燃料電池システム
【課題】アイドルストップからの復帰時におけるバッテリの過放電やドライバビリティの低下を防止する。
【解決手段】電動モータと、燃料電池スタックと、燃料供給装置と、燃料電池スタックと燃料供給装置とを含むパワープラントを制御するコントローラと、を備え、コントローラが、燃料電池スタックに要求されるスタック出力応答要求を演算するスタック出力応答要求演算部S110と、アイドルストップ中スタック設定電圧を上限値は高電位劣化を回避しうる値に、下限値はスタック出力応答要求が大きいほど高く、小さいほど低く設定するアイドルストップ中スタック電圧設定部S120と、アイドルストップ実行中に実スタック電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧の下限値より小さくなったら回復操作を実行するアイドルストップ中スタック電圧回復操作部S130と、を備える。
【解決手段】電動モータと、燃料電池スタックと、燃料供給装置と、燃料電池スタックと燃料供給装置とを含むパワープラントを制御するコントローラと、を備え、コントローラが、燃料電池スタックに要求されるスタック出力応答要求を演算するスタック出力応答要求演算部S110と、アイドルストップ中スタック設定電圧を上限値は高電位劣化を回避しうる値に、下限値はスタック出力応答要求が大きいほど高く、小さいほど低く設定するアイドルストップ中スタック電圧設定部S120と、アイドルストップ実行中に実スタック電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧の下限値より小さくなったら回復操作を実行するアイドルストップ中スタック電圧回復操作部S130と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムのアイドルストップ中におけるスタック電圧制御に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムにより発電した電力によって走行する車両等において、負荷が比較的低い走行状態等には、燃料電池による発電を中止する、いわゆるアイドルストップを行う場合がある。アイドルストップ中は、カソードへの空気供給が停止されるが、カソード内に残留している酸素がカソードに透過してきた水素と反応することで消費され、スタック総電圧は徐々に低下する。
【0003】
アイドルストップは、バッテリ充電量が所定の閾値を下回った場合や、加速要求等によって負荷が増大した場合に終了する。しかし、燃料供給を再開してから電流を取り出せるようになるまでに時間を要する。また、電動モータの特性上、同じアクセル操作であっても、車速が高くなるほど加速時に要求される電力応答性能は高くなる。そして、バッテリ出力可能電力は、バッテリの充電状態、温度、劣化状態等により決まる。
【0004】
このため、アイドルストップからの復帰時に、加速要求の大きさに応じた出力で駆動用の電動モータを駆動すると、燃料電池の発電量で不足する電力をバッテリから供給することになり、その結果バッテリの過放電を招くこととなるおそれがある。一方、電動モータの出力を制限すると、ドライバビリティの低下を招くこととなる。
【0005】
そこで、特許文献1では、要求電力の増大を推定した場合に、アイドルストップからの復帰に先立って水素あるいは空気の供給を再開している。また、アイドルストップ中にスタック電圧を所定電圧以下になった場合にも、水素あるいは空気の供給を再開している。これらの制御により、アイドルストップからの復帰時における発電の遅れを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4182732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、シフト操作、ブレーキオフ、またはナビゲーションシステムによる上り坂の検知等に基づいて、その後にアクセルペダルが踏み込まれるであろうと推測し、燃料供給を再開している。そして、上述したように燃料供給再開からスタックの電圧回復までには時間を要する。したがって、要求電力の大きさしだいでは、バッテリの過放電やドライバビリティの低下を回避できない場合がある。
【0008】
そこで、本発明ではアイドルストップからの復帰時に、バッテリの過放電やドライバビリティの低下を確実に回避できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃料電池システムは、電力の供給により移動体を走行させる駆動部と、駆動部に電力を供給する燃料電池スタックと、燃料電池スタックに発電用の燃料を供給する燃料供給装置と、燃料電池スタックと燃料供給装置とを含むパワープラントを制御するコントローラと、を備える。
【0010】
そして、コントローラが、燃料電池スタックに要求される電力応答であるスタック出力応答要求を演算するスタック出力応答要求演算部を備える。また、アイドルストップ実行中のスタック電圧として設定するアイドルストップ中スタック設定電圧の下限値をスタック出力応答要求が大きいほど高く、小さいほど低く設定するアイドルストップ中スタック電圧設定部を備える。さらに、アイドルストップ実行中に燃料電池スタックの実電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧の下限値より小さくなったら燃料ガスまたは空気を供給する回復操作を実行するアイドルストップ中スタック電圧回復操作部を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スタック出力応答要求が高くなるほどアイドルストップ中のスタック電圧が高く制御されるので、アイドルストップから復帰する際の燃料電池スタックの発電応答性が向上する。その結果、アイドルストップからの復帰時におけるバッテリの過放電やドライバビリティの低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態を適用する車両用の電力供給システムの構成図である。
【図2】燃料電池システムの一例を示す図である。
【図3】コントローラが実行する第1実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】車速とスタック出力応答要求の関係を示すマップの一例である。
【図5】モータトルク及びモータ出力と車速との関係を示す図である。
【図6】アイドルストップ時スタック電圧とスタック出力応答要求との関係を示すマップの一例である。
【図7】コンプレッサを駆動するか否かを判定するためにコントローラが実行するサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態に係る制御ルーチンを実行した場合のタイムチャートである。
【図9】コントローラが実行する第2実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】バッテリ出力可能電力を算出するための演算ブロックの一例である。
【図11】スタック出力応答要求とバッテリ出力可能電力との関係を示すマップの一例である。
【図12】第2実施形態に係る制御ルーチンを実行した場合のタイムチャートである。
【図13】コントローラが実行する第3実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】パワープラント出力応答要求性能とスタック冷却水温との関係を示すマップの一例である。
【図15】スタック劣化係数を説明するための図である。
【図16】パワープラント出力応答要求性能とスタック劣化係数との関係を示すマップの一例である。
【図17】パワープラント出力応答要求性能とスタック内部抵抗との関係を示すマップの一例である。
【図18】パワープラント出力応答要求性能とアイドルストップ継続時間との関係を示すマップの一例である。
【図19】パワープラント出力応答要求性能と大気圧との関係を示すマップの一例である。
【図20】スタック出力応答要求とパワープラント出力応答性能との関係を示すマップの一例である。
【図21】コントローラが実行する第4実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図22】スタック出力応答要求と補機消費電力との関係を示すマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を適用する車両用の電力供給システムの構成図である。図2は、燃料電池システムの一例を示す図である。
【0014】
電力供給システムは、燃料電池スタック1と、負荷としての電動モータ2と、バッテリ3と、補機類6と、これら燃料電池スタック1、電動モータ2、バッテリ3、及び補機類6の間の電圧を調整するパワーマネージャ5とを備える。
【0015】
燃料電池スタック1は、直流電源であり、図2に示すように電解質膜1Cをアノード1Aとカソード1Bで挟持した単電池が複数積層された構造を有する。なお、図2では単電池のみを示している。
【0016】
アノード1Aには水素供給通路25から燃料としての水素ガスが供給される。カソード1Bには空気供給通路26から酸化剤ガスとしての空気が供給される。
【0017】
水素供給通路25には、圧力調整弁22が介装されている。これにより、水素タンク20内の高圧水素は、所定の圧力まで減圧されてからアノード1Aに供給される。なお、圧力調整弁22は一つのみ記載したが、複数の弁を直列に配置して、段階的に減圧してもよい。アノード1Aの出口側には、アノード1Aで消費されなかった燃料ガスを放出するパージバルブ24が備えられる。
【0018】
空気は、コンプレッサ21により空気供給通路26からカソード1Bに供給される。カソード1Bの出口側には空気圧調整弁23が設けられる。これによりカソード圧力が制御される。
【0019】
バッテリ3は直流電源であり、例えばリチウムイオン電池から構成されている。
【0020】
電動モータ2は、燃料電池スタック1及びバッテリ3にインバータ4を介して接続されており、燃料電池1またはバッテリ3から供給された電力により車輪11を駆動する。
【0021】
補機類6は、コンプレッサ21の他に、ワイパ等の走行に関係する電気装備品や、オーディオ、カーナビゲーション、エアコンディショナ等の機器も含む。
【0022】
