説明

燃料電池システム及びその停止方法

【課題】簡易な構成によりシステムの停止時にアノード極に不活性ガスを供給できる燃料電池システム及びその停止方法を提供すること。
【解決手段】燃料電池システムは、水素供給管と、エア排出管と、これら水素供給管とエア排出管とを接続するN2貯蔵部と、を備える。この燃料電池システムの停止方法は、システムの停止指令後、アノード極への新たな燃料ガスの供給及びアノード極からの排出ガスのシステム外への排出を遮断する停止後遮断工程(S1〜S2)と、ガスの供給及び排出が遮断された状態でスタックによる発電を継続する発電継続工程(S3〜S12)と、この発電継続工程中にエア排出管に排出されたガスを排出ガス貯蔵部に貯蔵するN2貯蔵工程(S8〜S10)と、発電継続工程後に排出ガス貯蔵部内に貯蔵された不活性ガスを水素供給管内に導入するN2導入工程(S13〜S17)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及びその停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池のアノード極に含水素の燃料ガスを供給しカソード極に含酸素の酸化剤ガスを供給することで当該燃料電池により発電させる燃料電池システムにおいて、システムの運転停止時には、アノード極に酸化剤ガスを供給することにより残留水素をシステム外に排出(掃気)する技術が提案されている(特許文献1参照)。これは、システムの運転停止中に、カソード極側からアノード極側へ透過した酸素とアノード極側に残留する水素とが混在しラジカルが発生することにより、燃料電池の電解質膜が劣化するのを防止するためである。
【0003】
ところで、特許文献1のようにアノード極を酸化剤ガスで掃気すると、運転停止中は、アノード極及びカソード極の両極ともに含酸素の酸化剤ガスが充填された状態となり、酸素と水素が混在することはなくなるが、近年ではこのような両極ともに酸化剤ガスで満たされた状態からシステムを起動すると、高電位が発生し、電解質膜の劣化が進行してしまうことが明らかになっている。
【0004】
そこで特許文献2には、システムの運転停止時には、アノード極に酸化剤ガスの代わりに窒素(不活性)ガスで残留水素を排出することにより、両極が酸化剤ガスで満たされた状態からシステムが再起動されるのを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−331893号公報
【特許文献2】特開2008−78140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術では、酸化剤ガスを酸素吸着剤に通過させ、酸化剤ガスから酸素を取り除くことによって上記窒素ガスを精製している。したがって、酸素吸着剤を搭載する分だけシステムが大型化したりコストが上昇したりすることに加え、酸素吸着能を回復させるために適切な時期に酸素吸着剤を再生するのに手間がかかるなどの課題がある。また、このように窒素ガスを車両上で精製する代わりに、予め精製しておいた窒素ガスをボンベに貯蔵しておき、システムを停止する度にこれを利用することも考えられるが、この場合もシステムの大型化やコストの上昇などの課題を十分に解決するには至らない。
【0007】
本発明は、簡易な構成によりシステムの停止時にアノード極に不活性ガスを供給できる燃料電池システム及びその停止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、アノード極に燃料ガスを、カソード極に酸化剤ガスを供給することで発電する燃料電池(例えば、後述の燃料電池スタック10)と、前記アノード極に供給される燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路(例えば、後述の水素供給管22)と、前記カソード極に供給される酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路(例えば、後述のエア供給管32)と、前記アノード極からの排出ガスが通流する燃料ガス排出流路(例えば、後述の水素還流管23)と、前記カソード極からの排出ガスが通流する酸化剤ガス排出流路(例えば、後述のエア排出管33)と、前記酸化剤ガス排出流路と前記燃料ガス供給流路とを接続する排出ガス貯蔵部(例えば、後述のN2貯蔵部51)と、前記燃料ガス供給流路に設けられ、前記アノード極への新たな燃料ガスの供給を遮断する供給遮断弁(例えば、後述の水素遮断弁24)と、前記燃料ガス排出流路に設けられ、前記アノード極からの排出ガスのシステム外への排出を遮断する排出遮断弁(例えば、後述の水素パージ弁28、ドレン弁29)と、燃料電池システムの停止指令後、前記供給遮断弁及び前記排出遮断弁によりガスの供給及び排出をともに遮断する停止後遮断手段(例えば、後述のECU60及び図2のS1からS2の実行に係る手段)と、前記停止後遮断手段によりガスの供給及び排出が遮断された状態で燃料電池による発電を継続する発電継続手段(例えば、後述のECU60及びS3からS12の実行に係る手段)と、前記発電継続手段により発電を継続している間に前記酸化剤ガス排出流路に排出されたガスを、前記発電継続手段による発電が終了した後に、前記排出ガス貯蔵部を介して前記燃料ガス供給流路内に導入する排出ガス導入手段(例えば、後述のECU60及び図2のS4からS17の実行に係る手段)と、を備える燃料電池システム(例えば、後述の燃料電池システム1,1A)を提供する。
【0009】
