説明

燃料集合体ガンマ線測定装置

【課題】測定誤差が大きいガンマ線の計数率の有無を精度良く確認することができる燃料集合体ガンマ線測定装置を提供する。
【解決手段】放射線検出器2は燃料集合体10からのガンマ線を測定し、ガンマ線検出信号をガンマ線処理装置3に入力する。ガンマ線処理装置2は、燃焼度と相関の良いCs137から放出されたガンマ線のガンマ線検出信号を選別し、このガンマ線検出信号の計数率を求める。記憶装置6は、燃料集合体10に対する燃料の種類及び照射履歴に依存する計数率を燃焼度に換算する換算係数の、燃料の種類及び照射履歴の各情報への依存性を示すフィッティング係数を記憶する。換算係数解析装置5は、燃料集合体10に対する計数率から燃焼度への換算係数を算出する。燃焼度・出力解析装置4は、ガンマ線処理装置3から入力した計数率及び換算係数解析装置5で算出した換算係数を用いて、燃料集合体10燃焼度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料集合体ガンマ線測定装置に係り、特に、沸騰水型原子炉の燃料集合体に適用するのに好適で、原子炉内で照射された燃料集合体の燃焼度あるいは出力を測定するための燃料集合体ガンマ線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある運転サイクルにおいて原子炉内に装荷されて照射され、次の運転サイクルでも原子炉内に装荷される燃料集合体の一部を対象に、燃焼度等の測定が実施される。この燃焼度の測定は、ある運転サイクルでの原子力プラントの運転が停止されてこの原子力プラントの定期検査が実施されるとき、原子炉の炉心に装荷されている、対象となる燃料集合体が、原子力プラントの定期検査の期間中において、原子炉から取り出され、この燃料集合体に対して燃焼度の測定が行われる。燃焼度の測定が終了した燃料集合体は、再び、炉心に装荷され、次の運転サイクルにおいて使用される。
【0003】
燃焼度を測定する方法として、破壊測定及び非破壊測定がある。破壊測定は、精度の良い燃焼度の測定が可能であるが、例えば、原子力プラントの定期検査時に、上記したように次の運転サイクルでも使用される燃料集合体の燃焼度を測定するときには適用することができない。
【0004】
非破壊測定で燃料集合体の燃焼度を測定する方法としては、原子炉から取り出されて次の運転サイクルでも使用される燃料集合体を燃料貯蔵プール内に移送し、燃料貯蔵プール内で燃料集合体から放出されるガンマ線を放射線検出器により測定する方法などがある。このガンマ線を測定する方法においては、放出されるガンマ線の計数率が燃焼度と相関の良い核分裂生成物(以下、FPと記す)核種から放出されたガンマ線を測定する。測定対象となる燃料集合体の燃焼度はその燃料集合体が炉心内に滞在していた期間(炉内滞在期間)において発生したエネルギーの積算値であるため、燃焼度と相関の良いFP核種は、その半減期がある程度長いFP核種に限られる。燃焼度と相関の良いFP核種としては、例えば特開平3−238399号公報に記載されているように、Cs137、Cs134、Eu154、Ce144及びRu106等がある。これらのFP核種のうちでも、Cs137は燃料集合体の燃焼度との相関がより良いFP核種である。これらのFP核種は、燃料集合体の炉内滞在期間中においてその燃料集合体に含まれた核燃料物質の核分裂により生成したFP核種の崩壊により、あるいはFP核種が中性子を吸収して生成される。しかし、同時に生成されたそのFP核種自身も崩壊している。
【0005】
このため、燃焼度が同じ燃料集合体であっても、燃料の種類及び照射履歴により、ガンマ線を測定する時点でのFP核種の量が異なる。つまり、ガンマ線の計数率と燃焼度の関係が、燃料の種類及び照射履歴により異なる。従って、ガンマ線の計数率を用いて燃焼度を求める場合には、対象となる燃料集合体毎に、燃料の種類及び照射履歴を考慮する必要がある。
【0006】
