説明

燃料電池システム

【課題】次回起動時の起動時間及び暖機時間を短縮する。
【解決手段】システム停止時、三方弁制御手段9が、冷却液の循環流路をバイパス流路6側に切り替えるように三方弁7を制御する。これにより、次回起動時に、三方弁7がバイパス流路6側に切り替わるのを待つ必要が無くなり、起動時間を短縮することができる。また、ラジエータ4を経由した冷たい冷却液が燃料電池1に流入するのを防ぐことができるので、暖機時間を短縮することができると共に、冷却液の温度ムラが発生することによって燃料電池1が劣化することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータを経由する循環流路とラジエータを迂回するバイパス流路との間で冷却液の循環流路を切り替える三方弁を有する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池の暖機時、ラジエータを経由する循環流路とラジエータを迂回するバイパス流路との間で冷却液の循環流路を切り替える三方弁をバイパス流路側に開くことにより、ラジエータにより冷却された冷却液が供給されることによって燃料電池の温度が低下することを防止し、燃料電池の暖機時間を短縮する燃料電池システムが知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−158279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで一般に、燃料電池の運転温度は、発電効率や反応ガスの湿度管理に影響するために、ステップモータによって三方弁の開度を細かく制御することにより精度高く制御する必要がある。しかしながら、三方弁の開度を細かく制御することにより燃料電池の運転温度を制御した場合、燃料電池の運転温度を精度高く制御することができるようにはなるが、三方弁の動きが遅くなるためにシステム起動時に三方弁がバイパス流路側に開くタイミングが遅くなり、起動時間が長くなってしまう。また、三方弁がバイパス流路側に開いていない状態で冷却液の循環ポンプを駆動すると、ラジエータによって冷却された冷却液が燃料電池に供給されることによって暖機時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、次回起動時の起動時間及び暖機時間を短縮することが可能な燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムは、システム停止時に冷却液を冷却するラジエータを迂回するバイパス流路側に冷却液の循環流路を切り替え、 システム停止時に冷却液の循環流路をバイパス流路側に切り替えた状態を、次のシステム起動時まで維持し、次のシステム起動時に、冷却液の循環流路がバイパス流路側となっている状態で燃料電池の暖機を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る燃料電池システムによれば、次回起動時に冷却液の循環流路をバイパス流路側に切り替える必要がないので、起動時間を短縮することができる。また、ラジエータを経由した冷たい冷却液が燃料電池に供給されることがないので、暖機時間を短縮することができる。また、ラジエータを迂回した冷却液が燃料電池に供給されることによって冷却液の温度ムラが発生することがないので、熱衝撃から燃料電池を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態となる燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す三方弁の内部構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態となる停止時制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【図4】本発明の実施形態となる起動時制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】図1に示す燃料電池システムの停止時及び起動時の動作を説明するための図である。
【図6】図3に示す停止時制御処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図7】本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態となる停止後制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【図9】燃料電池付近の冷却液温度に対する所定時間Aの関係を外気温毎に示したマップ図である。
