説明

燃料電池の燃料供給方法

【課題】負荷変動に適切に応じた燃料電池の燃料供給方法。
【解決手段】(a)特定量の燃料を燃料電池内に注入する。(b)負荷に対して燃料電池の電気的特性値を測定し、該燃電池の電気的特性値に基づき、監視制御時間を決定する。(c)該監視制御時間内に、随時負荷を測定し顕著な変化が無いかを判断する。(d)変化があった場合、負荷変化状況に基づき、ステップ(a)および(b)のうち1つの戻る選択をする。前記の方法を利用し、燃料電池動作中の負荷の変化を監視制御できる。前記の方法に基づき、本発明は、更に(e)変化がない場合、該監視制御時間内に該特定量の燃料が足りているか否かを判断し、燃料供給の時機を判断する。本発明の提供する方法を利用し、燃料濃度センサーの使用を不要とするだけでなく、更に、負荷の変化に従い、燃料電池の燃料の供給を制御し、燃料電池の性能を向上させ、燃料電池製作・使用上のコストを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の燃料供給方法に関し、特に、燃料電池の反応過程において、燃料電池が反応過程中の電気的特性値の変化を測定し、負荷の変化を判断し、燃料供給時期を制御し、燃料電池動作効率を向上する燃料電池の燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気化学反応を利用して化学エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する発電装置である。動作原理は、水素を含有する燃料と酸化剤(空気または酸素)をそれぞれ電池の陽極と陰極に伝送し、陽極が酸化反応により燃料を水素イオンおよび電子に解離し、水素イオンが陽極から陽子交換膜を介して陰極に至り、外部負荷回路の電導を経て陰極の電子に結合し、酸素と還元反応により水を生成する。連続して絶え間なく燃料を供給することにより、燃料電池は連続して発電が可能である。その高効率および低汚染の二つの大きな特長によって、この技術開発は爾来注目を浴びている。
【0003】
燃料電池のうち、ダイレクトメタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell,DMFC、以下DMFCと呼ぶ)は、各種携帯型端末(ノートパソコン、PDA、GPS)の電源供給に更に便利に応用することができ、各国で近年積極的に燃料電池システムを投入している。DMFCおよびその他の技術、例えばPEMFCの異なる点は、その燃料を液体メタノールにより水素に置き換えて燃料とし、大幅に燃料電池の保存、運送の便利性、安全性を向上させている。
【0004】
しかしながら、DMFCの燃料供給中、当業者であれば分かるように、過剰の燃料供給(メタノール等)が重度のメタノールクロスオーバー(methanol crossover)を起こし、陰極でメタノールが酸素と直接作用して、混成電位の現象を発生し、燃料電池の発電効率の低下の状況を招き、酷い場合には、負電圧現象を起こし、電池を損傷させる。また、燃料電池が供給する負荷に合わせる必要があるため、燃料供給量を如何に適量に制御するかが重要となっている。従来の技術において、燃料濃度センサーを利用するものがあり、例えば、燃料(メタノール)濃度センサーにより燃料(メタノール)濃度状態を検出して、燃料を供給する時期を判断する。或いは、電気化学的測定法によりエタノールセンサーとすることが開示されている。しかしながら、これらの方法は、幾つかの欠点があり、1つは、燃料電池システムの複雑度およびコストを増加させていることであり、もう1つは、電気化学方法がなす燃料センサーは、電極が劣化現象を有するので、測定の精度を維持するために該燃料濃度センサーには常に補正が必要であることである。また、物理的方法で検知するように作製された燃料濃度センサーは、測定値は温度の関数であり、測定データは常に温度の修正または補償が必要であるため精度の制御に影響し、制御の複雑度を増加させる。
【0005】
燃料濃度センサーを介在する方式によって、想定外にコストおよびシステムの複雑度が増加するので、如何にセンサーを使用することを避け、燃料供給を制御するかの方法が、徐々に趨勢となっている。米国特許第6698278号明細書が開示する技術は、燃料電池の電流、メタノール入出口の温度を測定することによって、メタノール燃料の濃度を判断する間接測定の方法であり、この種の方法は、フィルム電極セットの劣化の影響を受けるため限定される。また、米国特許第6991865号明細書は、燃料電池の短絡電流または開放電圧を測定して、燃料供給を判定する方法を開示している。しかしながら、この技術は周期的に燃料電池を開放または短絡する必要があり、燃料電池自身が容易に損傷し、電池の安定性および寿命に影響を及ぼす。
