説明

燃料電池のセパレータプレートのための耐久力のある伝導性接着結合

【課題】コスト効果を高め、燃料電池における電気伝導性のセパレータ要素の個々の構成要素の結合を最適化することが可能な伝導性要素を提供する。
【解決手段】改善された接着結合部を有する燃料電池のための、二極式プレート等の電気伝導性要素であって、伝導性要素は、概して、第1の伝導性シート58及び第2の伝導性シート60を備え、各シートは互いに対面する表面を有する。第1及び第2の被覆表面は、電気伝導性エポキシ接着剤112により互いに連結され、該接着剤は、1つ以上の接触領域において前記シートの第1及び第2の表面を接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PEM燃料電池、より詳しくは、伝導性セパレータプレート及び該プレートを作るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気自動車及び他の用途のための電源として提案された。一つの既知の燃料電池は、陽子交換膜(PEM)燃料電池であり、該燃料電池は、所謂、膜電極アッセンブリ(MEA)を備え、該膜電極アッセンブリは、膜の一方の面にアノード、膜の反対側の面にカソードを有する薄い固体ポリマー膜電解質を備えている。
【0003】
膜電極アッセンブリは、アノード及びカソードのための電流コレクターとして役立つ一対の伝導性接触要素の間に挟まれている。電流コレクターは、各々のアノード及びカソードの表面に亘って燃料電池のガス状反応物(即ち、H及びO/空気)を分布させるための適切なチャンネル及び開口部を備えることができる。
【0004】
複数の膜電極アッセンブリが電気的に直列に積み重ねられる場合、膜電極アッセンブリは、二極式プレート又はセパレータプレートとして知られている不浸透性の伝導性接触要素により、隣接する膜電極アッセンブリ同士が分離されている。セパレータ即ち二極式プレートは、2つの作動面を有する。一つの作動面は一つの電池のアノードに面し、他方の作動面はスタック内の隣接する電池上でカソードに面している。各々の二極式プレートは、隣接する電池の間で電流を電気的に伝達させる。スタックの端部における接触要素は、端部ターミナル即ち端部コレクタープレートと称されている。伝導性セパレータ要素は、しばしば、内部通路を持ち、該通路を通って、冷却剤がスタックから熱を除去するため流れている。
【0005】
二極式プレートは、一般に、1つ以上の連結箇所で一緒に連結されなければならない2つの別個の伝導性シートから製作される。二極式プレートは、電圧損失を減少させるため高い電気伝導率を提供しなければならず、重量測定効率を改善するため重量が小さく、長期間の作動効率のため耐久性を示さなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コスト効果を可能な限り高めて効率を促進するため、燃料電池における電気伝導性のセパレータ要素の個々の構成要素の結合を最適化するためのチャレンジすべき課題が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施態様では、本発明は、燃料電池のための伝導性要素に関し、該伝導性要素は、第1の表面を有する第1の伝導性シートと、第2の表面を有する第2の伝導性シートを備える。前記第1の表面は前記第2の表面と対面する。伝導性接着剤は、前記第1の表面及び前記第2の表面の間に配置され、1つ以上の接触領域において該第1及び第2の表面と接触する。該伝導性接着剤は該第1及び第2の表面の間に耐久性のある結合部を形成する。該結合部は、約1000kPa以上の圧縮力の下で約5mΩcm以下の電気抵抗を有する。幾つかの実施例では、電気抵抗は、同じ条件下で、約4mΩ−cm以下である。更に、伝導性接着剤は、エポキシ樹脂先駆物質を含むのが好ましい。幾つかの好ましい実施態様では、エポキシ接着剤は、ジアミンで硬化されたポリエポキサイドポリマーであり、かくして、2成分エポキシ接着系から形成された反応生成物である。一実施態様では、エポキシ接着剤は、ビスフェノールAのジエポキシド樹脂から形成される。かくして、接着剤は、好ましくは黒鉛及びカーボンブラックを含む複数の伝導性粒子を含んでいる。
【0008】
本発明の他の実施態様では、PEM燃料電池のための耐久性のある電気伝導性接触要素を形成する方法が提供される。本方法は、2成分エポキシ接着系を、黒鉛及びカーボンブラックを含む複数の伝導性粒子と混合する工程を備える。2成分エポキシ接着系は、第1の表面を有する前記要素の第1の伝導性シート、及び、第2の表面を有する前記要素の第2の伝導性シートのうち少なくとも1つに塗布される。前記第1の表面が前記第2の表面と接触され、塗布された接着系が前記第1の表面と前記第2の表面との間に配置され、1つ以上の接触領域において該第1及び第2の表面と接触する。前記接着ポリマー系は、前記第1及び第2の表面の間の前記1つ以上の接触領域で電気伝導性の耐久性のある結合部を形成するためを硬化される。
【0009】
本発明の更に別の実施態様では、燃料電池スタックは、複数の燃料電池と、隣接する燃料電池のアノード及びカソードの間に挟まれた電気伝導性要素と、を備える。スタックは、アノードに面する表面及び第1の熱交換表面を有する第1の電気伝導性シートと、カソードに面する表面及び第2の熱交換表面を有する第2の電気伝導性シートを備える。前記第1及び第2の熱交換表面は、液体冷却剤を受け入れるように構成された冷却剤流れ通路を該熱交換表面の間に形成するように互いに対面すると共に、電気伝導性接着剤を介して複数の接触箇所で互いに電気的に連結され、前記電気伝導性接着剤は、接着特性を有するエポキシポリマー内に分散された複数の伝導性粒子を含んでいる。前記電気伝導性接着剤は、前記第1及び第2のシートの間で電気伝導性経路を形成する。
【0010】
本発明の適用可能性の更なる領域は、以下に提供される詳細な説明から明らかとなる。詳細な説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施例を指しているが、例示の目的のみを意図しており、本発明の範囲をその実施例に制限するものではない。
【実施例】
【0011】
本発明は次の詳細な説明及び添付図面からより完全に理解されるようになる。