【図10】燃料電池付近の冷却液温度と燃料電池から離れた位置の冷却液温度の温度差に対する所定時間Bの関係を示すマップ図である。
【図11】本発明の第3の実施形態となる燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施形態となる停止後制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の第1乃至第3の実施形態となる燃料電池システムの構成及びその動作について説明する。
【実施例1】
【0010】
〔燃料電池システムの構成〕
本発明の第1の実施形態となる燃料電池システムは、車両の駆動動力源として使用され、図1に示すように、アノード及びカソードにそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスとしての水素及び空気の供給を受けて発電する燃料電池1を備える。なお、この実施形態では、燃料電池1は、アノードとカソードにより挟持された電解質膜を備え、この電解質膜は、高エネルギー密度化,低コスト化,及び軽量化を考慮して固体高分子電解質膜により形成されている。固体高分子電解質膜は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等のイオン(プロトン)伝導性を有する高分子膜から成るものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能する。また、アノード及びカソードにおける電気化学反応及び燃料電池1全体としての電気化学反応は以下に示す式(1)〜(3)による。
【0011】
〔アノード〕 H2 → 2H+ +2e- …(1)
〔カソード〕 1/2 O2 +2H+ +2e- → H2O …(2)
〔全体〕 H2 +1/2 O2 → H2O …(3)
〔冷却系の構成〕
上記燃料電池システムは、冷却液循環流路2を介して燃料電池1に冷却液を循環させる冷却液循環ポンプ3と、燃料電池1から排出された冷却液をラジエータ4により冷却した後に冷却液循環ポンプ3に供給するラジエータ流路5と、燃料電池1から排出された冷却液を直接冷却液循環ポンプ3に供給するバイパス流路6と、ラジエータ流路5とバイパス流路6との間で燃料電池1から排出された冷却液の流路を切り替える三方弁7とを備える。なお、この実施形態では、ラジエータ4は、ラジエータファン8から供給される外気と冷却液との間で熱交換を行うことにより冷却液を冷却する。また、ラジエータ流路5側及びバイパス流路6側の三方弁7の開度は、図2に示すように、ステップモータ11によってピストン部12を並進移動することによって制御される。
【0012】
〔制御系の構成〕
上記燃料電池システムは、燃料電池システムの停止指令や起動指令に応じてラジエータ流路5側及びバイパス流路6側の三方弁7の開度を制御する三方弁制御手段9と、燃料電池システムの起動指令に応じて冷却液循環ポンプ3の駆動開始タイミングを制御するポンプ制御手段10とを備える。そして、このような構成を有する燃料電池システムは、以下に示す停止制御処理及び起動制御処理を実行することにより、次回起動時の起動時間及び暖機時間を短縮する。以下、図3,図4に示すフローチャートを参照して、この停止制御処理及び起動制御処理を実行する際の燃料電池システムの動作について説明する。
【0013】
〔停止制御処理〕
図3に示すフローチャートは、燃料電池システムが起動されるのに応じて開始となり、停止制御処理はステップS1の処理に進む。
【0014】
ステップS1の処理では、三方弁制御手段9が、燃料電池1に供給される冷却液の温度を調温するためにラジエータ流路5側及びバイパス流路6側の三方弁7の開度を制御する。これにより、ステップS1の処理は完了し、冷却制御処理はステップS2の処理に進む。
【0015】
ステップS2の処理では、三方弁制御手段9が、入力されたシーケンス指令が停止指令であるか否かを判別する。そして、判別の結果、停止指令でない場合、三方弁制御手段9は停止制御処理をステップS1の処理に戻す。一方、停止指令である場合には、三方弁制御手段9は停止制御処理をステップS3の処理に進める。
【0016】
ステップS3の処理では、三方弁制御手段9が、ラジエータ流路5側及びバイパス流路6側に対し三方弁7がそれぞれ全閉状態及び全開状態になるように三方弁7の開度を制御する。運転停止時に三方弁7をバイパス流路6側に全開状態に制御することにより、次回起動時、三方弁7がバイパス流路6側に全開状態になるまで待機する必要が無くなり、起動時間を短縮することができる。これにより、ステップS3の処理は完了し、一連の停止制御処理は終了する。
【0017】
〔起動制御処理〕