燃料の種類は、燃料集合体に含まれる核燃料物質の組成及び燃料集合体の構造(燃料棒の配置(燃料棒本数)を含む)によって区別される。核燃料物質の組成及び燃料集合体の構造が異なる燃料集合体は、種類の異なる燃料集合体である。燃料の種類は、燃料集合体一体ごとに判断されるのではなく、燃料集合体のノードごとに判断される。燃料集合体内の核燃料物質が充填された領域の、燃料集合体の軸方向の長さを、燃料有効長という。燃料有効長は一般に24ノードに分割され、1ノードは燃料有効長の1/24の長さである。燃料の種類は24ノードのそれぞれに対して判断され、一体の燃料集合体においても、燃料集合体の軸方向において、燃料の種類の異なるノードが存在する場合がある。例えば、部分長燃料棒が存在する燃料集合体では、部分長燃料棒が存在するノードと部分長燃料棒が存在しないノードは、燃料の種類が異なっている。また、軸方向において濃縮度分布及び可燃性毒物濃度分布が異なっている燃料集合体では、濃縮度及び可燃性毒物濃度が同じノードは燃料の種類が同じであり、濃縮度及び可燃性毒物濃度の少なくとも一方が異なっているノードは燃料の種類が異なっている。
【0007】
燃料の照射履歴は、燃料集合体が炉心内に滞在している期間(炉内滞在期間)内で受ける中性子照射の履歴である。燃料の照射履歴に関する具体的な情報は、炉内滞在期間における平均のボイド率及び出力密度等である。ボイド率及び出力密度も、ノードごとに与えられる。
【0008】
また、一般的に、燃料集合体は、核燃料物質を充填している多数の燃料棒を有している。このため、燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する場合には、例え、燃料集合体内の各燃料棒が同じ強度のガンマ線を放出していたとしても、ガンマ線の計数率への寄与は、放射線検出器に近い燃料棒の方が遠い燃料棒よりも大きい。これは、燃料集合体の平均の燃焼度が同じでも、燃料棒毎の燃焼度の分布が異なれば、ガンマ線の計数率が異なることを意味する。従って、ガンマ線の計数率から燃焼度を求める際には、燃料集合体内の燃料棒の燃焼度分布も考慮する必要がある。燃料集合体内の燃焼度分布も、程度の大小はあれ、燃料の種類及び照射履歴に依存する。
【0009】
一方、原子炉内で照射された燃料集合体の出力を測定する場合にも、燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する方法が用いられる。燃料集合体の出力を測定する場合には、その出力と相関の良いFP核種から放出されるガンマ線を測定する。出力と相関の良いFP核種として、例えば、La140などがある。燃料集合体の出力はある瞬時(ここでは、原子炉の運転停止直前の値であるので、ガンマ線の計数率と出力の関係には、後述の燃料集合体内出力分布の影響を除けば、照射履歴はほとんど影響しない。しかし、燃料集合体の出力を求めるためのガンマ線の計数率は、燃焼度を測定する場合と同様、燃料集合体内の燃料棒の出力分布の影響を受ける。従って、ガンマ線の計数率から燃料集合体の出力を求める際には、燃料集合体内の出力分布も考慮する必要がある。燃料集合体内の出力分布も、程度の大小はあれ、燃料の種類及び照射履歴に依存する。
【0010】
上述したように、ガンマ線の計数率を用いて燃焼度を算出する際には、燃料の種類及び照射履歴に依存する、ガンマ線の計数率から燃焼度への変換係数を考慮する必要がある。なお、この変換係数は、ガンマ線を測定する対象のFP核種によって、燃料の種類及び照射履歴への依存性が異なる。また、ガンマ線を測定する燃料集合体毎に、さらには各燃料集合体の軸方向位置により照射履歴が異なるため、各燃料集合体の軸方向位置毎に異なった変換係数を用いて燃料集合体の燃焼度を算出する。ガンマ線の計数率を用いて燃料集合体の出力を算出する際にも、燃焼度と同様に、燃料の種類及び照射履歴に依存する、ガンマ線の計数率から出力への変換係数を考慮する必要がある。但し、ガンマ線の計数率から出力への変換係数における燃料の種類及び照射履歴への依存性は、一般に、ガンマ線の計数率から燃焼度への変換係数よりも小さい。
【0011】
