説明

燃料電池の加湿ガス供給装置及びその方法

【課題】燃料電池に供給する加湿ガスの露点又は圧力の変更要求に迅速に対応できる燃料電池の加湿ガス供給装置及びその方法を提供する。
【解決手段】加湿ガス供給装置10は、乾燥ガスBを加熱して加熱乾燥ガスにする第1のガス供給部12と、乾燥ガスCを水蒸気飽和ガスにする加湿手段13を備えた第2のガス供給部14と、第1、第2のガス供給部12、14から供給された加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを合流して加湿ガスAを生成する合流部15と、加湿ガスAの均一性を向上させる貯留槽16と、貯留槽16から燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点に基づいて合流する加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスとの分流比を求め、分流比と加湿ガスAの流量から求めた流量の加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを合流部15に供給しながら、乾燥ガスBの流量及び加湿ガスAの圧力に基づいて、乾燥ガスBの圧力を制御する制御手段18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を搭載した車両(例えば、自動車、フォークリフト、2輪車等)のアクセルワークを模擬した燃料電池の試験の一環として、燃料電池に加湿ガスを供給する装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池に供給する加湿ガスを作製する場合、例えば特許文献1に記載されているように、温度調節された水を貯留している密閉タンクの底から乾燥ガスを水中に吹込み、密閉タンクの上部に設けた取出し口から取出すバブラーが使用されている。バブラーを使用すると、密閉タンクの底から吹込まれた乾燥ガスが水中に滞留する時間(乾燥ガスが水中内を通過するのに要する時間)を十分長く確保することで、水温と等しい温度の乾燥ガスに飽和量の水蒸気を含ませることができるので、露点精度の高い加湿ガス(密閉タンク内の水温に等しい露点の加湿ガス)を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−29591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バブラーを使用する方式では、加湿ガスの露点を変更する場合、密閉タンク内の水温を変更する必要があるが、密閉タンク内には多量の水が貯留されているため、密閉タンク内の水の温度を迅速に変更することはできない。このため、バブラーを使用する方式では、露点が変更されるまでに長時間を要するという問題がある。
なお、密閉タンクに大容量の加熱器及び冷却器を併設して設ける改良型バブラー方式を採用することにより密閉タンク内の水の温度を迅速に変更することは可能になるが、より高速に露点を変更するためには加湿ガスの製造装置の大型化や構造の複雑化が生じると共に、製造コストの上昇、装置設置に要求される据付け面積の増大、及び運転内容の複雑化が生じるため、現実的な方式とはいえない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、燃料電池に供給する加湿ガスの露点変更要求又は圧力変更要求に迅速に対応することが可能な燃料電池の加湿ガス供給装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給装置は、露点、流量、及び圧力がそれぞれ設定された加湿ガスAを供給すると共に発電時に発生する排気ガスを外部に排出しながら行う燃料電池の評価試験に使用する燃料電池の加湿ガス供給装置であって、
乾燥ガスBを加熱して加熱乾燥ガスにする第1のガス供給部と、
乾燥ガスBと同種の乾燥ガスCを水を貯留した密閉タンクの底部から吹込んで水蒸気が飽和状態になった水蒸気飽和ガスにする加湿手段を備えた第2のガス供給部と、
前記第1のガス供給部及び前記第2のガス供給部からそれぞれ供給された加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを合流して加湿ガスAを生成する合流部と、
前記合流部で生成した加湿ガスAを一時貯留して均一性を向上させる貯留槽と、
前記貯留槽からガス導入配管を介して前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点に基づいて合流する加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスとの分流比を求め、該分流比と加湿ガスAの流量に基づいてそれぞれ求めた流量の加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを前記合流部に供給すると共に、求めた加熱乾燥ガスの流量から決まる乾燥ガスBの流量及び前記燃料電池に供給する加湿ガスAの圧力に基づいて、乾燥ガスBの圧力を制御する制御手段とを有している。
【0007】
第1の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給装置において、前記合流部は、加熱乾燥ガスが通過する第1のガス流路と、該第1のガス流路を内部に含み該第1のガス流路の中心軸と同一位置に中心軸が配置されて水蒸気飽和ガスが加熱乾燥ガスと同一方向に通過する第2のガス流路とを備えた混合器を有していることが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給装置において、前記第1のガス供給部は、乾燥ガスBの圧力を調節する圧力調節手段と、圧力の調節が行われた乾燥ガスBの流量を調節する第1の乾燥ガス流量調節手段と、該第1の乾燥ガス流量調節手段を通過した乾燥ガスBを加熱するガス加熱手段とを備え、前記第2のガス供給部は、乾燥ガスCの流量を調節する第2の乾燥ガス流量調節手段と、該第2の乾燥ガス流量調節手段の下流側に配置された前記加湿手段とを備え、前記第2の乾燥ガス流量調節手段は、加湿ガスAの流量範囲及び前記分流比から決まる乾燥ガスCの流量範囲を調節範囲とする親流量調節手段と、該親流量調節手段に対して並列に配置され、乾燥ガスCの流量範囲の下限側を調節範囲とする子流量調節手段とを有していることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給装置において、前記加湿手段は、前記密閉タンク内の水を加熱する加熱機能と該密閉タンク内の水を冷却する冷却機能を備えた温度調節部を有していることが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法は、露点、流量、及び圧力がそれぞれ設定された加湿ガスAを供給すると共に発電時に発生する排気ガスを外部に排出しながら行う燃料電池の評価試験に使用する燃料電池の加湿ガス供給方法であって、