図4に示すフローチャートは、三方弁制御手段9及びポンプ制御手段10に起動指令が入力されるのに応じて開始となり、起動制御処理はステップS11の処理に進む。
【0018】
ステップS11の処理では、三方弁制御手段9が、ラジエータ流路5側及びバイパス流路6側に対して三方弁7がそれぞれ全閉状態及び全開状態になるように三方弁7の開度を制御する。これにより、ステップS11の処理は完了し、起動制御処理はステップS12の処理に進む。
【0019】
ステップS12の処理では、三方弁制御手段9が、ラジエータ流路5側及びバイパス流路6側に対して三方弁7がそれぞれ全閉状態及び全開状態になっているか否かを判別する。そして、判別の結果、ラジエータ流路5側及びバイパス流路6側に対し三方弁7がそれぞれ全閉状態及び全開状態になっていない場合、三方弁制御手段9は起動制御処理をステップS11の処理に戻す。一方、ラジエータ流路5側及びバイパス流路6側に対し三方弁7がそれぞれ全閉状態及び全開状態になっている場合には、三方弁制御手段9は起動制御処理をステップS13の処理に進める。
【0020】
ステップS13の処理では、ポンプ制御手段10が、冷却液循環ポンプ3の駆動を開始し、燃料電池1への冷却液の循環を開始する。これにより、ステップS13の処理は完了し、起動制御処理はステップS14の処理に進む。
【0021】
ステップS14の処理では、三方弁制御手段9が、燃料電池1に供給される冷却液の温度を調温するためにラジエータ流路5側及びバイパス流路6側の三方弁7の開度を制御する。これにより、ステップS14の処理は完了し、一連の起動制御処理は終了する。
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる燃料電池システムによれば、図5に示すように、システム停止時(IGN OFF時)、三方弁制御手段9が、冷却液の循環流路をバイパス流路6側に切り替えるように三方弁7を制御するので、次回起動時(IGN ON時)に、三方弁7がバイパス流路6側に切り替わるのを待つ必要が無くなり、起動時間を短縮することができる。また、ラジエータ4を経由した冷たい冷却液が燃料電池1に流入するのを防ぐことができるので、暖機時間を短縮することができると共に、冷却液の温度ムラが発生することによって燃料電池1が劣化することを防止できる。
【0023】
また、本発明の第1の実施形態となる燃料電池システムによれば、図5に示すように、次回起動時(IGN ON時)、三方弁制御手段9が、冷却液の循環流路をバイパス流路6側に切り替えるように三方弁7を制御し、三方弁7がバイパス流路6側に全開状態になった後にポンプ制御手段10が冷却液循環ポンプ3の駆動を開始するので、フェール等によってシステムが停止することにより三方弁7がバイパス流路6側に全開状態になっていない場合であっても、ラジエータ4を経由した冷たい冷却液が燃料電池1に流入するのを防ぎ、暖機時間を短縮することができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、停止制御処理の際、三方弁7がバイパス流路6側に全開状態になるように三方弁7の開度を制御したが、図6のステップS23の処理のように、三方弁7がバイパス流路6側に略全開状態になるように三方弁7の開度を制御し、システム起動時に三方弁7をバイパス流路6側に完全に開くようにしてもよい。バイパス流路6側に完全に開いた状態で三方弁7を放置すると三方弁7に応力がかかったままの状態になる可能性があるが、このような停止制御処理によれば、三方弁7に加わる応力を低減することができるので、三方弁7の耐久性を向上させることができる。
【実施例2】
【0025】
〔燃料電池システムの構成〕
本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムは、図7に示すように、第1の実施形態となる燃料電池システムの構成に加えて、燃料電池1から排出された冷却水の温度を検出する温度センサ21と、バイパス流路6を流れる冷却水の温度を検出する温度センサ22と、燃料電池システムの外気温を検出する温度センサ23とを備える。そして、このような構成を有する燃料電池システムは、上述の停止制御処理実行後、以下に示す停止後制御処理を実行することにより、次回起動時の起動時間及び暖機時間を短縮する。以下、図8に示すフローチャートを参照して、この停止後制御処理を実行する際の燃料電池システムの動作について説明する。
【0026】
〔停止後制御処理〕
図8に示すフローチャートは、燃料電池システムが停止するのに応じて開始となり、停止後制御処理はステップS31の処理に進む。
【0027】
