説明

燃料供給装置

【課題】複数の燃料フィルタをコンパクトに配置しながら、各燃料フィルタのろ過面積を大きくし、ろ過効率を高めた燃料供給装置を供する。
【解決手段】内燃機関に燃料を供給する燃料ポンプ11,12が複数互いに隣接して燃料タンク2内に配設され、各燃料ポンプ11,12の下に燃料タンク内の燃料をろ過する燃料フィルタ21,22がそれぞれ設けられている燃料供給装置10において、前記各燃料フィルタ21,22が互いに一部上下に重ねられて配置される燃料供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内に設けられ燃料ポンプにより内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような燃料供給装置において、既存の安価な燃料ポンプを併用して、高性能な燃料ポンプを簡単かつ低コストで得るべく、小容量の燃料ポンプを複数組み合わせて必要な吐出量を得るようにした構成が、同じ出願人により先に出願された特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2008−094400号
【0004】
同特許文献1には、2個の燃料ポンプを水平方向に並べてユニット化し、各燃料ポンプから下方に延出する吸入管の下端にそれぞれ燃料フィルタが同じ高さ位置で設けられている燃料供給装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2つの燃料フィルタは、同じ高さ位置にあるので、互いに干渉しないように大きさが制限され、それに伴いろ過面積の大きさも限られていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、複数の燃料フィルタをコンパクトに配置しながら、各燃料フィルタのろ過面積を大きくし、ろ過効率を高めた燃料供給装置を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、内燃機関に燃料を供給する燃料ポンプが複数互いに隣接して燃料タンク内に配設され、各燃料ポンプの下に燃料タンク内の燃料をろ過する燃料フィルタがそれぞれ設けられている燃料供給装置において、前記各燃料フィルタが互いに一部上下に重ねられて配置される燃料供給装置とした。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の燃料供給装置において、前記燃料ポンプは、水平方向に並設された第1燃料ポンプと第2燃料ポンプの2個からなり、前記第1燃料ポンプの下方に延出した第1吸入管の下端に第1燃料フィルタが設けられ、前記第2燃料ポンプの下方に延出した第2吸入管の下端に第2燃料フィルタが設けられ、前記第2燃料フィルタの上に前記第1燃料フィルタが重なり、前記第2吸入管は、前記第1燃料フィルタに形成された欠損部を貫通して前記第2燃料フィルタに達していることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の燃料供給装置において、前記第2燃料フィルタは前記第1燃料フィルタよりろ過面積が大きく設定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の燃料供給装置において、前記内燃機関が稼動しているとき、前記第2燃料ポンプは常時駆動され、前記第1燃料ポンプは所定以上の吐出量を要求される場合に駆動されることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2に記載の燃料供給装置において、前記第2燃料フィルタは、欠損部を有して前記第1燃料フィルタと同一形状をなすことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の燃料供給装置において、前記第1燃料フィルタに形成された欠損部は、外周縁を略U字状に切り欠いて形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の燃料供給装置において、前記第1燃料フィルタと前記第2燃料フィルタは、互いに全体が上下に重なり合うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の燃料供給装置によれば、燃料タンク内に複数互いに隣接して配設された燃料ポンプの下にそれぞれ設けられた燃料フィルタが互いに一部上下に重ねられて配置されるので、複数の燃料フィルタを互いに干渉せずに水平に扁平にしてコンパクトに配置しながら、各燃料フィルタのろ過面積を大きくし、ろ過効率を高めることができる。
【0015】
