説明

燃料噴射システム

【課題】燃料中の金属成分をより確実に除去可能にする。
【解決手段】イオン交換により金属イオンを吸着するイオン交換体11を、燃料を流通させる燃料経路(例えば燃料フィルタ7内)に水没した状態で配置する。これによると、イオン交換体11の周囲に水が存在するため、燃料がイオン交換体11の周囲を通過する際に、燃料に含まれる金属成分が確実にイオン化される。したがって、イオン交換により燃料中の金属成分をイオン交換体11に吸着させて、燃料中の金属成分を確実に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン用燃料噴射システムにおいては、燃料に添加される潤滑剤等の成分であるオレイン酸等の脂肪酸が、燃料中のNaやK等の金属イオンと反応すると、軽油に不溶なオレイン酸Na等の脂肪酸塩が生成され、その脂肪酸塩がインジェクタの摺動部等に析出し、インジェクタ等の燃料噴射システム構成部品が作動不良を引き起こすという問題がある。
【0003】
そこで、燃料タンクとインジェクタの間の燃料径路にイオン交換体を配置し、イオン交換により燃料中の金属成分をイオン交換体に吸着させて、燃料中の金属成分を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2006−105092号公報
【特許文献2】実開平3−59012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料中には数十ppm程度の微量の水分しか含まれていないため、燃料中の金属成分がイオン化されにくく、金属成分の多くは、イオンの状態ではなく脂肪酸塩や無機塩などの状態で存在していると考えられる。したがって、燃料径路にイオン交換体を配置しただけでは、燃料中の金属成分を確実に除去することは困難であった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、燃料中の金属成分をより確実に除去可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、燃料タンク(4)内に蓄えられた燃料を高圧化して内燃機関に噴射する燃料噴射システムであって、水を蓄える水溜め部(41、62、73、122、132)を、燃料を流通させる燃料経路中に備え、イオン交換により金属イオンを吸着するイオン交換体(11)が、水溜め部(41、62、73、122、132)に水没した状態で配置されていることを特徴とする。
【0007】
これによると、イオン交換体(11)の周囲に水が存在するため、燃料がイオン交換体(11)の周囲を通過する際に、燃料に含まれる金属成分が確実にイオン化される。したがって、イオン交換により燃料中の金属成分をイオン交換体(11)に吸着させて、燃料中の金属成分を確実に除去することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の燃料噴射システムにおいて、内部を燃料が流通するフィルタ容器(71)と、このフィルタ容器(71)内に収容されて燃料中の固形不純物を捕捉するフィルタエレメント(72)とを有する燃料フィルタ(7)を備え、フィルタ容器(71)内におけるフィルタエレメント(72)の下方に水溜め部(73)が形成されていることを特徴とする。
【0009】
これによると、従来のフィルタ形状から大幅に形状変更することなく、イオン交換体を水没した状態で配置することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の燃料噴射システムにおいて、燃料フィルタ(7)は、水溜め部(73)に溜まった水を外部に排出するためのドレンパイプ(74)を備え、このドレンパイプ(74)は、イオン交換体(11)の上面よりも上方位置にて、水溜め部(73)に連通していることを特徴とする。
【0011】
これによると、水溜め部(73)に溜まった水を外部に排出した際に、水溜め部(73)内の水面がイオン交換体(11)の上面よりも下方まで下がることはないため、イオン交換体(11)の水没状態が維持される。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の燃料噴射システムにおいて、内部を流通する燃料から水分を分離させてその分離した水および燃料を水分離器容器(61)内に蓄える水分離器(6)を備え、水分離器容器(61)内における底部側に水溜め部(62)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
