説明

燃料電池の排出ガス希釈装置

【課題】燃料オフガスと、酸化オフガスとを適正に混合して、水素ガスの希釈を適正に行うことができる燃料電池の排出ガス希釈装置を提供する。
【解決手段】希釈容器12の内部に希釈空間15を形成する。希釈容器12の下部に補助容器13を設け、補助容器13の底板13aに形成された導入口13bに燃料オフガス導入管16を接続する。区画板13cに希釈空間15と連通する導入口13dを設ける。希釈空間15の内部に不織布25を有する第1〜第6多孔質シート22A〜22Fを水平方向に、かつ互いに平行に配設し、希釈空間15の内部に第1〜第7希釈室R1〜R7を形成する。導入管17から供給される酸化オフガスを第4〜第6希釈室R4〜R6に分流するように供給する。第1〜第7希釈室R1〜R7によって燃料オフガスの滞留時間を長くして、燃料オフガス中に含まれる水素ガスを、窒素ガス等の他のガス或いは酸化オフガスによって希釈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の排出ガス希釈装置に係り、詳しくは燃料電池から排出された燃料オフガス中に含まれる水素ガスを燃料電池から排出された酸化オフガスによって効率的に希釈して大気中に排出することができる燃料電池の排出ガス希釈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は発電効率が高く、環境に優しいので、例えば内燃機関を有する自動車に代わる燃料電池車として期待され、実用化に向けた開発が進められている。
燃料電池システムにおいては、水素ガスが供給される燃料極及び空気中の酸素ガスが供給される酸化剤極とを備えた燃料電池により水素ガスと空気に含まれる酸素ガスとを反応させて発電するようになっている。前記燃料電池の燃料極側から排出されるガスには、未反応の水素ガスも含まれるので、この水素ガスを有効利用するため、燃料極側の出口から燃料極の入口側に水素ガスを循環させるガス循環手段が設けられている。このガス循環手段のガス循環配管の途中には分離容器の内部に水素分離膜を収容して構成された気液分離器が接続されている。そして、前記気液分離器の水素分離膜により水素ガスと、水素ガス以外の窒素ガス等の他のガス及び発電時に生じた浸透水とを分離し、水素ガスを燃料電池へ還流し、他のガス及び浸透水を定期的に外部に排出するようになっている。さらに、前記気液分離器により水素ガスを完全に分離回収することは困難であるため、気液分離器から排出される燃料オフガスを希釈器に導くようになっている。又、燃料電池の酸化剤極側の出口から排出される酸化オフガス及び発電時に生じた生成水を前記希釈器に導くようになっている。そして、前記希釈器内で燃料オフガスと酸化オフガスとを混合することにより水素ガスの濃度を安全な基準値以下に希釈して大気中に放出する。
【0003】
上記の水素ガスを希釈するために、従来、特許文献1に記載された燃料電池の排出ガス希釈装置が提案されている。この希釈装置は、図5及び図6に示すように構成されている。図5に示すように、四角箱状の収容体41の図示左側壁部に燃料オフガスの導入用のアノード(燃料極)側排気管42が接続されるとともに、収容体41には酸化オフガスを導入するカソード(酸化剤極)側の上流側排気管43が貫通されている。又、前記収容体41の図示右側壁部には、前記上流側排気管43と対応して下流側排気管44が接続されている。前記収容体41の内部には、前記アノード側排気管42により導入された燃料オフガスを蛇行させて、前記上流側排気管43と下流側排気管44の隙間Gに導くための二枚の遮蔽板45,46が装着されている。そして、前記遮蔽板45,46により、燃料ガスの蛇行通路を形成して、水素ガスの滞留時間を長くし、希釈機能を向上するようになっている。
【0004】
上記の希釈装置は、図6に二点鎖線で示す収容体41内の隅部の空気を水素ガスの希釈に十分活用できないので、水素ガスを十分に希釈できない虞があるという問題があった。又、燃料オフガスが蛇行通路を流れるので、圧力損失が大きくなるという問題もあった。
【0005】
上記の問題を解消するための燃料電池の排出ガス処理装置として、従来、特許文献2に開示されたものも提案されている。この排出ガス処理装置は、図7に示すように、燃料希釈器51の図示右側壁に燃料オフガスの導入配管52が接続されるとともに、底壁部の図示右側に酸化オフガスの導入配管53が接続され、底壁部の図示左側に希釈されたガスの排出管54が接続されている。さらに、前記燃料希釈器51の内部には、複数枚の平板55が互いに平行に設けられ、平行な分流通路56が区画形成されている。そして、導入配管52から燃料希釈器51内に導入された燃料オフガス及び導入配管53から導入された酸化オフガスを前記各分流通路56内にそれぞれ分流させるとともに、分流通路56内で両オフガスを混合させるようになっている。前記各分流通路56によって、燃料希釈器51の内部空間の全領域を有効に利用して混合オフガスの流れを適正化し、希釈効率を向上するようになっている。