好ましい実施例の次の説明は、その本質上、単なる例示にしか過ぎず、本発明、その用途、又は、その使用方法を限定するものではない。本発明は、改善された接着結合手段を有する燃料電池のための電気伝導性要素(例えば、二極式プレート)を想定している。伝導性要素は、一般に、第1及び第2の伝導性シートを備え、各々のシートは互いに対面する表面を持っている。互いに対面する表面は伝導性接着剤により1つ以上の接触領域で互いに接着されている。該接着剤は、燃料電池で使用するため望ましい低い接触抵抗を有する強力な耐久性のある結合手段を提供する。更には、本発明は、電気で要素においてそのような改善された結合を形成するための方法を想定している。
【0012】
第1に、本発明をより良く理解するため、一例としての燃料電池及びスタックの説明が提供される。図1は、2つの個々の陽子交換膜(PEM)燃料電池を表しており、これらの燃料電池は、電気伝導性の液体冷却式二極式セパレータプレートの伝導性要素8によって互いから分離された一対の膜電極アッセンブリ(MEA)4、6を有するスタックを形成するため接続されている。スタック内で直列に接続されていない個々の燃料電池は、単一の電気的活動側部を備えたセパレータプレート8を有する。スタック内では、好ましい二極式セパレータプレート8は、典型的には、2つの電気的活動側部20、21をスタック内に持ち、活動側部20、21の各々は、分離された互いに逆の電荷を備えた別個の膜電極アッセンブリ4、6に各々対面しており、よって、所謂、二極式プレートとなる。本明細書で説明されるように、燃料電池スタックは、単一の燃料電池に等しく適用可能である。
【0013】
膜電極アッセンブリ4、6及び二極式プレート8は、ステンレス鋼製クランプターミナルプレート10、12及び端部接触流体分布要素14、16の間で一緒に積み重ねられる。端部流体分布要素14、16並びに二極式プレート8の作動面若しくは側部20、21の両方は、燃料及び酸化剤ガス(即ちH及びO)を膜電極アッセンブリ4、6に分布させるため、活動面18、10、20、21、22及び24上の水又はチャンネルに隣接した複数のランドを備える。非伝導性ガスケット即ちシール部26、28、30、32,33及び35は、燃料電池スタックの幾つかの構成要素の間でシール部及び電気的絶縁を提供する。ガス透過性の伝導性拡散媒体34、36、38及び40は、膜電極アッセンブリ4、6の電極面に対して押圧する。伝導性媒体43、45の追加の層は、端部接触流体分布要素14、16と、ターミナルコレクタープレート10、12との間に配置され、スタックが通常の作動条件の間に圧縮されるとき、それらの間で伝導性経路を提供する。端部接触流体分布要素14,16は、拡散媒体34、43、40、45に対して各々押圧される。
【0014】
酸素は、適切な供給配管42を介して貯蔵タンク46から燃料電池スタックのカソード側に供給され、水素は、適切な供給配管44を介して貯蔵タンク48から燃料電池スタックのアノード側に供給される。代替例として、空気は、周囲からカソード側に供給され、水素は、メタノール若しくはガソリンの改質器等からアノードに供給される。膜電極アッセンブリのH及びO/空気側の両方のための排出配管も提供される。追加の配管50は、貯蔵領域52から冷却剤を二極式プレート8及び端部プレート14、16を通して循環させて出口配管54から出させるように提供されている。
【0015】
本発明は、PEM燃料電池スタックの隣接する電池を分離し、スタックの隣接する電池の間で電流を伝達させ、スタックを冷却させる、図2に示された液体冷却式の二極式セパレータプレート56等の燃料電池の伝導性要素に関する。セパレータ二極式プレート56は、第1の外側シート58と、第2の外側シート60とを備える。シート58、60は、金属、金属合金、又は、複合材料から形成されてもよく、好ましくは、電気伝導性である。適切な金属、金属合金及び複合材料は、燃料電池内の伝導性要素内のシートとして機能するため十分な耐久性及び剛性を持っている。プレートボディのための材料を選択する際に考慮する追加の設計特性には、ガス透過性、伝導度、密度、熱伝導度、腐食耐性、パターン形成、熱的及びパターン安定性、機械加工性、コスト及び有用性が含まれている。利用可能な金属及び合金には、チタン、プラチナ、ステンレス鋼、ニッケルを基にした合金、及び、それらの組み合わせが含まれている。複合材料は、黒鉛、黒鉛フォイル、ポリマー基質中の伝導性粒子(例えば、黒鉛粉末)、カーボンファイバーペーパー及びポリマーのラミネート、金属コアを備えたポリマープレート、伝導性被覆ポリマープレート、並びに、それらの組み合わせを含むことができる。
【0016】
幾つかの実施例では、個々のシート58、60は、可能な限り薄く作られていてもよい(例えば、0.002〜0.02インチ即ち0.05〜0.5mm厚)。シート58、60は、機械加工、成形鋳造、切断、彫刻、打ち抜き加工、例えばフォトリソグラフィーマスクを通して等のフォトエッチング、又は、他の任意の適切な設計及び製造プロセスを始めとする、当該技術分野で知られた任意の方法により形成されていてもよい。シート102、104は、平坦なシートと、一連の外側流体流れチャンネルを備える追加のシートと、を備えるラミネート構造を備えていてもよいと考えられる。
【0017】
外側シート58は、膜電極アッセンブリ(図示せず)のアノードに対面するその外側に第1の作動表面59を持ち、複数のランド64を提供するように形成され、該ランドは、「流れ場」として知られている複数の溝66をそれらの間に形成し、該流れ場を通して、燃料電池の反応ガス(即ち、H又はO)は、二極式プレートの一方の側部68からその他方の側部70まで蛇行経路で流れる。燃料電池が完全に組み立てられたとき、ランド64は、カーボン/黒鉛ペーパー(図1では36又は38等)を押圧し、膜電極アッセンブリ(図1では4又は6等)を押圧する。図面を簡単にするため、図2は、ランド64及び溝66の2つのみのアレイを示している。実際には、ランド64及び溝66は、カーボン/黒鉛拡散媒体と係合するシート58、60の全外側表面を覆っている。反応ガスは、燃料電池の一方の側部68に沿って存在するヘッダー又はマニホルド溝72から溝66に供給され、燃料電池の反対側部70に隣接して存在する別のヘッダー/マニホルド溝74を介して溝66から出る。
【0018】