パワーマネージャ5はDC/DCコンバータを含んで構成される。そして、燃料電池スタック1から電力を取り出して、その電力を電動モータ2またはバッテリ3へ供給する。なお、内部素子過熱等によりパワーマネージャ5を通過可能な電力に制限がかかることがある。この場合、燃料電池スタック1、バッテリ3から電動モータ2及び補機類6へ供給される電力に制限がかかることになる。なお、以下の説明において、燃料電池スタック1、パワーマネージャ5及びコンプレッサ21等を含めてパワープラントと称する場合がある。
【0023】
上述した電力供給システムの各構成は、コントローラ7により制御される。車速を検出する車速センサ8、燃料電池スタック1の電圧を検出するスタック電圧センサ9、及びバッテリ3の蓄電量を検出するバッテリセンサ10の各検出値は、コントローラ7に入力される。なお、コントローラ7は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ7を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0024】
コントローラ7は、例えば低負荷走行時のように要求電力が低い場合には、燃料電池スタック1の発電を一時的に停止してバッテリ3の電力だけで電動モータ2や補機類6等を駆動する、いわゆるアイドルストップを実行する。
【0025】
アイドルストップ中は、カソードへの空気供給が停止されるが、カソード内に残留している酸素がカソードに透過してきた水素と反応することで消費され、スタック総電圧は徐々に低下する。
【0026】
アイドルストップは、バッテリ充電量が所定の閾値を下回った場合や、加速要求等によって要求電力が増大した場合に終了する。しかし、燃料電池スタック1が燃料供給を再開してから電流を取り出せる状態になるまでには時間を要する。また、同じアクセル操作であっても、車速が高くなるほど加速時に要求される電力応答性能、つまり要求されるスタック発電応答性は高くなる。一方、バッテリ3の出力可能電力は、バッテリ3の充電状態、温度、劣化状態等により決まる。
【0027】
このため、アイドルストップからの復帰時に、加速要求の大きさに応じた出力で駆動用の電動モータ2を駆動すると、燃料電池スタック1の発電量で不足する電力をバッテリ3から供給することとなり、その結果バッテリ3の過放電を招くおそれがある。一方、バッテリ3の過放電を防止するために加速時における電動モータ2の出力を制限すると、ドライバビリティの低下を招くこととなる。
【0028】
そこで、アイドルストップからの復帰時に、バッテリ3の過放電やドライバビリティの低下を回避するために、コントローラ7は次の制御ルーチンを実行する。
【0029】
図3は、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンでは、アイドルストップから復帰した場合に燃料電池スタック1に要求される出力応答性が高いほど、アイドルストップ中の燃料電池スタック1のスタック電圧下限値を高く制御する。そして、コントローラ7は、アイドルストップ中に実スタック電圧がスタック電圧下限値以下になったら、回復操作としてカソード1Bに空気を供給する。以下、制御ルーチンの詳細について各ステップにしたがって説明する。
【0030】
ステップS100で、コントローラ7は車速センサ8の検出値、及びスタック電圧センサ9の検出値を読み込む。
【0031】
ステップS110で、コントローラ7は車速に基づいてスタック出力応答要求を演算する。車速を用いるのは、アクセル踏み込み量が同じ場合、高車速の方が高いスタック出力応答を要求されるからである。
【0032】
そこで、図4に示すような車速とスタック出力応答要求の関係を示すマップを予め作成しておき、これを検索する。図4は縦軸がスタック出力応答要求[kW/sec]、横軸が車速[km/h]である。車速がゼロからV1まではスタック出力応答要求は車速の増大に比例して高くなり、車速V1を超えると一定値になっている。この車速V1は、モータトルク及びモータ出力と車速との関係を示す図5において、モータトルクが低下し始めてモータ出力が上限に達する車速である。
【0033】
ステップS120で、コントローラ7は、図6に示すマップを用いてアイドルストップ時スタック設定電圧の下限値を演算する。図6は縦軸がアイドルストップ時スタック電圧[V]、横軸がスタック出力応答要求[kW/sec]である。
【0034】
アイドルストップ時スタック電圧の下限値は、スタック出力応答要求が高くなるほど大きくなる。ただし、その絶対値はモータ2や補機類6等の駆動に必要な電力等、車両の仕様によって絶対値は異なる。なお、アイドルストップ時スタック電圧の上限値は、高電位劣化を回避し得る上限値である。このようなマップから、ステップS110で算出したスタック出力応答要求に対応するアイドルストップ時スタック電圧の上限値及び下限値を求める。
【0035】
ステップS130で、コントローラ7は、コンプレッサ21を駆動するか否かを判定するために、図7に示すサブルーチンを実行する。
【0036】
ステップS700で、コントローラ7は実スタック電圧がアイドルストップ時スタック電圧の下限値以下であるか否かを判定する。下限値以下の場合はステップS710の処理を実行し、下限値より大きい場合はステップS720の処理を実行する。
【0037】
ステップS710で、コントローラ7はコンプレッサ21を駆動してカソード1Bに空気を供給する。これによりカソード1Bの酸素不足を解消する。なお、空気供給は必ずしも連続的に行う必要はなく、間欠的に供給してもよい。
【0038】
ステップS720で、コントローラ7は現在空気供給中であるか否かを判定する。空気供給中であればステップS730の処理を実行し、空気供給中でなければ本サブルーチンを終了する。
【0039】
ステップS730で、コントローラ7は空気供給完了タイミングか否かを判定する。空気供給完了タイミングは、例えば、コンプレッサ21の駆動時間、またはカソード1Bへの投入空気量を予め設定しておき、その設定値に達したタイミングとする。また、実スタック電圧が上限値に到達した場合も空気供給完了タイミングとする。
【0040】
空気供給完了タイミングであれば、ステップS740の処理を実行し、そうでない場合は本サブルーチンを終了する。
【0041】
ステップS740で、コントローラ7は空気供給を停止するためにコンプレッサ21を停止する。
【0042】
上述した制御ルーチンを実行した場合の作用、効果について説明する。
【0043】
図8は、アイドルストップ中に図3の制御ルーチンを実行した場合の、車速、スタック電圧、及びコンプレッサ流量についてのタイムチャートである。なお、コンプレッサ流量は、コンプレッサ21を通過する空気量である。
【0044】
タイミングt1より前では、車速ゼロで一定である。したがって、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値も一定である。また、実スタック電圧は時間経過とともに低下しているが、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値よりも大きいので、コンプレッサ21は稼働せず、コンプレッサ流量はゼロである。
【0045】
タイミングt1で車速が上昇し始めると、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値も上昇する。そして、タイミングt2で実スタック電圧とアイドルスストップ時スタック設定電圧下限値が一致したら、コンプレッサ21が稼働してコンプレッサ流量が増加する。これにより、実スタック電圧は上昇し、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値より大きくなる。
【0046】
タイミングt2を経過した後、車速が低下し始めると、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値も低下する。実スタック電圧は、コンプレッサ21が稼働しているため、上昇し続ける。
【0047】
タイミングt4でコンプレッサ21が予め設定した稼働時間に達したことによって停止すると、その後、カソード1B内の酸素量の低下に伴って実スタック電圧も低下する。
【0048】
このように、コントローラ7は、アイドルストップ中の車速が高くなるほど、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値を高く設定する。そして、コントローラ7は、実スタック電圧がアイドルストップ時スタック設定電圧下限値を下回らないよう制御する。これにより、アイドルストップからの復帰時におけるスタック発電応答性が確保される。
【0049】
ところで、仮にアイドルストップ中スタック設定電圧下限値をタイミングt1における値に固定すると、実スタック電圧はタイミングt2以降も低下し続ける。したがって、上述したバッテリ3の過放電やドライバビリティの低下を回避できない。一方、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値をタイミングt2やt3における値のように高車速に対応した値に固定すると、結果的にコンプレッサ21の稼働頻度が増える。これにより、消費電力の増大による燃費の悪化や、音振性能の悪化を招くこととなる。
【0050】
これに対して、本制御ルーチンでは、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値を車速に応じて設定するので、燃費の悪化や音振性能の悪化を回避することができる。
【0051】
なお、コンプレッサ21の稼働時間が予め設定した時間に達する前であっても、実スタック電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧上限値まで上昇したら、コンプレッサ21を停止する。
【0052】
以上説明したよぅに、第1実施形態によれば次の効果が得られる。
【0053】
(1)コントローラ7が、スタック出力応答要求を演算し、アイドルストップ中スタック設定電圧を、上限値は高電位劣化を回避しうる値に、下限値はスタック出力応答要求が大きいほど高く、小さいほど低く設定する。そして、アイドルストップ実行中に燃料電池スタック1の実電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧下限値より小さくなったら回復操作を実行する。これにより、スタック出力応答要求が大きい場合、つまり燃料電池スタック1に要求される応答性が高いほどアイドルストップからの復帰時におけるスタック電圧が高まる。その結果、スタック電力応答性を向上させることができる。また、実スタック電圧に応じて回復操作を実施するので、補機類6等の不要な稼働を抑制できる。その結果、燃費や音振性能の低下を防止できる。