これによると、従来の水分離器から大幅に形状変更することなく、イオン交換体を水没した状態で配置することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の燃料噴射システムにおいて、水分離器(6)は、水溜め部(62)に溜まった水を外部に排出するためのドレンパイプ(63)を備え、このドレンパイプ(63)は、イオン交換体(11)の上面よりも上方位置にて、水溜め部(62)に連通していることを特徴とする。
【0015】
これによると、水溜め部(62)に溜まった水を外部に排出した際に、水溜め部(62)の水面がイオン交換体(11)の上面よりも下方まで下がることはないため、イオン交換体(11)の水没状態が維持される。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の燃料噴射システムにおいて、水分離器(6)は、燃料を通し水を通さない撥水シート(64)を備え、この撥水シート(64)は、ドレンパイプ(63)が水溜め部(62)に連通している位置よりも上方に配置されていることを特徴とする。
【0017】
これによると、水溜め部(62)に溜まった水が燃料経路に流出するのを防止できるため、イオン交換体(11)の水没状態が確実に維持される。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項1に記載の燃料噴射システムにおいて、内部に水を蓄える第1水溜め器容器(121)を有する第1水溜め器(12)が燃料経路中に配置され、水溜め部(132)を形成する第2水溜め器容器(131)を有する第2水溜め器(13)が第1水溜め器(12)の下方に配置され、第1水溜め器容器(121)内と水溜め部(132)との間で水が環流するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
これによると、イオン交換体(11)を容器ごと交換することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、請求項1に記載の燃料噴射システムにおいて、水溜め部(122)を形成する水溜め器容器(121)を有する水溜め器(12)が燃料経路中に配置されていることを特徴とする。
【0021】
これによると、第2水溜め器(13)を省略可能である。
【0022】
請求項9に記載の発明では、請求項1に記載の燃料噴射システムにおいて、燃料タンク(4)の底部に水溜め部(41)が形成されていることを特徴とする。
【0023】
これによると、イオン交換体(11)を水没した状態にすることが可能である。また、燃料タンク(4)内の燃料はイオン交換体(11)の周りの水と常時接している為、燃料が流れていないときでも、燃料中の金属成分がイオン化されて燃料中の金属成分が除去される。
【0024】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の燃料噴射システムにおいて、燃料経路は、燃料タンク(4)から送り出された燃料の一部を燃料タンク(4)に戻すリターン燃料配管(10)を含み、このリターン燃料配管(10)から排出される燃料がイオン交換体(11)に向かって流れるように構成されていることを特徴とする。
【0025】
これによると、燃料タンク(4)に戻ってきた燃料をイオン交換体(11)の周りの水と確実に接触させることができ、燃料に含まれる金属成分が確実にイオン化される。
【0026】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の燃料噴射システムにおいて、イオン交換体(11)よりも燃料流れ上流側に磁石(14)が配置されていることを特徴とする。
【0027】
これによると、燃料が磁場を通過する際に燃料中の金属成分のイオン化が促進されるため、燃料中の金属成分を一層確実に除去することができる。
【0028】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る燃料噴射システムの全体構成を示す図である。
【0031】
図1に示すように、燃料噴射システムは、高圧燃料が蓄えられるコモンレール1を備え、このコモンレール1には複数のインジェクタ2が接続されている。インジェクタ2は、制御装置(以下、ECUという)3に制御されて所定の時期に所定の期間開弁して、コモンレール1から供給される高圧燃料をディーゼルエンジン(図示せず)の各気筒内に噴射する。ここでは、4気筒エンジンの1つに対応するインジェクタ2のみを示し、他の気筒に対応するインジェクタについては図示を省略している。
【0032】