加湿ガスAを、乾燥ガスBを加熱した加熱乾燥ガスと、乾燥ガスBと同種の乾燥ガスCに加湿手段を用いて飽和量の水蒸気を加えて作製した水蒸気飽和ガスとを合流して生成し、貯留槽に導入して均一性を向上させた後に、ガス導入配管を介して加湿ガスAを前記貯留槽から前記燃料電池に供給する際に、
前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点に基づいて合流する加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスとの分流比を求め、該分流比と加湿ガスAの流量に基づいてそれぞれ求めた流量の加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを前記合流部に供給すると共に、求めた加熱乾燥ガスの流量から決まる乾燥ガスBの流量及び前記燃料電池に供給する加湿ガスAの圧力に基づいて、乾燥ガスBの圧力を制御する。
【0011】
第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法において、前記ガス導入配管に設けた露点計で測定した加湿ガスAの実測露点と加湿ガスAに設定された露点との差に基づいて前記分流比の修正を行うことが好ましい
【0012】
第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法において、加湿ガスAに設定する露点を変更した際に、前記分流比の修正を停止すると共に、前記分流比を加湿ガスAに設定する変更後の露点から決まる値に固定し、露点の変更時から一定時間経過した後又は前記露点計で求めた実測露点と変更後の露点との差が一定値範囲内になった後、前記分流比の修正を行うことを再開することが好ましい。
【0013】
第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法において、加湿ガスAに設定する圧力を急上昇させた際に、加湿ガスAの実測圧力の過渡応答期間に亘って、前記分流比の修正を停止し、前記分流比を加湿ガスAの圧力の変更直前の値に固定して、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の変動を防止することが好ましい。
【0014】
第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法において、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの流量が、加湿ガスAの流量範囲の下限側の場合、加湿ガスAに設定する露点を、加湿ガスAの圧力変更時から一定時間に亘って加湿ガスAの圧力の上昇幅に応じて一定値だけ増加させ、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償することができる。
また、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの流量が、加湿ガスAの流量範囲の下限側の場合、前記過渡応答期間に亘って、加湿ガスAの実測露点の低下挙動に基づいて加湿ガスAに設定する露点を上昇させ、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償することができる。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給装置及び第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法においては、加湿ガスAの露点が変更要求された露点となるように、加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスの分流比を変更するので、露点の変更要求に迅速に対応することが可能になる。このとき、燃料電池に供給する加湿ガスAの圧力及び加熱乾燥ガスを生成する乾燥ガスBの流量に基づいて、乾燥ガスBの圧力を制御するので、第2のガス供給部に比較して、構造的に乾燥ガスBが流れ易い(差圧が過大となり易い)第1のガス供給部に適切な差圧を設けることができ、第1のガス供給部を通過する乾燥ガスBの流量の制御を安定して行うことができる。その結果、加湿ガスAの露点の変更要求に対して、加湿ガスAの露点を迅速かつ高精度に調節することができる。
【0016】
第1の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給装置において、合流部が、加熱乾燥ガスが通過する第1のガス流路と、第1のガス流路を内部に含み第1のガス流路の中心軸と同一位置に中心軸が配置されて水蒸気飽和ガスが加熱乾燥ガスと同一方向に通過する第2のガス流路とを備えた混合器を有している場合、第1のガス流路の断面積より第2のガス流路の断面積が大きいため、第1のガス流路の配管抵抗が大きくなって、第2のガス流路を通過する水蒸気飽和ガスが第1のガス流路に逆流することを防止できると共に、第2のガス流路内に結露が生じても、構造的に結露が第1のガス流路に侵入することを防止できる。また、加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスの流量差が大きいと、構造的に流量の多いガスに流量の少ないガスが巻き込まれ易いため、加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスの混合を促進することができる。
【0017】
第1の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給装置において、第1のガス供給部が、乾燥ガスBの圧力を調節する圧力調節手段と、圧力の調節が行われた乾燥ガスBの流量を調節する第1の乾燥ガス流量調節手段と、該第1の乾燥ガス流量調節手段を通過した乾燥ガスBを加熱するガス加熱手段とを備えた場合、乾燥ガスBを加熱する際の温度、乾燥ガスBの圧力、及び乾燥ガスBの流量をそれぞれ調節することができ、所望の温度、圧力、及び流量を有する加熱乾燥ガスを得ることができる。
また、第2のガス供給部が、乾燥ガスCの流量を調節する第2の乾燥ガス流量調節手段と、第2の乾燥ガス流量調節手段の下流側に配置された加湿手段とを備える場合、乾燥ガスCの流量、乾燥ガスCに加える水蒸気量を調整することができ、所望の露点及び流量を有する水蒸気飽和ガスを得ることができる。
更に、第2の乾燥ガス流量調節手段が、加湿ガスAの流量範囲及び分流比から決まる乾燥ガスCの流量範囲を調節範囲とする親流量調節手段と、親流量調節手段に対して並列に配置され、乾燥ガスCの流量範囲の下限側を調節範囲とする子流量調節手段とを有している場合、少流量の水蒸気飽和ガスを高精度で合流部に供給することができ、露点が正確な低露点(例えば、露点が30℃以下)の加湿ガスAを得ることができる。
【0018】
第1の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給装置において、加湿手段が、密閉タンク内の水を加熱する加熱機能と密閉タンク内の水を冷却する冷却機能を備えた温度調節部を有している場合、冷却機能を用いて密閉タンク内の水の水温を下げることができ、低露点の加湿ガスAを生成する際に使用する水蒸気飽和ガスの流量が減少することを防止でき、露点が更に正確な低露点(例えば、露点が30℃以下)の加湿ガスAを得ることができる。
