説明

燃料供給装置

【課題】アイドルストップ等によってエンジンの再始動が繰り返されても排気ガス中における汚染物質の発生を抑える。
【解決手段】エンジン1に蓄圧室4を設けるとともに、気筒内1aと蓄圧室4とを連通する連通路3を蓄圧バルブ5で開閉可能に設ける。この蓄圧バルブ5をインジェクタ2とともにECU6で制御する。ECU6は、車両減速中に気筒内1aで混合気を作り、気筒内1aで圧縮された混合気を蓄圧室4に蓄圧させる「混合気蓄圧手段」を搭載する。また、ECU6は、エンジン再始動時に、蓄圧室4に蓄圧した混合気を気筒内1aに供給してエンジン1の再始動を行なう「蓄圧供給手段」を搭載する。これにより、蓄圧室4から気筒内1aに供給される気化燃料によってエンジン1の始動が実行されるため、始動時における汚染物質の発生を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン(燃料の燃焼を行なう内燃機関)に燃料の供給を行なう燃料供給装置に関し、アイドルストップ等によりエンジンの再始動を繰り返す車両に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の停車時にエンジンを停止し、発車時(フットブレーキが離された時など)にエンジンを再始動するアイドルストップ機能を搭載する車両が知られている。
しかしながら、エンジンの始動時の排気ガスには大量の汚染物質(PM等)が含まれる。このため、アイドルストップ機能によりエンジンの始動回数が増えることで、排気ガスによる汚染物質が多く発生する懸念がある。
【0003】
上記の不具合を回避する技術として、始動時に燃焼し易い気化燃料をエンジンの気筒内に供給し、気化燃料を燃焼させることで汚染物質の低減を図る技術が実験的に知られている。しかし、ガソリン等の液体燃料を用いる車両では、エンジンの始動時から安定した気化燃料を作ることが困難である。
また、気化燃料を作ったとしても、気筒内に安定して気化燃料を供給するためには、高圧ポンプ等の加圧手段を用いて気化燃料を高圧に加圧して気筒内に供給する必要があり、現実的には実施することが困難な技術であった。
【0004】
なお、本発明に関連する特許文献を発見することができなかった。そこで、本発明に構成が近い技術として特許文献1を示す。
この特許文献1は、排気ガスの一部を蓄圧室に残留させ、その蓄圧室の内部に燃料を噴射することで燃料の活性化を図る技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−146889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アイドルストップ等によりエンジンの再始動が繰り返されても排気ガスによる汚染物質の発生を抑えることのできる燃料供給装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔請求項1の手段〕
請求項1の燃料供給装置は、エンジンの回転中に気筒内で圧縮(加圧)された混合気を蓄圧室に蓄圧しておく。そして、エンジンの再始動時に、蓄圧室に蓄圧しておいた混合気を気筒内に供給してエンジンの始動を行なう。
蓄圧室に蓄圧されている混合気は、エンジンの運転中に蓄圧した高温高圧の混合気であるため、燃料は気化している。そして、この気化燃料によってエンジンの再始動を行なうため、エンジンの再始動時における汚染物質の発生を抑えることができる。
【0008】
また、気筒内で圧縮された混合気を蓄圧室に蓄圧させるため、加圧ポンプ等を用いなくても高圧の気化燃料を気筒内に供給することができる。このため、従来技術に比較して、本発明を容易に実施することができる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の燃料供給装置は、エンジンの運転状態が燃料の燃焼を行なわない運転時(以下、「無負荷運転」と称す:アクセルOFFの車両減速時等)にインジェクタを作動させて気筒内に混合気を作り、蓄圧バルブを作動させて気筒内で圧縮された混合気を蓄圧室に蓄圧させるものである。
これにより、燃焼を行なわないエンジン回転中に圧縮された混合気を蓄圧室に蓄圧させることができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3における蓄圧室は、エンジンの発生した熱によって直接または間接的に加熱されるものである。