【特許文献1】米国特許第6698278号明細書
【特許文献2】米国特許第6991865号明細書
【特許文献3】特表2007−509470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、負荷の変化を測定して、燃料濃度と供給量を変化させ、燃料電池が負荷の変化に応じて、適切な電力を供給できるようにし、燃料電池の燃料使用効率を向上する目的を達成する燃料電池の燃料供給方法を提供することである。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、燃料電池の反応時の電気的特性値の変化を測定し、負荷が変化しているか否かを判断する目的を達成する燃料電池の燃料供給方法を提供することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、燃料電池の反応時の電気的特性値の変化を測定し、例えば、電圧、電流または電力であり、数値演算および比較を行い、燃料の供給量を制御し、燃料センサーの設置をせずに、コスト低減および燃料電池の最適な電力出力の制御の目的を達成する燃料電池の燃料供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する為、本発明の提供する燃料電池の燃料供給方法は、以下のステップを含む:(a)特定量の燃料を燃料電池内に注入する。(b)負荷に対して燃料電池の電気的特性値を測定し、該燃電池の電気的特性値に基づき、監視制御時間を決定する。(c)該監視制御時間内に、随時負荷を測定し顕著な変化が無いかを判断する。(d)変化があった場合、負荷変化状況に基づき、ステップ(a)および(b)のうち1つの戻る選択をする。
【0010】
好適には、該燃料電気的特性値は、燃料電池の電流、電圧、電力、およびその組み合わせのうちの1つであることができる。
【0011】
好適には、該負荷が変化を有するか否かを判断する方法が、該監視制御時間内に随時燃料電電池の電気的特性値を測定し、所定の閾値を超えているか否かにより判定する。該電気的特性値は、燃料電池の電流、電圧、電力およびその組み合わせのうち1つを選択することができる。
【0012】
好適には、該ステップ(d)は、更に以下のステップを含む:(d1)該負荷が増加する場合、ステップ(a)に戻る。(d2)該負荷が減少する場合、ステップ(b)に戻る。そのうち、該負荷の増加または減少を判断する方式は、該燃料電池の電気的特性値の変化が低い値から高い値或いは高い値から低い値に変化するかであり、その方式は、該燃料電池電気的特性値の変化曲線の変化率が正値または負値かで判断する。該燃料電池電気的特性値は、燃料電池の電流、電圧、電力およびその組み合わせのうちの1つであることができる。また、前後の時間点の電気的特性値の差異が正の値であるか負の値であるかで判断することもできる。上記の目的を達成するため、本発明の提供する燃料電池の燃料供給方法は、以下のステップを含む:(a)特定量の燃料を燃料電池内に注入する。(b)負荷に対して燃料電池の電気的特性値を測定し、該燃電池の電気的特性値に基づき、監視制御時間を決定する。(c)該監視制御時間内に、随時負荷を測定し顕著な変化が無いかを判断する。(d)変化があった場合、負荷変化状況に基づき、ステップ(a)および(b)のうち1つの戻る選択をする。(e)変化がない場合、該監視制御時間内に該特定量の燃料が足りているか否かを判断する。
【0013】
好適には、該ステップ(e)が更に、以下のステップを含む:(e1)該監視制御時間区間内に該燃料電池の第1電気的特性値を取得する。(e2)該監視制御時間に達したら該燃料電池の第2電気的特性値を取得する。(e3)該第2電気的特性値と該第1電気的特性値を比較し、該第2電気的特性値が該第1電気的特性値よりも小さい場合、ステップ(a)に戻り、該燃料電池内に燃料を注入する。(e4)該第2電気的特性値が該第1電気的特性値より大きい場合、監視制御時間区間後の時間点前に第3電気的特性値を測定する。(e5)該時間点で該燃料電池の第4電気的特性値を測定する。(e6)該燃料電池電気的特性値変化量が閾値を超えているか否かを判断し、該閾値を超えている場合、ステップ(d)へ戻る。(e7)該閾値を超えていない場合、該第3電気的特性値を該第4電気的特性値と比較し、該第4電気的特性値が該第3電気的特性値より小さい場合、ステップ(a)に戻って燃料を該燃料電池内に注入する。(e8)該第4電気的特性値が該第3電気的特性値より大きい場合、ステップ(e4)に戻る。