請求項2記載の燃料供給装置によれば、燃料ポンプは水平方向に並設された第1燃料ポンプと第2燃料ポンプの2個からなり、第1燃料ポンプの下方に延出した第1吸入管の下端に第1燃料フィルタが設けられ、第2燃料ポンプの下方に延出した第2吸入管の下端に第2燃料フィルタが設けられ、第2燃料フィルタの上に第1燃料フィルタが重なり、第2吸入管は第1燃料フィルタに形成された欠損部を貫通して第2燃料フィルタに達しているので、第1燃料フィルタと第2燃料フィルタの重なり面積を大きくしてコンパクトに配置し、かつ第2燃料フィルタとともに第1燃料フィルタも一部欠損部を有する程度でろ過面積を大きくし、ろ過効率を高めることができる。
【0016】
請求項3記載の燃料供給装置によれば、前記第2燃料フィルタは前記第1燃料フィルタよりろ過面積が大きく設定されるので、燃料タンクの底面に近い下側の第2燃料フィルタは上側の第1燃料フィルタよりろ過して除去する異物の量が多いため、この第2燃料フィルタのろ過面積を第1燃料フィルタより大きくすることで、ろ過機能を効率良く果たすことができる。
【0017】
請求項4記載の燃料供給装置によれば、内燃機関が稼動しているとき、第2燃料ポンプは常時駆動され、第1燃料ポンプは所定以上の吐出量を要求される場合に駆動されるので、第1燃料ポンプは必要な場合のみ駆動され常時駆動しないため、第1燃料フィルタの交換サイクルを長くすることができる。
また、常時駆動の第2燃料ポンプに設けられる第2燃料フィルタのろ過面積を第1燃料フィルタのろ過面積より大きく設定することで、常時ろ過機能を高く維持して、かつ第1燃料フィルタを小さくすることができる。
【0018】
請求項5記載の燃料供給装置によれば、前記第2燃料フィルタは、欠損部を有して前記第1燃料フィルタと同一形状をなすので、第1燃料フィルタと第2燃料フィルタのいずれにも1種類の燃料フィルタを使用でき、部品の種類を削減して部品管理を容易とするとともに、燃料フィルタの製造コストを低減することができる。
【0019】
請求項6記載の燃料供給装置によれば、第1燃料フィルタに形成された欠損部は、外周縁を略U字状に切り欠いて形成したので、第2吸入管を第1燃料フィルタの略U字状欠損部に側方から簡単に貫通させることができ、燃料供給装置の組立性を向上させることができる。
また、異物の溜まり易い第2吸入管と第2燃料フィルタとの連結部が、第1燃料フィルタの切欠きにより見易く、メンテナンスを容易にする。
【0020】
請求項7記載の燃料供給装置によれば、第1燃料フィルタと第2燃料フィルタが、互いに全体が上下に重なり合うので、第1燃料フィルタと第2燃料フィルタを必要最小限のスペースでコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態における自動二輪車のシートレールに支持される燃料タンク内に配設された燃料供給装置を示す一部省略した側面図である。
【図2】同燃料供給装置の一部断面とした側面図である。
【図3】同燃料供給装置の上面図である。
【図4】同燃料供給装置の上部蓋部材を省略した上断面図である。
【図5】同燃料供給装置の第2燃料フィルタおよび一部を省略し主に第1燃料フィルタを示した下面図である。
【図6】第2燃料フィルタの下面図である。
【図7】別の変形例の主に第1燃料フィルタを示した下面図である。
【図8】同変形例の第2燃料フィルタの下面図である。
【図9】また別の変形例の主に第1燃料フィルタを示した下面図である。
【図10】同変形例の第2燃料フィルタの下面図である。
【図11】第2の実施の形態における自動二輪車のシートレールに支持される燃料タンク内に配設された燃料供給装置を示す一部省略した側面図である。
【図12】同燃料供給装置の一部断面とした側面図である。
【図13】同燃料供給装置の上面図である。
【図14】同燃料供給装置の第2燃料フィルタおよび一部を省略した下面図である。
【図15】第2燃料フィルタの下面図である。
【図16】内燃機関の負荷状態に対する燃料吐出量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る第1の実施の形態について図1ないし図6に基づいて説明する。
本第1の実施の形態に係る燃料供給装置10は、自動二輪車に搭載される燃料タンク2内に配設される。
なお、本明細書中では、自動二輪車の車体を基準に前後左右を決めておくこととする。
【0023】
自動二輪車の後部のシート下方を左右一対のシートレール1,1が前後方向に延びており、この両シートレール1,1間に架設されて燃料タンク2が支持されている(図1参照)。
燃料供給装置10は、この燃料タンク2の略水平な上壁2aに形成された円孔に上端部を嵌着して、燃料タンク内に垂設され、最下端は、燃料タンク2の略水平な底壁2bに近接している。
【0024】
図2に示すように、燃料供給装置10は、2個の円柱状をした既存の安価な燃料ポンプ(第1燃料ポンプ11,第2燃料ポンプ12)を前後に隣接して配列したものを、円筒状をしたポンプケース15が囲繞するようにして収容している。
