説明

燃料油組成物

【課題】従来のワックス沈降防止剤の代わりにワックス沈降防止剤としてのポリカルボン酸の4級アンモニウム塩を使用して、ポリアルキレンアミン清浄剤を含む燃料の低温特性を向上した燃料油組成物を提供する。
【解決手段】少量の(A)ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩;及び(B)ポリアルキレンアミン清浄剤、を含む中間粒分燃料油組成物(A)及び(B)の濃度は、(A)を、(A)と類似のポリカルボン酸のアミン塩でありかつ4級アンモニウム塩ではない(Aref)で置き換えた対応する組成物よりも、よりよい低温特性を有する組成物を与える;及び(B)の濃度は、対応する組成物中における(Aref)の低温特性にマイナスの影響を与えるような程のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油組成物の改良、とりわけ清浄剤種を含み、かつ低温でワックスの形成の影響を受けやすい燃料油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料油は、石油から得ようと植物源から得ようと、成分、例えばn-アルカン又はメチルn-アルカノエートを含み、これらは、低温で、燃料の流動性を失わせるゲル構造を形成するように、大きな板状結晶又は球晶のワックスとして沈殿する傾向がある。燃料が未だ流動するであろう最低温度は、流動点として知られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
燃料の温度が低下して流動点に近づくにつれて、ライン及びポンプを介した燃料の輸送における困難さが上昇する。さらに、ワックスの結晶は、流動点より高い温度で燃料ライン、スクリーン及びフィルターをふさぐ傾向がある。これらの問題は、本技術において良く認識されており、種々の添加剤が提案され、これらの多くは燃料油の流動点を低下させるために、商業的に使用されている。同様に、他の添加剤が提案され、確かに形成するワックス結晶のサイズの減少及び形状の変更のために、商業的に使用されている。より小さなサイズの結晶が望まれ、それはそれらがフィルターをあまり詰まらせないためである。主としてアルカンワックスである、ディーゼル燃料からのワックスは、板状(platelet)に結晶化する。ある添加剤はこれを阻害し、ワックスに針状の性質をもたらすようにし、その結果得られる針状結晶は、フィルターを通過し、又はフィルター上に結晶の多孔質層を形成するため、板状晶よりも好ましい。他の添加剤は、燃料中でワックス結晶を懸濁状態に維持する効果も有し、沈降を減少させ結果として閉塞の防止を助ける。これらの種類の添加剤は、多くの場合“ワックス沈降防止剤(wax anti-settling additive)”(WASA)と称され、一般に極性窒素種である。
【0004】
多くの添加剤は、エンジンの清浄性を向上することに関して、例えば吸入システム(例えばキャブレター、吸気マニホールド、吸気弁)又はスパーク点火エンジン(spark-ignition engine)の燃焼室表面の堆積物を減少させ又は除去することに関し、又は圧縮点火エンジンのインジェクターノズルの付着物を減少し又は防ぐことに関して記載されている。
例えば、英国特許第960,493号は、内燃機関用の基燃料中に、テトラエチレンペンタミンのポリオレフィン置換コハク酸イミドの形態にある、金属フリー清浄剤を添加することを記載している。このような金属フリー清浄剤の使用は、現在普及している。最も一般的に使用されているのは、ポリイソブチレン置換コハク酸イミドであり、これは、ポリイソブチレン置換アシル化剤、例えばコハク酸又は無水物とポリアミンの反応生成物である。このような材料及びこれらの製造方法は、当業者に知られている。これらは、一般的に、金属フリーポリアルキレンアミン清浄剤として記載されるであろう。
【0005】
最新式のディーゼルエンジン技術における傾向は、インジェクション圧力を増加してかつインジェクターノズルの直径を減少させることにより、出力及び効率を増加させることである。これらの状況下において、インジェクターの堆積物の沈着がより起こりそうであり、発生する堆積物はより著しい。このことが、燃料製品を、多くの場合“ハイオク(premium)”グレードとして販売され、及びエンジンの清浄性を向上するためにとりわけ効果的であるものとして宣伝販売される新型の燃料を、製造者に製造させることになった。この性能の要求を満たすため、このようなハイオク燃料は、普通は、非ハイオクグレードの燃料よりも、顕著に高いレベルの清浄剤を含む。
エンジンの清浄性の関係で大いに効果的であるが、燃料油における清浄剤の高いレベルでの使用において欠点が確認されている。特に、当該清浄剤とワックス沈降防止剤が燃料中に存在する場合、ハイオクグレードの燃料中における高いレベルのポリアルキレンアミン清浄剤の存在が、ワックス沈降防止剤の低温流動性性能を妨げ得ることが観察された。その結果、このような燃料はエンジンの清浄性を満足させるかも知れないが、ワックス沈降防止及び低温フィルター目詰まり点(CFPP)についての低温特性は満足できるものではないかも知れない。
【0006】