【0006】
さらに、燃料電池からパージされる水素のパージ制御装置として、従来、特許文献3に開示されたものも提案されている。このパージ制御装置は、図8に示すように、パージ水素希釈器61の内部に滞留室(滞留領域)62と、希釈室(希釈領域)63とを隔壁64によって区画形成するとともに、隔壁64の一部に滞留室62と希釈室63とを連通する小さな孔が多数あけられたパンチングメタルよりなる流通部65が設けられている。そして、アノード側排気管42から燃料オフガスを滞留室62に導いて滞留させ、水素ガスを他の窒素ガス等と混合して希釈する。その後、滞留室62内の燃料オフガスを流通部65から希釈室63に導き、該希釈室63において、燃料電池から上流側排気管43を通して導入された酸化オフガスと燃料オフガスとを混合して水素ガスを希釈し、希釈された水素ガスを下流側排気管44から外部に排出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−179894号公報
【特許文献2】特開2005‐158576号公報
【特許文献3】特開2004‐55287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献2に開示された排出ガス処理装置は、導入配管53から燃料希釈器51内に導入された矢印Qで示す酸化オフガスが矢印Pで示す燃料オフガスにあたって、燃料オフガスの流れが図示上側の分流通路56に片寄るとともに、酸化オフガスの流れも図示下側の分流通路56に片寄る傾向となる。このため、各分流通路56に対する燃料オフガス及び酸化オフガスのそれぞれの適正な分流が妨げられ、燃料オフガスと、酸化オフガスの混合が適正に行われないので、酸化オフガスによる水素ガスの希釈を各分流通路56においてそれぞれ適正に行うことができないという問題があった。
【0009】
一方、特許文献3に開示された水素のパージ制御装置は、希釈室63が一つの空間になっていたので、該希釈室63内の燃料オフガスと酸化オフガスの滞留時間が短くなって、水素ガスの希釈効率を向上することができないという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、燃料オフガスと、酸化オフガスとを適正に混合することができ、酸化オフガスによる水素ガスの希釈を適正に行うことができる燃料電池の排出ガス希釈装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ガスの希釈室を有する希釈容器に対し燃料電池の燃料極側の出口から排出される水素ガスを含む燃料オフガスを導入する燃料オフガス導入口を設けるとともに、燃料電池の酸化剤極側の出口から排出される酸化オフガスを導入する酸化オフガス導入口を設け、前記希釈室内で希釈された希釈ガスを外部に排出する希釈ガス排出口を設けた燃料電池の排出ガス希釈装置において、前記希釈室内に複数枚の多孔質シートを、燃料オフガス導入口から希釈ガス排出口に向かって所定の間隔をおいて配設したことを要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記多孔質シートは、不織布又はパンチングメタルにより形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記各多孔質シートの配設ピッチは、等ピッチに設定され、各シートの細孔の平均径は、同径に設定されていることを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2において、前記各多孔質シートの配設ピッチは、等ピッチに設定され、各シートの細孔の平均径は、希釈室における燃料オフガスの流路の下流側のシートの細孔の平均径ほど、大きくなるように設定されていることを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4において、前記希釈容器の下部には燃料オフガスを滞留させる滞留室が区画形成されていることを要旨とする。
(作用)
この発明は、希釈容器に対し多孔質シートが複数箇所に所定の間隔をおいて配設され、各多孔質シートの上流側及び下流側に燃料オフガスの希釈室が複数箇所に設けられているので、各希釈室において、燃料オフガス及び酸化オフガスの滞留時間が長くなる。このため、希釈室内に導入された酸化オフガスに対し燃料オフガスが適正に分散して混合され、燃料オフガスに含まれる水素ガスが酸化オフガスによって適正に希釈される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、燃料オフガスと、酸化オフガスとを適正に混合することができ、酸化オフガスによる水素ガスの希釈を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の燃料電池の排出ガス希釈装置を具体化した一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1の排出ガス希釈装置の横断面図。