【0019】
第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法において、ガス導入配管に設けた露点計で測定した加湿ガスAの実測露点と加湿ガスAに設定された露点との差に基づいて分流比の修正を行う場合、加湿ガスAの実測露点を設定された露点に近づけることができる。
【0020】
第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法において、加湿ガスAに設定する露点を変更した際に、分流比の修正を停止すると共に、分流比を加湿ガスAに設定する変更後の露点から決まる値に固定する場合、変更後の露点で決まる分流比で加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスが合流部に供給されるので、加湿ガスAの露点を変更要求された露点に向けて急速に変化させることができる。
そして、露点の変更時から一定時間経過した後又は露点計で求めた実測露点と変更後の露点との差が一定値範囲内になった後、分流比の修正を行うことを再開する場合、実測露点と変更後の露点との差が小さくなっているので、分流比の修正を行うことにより、実測露点を変更後の露点に容易に近づけることができる。
【0021】
第2の発明に係る燃料電池の加湿ガス供給方法において、加湿ガスAに設定する圧力を急上昇させた際に、加湿ガスAの実測圧力の過渡応答期間に亘って、分流比の修正を停止し、分流比を加湿ガスAの圧力の変更直前の値に固定して、燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の変動を防止する場合、燃料電池に供給する加湿ガスAの露点が急激に低下することを防止できる。
ここで、燃料電池に供給する加湿ガスAの流量が、加湿ガスAの流量範囲の下限側の場合、加湿ガスAに設定する露点を、加湿ガスAの圧力変更時から一定時間に亘って加湿ガスAの圧力の上昇幅に応じて一定値だけ増加させ、燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償する場合、又は燃料電池に供給する加湿ガスAの流量が、加湿ガスAの流量範囲の下限側の場合、過渡応答期間に亘って、加湿ガスAの実測露点の低下挙動に基づいて加湿ガスAに設定する露点を上昇させ、燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償する場合、燃料電池の評価試験の中断、試験中の燃料電池の破損を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る燃料電池の加湿ガス供給装置の説明図である。
【図2】乾燥ガスBを加熱するガス加熱手段及び乾燥ガスCを水蒸気飽和ガスに変える加湿手段の説明図である。
【図3】混合器の説明図である。
【図4】燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の制御時及び露点変更時の実測露点の変動を示す説明図である。
【図5】燃料電池に供給する加湿ガスAの圧力変更時の実測露点の変動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る燃料電池の加湿ガス供給装置10(以下、単に加湿ガス供給装置10という)は、露点、流量、及び圧力がそれぞれ設定された加湿ガスAを供給すると共に発電時に発生する排気ガスを外部に排出しながら行う燃料電池11の評価試験に使用するものである。ここで、加湿ガスAは、加湿空気又は加湿燃料ガス(例えば、加湿水素)である。以下、詳細に説明する。
【0024】
加湿ガス供給装置10は、乾燥ガスBを加熱して加熱乾燥ガスにする第1のガス供給部12と、乾燥ガスBと同種の乾燥ガスCに水蒸気を加えて水蒸気が飽和状態になった水蒸気飽和ガスにする加湿手段13を備えた第2のガス供給部14と、加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを合流して加湿ガスAを生成する合流部15と、合流部15で生成した加湿ガスAを一時貯留して均一性を向上させる貯留槽16とを有している。更に、加湿ガス供給装置10は、貯留槽16からガス導入配管17を介して燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点に基づいて合流する加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスとの分流比を求め、分流比と加湿ガスAの流量に基づいてそれぞれ求めた流量の加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを合流部15に供給すると共に、求めた加熱乾燥ガスの流量から決まる乾燥ガスBの流量及び燃料電池11に供給する加湿ガスAの圧力に基づいて、乾燥ガスBの圧力を制御する制御手段18を有している。
【0025】
ここで、制御手段18で制御する加湿ガスAの露点、流量、及び圧力は、燃料電池11の評価試験方法により設定される。そして、加熱乾燥ガスは乾燥ガスBを加熱することにより得られるので、加熱乾燥ガスの流量が決まると、乾燥ガスBの流量が決まる。また、水蒸気飽和ガスは乾燥ガスCを加湿することにより得られるので、水蒸気飽和ガスの流量が決まると、乾燥ガスCの流量が決まる。
なお、図1では、図示しない共通のガス源から供給されるガスを分岐部19で2つに分岐させ、一方を乾燥ガスB、他方を乾燥ガスCとしている。共通のガス源と分岐部19を設けず、乾燥ガスB、Cをそれぞれ独立したガス源から供給するようにすることもできる。ここで、加湿ガスAが加湿空気の場合、ガス源は、大気中の空気から圧縮空気を作製するコンプレッサと、圧縮空気中の水分を除去する乾燥機から構成される。また、加湿ガスAが加湿水素の場合、ガス源は水素を貯留したタンク又はボンベから構成される。
【0026】
第1のガス供給部12は、乾燥ガスBの圧力を調節する圧力調節手段の一例である圧力調整弁20と、圧力の調節が行われた乾燥ガスBの流量を調節する第1の乾燥ガス流量調節手段の一例である質量流量計測及び制御機構21と、質量流量計測及び制御機構21を通過した乾燥ガスBを加熱して加熱乾燥ガスにするガス加熱手段22とを備えている。ここで、圧力調整弁20の下流側には質量流量計測及び制御機構21に流入する乾燥ガスBの圧力を測定する圧力計23が設けられ、ガス加熱手段22と合流部15とを接続する第1の連通部24には合流部15に流入する加熱乾燥ガスの圧力を測定する圧力計25が設けられている。更に、第1の連通部24は断熱材(図示せず)で覆われており、ガス加熱手段22から合流部15に流入する加熱乾燥ガスの温度低下を防止している。なお、第1の連通部24にヒータを取付け第1の連通部24を加熱して、加熱乾燥ガスの温度低下を防止するようにしてもよい。
このような構成とすることで、乾燥ガスBを加熱する際の温度、乾燥ガスBの圧力、及び乾燥ガスBの流量をそれぞれ調節することができ、所望の温度、圧力、及び流量を有する加熱乾燥ガスを得ることができる。