EP-A-0908507は、燃料油の低温流動性特性を向上するための添加剤、例えば110℃から500℃の範囲内で沸騰する、中間留分燃料油の使用を記載している。実施例において、該特許は、1モルのフタル酸無水物と2モルの2水素化牛脂アミンを反応させて、半分がアミド/半分がアミン塩を形成する反応の反応生成物である、2-N',N'-ジアルキル-アミドベンゾエートのN,N-ジアルキルアンモニウム塩(該特許では、添加剤C並びに成分BX及びBYの構成成分);とポリアミン化したポリイソブチレンコハク酸無水物清浄剤(該特許では成分AYの構成成分)を添加剤として含む燃料を記載している。EP-A-0908507は、このような燃料に行った、シミュレートされたフィルター目詰まり点(simulated filter plugging point)(SFPP)試験の結果を記載している。添加剤Cは、従来のワックス沈降防止剤の例である。
本発明は、従来のワックス沈降防止剤の代わりにワックス沈降防止剤としてのポリカルボン酸の4級アンモニウム塩の使用が、ポリアルキレンアミン清浄剤を含む燃料の低温特性を向上し得ることの発見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、第一の側面に従って、本発明は、少量の、
(A)ワックス沈降防止剤として効果的である、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩の形態にある少なくとも一つの油溶性極性窒素化合物;及び
(B)少なくとも一つの油溶性ポリアルキレンアミン清浄剤、
を含んだ、大量の中間留分燃料油を含む燃料油組成物であって、
(A)及び(B)の濃度が、前記燃料油組成物の1以上の低温特性が、4級アンモニウム塩ではなく、かつ(A)に類似したポリカルボン酸の油溶性アミン塩である(Aref)を、(A)の代わりに含んだ以外は同一の他の燃料油組成物の低温特性よりもよりよくなるほどのものであり;かつ
前記燃料油組成物における(B)の濃度が、前記それ以外は同一の他の燃料油組成物における(Aref)の一以上の低温特性にマイナスに影響するであろう程のものである、燃料油組成物を提供する。
【0008】
第二の側面に従って、本発明は、少なくとも一つの油溶性ポリアルキレンアミン清浄剤である少量の(B)を含んだ中間留分燃料油組成物における、ワックス沈降防止剤として効果的である、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩の形態にある少なくとも一つの油溶性極性窒素化合物である少量の(A)の、4級アンモニウム塩ではなくかつ(A)に類似したポリカルボン酸のアミン塩である(Aref)を、(A)の代わりに含んだ以外は同一の他の燃料油組成物の1以上の低温特性と比較して、前記燃料油組成物の1以上の低温特性を向上させるための使用であって、前記燃料油組成物における(B)の濃度が、前記それ以外で同一の他の燃料油組成物における(Aref)の一以上の低温特性にマイナスに影響するであろう程のものである使用を提供する。
【0009】
第三の側面に従って、本発明は、ワックス沈降防止剤として効果的である少量の少なくとも一つの極性窒素化合物、及び少なくとも一つのポリアルキレンアミン清浄剤を含む中間留分燃料油組成物の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(i) 本発明の第一の側面において定義したような(B)の濃度、及び本発明の第一の側面で定義したような(Aref)の濃度を、(B)が、中間留分燃料油組成物における(Aref)の1以上の低温特性にマイナスに影響する濃度で決定する工程;
(ii) 本発明の第一の側面で定義したような(A)の濃度を、工程(i)で決定した濃度で(B)を含む中間留分燃料油組成物の1以上の低温特性が、(Aref)及び(B)を含む以外は同一の他の中間留分燃料油組成物の低温特性よりもよりよくなる濃度で決定する工程;及び
(iii) 工程(i)及び(ii)で決定した濃度で(A)及び(B)を含む中間留分燃料油組成物をブレンドする工程。
【0010】
ワックス沈降防止及びCFPP性能における観察された損失は、従来のWASA成分と組み合わせた金属フリーポリアルキレンアミン清浄剤の使用に限定して現れる。ポリアルキレンアミン清浄剤以外の清浄剤が、従来のWASA成分と組み合わせて使用される場合、性能における同じ損失が観察されないかも知れないことは注目すべきである。4級アンモニウム塩の添加は、性能におけるこの損失を緩和し、これによりより高いレベルのポリアルキレンアミン清浄剤を、添加された(additised)燃料の低温特性を損なうことなく、WASA種と共に使用することを許容する。
上述したように、燃料油中にポリアルキレンアミン清浄剤及び従来のWASAを組み合わせて存在させることにより、ワックス沈降防止及び/又はCFPP特性の低減に導くかも知れない。よりよい低温特性は、ワックス沈降防止性能又はCFPP又は好ましくは両方の特性を言う。好ましくは、従来のWASAを含むが、ポリアルキレンアミン清浄剤を含まない燃料油組成物の1以上の低温特性が、本発明により回復し又は向上する。
【0011】
各低温特性が、ポリアルキレンアミン清浄剤の存在無しに期待されるであろうレベルに必ず到達することを必要としない点は注目すべきである。
用語“回復”の使用は、特性についての正確な数値が再び得られないかも知れないが、違いが実務上重大ではない場合を含むと解すべきである。
【0012】
さらなる側面に従って、本発明は、以下の少量を含む中間留分燃料油組成物を提供する:
(A)ワックス沈降防止剤として効果的である、フタル酸の4級アンモニウム塩の形態にある少なくとも一つの油溶性極性窒素化合物;及び