コモンレール1に蓄えられる高圧燃料は、燃料供給装置から供給される。燃料供給装置は、燃料を溜めておく燃料タンク4、燃料タンク4から燃料を汲み上げて低圧で圧送するフィードポンプ5、燃料から水分を分離させてその分離した水を内部に蓄える水分離器6、燃料中の固形不純物を捕捉するとともに燃料から分離した水を内部に蓄える燃料フィルタ7、フィードポンプ5から供給される燃料を加圧してコモンレール1へ圧送する高圧ポンプ9、フィードポンプ5から高圧ポンプ9へ供給される燃料の流量を調整する調量弁8等を有して構成される。そして、高圧ポンプ9へ供給される燃料の流量を調量弁8により調整することにより、高圧ポンプ9の吐出量が制御される。
【0033】
高圧ポンプ9は、ディーゼルエンジンによってカム軸が回転駆動され、カム軸から駆動力が伝達されてプランジャが往復運動して、燃料の吸入および圧送を行う構成になっている。また、高圧ポンプ9は、カム軸が配置されたカム室にも燃料が供給されるようになっており、カム室に供給される燃料は潤滑油として作用する。そして、高圧ポンプ9のカム室に供給された燃料およびインジェクタ2のリーク燃料は、リターン燃料配管10を介して燃料タンク4に戻される。
【0034】
なお、コモンレール1、インジェクタ2、および燃料供給装置の構成部品(すなわち、燃料タンク4、フィードポンプ5、水分離器6、燃料フィルタ7、調量弁8、高圧ポンプ9)は、本発明の燃料経路を構成する。また、リターン燃料配管10、コモンレール1とインジェクタ2間を接続する燃料配管、インジェクタ2と高圧ポンプ9間を接続する燃料配管、および燃料供給装置の構成部品間を接続する燃料配管も、本発明の燃料経路を構成する。
【0035】
ECU3は、図示しないCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータに記憶したプログラムに従って演算処理を行うものである。ECU3には、各種センサSから、コモンレール1内の燃料圧力に関する信号、エンジン回転数、アクセル開度等の種々の情報が随時入力される。
【0036】
そして、ECU3は、エンジンや車両の運転状態に応じた最適の噴射時期、噴射量(噴射期間)を算出して、各インジェクタ2の開弁時期および開弁期間を制御する。また、ECU3は、高圧ポンプ9の目標吐出量を算出し、調量弁8に制御信号を出力して高圧ポンプ9の吐出量を制御することにより、コモンレール1内の燃料圧力を制御する。
【0037】
図2は燃料フィルタ7の構成を示す模式的な断面図である。図2に示すように、燃料フィルタ7は内部を燃料が流通する中空のフィルタ容器71を備え、このフィルタ容器71における天地方向中間部よりも上方には、燃料中の固形不純物を捕捉するフィルタエレメント72が配置されている。そして、フィルタエレメント72が配置された空間、すなわち、フィルタ容器71の上方空間には、水分が分離された燃料が蓄えられる。フィルタ容器71におけるフィルタエレメント72の下方には、燃料から分離した水を蓄える水溜め部としてのセジメンタ部73が形成されている。
【0038】
セジメンタ部73には、イオン交換能を有するイオン交換体11が配置されている。そして、セジメンタ部73には車両搭載前に水が入れられていて、イオン交換体11をセジメンタ部73内の底部に配置することにより、イオン交換体11全体が水没するようになっている。なお、イオン交換体11としては、イオン交換樹脂、イオン交換セルロース、イオン交換繊維等を用いることができる。
【0039】
フィルタ容器71には、セジメンタ部73に溜まった水を外部に排出するためのドレンパイプ74が設けられている。このドレンパイプ74の上流側端部は、イオン交換体11の上面よりも上方位置にて、セジメンタ部73に連通している。ドレンパイプ74の下流側端部には、ドレンパイプ74を開閉するドレンプラグ(図示せず)が設けられている。
【0040】
フィルタ容器71には、水分離器6(図1参照)を通過した燃料を燃料フィルタ7に導く燃料配管7aが接続されている。この燃料配管7aの下流側端部は、セジメンタ部73で開口している。より詳細には、燃料配管7aの下流側端部は、ドレンパイプ74の上流側端部の開口位置よりも下方で開口している。また、燃料配管7aから流出した燃料がイオン交換体11に向かって流れるように、燃料配管7aの下流側端部の向きが設定されている。
【0041】
フィルタ容器71には、燃料フィルタ7を通過した燃料を調量弁8(図1参照)に導く燃料配管7bが接続されている。この燃料配管7bの上流側端部は、フィルタ容器71の上端部に開口している。
【0042】
上記構成において、燃料配管7aにより燃料フィルタ7に導かれた燃料は、まずセジメンタ部73に流入する。セジメンタ部73で燃料から水分が分離されてその水がセジメンタ部73に溜められる。また、イオン交換により燃料中の金属成分がイオン交換体11に吸着され、燃料中の金属成分が除去される。水分および金属成分が除去された燃料は、フィルタエレメント72にて固形不純物が捕捉された後に、燃料配管7bにより調量弁8に導かれる。