【図3】多孔質シートの斜視図。
【図4】この発明の別の実施形態を示す排出ガス希釈装置の縦断面図。
【図5】従来の排出ガス希釈装置の縦断面図。
【図6】図5の排出ガス希釈装置の平断面図。
【図7】従来の排出ガス希釈装置の縦断面図。
【図8】従来の排出ガス希釈装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した燃料電池の排出ガス希釈装置の一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
この実施形態の燃料電池の排出ガス希釈装置11は、図1に示すように四角箱状の希釈容器12を備え、その内部には希釈空間15が形成されている。前記希釈容器12の下方には、横長四角筒状の補助容器13が設けられている。前記補助容器13の内部には滞留室14が形成されている。前記補助容器13の底板13aの図示左端寄りに形成された導入口13bには、図示しない燃料電池の燃料極側の出口から排出された水素ガスを含む燃料オフガスを滞留室14に導入するための燃料オフガス導入管16が接続されている。前記滞留室14と希釈空間15とを区画する区画板13cの図示右端寄りには、滞留室14内の燃料オフガスを前記希釈空間15内に導くための導入口13dが複数箇所(図1に一箇所のみ図示する)に形成されている。
【0018】
図1の前記希釈容器12の右側の側板12aの上側部に形成された酸化オフガス導入口12bには、図示しない燃料電池の酸化剤極側の出口から排出された酸素ガスを含む酸化オフガスを前記希釈空間15の内部に導くための酸化オフガス導入管17が水平に接続されている。図1の前記希釈容器12の左側の側板12cの上端部に形成された希釈ガス排出口12dには、燃料オフガスと酸化オフガスとが希釈空間15の内部で混合され、かつ水素ガスが他のガスにより希釈された希釈ガスを外部に排出するための希釈ガス排出管18が接続されている。前記酸化オフガス導入管17には、前記希釈空間15から酸化オフガス導入管17への燃料オフガス及び酸化オフガスの逆流を防ぐための逆止弁19が設けられている。
【0019】
図2に示すように、前記希釈容器12の左側の側板12e及び右側の側板12fの対向する内面には、上下方向に所定の配列ピッチで、細長帯板状の支持レール21が水平方向に、かつ互いに平行にそれぞれ数箇所に溶接等によって取り付けられている。同じ高さに位置する前記各一対の支持レール21の上面には、それぞれ第1〜第6多孔質シート22A〜22Fが水平に、かつ互いに平行に支持されている。前記多孔質シート22A〜22Fは、図3に示すように、平面視、四角リング状の上下一対の挟着枠23,24の間に不織布25の外周縁を挟着することによって構成されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、前記補助容器13の区画板13cと、最下段に位置する第1多孔質シート22Aとの間には、燃料オフガスを希釈するための第1希釈室R1が形成されている。前記第1多孔質シート22Aと、下から二番目に位置する第2多孔質シート22Bとの間には、同じく燃料オフガスを希釈するための第2希釈室R2が形成されている。同様に、前記第2多孔質シート22Bの上方向に配設された第3〜第6多孔質シート22C〜22Fの間には、燃料オフガスを希釈するための第3〜第6希釈室R3〜R6が区画形成されている。さらに、前記第6多孔質シート22Fと、前記希釈容器12の天板12gとの間には、第7希釈室R7が形成されている。
【0021】
以上の説明から明らかなように、希釈容器12の内部の前記希釈空間15は、第1〜第7希釈室R1〜R7の小さい希釈室に分割形成されている。
この実施形態では、図1に示すように、前記酸化オフガス導入管17から希釈空間15の内部に導入された酸化オフガスは、前記第4〜第6希釈室R4〜R6に分流するようにして導入されるようになっている。前記第1〜第7希釈室R1〜R7の上下方向の間隔、即ち前記希釈空間15内における前記第1〜第6多孔質シート22A〜22Fの配設ピッチP1〜P7は、全て同じ距離に設定されている。前記第1〜第6多孔質シート22A〜22Fの不織布25の目付は、全て同じに設定されている。
【0022】