(B)N-(ポリアミン-置換した)ポリアルケニルコハク酸イミドの形態にある、少なくとも一つのポリアルキレンアミン清浄剤。
【0013】
本明細書において、“ヒドロカルビル”は、炭素及び水素原子を含み、炭素原子を介して分子の残部に結合し、かつ該基の本質的な炭化水素の性質を損なわないヘテロ原子を含んでも良い基を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の種々の側面に適切である適用可能な本発明の特徴は、これからより詳細に説明されるであろう。
【0015】
(A)4級アンモニウム塩
上記のように、これは、ワックス沈降防止剤として効果的である、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩の形態にある油溶性窒素化合物である。アンモニウムカチオンの窒素原子は、例えば4つのヒドロカルビル基を含む。塩は、例えば、単量(monomeric)のものである。
化合物中の4級アンモニウムカチオンは、好ましくは式NR13R14(式中、R13は、独立に、ヒドロカルビル基、例えば8から40の炭素原子を含むアルキル基を表し、及びR14は、独立に、ヒドロカルビル基、例えば最大で40の炭素原子を含むアルキル基を表す)の部分を含む。R13及びR14は、直鎖又は分枝しても良く、及び/又は同一又は異なって良い。好ましくは、R13及びR14のそれぞれは、C12からC24の直鎖アルキル基を表す。
【0016】
4級アンモニウムカチオンは、好ましくは式+NR13R14R2(Rは1から4の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル又はプロピル基を表す)により表される。
適切には、部分NR13R14は、第二級アミン、例えばジオクタデシルアミン、ジココアミン、二水素化した牛脂アミン及びメチルベヘニルアミンに由来する。アミンは、例えば、天然材料、好ましくは第二級の水素化した牛脂アミンから誘導される混合物であって、そのアルキル基が、約4%のC14、31%のC16 及び59%のC18から成る水素化した牛脂に由来するものであってよい。
【0017】
4級アンモニウム塩の調製のために適切なポリカルボン酸及びその無水物の例は、エチレンジアミンテトラ酢酸、環骨格に基づくカルボン酸、例えば、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-カルボン酸及びナフタレンジカルボン酸、及びジアルキルスピロビスラクトンを含む1,4-ジカルボン酸を含む。一般的に、これら酸は、5から13の炭素原子を環部分に含む。本発明で有用な好ましい酸は、ベンゼンジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸である。フタル酸及びその無水物が、特に好ましい。特に好ましい4級アンモニウム塩は、以下の式により表され:
【化1】

(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素化した牛脂に由来するアルキル基を表す)この化合物は、例えば、N,N-ジメチル-N,N-二水素化した牛脂アンモニウムクロライド(1モル)と、二水素化した牛脂アミン(1モル)、フタル酸無水物(1モル)及びナトリウムメトキシド(1モル)を反応させることにより製造して良い。
【0018】
(Aref)アミン塩
上記のように、これは、4級アンモニウム塩(A)についての上記記載のような、同じポリカルボン酸の油溶性アミン塩である。これは、ワックス沈降防止剤として効果的な極性窒素化合物であるが、4級アンモニウム塩ではない。これは、第一級、第二級又は第三級アミン塩であって良い。
このような塩は、上記のような式NR13R14の部分を有して良いが、4級アンモニウム塩でない点で異なる。これらは、例えば米国特許第4,211,534に記載されている。
具体的な例として、フタル酸無水物(1モル)と、二水素化した牛脂アミン(2モル)を反応させ、2-N',N'-ジアルキルアミド安息香酸のN,N-ジアルキルアンモニウム塩を与える反応;アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物(APFC)とジココ−及び二水素化した牛脂アミンの混合物の反応;及びエチレンジアミンテトラ酢酸と二水素化した牛脂アミンの反応により形成したアミド−アミン塩を述べることができる。
【0019】
本発明の実施において、(Aref)は、(Aref)と(A)の両方が同じポリカルボン酸から誘導され、及び(Aref)の窒素原子(群)により含まれる同じヒドロカルビル基が、(A)の窒素原子により有される点で、(A)と類似する。
(Aref)が本発明の成分ではないが、本発明の範囲を定義するための参照目的のものであることが明らかであろう。
【0020】
(B)ポリアルキレンアミン清浄剤