このように、ガンマ線の計数率を用いて燃料集合体の燃焼度あるいは出力を算出するためには、複雑な変換が必要である。従って、実際に燃料集合体のガンマ線を測定する際には、測定の現場では放射線検出器によりガンマ線の測定のみを実施し、このガンマ線の測定終了後に、別途、得られたガンマ線の計数率を燃焼度あるいは出力へ変換する、という手順を踏むのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平3−238399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特開平3−238399号公報に記載された燃料集合体ガンマ線測定装置は、仮に測定誤差が特異的に大きいガンマ線の計数率が放射線検出器から出力された場合でも、ガンマ線の測定時において、出力されるガンマ線が特異的に大きな測定誤差を含んでいることに気付き難いという課題がある。例えば、原子力プラントの定期検査時に、燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する際には、燃料集合体とガンマ線測定装置が燃料貯蔵プールの水中に配置される。一般に、ガンマ線測定装置は、内部に浸水しない構造になっているが、もし、ガンマ線測定装置の内部に浸水が生じると、得られたガンマ線の計数率に大きな誤差を生じる。また、測定する燃料集合体とガンマ線測定装置の位置関係がずれることでも、ガンマ線の計数率に大きな誤差を生じる。しかし、上述したように、ガンマ線の計数率と燃料集合体の燃焼度あるいは出力の関係は、燃料の種類及び照射履歴により異なるので、もし他のガンマ線の計数率と傾向が異なるガンマ線の計数率が得られたとしても、それがガンマ線の計数率の誤差に起因するのか、燃料の種類及び照射履歴の違いに起因するのか、を明確に判断することは非常に困難である。そのため、誤差が大きいガンマ線の計数率を見逃したままガンマ線の測定を終了してしまう可能性がある。
【0014】
本発明の目的は、測定誤差が大きいガンマ線の計数率の有無を精度良く確認することができる燃料集合体ガンマ線測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉内で照射された燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する放射線検出器と、
ガンマ線の測定により放射線検出器から出力された複数のガンマ線検出信号を入力し、これらのガンマ線検出信号から、燃焼度と相間の良い第1核分裂生成物核種から放出された第1ガンマ線の第1ガンマ線検出信号を選別し、及び選別された第1ガンマ線検出信号の第1計数率を求めるガンマ線処理装置と、
燃料集合体に対する燃料の種類及び照射履歴に依存する第1計数率を燃焼度に換算する第1換算係数の、燃料の種類及び照射履歴のそれぞれの情報への依存性を示す第1フィッティング係数を記憶する記憶装置と、
入力装置から入力される燃料の種類及び照射履歴の各情報に対応する第1計数率から燃焼度への換算を行う第1換算係数を、入力される燃料の種類及び照射履歴の各情報に基づいて記憶装置から読み出される第1フィッティング係数を用いて算出する第1解析装置と、
ガンマ線処理装置から入力する第1計数率、及び第1解析装置から入力する第1換算係数に基づいて燃料集合体の燃焼度を求める第2解析装置とを備えたことにある。
【0016】
入力装置から入力される燃料の種類及び照射履歴の各情報に対応する第1計数率から燃焼度への換算を行う第1換算係数を、入力される燃料の種類及び照射履歴の各情報に基づいて記憶装置から読み出される第1フィッティング係数を用いて算出し、ガンマ線処理装置から入力する第1計数率、及び第1解析装置から入力する第1換算係数に基づいて燃料集合体の燃焼度を求めるので、測定誤差の大きなガンマ線の第1計数率の有無を確認することができる。このため、ガンマ線の計数率を精度良く確認することができる。
【0017】
上記した目的は、原子炉内で照射された燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する放射線検出器と、
ガンマ線の測定により放射線検出器から出力された複数のガンマ線検出信号を入力し、これらのガンマ線検出信号から、燃料集合体の出力と相間の良い核分裂生成物核種から放出されたガンマ線のガンマ線検出信号を選別し、及び選別されたガンマ線検出信号の計数率を求めるガンマ線処理装置と、
燃料集合体に対する燃料の種類及び照射履歴に依存する計数率を前記出力に換算する換算係数の、燃料の種類及び照射履歴のそれぞれの情報への依存性を示すフィッティング係数を記憶する記憶装置と、