これにより、蓄圧室を高温に保つことができ、蓄圧室に蓄圧された混合気中の燃料を、液化させずに気化状態に保つことができる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の燃料供給装置は、蓄圧室に蓄圧した混合気を気筒内に供給してエンジンの再始動を行なう際に、インジェクタによる燃料噴射を完全停止してエンジンの始動を行なうものである。
エンジンの再始動時にインジェクタから燃料が全く噴射されずに、蓄圧室に蓄圧された混合気のみでエンジンの始動を行なうため、汚染物質の発生を最小限に抑えることができる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5のエンジンは、気筒内で圧縮された混合気に点火プラグを用いて着火を行なう火花点火内燃機関である。
これにより、点火プラグの作動を停止させるだけで、圧縮された混合気を気筒内において容易に作り出すことができる。このため、気筒内で圧縮された混合気を蓄圧室に安定して確実に蓄圧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料供給装置の概略構成図である。
【図2】気筒内で圧縮された混合気を蓄圧室に蓄圧させる混合気蓄圧手段の説明用のタイムチャートである。
【図3】蓄圧室に蓄圧した混合気を気筒内に供給する蓄圧供給手段の説明用のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
燃料供給装置は、
(a)エンジン1にガソリン等の液体燃料を噴射供給するインジェクタ2と、
(b)エンジン1の気筒内1aに連通路3を介して連通する蓄圧室4と、
(c)連通路3の開閉を行なう蓄圧バルブ5と、
(d)インジェクタ2および蓄圧バルブ5の作動制御を行なうECU6(エンジン・コントロール・ユニットの略:制御装置に相当する)と、
を備える。
【0015】
ECU6は、
(i)エンジン1の運転状態が燃料の燃焼を行なわない無負荷運転時(エンジン回転中の一例)に、インジェクタ2および蓄圧バルブ5の作動を制御して、気筒内1aで圧縮された混合気を蓄圧室4に蓄圧させる「混合気蓄圧手段(例えば、制御プログラム)」を搭載するとともに、
(ii)エンジン1の再始動時に、インジェクタ2の作動を停止し、蓄圧バルブ5の作動を制御して蓄圧室4に蓄圧した混合気を気筒内1aに供給する「蓄圧供給手段(例えば、制御プログラム)」を搭載するものである。
【実施例】
【0016】
以下において本発明の具体的な一例(実施例)を、図面を参照して説明する。以下の実施例は、具体的な一例を開示するものであって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
なお、以下の実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
【0017】
この実施例に示すエンジン1は、複数気筒を備える車両駆動用の火花点火内燃機関であり、
(i)吸気(大気中の空気)を各気筒内1aへ導く吸気通路と、
(ii)各気筒内1aで発生した排気ガスを大気中に排出する排気通路と、
(iii)燃料を各気筒内1aに噴射供給する燃料噴射装置と、
(iv)各気筒内1aで圧縮された混合気に着火を行なう点火装置と、
を備える。
【0018】
吸気通路は、吸気管、インテークマニホールドおよび吸気ポートによって構成されるものであり、吸気中に含まれる塵や埃を除去するエアクリーナ7、吸気量の測定を行なう吸気センサ、気筒内1aに吸引される吸気量の調整を行なうスロットルバルブ8、吸気脈動や吸気干渉を防ぐサージタンク9等が設けられるものである。
排気通路は、排気ポート、エキゾーストマニホールドおよび排気管によって構成されるものであり、排気浄化を行なう触媒、消音用のマフラー等が設けられるものである。
【0019】
燃料噴射装置は、低圧ポンプ11、高圧ポンプ12、インジェクタ2、ECU6によって構成される。
低圧ポンプ11は、燃料タンク10内に蓄えられた液体燃料(ガソリン等)を吸い上げて高圧ポンプ12へ供給する燃料ポンプである。