【0027】
第2のガス供給部14は、乾燥ガスCの流量を調節する第2の乾燥ガス流量調節手段26と、第2の乾燥ガス流量調節手段26の下流側に配置され、温度調節された水を貯留し、底部から吹込まれた乾燥ガスCを水蒸気飽和ガスに変える密閉タンク32(図2参照)を備えた加湿手段13とを備え、加湿手段13と合流部15とを接続する第2の連通部27には合流部15に流入する水蒸気飽和ガスの圧力を測定する圧力計28が設けられている。更に、第2の連通部27は断熱材(図示せず)で覆われており、加湿手段13から合流部15に流入する水蒸気飽和ガスの温度低下(結露)を防止している。なお、第2の連通部27にヒータを取付け第2の連通部27を加熱して、水蒸気飽和ガスの温度低下を防止するようにしてもよい。
このような構成とすることで、乾燥ガスCの流量、乾燥ガスCに加える水蒸気量を調整することができ、所望の露点及び流量を有する水蒸気飽和ガスを得ることができる。
【0028】
第2の乾燥ガス流量調節手段26は、加湿ガスAの流量範囲及び分流比から決まる乾燥ガスCの流量範囲を調節範囲とする親流量調節手段の一例である質量流量計測及び制御機構29と、質量流量計測及び制御機構29に対して並列に配置され、乾燥ガスCの流量範囲の下限側を調節範囲として、小流量の調節を正確かつ安定して行うことが可能な子流量調節手段の一例である質量流量計測及び制御機構30とを有している。ここで、質量流量計測及び制御機構30の流量調節範囲は、質量流量計測及び制御機構29の流量調節範囲の下限側、例えば、質量流量計測及び制御機構29で調節可能な最大流量の0.04〜2%の範囲、あるいは、乾燥ガスCの最小流量の1〜50倍の範囲である。
なお、制御手段18には、水蒸気飽和ガスの流量を求めて加湿手段13に供給する乾燥ガスCの流量を決めた際に、質量流量計測及び制御機構29、30の中から乾燥ガスCの流量の制御に適した質量流量計測及び制御機構を選択する機能が設けられている。これによって、乾燥ガスC(水蒸気飽和ガス)の流量を正確に設定することができ、例えば、小流量の水蒸気飽和ガスを高精度で安定して合流部15に供給することができ、露点が正確な低露点(例えば、露点が30℃以下)の加湿ガスAを得ることができる。
【0029】
図2に示すように、加湿手段13は、第2の乾燥ガス流量調節手段26で流量制御された乾燥ガスCを取入れる乾燥ガス導入路31と、乾燥ガス導入路31の先部と連通する吹込み口(図示せず)を底部に備え、上端部に第2の連通部27の基部が接続される取出し口(図示せず)が設けられて、上部側に空間が形成される高さに水を貯留する密閉タンク32とを有している。ここで、乾燥ガス導入路31の吹込み口側には逆止弁33が設けられ、逆止弁33の上流側には密閉タンク32から取水配管34を介して取出した水で乾燥ガス導入路31を流れる乾燥ガスCを加熱する加熱手段の一例である熱交換器35が設けられている。また、熱交換器35の出口には、図示しない送水ポンプを備えた給水配管36の基部が接続され、給水配管36の先側は密閉タンク32の底部を貫通して密閉タンク32内に配設され、先部が密閉タンク32上部側の空間に設置されたシャワー機構37の入口(図示せず)と連通している。
【0030】
そして、給水配管36の熱交換器35側には、熱交換器35を通過して給水配管36内に流入した水を、密閉タンク32内に流入する前に密閉タンク32内に貯留された水と同一温度となるように加熱又は冷却する温度調節部38が設けられている。ここで、温度調節部38は、給水配管36の密閉タンク32の外側に配置されたタンク外領域の管内に配置され、給水配管36内を通過する水を加熱する(加熱機能を有する)加熱器39(例えば電気ヒータ)と、給水配管36内を通過する水を2次側に供給しながら1次側に供給する冷却水との間で熱交換を行って、密閉タンク32に戻る水の温度を冷却する(冷却機能を有する)冷却用熱交換器40とを有している。なお、冷却用熱交換器40に供給する冷却水は、冷却用熱交換器40の1次側出口から排出される。
このような構成とすることで、望ましい温度の水を、シャワー機構37により密閉タンク32内の上部側から噴出させることができ、密閉タンク32内の水の温度を所望の温度に保つことができると共に、密閉タンク32内を均一温度に保つことができる。
【0031】
また、密閉タンク32の底から吹込まれた乾燥ガスCが水中に滞留する時間(水中内を通過するのに要する時間)を十分長く確保することにより、密閉タンク32の取出し口から、密閉タンク32に貯留された水と同じ温度の乾燥ガスCに飽和量の水蒸気を混入させることができ、水蒸気が飽和状態になった水蒸気飽和ガス(密閉タンク32の水と同一温度)を取出すことができる。なお、乾燥ガスCに混入させる水蒸気の飽和量は、密閉タンク32に貯留された水の温度を変えることにより調節できる。そして、吹込む乾燥ガスCを熱交換器35で予熱するので、密閉タンク32内の水の温度が変動することを防止できる。
【0032】
乾燥ガスBを加熱するガス加熱手段22は、質量流量計測及び制御機構21で流量制御された乾燥ガスBを取入れる乾燥ガス導入路41と、密閉タンク32内の下部側に設置され、基部が乾燥ガス導入路41の先部と連通した螺旋状のガス加熱部42(即ち、密閉タンク32内に水を貯留した場合、ガス加熱部42は水中に浸漬状態となる)と、ガス加熱部42の先部と密閉タンク32の上端部に設けられ、第1の連通部24の基部が接続される取出し口(図示せず)とを連通する連通管43とを有している。
このような構成とすることで、乾燥ガスBは、ガス加熱部42を通過する際に密閉タンク32内に貯留された水で、連通管43内を通過する際に、密閉タンク32内の上部側の空間に設置されたシャワー機構37により噴出する水でそれぞれ加熱され、水蒸気飽和ガスと同一温度の加熱乾燥ガスにすることができる。これによって、加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスを合流させた際に、水蒸気飽和ガスの温度が低下すること(水蒸気飽和ガスに結露が生じること)を防止できる。
なお、質量流量計測及び制御機構21と第1の連通部24の間にヒータを設けて、通過する乾燥ガスBの温度を、密閉タンク32内の水と同一温度に加熱するようにしてもよい。
【0033】
図3に示すように、合流部15は、第1、第2の連通部24、27の先部がそれぞれ接続して加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスが合流(混合)する混合器44と、混合器44の先部と連通して加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスの合流により形成された加湿ガスAが流入する加湿ガス導出路45とを有している。ここで、混合器44は、第1の連通部24の先部が接続して加熱乾燥ガスが通過する第1のガス流路46と、第1のガス流路46を内部に含み第1のガス流路46の中心軸と同一位置に中心軸が配置されて、第2の連通部27を介して供給された水蒸気飽和ガスが加熱乾燥ガスと同一方向に通過する第2のガス流路47とを備えている。