図1に示すように、前記第1〜第3多孔質シート22A〜22Cは、前記側板12a,12cの間の全域にわたって配設されている。前記第4多孔質シート22Dの前記酸化オフガス導入管17側の端縁は、前記側板12aから左方向に所定の距離だけ離隔され、側板12aと第4多孔質シート22Dとの間に第1通路T1が形成されている。同じく、第5多孔質シート22Eの端縁と、前記側板12aとの間には、第2通路T2が形成され、第6多孔質シート22Fの端縁と、前記側板12aとの間には、第3通路T3が形成されている。この実施形態では、前記第1〜第3通路T1〜T3の通路面積S1〜S3は、S3>S2>S1の関係に設定されている。
【0023】
次に、前記のように構成した排出ガス希釈装置11の作用について説明する。
燃料電池が運転されている状態においては、燃料電池の燃料極側の出口から排出された水素ガスを含む燃料オフガスは、燃料オフガス導入管16から補助容器13の滞留室14の内部に導入される。この滞留室14の内部において、燃料オフガスが拡散されて減圧・減速され、複数の導入口13dに向かって流れる。燃料オフガスは滞留室14内で滞留する時間が長くなるため、燃料オフガス中に含まれる水素ガスが窒素ガス等の他のガスと適正に混合されて希釈される。複数の導入口13dに入った燃料オフガスは、最初に前記第1希釈室R1に導入され、該第1希釈室R1内において燃料オフガスが拡散されて減圧・減速され、該第1希釈室R1内で滞留する時間が長くなるため、燃料オフガス中に含まれる水素ガスが窒素ガス等の他のガスと混合されてさらに希釈される。
【0024】
前記第1希釈室R1内において希釈された燃料オフガスは、第1多孔質シート22Aの不織布25の細孔を通して、第2希釈室R2に導かれる。そして、該第2希釈室R2内で燃料オフガスの滞留時間が長くなるため、燃料オフガス中に含まれる水素ガスが窒素ガス等の他のガスと混合されてさらに希釈される。第2希釈室R2内で希釈された燃料オフガスは、第2多孔質シート22Bの不織布25の細孔を通して、第3希釈室R3内に導かれ、該第3希釈室R3内でも燃料オフガスの滞留時間が長くなるため、燃料オフガス中に含まれる水素ガスが窒素ガス等の他のガスと混合され、さらに希釈される。
【0025】
その後、第3希釈室R3内の燃料オフガスは、第3多孔質シート22Cの不織布25を通して第4希釈室R4に導かれ、該第4希釈室R4内において、前記酸化オフガス導入管17から該第4希釈室R4内に導入された酸化オフガスと燃料オフガスとが混合されるので、水素ガスが酸化オフガスによってさらに希釈される。同様に、第4希釈室R4から第4多孔質シート22Dの不織布25を通して第5希釈室R5内に導かれた燃料オフガスは、前記酸化オフガス導入管17から該第5希釈室R5に導入された酸化オフガスと混合されて、水素ガスが酸化オフガスによってさらに希釈される。次に、第5希釈室R5内の燃料オフガス及び酸化オフガスは、第5多孔質シート22Eの不織布25を通して第6希釈室R6の内部に導かれ、ここで水素ガスが酸化オフガスによってさらに希釈される。最後に、第6希釈室R6内の燃料オフガス及び酸化オフガスは、第6多孔質シート22Fの不織布25を通して第7希釈室R7内に導かれ、ここで、前記第3通路T3から第7希釈室R7内に導入された酸化オフガスによって水素ガスが希釈される。前記第7希釈室R7内の希釈された水素ガスは前記希釈ガス排出管18から外部に排出される。
【0026】
上記実施形態の燃料電池の排出ガス希釈装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、前記希釈容器12の希釈空間15の内部に第1〜第6多孔質シート22A〜22Fを上下方向に所定の配設ピッチP1〜P7で収容し、前記区画板13c、第1〜第6多孔質シート22A〜22F及び希釈容器12の天板12gとの間に、第1〜第7希釈室R1〜R7を形成した。又、滞留室14から導入口13dを通して第1〜第7希釈室R1〜R7に燃料オフガスを順次導入して燃料オフガス、酸化オフガスの滞留時間を長くすることにより、水素ガスを他のガスと効率的に混合して希釈するようにした。このため、第1〜第7希釈室R1〜R7の内部において水素ガスを他のガスによって適正に希釈することができ、水素ガスの希釈効率を向上することができる。
【0027】
(2)上記実施形態では、図1に示すように、前記酸化オフガス導入管17の出口と対応する第5〜第7希釈室R5〜R7に、第1〜第3通路T1〜T3を形成した。このため、前記酸化オフガス導入管17から酸化オフガスが第4〜第7希釈室R4〜R7にスムーズに供給され、燃料オフガスと酸化オフガスの混合を適正に行うことができ、水素ガスの希釈効率を向上することができる。
【0028】
(3)上記実施形態では、希釈容器12の下部に補助容器13を設けて、燃料オフガス導入管16から滞留室14に燃料ガスを一旦導入して、ガスを拡散させて、減速・減圧し、導入口13dに導くようにした。このため、滞留室14内において、燃料オフガスを長時間滞留させて、水素ガスと窒素ガス等の他のガスとの混合を促進して水素ガスを適正に希釈することができる。