【0054】
(2)コントローラ7は、車速が高いほど高いスタック出力応答要求を算出する。これにより、燃料電池スタック1に要求される応答性を的確に反映したスタック出力応答要求を算出することができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態のシステムの構成は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、コントローラ7が、バッテリ3の状態量としてバッテリ蓄電量の他にバッテリ温度とバッテリ劣化係数を読み込む点で相違する。バッテリ温度はバッテリ温度センサで検出する。バッテリ劣化係数は、コントローラ7が算出する。バッテリ劣化係数とは、充電回数を重ねる毎に劣化するというバッテリの特性に基づく係数であり、劣化するほど大きな値となる。バッテリ劣化係数の算出は、例えば、充電回数をカウントし、予め作成しておいた充電回数と劣化度合いとの関係を示すマップを充電回数で検索する。もちろん、他の公知の手法で行ってもよい。
【0056】
また、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンの、スタック出力応答要求の演算内容が第1実施形態とは異なる。本実施形態では、バッテリの状態量に応じてスタック出力応答要求を演算する。運転者のアクセルペダル踏み込み量に応じて加速する場合、アクセルペダル踏み込み量に応じて電動モータ2に要求される出力、過渡応答性が設定される。この場合、電動モータ2への要求出力が同じでも、バッテリ出力可能電力が小さくなるほど、燃料電池スタック1に要求される過渡応答性は大きくなる。そこで、バッテリの状態量に応じてスタック出力応答要求を演算する。
【0057】
図9は、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。第1実施形態では、スタック出力応答要求を車速に基づいて算出しているが、第2実施形態では、バッテリ出力可能電力に基づいて算出する点が異なる。以下、ステップに従って説明する。
【0058】
ステップS200で、コントローラ7は実スタック電圧を読み込む。
【0059】
ステップS210で、コントローラ7はバッテリ蓄電量、バッテリ温度、及びバッテリ劣化係数を読み込む。
【0060】
ステップS220で、コントローラ7はバッテリ出力可能電力を演算する。図10はバッテリ出力可能電力を算出するための演算ブロックの一例を示す。
【0061】
まず、バッテリ蓄電量とバッテリ温度を用いて、バッテリ出力上限マップからバッテリ出力上限を求める。図10に示すように、バッテリ出力上限はバッテリ蓄電量が多くなるほど高くなる。また、バッテリ蓄電量が同じ場合には、バッテリ温度が高いほどバッテリ出力上限も高くなる。
【0062】
次に、バッテリ劣化係数を用いて、バッテリ劣化出力補正値マップからバッテリ劣化出力補正値を求める。図10に示すように、バッテリ劣化出力補正値は、バッテリ劣化係数が大きくなると小さくなる。
【0063】
そして、バッテリ出力上限をバッテリ劣化出力補正値で補正したものを、バッテリ出力可能電力とする。
【0064】
ステップS230で、コントローラ7はスタック出力応答要求を演算する。ここでは、図11に示すように、スタック出力応答要求とバッテリ出力可能電力との関係を示すマップを用いる。図11に示すように、スタック出力応答要求は、バッテリ出力可能電力が大きくなるほど低くなる。これは、バッテリ出力可能電力が大きくなれば、バッテリ3から供給される電力で加速時に必要な電力を賄うことができるようになるからである。
【0065】
ステップS240、ステップS250は、それぞれ図3のステップS120及びステップS130と同様の処理なので、説明を省略する。
【0066】
図12は、アイドルストップ中に本制御ルーチンを実行した場合の、車速、バッテリ蓄電量、バッテリ出力可能電力、スタック電圧、及びコンプレッサ流量についてのタイムチャートである。車速はタイミングt3まで一定で、タイミングt3から低下している。
【0067】
アイドルストップ実行時間の経過にともなって、バッテリ蓄電量は低下している。これに伴い、バッテリ出力可能電力も低下している。そして、バッテリ出力可能電力の低下に伴って、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値は上昇している。
【0068】
また、実スタック電圧もアイドルストップ実行時間の経過に伴って低下している。タイミングt1で実スタック電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧下限値まで低下すると、コンプレッサ21が稼働して、実スタック電圧は上昇に転じる。コンプレッサ21はタイミングt2で予め設定した稼働時間が経過したことにより停止する。
【0069】
タイミングt1からタイミングt3の間も、バッテリ蓄電量は低下し続ける。これに伴ってバッテリ出力可能電力も低下し続ける。そして、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値は上昇し続ける。
【0070】
タイミングt3以降、車速が低下し始めると、電力回生によりバッテリ蓄電量が増加に転じる。これによりバッテリ出力可能電力も増大し始めるので、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値は低下し始める。このため、コンプレッサ21の停止後に実スタック電圧は低下し続けているが、コンプレッサ21は再稼働していない。
【0071】
このように、バッテリ出力可能電力が低くなるほどアイドルストップ中スタック設定電圧下限値を高く制御することによっても、第1実施形態と同様に、アイドルストップからの復帰時におけるスタック発電応答性を確保して、バッテリ3の過放電の防止及びドライバビリティの低下防止を実現することができる。
【0072】
なお、上記説明では、バッテリ出力可能電力をバッテリ蓄電量、バッテリ温度、及びバッテリ劣化情報の3つの因子を用いて演算しているが、これらのうち、いずれか1つまたは2つを用いて演算してもよい。
【0073】
以上説明したよぅに、第2実施形態によれば第1実施形態と同様の効果に加えて、さらに次の効果が得られる。
【0074】
(3)コントローラ7は、バッテリ出力可能電力が低いほど高いスタック出力応答要求を算出する。これにより、パワープラントに要求される過渡応答性に応じたスタック出力応答要求を設定することができる。
【0075】
(第3実施形態)
第3実施形態のシステムの構成は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、コントローラ7によるスタック出力応答要求の演算内容が第1実施形態と異なる。本実施形態では、燃料電池スタック1、パワーマネージャ5及びコンプレッサ21等を含むパワープラントの応答時定数に応じてスタック出力応答要求を演算する。なお、コントローラ7は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、スタック出力応答要求が高くなるほど、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値を高く算出する。また、パワープラントの応答時定数を、以下の説明ではパワープラント出力応答性能と称する。
【0076】
パワープラント出力応答性能が低下するほど、電動モータ2の出力が運転者のアクセル操作量から定まる目標出力に到達するまでの時間が長くなる。そこで、パワープラント出力応答性能が低いほど、コントローラ7が高いスタック出力応答性能要求を算出するようにする。これにより、パワープラント出力応答性能が低いほどアイドルストップ中スタック設定電圧下限値が高く設定される。その結果、パワープラント出力応答性能が低下していても、アイドルストップから復帰する際の電動モータ2の応答性を確保することができる。
【0077】
ところで、パワープラント出力応答性能が低くなる要因は、燃料電池スタック1に起因するものと、燃料電池スタック1以外に起因するものがある。燃料電池スタック1に起因する要因として、第1にスタック冷却水温度が挙げられる。スタック冷却水温が低くなるほど、燃料電池スタック1の出力応答性能は低くなる。したがって、図14に示すように、スタック冷却水温が低くなるほどパワープラント出力応答性能も低くなる。
【0078】
第2の要因として、燃料電池スタック1の劣化が挙げられる。図15に示すように、燃料電池スタック1が劣化すると、同じスタック電流であってもスタック電圧が低くなる。これは、経時劣化により内部抵抗が変化するためである。このような劣化の度合いをスタック劣化係数とすると、図16に示すように、燃料電池スタック1が劣化してスタック劣化係数が大きくなるほど、パワープラント出力応答性能が低下する。
【0079】
第3の要因として、燃料電池スタック1の内部抵抗(HFR)が挙げられる。図17に示すように、HFRが大きくなるほどパワープラント出力応答性能が低下する。
【0080】
第4の要因として、アイドルストップ時間が挙げられる。アイドルストップ中は、カソード1B内の酸素が、カソード1Bに浸透してきた水素と反応することで消費される。このため、アイドルストップ時間が長くなるほど、燃料電池スタック1及び流路内の窒素濃度が高くなる。そして、窒素濃度が高まるほど、水素及び空気を供給した場合のスタック発電応答性能が低下する。したがって、図18に示すように、アイドルストップ時間が長くなるほど、パワープラント出力応答性能が低下する。
【0081】
一方、燃料電池スタック1以外に起因する要因としては、第1に大気圧が挙げられる。大気圧が低くなるほどコンプレッサ21の吐出量が低下するので、結果的に燃料電池スタック1の出力応答性能が低下する。このため、図19に示すように大気圧が低いほどパワープラント出力応答性能が低下する。
【0082】