ポリアルキレンアミンは、例えば、250質量単位より大きなポリアルキレンに由来し、ポリアルキレンは、好ましくはそれ自身がC2-C10アルケン及びより好ましくはブテン及び/又はイソブテンに由来する。これらは、アンモニア、アミン、ポリアミン、アルキルアミン又はアルカノールアミンを、これらポリマーに対して及び/又はこれらポリマーの間に連結することにより調製される。種々の方法が、これを達成するために使用でき、例えば、塩素化、ヒドロホルミル化、エポキシ化及びオゾン分解のようなものを介した経路が本技術で公知である。本技術で同様に公知である典型的な例は、ポリイソブテンモノアミン(“PIBA”)及びポリイソブテン−エチレンジアミン(“PIB-EDA”)である。さらなる例は、EP244616及びWO98/28346に記載されている。ヒドロカルビル単位とアミン単位の比率は、1:1から2.5:1、好ましくは1.2:1から1.5:1であってよい。少なくとも10炭素原子のヒドロカルビル置換基を有し、かつカルボン酸アシル化剤、例えば、無水物又はエステルと、アミノ化合物を反応させることにより製造される、多くのアシル化した窒素含有化合物が、当業者に公知である。このような組成において、アシル化剤は、イミド、アミド、アミジン又はアシルオキシアンモニウム結合を介して、アミン化合物と結合する。少なくとも10炭素原子のヒドロカルビル置換基は、カルボン酸アシル化剤に由来する分子の部分、又はアミノ化合物に由来する部分、又はその両方で見出しても良い。しかしながら、好ましくは、ヒドロカルビル置換基は、アシル化剤の部分で見られる。アシル化剤は、ギ酸及びそのアシル化誘導体から、最大で50、75、100又は200炭素原子の高分子量ヒドロカルビル置換基を有するアシル化剤で変動し得る。アミノ化合物は、アンモニアそれ自身から、最大で約30炭素原子のヒドロカルビル置換基を有するアミンで変動し得る。
【0021】
ポリアルキレンアミンは、通常は金属フリーとして見なされる。
好ましい種類の清浄剤は、少なくとも10炭素原子のヒドロカルビル置換基を有するアシル化剤と、少なくとも一つの-NH-基の存在により特徴付けられる窒素化合物の反応により製造されるものであっても良い。典型的には、アシル化剤は、モノ−又はポリカルボン酸(又はその反応性等価物)、例えば置換したコハク酸又はプロピオン酸であり、アミノ化合物は、ポリアミン又はポリアミンの混合物、最も典型的にはエチレンポリアミンの混合物である。アミンは、同様に、ヒドロキシアルキル置換したポリアミンであって良い。このようなアシル化剤中のヒドロカルビル置換基は、好ましくは、少なくとも30又は50かつ最大で200の炭素原子の平均を含む。
少なくとも10の炭素原子を含むヒドロカルビル置換基の説明は、n-デシル、n-ドデシル、テトラプロペニル、n-オクタデシル、オレイル、クロロオクタデシル及びトリコンタニル(triicontanyl)である。一般的には、ヒドロカルビル置換基は、2から10の炭素原子を有するモノ−及びジ−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、1-ヘキセン及び1-オクテンのホモ−又はインターポリマー(例えばコポリマー、例えばターポリマー)から製造される。典型的には、これらのオレフィンは、1-モノオレフィンである。この置換基は、このようなホモ−又はインターポリマーのハロゲン化(例えば、塩素化又は臭素化)した類似体からも得ることができる。
【0022】
ヒドロカルビル置換基は、主に飽和している。ヒドロカルビル置換基は、自然においては主に脂肪族化合物であり、すなわち、これらは、置換基中の10炭素原子毎に対して、6以下の炭素原子の非脂肪族部分(シクロアルキル、シクロアルケニル又は芳香族)基を、多くても一つ含む。しかしながら、通常、置換基は、50炭素原子毎に対して多くても一つのこのような非脂肪族基を含み、多くの場合において、これらは全体的にこのような非脂肪族基を全く含まず、すなわち、典型的な置換基は、純粋に脂肪族である。典型的には、これら純粋な脂肪属置換基は、アルキル又はアルケニル基である。
置換基の好ましい供給源は、35から75質量%のブテン含量及び30から60質量%のイソブテン含量を有するC4精製ストリーム(refinery stream)を、ルイス酸触媒、例えばアルミニウムトリクロライド又はボロントリフルオライドの存在下で重合することにより得られる、ポリ(イソブテン)の置換基である。これらポリブテンは、主に、構造-C(CH3)2CH2-のモノマー繰り返し単位を含む。
【0023】
ヒドロカルビル置換基は、例えばEP-B-0451380に記載されているように、従来の方法、例えばマレイン酸無水物と不飽和置換基先駆体、例えばポリアルケンの間の反応を介して、コハク酸部分又はその誘導体に結合する。
置換したコハク酸アシル化剤の一つの調製手順は、これらがポリアルケンの各分子に対して平均で少なくとも一つの塩素基となるまで、ポリアルケンを最初に塩素化する工程を含む。塩素化は、所望の量の塩素が塩素化したポリアルケンに取り込まれるまで、ポリアルケンと塩素ガスを接触させる工程を含む。塩素化は、一般的に、75から125℃の温度で行われる。所望の場合、希釈剤を塩素化の手順で使用できる。この目的のための適切な希釈剤は、ポリ−及び過塩素化された及び/又はフッ素化されたアルカン及びベンゼンを含む。
この手順における第二の段階は、塩素化したポリアルケンとマレイン酸反応種を、通常100から200℃の範囲内における温度で反応することである。塩素化したポリアルケンとマレイン酸反応種のモル比率は、通常1:1である。しかしながら、化学量論的に過剰なマレイン酸反応種を使用でき、例えば1:2のモル比率で使用できる。ポリアルケンの分子当たり平均で1より多い塩素基が、塩素化工程の間に導入される場合、結果として、1モルより多いマレイン酸反応種が、塩素化したポリアルケンの分子当たり反応できる。過剰なマレイン酸反応種、例えば5から50wt%の過剰、例えば25wt%の過剰なマレイン酸反応種を提供することが一般的に望ましい。未反応の過剰なマレイン酸反応種は、通常は真空により、反応生成物から取り除いて良い。