第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12は、互いに上下方向にオフセットしており、前側の第2燃料ポンプ12が下方にオフセットし、後側の第1燃料ポンプ11が上方にオフセットしている。
互いに上下方向にオフセットして前後に並設された第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12は、若干右寄りにシフトしてポンプケース15に収容される。
【0025】
ポンプケース15の下端開口を塞いだ底壁16に第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12は支持されている。
第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12からは、下方にそれぞれ第1吸入管11iと第2吸入管12iが延出し、底壁16を貫通している。
【0026】
底壁16に下には、扁平袋状をした第1燃料フィルタ21と第2燃料フィルタ22が上下に互いに大部分重なって設けられている。
この第1燃料フィルタ21と第2燃料フィルタ22は、内部フレームにより不織布を扁平袋状に形成したものである。
【0027】
上側の第1燃料フィルタ21は、図5に示すように、下面視で概ね円盤形状をして、前側外周部に略U字状に切り欠いた切欠き21cが形成されている。
第1燃料ポンプ11から下方に延出する第1吸入管11iが第1燃料フィルタ21の上側部に嵌入し内部フレームに結合されており、第2燃料ポンプ12から下方に延出する第2吸入管12iは、第1燃料フィルタ21の前側の切欠き21cを貫通している。
【0028】
下側の第2燃料フィルタ22は、図6に示すように、下面視で第1燃料フィルタ21と同径の円盤形状をしており、前記第1燃料フィルタ21の切欠き21cを貫通した第2吸入管12iが第2燃料フィルタ22の上側部に嵌入し内部フレームに結合されている。
下側で燃料タンク2の底壁2bに近接する第2燃料フィルタ22の方が、第1燃料フィルタ21より、切欠き21cの分だけフィルタ面積が大きい。
【0029】
一方、第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12からは、上方にそれぞれ第1吐出管11eと第2吐出管12eが延出し、その上方に前後方向に指向して配設されたジョイント管25に第1吐出管11eと第2吐出管12eの各上端が嵌入している。
したがって、第1吐出管11eと第2吐出管12eは、ジョイント管25によって内部が連通している。
【0030】
そして、ジョイント管25の前端の開口には、プレッシャレギュレータ30が基端を嵌入して装着されている。
プレッシャレギュレータ30は、第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12から吐出されジョイント管25内で合流した燃料の燃圧が所定以上になったときに開口して燃料の一部を前方に噴出して燃料タンク2内に戻す調圧装置である。
【0031】
ジョイント管25の略中央位置から分岐して上方に導出管26が延出しており、導出管26の上端部から左方に導出接続管27が突設されている。
この導出接続管27に燃料パイプ(図示せず)が接続され、燃料パイプに導かれて内燃機関の吸気系に燃料が供給される。
【0032】
略鉛直に延びる導出管26を中心支軸として有底円筒状をした上部蓋部材28が形成されている。
有底円筒状をした上部蓋部材28は、底壁28aを上側にして円筒部28bの開口を下側に向けており、導出管26が円筒部28bの中心軸に同軸に上方に延びて上部蓋部材28の底壁28aを貫通して導出接続管27が突設される上端部を底壁28aより上方に突出して一体に形成されている。
【0033】
この上部蓋部材28の円筒部28bの底壁28a寄りの外周にフランジ状に環状取付座29が突出して形成されている。
上部蓋部材28の円筒部28bは、同軸のポンプケース15より外径が幾らか大きく、平面視でポンプケース15は上部蓋部材28に包含される(図3,図4参照)。
【0034】
図1に示すように、本燃料供給装置10は、燃料タンク2の上壁2aに形成された円孔に上部蓋部材28の円筒部28bが上方から嵌入して環状取付座29が上壁2aの円孔の開口縁部に当接して固着されることで、燃料タンク2の上壁2aの円孔が閉塞されて、燃料タンク2内に第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12を含む殆どが垂設され、燃料タンク2の外部には環状取付座29とそれより上の導出接続管27だけが露出する。
そして、燃料供給装置10の最下端の下側の第2燃料フィルタは、燃料タンク2の底壁2bに近接している。
【0035】