本発明では、システムの停止指令後、燃料ガスの供給及び排出を遮断した状態で燃料電池による発電を継続する。このように発電を継続することにより、アノード極側では水素濃度の低下とともに圧力も低下し、カソード極側では窒素濃度の高いガスが酸化剤ガス排出流路へ排出される。さらに本発明では、発電を継続している間に酸化剤ガス排出流路に排出されたガスを、酸化剤ガス排出流路と燃料ガス供給流路とを接続する排出ガス貯蔵部を介して、上記発電の終了後であり負圧となっている燃料ガス供給流路へ導入する。これにより、アノード極を水素濃度及び酸素濃度が低く窒素濃度の高い不活性ガスで満たし、かつ燃料ガス供給流路及び燃料ガス排出流路を封止した状態でシステムを停止させることができるため、システム停止中にアノード極内の水素と酸素が混在することによる劣化や、両極が酸化剤ガスで満たされた状態でシステムを再起動することによる劣化を防止することができる。
また、アノード極を満たす不活性ガスは、酸化剤ガス排出流路から負圧を利用して導入したものであるため、カソード極もアノード極と同じ不活性ガスで満たした状態でシステムを停止させることができる。このように、アノード極のみならずカソード極も不活性ガスで満たした状態では、残留ガスによる反応が殆ど進行することがなく、電解質膜の劣化を抑制するのに特に効果的であることが検証されている。
なお、システム停止後、一旦カソード極側に満たされていた不活性ガスは徐々にシステム外に排出され、最終的には酸素濃度の高い酸化剤ガスで置換されることとなる。しかしながらこのような場合であっても、カソード極側の不活性ガスが酸化剤ガスで置換されるまでの間は、上述のように特に効果的に劣化が抑制された状態が維持されることは言うまでもないが、不活性ガスが酸化剤ガスで置換された後も、アノード極側が不活性ガスで満たされた状態が維持されている限り、劣化を抑制する効果が損なわれることはない。
以上のように本発明によれば、停止指令後に発電を継続している間にカソード極から排出されたガスを不活性ガスとして流用するので、不活性ガスを生成するための装置を新たに設ける必要がない。特に、燃料ガスの供給及び排出を遮断し、かつ極低流量の酸化剤ガスの供給のもとでの発電時における燃料電池から酸化剤ガス排出流路へ排出されるガスの酸素濃度は、通常発電時と比較して十分に低く不活性ガスとして適格であることが検証されている。また、停止のために必要な量の不活性ガスは、発電を継続することで排出されたガスをその都度流用すればよいため、排出ガス貯蔵部の容積は、1回の停止に必要な量に相当する大きさを確保できればよいので、上述のような窒素ボンベと比較して小型化に対する効果も大きい。
また、アノード極側の供給及び排出を遮断した状態で発電を継続することにより、継続発電の終了時におけるアノード極の圧力はカソード極側よりも十分に低くなっている。したがって、排出ガス貯蔵部を介して上記不活性ガスを導入する際には、この負圧を利用できるので、アノード極側の圧力に抗して排出ガス貯蔵部のガスを供給するためのポンプなどの装置も特別に必要となることはない。
【0010】
この場合、前記燃料電池システムは、前記排出ガス貯蔵部から分岐し、システム外へ連通する排出ガスパージ流路(例えば、後述のN2パージ管52)と、前記排出ガス貯蔵部内のガスの酸素濃度が所定値以上であるか否かを判定する酸素濃度判定手段(例えば、後述のECU60及び図2のS7の実行に係る手段)と、をさらに備え、前記排出ガス導入手段は、前記酸素濃度が所定濃度以下であると判定されるまでは、前記排出ガスパージ流路を介して前記排出ガス貯蔵部内のガスを、前記酸化剤ガス排出流路から導入されたガスとともにシステム外へ排出することが好ましい。
【0011】
本発明では、排出ガス貯蔵部を介して不活性ガスをアノード極側に導入する際、排出ガス貯蔵部内のガスの酸素濃度が所定濃度以下であると判定されるまで、当該排出ガス貯蔵部内に残留していたガスを、酸化剤ガス排出流路から導入されたガスとともに排出ガスパージ流路を介してシステム外に排出する。これにより、排出ガス貯蔵部内には酸素濃度が十分に低い不活性ガスのみが貯蔵されるようにし、アノード極側に酸素が導入されないようにできる。
【0012】
この場合、前記燃料電池システムは、前記排出ガス貯蔵部と前記燃料ガス供給流路とを接続する流路に設けられたアノード掃気弁(例えば、後述のアノード掃気弁54)をさらに備え、前記排出ガス導入手段は、前記アノード掃気弁を閉じた状態で前記排出ガス貯蔵部内に排出ガスを充填し、所定の条件が満たされたことに応じて前記アノード掃気弁を開き当該排出ガス貯蔵部内のガスを前記燃料ガス供給流路内に導入することが好ましい。
【0013】
本発明では、アノード掃気弁を閉じた状態で不活性ガスを排出ガス貯蔵部に充填しておき、所定の条件が満たされたことに応じてアノード掃気弁を開き、排出ガス貯蔵部内の不活性ガスを燃料ガス供給流路内に導入する。このように、燃料ガス供給流路内にガスを導入するまで、アノード掃気弁を閉じ、燃料ガス供給流路と排出ガス貯蔵部とを遮断した状態にすることにより、アノード掃気弁を開くまでに燃料ガス供給流路内と排出ガス貯蔵部との間に圧力差を生じさせることができるので、新たな装置を用いることなく短時間で不活性ガスを導入することができる。
【0014】
この場合、前記停止後遮断手段は、燃料電池システムの停止指令が入力に応じて前記排出遮断弁により前記アノード極からの排出ガスのシステム外への排出を遮断した後、前記燃料ガス供給流路内の圧力が所定の圧力(例えば、後述のディスチャージ必要圧)より高くなってから、前記供給遮断弁により前記アノード極への新たな燃料ガスの供給を遮断することが好ましい。
【0015】