高圧ポンプ12は、低圧ポンプ11から圧送された燃料を所定圧力に昇圧してインジェクタ2に供給する燃料ポンプである。
【0020】
インジェクタ2は、各気筒毎に搭載されて燃料を各気筒内1aへ直接噴射供給する燃料噴射弁であり、高圧ポンプ12あるいは燃料蓄圧部より分岐する複数の分岐管の下流端に接続されて、高圧燃料を各気筒内1aに噴射供給する噴射ノズルと、この噴射ノズルに収容されたニードルのリフト制御を行なう電動アクチュエータ(例えば、電磁アクチュエータ、ピエゾアクチュエータ等)を搭載する。
なお、この実施例では、インジェクタ2が直接気筒内1aに燃料噴射を行なう直噴式を示すが、限定されるものではなく、例えば吸気ポート内に燃料噴射を行なうものであっても良い。
【0021】
ECU6は、周知のコンピュータを搭載するものであり、車両の運転状態(エンジンパラメータ:乗員の運転状態、車速、エンジン1の運転状態等)に応じた燃料の目標噴射量と目標噴射タイミングを算出する制御プログラムを搭載する。
また、ECU6は、インジェクタ2に搭載される電動アクチュエータを駆動するドライブユニット(EDU)を制御するものであり、算出した目標噴射タイミングで目標噴射量の燃料がインジェクタ2から噴射されるように、EDUを介してインジェクタ2の電動アクチュエータを通電制御するものである。
【0022】
点火装置は、気筒内1aで圧縮された混合気に着火を行なうものであり、各気筒毎に搭載される点火プラグ13、所定の点火タイミング(例えば、圧縮行程時における上死点の直前等)で各点火プラグ13へ高電圧を印加する高電圧発生部(高電圧の分配手段やCDI等)を備える。
なお、この点火装置は、ECU6の制御によって点火プラグ13の点火作動を停止可能に設けられている。
【0023】
一方、吸気ポートおよび排気ポートが形成されるシリンダヘッドには、各気筒毎に、吸気ポートの出口端(吸気ポートと気筒内1aとの境界部)を開閉する吸気バルブ14と、排気ポートの入口端(気筒内1aと排気ポートとの境界部)を開閉する排気バルブ15とが設けられている。
【0024】
エンジン1の各気筒は、エンジン1の運転中に、吸入、圧縮、爆発(膨張)、排気の各行程を順次繰り返すものである。
吸気行程は、ピストン16の下降に伴う気筒内容積の増加時であり、吸気バルブ14が開かれてピストン16が下降することで空気が気筒内1aに吸引される。
【0025】
圧縮行程は、ピストン16の上昇に伴う気筒内容積の減少時であり、吸気バルブ14および排気バルブ15が閉じられた状態でピストン16が上昇することで、混合気(気筒内1aに吸引された空気とインジェクタ2から噴射された燃料)が圧縮される。
なお、インジェクタ2の燃料の噴射タイミングは、均質燃焼と成層燃焼によって異なるものである。
【0026】
爆発行程は、燃料の燃焼による気体の膨張力によりピストン16を下降させる気筒内容積の増加時である。
排気行程は、ピストン16の上昇に伴う気筒内容積の減少時であり、排気バルブ15が開かれてピストン16が上昇することで気筒内1aの排気ガスが排出される。
【0027】
一方、この実施例の車両は、アイドルストップ機能を搭載する。
具体的に、この実施例のECU6には、
(i)所定の運転状態が成立した場合(例えば、走行中の車両がフットブレーキを踏まれた状態で停車した場合等)にエンジン1の運転を停止し、
(ii)アイドルストップによるエンジン1の停止中に、所定の運転状態が成立した場合(例えば、踏まれていたフットブレーキが離された場合等)に、スタータを作動させてエンジン1の再始動を行なうアイドルストップ機能が搭載されている。
【0028】
しかしながら、エンジン1の再始動時に、インジェクタ2から噴射された霧化燃料(霧状の液体燃料)が燃焼することで、排気ガスに大量の汚染物質(PM等)が含まれてしまう。このため、アイドルストップ機能によりエンジン1の始動回数が増えることによって、排気ガスによる汚染物質が多く発生する懸念がある。
【0029】
この不具合を回避するために、この実施例のエンジン1は、
(i)エンジン1の気筒内1aに連通路3を介して連通する蓄圧室4と、
(ii)連通路3の開閉を行なう蓄圧バルブ5と、
(iii)この蓄圧バルブ5の作動を制御するECU6とを具備する。
【0030】