【0014】
そのうち、該第1電気的特性値は、該監視制御機関内に測定された電圧最小値、電流最小値、電力最小値およびその組み合わせの1つの最小値である。また、該第1電気的特性値は、該監視制御期間内の1つの時間区域で測定される該燃料電池の電気的特性値の移動平均値または該監視制御期間内の1つの時間区域に測定された該燃料電池の電気的特性値の二乗平均(root mean square = RMS)またはその他の数学方法で計算した統計値であり、第2電気的特性値と関係を形成することに用い、燃料電池の電気的特性値曲線の趨勢を判定することができる。
【0015】
該第3電気的特性値は、該時間点前の1つの時間区域で測定される該燃料電池の電気的特性値の移動平均値または二乗平均値または数学計算された統計値である。
【0016】
好適には、該ステップ(e)は更に下記のステップを含む:(e1)該監視制御時間点に達する時、該燃料電池の電気的特性値を計算した第1変化率を取得する。(e2)該第1変化率が負の値である場合、ステップ(a)に戻り、該燃料電池内に燃料を注入する。(e3)該第1変化率が正の値である場合、時間点で測定し、該燃料電池電気的特性値の第2変化率を判断する。(e4)該燃料電池電気的特性値の変化が該閾値を超えているか否かを判断し、該閾値を超えている場合、ステップ(d)に戻る。(e5)該閾値を超えていない場合、該第2変化率を判断し、第2変化率が負の値である場合、ステップ(a)に戻り、該燃料電池内に燃料を注入する。(e6)第2変化率が正である場合、該ステップ(e3)に戻る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燃料電池の燃料供給方法は、負荷の変化を測定して、燃料濃度と供給量を変化させ、燃料電池が負荷の変化に応じて、適切な電力を供給できるようにし、燃料電池の燃料使用効率を向上する目的を達成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1実施例の説明図である。該燃料電池の燃料供給方法は、以下のステップを含む:まず、ステップ10において特定量の燃料を燃料電池内に注入する。該燃料は、燃料電池に供給する水素燃料であり、燃料電池は例えば、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell , PEFC)である。該水素燃料は、メタノールまたはエタノールまたはボロハイドライド化合物である。このほか、該水素燃料は液体に限らず、例えば、陽子交換膜(Proton Exchange Membrane Fuel Cell, PEMFC)の水素気体でもよく、各種異なる燃料電池に供給する燃料はいずれも適用でき、本文ではダイレクトメタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell, DMFC)のメタノール供給を例とする。ステップ11において、負荷に対して燃料電池電気的特性値を測定し、該燃料電池電気的特性値に基づき監視制御時間を決定する。該燃料電池電気的特性値は燃料電池が出力する電圧、電流、電力およびその組み合わせのうち1つである。
【0019】
続いて、本発明の監視制御時間決定の方式を説明する。図2は、燃料電池が特定量の燃料を受信する時の極化曲線説明図である。該極化曲線図は、最良の条件での電圧と電流の関係図および電力と電流の関係曲線図である。図中、最良条件の下、該電力は、最大値Pmaxを有し、燃料電池の最短監視制御時間が、該特定量燃料を燃料電池に注入した後、負荷Imaxを最大電力Pmaxに維持する時間長さに用いる。
【0020】
したがって、図1のステップ11において、負荷に対して燃料電池電気的特性値を測定した後(該燃料電池電気的特性値は燃料電池が出力する電流を例とする)、該燃料電池電気的特性値および燃料電池の監視制御時間に基づき、調整を行う。例えば、実験から得られる燃料電池の最短監視制御時間が1分間であり、その出力最大電流が5アンペアであり、ステップ11で測定する燃料電池電気的特性値が1アンペアである場合、比例換算によって、ステップ11で決定する監視制御時間は5分間であることが得られる。
【0021】