図3に最も良く示されるように、シート58の下側は、複数のリッジ76を備え、該リッジは複数のチャンネル78をそれらの間に形成し、燃料電池の作動の間に該チャンネルを通って冷却剤が通過する。図3に示されるように、冷却剤チャンネル78は各ランド64に重なり、反応ガスの溝66は各リッジ76に重なっている。代替例として、シート58が平坦であり、流れ場が材料の別個のシート内に形成されていてもよい。シート60は、シート58と類似している。この点において、複数のリッジ80が表されており、該リッジは、複数のチャンネル82をそれらの間に形成し、該チャンネルを通って冷却剤は二極式プレートの一方の側部69から他方の側部71へと流れる。第1及び第2のシート58,60の熱交換器(冷却剤側)の表面90、92は、それらの間に液体冷却剤を収容するようになった冷却剤流れ通路93を形成するように互いに対面すると共に、複数の結合部即ち接点領域100において互いに電気的に接続されている。シート58のように、且つ、図3で最も良く示されているように、シート60の外側は、複数のランド84を有する別の膜電極アッセンブリのカソードに面する作動表面63を持ち、該ランドは、反応ガスが通過するところの複数の溝86を画定させる。
【0019】
冷却剤は、シート58、60により各々形成されたチャンネル93の間を流れ、これにより、層流境界層を壊し、乱流を提供し、該乱流は、外側シート58、60の内側表面90、92との熱交換を各々向上させる。当業者により認められるように、本発明の電流コレクターは、例えば、流れ場、流体分配マニホルドの数及び配置、冷却循環システムの形態において上述されたものとは設計を変更してもよいが、電流コレクターの表面及びボディを介した電流の伝達の機能は、全ての設計間で同様に機能する。本発明の好ましい実施例では、良好な耐久性の電気伝導性経路は、接触領域100に亘って形成されている。接触領域10に亘る電気抵抗が非常に高い状況では、有意な量の熱が接触領域100において発生され、該接触領域には冷却剤が送られる。伝導性経路に亘って維持可能な電気抵抗は、冷却剤の過熱を引き起こさない上で十分に低いのが好ましい。その上、伝導性経路に亘る高い電気抵抗は、スタック内で電圧(パワー)損失をもたらす。
【0020】
かくして、本発明によれば、膜電極アッセンブリの冷却剤の過熱が防止され、その発生が少なくとも減少される。当該結合部の熱伝導度が高く、これは当該結合部の高い電気伝導度に関係する傾向があるからである。本発明によって、当該結合部に亘る過剰の電気電圧降下から生じるスタックのパワー損失は、改善される。結合ラインの抵抗に起因したスタック電圧損失は、好ましくはスタックにより発生したパワーの約10%以下であり、望ましくは5%以下、更により好ましくは、1%以下のオーダーである。接触領域100は、しばしば、「結合部」又は「結合ライン」と称される。本発明の様々な実施例によれば、結合ラインの劣化は、減少されるか及び/又は防止される。
【0021】
図4は、図3の一部分の拡大図であり、第1のシート58上のリッジ76を示し、第2のシート60上のリッジ80は、セパレータ要素56の構造的完全さを確実にするため接触量委k100において互いに連結される。第1のシート58は、接触領域100において、離散的な接触領域100内の複数の伝導性ジョイントを介して、第2のシート60に直接的に(即ち、中間スペーサーシート無しに)連結される。接触領域100は、電流コレクターとして機能するため二極式プレート要素に対して要求される電気伝導性経路を提供する。
【0022】
本発明の様々な実施例によれば、接触領域100における接着結合は、燃料電池の苛酷な作動条件内でも、ロバストで耐久性を有する。例えば、本発明の接着剤は、要素58、60を形成する材料に類似した温度係数を持ち、燃料電池が通常の作動と連係した温度のばらつきを通してサイクルを実行するとき結合ラインの劣化を最小にする。更には、本発明は、当該結合部に亘る所望の伝導度を分与するため必要とされる伝導性粒子の量を最小にし、当該結合部の接着性を強化する。かくして、本発明は、長期間の作動(即ち、500作動時間を超える時間)の後でさえも許されるレベルを維持するため、結合ラインの劣化を最小にし、接触子領域100に亘って低い接触(結合ライン)抵抗を維持する。
【0023】
燃料電池内の典型的な条件は、80℃において約200psi(約1400kPa)の圧縮性負荷、100%の相対湿度を含み、それにより該圧縮性負荷が接触領域100において一般的な「脱落」又は接着結合劣化を補償する。かくして、結合の完全さにおける欠陥は、一般に、より長い作動の持続の後で、例えば燃料電池作動の500時間から6000時間等の全体として長期間の結合安定性の劣化の後に現れる。かくして、結合の耐久性に関する任意の問題は、500作動時間後に、場合によっては6000作動時間以内にまで、明らかとなる。
【0024】
本発明の様々な実施例は、(例えば、主要なコーティング及び接着剤と、高い伝導性粒子のローディングとを使用して)プレートを互いに結合させる従来の方法と比べたとき材料の要求を最小にする高い電気電度々を有する耐久性のある結合部を提供する。本発明によれば、低抵抗結合部は、耐久性及び超寿命を維持しつつ材料要求を簡単にした状態で、セパレータプレートに対して達成することができる。
【0025】
本発明は、燃料電池内で互いに結合される任意の電気伝導性要素にも適用可能である。第1及び第2のシート58、60を図4に示されるように本発明に従って互いに直接接着させえてもよいが、二極式プレートのアッセンブリ56では、第1及び第2のシート58、60は、代替例として、冷却剤流れ通路93を仕切ることができる隣接する中間のセパレータ伝導性シート101(図5)に接着されてもよい。中間のセパレータ伝導性シート101は、より小さい冷却剤流れ通路93の間を冷却剤が移動することを可能にするように穿孔されていてもよい。そのような実施例では、セパレータシート101は、セパレータシート101の接触表面103を各々の第1及び第2の伝導性シート58、60に接着させることにより本発明に従って処理される。セパレータシート101は、冷却剤流れ通路93内で複数の冷却剤チャンネル105を提供するように波形が形成されてもよく、或いは、第1及び第2の外側シートに連結された平坦なシートであり、第1及び第2の外側シートは、各々が、例えば外側シートに波形を付けることにより、複数の冷却剤流れチャンネルを内部に形成させていてもよい。
【0026】