入力装置から入力される燃料の種類及び照射履歴の各情報に対応する計数率から出力への換算を行う換算係数を、入力される燃料の種類及び照射履歴の各情報に基づいて記憶装置から読み出されるフィッティング係数を用いて算出する第1解析装置と、
ガンマ線処理装置から入力する計数率、及び第1解析装置から入力する換算係数に基づいて燃料集合体の前記出力を求める第2解析装置とを備えたことによっても達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測定誤差が大きいガンマ線の計数率の有無を精度良く確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料集合体ガンマ線測定装置の構成図である。
【図2】本発明の他の実施例である実施例2の燃料集合体ガンマ線測定装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の燃料集合体ガンマ線測定装置を、実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料集合体ガンマ線測定装置を、図1を用いて説明する。本実施例の燃料集合体ガンマ線測定装置1は、放射線検出器2、ガンマ線処理装置3、燃焼度・出力解析装置(第2解析装置)4、換算係数解析装置(第1解析装置)5、記憶装置6、入力装置7及び表示装置8を備えている。ガンマ線処理装置3が放射線検出器2及び燃焼度・出力解析装置4に接続される。換算係数解析装置5が、燃焼度・出力解析装置4、記憶装置6及び入力装置7に接続される。表示装置8がガンマ線処理装置3及び燃焼度・出力解析装置4に接続される。
【0022】
ガンマ線測定対象の燃料集合体10は、少なくとも1つの運転サイクルにおいて原子炉(図示せず)内に滞在して原子炉の運転を経験しており、次の運転サイクルでも炉心に装荷される燃料集合体である。この燃料集合体10は、原子炉から取り出されて燃料貯蔵プール(図示せず)内の、例えば、燃料貯蔵ラック(図示せず)内に置かれている。燃料貯蔵ラック内に置かれた燃料集合体10は、燃料貯蔵プール内の冷却水中に存在する。
【0023】
燃料集合体ガンマ線測定装置1を用いた燃料集合体10の燃焼度(または出力)の測定について説明する。ガンマ線を測定する対象の燃料集合体10は、燃料貯蔵ラック内から取り出されて燃料貯蔵プール内のガンマ線測定領域(図示せず)まで移送される。ガンマ線測定領域において、燃料集合体保持装置(図示せず)が燃料貯蔵プールの側壁に設けられている。この燃料集合体保持装置は、燃料集合体を保持して上下動する昇降装置を有し、燃料貯蔵プールのプール水中に配置されている。燃料集合体10は、燃料集合体保持装置の昇降装置に固定される。
【0024】
放射線検出器2は、燃料集合体10に対向して配置され、燃料集合体10から放出されるガンマ線を測定する。ガンマ線測定時において、燃料集合体10が、昇降装置により燃料集合体の軸方向に移動され、燃料集合体10の下端から上端までの間で、放射線検出器2が燃料集合体10のノードごとにそのガンマ線を測定する。ガンマ線の測定により放射線検出器2から出力されたノードごとのガンマ線検出信号が、ガンマ線処理装置3に入力される。
【0025】
ガンマ線処理装置3は、ノードごとに入力したガンマ線検出信号から、燃料集合体10の燃焼度と相関の良いFP核種(例えば、Cs137)、及び燃料集合体10の出力と相関の良いFP核種(例えば、La140)のそれぞれから放出された各ガンマ線を選別する。選別するガンマ線は、燃焼度と相関の良いFP核種であればCs137以外のFP核種のガンマ線を、出力と相関の良いFP核種であればLa140以外のFP核種のガンマ線を選別してもよい。本実施例では、Cs137及びLa140から放出されるガンマ線を利用する。Cs137から放出されるガンマ線(第1ガンマ線)により放射線検出器2から出力されるガンマ線検出信号を、便宜的に、第1ガンマ線検出信号、及びLa140から放出されるガンマ線(第2ガンマ線)により放射線検出器2から出力されるガンマ線検出信号を、便宜的に、第2ガンマ線検出信号と称する。ガンマ線処理装置3は、第1ガンマ線検出信号をノードごとにカウントして各ノードに対する第1ガンマ線検出信号の計数率(以下、第1計数率という)を求め、第2ガンマ線検出信号をノードごとにカウントして各ノードに対する第2ガンマ線検出信号の計数率(以下、第2計数率という)を求める。