図1に示すように、ステップ11の後、負荷が変化しているか否かを判断する。該負荷が変化しているか否かを判断する方法は、該監視制御時間内に該燃料電池電気的特性値の変化量が閾値を超えているか否かに基づき判定する。該電気的特性値は、燃料電池の電流、電圧、電力およびその組み合わせのうち1つを選択することができる。変化している場合、ステップ13を行い、負荷が増加しているか減少しているかを判断する。変化していない場合、ステップ14を行い、該監視制御時間内に該特定量の燃料が足りているか否かを判断する。
【0022】
続いて、図1のステップ11〜ステップ13がどのように判断するかを説明する。ステップ11〜ステップ13を説明するために、まず、燃料電池装置の構造を説明する。図3は、本発明の燃料電池説明図である。該燃料電池4は、基本的にメタノールおよび酸素(空気)を供給する管路と、水および二酸化炭素を排出する管路とを具える。燃料電池4の中間に陽極板41、陰極板40および陽子交換膜42を有する。陽極板41と陰極板40との間に負荷5を有し、該陽極板41、陰極板40および該負荷5にループを形成させる。該負荷5は、コンパレータ6に接続し、該コンパレータ6は、電圧計または電流計であって、本実施例中では、該コンパレータは電流計であり、したがって、該電流計は該負荷と直列する。また、該コンパレータ6が電圧計である時、並列に接続して負荷端の電圧を測定する。制御ユニット7がコンパレータ6が測定した信号を受信してシステム論理判断を行い、論理判断の結果に基づき、燃料供給ユニット8を制御し、燃料供給の動作を行う。
【0023】
ステップ12を行い、負荷が変化しているか否かを判断する時、該燃料電池の電気的特性値の変化が閾値を超えているか否かを測定する。図3、図4および図5に示すように、図4は、燃料電池反応過程で負荷が増加した電流変化説明図であり、図5は、燃料電池の反応過程で、負荷が減少した電流変化の説明図である。図4中、燃料はT0の時間点で注入され、この時、燃料電池が電気化学反応し、エネルギーを発生し、負荷5に電流を供給する。その後、制御ユニット7は、該燃料電池が出力した電気的特性値に基づき、本実施例中、燃料電池が出力する電流に基づき、監視制御時間Tmon1を決定する。続いて、制御ユニット7は、定期的に電流計が測定する電流に基づき、2つの時間点での変化を判断し、例えば、図4中の時間点T1時の測定点301が測定する電流I1と時間点T2の測定点302が測定する電流I2の差異変化の百分比ΔI/I1が閾値を超える場合、負荷が変化していると判断する。本実施例中、該閾値が20%であり、T1とT2は、通常間隔が1秒以下であり、更には、1μ秒以下であり、但しこれに限らず、使用者は、需要に基づき、閾値および時間間隔の大きさを設定でき、閾値の設定は、通常、アクティブな負荷変化の測定並びに適応に用い、同時に測定回路自身のノイズおよび誤差を識別してフィルターリングする。
【0024】
該閾値を超える場合、ステップ13を行う。ステップ13中、負荷が増加しているか減少しているかを判断し、そのうち、該負荷が増加しているか減少しているかの判断は、該燃料電池電気的特性値の変化が低い値から高い値へ変わっているか否かで判断する。その方式は、該電気的特性値変化の変化率が正の値であるか負の値であるかにより判断する。図4を例とし、図中、I2がI1より大きいので、時間点T2の時、ステップ10を行い、特定量の燃料を該燃料電池内に注入し、その後、後続のステップを継続し、新たな監視制御時間Tmon2を発生する。反対に、図5に示すように、測定点402の電流I2と測定点401の電流I1との間の差異変化の百分比が閾値を超えているが、電流I2が電流I1より小さく、負荷が減少し、既に燃料が足りているので、時間点T2の時、燃料を注入せず、ステップ11を行い、測定した電流の大きさに基づき、新たに監視制御時間をたて、その長さをTmon2’とする。
【0025】
図6は、本発明の燃料電池の燃料供給方法の第2実施例のフロー説明図である。燃料電池の燃料供給方法は、以下のステップを含む:まず、ステップ201を行い、特定量の燃料を燃料電池内に注入する。該燃料は、水素燃料である。該水素燃料は、メタノールまたはエタノールまたはボロハイドライド化合物である。また、該水素燃料は、液体に限らず、例えば、水素気体であってもよい。該燃料電池の構造は、図3に示すとおりであるからその細部の説明は前記の通りであり、ここで再度記載しない。
【0026】