蓄圧室4は、各気筒毎に独立して設けられるものであっても良いし、各気筒に対して共通に設けられるものであっても良い。
また、蓄圧室4は、インジェクタ2の噴射が停止された状態で、蓄圧室4から気筒内1aに供給した混合気によって、少なくとも各気筒毎において複数回(例えば、3回以上)連続して燃焼が可能な混合気を蓄圧可能な容積に設けられている。
【0031】
蓄圧バルブ5は、無負荷時に連通路3を閉じる常閉バルブであり、
(i)連通路3を実質的に開閉する弁体5aと、
(ii)この弁体5aを閉じる方向へ付勢するリターンスプリング5bと、
(iii)このリターンスプリング5bの付勢力(閉弁力)に抗して弁体5aを開弁させる電動アクチュエータ5c(例えば、電磁アクチュエータやピエゾアクチュエータ等)とで構成される。
そして、電動アクチュエータ5cが通電されることで、連通路3が開かれて気筒内1aと蓄圧室4とが連通する。
【0032】
ECU6は、上述したようにインジェクタ2の作動制御とアイドルストップ制御を実施するものであり、さらに車両の運転状態に応じて蓄圧バルブ5の作動制御(電動アクチュエータ5cの通電制御)を実施するものである。
具体的にECU6には、
(i)エンジン1の回転中に気筒内1aで圧縮された混合気を蓄圧室4に蓄圧させる「混合気蓄圧手段(制御プログラム)」と、
(ii)アイドルストップ後におけるエンジン1の再始動時に、蓄圧室4に蓄圧した混合気を気筒内1aに供給してエンジン1の再始動を行なう「蓄圧供給手段(例えば、制御プログラム)」と、
が搭載されている。
【0033】
ECU6における「混合気蓄圧手段」の具体例を、図2を参照して説明する。なお、図2における実線Aはエンジン回転数を示し、図2における実線Bは蓄圧バルブ5の開閉動作を示し、図2における実線Cは気筒内1aの圧力(筒内圧)を示し、図2における実線Dは蓄圧室4の内部圧力を示すものである。
【0034】
ECU6は、蓄圧室4に蓄圧が行なわれていない状態で、且つエンジン1の運転状態が燃料の燃焼を行なわない無負荷運転時(通常であれば、燃料カットが行なわれる運転状態:例えば、アクセルOFFの車両減速時)になると「混合気蓄圧手段」を作動させる。
混合気蓄圧手段は、点火プラグ13の点火作動を停止して、圧縮された混合気を点火させずに蓄圧室4へ蓄圧する手段であり、まず、無負荷運転時の吸入行程から圧縮行程のいずれかの区間においてインジェクタ2から燃料噴射を行う。
【0035】
次に、ピストン16が上昇する圧縮行程中(気筒内1aの圧力の上昇途中)の所定のクランク角において蓄圧バルブ5を開弁させ、気筒内1aにおいて圧力上昇した混合気を蓄圧室4へ導く。そして、所定のクランク角(気筒内1aの圧力が蓄圧室4の圧力より下回らないクランク角)で蓄圧バルブ5を閉じる。
この蓄圧動作を所定回数(図2では3回の例を示す)繰り返すことで、蓄圧室4に導かれた混合気の圧力を所望の圧力まで高めることができる。
なお、蓄圧室4の内圧を圧力センサ17によって検出し、この圧力センサ17の検出結果が所望圧力に達するまで上記蓄圧動作を繰り返すように設けても良い。
【0036】
ECU6における「蓄圧供給手段」の具体例を、図3を参照して説明する。なお、図3における実線Aはエンジン回転数を示し、図3における実線Bは蓄圧バルブ5の開閉動作を示し、図3における実線Cは気筒内1aの圧力(筒内圧)を示し、図3における実線Dは蓄圧室4の内部圧力を示すものである。
【0037】
ECU6は、蓄圧室4に蓄圧が行なわれている状態(上記「混合気蓄圧手段」が実行された状態)で、且つアイドルストップでエンジン1を停止している状態から、エンジン1を再始動させる際に「蓄圧供給手段」を作動させる。
蓄圧供給手段は、蓄圧室4に蓄圧した混合気を用いてエンジン1の再始動を行なう手段であり、スタータの作動によりエンジン1のクランキングが開始されると、先ず、吸入行程が終って吸気バルブ14が閉じるクランク角以後に蓄圧バルブ5を開弁させ、蓄圧室4に蓄圧していた混合気を気筒内1aへ導く。
【0038】
次に、圧縮行程における所定のクランク角(気筒内1aの圧力と蓄圧室4の圧力が略同じ圧力となるクランク角より前)に蓄圧バルブ5を閉じて、気筒内1aに再始動に適した混合気量を供給する。
その後、圧縮行程が進み点火時期に達すると、点火プラグ13が圧縮された混合気に着火を行い、気筒内1aにおいて混合気の爆発が実施される。
