説明

燃料電池システム

【課題】コンパクト且つ経済的な構成で、良好な密着性を確保して燃料電池スタック内の面圧分布を高精度且つ確実に測定することを可能にする。
【解決手段】燃料電池システム10を構成する静電容量型面圧測定装置14は、発電セルの発電面内に位置して設けられる複数の誘電体50と、前記発電セルの発電面方向に沿って延在するとともに、前記誘電体50間に積層方向に向かって電流を流す格子状導電部52とを備える。格子状導電部52は、各格子交差部68で一体化される複数の第1板状部64及び複数の第2板状部66を有し、少なくともいずれかの前記格子交差部68に肉薄な薄肉部位70が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極が配設される電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが積層される燃料電池スタックと、前記燃料電池スタック内に配設され、前記発電セルの面圧を測定するための静電容量型面圧測定装置とを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜(電解質)の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータによって挟持した発電セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の発電セルを積層するとともに、積層方向両端には、ターミナルプレート、絶縁プレート及びエンドプレートが配置されることにより、燃料電池スタックを構成している。燃料電池スタックは、例えば、燃料電池電気自動車等の燃料電池車両に搭載されている。
【0003】
この燃料電池スタックでは、一対のエンドプレート間に、締め付けボルトやケーシング等によって発電セルの積層方向に締め付け荷重を付与している。その際、発電セルの電極面の面圧にばらつき(面圧分布)が発生すると、接触抵抗が増大して端子電圧が低下するおそれがある。
【0004】
そこで、燃料電池スタック内の面圧分布を測定する必要があり、例えば、特許文献1に開示されている積層型電池の面圧分布検出装置が知られている。この面圧分布検出装置は、図9に示すように、単位セル1の積層方向に弾性変形可能な内側絶縁部2と、前記内側絶縁部2の一方の側面に複数設けられる第1電極3aと、前記内側絶縁部2の他方の側面に複数設けられ、前記第1電極3aと対向する第2電極3bと、前記第1電極3aと第1電極側単位セル1との間及び前記第2電極3bと第2電極側単位セル1との間に設けられる一対の外側絶縁部4と、積層方向に弾性変形可能に構成され、前記第1電極3a及び前記第2電極3bに対して電気絶縁した状態で、前記第1電極側単位セル1と前記第2電極側単位セル1とを電気的に接続する複数の導電部5とを備えている。
【0005】
そして、面圧分布測定部は、第1電極3aと第2電極3bとの対向距離に応じて変化する静電容量に基づいて積層面圧を算出し、積層面圧分布を求めている。これにより、第1電極側単位セル1と第2電極側単位セル1とを通過する電流の電流密度の偏りを抑制することができ、電流密度に起因する発電性能の悪化を抑制しつつ、単位セル1における面圧分布を検出することが可能となる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−276520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1では、ダイアフラムとして機能する面圧検出構造であり、形状が複雑になるとともに、大型化するという問題がある。しかも、導電部の剛性が高いため、カーボンペーパ等の導電性且つ弾力性を有する部材を介装する必要があり、作業が煩雑化するとともに、経済的ではないという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、コンパクト且つ経済的な構成で、良好な密着性を確保して燃料電池スタック内の面圧分布を高精度且つ確実に測定することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質の両側に一対の電極が配設される電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが積層される燃料電池スタックと、前記燃料電池スタック内に配設され、前記発電セルの面圧を測定するための静電容量型面圧測定装置とを備える燃料電池システムに関するものである。
【0010】
この燃料電池システムでは、静電容量型面圧測定装置は、発電セルの発電面内に位置して設けられる複数の誘電体と、前記発電セルの発電面方向に沿って延在するとともに、前記誘電体間に積層方向に向かって電流を流す格子状導電部とを備えるとともに、前記格子状導電部は、少なくともいずれかの格子交差部に、厚さ方向に肉薄な薄肉部位が設けられている。