図7は、燃料電池の反応過程中の時間に対する電流変化の説明図である。図7中、電気的特性値は、電流により代表される。その後、ステップ202を行い、負荷に対して燃料電池電気的特性値を測定し、該燃料電池電気的特性値に基づき、監視制御時間Tmon1を決定する。続いて、該監視制御時間Tmon1内に燃料電池の電気的特性値の変化量の百分比が閾値を超えているか否かを判断する。該電気的特性値は、電流、電圧、電力のうち1つまたは三者の任意の組み合わせのうち、1つであることができる。該監視制御時間Tmon1の決定方式は、前記の通りであり、ここに詳細を記載しない。
【0027】
ステップ203中の閾値が20%であり、前後の電気的特性値の差異が20%(変化量百分比)を超える場合、ステップ203を満足するとみなす。閾値の大きさは、状況および経験に基づき決定でき、本実施例中の20%に限らない。図7を例とすると、時間点T2の測定点502の電流I2は、時間点T1の測定点501の電流I1を超え、且つ差異量がI1の20%を超えるので、ステップ204を行い、電気的特性値の変化が低い値から高い値に変わっているか否かを判断する。ステップ204の判断の方式は、測定点501の電流I1のおよび測定点502の電流I2の差異が正の値であるか、負の値であるかに基づくか、または測定点501と測定点502の間の変化率が正の値であるか負の値であるかにより判断を行うことができる。測定点501と測定点502の時間間隔(T2-T1)は、実際の負荷の随時時間変動する状況に基づき決定することができる。
【0028】
図7中、電流I2が電流I1より大きいので、ステップ201に戻り、時間点T2で新たに特定量の燃料を注入し、その後、ステップ202で新たな監視制御時間Tmon2を決定する。監視制御時間Tmon2の過程中、ステップ203を満足しないので、消費しきれない燃料が十分であるか否かを判断するプロセスを行う。
【0029】
燃料が足りているか否かを判断するプロセスは、まず、ステップ205により、該監視制御時間Tmon2内に燃料電池の第1電気的特性値を取得する。該第1電気的特性値は、該監視制御時間内に測定される電流最小値、電圧最小値、電力最小値およびその組み合わせのうち、1つの最小値であることができる。本実施例は、電流により判断を行うが、電力を用いて判断してもよく、電力電気的特性値は電圧電気的特性値、電流電気的特性値の組み合わせである。図8は、燃料電池反応過程中の電力変化の説明図である。通常、燃料電池の作動がある特定時間内に固定抵抗、固定電圧または固定電流等の三種の固定負荷状況の1つであることができ、例えば、燃料電池の適用対象がノートブックコンピュータの電源供給であれば、固定抵抗とすることができるので、電力と電圧曲線は基本的に図7の電流曲線と一致し、図8に示すように、その値は、2つの電気的特性値の積であり、制御解析度および精度を向上させる効果を有する。しかし、実際の応用において、固定抵抗または固定電圧の状況に限定しない。図7の実施例中、第1電気的特性値は電流最小値であり、測定点503の電流I3のである。このほか、該第1電気的特性値は、該監視制御期間内の時間区間に測定される該燃料電位電気的特性値の移動平均値または該監視制御期間内の1つの時間区間に得られる電朗電池電気的特性値の二乗平均(Root Mean Square,RMS)または、相関する数学的方法で計算される統計値であることができ、多種の定義を有することができる。
【0030】
続いて、ステップ206を行い、該監視制御時間に達する時、該燃料電池の第2電気的特性値を取得する。該第2電気的特性値は、電圧、電流または電力およびその組み合わせのうち1つであり、図7の実施例では電力であり、測定点504の電流I4でもある。その後、ステップ207を実行し、該第2電気的特性値が該第1電気的特性値より小さいか否かを判断する。該第2電気的特性値が該第1電気的特性値より小さい場合、燃料が既に尽きている或いは、尽きそうであることを意味し、ステップ201に戻り、新たに燃料を注入する。反対に、該第2電気的特性値が該第1電気的特性値よりも大きい場合、燃料が消費し終えていないことを意味する。図7で説明するように、測定点503の電流I3は、測定点504の電流I4より小さいので、また、残り多くの燃料が消費し終わっていないことを意味する。
【0031】