本発明では、システムの停止指令後、燃料ガス供給流路内の圧力が所定の圧力より高くなってからアノード極への新たな燃料ガスの供給を停止する。上述のように、発電を継続するとアノード極側の圧力が徐々に低下するところ、新たな燃料ガスの供給を遮断する際に十分な圧力を確保しておくことにより、発電の終了時におけるアノード極内の圧力が、燃料電池が損傷する程度にまで低下するのを防止できる。
【0016】
この場合、前記燃料電池システムは、前記酸化剤ガス排出流路内のガスを圧縮して前記排出ガス貯蔵部に供給する圧縮機(例えば、後述の圧縮機56A)をさらに備えることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、圧縮機を用いて酸化剤ガス排出流路内のガスを排出ガス貯蔵部内に充填することにより、アノード極側に導入するための十分な量の不活性ガスを排出ガス貯蔵部内に貯蔵しておくことができる。また、このような圧縮機を用いることにより、排出ガス貯蔵部の容積を小さくすることもできる。
【0018】
上記目的を達成するため本発明は、アノード極に燃料ガスを、カソード極に酸化剤ガスを供給することで発電する燃料電池と、前記アノード極に供給される燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、前記カソード極からの排出ガスが通流する酸化剤ガス排出流路と、前記酸化剤ガス排出流路と前記燃料ガス供給流路とを接続する排出ガス貯蔵部と、を備えた燃料電池システムを対象とし、燃料電池システムの停止指令後、前記アノード極への新たな燃料ガスの供給及び前記アノード極からの排出ガスのシステム外への排出を遮断する停止後遮断工程(例えば、後述の図2のS1及びS2)と、前記停止後遮断工程によりガスの供給及び排出が遮断された状態で燃料電池による発電を継続する発電継続工程(例えば、後述の図2のS3からS12)と、当該発電継続工程中に前記酸化剤ガス排出流路に排出されたガスを排出ガス貯蔵部に貯蔵する排出ガス貯蔵工程(例えば、後述のS5からS10)と、前記発電継続工程後に前記排出ガス貯蔵部内に貯蔵されたガスを前記燃料ガス供給流路内に導入する排出ガス導入工程(例えば、後述のS13からS17)と、を備える停止方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、システムの停止指令後、発電を継続している間に酸化剤ガス排出流路に排出されたガスを不活性ガスとして排出ガス貯蔵部に貯蔵しておき、この不活性ガスを、発電の終了後であり負圧となっている燃料ガス供給流路へ導入する。これにより、システム停止中にアノード極内の水素と酸素が混在することによる劣化や、両極が酸化剤ガスで満たされた状態でシステムを再起動することによる劣化を防止することができる。
本発明によれば、不活性ガスを生成するための装置を新たに設ける必要がなく、また上述のような窒素ボンベと比較して小型化に対する効果も大きい。さらに、本発明によれば、負圧を利用して不活性ガスを導入できるので、アノード極側の圧力に抗して排出ガス貯蔵部のガスを供給するためのポンプなどの装置も特別に必要となることはない。
【0020】
この場合、前記停止後遮断工程は、前記燃料ガス供給流路内の圧力が所定の圧力まで高くなった場合に、前記供給及び排出を遮断することが好ましい。
【0021】
本発明によれば、発電を継続するとアノード極側の圧力が徐々に低下するところ、新たな燃料ガスの供給を遮断する際に十分な圧力を確保しておくことにより、発電の終了時におけるアノード極内の圧力が、燃料電池が損傷する程度にまで低下するのを防止できる。
【0022】
この場合、前記発電継続工程を開始してから前記排出ガス貯蔵工程を開始するまでの間に、前記酸化剤ガス排出流路に排出されたガスをシステム外に排出する排出工程(例えば、後述の図2のS3からS4)をさらに備えることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、酸化剤ガス排出流路内のガスの窒素濃度が比較的低いと考えられる発電継続工程の開始直後は、酸化剤ガス排出流路内のガスを排出ガス貯蔵部に貯蔵せずにシステム外へ排出することにより、排出ガス貯蔵部には窒素濃度の高い不活性ガスを貯蔵できる。
【0024】
この場合、前記排出ガス導入工程は、前記アノード極の圧力がカソード極の圧力とほぼ等しくなったことに応じて前記排出ガス貯蔵部内のガスの導入を停止することが好ましい。
【0025】
本発明によれば、アノード極の圧力とカソード極の圧力とがほぼ等しくなるまで排出ガス貯蔵部内の不活性ガスを導入することにより、システムの停止中に、燃料電池内の電解質膜に差圧が生じ、負担がかかることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】上記実施形態に係る燃料電池システムの停止処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】上記停止処理のタイムチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1の構成を模式的に示すブロック図である。
燃料電池システム1は、燃料電池スタック10と、この燃料電池スタック10に水素ガスを供給する水素供給装置20と、エアを供給するエア供給装置30と、エア供給装置30と水素供給装置20とを接続するN2貯蔵装置50と、燃料電池スタック10から排出されたガスを希釈してシステム外に排出する希釈器40と、水素供給装置20、エア供給装置30及びN2貯蔵装置50を制御する電子制御ユニット(以下、「ECU」という)60と、を含んで構成される。この燃料電池システム1は、燃料電池スタック10で発電した電力を利用してモータを駆動し、走行する燃料電池車両(図示せず)に搭載される。