本燃料供給装置10は、第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12を駆動すると、燃料タンク2内の燃料を底の方からそれぞれ第1燃料フィルタ21と第2燃料フィルタ22を介してろ過して、第1吸入管11iと第2吸入管12iを通して吸入し、上方の第1吐出管11eと第2吐出管12eにそれぞれ吐出する。
そして、第1吐出管11eと第2吐出管12eに吐出された燃料は、ジョイント管25内で合流し、中央の導出管26に導かれて上昇し、導出管26の上端に突出され外部に露出した導出接続管27から燃料パイプに導出して内燃機関の吸気系に供給される。
【0036】
第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12から吐出されジョイント管25内で合流した燃料の燃圧が所定以上になると、プレッシャレギュレータ30が燃料の一部を前方に噴出して燃料タンク2内に戻し、調圧制御する。
【0037】
本燃料供給装置10には、燃料タンク2内の燃料量を液面の高さで検出する液面計ユニット40が取り付けられている。
ジョイント管25の左側面から矩形枠状に膨出してブラケット25bが形成されており、同ブラケット25bの前後に長尺矩形の左側面に液面計ユニット40の液面計本体41が取り付けられる。
【0038】
液面計本体41は、前後に長尺の直方体形状をなしており、第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12の配列方向である前後方向が長尺方向になるようにブラケット25bに取り付けられる。
この液面計本体41の左側面に突出した揺動中心軸42cを基端とした支持アーム42が径方向に屈曲し、さらに斜め左方に屈曲して延び、先端にフロート43が取り付けられている。
【0039】
支持アーム42の先端のフロート43は、常に液面計本体41より後方にあって、燃料タンク2内を上下に揺動し、燃料タンク2内の燃料の液面に浮くことにより支持アーム42が示す揺動角度を液面計本体41において計測することで液面の高さを検出する。
液面計本体41の前端の接続端子部44aからハーネス44が延出している。
【0040】
以上のように、本燃料供給装置10は、燃料タンク2内に第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12が水平方向に隣接して並設され、第1燃料ポンプ11の下方に延出した第1吸入管11iの下端に第1燃料フィルタ21が設けられ、第2燃料ポンプ12の下方に延出した第2吸入管12iの下端に第2燃料フィルタ22が設けられ、第2燃料フィルタ22の上に第1燃料フィルタ21が重なり、第2吸入管12iは第1燃料フィルタ21に形成された欠損部21cを貫通して第2燃料フィルタ22に達しているので、第1燃料フィルタ21と第2燃料フィルタ22の重なり面積を大きくしてコンパクトに配置し、かつ第2燃料フィルタ22とともに第1燃料フィルタ21も一部欠損部21cを有する程度でろ過面積を大きくし、ろ過効率を高めることができる。
【0041】
第1燃料フィルタ21と第2燃料フィルタ22が、互いに全体が上下に重なり合うので、第1燃料フィルタ21と第2燃料フィルタ22を必要最小限のスペースでコンパクトに配置することができる。
【0042】
第2燃料フィルタ22は第1燃料フィルタ21より幾らかろ過面積が大きく設定されるので、燃料タンクの底面に近い下側の第2燃料フィルタ22は上側の第1燃料フィルタ21よりろ過して除去する異物の量が多いため、この第2燃料フィルタ22のろ過面積を第1燃料フィルタ21より大きくすることで、ろ過機能を効率良く果たすことができる。
【0043】
第1燃料フィルタ21に形成された欠損部21cは、外周縁をU字状に切り欠いて形成したので、第2吸入管を第1燃料フィルタ21の欠損部21cに側方から簡単に貫通させることができ、燃料供給装置の組立性を向上させることができる。
また、異物の溜まり易い第2吸入管12iと第2燃料フィルタ22との連結部が、第1燃料フィルタ21のU字状の欠損部21cにより見易く、メンテナンスを容易にする。
【0044】
以上の第1の実施の形態における第1燃料フィルタ21と第2燃料フィルタ22は、共に円盤形状(円形)をしていたが、形状を互いに異にした変形例を、図7および図8に示す。
すなわち、第1燃料フィルタ101は長円形状をしているが、第2燃料フィルタ102は前記と同じ円形をしている。
【0045】
第1燃料フィルタ101は前後方向を長径としており、その外周縁の前側にU字状に切り欠いた欠損部101cを形成しており、同欠損部101cを第2燃料ポンプ12の下方に延出した第2吸入管12iが貫通する。
このように、第1燃料フィルタ101と第2燃料フィルタ102を、互いに形状を変えてフィルタ面積を適宜変えることもできる。