燃料が不足する状況の下、ステップ208を継続して行い、1つの時間点506前に第3電気的特性値を測定する。図7中、該第3電気的特性値が測定点505の電流I5である。その後、ステップ209を行い、該時間点で該燃料電池の第4電気的特性値を取得する。該第4電気的特性値が図7中では、測定点506の電流I6である。続いて、ステップ210を行い、該燃料電池の電気的特性値の変化量が閾値を超えているか否か判断し、閾値設定の法則は前記の通りであり、本ステップの閾値は20%であり、このステップ中、図7で、この時間点の電流変化が閾値を超えていないかどうかを判断する。図7は、閾値を超えていない状況である。この時、ステップ11に戻り、第4電気的特性値が該第3電気的特性値より小さいか否かを判断する。図7中、電流I6は電流I5より小さく、ステップ211の条件を満足するので、ステップ201に戻り、特定量の燃料を該燃料電池内に注入し、その後、後続のステップを続行する。反対に、第4電気的特性値が、第3電気的特性値より大きい場合、燃料が残っていることを意味するので、ステップ208に戻り、第3電気的特性値および第4電気的特性値の取得を持続し、燃料が尽きているか否かを監視制御する。測定点505と測定点506の時間間隔は要求に合わせて決めることができ、本実施例では、1秒であるが、これに限定しない。
【0032】
図6および図7に示すように、時間点T6で燃料を注入した後、監視制御時間Tmon3を決定する。該監視制御時間Tmon3内で、同様にステップ203を続行し、燃料電池の電気的特性値変化量が閾値を超えているか否かを判断する。図7中の監視制御時間Tmon3内の測定点507および測定点508の間で発生する電気的特性値の変化量が閾値を超える状況なので、ステップ204を行い、電気的特性値が低い値から高い値に変わっているか否かを判断する。監視制御時間Tmon3の電流I8がI7より小さく、負荷が小さくなっていることを意味するので、ステップ202を行い、負荷の変化に基づき、新たな監視制御時間Tmon4を決定し、その後、後続のステップを行う。このような反復運行で、燃料の供給を随時調整し、燃料電池の動作を維持する。
【0033】
図9は、本発明の燃料電池の燃料供給方法の第3実施例のフロー説明図である。本実施例中、ステップ20〜ステップ28からなり、その大部分のステップは、前記第2実施例と同一であり、異なる箇所は、本実施例のステップ24および26が変化率の正負を利用し、燃料の補充が必要かどうかを判断する。ステップ24中、該監視制御時間に達する時、該燃料電池の電気的特性値の第1変化率を取得計算し、その後、ステップ25を行い、第1変化率が正であるか否かを判断する。該第1変化率が負の値である時、ステップ20に戻り、燃料を該燃料電池内に注入する。反対に、該第1変化率が正の値である場合、ステップ26を行い、時間点で該燃料電池電気的特性値の第2変化率を測定、判断する。その後、ステップ27を行い、燃料電池電気的特性値が閾値を超えているを超えているか否かを判断し、ステップ27は、ステップ22に類似し、変化率が閾値を超えていれば、ステップ23に戻る。反対に、該閾値を超えていない場合、ステップ28を行い、ステップ26で測定された第2変化率が正であるか否かを判断し、第2変化率が負の値であれば、ステップ20に戻り、燃料を該燃料電池内に注入し、第2変化率が正であれば、該ステップ26に戻る。
【0034】
図10は、本発明の第2実施例の方法を利用し、燃料電池から得られる電力出力および負荷の変化関係曲線図であり、それは、25Wを定格出力としてダイレクトメタノール燃料電池システムが電力エネルギーをノートブックコンピュータに供給した実際の測定実験結果図である。そのうち、図10の曲線900は、負荷を介した電流の変化を表し、負荷の変化に置換し、負荷が3Aより高い時は、ノートブックコンピュータ開放時のエネルギー消耗状況であり、負荷が0.8Aより低い時は、ノートブックコンピュータがオフ時のエネルギー消耗状況であり、ダイレクトメタノール燃料電池が自身のBOPシステムの動作を維持する必要がある。区域901内の曲線は、燃料電池が出力する電力の負荷に伴う変化の曲線を表す。図から分かるように、本発明の方法により、燃料電池の電力出力は確実に、負荷の変化の大きさに従い、メタノール燃料の供給量を調整して、安定した電力出力を達成し、且つノートブックコンピュータのオンオフの変動、負荷切り換えから、本方法は、システムの最小要求を満足するだけではなく、更に、最適な最大の電力出力点を自動的に探し出すことができる。
【0035】