【0028】
燃料電池スタック(以下、単に「スタック」という)10は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。各燃料電池セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、アノード極(陰極)及びカソード極(陽極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。通常、両電極は、固体高分子電解質膜に接して酸化・還元反応を行う触媒層と、この触媒層に接するガス拡散層とから形成される。このスタック10は、アノード電極側に形成されたアノード流路に燃料ガスとしての水素ガスが供給され、カソード電極側に形成されたカソード流路に酸化剤ガスとしてのエアが供給されると、これらの電気化学反応により発電する。
【0029】
水素供給装置20は、水素ガスを貯蔵する水素タンク21と、スタック10のアノード流路に供給される水素ガスが通流する水素供給管22と、アノード流路からの排出ガスが通流する水素還流管23と、を備える。水素供給管22には、水素タンク21側からスタック10側へ向かって順に、水素遮断弁24及びエゼクタ25が設けられている。水素遮断弁24は、水素タンク21からスタック10への新たな水素ガスの供給を遮断する。エゼクタ25は、アノード流路から水素還流管23に排出された含水素ガスを回収し、水素タンク21から供給された水素ガスとともに水素供給管22に還流する。すなわち、水素供給管22のうち水素遮断弁24からスタック側と、スタック10のアノード流路と、水素還流管23とにより、含水素ガスが循環する水素循環系が構成される。
【0030】
また、水素還流管23には、水素循環系内のガスをシステム外へ排出するための水素パージ管26と、水素循環系内の水分をシステム外へ排出するためのドレン管27とが、分岐して設けられている。これらの配管26,27は、それぞれ後述の希釈器40に接続されている。また、これら配管26,27には、それぞれ水素パージ弁28及びドレン弁29が設けられている。したがって、これらの弁28,29を開くことにより、水素循環系内の不純物を含んだガスや水分は希釈器40を介してシステム外へ排出され、閉じることにより水素循環系内からのガスのシステム外への排出は遮断される。
【0031】
エア供給装置30は、エアを圧縮するエアポンプ31と、エアポンプ31からスタック10のカソード流路に供給されるエアが通流するエア供給管32と、カソード流路からの排出ガスが通流するエア排出管33と、エア排出管33を通流するガスに含まれる水分を回収し、この水分でエア供給管32内のエアを加湿する加湿器34と、エア排出管33のうち加湿器34より下流側に設けられカソード流路の圧力を調整するカソード背圧弁35と、を備える。
【0032】
N2貯蔵装置50は、エア排出管33のうち加湿器34とカソード背圧弁35の間と、水素供給管22のうちエゼクタ25とスタック10の間と、を接続する管状のN2貯蔵部51と、エア排出管33から水素供給管22に至るN2貯蔵部51のうち水素供給管22側から分岐し希釈器40に至るN2パージ管52と、を備える。N2パージ管52には、N2パージ弁55が設けられている。
【0033】
N2貯蔵部51のうち、エア排出管33側にはエア排出管33からN2貯蔵部51へのガスの流入を遮断するN2導入弁53が設けられ、水素供給管22側にはN2貯蔵部51から水素供給管22へのガスの流入を遮断するアノード掃気弁54が設けられている。このように、両端にN2導入弁53及びアノード掃気弁54を設けることにより、N2貯蔵部51のうちこれらの弁53,54で区画された領域内に、カソード流路からエア排出管33内に排出された窒素濃度の高い排出ガスを不活性ガスとして貯蔵することができる。
【0034】
なお、後に詳述するように、システムの停止処理では、負圧となった水素供給管22内に、N2貯蔵部51内に貯蔵された不活性ガスを導入し、このガスで水素循環系を満たすことから、このN2貯蔵部51の容積は、水素循環系の容積に比例して大きくなるようにすることが好ましい。
【0035】
希釈器40は、エア排出管33を介して導入されたガスや後述のN2パージ管52を介して導入されたガスを希釈ガスとし、この希釈ガスにより、水素パージ弁28又はドレン弁29の開弁時に水素パージ管26又はドレン管27を介して排出された含水素ガスを希釈した後、システム外に排出する。
【0036】
ECU60には、水素遮断弁24、水素パージ弁28、ドレン弁29、エアポンプ31、カソード背圧弁35、N2導入弁53アノード掃気弁54及びN2パージ弁55などの装置を駆動するためのコントローラが接続されており、これら装置はECU60からの制御信号に基づいて作動する。また、ECU60には、システムの運転開始又は停止を指令するためのイグニッションスイッチ61が接続されている。
【0037】
<システムの運転方法>
以上のように構成された燃料電池システムにおける運転方法(通常発電)について説明する。
スタック10で発電させるためには、水素遮断弁24を開くとともにエアポンプ31を駆動し、スタック10のアノード流路に水素タンク21からの水素ガスを供給し、カソード流路にはエアを供給する。ここで、発電中におけるカソード流路の圧力(以下、「カソード圧」という)は、カソード背圧弁35の開度を調整することによって制御され、アノード流路の圧力(以下、「アノード圧」という)は、水素供給管22に設けられたレギュレータ(図示せず)により、カソード圧に応じて調整されるようになっている。