燃料電池スタック1以外に起因する第2の要因としては、パワープラントに対する出力制限が挙げられる。例えば、内部素子過熱によってパワーマネージャ5を通過可能な電力に制限がかかると、燃料電池スタック1またはバッテリ3から電動モータ2へ供給される電力が制限され、パワープラント出力応答性能が低下する。また、コンプレッサ21の吐出量に制限がかかった場合も同様である。
【0083】
次に、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンについて、具体的に説明する。
【0084】
図13は、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する、第3実施形態の第1実施例に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0085】
ステップS300で、コントローラ7はスタック電圧を読み込む。
【0086】
ステップS310で、コントローラ7はスタック冷却水温度を読み込む。スタック冷却水温度は、図示しない冷却水温センサにより検出する。
【0087】
ステップS320で、コントローラ7はパワープラント出力応答性能を演算する。具体的には、ステップS310で読み込んだスタック冷却水温を用いて図14に示すマップを検索する。上記のステップS310とステップS320がパワープラントの出力応答性能を検知する手段に相当する。
【0088】
ステップS330で、コントローラ7はスタック出力応答要求を演算する。具体的には、ステップS320で算出したパワープラント出力応答性能を用いて、図20に示すスタック出力応答要求マップを検索する。図20に示すように、スタック出力応答要求は、パワープラント出力応答性能が低いほど高くなっている。
【0089】
ステップS340、ステップS350は、それぞれ図3のステップS120、ステップS130と同様なので説明を省略する。
【0090】
このように、パワープラント出力応答性能が低いほどスタック出力応答要求は高くなり、結果的にアイドルストップ中スタック設定電圧下限値が高くなる。すなわち、パワープラント出力応答性能が低下した分だけアイドルストップ中スタック設定電圧下限値を高くすることにより、アイドルストップから復帰する際の、運転者の要求に対する電動モータ2の応答性を確保することができる。
【0091】
第3実施形態の第2実施例として、図13のステップS310でスタック劣化係数を算出し、ステップS320でスタック劣化係数を用いて図16に示すマップを検索してパワープラント出力応答性能を求めるようにしてもよい。
【0092】
スタック劣化係数は、次のように算出する。まず、燃料電池スタック1の新品時におけるスタック電流とスタック電圧の関係を基準状態として記憶しておく。一方、燃料電池スタック1の発電中にスタック電流とスタック電圧を読み込んでおく。そして、基準状態のスタック電圧と直近に読み込んだスタック電圧との差を基準状態のスタック電圧で除算したものをスタック劣化係数とする。なお、スタック劣化係数はこれに限られるものではなく、燃料電池スタック1の劣化度合いを示す指標となるものであればよい。例えば、新品時の内部抵抗と現在の内部抵抗に基づいてスタック劣化係数を設定してもよい。
【0093】
第3実施形態の第3実施例として、図13のステップS310でHFRを読み込み、ステップS320で図17に示すマップを検索してパワープラント出力応答性能を求めるようにしてもよい。
【0094】
第3実施形態の第3実施例として、図13のステップS310でアイドルストップ継続時間を読み込み、ステップS320で図18に示すマップを検索してパワープラント出力応答性能を求めるようにしてもよい。この場合、アイドルストップ継続時間は、コントローラ7でカウントしておく。
【0095】
第3実施形態の第4実施例として、図13のステップS310で大気圧を読み込み、ステップS320で、図19に示すマップを検索してパワープラント出力応答性能を求めるようにしてもよい。この場合、大気圧は図示しない大気圧センサにより検出する。
【0096】
第3実施形態の第5実施例として、図13のステップS310でパワープラントに対する出力制限がかかっているか否かを判定し、出力制限がかかっている場合にはステップS320で出力制限時用のパワープラント出力応答要求を設定するようにしてもよい。この場合、出力制限時用のパワープラント出力要求は、出力制限が無い場合に比べて高く設定する。
【0097】
上述した第2実施例−第5実施例によっても、第1実施例と同様に、アイドルストップから復帰する際の、運転者の要求に対する電動モータ2の応答性を確保することができる。
【0098】
以上説明したよぅに、第3実施形態によれば第1実施形態と同様の効果に加え、さらに次の効果が得られる。
【0099】
(4)コントローラ7は、パワープラントの出力応答性能が低いほど高いスタック出力応答要求を算出する。その結果、より高いアイドルストップ中スタック設定電圧下限値が設定され、アイドルストップ中のスタック電圧がより高く制御される。これにより、パワープラントの出力応答性能が低下している場合でも、アイドルストップから復帰して加速する場合等にバッテリの過放電を回避することができる。
【0100】
(第4実施形態)
第4実施形態のシステムの構成は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、コントローラ7によるスタック出力応答要求の演算内容が第1実施形態と異なる。本実施形態では、補機類6の消費電力(以下、補機消費電力という)に応じてスタック出力応答要求を演算する。なお、コントローラ7は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、スタック出力応答要求が高くなるほど、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値を高く算出する。
【0101】
運転者のアクセルペダル踏み込み量に応じて加速する場合、電動モータ2に対する要求出力は、例えばエアコンディショナのような補機類6の作動状態のいかんによらずアクセルペダル踏み込み量に応じて設定される。しかし、電動モータ2への要求出力が同じであっても、補機消費電力が大きくなるほど燃料電池スタック1に要求される過渡応答性は大きくなる。
【0102】
そこで、コントローラ7は、補機消費電力が大きいほど高いスタック出力応答要求を算出する。これにより、補機消費電力が大きいほどアイドルストップ中スタック設定電圧下限値は高くなり、結果として燃料電池スタック1の出力応答性能を確保することができる。
【0103】
図21は、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0104】
ステップS400で、コントローラ7はスタック電圧を読み込む。
【0105】
ステップS410で、コントローラ7は補機消費電力を演算する。例えば、エアコンディショナを作動させた場合に想定される消費電力を、エアコンディショナの仕様に基づいて予め求めておき、エアコンスイッチがONの場合にはその消費電力を用いる。また、燃料電池スタック1の出力電力と、バッテリ3の入出力電力と、電動モータ2及びインバータ4の消費電力と、から余っている電力を求め、これを補機消費電力としてもよい。本ステップが補機消費電力検出手段に相当する。
【0106】
ステップS420で、コントローラ7は補機消費電力を用いて図22に示すマップを検索することによって、スタック出力応答要求を算出する。図22は、補機消費電力とスタック出力応答要求との関係を示すマップである。補機消費電力が大きくなるほど、スタック出力応答要求が高くなっている。
【0107】
ステップS430、ステップS440については、それぞれ図3のステップS120、ステップS130と同様なので説明を省略する。
【0108】
本制御ルーチンによれば、補機消費電力が大きくなるほど高いスタック出力応答要求が算出され、その結果アイドルストップ中スタック設定電圧下限値が高くなる。すなわち、補機消費電力が大きくなるほど、アイドルストップ中のスタック電圧が高く制御される。
【0109】
これにより、アイドルストップからの復帰時等において、補機消費電力の大小にかかわらず、スタック発電応答性を確保することができる。
【0110】
以上説明したよぅに、第4実施形態によれば第1実施形態と同様の効果に加えて、さらに次の効果が得られる。
【0111】
(5)コントローラ7は、補機消費電力が大きいほど高いスタック出力応答要求を算出する。スタック出力応答要求を算出するにあたって補機消費電力を考慮することで、より車両状況に応じたスタック出力応答要求を算出することができる。その結果、アイドルストップから復帰しての加速時等におけるバッテリ過放電をより精度よく回避できる。
【0112】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0113】
1 燃料電池スタック
2 電動モータ
3 バッテリ
4 インバータ
5 パワーマネージャ
6 補機類
7 コントローラ
11 車輪
20 水素タンク
21 コンプレッサ
22 圧力調整弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムのアイドルストップ中におけるスタック電圧制御に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムにより発電した電力によって走行する車両等において、負荷が比較的低い走行状態等には、燃料電池による発電を中止する、いわゆるアイドルストップを行う場合がある。アイドルストップ中は、カソードへの空気供給が停止されるが、カソード内に残留している酸素がカソードに透過してきた水素と反応することで消費され、スタック総電圧は徐々に低下する。
【0003】
アイドルストップは、バッテリ充電量が所定の閾値を下回った場合や、加速要求等によって負荷が増大した場合に終了する。しかし、燃料供給を再開してから電流を取り出せるようになるまでに時間を要する。また、電動モータの特性上、同じアクセル操作であっても、車速が高くなるほど加速時に要求される電力応答性能は高くなる。そして、バッテリ出力可能電力は、バッテリの充電状態、温度、劣化状態等により決まる。
【0004】
このため、アイドルストップからの復帰時に、加速要求の大きさに応じた出力で駆動用の電動モータを駆動すると、燃料電池の発電量で不足する電力をバッテリから供給することになり、その結果バッテリの過放電を招くこととなるおそれがある。一方、電動モータの出力を制限すると、ドライバビリティの低下を招くこととなる。