なお、本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない均等の範囲内で各種の変動や潤色を加えることができることは勿論である。例えば、図6中のステップ201で特定量の燃料を注入し、該特定量は前記実施例では固定の燃料量であり、ステップ202中の監視制御時間は、負荷の状況によって異なる時間の長さを有する。しかしながら、実際に実施時、前記の方式以外に、ステップ201中、注入する燃料量を変化させることもでき、その後、固定の監視制御時間で実施することもできる。即ち、燃料電池供給電力の総エネルギーが燃料注入量と監視制御時間の関数であるので、燃料注入量を固定し、その後監視制御時間を変動させるか、燃料注入量を変動させ、監視制御時間を固定するかを問わず、本発明の実施方式である。
【0036】
なお、本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない均等の範囲内で各種の変動や潤色を加えることができることは勿論である。例えば、燃料電池システム中、燃料電池がオンまたはオフ時、システムの負荷は負荷変動する状況であり、また、燃料電池システムがオンされた後の正常動作の下、充電器で充電すれば、固定負荷の状況をみなすことができる。したがって、本発明の方法を介して、上記のアクティブな負荷および固定負荷を組み合わせた状況に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の燃料電池の燃料供給方法の第1実施例のフロー説明図である。
【図2】燃料電池の最良条件時の極化曲線説明図である。
【図3】燃料電池システムの説明図である。
【図4】燃料電池の反応過程で負荷が増加した電流変化説明図である。
【図5】燃料電位の反応過程で負荷が減少した電流変化説明図である。
【図6】本発明の燃料電池の燃料供給方法の第2実施例のフロー説明図である。
【図7】燃料電池の反応過程中の時間に対する電流変化の説明図である。
【図8】燃料電池の反応過程中の時間に対する電力変化の説明図である。
【図9】本発明の燃料電池の燃料供給方法の第3実施例のフロー説明図である。
【図10】本発明の第2実施例の方法を利用した燃料電池が得る電力出力と負荷変化の関係曲線図である。
【符号の説明】
【0038】
1 燃料電池の燃料供給方法
10〜14 ステップ
2 燃料電池の燃料供給方法
201〜211 ステップ
20〜28 ステップ
301,302 測定点
401,402 測定点
501〜508 測定点
4 燃料電池
40 陰極
41 陽極
42 陽子交換膜
5 負荷
6 コンパレータ
7 制御ユニット
8 燃料供給ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
(a)特定量の燃料を燃料電池内に注入し、
(b)負荷に対して燃料電池の電気的特性値を測定し、該燃電池の電気的特性値に基づき、監視制御時間を決定し、
(c)該監視制御時間内に、随時負荷を測定して予め設定した値を超える変化が無いかを判断し、
(d)変化があった場合、負荷変化状況に基づき、ステップ(a)および(b)のうち1つの戻る選択をする、
ことを特徴とする燃料電池の燃料供給方法。
【請求項2】
以下のステップ:
(a)特定量の燃料を燃料電池内に注入し、
(b)負荷に対して燃料電池の電気的特性値を測定し、該燃電池の電気的特性値に基づき、監視制御時間を決定し、
(c)該監視制御時間内に、随時負荷を測定して予め設定した値を超える変化が無いかを判断し、
(d)変化があった場合、負荷変化状況に基づき、ステップ(a)および(b)のうち1つの戻る選択をし、
(e)変化がない場合、該監視制御時間内に該特定量の燃料が足りているか否かを判断する、
ことを特徴とする燃料電池の燃料供給方法。
【請求項3】
前記燃料電池電気的特性値が、燃料電池の電流、電圧、電力又はその組み合わせのうちの1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項4】
前記負荷が変化しているか否かを判断する方法が、該監視制御時間内に該燃料電池電気的特性値変化量が閾値を超えているか否かで判断し、該燃料電池電気的特性値が、燃料電池の電流、電圧、電力又はその組み合わせのうち1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項5】
前記ステップ(d)は、更に以下のステップ:
(d1)該負荷が増加する場合、ステップ(a)に戻り、
(d2)該負荷が減少する場合、ステップ(b)に戻る、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項6】
前記負荷が増加または減少する方式が該燃料電池電気的特性値の変化が低い値から高い値に変わっているか否かを判断することを特徴とする請求項5記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項7】