外側シート58、60の全ての互いに接触する領域100(及び使用されたときの内部のセパレータシート)は、冷却剤通路93が冷却剤の漏れに対して流体漏れ耐性である耐密封係合で密封されたことを確実にするため、並びに、隣接する電池の間で低い電気伝導度を提供するため、一緒に接着されている。耐密封係合は、好ましくは、500作動時間より多い時間、燃料電池作動条件にさらされたときには好ましくは6000作動時間より多い時間、持続する係合である。流体密封シール部は、接触領域100で形成されたシール部であり、該シール部は、該シール部を通した流体及びガスの輸送を防止するか又は部分的に妨げる。電気伝導性接着剤は、シート内の不規則性から生じるシート58、60の間の任意のギャップを充填するための伝導性充填剤としても機能する。本発明は、冷却剤及び電流収集を提供するスタックの端部においてターミナル伝導性要素(例えば、図1の14、16)にも適用可能である。
【0027】
本発明は、第1のシート58及び第2のシート60の各々の表面90、92が、図4に示されるように、1つ以上の接触領域100において互いに対面する、燃料電池内に伝導性要素を提供する。電気伝導性接着剤112は、第1及び第2の表面90、92の間に配置され、それにより、接触領域100において形成された結合部は、長期間の耐久性と、500作動時間を超えて維持可能な接触(結合ライン)抵抗とを向上させた。本発明の一部として、全ての金属酸化物が、特に接触領域100においてシート58、60が金属である表面90、92から除去されて、結合ラインの接着剤112を通してシート58、60の間で可能な限り低い電気抵抗接続を形成する。非金属シート(例えば、ポリマー組成又は黒鉛)は、酸化物除去を要求していないが、鋳造成形の間に形成されたシート表面において絶縁ポリマーリッチ膜の砂磨き又は除去を必要とし得る。
【0028】
本発明によれば、接着剤112内で必要とされる伝導性粒子の品質は、比較する電気伝導性接着剤からかなり減少する。幾つかの実施例では、伝導性粒子は、非常に高い電気伝導度(及び望ましい熱伝導度)、その結果としての低い電気抵抗を持つように選択される。更には、高い伝導度の粒子を包含することにより、接触領域を通して電気伝導度を維持するため必要とされる粒子の量は、従来の伝導性接着剤からかなり減少する。本発明のこの態様は、より高い品質の接着性樹脂を含むことを可能にし、接着の粘着性及び接着特性を改善する。本発明を仮説に制限するものではないが、遙かに高い品質の接着は、耐久性のあるロバストな結合を維持するように見える。このことは、接着剤がエポキシを含む場合に、特に当てはまっている。
【0029】
本発明の様々な実施例では、伝導性接着剤112は、硬化したポリマー樹脂基質と、伝導性粒子とを含んでいる。接着剤112では、伝導性粒子は、接着剤の重量のうち約30%以下であるのが好ましく、接着剤の重量のうち約20%以下であるのがより好ましく、約10重量%以下であるのが更に好ましい。幾つかの実施例では、選択された各々の伝導性粒子の相対的圧力伝導度に応じて、接着剤の重量のうち約5%以下である。
【0030】
本発明の好ましい実施例では、伝導性粒子は、エポキシから形成された接着剤と混合された黒鉛及びカーボンブラックを含み、伝導性粒子は、接着剤の所望の合計炭素含有量を与える量で表される。好ましい実施例では、合計した炭素は、25重量%以下であり、より詳しくは、合計炭素重量の約10%以下である。ポリマーと混合された黒鉛及び炭素を用いるコーティング組成の一例は、アブド・エルハミッドらに付与された米国特許公開番号2004/0091768号で見出すことができる。その内容は、ここで参照したことで本願に組み込まれる。
【0031】
幾つかの実施例では、接着剤112は、重量にして約1:6乃至約35:1の範囲に及ぶ率で黒鉛及びカーボンブラックを含んでいる。一つの特に好ましい実施例では、炭素に対する黒鉛の比率は、重量ベースで約2:1である。接着剤112内の黒鉛の量を詳しく参照すると、一実施例では、接着剤は、約3.0重量%と約50重量%の間の黒鉛を含み得る。接着剤112内の炭素の量を詳しく参照すると、一実施例では、接着剤は、約1.5重量%と約20重量%の間のカーボンブラックを含み得る。
【0032】
様々な種類の黒鉛は、接着剤112で使用するため特に好ましい。黒鉛は、膨張黒鉛、黒鉛粉末、片状黒鉛、それらの組み合わせから選択されてもよい。黒鉛は、約5μmから約90μmの間の粒子サイズ(より長い寸法で測定された〜により特徴付けることができる。黒鉛は、概して1.6g/cmより小さい低いバルブ密度、より詳しくは0.3g/cmより小さい低いバルブ密度を持ち得る。その固有の密度は、約1.4g/cmから約2.2g/cmまでの範囲に及び得る。黒鉛は、比較的高い純度を持ち、実質的に汚染物質が存在しない。本発明に係る接着剤112で使用するため上述された特徴のうちいずれかを有する膨張黒鉛は、任意の適切な方法により製造することができる。使用可能な適切な黒鉛材料は、一実施例では、「SIGRIFLEX(R)」という商標名の下でノースカロライナ州、シャーロッテのシグリグレートレイクスから市販されている。
【0033】
加えて、様々な種類のカーボブラックが接着剤で使用する上で適切である。これに限定されない例で示すと、カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンTMブラック、ヴァルカンブラック、リーガルTM、ファーネスブラック、ブラックパール、及び、それらの組み合わせから選択されてもよい。カーボンブラックは、約0.05から約0.2μmの間の粒子サイズにより特徴付けられ得る。カーボンブラックは、ほとんど不純物を含んでいないのが好ましい。
【0034】
本発明の好ましい実施例によれば、伝導性接着剤112は、炭素及び黒鉛粒子のうち約5重量%から約30重量%を含み、粒子サイズは約10ミクロンから約50ミクロンの間でばらついている。接着剤112の電気接触抵抗は、約15mΩ・cmより小さく維持され、組成の接着性を最大にするため粒子の実際の量を最小にする。
【0035】
様々な量の黒鉛及びカーボンブラックに加えて、接着剤112は、異なる量の接着性ポリマー基質も含んでいてもよい。接着性ポリマーの量は、接着組成物112で使用される伝導性粒子の量に応じてばらつき得る。一般に、ポリマー含有量が高くなるほど、接着性、腐食耐性、塗布の流れにとって望ましいものとなる。一実施例では、接着剤112は、ポリマー基質の約1重量%から約95重量%を占め、より好ましくは、約70重量%以上であり、更により好ましくは、約80重量%以上である。幾つかの実施例では、接着性ポリマーは、接着剤112の約90重量%以上で存在する。幾つかの実施例では、接着剤112は、接着性ポリマーの約90%から約95%を占める。好ましい実施例では、接着剤112のポリマーは、エポキシ接着剤を含む。
【0036】