【0005】
そこで、特許文献1では、要求電力の増大を推定した場合に、アイドルストップからの復帰に先立って水素あるいは空気の供給を再開している。また、アイドルストップ中にスタック電圧を所定電圧以下になった場合にも、水素あるいは空気の供給を再開している。これらの制御により、アイドルストップからの復帰時における発電の遅れを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4182732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、シフト操作、ブレーキオフ、またはナビゲーションシステムによる上り坂の検知等に基づいて、その後にアクセルペダルが踏み込まれるであろうと推測し、燃料供給を再開している。そして、上述したように燃料供給再開からスタックの電圧回復までには時間を要する。したがって、要求電力の大きさしだいでは、バッテリの過放電やドライバビリティの低下を回避できない場合がある。
【0008】
そこで、本発明ではアイドルストップからの復帰時に、バッテリの過放電やドライバビリティの低下を確実に回避できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃料電池システムは、電力の供給により移動体を走行させる駆動部と、駆動部に電力を供給する燃料電池スタックと、燃料電池スタックに発電用の燃料を供給する燃料供給装置と、燃料電池スタックと燃料供給装置とを含むパワープラントを制御するコントローラと、を備える。
【0010】
そして、コントローラが、燃料電池スタックに要求される電力応答であるスタック出力応答要求を演算するスタック出力応答要求演算部を備える。また、アイドルストップ実行中のスタック電圧として設定するアイドルストップ中スタック設定電圧の下限値をスタック出力応答要求が大きいほど高く、小さいほど低く設定するアイドルストップ中スタック電圧設定部を備える。さらに、アイドルストップ実行中に燃料電池スタックの実電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧の下限値より小さくなったら燃料ガスまたは空気を供給する回復操作を実行するアイドルストップ中スタック電圧回復操作部を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スタック出力応答要求が高くなるほどアイドルストップ中のスタック電圧が高く制御されるので、アイドルストップから復帰する際の燃料電池スタックの発電応答性が向上する。その結果、アイドルストップからの復帰時におけるバッテリの過放電やドライバビリティの低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態を適用する車両用の電力供給システムの構成図である。
【図2】燃料電池システムの一例を示す図である。
【図3】コントローラが実行する第1実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】車速とスタック出力応答要求の関係を示すマップの一例である。
【図5】モータトルク及びモータ出力と車速との関係を示す図である。
【図6】アイドルストップ時スタック電圧とスタック出力応答要求との関係を示すマップの一例である。
【図7】コンプレッサを駆動するか否かを判定するためにコントローラが実行するサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態に係る制御ルーチンを実行した場合のタイムチャートである。
【図9】コントローラが実行する第2実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】バッテリ出力可能電力を算出するための演算ブロックの一例である。
【図11】スタック出力応答要求とバッテリ出力可能電力との関係を示すマップの一例である。
【図12】第2実施形態に係る制御ルーチンを実行した場合のタイムチャートである。
【図13】コントローラが実行する第3実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】パワープラント出力応答要求性能とスタック冷却水温との関係を示すマップの一例である。
【図15】スタック劣化係数を説明するための図である。
【図16】パワープラント出力応答要求性能とスタック劣化係数との関係を示すマップの一例である。
【図17】パワープラント出力応答要求性能とスタック内部抵抗との関係を示すマップの一例である。
【図18】パワープラント出力応答要求性能とアイドルストップ継続時間との関係を示すマップの一例である。
【図19】パワープラント出力応答要求性能と大気圧との関係を示すマップの一例である。
【図20】スタック出力応答要求とパワープラント出力応答性能との関係を示すマップの一例である。
【図21】コントローラが実行する第4実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図22】スタック出力応答要求と補機消費電力との関係を示すマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を適用する車両用の電力供給システムの構成図である。図2は、燃料電池システムの一例を示す図である。
【0014】
電力供給システムは、燃料電池スタック1と、負荷としての電動モータ2と、バッテリ3と、補機類6と、これら燃料電池スタック1、電動モータ2、バッテリ3、及び補機類6の間の電圧を調整するパワーマネージャ5とを備える。
【0015】
燃料電池スタック1は、直流電源であり、図2に示すように電解質膜1Cをアノード1Aとカソード1Bで挟持した単電池が複数積層された構造を有する。なお、図2では単電池のみを示している。
【0016】
アノード1Aには水素供給通路25から燃料としての水素ガスが供給される。カソード1Bには空気供給通路26から酸化剤ガスとしての空気が供給される。
【0017】
水素供給通路25には、圧力調整弁22が介装されている。これにより、水素タンク20内の高圧水素は、所定の圧力まで減圧されてからアノード1Aに供給される。なお、圧力調整弁22は一つのみ記載したが、複数の弁を直列に配置して、段階的に減圧してもよい。アノード1Aの出口側には、アノード1Aで消費されなかった燃料ガスを放出するパージバルブ24が備えられる。
【0018】
空気は、コンプレッサ21により空気供給通路26からカソード1Bに供給される。カソード1Bの出口側には空気圧調整弁23が設けられる。これによりカソード圧力が制御される。
【0019】
バッテリ3は直流電源であり、例えばリチウムイオン電池から構成されている。
【0020】
電動モータ2は、燃料電池スタック1及びバッテリ3にインバータ4を介して接続されており、燃料電池1またはバッテリ3から供給された電力により車輪11を駆動する。
【0021】
補機類6は、コンプレッサ21の他に、ワイパ等の走行に関係する電気装備品や、オーディオ、カーナビゲーション、エアコンディショナ等の機器も含む。
【0022】
パワーマネージャ5はDC/DCコンバータを含んで構成される。そして、燃料電池スタック1から電力を取り出して、その電力を電動モータ2またはバッテリ3へ供給する。なお、内部素子過熱等によりパワーマネージャ5を通過可能な電力に制限がかかることがある。この場合、燃料電池スタック1、バッテリ3から電動モータ2及び補機類6へ供給される電力に制限がかかることになる。なお、以下の説明において、燃料電池スタック1、パワーマネージャ5及びコンプレッサ21等を含めてパワープラントと称する場合がある。
【0023】
上述した電力供給システムの各構成は、コントローラ7により制御される。車速を検出する車速センサ8、燃料電池スタック1の電圧を検出するスタック電圧センサ9、及びバッテリ3の蓄電量を検出するバッテリセンサ10の各検出値は、コントローラ7に入力される。なお、コントローラ7は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ7を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0024】
コントローラ7は、例えば低負荷走行時のように要求電力が低い場合には、燃料電池スタック1の発電を一時的に停止してバッテリ3の電力だけで電動モータ2や補機類6等を駆動する、いわゆるアイドルストップを実行する。
【0025】
アイドルストップ中は、カソードへの空気供給が停止されるが、カソード内に残留している酸素がカソードに透過してきた水素と反応することで消費され、スタック総電圧は徐々に低下する。
【0026】
アイドルストップは、バッテリ充電量が所定の閾値を下回った場合や、加速要求等によって要求電力が増大した場合に終了する。しかし、燃料電池スタック1が燃料供給を再開してから電流を取り出せる状態になるまでには時間を要する。また、同じアクセル操作であっても、車速が高くなるほど加速時に要求される電力応答性能、つまり要求されるスタック発電応答性は高くなる。一方、バッテリ3の出力可能電力は、バッテリ3の充電状態、温度、劣化状態等により決まる。
【0027】
このため、アイドルストップからの復帰時に、加速要求の大きさに応じた出力で駆動用の電動モータ2を駆動すると、燃料電池スタック1の発電量で不足する電力をバッテリ3から供給することとなり、その結果バッテリ3の過放電を招くおそれがある。一方、バッテリ3の過放電を防止するために加速時における電動モータ2の出力を制限すると、ドライバビリティの低下を招くこととなる。
【0028】
そこで、アイドルストップからの復帰時に、バッテリ3の過放電やドライバビリティの低下を回避するために、コントローラ7は次の制御ルーチンを実行する。
【0029】
図3は、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンでは、アイドルストップから復帰した場合に燃料電池スタック1に要求される出力応答性が高いほど、アイドルストップ中の燃料電池スタック1のスタック電圧下限値を高く制御する。そして、コントローラ7は、アイドルストップ中に実スタック電圧がスタック電圧下限値以下になったら、回復操作としてカソード1Bに空気を供給する。以下、制御ルーチンの詳細について各ステップにしたがって説明する。