この蓄圧混合気による爆発行程を所定回数(図3では3回の例を示す)繰り返した後は、インジェクタ2から燃料を噴射してエンジン1の運転を継続する。
【0039】
なお、「蓄圧供給手段」における蓄圧バルブ5の開弁期間は、蓄圧室4から気筒内1aに供給される混合気の予想供給量(再始動に適した混合気量)に対応するものであり、例えば、再始動時における蓄圧バルブ5の開弁回数や開弁期間に応じて設定するものである。
あるいは、蓄圧室4の内圧を圧力センサ17によって検出し、この圧力センサ17の検出結果から予想供給量を算出して蓄圧バルブ5の開弁期間を求めても良い。
【0040】
(実施例の効果1)
この実施例の燃料供給装置は、上述したように、アイドルストップ後におけるエンジン1の再始動時に、蓄圧室4に蓄圧した混合気を気筒内1aに供給してエンジン1の始動を行なう。
蓄圧室4に蓄圧される混合気は、エンジン1の運転中に蓄圧した高温高圧の混合気であるため、燃料は気化状態で安定している。そして、この気化燃料によってエンジン1の再始動を行なうため、エンジン1の再始動時における汚染物質の発生を抑えることができる。即ち、アイドルストップによりエンジン1の再始動が繰り返されても、汚染物質の発生を抑えることができる。
【0041】
(実施例の効果2)
この実施例の燃料供給装置は、気筒内1aで圧縮された混合気を蓄圧室4に蓄圧させるものであるため、加圧ポンプ等を用いなくても高圧の気化燃料を気筒内1aに供給することができる。
このため、従来技術に比較して本発明を容易に実施することができる。
【0042】
(実施例の効果3)
この実施例の燃料供給装置は、上述したように、エンジン1の運転状態が燃料の燃焼を行なわない無負荷運転時(アクセルOFFの車両減速時等)に、インジェクタ2および蓄圧バルブ5の作動を制御して気筒内1aで混合気を圧縮し、その圧縮した混合気を蓄圧室4に蓄圧させるものである。
これにより、燃焼を行なわないエンジン1の回転中に圧縮された混合気を蓄圧室4に蓄圧させることができる。即ち、エンジン1の運転に影響を与えることなく、安定して混合気を蓄圧室4に蓄圧させることができる。
【0043】
(実施例の効果4)
この実施例の蓄圧室4は、エンジン1の発生した熱によって直接または間接的に加熱されるように設けられるものである。
具体的な一例として、蓄圧室4は、シリンダヘッド等のエンジン部品から直接受熱するように設けられたり、排気熱を受熱するように設けられたり、エンジン冷却水やエンジンオイルから受熱するように設けられている。
これにより、蓄圧室4を高温に保つことができ、蓄圧室4に蓄圧された混合気中の燃料を、液化させずに気化状態に安定して保つことができる。
【0044】
(実施例の効果5)
この実施例の燃料供給装置は、「蓄圧供給手段」の作動時(蓄圧室4に蓄圧した混合気を気筒内1aに供給してエンジン1の始動を行なう際)に、インジェクタ2による燃料噴射を完全停止するものである。
具体的に、この実施例では、図3に示すように、「蓄圧供給手段」を作動させてエンジン1の始動を行なう際は、インジェクタ2の作動を完全に停止し、蓄圧室4から気筒内1aに供給する混合気のみでエンジン1を始動させるものである。
このように、「蓄圧供給手段」の作動時にインジェクタ2からの一切の補助噴射を行なわないため、汚染物質の発生を最小限に抑えることができる。
【0045】
なお、本発明は、「蓄圧供給手段」の作動時においてインジェクタ2からの一切の補助噴射を行なわないものに限定するものではなく、例えば、蓄圧室4の圧力低下を補助する目的でインジェクタ2から補助噴射を行なって始動に適した空燃比を確保するように設けても良い。
このように、インジェクタ2から補助噴射を行なうものであっても、インジェクタ2だけで再始動を行なう場合に比較して混合気中の気化燃料が多いため、排気ガス中の汚染物質を抑えることができる。
【0046】
(実施例の効果6)
この実施例のエンジン1は、点火プラグ13を用いて着火を行なう火花点火内燃機関である。このため、点火プラグ13の作動を停止させるだけで、圧縮された混合気を気筒内1aにおいて容易に作り出すことができる。