【0043】
ここで、イオン交換体11は全体が水没していて、イオン交換体11の周囲には常に水が存在するため、燃料配管7aからセジメンタ部73に流入した燃料は、イオン交換体11に向かって流れる際にイオン交換体11の周囲の水に接触することになる。このため、燃料に含まれる金属成分は、その周囲の水に溶出し、確実にイオン化される。そして、イオン化された金属成分はイオン交換によりイオン交換体11に吸着され、これにより燃料中の金属成分が確実に除去される。
【0044】
また、本実施形態では、ドレンパイプ74の上流側端部はイオン交換体11の上面よりも上方位置にてセジメンタ部73に連通しているため、ドレンパイプ74を開いてセジメンタ部73に溜まった水を外部に排出した際に、セジメンタ部73内の水面がイオン交換体11の上面よりも下方まで下がることはなく、イオン交換体11の水没状態が維持される。したがって、イオン交換体11の周囲に常に水を存在させて、燃料に含まれる金属成分を常に確実にイオン化させることができる。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図3は第2実施形態に係る燃料噴射システムにおける水分離器の構成を示す模式的な断面図である。第1実施形態では、イオン交換体11を燃料フィルタ7内に配置したが、本実施形態は、イオン交換体11を水分離器6内に配置している。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図3に示すように、水分離器6は内部を燃料が流通する中空の水分離器容器61を備え、この水分離器容器61内における底部側に、燃料から分離した水を蓄える水溜め部62が形成されている。この水溜め部62にイオン交換体11が配置されている。そして、水溜め部62には車両搭載前に水が入れられていて、イオン交換体11を水溜め部62(すなわち、水分離器容器61内の底部)に配置することにより、イオン交換体11全体が水没するようになっている。
【0047】
水分離器容器61には、溜まった水を外部に排出するためのドレンパイプ63が設けられている。このドレンパイプ63の上流側端部は、イオン交換体11の上面よりも上方位置にて、水溜め部62に連通している。ドレンパイプ63の下流側端部には、ドレンパイプ63を開閉するドレンプラグ(図示せず)が設けられている。
【0048】
水分離器容器61には、フィードポンプ5(図1参照)から圧送された燃料を水分離器6に導く燃料配管6aが接続されている。この燃料配管6aの下流側端部は、ドレンパイプ63の上流側端部の開口位置よりも下方で開口している。また、燃料配管6aから流出した燃料がイオン交換体11に向かって流れるように、燃料配管6aの下流側端部の向きが設定されている。
【0049】
水分離器容器61には、水分離器6を通過した燃料を燃料フィルタ7(図1参照)に導く燃料配管6bが接続されている。この燃料配管6bの上流側端部は、水分離器容器61の上端部に開口している。
【0050】
上記構成において、燃料配管6aにより水分離器6に導かれた燃料は水分が分離され、その水が水分離器容器61の下部側に溜められる。また、イオン交換により燃料中の金属成分がイオン交換体11に吸着され、燃料中の金属成分が除去される。水分および金属成分が除去された燃料は、燃料配管6bにより燃料フィルタ7に導かれる。
【0051】
ここで、イオン交換体11は全体が水没しており、燃料配管6aから水分離器容器61内に流入した燃料はイオン交換体11に向かって流れる際にイオン交換体11の周囲の水に接触するため、第1実施形態と同様に燃料中の金属成分が確実に除去される。
【0052】
また、本実施形態では、ドレンパイプ63の上流側端部はイオン交換体11の上面よりも上方位置にて水溜め部62に連通しているため、ドレンパイプ63を開いて水分離器容器61内に溜まった水を外部に排出した際に、水分離器容器61内の水面がイオン交換体11の上面よりも下方まで下がることはなく、イオン交換体11の水没状態が維持される。したがって、第1実施形態と同様に燃料に含まれる金属成分を常に確実にイオン化させることができる。
【0053】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図4は第3実施形態に係る燃料噴射システムにおける要部の構成を示す模式的な断面図である。第1実施形態では、イオン交換体11を燃料フィルタ7内に配置したが、本実施形態は、イオン交換体11を配置するための専用の容器を設けている。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0054】