また、発電を継続することで水素循環系内に排出された不純物や生成水は、適宜水素パージ弁28やドレン弁29を開弁させることにより、希釈器40を介してシステム外に排出される。
【0038】
<システムの停止方法>
次に、燃料電池システムの運転を停止させる方法について説明する。
図2は、システムの停止処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、上述のようにシステムを運転している間にイグニッションスイッチがオフにされたこと、すなわち、ECUが燃料電池システムを停止させる指令(以下、単に「停止指令」という)を受信したことに応じて開始する。
【0039】
先ずS1では、水素パージ弁及びドレン弁が開いている場合にはこれらを閉じ、S2に移る。これにより、これ以降の水素循環系内のガスのシステム外への排出が遮断され、アノード圧が上昇する。S2では、アノード圧が所定のディスチャージ必要圧力より高くなるのを待ってから、水素遮断弁を閉じ、S3に移る。これにより、これ以降の水素循環系内への新たな水素ガスの供給も遮断される。
【0040】
S3では、新規の水素ガスの供給停止と合わせて、エアポンプの回転数を所定のディスチャージ時回転数まで低下させ、エアの流量を通常発電時よりも低減するとともに、カソード背圧弁を閉側(ほぼ全閉)に調整し、S4に移る。これにより、水素ガスの供給及び排出が遮断された状態、すなわち、水素循環系内に残留する水素ガスと低流量のエアの供給の下で、スタックの発電を継続する。
【0041】
なお、この水素循環系内に残留する水素と低流量のエアの供給の下でのスタックの発電を、以下では「ディスチャージ発電」という。このディスチャージ発電においてスタックで発電された電力は、エアポンプの駆動やバッテリの蓄電に用いられる他、図示しないディスチャージ抵抗において消費される。
【0042】
また、このS3においてディスチャージ発電を開始した後は、水素循環系内の水素の消費により、アノード圧及びセル電圧ともに徐々に低下する。そこで、以下の処理では、アノード圧、セル電圧、又は時間をディスチャージ発電の進行度合いの目安となるパラメータとして用いる。
【0043】
S4では、セル電圧が所定の電圧V0以下まで低下したか否か、アノード圧が所定の圧力P0以下まで低下したか否か、又はディスチャージ発電の開始から所定の時間T0経過したか否か、を判別する。この判別において、何れもNOである場合には、同じ状態で引き続きディスチャージ発電を継続する。
【0044】
S4において何れかがYESである場合には、ディスチャージ発電がある程度進行したと判定されたことに応じて、S5に移る。S5では、エア排出流路内の不活性ガスをN2貯蔵部内に貯蔵するべくN2導入弁を開き、S6では、N2パージ弁を開く。これにより、N2貯蔵部内に残留しているガスを、エア排出管から導入された不活性ガスとともに希釈器を介してシステム外へ排出する。すなわち、N2貯蔵部内のガスを不活性ガスで置換する。このように、ディスチャージ発電がある程度進行し、エア排出管内のガスの窒素濃度が高くなるまで(S4の判別がYESとなるまで)は、N2導入弁を閉じておき、エア排出管内のガスはN2貯蔵部に導入せずに、カソード背圧弁を介してシステム外に排出する。
【0045】
S7では、セル電圧が所定の電圧V1以下まで低下したか否か、アノード圧が所定の圧力P1以下まで低下したか否か、又はディスチャージ発電の開始から所定の時間T1経過したか否か、を判別する。ここで、上記閾値V1及びP1は、何れもS4における閾値V0及びP0よりも小さな値に設定され、閾値T1は、S4における閾値T0よりも大きな値に設定される。S7において何れもNOであると判定された場合には、N2貯蔵部内のガスの置換をさらに継続する。
【0046】
S7において何れかがYESであると判定された場合には、すなわちS6においてN2貯蔵部内のガスの置換を開始してから、ディスチャージ発電がさらに進行したと判定された場合には、N2貯蔵部内のガスが十分に置換されたものと判断し、換言すればN2貯蔵部内のガスの酸素濃度も十分に低くなったものと判断し、S8に移る。S8では、N2パージ弁を閉じ、S9に移る。これにより、N2貯蔵部内のガスのシステム外への排出が停止され、N2貯蔵部内への不活性ガスの充填が開始する。
【0047】
S9では、N2パージ弁を閉じてから所定時間経過したか否かを判別する。S9の判別がYESである場合には、N2貯蔵部内に十分な量の不活性ガスが充填されたと判断し、S10に移りN2導入弁を閉弁した後、S11に移る。S9の判別がNOである場合には、引き続きN2導入弁を開いたままにし、N2貯蔵部内への不活性ガスの充填を継続する。
【0048】
S11では、セル電圧が所定の電圧V2以下まで低下したか否か、アノード圧が所定の圧力P2以下まで低下したか否か、又はディスチャージ発電の開始から所定の時間T2経過したか否か、を判別する。ここで、上記閾値V2及びP2は、何れもS7における閾値V1及びP1よりも小さな値に設定され、閾値T2は、S7における閾値T1よりも大きな値に設定される。S11において何れもNOであると判定された場合には、引き続きディスチャージ発電を継続する。S11において何れかがYESであると判定された場合には、S12に移り、エアポンプの回転数を“0”にし、エアの供給を完全に停止することにより、ディスチャージ発電を終了し、S13に移る。
【0049】
S13ではアノード掃気弁を開き、続くS14ではN2導入弁も開き、S15に移る。これにより、水素供給管、N2貯蔵部、エア排出管が連通し、N2貯蔵部内の不活性ガスは、S3からS11に亘ってディスチャージ発電を継続することにより負圧となった水素循環系内に導入され、アノード圧は、大気圧とほぼ等しいカソード圧と平衡になるまで上昇し始める。