ステップS31の処理では、ポンプ制御手段10が、温度センサ21及び温度センサ23により燃料電池1から排出された冷却液の温度及び外気温を検出し、図9に示すような冷却液の温度に対する所定時間Aの関係を外気温毎に示したマップから検出された冷却液の温度及び外気温に対応する所定時間Aを読み出す。そして、ポンプ制御手段9は、読み出された所定時間Aを以下の処理において使用する所定時間Aに設定する。なお、図9に示すマップでは、燃料電池1から排出された冷却液の温度が高い程、また外気温が低い程、燃料電池1内部で温度ムラが発生しやすいので、所定時間Aが長くなるように設定されている。これにより、ステップS31の処理は完了し、停止後制御処理はステップS32の処理に進む。
【0028】
ステップS32の処理では、ポンプ制御手段10が、システムが停止してからの経過時間を計測する。これにより、ステップS32の処理は完了し、停止後制御処理はステップS33の処理に進む。
【0029】
ステップS33の処理では、ポンプ制御手段10が、システムが停止してからの経過時間がステップS31の処理において設定した所定時間Aになったか否かを判別する。そして、判別の結果、所定時間Aになっていない場合、ポンプ制御手段10は停止後処理をステップS32の処理に戻す。一方、所定時間Aになった場合には、ポンプ制御手段10は停止後制御処理をステップS34の処理に進める。
【0030】
ステップS34の処理では、ポンプ制御手段10が、冷却液循環ポンプ3の駆動を開始することにより燃料電池1内部に冷却液を循環させる。これにより、ステップS34の処理は完了し、停止後制御処理をステップS35の処理に進める。
【0031】
ステップS35の処理では、ポンプ制御手段10が、温度センサ21と温度センサ22により燃料電池1から排出された冷却液の温度及びバイパス流路6を流れる冷却水の温度を検出し、冷却液の温度差を算出する。そして、ポンプ制御手段10は、図10に示すような冷却液の温度差に対する所定時間Bの関係を示したマップから算出された温度差に対応する所定時間Bを読み出し、読み出された所定時間Bを以下の処理において使用する所定時間Bに設定する。なお、図10に示すマップでは、温度差が大きい程、燃料電池1内部で温度ムラが発生しやすいので、所定時間Bが長くなるように設定されている。これにより、ステップS35の処理は完了し、停止後制御処理はステップS36の処理に進む。
【0032】
ステップS36の処理では、ポンプ制御手段10が、冷却液循環ポンプ3の駆動を開始してからの経過時間を計測する。これにより、ステップS36の処理は完了し、停止後制御処理はステップS37の処理に進む。
【0033】
ステップS37の処理では、ポンプ制御手段10が、冷却液循環ポンプ3の駆動を開始してからの経過時間がステップS35の処理において設定された所定時間Bになったか否かを判別する。そして、判別の結果、所定時間Bになっていない場合、ポンプ制御手段10は停止後制御処理をステップS36の処理に戻す。一方、所定時間Bになった場合には、ポンプ制御手段10は停止後制御処理をステップS38の処理に進める。
【0034】
ステップS38の処理では、ポンプ制御手段10が、冷却液循環ポンプ3の駆動を停止する。これにより、ステップS38の処理は完了し、一連の停止後制御処理は終了する。
【0035】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムによれば、ポンプ制御手段10は、外気温と燃料電池1から排出された冷却液温度により定まる所定時間Aがシステム停止後から経過した後、燃料電池1から排出された冷却液温度とバイパス流路6内の冷却液温度の温度差により定まる所定時間Bだけ冷却液循環ポンプ3を駆動する。一般に、システム停止後は、燃料電池1内部の冷却液よりも配管内の冷却液の方が早く冷えるために、短時間放置後には、燃料電池1内部の冷却液とバイパス流路6内の冷却液に温度差が生じ、次回起動時にはこの温度差によって燃料電池1に熱衝撃を与える可能性がある。従って、上記のような構成によれば、冷却液の温度差が拡大することを防止し、燃料電池1を熱衝撃から保護することができる。
【0036】
また、本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムによれば、ポンプ制御手段10は、燃料電池システムの外気温が低い程、所定時間Aを短く設定する。一般に、外気温が低いほど配管内の冷却液が冷え、停止後短時間のうちに上述の温度差が発生する可能性が高い。従って、上記のような構成によれば、停止後短時間のうちに冷却液循環ポンプ3を駆動することにより、上述の温度差を小さくすることができる。
【0037】