【0046】
以上の例では、前後に並設された第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12は、若干右寄りにシフトしてポンプケース15に収容されており、第1燃料ポンプ11と第2燃料ポンプ12の下面の中心から第1吸入管11iと第2吸入管12iが延出していたので、第1吸入管11iと第2吸入管12iもポンプケース15に対して右寄りにシフトしていたが、次の図9および図10に示す変形例では、第1燃料ポンプ111と第2燃料ポンプ112の下面の中心から左寄りに偏心した位置から第1吸入管111iと第2吸入管112iが延出しているので、第1吸入管111iと第2吸入管112iはポンプケース15の中心軸から前後半径方向に等距離の位置にある。
【0047】
第1吸入管11iの下端が結合される第1燃料フィルタ121は、円盤形状をなし、外周縁の前側がU字状に切り欠かれて欠損部121cが形成され、同欠損部121cを前記第2吸入管112iが貫通して下側の第2燃料フィルタ122に結合される。
この第2燃料フィルタ122は、第1燃料フィルタ121と同形状をなし、外周縁にU字状に切り欠かれた欠損部122cも形成されており、前記第1燃料フィルタ121をポンプケース15の中心軸を中心に180度回転して欠損部122cを後方に向けて配設すると第2燃料フィルタ122となる。
【0048】
このように、第1燃料フィルタ121と第2燃料フィルタ122を全く同形状のものを使用することで、1種類の燃料フィルタを製造すればよく、部品の種類を削減して部品管理を容易とするとともに、燃料フィルタの製造コストを低減することができる。
【0049】
次に、第2の実施の形態について、図11ないし図15に基づいて説明する。
本第2の実施の形態に係る燃料供給装置60は、自動二輪車の後部でシート下方の左右一対のシートレール51,51間に架設される燃料タンク52内に配設されるものであり、この燃料タンク52の略水平な底壁52bに形成された円孔に下端部を嵌着して、燃料タンク52内に立設される。
【0050】
図12に示すように、燃料供給装置60は、2個の円柱状をした既存の安価な第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62を後側と前側に隣接して配列し互いに上下方向にオフセットしたものが、円筒状をしたポンプケース65に収容され、ポンプケース65の下端開口を塞いだ底壁66により支持されている。
【0051】
第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62からは、下方にそれぞれ第1吸入管61iと第2吸入管62iが延出して底壁66を貫通しており、底壁66を貫通した第1吸入管61iと第2吸入管62iの下端は、底壁66の下方に上下に互いに部分的に重なって設けられた扁平袋状をした第1燃料フィルタ71と第2燃料フィルタ72にそれぞれ嵌入し内部フレームに結合される。
【0052】
上側の第1燃料フィルタ71は、図14に示すように、下面視で円形の斜め左前と右の一部が大きく欠損した形状をしており、第1燃料ポンプ61から下方に延出する第1吸入管61iが第1燃料フィルタ71の上側部に嵌入し内部フレームに結合されており、第2燃料ポンプ62から下方に延出する第2吸入管62iは、第1燃料フィルタ71の斜め左前の欠損部71cを貫通している。
また、上方から下方に延びている後記する導出管76が、欠損部71cを貫通する。
【0053】
下側の第2燃料フィルタ72は、図15に示すように、下面視で円形の左側部分がU字状に切り欠かれた欠損部72cと右の一部が欠損した形状をしており、前記第1燃料フィルタ21の欠損部21cを貫通した第2吸入管12iが第2燃料フィルタ22の上側部に嵌入し内部フレームに結合されている。
そして、前記導出管76が、欠損部72cを貫通する。
【0054】
一方、第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62からは、上方にそれぞれ第1吐出管61eと第2吐出管62eが延出し、その上方に前後方向に指向して配設されたジョイント管75に第1吐出管61eと第2吐出管62eの各上端が嵌入している。
ジョイント管75の前端の開口には、プレッシャレギュレータ80が基端を嵌入して装着されている。
【0055】
ジョイント管75の略中央の左寄り位置から下方に分岐した導出管76が下方に長尺に延びており、この導出管76が前記第1燃料フィルタ71の欠損部71cおよび第2燃料フィルタ72の欠損部72cを貫通して下端に達しており、同下端部から左方に導出接続管77が突設されている。
この導出接続管77に燃料パイプ(図示せず)が接続され、燃料パイプに導かれて内燃機関の吸気系に燃料が供給される。
【0056】