【0029】
(4)上記実施形態では、不織布よりなる不織布25を互いに平行に複数段に配設する構成をとっているので、希釈容器12内の容積を増加する必要がなく、省スペース化を図ることができるとともに、安価な不織布を用いるので、材料コストを低減することができる。
(変更例)
次に、本発明の別の実施形態を以下に順次説明する。
【0030】
・図4に示す実施形態は、前記第1〜第6多孔質シート22A〜22Fの各不織布25の目付を段階的に変化させている。即ち、第1多孔質シート22Aの不織布25の目付は小さく、下流側の第2〜第6多孔質シート22B〜22Fへ行くに従って、順次、不織布25の目付が段階的に大きくなるように設定されている。この実施形態においては、第1〜第7希釈室R1〜R7における水素ガスの希釈が段階的に向上するので、前述したように第1〜第6多孔質シート22A〜22Fの不織布25の目付を下流側ほど大きくして燃料オフガスの滞留時間を下流側ほど段階的に短くしても希釈が適正に行われる。
【0031】
・図示しないが、図1において、酸化オフガス導入管17を希釈容器12の側板12aの上下方向の中央部に接続してもよい。又、例えば前記第1〜第3希釈室R1〜R3と対応する側板12aに酸化オフガス導入口12bを形成するようにしてもよい。
【0032】
・前記不織布25に代えて、例えばステンレススチール、チタン或いはその他の金属よりなるパンチングメタルを用いてもよい。又、多孔質のセラミックスを用いてもよい。
・図示しないが、前記第1〜第6多孔質シート22A〜22Fの配設ピッチP1〜P7を、P1<P2<P3<P4<P5<P6<P7の関係に設定してもよい。
【0033】
・前記不織布の材料として、例えばカーボンファイバー等の加水分解しない合成樹脂を用いても良い。
・図示しないが、前記希釈容器12を、導入口13dから希釈ガス排出管18へ行くほど末広がりとなる形状にしてもよい。
【0034】
・図2に示すように、前記酸化オフガス導入口12b及び希釈ガス排出口12dを円形にしたが、これらを正方形にしてもよい。又、前記酸化オフガス導入口12bを前記第4〜第6希釈室R4〜R6の全域と対応するように横長四角形に変更してもよい。さらに、希釈ガス排出口12dを第7希釈室R7の全域と対応するように横長四角形に変更してもよい。
【0035】
・前記多孔質シートを二段、三段、四段、五段、あるいは七段以上に配設してもよい。
【符号の説明】
【0036】
P1〜P7…配設ピッチ、11…排出ガス希釈装置、12…希釈容器、12b…酸化オフガス導入口、12d…希釈ガス排出口、14…滞留室、22A〜22F…第1〜第6多孔質シート、25…不織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの希釈室を有する希釈容器に対し燃料電池の燃料極側の出口から排出される水素ガスを含む燃料オフガスを導入する燃料オフガス導入口を設けるとともに、燃料電池の酸化剤極側の出口から排出される酸化オフガスを導入する酸化オフガス導入口を設け、前記希釈室内で希釈された希釈ガスを外部に排出する希釈ガス排出口を設けた燃料電池の排出ガス希釈装置において、
前記希釈室内に複数枚の多孔質シートを、燃料オフガス導入口から希釈ガス排出口に向かって所定の間隔をおいて配設したことを特徴とする燃料電池の排出ガス希釈装置。
【請求項2】
請求項1において、前記多孔質シートは、不織布又はパンチングメタルにより形成されていることを特徴とする燃料電池の排出ガス希釈装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記各多孔質シートの配設ピッチは、等ピッチに設定され、各シートの細孔の平均径は、同径に設定されていることを特徴とする燃料電池の排出ガス希釈装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記各多孔質シートの配設ピッチは、等ピッチに設定され、各シートの細孔の平均径は、希釈室における燃料オフガスの流路の下流側のシートの細孔の平均径ほど、大きくなるように設定されていることを特徴とする燃料電池の排出ガス希釈装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記希釈容器の下部には燃料オフガスを滞留させる滞留室が区画形成されていることを特徴とする燃料電池の排出ガス希釈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−23190(P2011−23190A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166715(P2009−166715)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】