとが摺動する際に発生する摩耗粉のことである。
【符号の説明】
【0222】
10 燃料供給システム、11 燃料供給装置、12 電動ポンプ、13 電動機、14 ロータ、15 シャフト、16 ポンプ部、17 ポンプハウジング、18 ポンプ部吐出口、19 ハウジング、20 吸入口(吸入部)、21 吐出口(吐出部)、22 圧力調整装置、23 燃料供給管、24 燃料タンク、25 底部、26 天井部、30 エンジン、40 フィルタ装置、41 フィルタエレメント、42 上部エレメント、42a 傾斜部、42b 平坦部、44 下部エレメント、46 接続部、50 燃料通路、51 気泡溜め室、52 フィルタフレーム、60 弁装置、61 弁座部材、61a 弁座、61b 連通孔、61c 表面、62 弁部材、62a 傘部、62b 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入部から燃料を吸入する燃料吸引力を発生し、当該吸入部から吸入した燃料を吐出部より吐出するポンプ装置と、前記吸入部に接続され前記ポンプ装置が吸入する燃料を濾過するフィルタ装置とを備える燃料ポンプにおいて、
前記フィルタ装置は、
前記フィルタ装置の外殻をなす外殻壁であって、前記ポンプ装置が吸入する燃料を濾過する膜状のフィルタエレメントを少なくとも一部に有し、前記フィルタエレメントにて濾過された燃料を前記ポンプ装置の前記吸入部に導く燃料通路、および前記燃料通路の上方において、前記燃料通路を流れる燃料中に含まれる気泡が移動可能に前記燃料通路と連通して前記気泡を溜める気泡溜め室のそれぞれを内側に形成する外殻壁と、
前記外殻壁に設けられ、前記気泡溜め室内に前記気泡が溜まることにより前記気泡溜め室と前記外殻壁の外側とを連通する弁装置と、を備えることを特徴とする燃料ポンプ。
【請求項2】
前記フィルタエレメントは、燃料が浸み込むことにより、表面に燃料液膜を形成して、燃料を通過を許容するとともに、実質的に気泡の通過を妨げることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ。
【請求項3】
前記外殻壁の上部に、前記弁装置に向かうほど上方に傾斜する傾斜部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料ポンプ。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記フィルタエレメントにより形成されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料ポンプ。
【請求項5】
前記傾斜部は、前記吸入部から離れるほど上方に傾斜していることを特徴とする請求項3または4に記載の燃料ポンプ。
【請求項6】
前記弁装置は、前記外殻壁の上部の最も高い位置に設けられており、
前記傾斜部は、前記弁装置に向うほど上方に傾斜していることを特徴とする請求項3または4に記載の燃料ポンプ。
【請求項7】
前記弁装置は、
前記フィルタ装置の外側に面する表面上に形成される弁座、および前記弁座の内周側に形成され、前記気泡溜め室と前記フィルタ装置の外側とを連通する連通孔を有し、前記外殻壁に設けられる弁座部材と、
前記表面側に配置され、前記気泡溜め室内の気泡に押され、前記弁座より離座し、前記気泡溜め室から前記フィルタ装置の外側への前記気泡の排出を許容し、前記気泡溜め室内の気泡の量の低下により、前記弁座に着座し、前記フィルタ装置の外側から内側への燃料の流入を妨げる弁部材と、を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料ポンプ。
【請求項8】
前記燃料通路は、第一燃料通路、および前記第一燃料通路と前記ポンプ装置の前記吸入部とを連通する第二燃料通路からなっており、
前記外殻壁は、
内側において前記第一燃料通路を形成する前記フィルタエレメントと、
流体の通過を禁止する材料からなり、内側において前記第二燃料通路、および前記第二燃料通路の上方において連通する前記気泡溜め室を形成するタンク壁とよりなっており、
前記フィルタエレメントは、前記第一燃料通路と前記第二燃料通路とが連通するように前記タンク壁の下端に設けられ、
前記弁装置は、前記タンク壁における前記気泡溜め室を形成する部位に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ。
【請求項9】
前記弁装置は、
前記フィルタ装置の外側に面する表面上に形成される弁座、および前記弁座の内周側に形成され、前記気泡溜め室と前記フィルタ装置の外側とを連通する連通孔を有し、前記タンク壁に設けられる弁座部材と、
前記表面側に配置され、前記気泡溜め室内の気泡に押され、前記弁座より離座し、前記気泡溜め室から前記フィルタ装置の外側への前記気泡の排出を許容し、前記気泡溜め室内の気泡の量の低下により、前記弁座に着座し、前記フィルタ装置の外側から内側への燃料の流入を妨げる弁部材と、を備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料ポンプ。
【請求項10】
前記第一燃料通路と前記第二燃料通路との間に設けられ、一方の端部が前記第一燃料通路に開口し、他方の端部が前記第二燃料通路に開口する通路を形成するスロート部と、前記通路内に設置され、前記第二燃料通路への開口部位に向けて燃料を噴出する噴出部と、を有する補助ジェットポンプを備えることを特徴とする請求項8または9に記載の燃料ポンプ。
【請求項11】
前記フィルタ装置の内側には、前記外殻壁の内側の面を支える骨格部が設置されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の燃料ポンプ。
【請求項12】
前記ポンプ装置は、前記吸入部から燃料を吸入する燃料吸引力を電動機の作動により発生し、前記吸入部より吸入した燃料を加圧して前記吐出部より吐出する電動ポンプであることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の燃料ポンプ。
【請求項13】
前記ポンプ装置は、
前記吸入部および、前記吐出部を有する通路を形成するスロート部と、
前記通路内に設置され、前記吐出部に向けて燃料を噴出する噴出部と、を有し、前記吸入部から燃料を吸入する燃料吸引力を前記噴出部からの燃料の噴出により発生し、前記吸入部より吸入した燃料を前記吐出部より吐出するジェットポンプであることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の燃料ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−122563(P2011−122563A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283058(P2009−283058)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】