【0011】
また、この燃料電池システムでは、格子状導電部は、一方の面側から切り欠いて薄肉部位が設けられる第1格子交差部と、他方の面側から切り欠いて前記薄肉部位が設けられる第2格子交差部とを有することが好ましい。
【0012】
さらに、この燃料電池システムでは、格子状導電部は、第1格子交差部と第2格子交差部とが互いに隣接して交互に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、静電容量型面圧測定装置は、誘電体間に積層方向に向かって電流を流す格子状導電部を備えるとともに、前記格子状導電部は、少なくともいずれかの格子交差部に、厚さ方向に肉薄な部位が設けられている。このため、格子交差部は、肉薄な部位にばね性を持たせることができ、格子状導電部は、燃料電池スタックの面圧測定部位に対して良好に密着することが可能になる。
【0014】
従って、静電容量型面圧測定装置は、測定感度が有効に向上し、安定した測定を良好且つ確実に行うことができる。これにより、燃料電池スタックの使用荷重領域を網羅して、発電面内の面圧を良好に測定することが可能になり、コンパクト且つ経済的な構成で、前記燃料電池スタック内の面圧分布を高精度且つ確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池システムの断面側面図である。
【図3】前記燃料電池システムを構成する発電セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記燃料電池システムを構成する静電容量型面圧測定装置の要部分解斜視図である。
【図5】前記静電容量型面圧測定装置を構成する格子状導電部の一部拡大斜視説明図である。
【図6】前記静電容量型面圧測定装置の要部斜視図である。
【図7】前記静電容量型面圧測定装置の回路説明図である。
【図8】前記静電容量型面圧測定装置の要部分解斜視図である。
【図9】特許文献1に開示されている面圧分布検出装置の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料電池スタック12と、前記燃料電池スタック12内に配設される静電容量型面圧測定装置14とを備える。この燃料電池システム10は、例えば、図示しない燃料電池自動車等の燃料電池車両に搭載されている。
【0017】
燃料電池スタック12は、複数の発電セル16が矢印A方向に積層されるとともに、積層方向両端には、ターミナルプレート17a、17b及び絶縁プレート18a、18bを介装してエンドプレート20a、20bが配置される(図2参照)。
【0018】
エンドプレート20a、20bは、例えば、複数の締め付けボルト21aにより積層方向に締め付けられる。なお、エンドプレート20bには、締め付けボルト21aがねじ込まれるねじ孔(図示せず)が形成されている。あるいは、エンドプレート20bに貫通孔を形成し、締め付けボルト21aの先端にナット(図示せず)を螺合してもよい。
【0019】
また、エンドプレート20a、20b間にプレート(図示せず)を介装して前記エンドプレート20a、20b間の距離を調整することにより、締め付け荷重を付与してもよい。さらに、エンドプレート20aと絶縁プレート18aとの間、又はエンドプレート20bと絶縁プレート18bとの間に、皿ばね(図示せず)を介装して荷重を加えてもよい。
【0020】
図2及び図3に示すように、各発電セル16は、電解質膜・電極構造体22と、前記電解質膜・電極構造体22を挟持する第1セパレータ24及び第2セパレータ26とを備える。第1セパレータ24及び第2セパレータ26は、例えば、カーボンセパレータで構成されているが、金属セパレータを使用してもよい。第1セパレータ24及び第2セパレータ26間には、電解質膜・電極構造体22を収容してガスケット27が介装される。
【0021】
図3に示すように、発電セル16の矢印B方向の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガス(空気等)を供給するための酸化剤ガス供給連通孔28a、冷却媒体、例えば、純水やエチレングリコール等を供給するための冷却媒体供給連通孔30a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔32bが設けられる。
【0022】
発電セル16の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔32a、冷却媒体を排出するための冷却媒体排出連通孔30b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔28bが設けられる。
【0023】