【0024】
置換したコハク酸アシル化剤の他の調製手順は、米国特許第3,912,764号及び英国特許第1,440,219号に記載されている方法を使用する。この手順に従い、ポリアルケン及びマレイン酸反応種は、最初に、直接のアルキル化手順において、これらを一緒に加熱することにより反応させる。直接のアルキル化工程が完了した場合、塩素を反応混合物に導入して、残存する未反応のマレイン酸反応種の反応を促進する。これら特許明細書に従い、0.3から2モル以上のマレイン酸無水物を、反応において各モル数のポリアルケンに対して使用する。直接のアルキル化工程は、180から250℃の温度で行う。塩素導入段階の間、160から225℃の温度が適用される。
ヒドロカルビル置換基の、コハク酸部分に対する結合は、代わりに、塩素がない場合には、熱的に促進する(thermally-driven)“エン”反応を介して達成して良い。材料、例えばアシル化剤の使用は、特別な利点を有する生成物、例えば優れた洗浄力及び潤滑特性を有する塩素フリーの生成物に導く。このような生成物において、反応種は、好ましくは、少なくとも30%、好ましくは50%以上、例えば75%の末端二重結合の形態、例えばビニリデンの形態にある残りの不飽和を有するポリアルケンから形成される。
【0025】
適切なポリアルキレンアミンは、アルキレン架橋により連結したアミノ窒素を含むアミンであり、アミノ窒素は、第一級、第二級及び/又は第三級であって良い。ポリアミンは、直鎖であって良く(ここで全てのアミノ基は、第一級又は第二級であり)、又は環状若しくは分枝した領域若しくはその両方を含んで良い(この場合、第三級アミノ基が存在しても良い)。アルキレン基は、好ましくはエチレン又はプロピレン基、最も好ましくはエチレンである。このような材料は、ポリアミンの混合物を得る、より低級のアルキレンジアミン、例えばエチレンジアミンの重合から、又はジクロロエタン及びアンモニアの反応を介して調製して良い。
ポリアルキレンポリアミン(1)の具体的な例は、エチレンジアミン、テトラ(エチレン)ペンタミン、トリ-(トリメチレン)テトラアミン、及び1,2-プロピレンジアミンである。ヒドロキシアルキル置換したポリアミンの具体的な例は、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N'-ビス-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及びN-(3-ヒドロキシブチル)テトラメチレンジアミンを含む。複素環置換したポリアミン(2)の具体的な例は、N-2-アミノエチルピペラジン、N-2及びN-3アミノプロピルモルホリン、N-3-(ジメチルアミノ)プロピルピペラジン、2-ヘプチル-3-(2-アミノプロピル)イミダゾリン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン及び2-ヘプタデシル-1-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾリンである。芳香族ポリアミン(3)の具体的な例は、異性体のフェニレンジアミン及び異性体のナフタレンジアミンである。
【0026】
米国特許3172892;3219666;3272746;3310492;3341542;3444170;3455831;3455832;3576743;3630904;3632511;3804763及び4234435を含む、並びに欧州特許0336664及び欧州特許0263703を含む、多くの特許明細書が、適切なポリアルキレンアミン清浄剤を記載している。典型的かつ好ましいこの種の清浄剤は、ポリ(イソブチレン)−置換したコハク酸無水物アシル化剤(該ポリ(イソブテン)−置換基は、50から200炭素原子を有する)(例えば無水物、酸又はエステル)と、エチレンポリアミンに対して3から10のアミノ窒素原子と1から6エチレン基を有するエチレンポリアミンの混合物との反応により製造されたものである。
ポリアルキレンアミンは、該成分の分子当たりの窒素原子の平均数で定義され、好ましくは分子に対して窒素原子が4から8.5、より好ましくは6.8から8、とりわけ6.8から7.5の範囲にあって良い。
【0027】
同様に適切であるのは、分子当たり7つ及び8つ、任意で9つであっても良い窒素原子を有するポリアミン(いわゆる“重(heavy)”ポリアミン)を含むアミン混合物から製造される材料である。好ましくは、ポリアミン混合物は、ポリアミンの合計質量に基づいて、少なくとも45質量%、及び好ましくは50質量%の、分子当たり7つの窒素原子を有するポリアミンを含む。ポリアミン混合物に加えて、単一種を使用しても良く、例えばテトラエチレンペンタミン(TEPA)及びトリエチレンテトラミン(TETA)である。
好ましいポリアルキレンアミン清浄剤は、ポリ(イソブテン)−置換したコハク酸無水物アシル化剤と、本明細書で前に記載したような、エチレンポリアミンの混合物を反応することにより製造した清浄剤であり、ここで該ポリイソブテンは、400-2500、好ましくは700-400、例えば950のMnを有する。一般的に、これらは、ポリアルケニルコハク酸イミド類(例えば、ポリブテニルコハク酸イミド、好ましくはポリイソブテニルコハク酸イミド)又はN-(ポリアミン−置換した)ポリアルケニルコハク酸イミドとして記載されるであろう。
【0028】
(燃料油)