図4に示すように、フィードポンプ5と水分離器6との間に第1水溜め器12が配置されている。第1水溜め器12は、内部を燃料が流通するとともに水を蓄える中空の第1水溜め器容器121を備え、この第1水溜め器容器121内における底部側に水を蓄える第1水溜め部122が形成されている。この第1水溜め部122には車両搭載前に水が入れられている。
【0055】
第1水溜め器容器121には、フィードポンプ5から圧送された燃料を第1水溜め器12に導く燃料配管12aが接続されている。第1水溜め器容器121には、第1水溜め器12を通過した燃料を水分離器6に導く燃料配管12bが接続されている。この燃料配管12bの上流側端部は、第1水溜め器容器121の上端部に開口している。
【0056】
第1水溜め器12の下方に、第2水溜め器13が配置されている。第2水溜め器13は、水を内部に蓄える中空の第2水溜め器容器131を備え、この第2水溜め器容器131内に水を蓄える第2水溜め部132が形成されている。この第2水溜め部132には車両搭載前に水が入れられている。そして、イオン交換体11を第2水溜め部132に配置することにより、イオン交換体11全体が水没するようになっている。
【0057】
第1水溜め器容器121における天地方向中間部と第2水溜め器容器131における天地方向中間部は、第1連結配管123によって連通されている。また、第1水溜め器容器121の底部と第2水溜め器容器131の上端部は、第2連結配管124によって連通されている。なお、第1水溜め器12、第2水溜め器13、燃料配管12a、12b、および連結配管123、124は、本発明の燃料経路を構成する。
【0058】
第2水溜め器13は、第1連結配管123および第2連結配管124に対して脱着可能に取り付けられており、したがって、イオン交換体11は第2水溜め器13とともに容易に交換することができる。
【0059】
燃料配管12aの下流側端部は、第1水溜め器容器121の底部近傍に位置し、且つ、第2連結配管124における第1水溜め器容器121側の端部の真上に位置している。また、燃料配管12aの下流側端部は上方に向かって開口していて、燃料配管12aから流出した燃料が上方に向かって流れるようになっている。
【0060】
燃料配管12aの下流側端部をこのような構成にしているため、燃料配管12aから流出した燃料の流れによる吸い出し効果により、第2水溜め部132内の水が第2連結配管124を介して第1水溜め部122内に吸い出され、また、第2水溜め部132内の水が吸い出されることに伴って、第1水溜め部122内の水が第1連結配管123を介して第2水溜め部132内に流入する。すなわち、第1水溜め部122と第2水溜め部132との間で水が環流する。
【0061】
本実施形態によると、燃料配管12aにより第1水溜め器12に導かれた燃料に含まれる金属成分は、第1水溜め部122内の水に溶出し、確実にイオン化される。そして、第1水溜め部122と第2水溜め部132との間で水が環流するため、イオン化された金属成分は、第2水溜め部132内に流入した際にイオン交換によりイオン交換体11に吸着され、燃料中の金属成分が確実に除去される。
【0062】
また、本実施形態では、水分離器6および燃料フィルタ7の上流側に第1水溜め器12を配置しているため、第1水溜め器12から万一水が流出しても、その水は水分離器6または燃料フィルタ7で分離される。
【0063】
なお、本実施形態では、イオン交換体11を第2水溜め器13内に配置したが、第2水溜め器13を廃止し、燃料経路中に配置された第1水溜め器12における第1水溜め部122内にイオン交換体11を配置してもよい。
【0064】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。図5は第4実施形態に係る燃料噴射システムにおける要部の構成を示す模式的な断面図である。第1実施形態では、イオン交換体11を燃料フィルタ7内に配置したが、本実施形態は、イオン交換体11を燃料タンク4内に配置している。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0065】
図5に示すように、燃料タンク4の底部には、周囲の底部よりもさらに下方に凹んだ水溜め部41が設けられ、この水溜め部41にイオン交換体11が配置されている。そして、水溜め部41には車両搭載前に水が入れられていて、イオン交換体11を水溜め部41に配置することにより、イオン交換体11全体が水没するようになっている。
【0066】
リターン燃料配管10の下流側端部は、水溜め部41内に開口している。また、リターン燃料配管10から流出した燃料がイオン交換体11に向かって流れるように、リターン燃料配管10の下流側端部の向きが設定されている。