電解質膜・電極構造体22は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜34と、前記固体高分子電解質膜34を挟持するアノード側電極36及びカソード側電極38とを備える。
【0024】
アノード側電極36及びカソード側電極38は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜34の両面に形成される。
【0025】
第1セパレータ24は、電解質膜・電極構造体22に向かう面24aに燃料ガス流路40を設ける。燃料ガス流路40は、矢印B方向に延在する複数の流路溝を有し、燃料ガス供給連通孔32a及び燃料ガス排出連通孔32bに連通する。第1セパレータ24の面24bには、冷却媒体流路42が形成される。この冷却媒体流路42は、矢印B方向に延在する複数の流路溝を有し、冷却媒体供給連通孔30a及び冷却媒体排出連通孔30bに連通する。
【0026】
第2セパレータ26には、電解質膜・電極構造体22に向かう面26aに酸化剤ガス流路44が形成される。この酸化剤ガス流路44は、矢印B方向に延在する複数の流路溝を有し、酸化剤ガス供給連通孔28a及び酸化剤ガス排出連通孔28bに連通する。第2セパレータ26の面26bは、平坦状に構成される。
【0027】
静電容量型面圧測定装置14は、図2に示すように、燃料電池スタック12内に積層されている発電セル16の積層方向略中央に配置される。図4及び図5に示すように、静電容量型面圧測定装置14は、複数の誘電体50を、発電セル16の発電面内に位置し矢印B方向及び矢印C方向に配列して収容する格子状導電部52と、前記誘電体50を両側から一体に挟持するそれぞれ複数の第1電極54及び第2電極56と、前記第1電極54及び前記第2電極56の外側にそれぞれ絶縁部材58a、58bに囲繞されて積層される第1シールド部材60及び第2シールド部材62とを備える。
【0028】
静電容量型面圧測定装置14は、静電容量式センサを構成しており、例えば、PI(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シリコーン等の絶縁体で形成される複数の誘電体50を設ける。
【0029】
格子状導電部52は、発電セル16の発電面方向に沿って延在するとともに、例えば、銀、銀合金、金、金合金、銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等の低電気抵抗材料(電気抵抗率2×10−7Ωm以下)、又はカーボンペーパ、カーボンクロス、導電性樹脂等により構成される。格子状導電部52の表面には、必要に応じて酸化防止用の金、又は金合金によるメッキ処理が施される。
【0030】
格子状導電部52は、矢印B方向に互いに平行して延在する複数の第1板状部64と、矢印C方向に互いに平行して延在する複数の第2板状部66とを有する。第1板状部64と第2板状部66とは、互いに直交するとともに、各格子交差部68で一体化される。
【0031】
図4及び図6に示すように、格子状導電部52は、少なくともいずれかの格子交差部68に、厚さ方向(矢印A方向)に肉薄な薄肉部位70が設けられる。格子状導電部52は、第1電極54に対向する面(一方の面)側から切り欠いて薄肉部位70aが設けられる第1格子交差部68aと、第2電極56に対向する面(他方の面)側から切り欠いて薄肉部位70bが設けられる第2格子交差部68bとを有する。
【0032】
格子状導電部52は、好ましくは、第1格子交差部68aと第2格子交差部68bとを互いに隣接して交互に設けている。すなわち、格子状導電部52は、全体として均一な厚さに設定されるため、例えば、平板をプレスにより形成することが可能である。
【0033】
格子状導電部52の第1電極54に向かう面には、矢印B方向に延在し且つ矢印C方向に配列される複数の第1溝部72aが形成される。格子状導電部52の第2電極56に向かう面には、矢印C方向に延在し且つ矢印B方向に配列される複数の第2溝部72bが形成される。第1溝部72aと第2溝部72bとが交差する部位には、各誘電体50を配置するための開口部74が設けられる。
【0034】
第1電極54は、格子状導電部52の第1溝部72aに収容されるとともに、矢印B方向に長尺状に形成される。第1電極54は、例えば、銅又は金等で構成されており、厚さが0.1mm以下に設定される。必要に応じて、図示しない高分子材料製の絶縁膜により囲繞してもよい。
【0035】
第2電極56は、上記の第1電極54と同様に、格子状導電部52の第2溝部72bに収容されるとともに、矢印C方向(矢印B方向に直交する方向)に長尺状に形成される。第2電極56は、例えば、銅又は金等で構成されており、厚さが0.1mm以下に設定されるとともに、必要に応じて、図示しない高分子材料製の絶縁膜により囲繞される。
【0036】