また、本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムによれば、ポンプ制御手段10は、燃料電池1付近の冷却液の温度が高い程、所定時間Aを短く設定する。一般に、燃料電池1付近の冷却液の温度が高いほど停止後短時間のうちに上述の温度差が発生する可能性が高い。従って、上記のような構成によれば、停止後短時間のうちに冷却液循環ポンプ3を駆動することにより、上述の温度差を小さくすることができる。
【0038】
また、本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムによれば、ポンプ制御手段10は、燃料電池1から排出された冷却液温度とバイパス流路6内の冷却液温度の温度差が大きい程、所定時間Bを長く設定するので、温度差が大きい程、冷却液循環ポンプ3を長時間駆動することにより、上述の温度差を小さくすることができる。
【実施例3】
【0039】
〔燃料電池システムの構成〕
本発明の第3の実施形態となる燃料電池システムは、図11に示すように、第1の実施形態となる燃料電池システムの構成に加えて、燃料電池1から排出された冷却水の温度を検出する温度センサ21と、バイパス流路6を流れる冷却水の温度を検出する温度センサ22とを備える。そして、このような構成を有する燃料電池システムは、上述の停止制御処理実行後、以下に示す停止後制御処理を実行することにより、次回起動時の起動時間及び暖機時間を短縮する。以下、図12に示すフローチャートを参照して、この停止後制御処理を実行する際の燃料電池システムの動作について説明する。
【0040】
〔停止後制御処理〕
図12に示すフローチャートは、燃料電池システムが停止するのに応じて開始となり、停止後制御処理はステップS41の処理に進む。
【0041】
ステップS41の処理では、ポンプ制御手段10が、温度センサ21により燃料電池1から排出された冷却液の温度を検出する。これにより、ステップS41の処理は完了し、停止後制御処理はステップS42の処理に進む。
【0042】
ステップS42の処理では、ポンプ制御手段10が、温度センサ22によりバイパス流路6内の冷却液の温度を検出する。これにより、ステップS42の処理は完了し、停止後制御処理はステップS43の処理に進む。
【0043】
ステップS43の処理では、ポンプ制御手段10が、ステップS41の処理により検出された冷却液の温度とステップS42の処理により検出された冷却液の温度の差を算出すし、算出された温度差が所定温度A以上であるか否かを判別する。そして、判別の結果、所定温度A以上でない場合、ポンプ制御手段10は停止後制御処理をステップS41の処理に戻す。一方、所定温度A以上である場合には、ポンプ制御手段10は停止後制御処理をステップS44の処理に進める。
【0044】
ステップS44の処理では、ポンプ制御手段10が、冷却液循環ポンプ3の駆動を開始することにより燃料電池1内部に冷却液を循環させる。これにより、ステップS44の処理は完了し、停止後制御処理をステップS45の処理に進める。
【0045】
ステップS45の処理では、ポンプ制御手段10が、温度センサ21により燃料電池1から排出された冷却液の温度を検出する。これにより、ステップS45の処理は完了し、停止後制御処理はステップS46の処理に進む。
【0046】
ステップS46の処理では、ポンプ制御手段10が、温度センサ22によりバイパス流路6を流れる冷却液の温度を検出する。これにより、ステップS46の処理は完了し、停止後制御処理はステップS47の処理に進む。
【0047】
ステップS47の処理では、ポンプ制御手段10が、ステップS45の処理により検出された冷却液の温度とステップS46の処理により検出された冷却液の温度の差を算出すし、算出された温度差が所定温度B(<所定温度A)以上であるか否かを判別する。そして、判別の結果、所定温度B以上でない場合、ポンプ制御手段10は停止後制御処理をステップS45の処理に戻す。一方、所定温度B以上である場合には、ポンプ制御手段10は停止後制御処理をステップS48の処理に進める。
【0048】
ステップS48の処理では、ポンプ制御手段10が、冷却液循環ポンプ3の駆動を停止する。これにより、ステップS48の処理は完了し、一連の停止後制御処理は終了する。
【0049】
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態となる燃料電池システムによれば、ポンプ制御手段10が、システム停止後、燃料電池1から排出された冷却液の温度とバイパス流路6内の冷却液の温度の差が所定温度A以上になった場合、冷却液循環ポンプ3を駆動するので、上述の温度差を小さくすることができる。
【0050】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。このように、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0051】