【0030】
ステップS100で、コントローラ7は車速センサ8の検出値、及びスタック電圧センサ9の検出値を読み込む。
【0031】
ステップS110で、コントローラ7は車速に基づいてスタック出力応答要求を演算する。車速を用いるのは、アクセル踏み込み量が同じ場合、高車速の方が高いスタック出力応答を要求されるからである。
【0032】
そこで、図4に示すような車速とスタック出力応答要求の関係を示すマップを予め作成しておき、これを検索する。図4は縦軸がスタック出力応答要求[kW/sec]、横軸が車速[km/h]である。車速がゼロからV1まではスタック出力応答要求は車速の増大に比例して高くなり、車速V1を超えると一定値になっている。この車速V1は、モータトルク及びモータ出力と車速との関係を示す図5において、モータトルクが低下し始めてモータ出力が上限に達する車速である。
【0033】
ステップS120で、コントローラ7は、図6に示すマップを用いてアイドルストップ時スタック設定電圧の下限値を演算する。図6は縦軸がアイドルストップ時スタック電圧[V]、横軸がスタック出力応答要求[kW/sec]である。
【0034】
アイドルストップ時スタック電圧の下限値は、スタック出力応答要求が高くなるほど大きくなる。ただし、その絶対値はモータ2や補機類6等の駆動に必要な電力等、車両の仕様によって絶対値は異なる。なお、アイドルストップ時スタック電圧の上限値は、高電位劣化を回避し得る上限値である。このようなマップから、ステップS110で算出したスタック出力応答要求に対応するアイドルストップ時スタック電圧の上限値及び下限値を求める。
【0035】
ステップS130で、コントローラ7は、コンプレッサ21を駆動するか否かを判定するために、図7に示すサブルーチンを実行する。
【0036】
ステップS700で、コントローラ7は実スタック電圧がアイドルストップ時スタック電圧の下限値以下であるか否かを判定する。下限値以下の場合はステップS710の処理を実行し、下限値より大きい場合はステップS720の処理を実行する。
【0037】
ステップS710で、コントローラ7はコンプレッサ21を駆動してカソード1Bに空気を供給する。これによりカソード1Bの酸素不足を解消する。なお、空気供給は必ずしも連続的に行う必要はなく、間欠的に供給してもよい。
【0038】
ステップS720で、コントローラ7は現在空気供給中であるか否かを判定する。空気供給中であればステップS730の処理を実行し、空気供給中でなければ本サブルーチンを終了する。
【0039】
ステップS730で、コントローラ7は空気供給完了タイミングか否かを判定する。空気供給完了タイミングは、例えば、コンプレッサ21の駆動時間、またはカソード1Bへの投入空気量を予め設定しておき、その設定値に達したタイミングとする。また、実スタック電圧が上限値に到達した場合も空気供給完了タイミングとする。
【0040】
空気供給完了タイミングであれば、ステップS740の処理を実行し、そうでない場合は本サブルーチンを終了する。
【0041】
ステップS740で、コントローラ7は空気供給を停止するためにコンプレッサ21を停止する。
【0042】
上述した制御ルーチンを実行した場合の作用、効果について説明する。
【0043】
図8は、アイドルストップ中に図3の制御ルーチンを実行した場合の、車速、スタック電圧、及びコンプレッサ流量についてのタイムチャートである。なお、コンプレッサ流量は、コンプレッサ21を通過する空気量である。
【0044】
タイミングt1より前では、車速ゼロで一定である。したがって、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値も一定である。また、実スタック電圧は時間経過とともに低下しているが、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値よりも大きいので、コンプレッサ21は稼働せず、コンプレッサ流量はゼロである。
【0045】
タイミングt1で車速が上昇し始めると、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値も上昇する。そして、タイミングt2で実スタック電圧とアイドルスストップ時スタック設定電圧下限値が一致したら、コンプレッサ21が稼働してコンプレッサ流量が増加する。これにより、実スタック電圧は上昇し、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値より大きくなる。
【0046】
タイミングt2を経過した後、車速が低下し始めると、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値も低下する。実スタック電圧は、コンプレッサ21が稼働しているため、上昇し続ける。
【0047】
タイミングt4でコンプレッサ21が予め設定した稼働時間に達したことによって停止すると、その後、カソード1B内の酸素量の低下に伴って実スタック電圧も低下する。
【0048】
このように、コントローラ7は、アイドルストップ中の車速が高くなるほど、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値を高く設定する。そして、コントローラ7は、実スタック電圧がアイドルストップ時スタック設定電圧下限値を下回らないよう制御する。これにより、アイドルストップからの復帰時におけるスタック発電応答性が確保される。
【0049】
ところで、仮にアイドルストップ中スタック設定電圧下限値をタイミングt1における値に固定すると、実スタック電圧はタイミングt2以降も低下し続ける。したがって、上述したバッテリ3の過放電やドライバビリティの低下を回避できない。一方、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値をタイミングt2やt3における値のように高車速に対応した値に固定すると、結果的にコンプレッサ21の稼働頻度が増える。これにより、消費電力の増大による燃費の悪化や、音振性能の悪化を招くこととなる。
【0050】
これに対して、本制御ルーチンでは、アイドルストップ時スタック設定電圧下限値を車速に応じて設定するので、燃費の悪化や音振性能の悪化を回避することができる。
【0051】
なお、コンプレッサ21の稼働時間が予め設定した時間に達する前であっても、実スタック電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧上限値まで上昇したら、コンプレッサ21を停止する。
【0052】
以上説明したよぅに、第1実施形態によれば次の効果が得られる。
【0053】
(1)コントローラ7が、スタック出力応答要求を演算し、アイドルストップ中スタック設定電圧を、上限値は高電位劣化を回避しうる値に、下限値はスタック出力応答要求が大きいほど高く、小さいほど低く設定する。そして、アイドルストップ実行中に燃料電池スタック1の実電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧下限値より小さくなったら回復操作を実行する。これにより、スタック出力応答要求が大きい場合、つまり燃料電池スタック1に要求される応答性が高いほどアイドルストップからの復帰時におけるスタック電圧が高まる。その結果、スタック電力応答性を向上させることができる。また、実スタック電圧に応じて回復操作を実施するので、補機類6等の不要な稼働を抑制できる。その結果、燃費や音振性能の低下を防止できる。
【0054】
(2)コントローラ7は、車速が高いほど高いスタック出力応答要求を算出する。これにより、燃料電池スタック1に要求される応答性を的確に反映したスタック出力応答要求を算出することができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態のシステムの構成は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、コントローラ7が、バッテリ3の状態量としてバッテリ蓄電量の他にバッテリ温度とバッテリ劣化係数を読み込む点で相違する。バッテリ温度はバッテリ温度センサで検出する。バッテリ劣化係数は、コントローラ7が算出する。バッテリ劣化係数とは、充電回数を重ねる毎に劣化するというバッテリの特性に基づく係数であり、劣化するほど大きな値となる。バッテリ劣化係数の算出は、例えば、充電回数をカウントし、予め作成しておいた充電回数と劣化度合いとの関係を示すマップを充電回数で検索する。もちろん、他の公知の手法で行ってもよい。
【0056】
また、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンの、スタック出力応答要求の演算内容が第1実施形態とは異なる。本実施形態では、バッテリの状態量に応じてスタック出力応答要求を演算する。運転者のアクセルペダル踏み込み量に応じて加速する場合、アクセルペダル踏み込み量に応じて電動モータ2に要求される出力、過渡応答性が設定される。この場合、電動モータ2への要求出力が同じでも、バッテリ出力可能電力が小さくなるほど、燃料電池スタック1に要求される過渡応答性は大きくなる。そこで、バッテリの状態量に応じてスタック出力応答要求を演算する。
【0057】
図9は、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。第1実施形態では、スタック出力応答要求を車速に基づいて算出しているが、第2実施形態では、バッテリ出力可能電力に基づいて算出する点が異なる。以下、ステップに従って説明する。
【0058】
ステップS200で、コントローラ7は実スタック電圧を読み込む。
【0059】
ステップS210で、コントローラ7はバッテリ蓄電量、バッテリ温度、及びバッテリ劣化係数を読み込む。
【0060】
ステップS220で、コントローラ7はバッテリ出力可能電力を演算する。図10はバッテリ出力可能電力を算出するための演算ブロックの一例を示す。
【0061】
まず、バッテリ蓄電量とバッテリ温度を用いて、バッテリ出力上限マップからバッテリ出力上限を求める。図10に示すように、バッテリ出力上限はバッテリ蓄電量が多くなるほど高くなる。また、バッテリ蓄電量が同じ場合には、バッテリ温度が高いほどバッテリ出力上限も高くなる。