絶縁部材58aは、第1溝部72aに収容されて矢印B方向に延在する長尺状を有するとともに、内部に第1電極54と第1シールド部材60とを互いに絶縁した状態で収容する。絶縁部材58bは、第2溝部72bに収容されて矢印C方向に延在する長尺状を有し、内部に第2電極56と第2シールド部材62とを互いに絶縁した状態で収容する。絶縁部材58a、58bは、例えば、PI(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)シリコーン等で形成される。
【0037】
第1シールド部材60及び第2シールド部材62は、第1溝部72a及び第2溝部72bに収容されて互いに直交する方向(矢印B方向及び矢印C方向)に延在する長尺状の金属薄板、例えば、Cu(銅)やAl(アルミニウム)等で構成される。全ての第1シールド部材60と全ての第2シールド部材62は、電気的に接続されるとともに、後述するアンプ96のアースに接地される。
【0038】
図5に示すように、格子状導電部52の各開口部74に誘電体50が配置され、第1溝部72aに収容される第1電極54と、第2溝部72bに収容される第2電極56とは、前記誘電体50を挟んで互いに直交する方向に、所謂、井桁状に配列される。
【0039】
図7に示すように、制御装置76では、第1電極54の端部には、第1回路パターン78が設けられる一方、第2電極56の端部には、第2回路パターン80が設けられる。第1回路パターン78は、各第1電極54の端部に接続される配線部82を備え、前記配線部82は、A/D変換器84を介して第1コネクタ86に接続される。第2回路パターン80は、各第2電極56の端部に接続される配線部88を備え、前記配線部88は、A/D変換器90を介して第2コネクタ92に接続される。
【0040】
A/D変換器84及び90は、外部ノイズの影響を回避するために、それぞれ格子状導電部52の面内に近接して配置される。第1コネクタ86及び第2コネクタ92は、アンプ96に接続される。
【0041】
第1回路パターン78は、複数の配線部82が互いに同一長さで且つ同一表面積に設定される一方、第2回路パターン80は、複数の配線部88が互いに同一長さで且つ同一表面積に設定される。
【0042】
図8に示すように、静電容量型面圧測定装置14は、両面に導電性シート(例えば、カーボンペーパやカーボンクロス等)98を介装して第1セパレータ24と第2セパレータ26とに挟持される。静電容量型面圧測定装置14は、実質的に、図3に示す電解質膜・電極構造体22と同一の寸法(厚さを含む)を有するとともに、第1及び第2セパレータ24、26間に挟持されることにより、発電セル16と同一の寸法及び形状に構成される。
【0043】
静電容量型面圧測定装置14は、燃料ガスや酸化剤ガスに曝されることがないように、第1セパレータ24の前記静電容量型面圧測定装置14側の面には、燃料ガス供給連通孔32a及び燃料ガス排出連通孔32bを樹脂シール(図示せず)で周回する一方、第2セパレータ26の前記静電容量型面圧測定装置14側の面には、酸化剤ガス供給連通孔28a及び酸化剤ガス排出連通孔28bを樹脂製シール(図示せず)で周回する。
【0044】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
【0045】
先ず、図2に示すように、燃料電池スタック12は、複数の発電セル16が矢印A方向に積層されるとともに、積層方向両端には、ターミナルプレート17a、17b及び絶縁プレート18a、18bを介装してエンドプレート20a、20bが配置される。そして、エンドプレート20a、20bは、複数の締め付けボルト21aにより積層方向に締め付けられて、初期荷重が付与される。このため、燃料電池スタック12に積層方向に初期荷重が付与され、誘電体50が圧縮変形される。
【0046】
次に、図1に示すように、酸化剤ガスは、燃料電池スタック12の酸化剤ガス供給連通孔28aに供給される一方、燃料ガスは、燃料電池スタック12の燃料ガス供給連通孔32aに供給される。また、冷却媒体は、燃料電池スタック12の冷却媒体供給連通孔30aに供給される。
【0047】
燃料電池スタック12内では、図3に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔28aから第2セパレータ26の酸化剤ガス流路44に導入され、電解質膜・電極構造体22のカソード側電極38に沿って移動する。一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔32aから第1セパレータ24の燃料ガス流路40に導入され、電解質膜・電極構造体22のアノード側電極36に沿って移動する。
【0048】