燃料油は、一般的に110から500、例えば150から400℃の範囲内で沸騰する、中間留分燃料油の形態にある、石油ベースの燃料油である。
本発明は、広い範囲で沸騰する蒸留物を含む、全ての種類の中間留分燃料油、すなわちASTM D-86に従って測定した90%-20%沸点差が50℃以上の油に対して適用できる。
燃料油は、常圧蒸留物又は真空蒸留物、分解ガス油、直留及び熱的な及び/又は触媒的に分解した蒸留物のいかなる割合におけるブレンドを含んでよい。最も普通な石油蒸留物燃料は、ケロシン、ジェット燃料、ディーゼル燃料、灯油(heating oil)及び重油である。灯油は、直留の常圧蒸留物であってもよく、又は真空ガスオイル若しくは分解したガス又は両方を含んでも良い。燃料は、フィッシャートロプシュ法から得られる成分を大量又は少量含んでも良い。FT燃料としても知られる、フィッシャートロプシュ燃料は、ガストゥーリキッド燃料、石炭及び/又はバイオマス転換燃料として記載されるこれら燃料を含む。このような燃料を製造するために、合成ガス(CO+H2)を最初に生成し、次いでフィッシャートロプシュ反応で直鎖パラフィン及びオレフィンに転換する。次いで、直鎖パラフィンを、方法、例えば触媒分解/改質又は異性化、水素化分解及び水素異性化により変性して、種々の炭化水素、例えばイソパラフィン、シクロパラフィン及び芳香族化合物を得ても良い。結果得られたFT燃料は、そういうものとして、又は他の燃料成分及び燃料タイプ、例えば本明細書で述べたような燃料と組み合わせて使用して良い。上記低温流動性問題は、通常は、ディーゼル燃料及び灯油で直面する。本発明は、単体又は石油蒸留油との混合物として使用される、植物油に由来する脂肪酸メチルエステル、例えば菜種メチルエステルを含む燃料油にも適用できる。
【0029】
燃料油は、好ましくは低イオウ含量の燃料油である。典型的には、燃料油のイオウ含量は、500質量ppm(パートパーミリオン)より少ない。好ましくは、燃料のイオウ含量は、100ppmより少なく、例えば50ppmより少ない。さらに少ないイオウ含量を有する燃料油、例えば20ppmより少ない、又は10ppmより少ないものも、適切である。
【0030】
(処理割合)
燃料油中に存在する各成分の量は、使用する種の性質、燃料油の特性及び要求される低温性能により決まる。上で検討したように、本発明は、比較的高いレベルのポリアミン清浄剤を含むハイオクディーゼル燃料に存在する場合、ワックス沈降防止剤の低温の挙動にマイナスの影響を与える観察結果に基づく。
典型的には、燃料油組成物中の少なくとも一つのポリアルキレンアミン清浄剤(B)の量は、燃料油の質量に基づいて、50質量ppm過剰であり、例えば75又は100質量ppm過剰である。いくつかのハイオクディーゼル燃料は、500質量ppmまでのポリアルキレンアミン清浄剤を含んでもよい。これは、より従来の非ハイオクディーゼル燃料に対する約10から75ppmの処理割合と匹敵できる。
ワックス沈降防止剤として効果のある四級アンモニウム化合物の形態にある少なくとも一つの極性窒素化合物(A)の量は、燃料油の質量に基づいて、典型的には、10から500ppm、好ましくは20から250ppm、より好ましくは20から150質量ppmである。代わりに、10から200ppm、好ましくは10から100ppmを採用して良い。
【0031】
(他の添加剤)
ワックス沈降防止剤として効果のある極性窒素化合物を、他の付加的な低温流動性向上剤と組み合わせて使用することは、本技術においてごく普通である。適切な物質は、当業者にとって公知であり、及び例えば、エチレン−不飽和エステルコポリマー、例えばエチレン:ビニルアセテートコポリマー及び同類のポリマーを含む。本発明は、このような付加的な低温流動性向上剤の添加を考慮し、処理割合の点におけるこれらの適用も、当業者に公知である。本発明の全ての側面の態様において、燃料油は、さらに、エチレン−不飽和エステルコポリマーを含む。
【実施例】
【0032】
本発明は、本出願の請求の範囲を制限することを意図しない実施例で、以下に記載されるであろう。
【0033】
構成成分
以下の成分を使用した:
WASA(Aref):フタル酸無水物(1モル)及びジ(水素化した牛脂)アミン(2モル)を反応させて製造した、2-N',N'-ジアルキルアミド安息香酸のN,N-ジアルキルアンモニウム塩の形態にある、ワックス沈降防止剤として効果のある単量の極性窒素化合物。
WASA(A):N,N-ジメチル-N,N-二水素化したアンモニウムクロライド(1モル)と、二水素化した牛脂アミン(1モル)、フタル酸無水物(1モル)及びナトリウムメトキシド(1モル)を反応させて製造した、2-(N',N'-二水素化した牛脂アミド)安息香酸の、N,N-ジメチルジ−二水素化した牛脂アンモニウム塩の形態にある、ワックス沈降防止剤として効果のある、単量の極性窒素化合物。塩化ナトリウム(副生成物)は、水洗し、次いで水溶液を除去することにより分離した。
清浄剤(B):ポリイソブテン置換したコハク酸無水物(ここでポリイソブテン基は約1000の分子量を有する)と分子当たり少なくとも7つの窒素原子を有する種が支配的であるポリ−エチレンアミン混合物を反応させて製造したコハク酸清浄剤。
【0034】
燃料:使用した燃料は、中間留分ディーゼル燃料、燃料Xであった:
燃料Xは、以下により特徴付けられる;
D86蒸留 IBP 199℃
20% 231℃
90% 319℃
FBP 352℃
曇り点 -6℃
CFPP -13℃
【0035】
試験