【0050】
S15では、アノード圧とカソード圧とが平衡になったか否かを判別する。このS15の判別は、図示しない圧力センサの出力に基づいて直接的に判定してもよいが、上述のように、アノード圧とカソード圧とは速やかに平衡状態に近づくと考えられることから、S14においてN2導入弁を開いてから経過した時間に基づいて間接的に判定してもよい。S15における判別がNOである場合には、アノード圧がカソード圧と等しくなったと判断できるまで、アノード掃気弁及びN2導入弁を開き続ける。
【0051】
S15における判別がYESである場合には、水素循環系への不活性ガスの導入が完了したと判断し、S16に移りアノード掃気弁を閉じ、続くS17ではN2導入弁も閉じ、この停止処理を終了する。
【0052】
次に、以上のような停止処理について、図3のタイムチャートを参照して説明する。図3には、エアポンプからカソード極に供給されるエアの質量流量[g/s]、カソード背圧弁の開度[deg]、カソード圧[kPag]及びアノード圧[kPag]の他、水素遮断弁、水素パージ弁、ドレン弁、N2導入弁、N2パージ弁、アノード掃気弁の開閉状態を示す。また、図3には、t0においてイグニッションスイッチがオフにされた場合を説明する。
【0053】
先ずt0では、イグニッションスイッチがオフにされたことに応じて、水素パージ弁及びドレン弁はともに閉弁され、水素循環系内のガスの排出が遮断される(S1参照)。その後、排出を遮断することによってアノード圧が上昇し、t1においてディスチャージ必要圧まで上昇したことに応じて水素遮断弁が閉弁され、新たな水素ガスの供給が停止される(S2参照)。また、t1では、この水素遮断弁の閉弁と合わせて、エアポンプの回転数が低減されるとともにカソード背圧弁の開度が閉側に制御され、エア流量及びカソード圧が減少する(S3参照)。これにより、t1以降、低流量のエアの下でのディスチャージ発電が開始し、アノード圧は徐々に減少する。なお、水素遮断弁を閉弁するタイミングを判断するためのディスチャージ必要圧は、ディスチャージ発電の終了時(時刻t5参照)におけるアノード圧が、スタックを保護するために定められた守り切り圧を下回らないようにするために設定される閾値である。
【0054】
t1においてディスチャージ発電を開始した後、t2では、ディスチャージがある程度進行することによりスタックから排出されるガスの窒素濃度が十分に上昇したと判断されたことに応じて、N2導入弁及びN2パージ弁が開弁され、これによりN2貯蔵部内の不活性ガスによる置換が開始する(S4〜S6参照)。その後、t3ではN2貯蔵部内が十分に置換されたと判断されたことに応じて、N2パージ弁のみ閉弁され、これによりN2貯蔵部内への不活性ガスの充填が開始する(S7〜S8参照)。このN2の充填を開始してから、所定時間が経過した時刻t4では、N2導入弁も閉弁され、これによりN2貯蔵部内には、ディスチャージ発電中にスタックから排出された不活性ガスが封じ込められる(S9〜S10参照)。
【0055】
t5では、ディスチャージ発電を終了する時期に達したと判断されたことに応じて(S11参照)、エアポンプが停止される(S12参照)。これにより、エア流量は“0”となり、カソード圧は大気圧まで低下する。さらにt5では、ディスチャージ発電を終了したことに応じて、N2導入弁及びアノード掃気弁がともに開弁される。これにより、N2貯蔵部内に貯蔵されていた不活性ガス、すなわちディスチャージ発電中にスタックから排出された不活性ガスが、ディスチャージ発電を行うことで負圧となったアノード極へ導入され(S13〜S14参照)、アノード圧は負圧の状態から大気圧とほぼ等しいカソード圧へ向けて上昇する。その後、t6では、アノード圧が上昇し、アノード圧とカソード圧とがほぼ等しくなったと判断されたことに応じて、N2導入弁及びアノード掃気弁がともに閉弁され、不活性ガスの導入が停止される。これにより、アノード流路の不活性ガスによる置換が完了する。
【0056】
本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)本実施形態では、停止指令後、発電を継続している間にエア排出管に排出されたガスを、N2貯蔵部を介して、上記発電の終了後であり負圧となっている水素供給管へ導入する。これにより、アノード流路を水素濃度及び酸素濃度が低く窒素濃度の高い不活性ガスで満たし、かつ水素供給管及び水素還流管を封止した状態でシステムを停止させることができるため、システム停止中にアノード流路内の水素と酸素が混在することによる劣化や、両極がエアで満たされた状態でシステムを再起動することによる劣化を防止することができる。
また、アノード流路を満たす不活性ガスは、エア排出管から負圧を利用して導入したものであるため、カソード流路もアノード流路と同じ不活性ガスで満たした状態でシステムを停止させることができる。すなわち、アノード流路及びカソード流路をともに不活性ガスで満たした状態にすることにより、残留ガスによる反応が殆ど進行することがないので、アノード流路のみを不活性ガスで満たした場合よりも効果的に劣化を抑制できる。
なお、アノード流路の不活性ガスによる置換の完了後(図3中、t6以降)は、カソード流路側に満たされていた不活性ガスは徐々にシステム外に排出され、最終的には酸素濃度の高いエアで置換されることとなる。しかしながらこのような場合であっても、カソード極側の不活性ガスがエアで置換されるまでの間は、上述のように特に効果的に劣化が抑制された状態が維持されることは言うまでもないが、不活性ガスがエアで置換された後も、アノード流路側が不活性ガスで満たされた状態が維持されている限り、劣化を抑制する効果が損なわれることはない。