接着剤112の基質ポリマーとして使用するための様々な異なる接着成分が本発明によって想定される。一実施例では、接着剤112は、ゲルの形態にある。詳しくは、一つの好ましい実施例では、コーティングは、約5μmから約90μmの粒子サイズを有する膨張黒鉛の約6.7重量%、約0.05μmから約0.2μmの粒子サイズを有するアセチレンブラックの約3.3重量%、及び、エポキシポリマーの約90重量%を含んでいる。
【0037】
更には、幾つかの実施例では、接着剤112は、200ppm未満の金属汚染物質を含むように製造することができる。一実施例では、接着剤112で結合されたプレートは、約25乃至約200psi(170から1400kPa)の接触圧力で約5乃至約60mΩ・cm(ミリオーム平方センチメートル)の合計抵抗を示す。合計抵抗は、第1の表面59から第2の表面63までの全アッセンブリ56を横断する抵抗を示し、各々のセパレータプレートシート58、60の材料のバルク抵抗及び接触抵抗、並びに、接触領域100を通した結合ライン抵抗を含んでいる。1つ以上の接触領域100における接着性結合部112を横切る結合ライン抵抗は、約5mΩ・cm未満であるのが好ましい。
【0038】
本発明の様々な実施例では、接着剤112の結合部は、約5mΩ・cm以下の抵抗、好ましくは約5mΩ・cm以下の抵抗、より好ましくは約4mΩ・cm以下の抵抗を持ち、幾つかの実施例では、更により好ましくは約3mΩ・cm以下の抵抗、更に他の実施例では、約2mΩ・cm以下の抵抗、幾つかの実施例では約1mΩ・cm以下の抵抗を持っている。当該結合部は、特に燃料電池で500時間を超えて作動した後、より好ましくは、1400時間後において約150psi(約1000kPa)以上の圧縮力の作用下にある。
【0039】
幾つかの実施例では、結合抵抗は、燃料電池作動条件に500時間を超えてさらされた後、約1400kPa以上の圧縮力の作用下で約4mΩ・cm以下である。更に他の実施例では、結合抵抗は、燃料電池作動条件に500時間を超えてさらされた後、約1400kPa以上の圧縮力の作用下で約1mΩ・cm以下である。
【0040】
ガラファイト及びカーボンブラックが接着剤112内の伝導性粒子として選択された好ましい実施例では、膨張黒鉛及びカーボンブラックの間で相乗作用が存在することが発見された。接着性結合部の接触抵抗は、低い合計炭素含有量で5mΩ・cmより低いままである。「相乗作用」は、黒鉛又はカーボンブラックのいずれかが同じ合計した炭素含有量でのみ使用されるときよりも低い接触抵抗を生成する黒鉛及びカーボンブラックの組み合わせに言及している。幾つかの実施例では、そのような相乗作用は、カーボンブラック及び膨張黒鉛単独の単なる添加効果よりも大きい。かくして、好ましい実施例では、接着性基質112は、黒鉛及びカーボンブラックの両方を含んでいるが、比較的低い抵抗を示す接着性基質112内の結合剤との伝導性粒子の他の組み合わせも適切であり、本発明に含まれると想定されている。
【0041】
伝導性接着剤112は、当業者に知られている従来の手段により、電気伝導性要素58、60の表面90、92の接触領域100を覆い又は被覆するように準備されてもよい。そのような準備作業の一例は、伝導性粒子及び未硬化のエポキシ樹脂ポリマー基質(即ち接着性先駆物質)を一緒にミリング処理する工程を備える。このミリング工程は、約1乃至約20時間の時間量に亘って行われるのが好ましく、約2時間以内が好ましい。例えば、接着性先駆物質がミリング処理される時間量等のミリング条件は、コーティングで使用される材料及び接着剤112の所望の特性に応じて変わり得る。
【0042】
準備工程の後、接着性先駆物質/伝導性粒子の混合物は、反対側の伝導性シート60の他の表面92と連結される第1の伝導性シート58の表面90の接触領域100に塗布される。本発明に係る接着剤112の良好な接着を確実なものとするため、幾つかの伝導性シート組成物(例えば、金属)を用いて、伝導性シート58、60の表面90、92が、接着性基質112が使用されるべき領域から全ての表面酸化物及び他の汚染物質を除去するようにクリーンにされる(例えば、研磨及び/又は化学的エッチング)。かくして、金属から製造された伝導性シート58、60の場合には、表面90、92は、(1)メチル−エチル−ケトンを減少させ、(2)(a)40%の硝酸、(b)2乃至5%のフッ化水素酸、(c)4グラム/ガロンの酸性フッ化アンモニウム、並びに、水を含む溶液中に2から5分に亘って浸漬することにより、化学的にクリーンにすることができる。代替例として、伝導性シート58,60の表面90、92は、クリーニング後の100から220グリット研磨で表面を研磨することにより物理的にクリーンにされ、次に、アセトンでクリーニングし脱脂するか、又は、金属クリーニング電解質の存在下で基板を陰極クリーニングされる。
【0043】
図4に示された実施例では、伝導性接着剤112は、第1のシート58の第1の冷却剤側部接触表面90及び第2のシート60の第2の冷却剤側接触表面92の両方に適用され、これらの表面90、92の両方は、接着剤112の塗布前にクリーンにされる。接着剤112は、腐食保護を提供するため伝導性シート58、60の全表面90、92を被覆するため使用されてもよく、従って、又は代替実施例では、電気的及び物理的な接触点である離散的な領域(即ち、接触領域100)に適用されてもよい。
【0044】
伝導性接着剤112の先駆物質は、シート58、60の表面上に、はけで塗布され、押し当てられ、打ち延ばされ(例えば、熱間圧延工程等により)、噴霧され、平らに打ち延ばされ(ドクターブレード等を用いて)、コイルコート若しくはローラーコートされ、スクリーン印刷され、シルクスクリーン印刷され、或いは、ローラーにかけてもよいが、接着剤112の前駆物質は、シートの間の接触が生じる拘束箇所100に塗布されるのが好ましい。幾つかの好ましい実施例では、接着剤112の先駆物質は、第1のシート58の第1の接触表面90及び第2のシート62の第2の接触表面92の両方に塗布される。代替実施例では、接着剤112は、シート58、60のいずれかの一つの表面90又は92のみに適用されてもよい。好ましい実施例では、最初にマスクがシート58、60を覆って適用される。マスクは、接触領域100即ち糊又は接着が適用されるべき箇所に亘って位置を定められた開口部を持っている。接着剤112の先駆物質は、マスクの開口部を通して塗布される。接着剤112の先駆物質は、約0.025mm乃至約0.051mm(約0.001インチ乃至約0.002インチ)の厚さで塗布されるのが好ましい。シート58、60は、シート58、60にかけて均一な圧力を適用する適切な固定具で一緒に挟まれている。