【0034】
このような構成とすることにより、第1のガス流路46の断面積より第2のガス流路47の断面積が大きいため、第1のガス流路46の配管抵抗が大きくなって、第2のガス流路47を通過する水蒸気飽和ガスが第1のガス流路46に逆流することを防止できる。また、第2のガス流路47内に結露が生じても、構造的に結露が第1のガス流路46に侵入することを防止できる。更に、加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスの流量差が大きいと、流量の多いガスに流量の少ないガスが巻き込まれるため、加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスの混合を促進することができる。
なお、合流部15は断熱材(図示せず)で覆われており、加熱乾燥ガス、水蒸気飽和ガス、及び加湿ガスAの温度低下を防止して、水蒸気飽和ガス及び加湿ガスAに結露が生じることを防止している。なお、合流部15にヒータを取付け合流部15を加熱して、加熱乾燥ガス、水蒸気飽和ガス、及び加湿ガスAの温度低下を防止するようにしてもよい。
【0035】
貯留槽17は、加湿ガス導出路45に連通する空間部を内部に備え、外周部は図示しない断熱材で覆われている。これにより、合流部15から流入した加湿ガスAの温度低下を防止しながら、加湿ガスAの均一化(例えば、圧力)を図ることができる。そして、貯留槽17内で均一化した加湿ガスAはガス導入配管17を介して燃料電池11に供給される。また、ガス導入配管17には、燃料電池11に供給される加湿ガスAの露点及び圧力をそれぞれ測定する露点計48及び圧力計49が設けられている。更に、ガス導入配管17は断熱材(図示せず)で覆われており、加湿ガスAの温度低下を防止することにより、加湿ガスAに結露が生じることを防止している。なお、ガス導入配管17にヒータを取付けてもよい。
【0036】
燃料電池11の図示しない排気ガス放出口には、排気ガスの圧力を調節する背圧弁50と、排気ガスの圧力を測定する圧力計51と、圧力計51で測定された排気ガスの圧力が指示値となるように背圧弁50を調節する圧力設定器(図示せず)とを備えた排気ガス排出手段52が設けられている。その結果、燃料電池11内のガス圧力が決まり、燃料電池11に供給する加湿ガスAの圧力が決まる。
【0037】
制御手段18は、燃料電池11の評価試験方法により設定される加湿ガスAの露点、加湿ガスAの流量、及び加湿ガスAの圧力の目標値を入力する入力部と、入力部に入力された(設定された)露点に基づいて加湿手段13の密閉タンク32内に貯留されている水の温度を設定する温度設定部と、温度設定部により設定された温度の加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを用いて、設定された露点の加湿ガスAを作製するために合流部15に流入させる加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスの分流比を求める分流比演算部と、設定された加湿ガスAの流量及び求めた分流比から、合流部15に流入する加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスの各流量を設定するガス流量設定部とを有している。
【0038】
また、制御手段18は、ガス流量設定部で設定された流量の乾燥ガスBが得られるように質量流量計測及び制御機構21の制御信号を出力する乾燥ガスBの流量制御部と、ガス流量設定部で設定された乾燥ガスCの流量に応じて質量流量計測及び制御機構29、30に対して一方を起動させ、他方を停止させる動作指定信号を出力するか(小流量のとき)、又は起動させた質量流量計測及び制御機構29、30を用いて、設定された流量の乾燥ガスCが得られるように質量流量計測及び制御機構29、30の流量配分設定のための制御信号を出力する乾燥ガスCの流量制御部とを有している。更に、制御手段18は、入力部で設定された加湿ガスAの圧力と、ガス流量設定部で設定された乾燥ガスBの流量に基づいて、質量流量計測及び制御機構21に流入する乾燥ガスBの圧力を求めて、圧力調整弁20の制御信号を出力する乾燥ガスBの圧力設定部を有している。
【0039】
ここで、分流比演算部には、露点計48で測定した加湿ガスAの実測露点と設定された露点との差(偏差)に基づいて、分流比の修正を行う分流比修正機構が設けられている。
また、分流比演算部には、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点を変更するため、加湿ガスAに設定する露点を変更した際に(入力部に新たな露点を入力した際に)、分流比修正機構の動作を停止すると共に、分流比を加湿ガスAに設定する変更後の露点から決まる値に固定し、露点の変更時から(新たな露点を設定した時から)一定時間(例えば、20秒)経過した後に、分流比修正機構の動作を再開する機能を有する露点変更対応機構が設けられている。
なお、露点変更対応機構の機能を、露点計48で求めた実測露点と変更後の露点との偏差が一定値範囲内(例えば、偏差が露点に対して0を超え5%以下)になった後、分流比修正機構の動作を再開するようにしてもよい。
【0040】
そして、入力部には、燃料電池11に供給する加湿ガスAの圧力を急上昇させようとして、
加湿ガスに設定する圧力を急上昇した際に(入力部に加湿ガスAの新たな圧力が設定された際に)、分流比の修正を停止し、加湿ガスAの実測圧力の過渡応答期間(加湿ガスAの実測圧力が、新たな圧力に到達した後、数秒〜数十秒経過するまでの期間)に亘って、分流比を加湿ガスAの圧力の変更直前の値に固定して、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点の変動を防止する機能を有する加湿ガス圧力変更対応機構が設けられている。
更に、加湿ガス圧力変更対応機構には、燃料電池11に供給する加湿ガスAの流量が、加湿ガスAの流量範囲の下限側の場合、加湿ガスAに設定する露点を、加湿ガスAの圧力変更時から一定時間に亘って加湿ガスAの圧力の上昇幅に応じて一定値だけ増加させて、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償する補償機能が設けられている。
なお、加湿ガス圧力変更対応機構に設ける補償機能を、過渡応答期間に亘って、加湿ガスAの実測露点の低下挙動に基づいて加湿ガスAに設定する露点を上昇させることにより(例えば、加湿ガスAの実測露点の低下挙動を求めて、低下挙動を示す関数式を予め求めておき、この関数式で予測される露点減少量だけ露点を増加させることにより)、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償する機能とすることもできる。
【0041】
続いて、加湿ガス供給装置10を用いた本発明の一実施の形態に係る燃料電池11の加湿ガス供給方法について説明する。
燃料電池11の評価試験を行う場合、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点、流量、及び圧力は、評価試験内容により異なる。このため、先ず、加湿ガス供給装置10の制御手段18の入力部に、評価試験に要求される加湿ガスAの露点、流量、及び圧力を入力して、加湿ガス供給装置10の運転を開始する。