第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62の下方の第1燃料フィルタ71と第2燃料フィルタ72を下方から有底円筒状をした下部蓋部材78が被せられ、底壁78aの中央部分が導出管76の下部に一体に結合され、底壁78aより下方に突出した下端部には前記導出接続管77が突設されている。
下部蓋部材78の円筒部78bの外周にはフランジ状に環状取付座79が突出して形成されている。
【0057】
下部蓋部材78の円筒部28bは、内径が同軸のポンプケース65の外径より大きく、ポンプケース65の下端部に下部蓋部材78の円筒部28bの上端が上下方向で重なり、両者間に環状の空隙68が形成され、同空隙68から下部蓋部材78内に燃料が入るようになっている。
【0058】
図11に示すように、本燃料供給装置60は、燃料タンク52の底壁52bに形成された円孔に下部蓋部材78の円筒部78bの環状取付座79より上の部分が下方から嵌入して環状取付座79が底壁52bの円孔の開口縁部に当接して固着されることで、燃料タンク52の底壁52bの円孔が閉塞されて、燃料タンク52内に第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62を含む殆どが立設され、燃料タンク52の外部には環状取付座79とそれより下の導出接続管77だけが露出する。
【0059】
本燃料供給装置60は、第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62を駆動すると、燃料タンク52内の燃料を底部の下部蓋部材78の底からそれぞれ第1燃料フィルタ71と第2燃料フィルタ72を介してろ過して、第1吸入管61iと第2吸入管62iを通して吸入し、上方の第1吐出管61eと第2吐出管62eにそれぞれ吐出する。
そして、第1吐出管61eと第2吐出管62eに吐出された燃料は、ジョイント管75内で合流し、中央の導出管76に導かれて下降し、導出管76の下端に突出され外部に露出した導出接続管77から燃料パイプに導出して内燃機関の吸気系に供給される。
【0060】
第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62から吐出されジョイント管75内で合流した燃料の燃圧が所定以上になると、プレッシャレギュレータ80が燃料の一部を前方に噴出して燃料タンク52内に戻し、調圧制御する。
【0061】
本燃料供給装置60には、燃料タンク52内の燃料量を液面の高さで検出する液面計ユニット90が取り付けられている。
ジョイント管75の左側面から矩形枠状に膨出してブラケット75bが形成されており、同ブラケット75bの前後に長尺矩形の左側面に液面計ユニット90の液面計本体91が取り付けられる。
【0062】
液面計本体91は、前後に長尺の直方体形状をなしており、第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62の配列方向である前後方向が長尺方向になるようにブラケット75bに取り付けられる。
この液面計本体91の左側面に突出した揺動中心軸92cを基端とした支持アーム92が径方向に屈曲し、さらに斜め左方に屈曲して延び、先端にフロート93が取り付けられている。
【0063】
支持アーム92の先端のフロート93は、常に液面計本体91より後方にあって、燃料タンク52内を上下に揺動し、燃料タンク52内の燃料の液面に浮くことにより支持アーム92が示す揺動角度を液面計本体91において計測することで液面の高さを検出する。
液面計本体91の前端の接続端子部94aからハーネス94が延出している。
【0064】
本燃料供給装置60は、燃料タンク52内に第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62が水平方向に隣接して並設され、第1燃料ポンプ61の下方に延出した第1吸入管61iの下端に第1燃料フィルタ71が設けられ、第2燃料ポンプ62の下方に延出した第2吸入管62iの下端に第2燃料フィルタ72が設けられ、第2燃料フィルタ72の上に第1燃料フィルタ71が重なり、第2吸入管62iは第1燃料フィルタ21に形成された欠損部71cを貫通して第2燃料フィルタ72に達しているので、第1燃料フィルタ71と第2燃料フィルタ72の重なり面積を大きくしてコンパクトに配置し、かつ第2燃料フィルタ72とともに第1燃料フィルタ71も一部欠損部71cを有する程度でろ過面積を大きくし、ろ過効率を高めることができる。
【0065】
第1燃料フィルタ71と第2燃料フィルタ72が、互いに全体が上下に重なり合うので、第1燃料フィルタ71と第2燃料フィルタ72を必要最小限のスペースでコンパクトに配置することができる。
【0066】