また、本発明によれば、停止指令後に発電を継続している間にカソード流路から排出されたガスを不活性ガスとして流用するので、不活性ガスを生成するための装置を新たに設ける必要がない。特に、上述のようなディスチャージ発電時、すなわち水素ガスの供給及び排出を遮断しかつ極低流量のエアの供給のもとでの発電時におけるスタックからエア排出管へ排出されるガスの酸素濃度は、通常発電時と比較して十分に低く不活性ガスとして適格であることが検証されている。また、停止のために必要な量の不活性ガスは、発電を継続することで排出されたガスをその都度流用すればよいため、N2貯蔵部の容積は、1回の停止に必要な量に相当する大きさを確保できればよいので、窒素ボンベを用いた場合と比較して小型化に対する効果も大きい。
また、ガスの供給及び排出を遮断した状態、すなわち水素循環系を閉じた状態で発電を継続することにより、継続発電の終了時におけるアノード圧はカソード圧よりも十分に低くなっている。したがって、N2貯蔵部を介して上記不活性ガスを導入する際には、この負圧を利用できるので、アノード圧に抗してN2貯蔵部のガスを供給するためのポンプなどの装置も特別に必要となることはない。
【0057】
(2)本実施形態では、N2貯蔵部を介して不活性ガスをアノード流路側に導入する際、N2貯蔵部内のガスの酸素濃度が所定濃度以下であると判定されるまで、N2貯蔵部内に残留していたガスを、エア排出管から導入されたガスとともにN2パージ流路を介してシステム外に排出する。これにより、N2貯蔵部内には酸素濃度が十分に低い不活性ガスのみが貯蔵されるようにし、アノード流路側に酸素が導入されないようにできる。
【0058】
(3)本実施形態では、アノード掃気弁を閉じた状態で不活性ガスをN2貯蔵部に充填しておき、ディスチャージ発電が終了したことに応じてアノード掃気弁を開き、N2貯蔵部内の不活性ガスを水素供給管内に導入する。このように、水素供給管内にガスを導入するまで、アノード掃気弁を閉じ、水素供給管とN2貯蔵部とを遮断した状態にすることにより、アノード掃気弁を開くまでに水素供給管内とN2貯蔵部との間に圧力差を生じさせることができるので、新たな装置を用いることなく短時間で不活性ガスを導入することができる。
【0059】
(4)本実施形態では、システムの停止指令後、アノード圧がディスチャージ必要圧より高くなってから水素遮断弁を閉じることにより、ディスチャージ発電の終了時におけるアノード圧が、燃料電池が損傷する程度にまで低下するのを防止できる。
【0060】
(5)本実施形態によれば、エア排出管内のガスの窒素濃度が比較的低いと考えられるディスチャージ発電の開始直後は、エア排出管内のガスをN2貯蔵部に貯蔵せずにシステム外へ排出することにより、N2貯蔵部には窒素濃度の高い不活性ガスを貯蔵できる。
【0061】
(6)本実施形態によれば、アノード圧とカソード圧とがほぼ等しくなるまでN2貯蔵部内の不活性ガスを導入することにより、システムの停止中に、スタック内の電解質膜に差圧が生じ、負担がかかることを防止できる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る燃料電池システム1Aの構成を模式的に示すブロック図である。
【0063】
本実施形態に係る燃料電池システム1Aは、N2貯蔵装置50Aの構成が第1実施形態と異なる。より具体的には、本実施形態のN2貯蔵装置50Aは、エア排出管33内のガスを圧縮してN2貯蔵部51内に供給する圧縮機56Aをさらに備える点が、上記第1実施形態と異なる。
以上のようなN2貯蔵装置50Aを備える燃料電池システム1Aにおいて、ECU60Aは、停止処理では、N2導入弁53の開弁と同じタイミングで圧縮機56Aを駆動し、エア排出管33内のガスをN2貯蔵部51内に圧縮する。
【0064】
本実施形態によれば、以下の効果がある。
(7)本発明によれば、圧縮機を用いてエア排出管内のガスをN2貯蔵部内に充填することにより、水素循環系に導入するための十分な量の不活性ガスをN2貯蔵部内に貯蔵しておくことができる。また、このような圧縮機を用いることにより、N2貯蔵部の容積を小さくすることもできる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、発電中にカソード流路から排出された不活性ガスを貯蔵するN2貯蔵部51として、管状のものを用いたが、本発明はこれに限るものではない。N2貯蔵部の形状は、不活性ガスを効率的に貯蔵できるものであればどのような形状であってもよい。また、十分な容積を確保するため、N2貯蔵部に箱状のバッファを設けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,1A…燃料電池システム
10…燃料電池スタック
22…水素供給管(燃料ガス供給流路)
23…水素還流管(燃料ガス排出流路)
24…水素遮断弁(供給遮断弁)
28…水素パージ弁(排出遮断弁)
29…ドレン弁(排出遮断弁)
32…エア供給管(酸化剤ガス供給流路)
33…エア排出管(酸化剤ガス排出流路)
40…希釈器
50,50A…N2貯蔵装置
51…N2貯蔵部(排出ガス貯蔵部)
52…N2パージ管(排出ガスパージ流路)
54…アノード掃気弁(アノード掃気弁)
56A…圧縮機
60,60A…ECU(停止後遮断手段、排出ガス導入手段、発電継続手段、酸素濃度判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード極に燃料ガスを、カソード極に酸化剤ガスを供給することで発電する燃料電池と、