【0067】
本実施形態によると、イオン交換体11は全体が水没しており、リターン燃料配管10から水溜め部41内に流入した燃料はイオン交換体11に向かって流れる際にイオン交換体11の周囲の水に接触するため、第1実施形態と同様に燃料中の金属成分が確実に除去される。
【0068】
また、燃料タンク4内の燃料はイオン交換体11の周りの水と常時接している為、燃料が流れていないときでも、燃料中の金属成分がイオン化されて燃料中の金属成分が除去される。
【0069】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。図6は第5実施形態に係る燃料噴射システムにおける水分離器の構成を示す模式的な断面図である。
【0070】
本実施形態では、図6に示すように、第2実施形態における水分離器6内に磁石14を配置している。その他に関しては第2実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0071】
磁石14は、より詳細には、燃料を水分離器6に導く燃料配管6aの外周に配置されている。換言すると、磁石14は、イオン交換体11よりも燃料流れ上流側に配置されている。そして、磁石14の周囲に磁場が形成され、燃料が磁場を通過する際に燃料中の金属成分のイオン化が促進されるため、燃料中の金属成分が一層確実に除去される。
【0072】
なお、本実施形態では、水分離器6内に磁石14を配置したが、第1実施形態における燃料フィルタ7内、第3実施形態における第2水溜め器13内、または第4実施形態における燃料タンク4内に、磁石14を配置してもよい。
【0073】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について説明する。図7は第6実施形態に係る燃料噴射システムにおける水分離器の構成を示す模式的な断面図である。
【0074】
本実施形態では、図7に示すように、第2実施形態における水分離器6内に撥水シート64を配置している。その他に関しては第2実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0075】
図7に示すように、水分離器容器61には、燃料を通し水を通さない撥水シート64が配置されている。撥水シート64としては、撥水性を有する素材(テフロン(登録商標)、PBT、PETなど)からなる不織布やメッシュ、あるいは、撥水処理を施した不織布やメッシュなどが利用できる。
【0076】
撥水シート64は、ドレンパイプ63の上流側端部の開口位置よりも上方に、すなわち、ドレンパイプ63が水溜め部62に連通している位置よりも上方に、配置されている。また、撥水シート64は、水平方向に拡がっており、水分離器容器61内の空間を天地方向に分割している。
【0077】
フィードポンプ5(図1参照)から圧送された燃料を水分離器6に導く燃料配管6aは、撥水シート64を貫通しており、この燃料配管6aの下流側端部は、ドレンパイプ63の上流側端部の開口位置よりも下方で開口している。また、水分離器6を通過した燃料を燃料フィルタ7(図1参照)に導く燃料配管6bの上流側端部は、撥水シート64よりも上方位置で開口している。
【0078】
本実施形態によると、水を通さない撥水シート64により、水溜め部62に溜まった水が燃料フィルタ7側に流出するのを防止できるため、水溜め部62に水が溜まった状態を維持し易い。したがって、イオン交換体11の水没状態が維持され、燃料に含まれる金属成分を常に確実にイオン化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料噴射システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1の燃料フィルタ7の構成を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る燃料噴射システムにおける水分離器の構成を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る燃料噴射システムにおける要部の構成を示す模式的な断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る燃料噴射システムにおける要部の構成を示す模式的な断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る燃料噴射システムにおける水分離器の構成を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る燃料噴射システムにおける水分離器の構成を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0080】