添加剤(A)、(Aref)及び(B)を、以下に示す割合で燃料Xにブレンドし、中間留分燃料油組成物を得た。組成物は、ディーゼル燃料で規定通りに使用される添加剤、例えば、エチレン不飽和エステルコポリマー(EVE)、ジアルキルフマレートビニルアセテートコポリマー(FVA)、ポリエチレングリコールエステル(PEGE)及びアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物(APFC)も含んでいる。このような添加剤は、上記略語で以下言及される。
以下の全ての添加割合は、活性成分(すなわち、溶媒又はキャリアーではない成分)の、燃料の質量に基づいた質量ppmとして表される。
【0036】
組成物の低温特性は、以下のように測定した:
(アラルショートセディメントテスト(Aral Short Sediment Test))
アラルショートセディメントテスト(ASST)は、燃料油のワックス含有物を沈降させる傾向の測定であり、結果として、ワックス沈降防止剤の有効性の決定である。この試験は、ドイツの石油企業アラル(Aral)によって開発され、及びヨーロッパ全体で広く受け入れられている。ASST測定基準は、“ΔCP”デルタ曇り点であり、これは以下のように測定される:基燃料油の曇り点(CP)を測定する。検討するワックス沈降防止剤の組み合わせを、基燃料に添加し、サンプルを、測定したCPより7℃低い温度、すなわち、通常はドイツの冬期ディーゼル燃料に対する-13℃で16時間貯蔵する。目視により沈降したと判断されたワックスの量に注意を払う。次いで、燃料の底20%を取り、及びこの試料のCPを測定して、基燃料の値と比較する。ΔCPは、[基燃料のCP]−[添加した燃料のCP]の差である;従って、より大きいΔCPはより大きなワックス沈降の程度である。ΔCPの小さな値、好ましくは約0は、良好なワックス分散を示す。
【0037】
低温フィルター目詰まり点(“CFPP”)
CFPPは、標準的な工業試験であり、燃料油サンプルの低下した温度でフィルターを通過する能力を評価する。この試験は、“Jn. Of the Institute of Petroleum”,vol.52, No.510 (1996), p173-285において詳細に記載された手順により行われ、自動車ディーゼルにおける中間留分燃料油の低温流動性と関係づけるために設計された。要するに、試験すべき油の試料(40cm3)を、約1℃/分の平均冷却率を得るために、約-34℃に維持した浴中で冷却する。定期的に(上記曇り点から出発して各1℃で)、油を、その下端が試験すべき油の表面より下に配置する逆じょうごに取り付けられたピペットである試験機器を用いる間、規定の時間に細かい網目を通過する能力に関して試験する。じょうごの口を横切って引っ張られるのは、12mmの直径により定義された領域を有する350メッシュスクリーンである。周期的な試験を、ピペット上端に真空を適用することにより開始し、これにより、油の20cm3を示すマークまで、網目を介してピペット中に油が浸される。各成功した通過の後、油を即座にCFPPチューブに戻す。試験を、油が60秒以内にピペットを満たすことに失敗するまで、温度を各1℃づつ落としながら繰り返し、失敗の起こった温度を、CFPP温度として報告する。
【0038】
結果
燃料Xに基づいた燃料油組成物に行った試験結果を、以下の表1に示す。
試験の最初のセットにおいて、燃料油組成物の3つのグループを、220、290及び365ppmのそれぞれのEVE濃度で使用した。これら各3つのグループは、それぞれ0、50及び100ppmの濃度の清浄剤(B)を有する油を含み、及びこれら各油は、100ppmの参照WASA(Aref)又は本発明のWASA(A)を含んだ油を含んだ。従って、燃料Xに基づく18の油を試験した。
【0039】
【表1】

【0040】
右側の欄に示される結果は、ΔCPである。小さい値、例えば約0は、良好な性能を示し、一方より大きな値、例えば4から6℃は、乏しい性能を示す。これらは、清浄剤(B)が存在する場合、参照WASA(Aref)のワックス沈降防止性能がほとんど完全に失われていることを実証する。対照的に、本発明のWASA(A)を使用する場合、そのワックス沈降防止性能が、清浄剤(B)の存在下で十分に維持される。
燃料Xに基づいた燃料油組成物で行った第二のセットの試験結果を、以下の表2に示す。燃料Xに基づく全ての組成物は、ジドデシルフマレート:ビニルアセテートコポリマー(25ppm)、及びAPFC(25ppm)(両方とも低温流動性向上添加剤で知られる)を含んだ。
燃料油組成物の3つのグループを、それぞれ220、290及び365ppmのEVE濃度で使用した。
各これら3つのグループは、それぞれ0又は100ppmの清浄剤(B)、及び各0又は20ppmのポリエチレングリコールエステル(“PEGE”)低温流動性向上剤を有する油を含んだ。各油は、50ppmの参照WASA(Aref)又は本発明のWASA(A)を含んだ。従って、燃料Xに基づく24の油を試験した。
【0041】
【表2】

【0042】
2つの隣接した右側の欄に示す結果は、℃におけるCFPPの結果である。これらは、清浄剤(B)が存在しない場合において、参照WASA(Aref)を含む油のCFPPが、本発明のWASA(A)を含む油のCFPPよりもよりよいか又は匹敵することを実証する。しかしながら、これらは、清浄剤(B)が存在する場合において、CFPPの利点が消失すること、及び(Aref)の代わりに(A)を含むさらなるCFPPの利点が存在することも実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少量の、