【0045】
様々な実施例では、好ましくはエポキシ接着剤樹脂を含む接着剤112の先駆物質は、接着剤112のポリマーを形成するため塗布された後に硬化することができる。本発明の幾つかの好ましい実施例によれば、接着基質の先駆樹脂物質は、接着剤112それ自身に構造的な粘着性を分与するため硬化される。硬化工程は、冷却剤流れチャンネル93内に冷却剤が循環することにより、接着剤112が腐食されたり洗い流されたりすることを防止している。かくして、幾つかの実施例では、硬化工程は、アッセンブリを形成するためポリマー接着性基質材料を硬化するように圧力が印加された状態で、挟まれたシート58、60を高温プレスで加熱することによって起こる。
【0046】
接着剤112は、高い電位ポテンシャルと第1のシート58の第2のシート60への連結により形成される冷却剤流れチャンネル内を流れる冷却剤へのさらしとに耐えることができるように選択されなければならない。更には、本発明に係る接着剤112の基質のための好ましい接着性ポリマーは、燃料電池作動条件に耐える長期間に亘って、第1及び第2の伝導性シート58、60を互いに接着し連結するため必須の粘着性を有している。本発明の様々な実施例によれば、伝導性シート58、60の接触表面90、92を覆っている接着剤112は、エポキシ接着剤を含み、これは、苛酷な燃料電池環境に対して特別に耐久性があり、ロバストで良く適合することが発見された。
【0047】
好ましくは、そのようなエポキシ接着剤は、基質内でポリマー樹脂の架橋を達成するため硬化することができる2成分系である先駆物質により形成される。一般に、2成分系の第1の部分は、エポキシ樹脂であり、第2の部分はエポキシ硬化剤である。エポキシ樹脂は、周知されており、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBAとしても知られている)と、ビスフェノールAでDGEBAを凝結することにより形成される樹脂と、を含んでいる。他のエポキシ樹脂は、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBFとしも知られている)と、ビスフェノールFとの凝結により形成されたそのオリゴマーと、を含んでいる。硬化剤は、当該技術分野で知られている任意数のエポキシ硬化剤を含んでいてもよく、好ましくは、鎖状脂肪族アミンと、脂環式アミンとから選択される。適切な鎖状脂肪族アミンの例には、ジエチレントリアミン(TETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)及びテトラエチレンペンタミン(TEPA)が含まれている。同様に、脂環式アミンの例には、イソホロンジアミン(IPDA)と、N−アミノエチルピペラジン(AEP)、p−アミノシクロヘキシルメタン(PACM−20)、及び、1,2−ジアミノシクロヘキサンが含まれている。
【0048】
幾つかの実施例では、架橋は、接着剤を塗布し、シート58、60を一緒に接触させ組み立てた後に硬化する工程を必要とする。幾つかの好ましい実施例では、硬化工程は、周囲温度から約100℃までの温度、より好ましくは、周囲温度と90℃との間の温度、幾つかの実施例では、好ましくは70℃より低い温度で実施される。幾つかの好ましい実施例では、低い熱適用(即ち、60〜90℃)を、接着剤112の基質の硬化を促進するため使用することができる。適切な事前に選択された接触領域100において接着剤112の先駆物質と接触した後、熱及びオプションで圧力が、接着剤112内のポリマー基質樹脂を完全に硬化したレベルにまで硬化するため印加される。プレート58、60は、それらの間に配置された接着剤112の先駆物質を持ち、約3分から約30分の間、より好ましくは約5分の間に亘って硬化される。
【0049】
接着剤112は、シートそれ自身のように、内部の伝導性粒子が分解せず、金属イオンを冷却剤に寄与しないという点でシート58及び60の間を流れる冷却剤に実質的に不溶性である。そうでなければ、実質的に誘電性(即ち、約200,000Ω−cmより大きい抵抗)の冷却剤を過度に伝導性となるようにさせる。冷却剤が伝導性となる場合、逸脱した電流が、冷却剤を介してスタックを流れ、電気的短絡、化学的な電気腐食、及び冷却剤の電気分解が生じ得る。伝導性粒子は、冷却剤中のそれらの溶解度が時間の経過と共に、冷却剤の抵抗を約200,000Ω−cmより低下させない場合に実質的に不溶性であると考えられる。よって、水が冷却剤として使用されるとき、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛及び鉛等の金属は回避されるべきであり、又は、接着性基質112中に完全に封じ込められるべきである。幾つかの好ましい実施例では、接着性基質112は、水素及び軽度の酸性(3から4の間のpHにおけるHF)に非常に耐性があり、100℃で例えば消イオン水、エチレングリコール及びメタノール等の溶媒に不活性である。かくして、伝導性粒子及び接着性ポリマー112の選択は、燃料電池内で使用される冷却剤との両立に依存している。
【0050】
結合ラインの耐久性は、冷却剤の抵抗を許すことができないレベルにまで劣化も増大もさせることなく、数時間に及ぶ燃料電池の作動及び温度揺らぎに耐える1つ以上の接触領域100における結合に言い換えることができる。本発明に係るエポキシ接着剤112の使用は、燃料電池システムの寿命を延長し、作動効率を維持する。上述されたように、エポキシを含む接着剤が特に好ましい。
【0051】
以下、本発明を、例を用いて更に説明する。本発明はそのような例に限定されるものではないことが理解されるべきである。
(例1)
アセトンブラックと膨張黒鉛の混合物は、重量にして1:2の比率で一緒に加えられ、両方の材料の均一な混合物を形成するため徹底的に混合された。エポキシ接着剤を準備するため、別個のコンテナ内で、2成分エポキシ樹脂が硬化剤(即ち、硬化促進剤)を用いて混合された。伝導性接着性基質は、9:1の比率(重量換算でエポキシ:全炭素)を使用して、膨張黒鉛/炭素の混合物にエポキシを添加することにより準備された。伝導性接着性基質は、エポキシ内で炭素の均一な混合物を作るため徹底的に混合された。2つの複合プレートが、ポリビニールエステル及び黒鉛から形成される市販の伝導性成形化合物(イリノイ州、西シカゴのバルク成形化合物社「BMCI」から市販されている)から成形された。プレートは、ランド及び溝の予め成形された流れ場を備えて、約0.5mmの厚さを持っていた。該プレートは、接触領域又はランド上に本発明の伝導性エポキシ接着剤でブラシをかけることにより被覆された。2つのプレートは、一緒に結合され、接着剤が、300psiの印加された圧縮圧力の下で5分間に亘って90℃で硬化された。