前記アノード極に供給される燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、
前記カソード極に供給される酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、
前記アノード極からの排出ガスが通流する燃料ガス排出流路と、
前記カソード極からの排出ガスが通流する酸化剤ガス排出流路と、
前記酸化剤ガス排出流路と前記燃料ガス供給流路とを接続する排出ガス貯蔵部と、
前記燃料ガス供給流路に設けられ、前記アノード極への新たな燃料ガスの供給を遮断する供給遮断弁と、
前記燃料ガス排出流路に設けられ、前記アノード極からの排出ガスのシステム外への排出を遮断する排出遮断弁と、を備えた燃料電池システムであって、
燃料電池システムの停止指令後、前記供給遮断弁及び前記排出遮断弁によりガスの供給及び排出をともに遮断する停止後遮断手段と、
前記停止後遮断手段によりガスの供給及び排出が遮断された状態で燃料電池による発電を継続する発電継続手段と、
前記発電継続手段により発電を継続している間に前記酸化剤ガス排出流路に排出されたガスを、前記発電継続手段による発電が終了した後に、前記排出ガス貯蔵部を介して前記燃料ガス供給流路内に導入する排出ガス導入手段と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記排出ガス貯蔵部から分岐し、システム外へ連通する排出ガスパージ流路と、
前記排出ガス貯蔵部内のガスの酸素濃度が所定値以上であるか否かを判定する酸素濃度判定手段と、をさらに備え、
前記排出ガス導入手段は、前記酸素濃度が所定濃度以下であると判定されるまでは、前記排出ガスパージ流路を介して前記排出ガス貯蔵部内のガスを、前記酸化剤ガス排出流路から導入されたガスとともにシステム外へ排出することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記排出ガス貯蔵部と前記燃料ガス供給流路とを接続する流路に設けられたアノード掃気弁をさらに備え、
前記排出ガス導入手段は、前記アノード掃気弁を閉じた状態で前記排出ガス貯蔵部内に排出ガスを充填し、所定の条件が満たされたことに応じて前記アノード掃気弁を開き当該排出ガス貯蔵部内のガスを前記燃料ガス供給流路内に導入することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記停止後遮断手段は、燃料電池システムの停止指令が入力に応じて前記排出遮断弁により前記アノード極からの排出ガスのシステム外への排出を遮断した後、前記燃料ガス供給流路内の圧力が所定の圧力より高くなってから、前記供給遮断弁により前記アノード極への新たな燃料ガスの供給を遮断することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記酸化剤ガス排出流路内のガスを圧縮して前記排出ガス貯蔵部に供給する圧縮機をさらに備えることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
アノード極に燃料ガスを、カソード極に酸化剤ガスを供給することで発電する燃料電池と、
前記アノード極に供給される燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、
前記カソード極からの排出ガスが通流する酸化剤ガス排出流路と、
前記酸化剤ガス排出流路と前記燃料ガス供給流路とを接続する排出ガス貯蔵部と、を備えた燃料電池システムの停止方法であって、
燃料電池システムの停止指令後、前記アノード極への新たな燃料ガスの供給及び前記アノード極からの排出ガスのシステム外への排出を遮断する停止後遮断工程と、
前記停止後遮断工程によりガスの供給及び排出が遮断された状態で燃料電池による発電を継続する発電継続工程と、
当該発電継続工程中に前記酸化剤ガス排出流路に排出されたガスを排出ガス貯蔵部に貯蔵する排出ガス貯蔵工程と、
前記発電継続工程後に前記排出ガス貯蔵部内に貯蔵されたガスを前記燃料ガス供給流路内に導入する排出ガス導入工程と、を備えることを特徴とする燃料電池システムの停止方法。
【請求項7】
前記停止後遮断工程は、前記燃料ガス供給流路内の圧力が所定の圧力まで高くなった場合に、前記供給及び排出を遮断することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システムの停止方法。
【請求項8】
前記発電継続工程を開始してから前記排出ガス貯蔵工程を開始するまでの間に、前記酸化剤ガス排出流路に排出されたガスをシステム外に排出する排出工程をさらに備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料電池システムの停止方法。
【請求項9】
前記排出ガス導入工程は、前記アノード極の圧力がカソード極の圧力とほぼ等しくなったことに応じて前記排出ガス貯蔵部内のガスの導入を停止することを特徴とする請求項6から8の何れかに記載の燃料電池システムの停止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89352(P2013−89352A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226766(P2011−226766)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】