【0042】
ここで、加湿ガス供給装置10の動作試験を実施することにより、燃料電池11に供給する加湿ガスAの条件(露点、流量、及び圧力)、加熱乾燥ガス(乾燥ガスB)の条件(流量及び圧力)、及び水蒸気飽和ガス(乾燥ガスC)の条件(流量及び圧力)の関係を事前に把握することができる。このため、燃料電池11の評価試験時に燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点、流量、及び圧力を決めると、加湿ガス供給装置10を運転する際の乾燥ガスBの流量及び圧力、乾燥ガスCの流量及び圧力をそれぞれ推定することができる。したがって、推定された乾燥ガスB、Cの流量及び圧力を初期値として、加湿ガス供給装置10を運転する。また、加湿手段13の密閉タンク32に貯留する水の温度は、加湿ガスAの露点に対して、例えば、5〜10℃だけ高い温度に保持されるように温度調節部38で制御する。
なお、質量流量計測及び制御機構21と第1の連通部24の間にヒータを設けて乾燥ガスBを加熱する場合は、加熱される乾燥ガスBの温度が密閉タンク32の水温と同一温度になるようにヒータを制御する。
【0043】
次いで、設定された加湿ガスAの露点に基づいて合流部15で合流する加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスとの分流比を求める。
ここで、露点(℃)をt、密閉タンク32内(密閉タンク32中の水)の温度(℃)をt、密閉タンク32内の水蒸気飽和ガスの圧力(Pa)をp、貯留槽16内の加湿ガスAの圧力(Pa)をp、密閉タンク32内の水蒸気飽和ガスの飽和水蒸気圧(Pa)をe(t)、露点における飽和水蒸気圧(Pa)をe(t)、乾燥ガスB及び乾燥ガスCの全流量に対する乾燥ガスCの流量の比をγすると、露点における飽和水蒸気圧e(t)は(a)式で与えられる(例えば、湿度計−試験方法 JIS B 7920:2000 5ページ(8)式参照)。
(t)=pγe(t)/{p−(1−γ)e(t)} ・・・ (a)
【0044】
(a)式からγを求めると、γは(b)式で与えられる。
γ=(p−e(t))e(t)/(p−e(t))e(t) ・・・ (b)
ここで、tは燃料電池11の評価試験条件として与えられ、tは密閉タンク32内に挿入した図示しない温度計で測定され、pは圧力計28から、pは圧力計49からそれぞれ求めることができ、e(t)、e(t)は、例えば、JIS B 7920:2000 21ページ SONNTAGの飽和蒸気圧式(15)から得ることができる。したがって、(b)式を計算することにより、γを決定することができる。
【0045】
分流比(γ)が決まると、加湿ガスAの流量をQ、加熱乾燥ガスの流量をq、水蒸気飽和ガスの流量をqとした場合、
γ=q/Q=q/(q+q
の関係が成立するので、水蒸気飽和ガスの流量qはγQ、加熱乾燥ガスの流量qは(1−γ)Qとそれぞれ求められる。ここで、乾燥ガスBの流量は加熱乾燥ガスの流量qに等しく、乾燥ガスCの流量は水蒸気飽和ガスの流量qに等しいので、乾燥ガスBの流量がqとなるように質量流量計測及び制御機構21を制御し、乾燥ガスCの流量がqとなるように第2の乾燥ガス流量調節手段26を制御する。なお、第2の乾燥ガス流量調節手段26で乾燥ガスCの流量制御を行う場合、流量qの値に応じて、第2の乾燥ガス流量調節手段26を構成している質量流量計測及び制御機構29、30の中で使用する質量流量計測及び制御機構を選択するか、各々に流量配分設定を行う。
【0046】
更に、質量流量計測及び制御機構21に流入する乾燥ガスBの圧力をP、燃料電池11に供給される加湿ガスAの圧力をP、乾燥ガスBの流量をqとした場合、乾燥ガスBの圧力Pを、乾燥ガスBの流量q及び加湿ガスAの圧力Pに基づいて、例えば、P=P+Kqの関係式から決まるPとなるように制御している。ここで、Kは数値定数で、加湿ガス供給装置10に応じて決める。
乾燥ガスBの圧力Pを、乾燥ガスBの流量q及び加湿ガスAの圧力Pに基づいて制御することにより、第2のガス供給部14に比較して、構造的に乾燥ガスBが流れ易い(差圧が過大となり易い)第1のガス供給部12に適切な差圧を設けることができ、第1のガス供給部12を通過する乾燥ガスBの流量の制御を安定して行うことができる。その結果、加湿ガスAの露点の変更要求に対して、加湿ガスAの露点を迅速かつ高精度に調節することができる。
【0047】
加湿ガスAの露点を一定値に制御している状態では、ガス導入配管17に設けた露点計48で測定した加湿ガスAの実測露点と、入力部に入力した露点(即ち、設定された露点である制御の目標露点)との差(偏差)に基づいて、PID制御等の方法で分流比の計算出力値を修正することにより、露点のフィードバック制御を行う。これによって、加湿ガスAの実測露点を設定された露点(目標露点)に近づけると共に、実測露点の安定化を図ることができる。
【0048】
ここで、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点変更要求に応じて、制御手段18の入力部に新たな露点が入力された(加湿ガスAに設定する露点を変更した)場合、分流比演算部では、分流比修正機構の動作を停止して露点のフィードバック制御を停止すると共に、分流比を変更後の露点から決まる値に固定し(即ち、露点の制御を、フィードバックとフィードフォワード併用制御からフィードフォワード単独制御に変更して)、露点の変更時から一定時間(例えば、10〜20秒)経過した後に、分流比修正機構の動作を再開する(露点のフィードバック制御を再開する)。
なお、露点のフィードフォワード単独制御を実施する期間を、露点計48で求めた実測露点と変更後の目標露点との偏差が一定値範囲内(例えば、偏差が、変更後の目標露点露点に対して0を超え5%以下になるまでの期間とすることもできる。
【0049】
これによって、変更後の露点で決まる分流比で加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスが合流部15に供給されるため、加湿ガスAの露点を変更後の露点に向けて急速に変化させることができる。そして、目標露点の変更時から一定時間経過した後又は露点計48で求めた実測露点と変更後の目標露点との差が一定値範囲内になった後、分流比の修正を行うことによる露点のフィードバック制御を再開するので、実測露点を変更後の目標露点に容易に近づけて安定化することができる。
【0050】
加湿ガスAの露点を一定値に制御している状態で、燃料電池11に供給する加湿ガスAの圧力変更要求に応じて制御手段18の入力部に新たな圧力が入力されて(加湿ガスAに設定する圧力を変更して)、加湿ガスAの圧力を急上昇させる場合、加湿ガスAの実測圧力の過渡応答期間(加湿ガスAの実測圧力が、設定された新たな圧力に到達した後、数秒〜数十秒経過するまでの期間)に亘って、分流比の修正を停止し露点のフィードバック制御を停止すると共に、分流比を加湿ガスAの圧力の変更直前の値に固定して(露点の制御を、フィードバックとフィードフォワード併用制御からフィードフォワード単独制御に変更して)、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点の変動を防止する。