従って、各電解質膜・電極構造体22では、カソード側電極38に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極36に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0049】
次いで、カソード側電極38に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔28bに沿って流動した後、エンドプレート20aに排出される。同様に、アノード側電極36に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔32bに排出されて流動した後、エンドプレート20aに排出される。
【0050】
また、純水やエチレングリコール等の冷却媒体は、第1セパレータ24及び第2セパレータ26間の冷却媒体流路42に導入された後、矢印B方向に沿って流動する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体22を冷却した後、冷却媒体排出連通孔30bに移動し、エンドプレート20aに排出されて循環使用される。
【0051】
この場合、本実施形態では、図4〜図6に示すように、格子状導電部52は、少なくともいずれかの格子交差部68に、厚さ方向(矢印A方向)に肉薄な薄肉部位70が設けられている。従って、薄肉部位70では、剛性が低下してばね性の向上が図られ、面圧測定部位の形状に容易に倣うことができる。
【0052】
しかも、格子状導電部52は、第1電極54に対向する面側から切り欠いて薄肉部位70aが設けられる第1格子交差部68aと、第2電極56に対向する面側から切り欠いて薄肉部位70bが設けられる第2格子交差部68bとを有している。さらに、格子状導電部52は、第1格子交差部68aと第2格子交差部68bとを互いに隣接して交互に設けている。
【0053】
このため、格子状導電部52は、全体として所望のばね性を有することができ、燃料電池スタック12の面圧測定部位に対して良好に密着することが可能になるという効果が得られる。
【0054】
従って、静電容量型面圧測定装置14は、測定感度が有効に向上し、安定した測定を良好且つ確実に行うことができる。これにより、燃料電池スタック12の使用荷重領域を網羅して、発電面内の面圧を良好に測定することが可能になり、コンパクト且つ経済的な構成で、前記燃料電池スタック12内の面圧分布を高精度且つ確実に測定することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…燃料電池システム 12…燃料電池スタック
14…静電容量型面圧測定装置 16…発電セル
22…電解質膜・電極構造体 24、26…セパレータ
34…固体高分子電解質膜 36…アノード側電極
38…カソード側電極 40…燃料ガス流路
42…冷却媒体流路 44…酸化剤ガス流路
50…誘電体 52…格子状導電部
54、56…電極 58a、58b…絶縁部材
60、62…シールド部材 64、66…板状部
68、68a、68b…格子交差部 70、70a、70b…薄肉部位
74…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極が配設される電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが積層される燃料電池スタックと、前記燃料電池スタック内に配設され、前記発電セルの面圧を測定するための静電容量型面圧測定装置とを備える燃料電池システムであって、
前記静電容量型面圧測定装置は、前記発電セルの発電面内に位置して設けられる複数の誘電体と、
前記発電セルの発電面方向に沿って延在するとともに、前記誘電体間に積層方向に向かって電流を流す格子状導電部と、
を備えるとともに、
前記格子状導電部は、少なくともいずれかの格子交差部に、厚さ方向に肉薄な薄肉部位が設けられることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記格子状導電部は、一方の面側から切り欠いて前記薄肉部位が設けられる第1格子交差部と、
他方の面側から切り欠いて前記薄肉部位が設けられる第2格子交差部と、
を有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池システムにおいて、前記格子状導電部は、前記第1格子交差部と前記第2格子交差部とが互いに隣接して交互に設けられることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−226846(P2012−226846A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90720(P2011−90720)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】