【0052】
サンプルが、図6に示されたように装置内でテストされた。接着剤を表面の間に挟む伝導性シートを備える電気伝導性要素アッセンブリの結合ライン抵抗測定値が、図6に示されたように測定された。テスト装置は、金メッキされた圧盤202を備えたカーバープレス200と、サンプル208と金被覆された圧盤202との間でプレスされた、第1及び第2の電気伝導作動式カーボンペーパー媒体204、206を各々備えていた。6.45cmの表面積が、直流電流供給部により適用された1A/cmの電流を使用してテストされた。抵抗は、4点法を使用して測定され、測定された電圧降下と既知の印加された電流とサンプル208の寸法とから計算された。無視できるバルク抵抗の金属サンプルに対して、電圧降下は、サンプル表面210、210上の接着性結合ラインに亘って測定された(接触抵抗にバルク接着抵抗をプラス)。図6に示されるように、サンプル208は、一緒に連結された2つのシート210を有する電気伝導性要素(例えば、二極式プレート)を備えるのが好ましい。
【0053】
結合ライン抵抗の測定値は、次の圧力で増分された力が印加された状態で接触抵抗として測定された(ペーパー間のmΩ・cm)。即ち、25psi(約175kPa)、50psi(約350kPa)、75psi(約525kPa)、100psi(約675kPa)、150psi(約1025kPa)、200psi(約1400kPa)、及び、300psi(約2075kPa)である。当業者により認められるように、ここで提供された測定値は、セパレータプレートの全アッセンブリに亘る接触抵抗を持ち、結合ラインに亘る接触抵抗よりも大きく、よって、これらの値は、全アッセンブリに亘ってより高い抵抗を反映している。
【0054】
なお、伝導性カーボンペーパー204、206の接触抵抗は、一般に、既知の値であり、これは、金属プレート210のみの接触抵抗を確立するため測定値から差し引くことができる。サンプルのテストの間、1mm圧の東レ製カーボンペーパー(TGP−H−0.1T)として東レから市販されている)が、第1及び第2のカーボンペーパー媒体204、206のために使用された。しかし、多くの状況では、伝導性ペーパー204、206の接触抵抗は、無視可能であり、そのような小さい増分値が接触抵抗値に追加されてもそれは差し引く必要は必ずしも無かった。本明細書で言及される値は、サンプル208に亘るバルク接触抵抗である。表1において、サンプル1は、例1で記載されたような本発明に従って準備された電気伝導性要素である。制御1は、一緒に結合されていない複合二極式プレートであり、単に接触子領域で一緒に加圧されているだけである。制御2は、従来の手段、即ち、BMCIから市販されている従来の電気伝導性接着剤により接着された2つの複合物を有し、該接着剤は、約25%から約50%の黒鉛を備え、約40%から約75%の不飽和ビニルエステルと、約10%から約30%のスチレンとを有する。
【0055】
【表1】

【0056】
表1で観察することができるように、サンプル1は、本発明の接着性基質を使用した結合プレートが制御1とかなり匹敵する抵抗を持っていることを示し、該接着剤が結合ラインを通して追加の抵抗を導入していないことを示している。これに対して、従来の接着剤を用いた制御2は、サンプル1と匹敵するか又はより高い抵抗を持っていた。燃料電池は、典型的に、約200psiから約400psi(〜1400−2750kPa)の圧縮負荷で作動し、かくして、結合ラインの抵抗が、燃料電池作動条件をシミュレートする印加圧力が200psiから300psi(〜1400−2050kPa)である制御2に対してよりも、サンプル1に関してより低い。
【0057】
本発明の様々な実施例により準備された燃料電池で使用するための電気伝導性要素は、燃料電池環境において、より大きい接着性と長期間に亘る耐久性とを有する改善された結合を実証している。その上、本発明に係る電気伝導性流体分布プレートは、結合部に沿った接触の領域に亘って長期間に低い接触抵抗を提供し、燃料電池スタックの作動効率を増大させ、更には、燃料電池スタックの寿命を増大させるためより低い圧縮圧力の使用を可能にしている。二極式プレート内の耐久性がありロバストな結合部は、冷却剤流れチャンネルを密封し、接着剤の浸出又は劣化を介して任意の可能な漏れ又は分流電流による損傷を防止する。同様に、本発明の改善された結合部は、結合ラインに亘る熱的及び電気的損失により発生したエネルギーの減衰消費を減少することにより、燃料電池スタックの作動の非効率性を減少させる。
【0058】
本発明は、その特定の実施例の観点で記載されたが、本発明を上記実施例に限定するものではなく、本発明は、請求の範囲に記載された範囲によってのみ画定される。本発明の記載は、その本質上単なる例示にしか過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない変更は、本発明の範囲内にあることが意図されている。そのような変更は、本発明の精神及び範囲からの逸脱とはみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、液体冷却されたPEM燃料電池スタック内の2つの電池の概略図である。
【図2】図2は、本発明の一つの好まし実施例を示す、一例としての電気伝導性セパレータ要素である。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施例の伝導性要素を示す、図2のライン3−3に沿って取られた断面図である。
【図4】図4は、図3に示された接触領域の拡大図である。
【図5】図5は、本発明の接触領域の代替実施例の拡大図であり、中間セパレータが伝導性要素の第1及び第2のシートの間に配置されている。
【図6】図6は、サンプルの接触抵抗を測定するため使用される一例としてのテスト装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のための伝導性要素であって、
第1の表面を有する第1の伝導性シートと、
第2の表面を有する第2の伝導性シートであって、前記第1の表面は前記第2の表面と対面する、前記第2の伝導性シートと、