【0026】
記憶装置6は、測定対象である燃料集合体10に対する燃料の種類及び照射履歴に依存する第1ガンマ線検出信号の第1計数率を燃料集合体10の燃焼度に換算する第1換算係数の、燃料の種類及び照射履歴の各情報への依存性を示す第1フィッティング係数を記憶する。記憶装置6は、また、その燃料の種類及び照射履歴に依存する第2ガンマ線検出信号の第2計数率を燃料集合体10の出力に換算する第2換算係数の、燃料の種類及び照射履歴の各情報への依存性を示す第2フィッティング係数を記憶する。
【0027】
測定対象の燃料集合体10の燃料の種類及び照射履歴の各情報、具体的には、後述するように、燃料の種類に関する情報としては燃料組成及び燃料集合体の構造に関するそれぞれの情報及び燃料の照射履歴に関する情報としてはボイド率及び出力密度の各情報が、燃料集合体10のノードごとにオペレータにより入力装置7に入力される。換算係数解析装置5は、入力装置7から入力された測定対象の燃料集合体10のノードごとの燃料の種類及び照射履歴の各情報に対応する上記の各第1フィティング係数及び各第2フィティング計数を記憶装置6から読込む。換算係数解析装置5は、ノードごとの第1フィティング係数を用いて、ノードごとに、測定対象の燃料集合体10に対する第1計数率から燃焼度への換算係数(以下、第1換算係数という)をそれぞれ算出し、第2フィティング係数を用いて、ノードごとに、測定対象の燃料集合体10に対する第2計数率から出力への換算係数(以下、第2換算係数という)をそれぞれ算出する。
【0028】
燃焼度・出力解析装置4は、ガンマ線処理装置3から測定対象の燃料集合体10のノードごとの第1計数率及び第2計数率をそれぞれ入力し、換算係数解析装置5で算出された各ノードに対する第1及び第2換算係数を入力する。燃焼度・出力解析装置4は、各ノードの第1計数率及び第1換算係数を用いて、測定対象の燃料集合体10のノードごとの燃焼度を算出する。また、燃焼度・出力解析装置4は、各ノードの第2計数率及び第2換算係数を用いて、測定対象の燃料集合体10のノードごとの出力を算出する。
【0029】
ガンマ線処理装置3は、求めたノードごとの第1及び第2計数率をそれぞれ表示装置8に出力する。燃焼度・出力解析装置4は、算出したノードごとの燃焼度及び出力をそれぞれ表示装置8に出力する。表示装置8は、測定対象の燃料集合体10の、ノードごとの第1計数率、第2計数率、燃焼度及び出力を表示する。
【0030】
燃焼度・出力解析装置4及び換算係数解析装置5で実施されるそれぞれの処理を、以下に詳細に説明する。
【0031】
まず、換算係数解析装置5において実施される処理に用いられる、記憶装置6に記憶された情報について説明する。記憶装置6に記憶された第1及び第2フィティング係数は、それぞれ燃料の種類及び照射履歴に依存している。本実施例では、第1及び第2換算係数が依存するパラメータとして、例えば、燃料組成(ウラン、ウランとプルトニウムの混合酸化物(以下、MOXと記す)、ウラン濃縮度、プルトニウム富化度等)、燃料集合体の構造タイプ(燃料棒本数等)、照射期間(炉内滞在期間)における平均のボイド率及び出力密度等を用いる。
【0032】
これらのパラメータに関して、第1ガンマ線の第1計数率と燃料集合体の燃焼度の関係、すなわち、ガンマ線の第1計数率から燃焼度への第1換算係数を算出し、この第1換算計数の、燃料の種類及び照射履歴の各情報への依存性を示す第1フィッティング係数を予め算出して置く。さらに、上記の各パラメータに関して、第2ガンマ線の第2計数率と燃料集合体の出力の関係、すなわち、ガンマ線の第2計数率から燃料集合体の出力への第2換算係数を算出し、この第2換算計数の、燃料の種類及び照射履歴の各情報への依存性を示す第2フィッティング係数を予め算出して置く。前述したように、第1及び第2フィッティング係数が、予め、記憶装置6にそれぞれ記憶される。
【0033】