第2燃料フィルタ72は第1燃料フィルタ71より幾らかろ過面積が大きく設定されるので、燃料タンクの底面に近い下側の第2燃料フィルタ72は上側の第1燃料フィルタ71よりろ過して除去する異物の量が多いため、この第2燃料フィルタ72のろ過面積を第1燃料フィルタ71より大きくすることで、ろ過機能を効率良く果たすことができる。
【0067】
ここに、第1燃料ポンプ61と第2燃料ポンプ62を駆動する場合に、内燃機関が稼動しているとき、第2燃料ポンプ62は常時駆動し、第1燃料ポンプ61は所定以上の吐出量を要求される場合に駆動するように、駆動制御することが考えられる。
【0068】
図16は、内燃機関の負荷状態に対する燃料吐出量の関係を示すグラフである。
内燃機関が低負荷時および中負荷時には、第2燃料ポンプ62のみを駆動することで、所定の燃料吐出量aを得るようにし、高負荷時には第2燃料ポンプ62に加えて第1燃料ポンプ61も駆動することで、燃料吐出量2aを得るようにしている。
【0069】
常時駆動される第2燃料ポンプ62に連結される第2燃料フィルタ72は、ろ過面積が大きいので、常時ろ過機能を高く維持することができるとともに、他方の必要時の使用される第1燃料フィルタ71は小さくでき、かつ常時使用されないため、第1燃料フィルタ71の交換サイクルを長くすることができる。
【0070】
なお、この第1燃料ポンプと第2燃料ポンプの駆動制御方式は、第2燃料フィルタの方が第1燃料フィルタよりろ過面積が大きい前記第1の実施の形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10…燃料供給装置、11…第1燃料ポンプ、11i…第1吸入管、12…第2燃料ポンプ、12i…第2吸入管、15…ポンプケース、
21…第1燃料フィルタ、21c…欠損部、22…第2燃料フィルタ、
60…燃料供給装置、61…第1燃料ポンプ、61i…第1吸入管、62…第2燃料ポンプ、62i…第2吸入管、65…ポンプケース、
71…第1燃料フィルタ、71c…欠損部、72…第2燃料フィルタ、72c…欠損部、
101…第1燃料フィルタ、101c…欠損部、102…第2燃料フィルタ、
111…第1燃料ポンプ、111i…第1吸入管、112…第2燃料ポンプ、112i…第2吸入管、121…第1燃料フィルタ、121c…欠損部、122…第2燃料フィルタ、121c…欠損部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に燃料を供給する燃料ポンプが複数互いに隣接して燃料タンク内に配設され、
各燃料ポンプの下に燃料タンク内の燃料をろ過する燃料フィルタがそれぞれ設けられている燃料供給装置において、
前記各燃料フィルタが互いに一部上下に重ねられて配置されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料ポンプは、水平方向に並設された第1燃料ポンプと第2燃料ポンプの2個からなり、
前記第1燃料ポンプの下方に延出した第1吸入管の下端に第1燃料フィルタが設けられ、
前記第2燃料ポンプの下方に延出した第2吸入管の下端に第2燃料フィルタが設けられ、
前記第2燃料フィルタの上に前記第1燃料フィルタが重なり、
前記第2吸入管は、前記第1燃料フィルタに形成された欠損部を貫通して前記第2燃料フィルタに達していることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記第2燃料フィルタは前記第1燃料フィルタよりろ過面積が大きく設定されたことを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記内燃機関が稼動しているとき、前記第2燃料ポンプは常時駆動され、前記第1燃料ポンプは所定以上の吐出量を要求される場合に駆動されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記第2燃料フィルタは、欠損部を有して前記第1燃料フィルタと同一形状をなすことを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記第1燃料フィルタに形成された欠損部は、外周縁を略U字状に切り欠いて形成したことを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項7】
前記第1燃料フィルタと前記第2燃料フィルタは、互いに全体が上下に重なり合うことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−229963(P2010−229963A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81104(P2009−81104)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】