前記第1の表面及び前記第2の表面の間に配置され、1つ以上の接触領域において該第1及び第2の表面と接触する伝導性接着剤であって、該伝導性接着剤は該第1及び第2の表面の間に耐久性のある結合部を形成し、該結合部は、約1000kPa以上の圧縮力の下で約5mΩcm以下の電気抵抗を有し、前記伝導性接着剤は、エポキシから形成され、黒鉛及びカーボンブラックを含む複数の伝導性粒子を含んでいる、前記伝導性接着剤と、
を備える、伝導性要素。
【請求項2】
前記カーボンブラックに対する前記黒鉛の比率は、重量にして約1:6から約35:1の間にある、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項3】
前記伝導性接着剤は、約20重量%以下の前記伝導性粒子を含んでいる、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項4】
前記結合部の抵抗は、500時間を超える燃料電池作動条件にさらされた後、約1400kPaより大きい圧縮力の作用下で約4mΩcm以下である、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項5】
前記結合部の抵抗は、500時間を超える燃料電池作動条件にさらされた後、約1400kPaより大きい圧縮力の作用下で約1mΩcm以下である、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項6】
前記第1及び第2の伝導性シートは、電気伝導性金属を含んでいる、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項7】
前記第1及び第2の伝導性シートは、電気伝導性ポリマー複合物を含んでいる、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項8】
前記黒鉛は、膨張黒鉛、黒鉛粉末、片状黒鉛、及び、それらの混合物のうち1つ以上から選択される、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項9】
前記黒鉛は、膨張黒鉛である、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項10】
前記伝導性接着剤は、硬化された2成分エポキシ接着系から形成される、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項11】
前記2成分エポキシ接着系は、エポキシ樹脂とアミン硬化剤との反応生成物を含み、該エポキシ樹脂はビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含んでいる、請求項10に記載の伝導性要素。
【請求項12】
前記第1及び第2の表面は、前記接着剤により前記1つ以上の接触領域で互いに連結され、流体密封シール部を形成する、請求項1に記載の伝導性要素。
【請求項13】
PEM燃料電池のための耐久性のある電気伝導性接触要素を形成する方法であって、
2成分エポキシ接着系を、黒鉛及びカーボンブラックを含む複数の伝導性粒子と混合し、
前記2成分エポキシ接着系を、第1の表面を有する前記要素の第1の伝導性シート、及び、第2の表面を有する前記要素の第2の伝導性シートのうち少なくとも1つに塗布し、
前記接着系が前記第1の表面と前記第2の表面との間に配置され、1つ以上の接触領域において該第1及び第2の表面と接触するように、前記第1の表面を前記第2の表面と接触させ、
前記第1及び第2の表面の間の前記1つ以上の接触領域で電気伝導性の耐久性のある結合部を形成するため前記接着ポリマー系を硬化させる、各工程を備える方法。
【請求項14】
前記硬化工程は、熱及び圧力のうち少なくとも1つを印加する工程うを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記結合部は、500時間を超える燃料電池作動条件にさらされた後、約1000kPaより大きい圧縮力の作用下で約5mΩcm以下の電気抵抗を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記カーボンブラックに対する前記黒鉛の比率は、重量にして約1:6から約35:1の間にある、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記2成分エポキシ接着系は、エポキシ樹脂とアミン硬化剤とを含み、該エポキシ樹脂はビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
複数の燃料電池と、隣接する燃料電池のアノード及びカソードの間に挟まれた電気伝導性要素と、を備える燃料電池スタックであって、
アノードに面する表面及び第1の熱交換表面を有する第1の電気伝導性シートと、
カソードに面する表面及び第2の熱交換表面を有する第2の電気伝導性シートと、
を備え、
前記第1及び第2の熱交換表面は、液体冷却剤を受け入れるように構成された冷却剤流れ通路を該第1及び第2の熱交換表面の間に形成するように互いに対面すると共に、電気伝導性接着剤を介して複数の接触箇所で互いに電気的に連結され、前記電気伝導性接着剤は、接着特性を有するエポキシポリマー内に分散された複数の伝導性粒子を含み、前記電気伝導性接着剤は、前記第1及び第2のシートの間で電気伝導性経路を形成する、燃料電池スタック。
【請求項19】
前記電気伝導性経路に亘る電気抵抗は、前記アノード及びカソードにより発生された電流が、前記冷却剤の過熱を防止するのに十分な率で伝達されるように十分に低い、請求項18に記載の燃料電池スタック。
【請求項20】
前記接着剤は、流体密封シール部を形成する、請求項19に記載の燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−87948(P2007−87948A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−252905(P2006−252905)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(505212049)ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・インコーポレーテッド (221)
【Fターム(参考)】