(A)ワックス沈降防止剤として効果的である、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩の形態にある少なくとも一つの油溶性極性窒素化合物;及び
(B)少なくとも一つの油溶性ポリアルキレンアミン清浄剤、
を含む、中間留分燃料油組成物であって、
(A)及び(B)の濃度が、前記燃料油組成物の1以上の低温特性が、4級アンモニウム塩ではなく、かつ(A)に類似したポリカルボン酸の油溶性アミン塩である(Aref)を、(A)の代わりに含んだ以外は同一の他の燃料油組成物の低温特性よりもよりよくなるほどのものであり;かつ
前記燃料油組成物における(B)の濃度が、前記それ以外は同一の他の燃料油組成物における(Aref)の一以上の低温特性にマイナスに影響するであろう程のものである、燃料油組成物。
【請求項2】
前記燃料油組成物の1以上の低温特性が、(A)の代わりに(Aref)を含みかつ(B)を含まない他の同一の燃料油組成物と同程度又はよりよい、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項3】
極性窒素化合物中に又は各極性窒素化合物の4級アンモニウムカチオンが、式NR13R14(式中R13は、ヒドロカルビル基、例えば8から40の炭素原子を含むアルキル基を表し、及びR14はヒドロカルビル基、例えば最大で40の炭素原子を含むアルキル基を表し、但し、R13及びR14が直鎖又は分枝してもよく及び/又は同一又は異なっても良い)の部分を含む、請求項1又は2に記載の燃料油組成物。
【請求項4】
4級アンモニウムカチオンが、式+NR13R14R2(式中Rはメチル、エチル又はプロピルを表す)により表される、請求項3に記載の燃料油組成物。
【請求項5】
R13及び任意でR14が、水素化した牛脂に由来するアルキル基を表す、請求項3又は4に記載の燃料油組成物。
【請求項6】
ポリカルボン酸がフタル酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料油組成物。
【請求項7】
(A)が、以下の式により表され、
【化1】

(式中、R13及びR14はそれぞれ、水素化した牛脂由来のアルキル基を表す)、及び(Aref)が、1モル部のフタル酸無水物と、2モル部の二水素化した牛脂アミンの反応により得られるアミド−アミン塩である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料油組成物。
【請求項8】
少なくとも一つのポリアルキレンアミン清浄剤が、ポリ(イソブテン)−置換したコハク酸無水物及びポリアミンの反応生成物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料油組成物。
【請求項9】
ポリ(イソブテン)置換基が、400から2500、好ましくは700から1400の範囲にある数平均分子量を有する、請求項8に記載の燃料油組成物。
【請求項10】
少なくとも一つの油溶性ポリアルキレンアミン清浄剤である少量の(B)を含んだ中間留分燃料油組成物における、ワックス沈降防止剤として効果的である、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩の形態にある少なくとも一つの油溶性極性窒素化合物である少量の(A)の、4級アンモニウム塩ではなくかつ(A)に類似したポリカルボン酸のアミン塩である(Aref)を、(A)の代わりに含んだ以外は同一の他の燃料油組成物の1以上の低温特性と比較して、前記燃料油組成物の1以上の低温特性を向上させるための使用であって、前記燃料油組成物における(B)の濃度が、前記それ以外で同一の他の燃料油組成物における(Aref)の一以上の低温特性にマイナスに影響するであろう程のものである使用。
【請求項11】
向上する低温特性が、ΔCP又はCFPP又はその両方である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
少量の、ワックス沈降防止剤として効果的である少なくとも一つの極性窒素化合物、及び少なくとも一つのポリアルキレンアミン清浄剤を含む中間留分燃料油組成物の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(i) 請求項1で定義したような(B)の濃度、及び請求項1で定義したような(Aref)の濃度を、(B)が中間留分燃料油組成物における(Aref)の1以上の低温特性にマイナスに影響する濃度で決定する工程;
(ii) 請求項1で定義したような(A)の濃度を、工程(i)で決定した濃度で(B)を含む中間留分燃料油組成物の1以上の低温特性が、(Aref)及び(B)を含む以外は同一の他の中間留分燃料油組成物の低温特性よりもよりよくなる濃度で決定する工程;及び
(iii) 工程(i)及び(ii)で決定した濃度で(A)及び(B)を含む中間留分燃料油組成物をブレンドする工程。
【請求項13】
少量の
(A)ワックス沈降防止剤として効果的である、フタル酸の4級アンモニウム塩の形態にある少なくとも一つの油溶性極性窒素化合物;及び
(B)N-(ポリアミン置換)ポリアルケニルコハク酸イミドの形態にある、少なくとも一つの油溶性ポリアルキレンアミン清浄剤
を含む中間粒分燃料油組成物。