1:燃料電池
2:冷却液循環流路
3:冷却液循環ポンプ
4:ラジエータ
5:ラジエータ側流路
6:バイパス流路
7:三方弁
8:ラジエータファン
9:三方弁制御手段
10:ポンプ制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード及びカソードにそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する燃料電池と、
前記燃料電池に冷却液を循環させることにより燃料電池を冷却する循環ポンプと、
冷却液を冷却するラジエータを経由するラジエータ流路と、当該ラジエータを迂回するバイパス流路との間で前記冷却液の循環流路を切り替える三方弁と、
システム停止時に冷却液の循環流路をバイパス流路側に切り替えるように前記三方弁を制御する制御手段とを備え、
システム停止時に冷却液の循環流路をバイパス流路側に切り替えた状態を、次のシステム起動時まで維持し、次のシステム起動時に、冷却液の循環流路がバイパス流路側となっている状態で前記燃料電池の暖機を行うことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御手段は、システム起動時、冷却液の循環流路をバイパス流路側に切り替えるように前記三方弁を制御し、当該三方弁がバイパス流路側に全開状態になった後に前記循環ポンプの駆動を開始することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記制御手段は、システム停止時、バイパス流路側に略全開状態になるように三方弁を制御し、システム起動時、バイパス流路側に全開状態になるように三方弁を制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記制御手段は、システム停止後から外気温と冷却液温度により定まる第1の所定時間が経過した後、燃料電池付近の冷却液温度と燃料電池から離れた位置の冷却液温度の温度差により定まる第2の所定時間だけ前記循環ポンプを駆動することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池システムであって、
外気温を検出する外気温検出手段を備え、
前記制御手段は、前記外気温度検出手段により検出された外気温が低い程、前記第1の所定時間を短く設定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池付近の冷却液の温度を検出する冷却液温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記冷却液温度検出手段により検出された冷却液の温度が高い程、前記第1の所定時間を短く設定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のうち、いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池付近の冷却液の温度を検出する第1の冷却液温度検出手段と、
前記燃料電池から離れた位置の冷却液の温度を検出する第2の冷却液温度検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の冷却液温度検出手段により検出された冷却液の温度と前記第2の冷却液温度検出手段により検出された冷却液の温度の差が大きい程、前記第2の所定時間を長く設定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池付近の冷却液の温度を検出する第1の冷却液温度検出手段と、
前記燃料電池から離れた位置の冷却液の温度を検出する第2の冷却液温度検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記燃料電池の発電停止時後に前記第1の冷却液温度検出手段により検出された冷却液の温度と前記第2の冷却液温度検出手段により検出された冷却液の温度の差が所定温度以上になった場合、前記循環ポンプを駆動することを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−23054(P2012−23054A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214509(P2011−214509)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2005−207813(P2005−207813)の分割
【原出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】