【0062】
次に、バッテリ劣化係数を用いて、バッテリ劣化出力補正値マップからバッテリ劣化出力補正値を求める。図10に示すように、バッテリ劣化出力補正値は、バッテリ劣化係数が大きくなると小さくなる。
【0063】
そして、バッテリ出力上限をバッテリ劣化出力補正値で補正したものを、バッテリ出力可能電力とする。
【0064】
ステップS230で、コントローラ7はスタック出力応答要求を演算する。ここでは、図11に示すように、スタック出力応答要求とバッテリ出力可能電力との関係を示すマップを用いる。図11に示すように、スタック出力応答要求は、バッテリ出力可能電力が大きくなるほど低くなる。これは、バッテリ出力可能電力が大きくなれば、バッテリ3から供給される電力で加速時に必要な電力を賄うことができるようになるからである。
【0065】
ステップS240、ステップS250は、それぞれ図3のステップS120及びステップS130と同様の処理なので、説明を省略する。
【0066】
図12は、アイドルストップ中に本制御ルーチンを実行した場合の、車速、バッテリ蓄電量、バッテリ出力可能電力、スタック電圧、及びコンプレッサ流量についてのタイムチャートである。車速はタイミングt3まで一定で、タイミングt3から低下している。
【0067】
アイドルストップ実行時間の経過にともなって、バッテリ蓄電量は低下している。これに伴い、バッテリ出力可能電力も低下している。そして、バッテリ出力可能電力の低下に伴って、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値は上昇している。
【0068】
また、実スタック電圧もアイドルストップ実行時間の経過に伴って低下している。タイミングt1で実スタック電圧がアイドルストップ中スタック設定電圧下限値まで低下すると、コンプレッサ21が稼働して、実スタック電圧は上昇に転じる。コンプレッサ21はタイミングt2で予め設定した稼働時間が経過したことにより停止する。
【0069】
タイミングt1からタイミングt3の間も、バッテリ蓄電量は低下し続ける。これに伴ってバッテリ出力可能電力も低下し続ける。そして、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値は上昇し続ける。
【0070】
タイミングt3以降、車速が低下し始めると、電力回生によりバッテリ蓄電量が増加に転じる。これによりバッテリ出力可能電力も増大し始めるので、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値は低下し始める。このため、コンプレッサ21の停止後に実スタック電圧は低下し続けているが、コンプレッサ21は再稼働していない。
【0071】
このように、バッテリ出力可能電力が低くなるほどアイドルストップ中スタック設定電圧下限値を高く制御することによっても、第1実施形態と同様に、アイドルストップからの復帰時におけるスタック発電応答性を確保して、バッテリ3の過放電の防止及びドライバビリティの低下防止を実現することができる。
【0072】
なお、上記説明では、バッテリ出力可能電力をバッテリ蓄電量、バッテリ温度、及びバッテリ劣化情報の3つの因子を用いて演算しているが、これらのうち、いずれか1つまたは2つを用いて演算してもよい。
【0073】
以上説明したよぅに、第2実施形態によれば第1実施形態と同様の効果に加えて、さらに次の効果が得られる。
【0074】
(3)コントローラ7は、バッテリ出力可能電力が低いほど高いスタック出力応答要求を算出する。これにより、パワープラントに要求される過渡応答性に応じたスタック出力応答要求を設定することができる。
【0075】
(第3実施形態)
第3実施形態のシステムの構成は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、コントローラ7によるスタック出力応答要求の演算内容が第1実施形態と異なる。本実施形態では、燃料電池スタック1、パワーマネージャ5及びコンプレッサ21等を含むパワープラントの応答時定数に応じてスタック出力応答要求を演算する。なお、コントローラ7は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、スタック出力応答要求が高くなるほど、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値を高く算出する。また、パワープラントの応答時定数を、以下の説明ではパワープラント出力応答性能と称する。
【0076】
パワープラント出力応答性能が低下するほど、電動モータ2の出力が運転者のアクセル操作量から定まる目標出力に到達するまでの時間が長くなる。そこで、パワープラント出力応答性能が低いほど、コントローラ7が高いスタック出力応答性能要求を算出するようにする。これにより、パワープラント出力応答性能が低いほどアイドルストップ中スタック設定電圧下限値が高く設定される。その結果、パワープラント出力応答性能が低下していても、アイドルストップから復帰する際の電動モータ2の応答性を確保することができる。
【0077】
ところで、パワープラント出力応答性能が低くなる要因は、燃料電池スタック1に起因するものと、燃料電池スタック1以外に起因するものがある。燃料電池スタック1に起因する要因として、第1にスタック冷却水温度が挙げられる。スタック冷却水温が低くなるほど、燃料電池スタック1の出力応答性能は低くなる。したがって、図14に示すように、スタック冷却水温が低くなるほどパワープラント出力応答性能も低くなる。
【0078】
第2の要因として、燃料電池スタック1の劣化が挙げられる。図15に示すように、燃料電池スタック1が劣化すると、同じスタック電流であってもスタック電圧が低くなる。これは、経時劣化により内部抵抗が変化するためである。このような劣化の度合いをスタック劣化係数とすると、図16に示すように、燃料電池スタック1が劣化してスタック劣化係数が大きくなるほど、パワープラント出力応答性能が低下する。
【0079】
第3の要因として、燃料電池スタック1の内部抵抗(HFR)が挙げられる。図17に示すように、HFRが大きくなるほどパワープラント出力応答性能が低下する。
【0080】
第4の要因として、アイドルストップ時間が挙げられる。アイドルストップ中は、カソード1B内の酸素が、カソード1Bに浸透してきた水素と反応することで消費される。このため、アイドルストップ時間が長くなるほど、燃料電池スタック1及び流路内の窒素濃度が高くなる。そして、窒素濃度が高まるほど、水素及び空気を供給した場合のスタック発電応答性能が低下する。したがって、図18に示すように、アイドルストップ時間が長くなるほど、パワープラント出力応答性能が低下する。
【0081】
一方、燃料電池スタック1以外に起因する要因としては、第1に大気圧が挙げられる。大気圧が低くなるほどコンプレッサ21の吐出量が低下するので、結果的に燃料電池スタック1の出力応答性能が低下する。このため、図19に示すように大気圧が低いほどパワープラント出力応答性能が低下する。
【0082】
燃料電池スタック1以外に起因する第2の要因としては、パワープラントに対する出力制限が挙げられる。例えば、内部素子過熱によってパワーマネージャ5を通過可能な電力に制限がかかると、燃料電池スタック1またはバッテリ3から電動モータ2へ供給される電力が制限され、パワープラント出力応答性能が低下する。また、コンプレッサ21の吐出量に制限がかかった場合も同様である。
【0083】
次に、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンについて、具体的に説明する。
【0084】
図13は、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する、第3実施形態の第1実施例に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0085】
ステップS300で、コントローラ7はスタック電圧を読み込む。
【0086】
ステップS310で、コントローラ7はスタック冷却水温度を読み込む。スタック冷却水温度は、図示しない冷却水温センサにより検出する。
【0087】
ステップS320で、コントローラ7はパワープラント出力応答性能を演算する。具体的には、ステップS310で読み込んだスタック冷却水温を用いて図14に示すマップを検索する。上記のステップS310とステップS320がパワープラントの出力応答性能を検知する手段に相当する。
【0088】
ステップS330で、コントローラ7はスタック出力応答要求を演算する。具体的には、ステップS320で算出したパワープラント出力応答性能を用いて、図20に示すスタック出力応答要求マップを検索する。図20に示すように、スタック出力応答要求は、パワープラント出力応答性能が低いほど高くなっている。
【0089】
ステップS340、ステップS350は、それぞれ図3のステップS120、ステップS130と同様なので説明を省略する。
【0090】
このように、パワープラント出力応答性能が低いほどスタック出力応答要求は高くなり、結果的にアイドルストップ中スタック設定電圧下限値が高くなる。すなわち、パワープラント出力応答性能が低下した分だけアイドルストップ中スタック設定電圧下限値を高くすることにより、アイドルストップから復帰する際の、運転者の要求に対する電動モータ2の応答性を確保することができる。
【0091】
第3実施形態の第2実施例として、図13のステップS310でスタック劣化係数を算出し、ステップS320でスタック劣化係数を用いて図16に示すマップを検索してパワープラント出力応答性能を求めるようにしてもよい。
【0092】
スタック劣化係数は、次のように算出する。まず、燃料電池スタック1の新品時におけるスタック電流とスタック電圧の関係を基準状態として記憶しておく。一方、燃料電池スタック1の発電中にスタック電流とスタック電圧を読み込んでおく。そして、基準状態のスタック電圧と直近に読み込んだスタック電圧との差を基準状態のスタック電圧で除算したものをスタック劣化係数とする。なお、スタック劣化係数はこれに限られるものではなく、燃料電池スタック1の劣化度合いを示す指標となるものであればよい。例えば、新品時の内部抵抗と現在の内部抵抗に基づいてスタック劣化係数を設定してもよい。
【0093】