具体的には、例えば、照射期間平均のボイド率であれば、代表的なボイド率である数点に対して、測定対象のFP核種から放出される第1ガンマ線の第1計数率と燃焼度の関係を評価し、ボイド率と、同じ量の測定FP核種から放出される第1ガンマ線に対する第1計数率における燃焼度の関係を関数(例えば、二次関数(y=ax2+bx+c))によりフィッティングする。この関数の第1フィッティング係数であるa,b及びcを記憶装置6に記憶する。なお、これらの関係は、代表ボイド率(例えば、炉心平均に近い40%)で1になるように規格化しておく。
【0034】
出力密度についても、ボイド率と同様に、出力密度と、同じ量の測定FP核種から放出される第1ガンマ線に対する第1計数率における燃焼度との関係を、例えば、別の二次関数でフィッティングし、その二次関数の別の第1フィッティング係数を記憶装置6に予め記憶する。なお、代表出力密度(例えば、定格出力密度)で1になるように規格化する。
【0035】
燃料組成についても、ウラン濃縮度と、同じ量の測定FP核種から放出される第1ガンマ線に対する第1計数率における燃焼度との関係を、プルトニウム富化度と、同じ量の測定FP核種から放出される第1ガンマ線に対する第1計数率における燃焼度との関係を、それぞれ、例えば、さらに別の二次関数でフィッティングし、そのさらに別の二次関数のさらに別のそれぞれの第1フィッティング係数を記憶装置6に予め記憶する。なお、ウラン燃料、MOX燃料で併せて代表的なウラン燃料の濃縮度で1になるように規格化する。燃料集合体の構造についても同様に、代表的な燃料集合体の構造で1になるように関数でフィッティングする。
【0036】
オペレータは、測定対象の燃料集合体10のノードごとに、燃料組成、燃料集合体の構造、平均ボイド率、及び平均出力密度等の各パラメータの値を、入力装置7から換算係数解析装置5に入力する。換算係数解析装置5は、入力装置7から入力した各パラメータの値に基づいて、記憶装置6から、燃料集合体10のノードごとに、各第1フィッティング係数及び各第2フィッティング係数を読み出す。換算係数解析装置5は、ノードごとの第1フィティング係数を用いて、測定対象の燃料集合体10の各ノードにおいて、パラメータごとに、各パラメータの値に対応した第1計数率と燃焼度の相対関係、すなわち、第1計数率から燃焼度への第1換算係数を算出する。さらに、換算係数解析装置5は、ノードごとの第2フィティング係数を用いて、測定対象の燃料集合体10の各ノードにおいて、パラメータごとに、各パラメータの値に対応した第2計数率と出力の相対関係、すなわち、第2計数率から燃料集合体の出力への第2換算係数を算出する。
【0037】
燃焼度・出力解析装置4は、ガンマ線処理装置3から入力した、測定対象の燃料集合体10のノードごとのそれぞれの第1計数率に、換算係数解析装置5で算出された、各ノードにおける各パラメータのそれぞれの第1換算係数を掛けて、測定対象の燃料集合体10のノードごとの燃焼度を算出する。また、燃焼度・出力解析装置4は、ガンマ線処理装置3から入力した、測定対象の燃料集合体10のノードごとのそれぞれの第2計数率に、換算係数解析装置5で算出された、各ノードにおける各パラメータのそれぞれの第2換算係数を掛けて、測定対象の燃料集合体10のノードごとの出力を算出する。
【0038】
燃焼度及び出力が測定された燃料集合体10は、次の運転サイクルでの使用のため、原子炉の炉心内に戻される。
【0039】
本実施例では、ガンマ線の第1計数率から測定対象の燃料集合体の燃焼度へのパラメータ依存の第1フィティング係数を用い、測定対象である燃料集合体に対応した第1換算係数を算出し、この第1換算係数を用いてガンマ線の第1計数率から燃焼度へ変換することにより、ガンマ線の測定終了と同時に、算出された測定対象の燃料集合体の燃焼度と炉心性能計算で得られた燃焼度との比較が可能となる。このため、測定誤差の大きなガンマ線の第1計数率の有無を測定の現場で確認することが可能となる。
【0040】
また、ガンマ線の第2計数率から測定対象の燃料集合体の出力へのパラメータ依存の第2フィティング係数を用い、測定対象である燃料集合体に対応した第2換算係数を算出し、この第2換算係数を用いてガンマ線の第2計数率から出力へ変換することにより、ガンマ線の測定終了と同時に、算出された測定対象の燃料集合体の出力と炉心性能計算で得られた出力との比較が可能となる。このため、測定誤差の大きなガンマ線の第2計数率の有無を測定の現場で確認することが可能となる。