前記電気的特性値の変化が低い値から高い値に変わっているか否かを判断する方式が、該燃料電池電気的特性値曲線の変化率が正の値であるか負の値であるかで判断することを特徴とする請求項5記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項8】
前記電気的特性値の変化が低い値から高い値に変わっているか否かを判断する方式が、該燃料電池電気的特性値の前後時間点の差異が正の値であるか負の値であるかで判断することを特徴とする請求項5記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項9】
前記ステップ(e)が更に、以下のステップ:
(e1)該監視制御時間区間内に該燃料電池の第1電気的特性値を取得し、
(e2)該監視制御時間に達したら該燃料電池の第2電気的特性値を取得し、
(e3)該第2電気的特性値と該第1電気的特性値を比較し、該第2電気的特性値が該第1電気的特性値よりも小さい場合、ステップ(a)に戻り、該燃料電池内に燃料を注入する、
ことを特徴とする請求項2記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項10】
前記第1電気的特性値が該監視制御時間内に測定される電圧最小値、電流最小値、および電力最小値又はその組み合わせのうち1つであるか、該第1電気的特性値が該監視制御期間内の1つの時間区間に測定される該燃料電池電気的特性値の移動平均値または二乗平均値(Root mean square,RMS)である請求項9記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項11】
前記ステップが更に、以下のステップ:
(e4)該第2電気的特性値が該第1電気的特性値より大きい場合、監視制御時間区間後の時間点前に第3電気的特性値を測定し、
(e5)該時間点で該燃料電池の第4電気的特性値を測定し、
(e6)該燃料電池電気的特性値変化量が閾値を超えているか否かを判断し、該閾値を超えている場合、ステップ(d)へ戻り、
(e7)該閾値を超えていない場合、該第3電気的特性値を該第4電気的特性値と比較し、該第4電気的特性値が該第3電気的特性値より小さい場合、ステップ(a)に戻って燃料を該燃料電池内に注入し、(e8)該第4電気的特性値が該第3電気的特性値より大きい場合、ステップ(e4)に戻る、
ことを特徴とする請求項9記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項12】
前記第3電気的特性値が該時間点前の1つの時間区間に得られる該燃料電池電気的特性値の移動平均値または二乗平均値であるか、または該時間点前の1つの時間区間に得られる該燃料電池電気的特性値の最小値である請求項11記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項13】
前記ステップが更に、以下のステップ:
(e1)該監視制御時間点に達する時、該燃料電池の電気的特性値を計算した第1変化率を取得し、
(e2)該第1変化率が負の値である場合、ステップ(a)に戻り、該燃料電池内に燃料を注入し、
(e3)該第1変化率が正の値である場合、時間点で測定し、該燃料電池電気的特性値の第2変化率を判断し、
(e4)該燃料電池電気的特性値の変化が該閾値を超えているか否かを判断し、該閾値を超えている場合、ステップ(d)に戻り、
(e5)該閾値を超えていない場合、該第2変化率を判断し、第2変化率が負の値である場合、ステップ(a)に戻り、該燃料電池内に燃料を注入し、
(e6)第2変化率が正である場合、該ステップ(e3)に戻る、
ことを特徴とする請求項12記載の燃料電池の電力供給方法。
【請求項14】
前記燃料が水素燃料であり、該水素燃料が水素気体、メタノール、エタノールまたはボロハイドライド化合物である請求項10記載の燃料電池の電力供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−32634(P2009−32634A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233548(P2007−233548)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(599171866)行政院原子能委員會核能研究所 (37)
【Fターム(参考)】