【0051】
ここで、燃料電池11に供給する加湿ガスAの流量が、加湿ガスAの流量範囲の下限側(例えば、最小流量の1倍から20倍の範囲)の場合、加湿ガスAの露点を、加湿ガスAの圧力変更時から一定時間(例えば、0を超え120秒以下)に亘って加湿ガスAの圧力の上昇幅に応じて一定値(例えば、上昇幅の1を超え1.2倍以下)だけ増加させ、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償する。
なお、過渡応答期間zに亘って、加湿ガスAの実測露点の低下挙動に基づいて加湿ガスAの設定された露点を上昇させることにより、例えば、設定された露点(制御の目標露点)をtとした際、加湿ガスAの実測露点の低下挙動を求めて、低下挙動を示す関数式F(z)を予め求めておき、関数式F(z)で予測される露点減少量だけ設定される露点を増加、即ち加湿ガスAの目標露点がt+F(z)となるように制御することにより)、燃料電池11に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償するようにすることもできる。これによって、燃料電池11の評価試験の中断、試験中の燃料電池11の破損を確実に防止することができる。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
燃料電池に露点80℃の加湿ガスAを供給するため、制御手段の入力部に露点(目標露点)として80℃を入力(設定)し、露点計による実測露点と目標露点との偏差に基づいて、PID制御により分流比の計算出力値を修正しながら加湿ガスAの露点の制御(露点のフィードバック制御)を実施した。その結果を図4に示す。
分流比の計算出力値を修正しながら加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスの流量をそれぞれ制御することにより、実測露点を目標露点である80℃に安定して保持できることが確認できた。
【0053】
(実施例2)
目標露点を80℃に制御している状態において、入力部に新たに設定する露点(目標露点)として30℃を入力し、目標露点を80℃から30℃に急低下させて保持する制御を行った。このとき、合流部に流入させる加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスの流量は、それぞれ露点30℃の加湿ガスAを生成する際の分流比から決まる流量に固定した(露点を30℃とするフィードフォワード単独制御を行った)。その結果を図4に示す。
加湿ガスAの実測露点は、目標露点の急低下に追従して変化しており、加湿ガスAの露点を急低下できることが確認できた。
【0054】
(実施例3)
目標露点を30℃に制御している状態において、入力部に新たに設定する露点(目標露点)として80℃を入力し、目標露点を30℃から80℃に急上昇させて保持する制御を行った。このとき、合流部に流入させる加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスの流量は、露点の急上昇開始時にはそれぞれ露点80℃の加湿ガスAを生成する際の分流比から決まる流量に固定し(露点を80℃とするフィードフォワード単独制御を行い)、露点の急上昇開始時から30秒経過した後(実測露点が目標露点80℃に接近した後)、フィードフォワード単独制御を露点を80℃とするフィードバック制御に変更した。即ち、露点を30℃から80℃に急上昇させる場合、フィードフォワードとフィードバック併用制御を行うことになる。その結果を図4に示す。
加湿ガスAの目標露点が30℃から80℃に急上昇することに対応して、実測露点は30℃から80℃に急上昇しており、加湿ガスAの露点を急上昇できることが確認できると共に、急上昇させた実測露点を80℃に保持できることが確認できた。
【0055】
(実施例4)
燃料電池に供給する加湿ガスAの目標露点を60℃に制御している状態で、燃料電池に供給する加湿ガスAに設定する圧力(背圧)をゲージ圧力で10kPaから250kPaまで急上昇させ、一定時間保持した後に急低下させる制御の際に、背圧急上昇に伴う加湿ガスAの実測背圧の過渡応答期間(加湿ガスAの圧力変更時から加湿ガスAの実測背圧が背圧制御値の3%の範囲内に到達するまでの時間)に亘って、加湿ガスAの目標露点を65℃に急上昇するフィードフォワード単独制御を行った。その結果を図5に示す。
背圧急上昇に伴って加湿ガスAの目標露点を60℃から5℃急上昇させることで、実測背圧がゲージ圧力で10kPaから250kPaまで上昇した背圧制御値に安定化するまでに要する期間に生じる実測露点の目標露点60℃に対する低下量を、約3℃以下にすることができる。
【0056】
(比較例)
燃料電池に供給する加湿ガスAの目標露点を60℃に制御している状態で、燃料電池に供給する加湿ガスAに設定する背圧を250Paだけ急上昇させ、一定時間保持した後に急低下する制御を行なった際における加湿ガスAの実測露点の変動を図5に示す。実測背圧が、250Pa上昇した背圧制御値に安定化するまでに要する期間に生じる実測露点の目標露点60℃に対する低下量は最大約10℃であった。
したがって、燃料電池に供給する加湿ガスAの背圧制御値を急上昇させることに伴って、加湿ガスAの実測背圧の過渡応答期間に亘って、加湿ガスAの目標露点を急上昇させることで、実測背圧が背圧制御値に安定化するまでの期間に生じる実測露点の目標露点に対する低下量を小さくできる(露点の低下を補償できる)ことが確認できた。
【0057】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10:加湿ガス供給装置、11:燃料電池、12:第1のガス供給部、13:加湿手段、14:第2のガス供給部、15:合流部、16:貯留槽、17:ガス導入配管、18:制御手段、19:分岐部、20:圧力調整弁、21:質量流量計測及び制御機構、22:ガス加熱手段、23:圧力計、24:第1の連通部、25:圧力計、26:第2の乾燥ガス流量調節手段、27:第2の連通部、28:圧力計、29、30:質量流量計測及び制御機構、31:乾燥ガス導入路、32:密閉タンク、33:逆止弁、34:取水配管、35:熱交換器、36:給水配管、37:シャワー機構、38:温度調節部、39:加熱器、40:冷却用熱交換器、41:乾燥ガス導入路、42:ガス加熱部、43:連通管、44:混合器、45:加湿ガス導出路、46:第1のガス流路、47:第2のガス流路、48:露点計、49:圧力計、50:背圧弁、51:圧力計、52:排気ガス排出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露点、流量、及び圧力がそれぞれ設定された加湿ガスAを供給すると共に発電時に発生する排気ガスを外部に排出しながら行う燃料電池の評価試験に使用する燃料電池の加湿ガス供給装置であって、
乾燥ガスBを加熱して加熱乾燥ガスにする第1のガス供給部と、