4 燃料タンク
11 イオン交換体
41 水溜め部
62 水溜め部
73 水溜め部
122 水溜め部
132 水溜め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(4)内に蓄えられた燃料を高圧化して内燃機関に噴射する燃料噴射システムであって、
水を蓄える水溜め部(41、62、73、122、132)を、燃料を流通させる燃料経路中に備え、イオン交換により金属イオンを吸着するイオン交換体(11)が、前記水溜め部(41、62、73、122、132)に水没した状態で配置されていることを特徴とする燃料噴射システム。
【請求項2】
内部を燃料が流通するフィルタ容器(71)と、このフィルタ容器(71)内に収容されて燃料中の固形不純物を捕捉するフィルタエレメント(72)とを有する燃料フィルタ(7)を備え、
前記フィルタ容器(71)内における前記フィルタエレメント(72)の下方に前記水溜め部(73)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項3】
前記燃料フィルタ(7)は、前記水溜め部(73)に溜まった水を外部に排出するためのドレンパイプ(74)を備え、このドレンパイプ(74)は、前記イオン交換体(11)の上面よりも上方位置にて、前記水溜め部(73)に連通していることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射システム。
【請求項4】
内部を流通する燃料から水分を分離させてその分離した水および燃料を水分離器容器(61)内に蓄える水分離器(6)を備え、
前記水分離器容器(61)内における底部側に前記水溜め部(62)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項5】
前記水分離器(6)は、前記水溜め部(62)に溜まった水を外部に排出するためのドレンパイプ(63)を備え、このドレンパイプ(63)は、前記イオン交換体(11)の上面よりも上方位置にて、前記水溜め部(62)に連通していることを特徴とする請求項4に記載の燃料噴射システム。
【請求項6】
前記水分離器(6)は、燃料を通し水を通さない撥水シート(64)を備え、この撥水シート(64)は、前記ドレンパイプ(63)が前記水溜め部(62)に連通している位置よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の燃料噴射システム。
【請求項7】
内部に水を蓄える第1水溜め器容器(121)を有する第1水溜め器(12)が前記燃料経路中に配置され、
前記水溜め部(132)を形成する第2水溜め器容器(131)を有する第2水溜め器(13)が前記第1水溜め器(12)の下方に配置され、
前記第1水溜め器容器(121)内と前記水溜め部(132)との間で水が環流するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項8】
前記水溜め部(122)を形成する水溜め器容器(121)を有する水溜め器(12)が前記燃料経路中に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項9】
前記燃料タンク(4)の底部に前記水溜め部(41)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項10】
前記燃料経路は、前記燃料タンク(4)から送り出された燃料の一部を前記燃料タンク(4)に戻すリターン燃料配管(10)を含み、このリターン燃料配管(10)から排出される燃料が前記イオン交換体(11)に向かって流れるように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の燃料噴射システム。
【請求項11】
前記イオン交換体(11)よりも燃料流れ上流側に磁石(14)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の燃料噴射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−48248(P2010−48248A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283038(P2008−283038)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】