【0041】
測定誤差の大きなガンマ線の第1及び第2計数率の有無を確認できるので、ガンマ線の再測定などの対応がガンマ線測定終了後にすぐ行うことができる。
【0042】
なお、表示装置8に、ガンマ線の第1及び第2計数率、及びそれぞれの計数率から変換した燃焼度及び出力を並べて表示することにより、ガンマ線の第1及び第2計数率と燃焼度及び出力を容易に比較することも可能となる。
【0043】
本実施例では、燃焼度・出力解析装置4を設けて、第1換算係数を用いて第1計数率を燃焼度に、第2換算係数を用いて第2計数率を出力に変換している。これに対して、燃料集合体ガンマ線測定装置1において、燃焼度・出力解析装置4を燃焼度解析装置に替え、この燃焼度解析装置において第1換算係数を用いて第1計数率を燃焼度に変換しても良い。このような燃焼度を測定する燃料集合体ガンマ線測定装置は、前述の燃料集合体ガンマ線測定装置1と同じ構成を有し、燃料集合体ガンマ線測定装置1の処理のうち、ガンマ線処理装置3における、燃料集合体10の出力と相関の良いFP核種から放出されたガンマ線の選別、換算係数解析装置5における、第2計数率から出力への換算係数の算出、及び燃焼度・出力解析装置4における、各ノードの第2計数率及び第2換算係数を用いたノードごとの出力の算出を行っていない。
【0044】
さらに、燃料集合体ガンマ線測定装置1において、燃焼度・出力解析装置4を出力解析装置に替え、この出力解析装置において第2換算係数を用いて第2計数率を出力に変換しても良い。このような出力を測定する燃料集合体ガンマ線測定装置は、前述の燃料集合体ガンマ線測定装置1と同じ構成を有し、燃料集合体ガンマ線測定装置1の処理のうち、ガンマ線処理装置3における、燃料集合体10の燃焼度出力と相関の良いFP核種から放出されたガンマ線の選別、換算係数解析装置5における、第1計数率から燃焼度への換算係数の算出、及び燃焼度・出力解析装置4における、各ノードの第1計数率及び第1換算係数を用いたノードごとの燃焼度の算出を行っていない。
【実施例2】
【0045】
本発明の他の実施例である実施例2の燃料集合体ガンマ線測定装置を、図2を用いて説明する。本実施例の燃料集合体ガンマ線測定装置1Aは、実施例1の燃料集合体ガンマ線測定装置1に測定核種入力装置9を追加した構成を有する。燃料集合体ガンマ線測定装置1Aの他の構成は燃料集合体ガンマ線測定装置1と同じである。測定核種入力装置9は、換算係数解析装置5に接続され、ガンマ線を測定するFP核種を識別するデータを入力する装置である。
【0046】
本実施例では、記憶装置6に、複数のFP核種における燃料の種類及び照射履歴に依存するガンマ線の第1計数率から燃焼度を換算する第1換算係数、及び複数のFP核種における燃料の種類及び照射履歴に依存するガンマ線の第2計数率から出力を換算する第2換算係数を記憶させる。測定核種入力装置9から測定対象のFP核種を入力することにより、複数のFP核種を測定する場合でも、測定対象のFP核種に応じて燃焼度及び出力のそれぞれへ換算することが可能となる。
【0047】
本実施例においても、燃焼度・出力解析装置4を、前述の燃焼度解析装置または出力解析装置にしても良い。
【符号の説明】
【0048】
1,1A…燃料集合体ガンマ線測定装置、2…放射線検出器、3…ガンマ線処理装置、4…燃焼度・出力解析装置、5…換算係数解析装置、6…記憶装置、7…入力装置、8…表示装置、9…測定核種入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉内で照射された燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する放射線検出器と、
前記ガンマ線の測定により前記放射線検出器から出力された複数のガンマ線検出信号を入力し、これらのガンマ線検出信号から、燃焼度と相間の良い第1核分裂生成物核種から放出された第1ガンマ線の第1ガンマ線検出信号を選別し、及び選別された前記第1ガンマ線検出信号の第1計数率を求めるガンマ線処理装置と、
前記燃料集合体に対する燃料の種類及び照射履歴に依存する前記第1計数率を前記燃焼度に換算する第1換算係数の、前記燃料の種類及び照射履歴のそれぞれの情報への依存性を示す第1フィッティング係数を記憶する記憶装置と、