乾燥ガスBと同種の乾燥ガスCを水を貯留した密閉タンクの底部から吹込んで水蒸気が飽和状態になった水蒸気飽和ガスにする加湿手段を備えた第2のガス供給部と、
前記第1のガス供給部及び前記第2のガス供給部からそれぞれ供給された加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを合流して加湿ガスAを生成する合流部と、
前記合流部で生成した加湿ガスAを一時貯留して均一性を向上させる貯留槽と、
前記貯留槽からガス導入配管を介して前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点に基づいて合流する加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスとの分流比を求め、該分流比と加湿ガスAの流量に基づいてそれぞれ求めた流量の加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを前記合流部に供給すると共に、求めた加熱乾燥ガスの流量から決まる乾燥ガスBの流量及び前記燃料電池に供給する加湿ガスAの圧力に基づいて、乾燥ガスBの圧力を制御する制御手段とを有することを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池の加湿ガス供給装置において、前記合流部は、加熱乾燥ガスが通過する第1のガス流路と、該第1のガス流路を内部に含み該第1のガス流路の中心軸と同一位置に中心軸が配置されて水蒸気飽和ガスが加熱乾燥ガスと同一方向に通過する第2のガス流路とを備えた混合器を有していることを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池の加湿ガス供給装置において、前記第1のガス供給部は、乾燥ガスBの圧力を調節する圧力調節手段と、圧力の調節が行われた乾燥ガスBの流量を調節する第1の乾燥ガス流量調節手段と、該第1の乾燥ガス流量調節手段を通過した乾燥ガスBを加熱するガス加熱手段とを備え、前記第2のガス供給部は、乾燥ガスCの流量を調節する第2の乾燥ガス流量調節手段と、該第2の乾燥ガス流量調節手段の下流側に配置された前記加湿手段とを備え、前記第2の乾燥ガス流量調節手段は、加湿ガスAの流量範囲及び前記分流比から決まる乾燥ガスCの流量範囲を調節範囲とする親流量調節手段と、該親流量調節手段に対して並列に配置され、乾燥ガスCの流量範囲の下限側を調節範囲とする子流量調節手段とを有していることを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池の加湿ガス供給装置において、前記加湿手段は、前記密閉タンク内の水を加熱する加熱機能と該密閉タンク内の水を冷却する冷却機能を備えた温度調節部を有していることを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給装置。
【請求項5】
露点、流量、及び圧力がそれぞれ設定された加湿ガスAを供給すると共に発電時に発生する排気ガスを外部に排出しながら行う燃料電池の評価試験に使用する燃料電池の加湿ガス供給方法であって、
加湿ガスAを、乾燥ガスBを加熱した加熱乾燥ガスと、乾燥ガスBと同種の乾燥ガスCに加湿手段を用いて飽和量の水蒸気を加えて作製した水蒸気飽和ガスとを合流して生成し、貯留槽に導入して均一性を向上させた後に、ガス導入配管を介して加湿ガスAを前記貯留槽から前記燃料電池に供給する際に、
前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点に基づいて合流する加熱乾燥ガスと水蒸気飽和ガスとの分流比を求め、該分流比と加湿ガスAの流量に基づいてそれぞれ求めた流量の加熱乾燥ガス及び水蒸気飽和ガスを前記合流部に供給すると共に、求めた加熱乾燥ガスの流量から決まる乾燥ガスBの流量及び前記燃料電池に供給する加湿ガスAの圧力に基づいて、乾燥ガスBの圧力を制御することを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給方法。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池の加湿ガス供給方法において、前記ガス導入配管に設けた露点計で測定した加湿ガスAの実測露点と加湿ガスAに設定された露点との差に基づいて前記分流比の修正を行うことを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給方法。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池の加湿ガス供給方法において、加湿ガスAに設定する露点を変更した際に、前記分流比の修正を停止すると共に、前記分流比を加湿ガスAに設定する変更後の露点から決まる値に固定し、露点の変更時から一定時間経過した後又は前記露点計で求めた実測露点と変更後の露点との差が一定値範囲内になった後、前記分流比の修正を行うことを再開することを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給方法。
【請求項8】
請求項6記載の燃料電池の加湿ガス供給方法において、加湿ガスAに設定する圧力を急上昇させた際に、加湿ガスAの実測圧力の過渡応答期間に亘って、前記分流比の修正を停止し、前記分流比を加湿ガスAの圧力の変更直前の値に固定して、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の変動を防止することを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給方法。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池の加湿ガス供給方法において、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの流量が、加湿ガスAの流量範囲の下限側の場合、加湿ガスAに設定する露点を、加湿ガスAの圧力変更時から一定時間に亘って加湿ガスAの圧力の上昇幅に応じて一定値だけ増加させ、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償することを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給方法。
【請求項10】
請求項8記載の燃料電池の加湿ガス供給方法において、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの流量が、加湿ガスAの流量範囲の下限側の場合、前記過渡応答期間に亘って、加湿ガスAの実測露点の低下挙動に基づいて加湿ガスAに設定する露点を上昇させ、前記燃料電池に供給する加湿ガスAの露点の低下を補償することを特徴とする燃料電池の加湿ガス供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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