即ち、ディーゼルエンジン等の自己着火内燃機関であれば、圧縮された混合気が自己着火してしまうため、無負荷運転時(アクセルOFFの車両減速時等)に混合気を作り出して蓄圧室4に蓄圧させることが困難であるが、この実施例のエンジン1は火花点火内燃機関であるため、気筒内1aで圧縮された混合気を蓄圧室4に容易に蓄圧させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上記の実施例では、アイドルストップ後の再始動に本発明を適用する例を示したが、本発明はアイドルストップ機能に限定されるものではなく、例えば停車中にエンジン1が停止するハイブリッド車両のエンジン1の再始動技術に本発明を適用しても良い。
【0048】
本発明は、蓄圧室4に混合気を蓄圧した状態で、車両が運転停止される場合(目的地に到着し、イグニッションスイッチがOFFされて、運転者が車両から離れる場合など)、エンジン1が冷えることで蓄圧室4も冷えて、蓄圧室4に蓄えられていた気化燃料が液化する懸念がある。
そこで、車両の運転停止が予測される場合(例えば、車両に搭載されるナビゲーションシステムに連動させて車両が目的地に近づいた場合など)には、混合気の蓄圧作動を停止するように設けても良い。
【0049】
あるいは、車両の運転停止中に蓄圧室4とパティキュレートフィルタとを連通させて、蓄圧室4の気化燃料をパティキュレートフィルタに吸着させても良い。または、車両の運転停止中に蓄圧室4の下部と燃料タンク10とを連通させて、蓄圧室4の内部で液化した燃料を燃料タンク10へ戻すように設けても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 エンジン(火花点火内燃機関)
1a 気筒内
2 インジェクタ
3 連通路
4 蓄圧室
5 蓄圧バルブ
6 ECU(混合気蓄圧手段および蓄圧供給手段を搭載する制御装置)
13 点火プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(1)に燃料を噴射供給するインジェクタ(2)と、
前記エンジン(1)の気筒内(1a)に連通路(3)を介して連通する蓄圧室(4)と、
前記連通路(3)の開閉を行なう蓄圧バルブ(5)と、
前記インジェクタ(2)および前記蓄圧バルブ(5)の作動を制御する制御装置(6)とを具備し、
前記制御装置(6)は、
前記エンジン(1)の回転中に前記気筒内(1a)で圧縮された混合気を前記蓄圧室(4)に蓄圧させる混合気蓄圧手段を備えるとともに、
前記エンジン(1)の再始動時に、前記蓄圧室(4)に蓄圧した混合気を前記気筒内(1a)に供給する蓄圧供給手段を備える
ことを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置において、
前記混合気蓄圧手段は、前記エンジン(1)の運転状態が燃料の燃焼を行なわない運転時に、前記インジェクタ(2)および前記蓄圧バルブ(5)の作動を制御して前記気筒内(1a)で圧縮された混合気を前記蓄圧室(4)に蓄圧させることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料供給装置において、
前記蓄圧室(4)は、前記エンジン(1)の発生した熱によって直接または間接的に加熱されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の燃料供給装置において、
前記制御装置(6)は、前記蓄圧供給手段による前記エンジン(1)の再始動時に、前記インジェクタ(2)の燃料噴射を完全停止することを特徴とする燃料供給装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の燃料供給装置において、
前記エンジン(1)は、前記気筒内(1a)で圧縮された混合気に点火プラグ(13)を用いて着火を行なう火花点火内燃機関であることを特徴とする燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−177318(P2012−177318A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39947(P2011−39947)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】