入力装置から入力される前記燃料の種類及び照射履歴の各情報に対応する前記第1計数率から前記燃焼度への換算を行う第1換算係数を、入力される前記燃料の種類及び照射履歴の各情報に基づいて前記記憶装置から読み出される第1フィッティング係数を用いて算出する第1解析装置と、
前記ガンマ線処理装置から入力する前記第1計数率、及び前記第1解析装置から入力する前記第1換算係数に基づいて前記燃料集合体の前記燃焼度を求める第2解析装置とを備えたことを特徴とする燃料集合体ガンマ線測定装置。
【請求項2】
前記ガンマ線の測定により前記放射線検出器から出力された複数のガンマ線検出信号を入力し、これらのガンマ線検出信号から、前記燃料集合体の出力と相間の良い第2核分裂生成物核種から放出された第2ガンマ線の第2ガンマ線検出信号を選別し、及び選別された前記第2ガンマ線検出信号の第2計数率を求める前記ガンマ線処理装置と、
前記燃料集合体に対する前記燃料の種類及び照射履歴に依存する前記第2計数率を前記出力に換算する第2換算係数の、前記燃料の種類及び照射履歴のそれぞれの情報への依存性を示す第2フィッティング係数を記憶する前記記憶装置と、
前記入力装置から入力される前記燃料の種類及び照射履歴の各情報に対応する前記第2計数率から前記出力への換算を行う第2換算係数を、入力される前記燃料の種類及び照射履歴の各情報に基づいて前記記憶装置から読み出される第2フィッティング係数を用いて算出する前記第1解析装置と、
前記ガンマ線処理装置から入力する前記第2計数率、及び前記第1解析装置から入力する前記第2換算係数に基づいて前記燃料集合体の前記出力を求める前記第2解析装置とを備える請求項1に記載の燃料集合体ガンマ線測定装置。
【請求項3】
ガンマ線を測定する前記核分裂生成物核種を識別するデータを入力する他の入力装置を設けた請求項1または2に記載の燃料集合体ガンマ線測定装置。
【請求項4】
前記第1計数率及び前記燃焼度を表示する表示装置を備えた請求項1に記載の燃料集合体ガンマ線測定装置。
【請求項5】
前記第1計数率、前記第2計数率、前記燃焼度及び前記出力を表示する表示装置を備えた請求項2に記載の燃料集合体ガンマ線測定装置。
【請求項6】
原子炉内で照射された燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する放射線検出器と、
前記ガンマ線の測定により前記放射線検出器から出力された複数のガンマ線検出信号を入力し、これらのガンマ線検出信号から、前記燃料集合体の出力と相間の良い核分裂生成物核種から放出されたガンマ線のガンマ線検出信号を選別し、及び選別された前記ガンマ線検出信号の計数率を求めるガンマ線処理装置と、
前記燃料集合体に対する燃料の種類及び照射履歴に依存する前記計数率を前記出力に換算する換算係数の、前記燃料の種類及び照射履歴のそれぞれの情報への依存性を示すフィッティング係数を記憶する記憶装置と、
入力装置から入力される前記燃料の種類及び照射履歴の各情報に対応する前記計数率から前記燃焼度への換算を行う換算係数を、入力される前記燃料の種類及び照射履歴の各情報に基づいて前記記憶装置から読み出されるフィッティング係数を用いて算出する第1解析装置と、
前記ガンマ線処理装置から入力する前記計数率、及び前記第1解析装置から入力する前記換算係数に基づいて前記燃料集合体の前記出力を求める第2解析装置とを備えたことを特徴とする燃料集合体ガンマ線測定装置。
【請求項7】
ガンマ線を測定する前記核分裂生成物核種を識別するデータを入力する他の入力装置を設けた請求項6に記載の燃料集合体ガンマ線測定装置。
【請求項8】
前記計数率及び前記燃焼度を表示する表示装置を備えた請求項6または7に記載の燃料集合体ガンマ線測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−163379(P2012−163379A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22219(P2011−22219)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】