第3実施形態の第3実施例として、図13のステップS310でHFRを読み込み、ステップS320で図17に示すマップを検索してパワープラント出力応答性能を求めるようにしてもよい。
【0094】
第3実施形態の第3実施例として、図13のステップS310でアイドルストップ継続時間を読み込み、ステップS320で図18に示すマップを検索してパワープラント出力応答性能を求めるようにしてもよい。この場合、アイドルストップ継続時間は、コントローラ7でカウントしておく。
【0095】
第3実施形態の第4実施例として、図13のステップS310で大気圧を読み込み、ステップS320で、図19に示すマップを検索してパワープラント出力応答性能を求めるようにしてもよい。この場合、大気圧は図示しない大気圧センサにより検出する。
【0096】
第3実施形態の第5実施例として、図13のステップS310でパワープラントに対する出力制限がかかっているか否かを判定し、出力制限がかかっている場合にはステップS320で出力制限時用のパワープラント出力応答要求を設定するようにしてもよい。この場合、出力制限時用のパワープラント出力要求は、出力制限が無い場合に比べて高く設定する。
【0097】
上述した第2実施例−第5実施例によっても、第1実施例と同様に、アイドルストップから復帰する際の、運転者の要求に対する電動モータ2の応答性を確保することができる。
【0098】
以上説明したよぅに、第3実施形態によれば第1実施形態と同様の効果に加え、さらに次の効果が得られる。
【0099】
(4)コントローラ7は、パワープラントの出力応答性能が低いほど高いスタック出力応答要求を算出する。その結果、より高いアイドルストップ中スタック設定電圧下限値が設定され、アイドルストップ中のスタック電圧がより高く制御される。これにより、パワープラントの出力応答性能が低下している場合でも、アイドルストップから復帰して加速する場合等にバッテリの過放電を回避することができる。
【0100】
(第4実施形態)
第4実施形態のシステムの構成は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、コントローラ7によるスタック出力応答要求の演算内容が第1実施形態と異なる。本実施形態では、補機類6の消費電力(以下、補機消費電力という)に応じてスタック出力応答要求を演算する。なお、コントローラ7は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、スタック出力応答要求が高くなるほど、アイドルストップ中スタック設定電圧下限値を高く算出する。
【0101】
運転者のアクセルペダル踏み込み量に応じて加速する場合、電動モータ2に対する要求出力は、例えばエアコンディショナのような補機類6の作動状態のいかんによらずアクセルペダル踏み込み量に応じて設定される。しかし、電動モータ2への要求出力が同じであっても、補機消費電力が大きくなるほど燃料電池スタック1に要求される過渡応答性は大きくなる。
【0102】
そこで、コントローラ7は、補機消費電力が大きいほど高いスタック出力応答要求を算出する。これにより、補機消費電力が大きいほどアイドルストップ中スタック設定電圧下限値は高くなり、結果として燃料電池スタック1の出力応答性能を確保することができる。
【0103】
図21は、コントローラ7がアイドルストップ中に実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0104】
ステップS400で、コントローラ7はスタック電圧を読み込む。
【0105】
ステップS410で、コントローラ7は補機消費電力を演算する。例えば、エアコンディショナを作動させた場合に想定される消費電力を、エアコンディショナの仕様に基づいて予め求めておき、エアコンスイッチがONの場合にはその消費電力を用いる。また、燃料電池スタック1の出力電力と、バッテリ3の入出力電力と、電動モータ2及びインバータ4の消費電力と、から余っている電力を求め、これを補機消費電力としてもよい。本ステップが補機消費電力検出手段に相当する。
【0106】
ステップS420で、コントローラ7は補機消費電力を用いて図22に示すマップを検索することによって、スタック出力応答要求を算出する。図22は、補機消費電力とスタック出力応答要求との関係を示すマップである。補機消費電力が大きくなるほど、スタック出力応答要求が高くなっている。
【0107】
ステップS430、ステップS440については、それぞれ図3のステップS120、ステップS130と同様なので説明を省略する。
【0108】
本制御ルーチンによれば、補機消費電力が大きくなるほど高いスタック出力応答要求が算出され、その結果アイドルストップ中スタック設定電圧下限値が高くなる。すなわち、補機消費電力が大きくなるほど、アイドルストップ中のスタック電圧が高く制御される。
【0109】
これにより、アイドルストップからの復帰時等において、補機消費電力の大小にかかわらず、スタック発電応答性を確保することができる。
【0110】
以上説明したよぅに、第4実施形態によれば第1実施形態と同様の効果に加えて、さらに次の効果が得られる。
【0111】
(5)コントローラ7は、補機消費電力が大きいほど高いスタック出力応答要求を算出する。スタック出力応答要求を算出するにあたって補機消費電力を考慮することで、より車両状況に応じたスタック出力応答要求を算出することができる。その結果、アイドルストップから復帰しての加速時等におけるバッテリ過放電をより精度よく回避できる。
【0112】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0113】
1 燃料電池スタック
2 電動モータ
3 バッテリ
4 インバータ
5 パワーマネージャ
6 補機類
7 コントローラ
11 車輪
20 水素タンク
21 コンプレッサ
22 圧力調整弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給により移動体を走行させる駆動部と、
前記駆動部に走行のための電力を供給する燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックの発電に必要な燃料を供給する燃料供給装置と、
前記燃料電池スタックと燃料供給装置とを含むパワープラントを制御するコントローラと、を備える燃料電池システムにおいて、
前記コントローラが、
燃料電池スタックに要求される電力応答であるスタック出力応答要求を演算するスタック出力応答要求演算部と、
アイドルストップ実行中のスタック電圧として設定するアイドルストップ中スタック設定電圧の下限値を前記スタック出力応答要求が大きいほど高く、小さいほど低く設定するアイドルストップ中スタック電圧設定部と、
アイドルストップ実行中に前記燃料電池スタックの実電圧が前記アイドルストップ中スタック設定電圧の下限値より小さくなったら燃料ガスまたは空気を供給する回復操作を実行するアイドルストップ中スタック電圧回復操作部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
車速を検知する車速検知手段を備え、
前記スタック出力応答要求演算部は、車速が高いほど高いスタック出力応答要求を算出する。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
バッテリ出力可能電力を検知するバッテリ出力可能電力検知手段を備え、
前記スタック出力応答要求演算部は、前記バッテリ出力可能電力が低いほど高いスタック出力応答要求を算出する。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記パワープラントの出力応答性能を検知する手段を備え、
前記スタック出力応答要求演算部は、前記パワープラントの出力応答性能が低いほど高いスタック出力応答要求を算出する。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
補機類が消費する電力を検出する補機消費電力検出手段を備え、
前記スタック出力応答要求演算部は、前記補機消費電力が大きいほど高いスタック出力応答要求を算出する。
【請求項1】
電力の供給により移動体を走行させる駆動部と、
前記駆動部に走行のための電力を供給する燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックの発電に必要な燃料を供給する燃料供給装置と、
前記燃料電池スタックと燃料供給装置とを含むパワープラントを制御するコントローラと、を備える燃料電池システムにおいて、
前記コントローラが、
燃料電池スタックに要求される電力応答であるスタック出力応答要求を演算するスタック出力応答要求演算部と、
アイドルストップ実行中のスタック電圧として設定するアイドルストップ中スタック設定電圧の下限値を前記スタック出力応答要求が大きいほど高く、小さいほど低く設定するアイドルストップ中スタック電圧設定部と、
アイドルストップ実行中に前記燃料電池スタックの実電圧が前記アイドルストップ中スタック設定電圧の下限値より小さくなったら燃料ガスまたは空気を供給する回復操作を実行するアイドルストップ中スタック電圧回復操作部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
車速を検知する車速検知手段を備え、
前記スタック出力応答要求演算部は、車速が高いほど高いスタック出力応答要求を算出する。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
バッテリ出力可能電力を検知するバッテリ出力可能電力検知手段を備え、
前記スタック出力応答要求演算部は、前記バッテリ出力可能電力が低いほど高いスタック出力応答要求を算出する。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記パワープラントの出力応答性能を検知する手段を備え、
前記スタック出力応答要求演算部は、前記パワープラントの出力応答性能が低いほど高いスタック出力応答要求を算出する。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
補機類が消費する電力を検出する補機消費電力検出手段を備え、
前記スタック出力応答要求演算部は、前記補機消費電力が大きいほど高いスタック出力応答要求を算出する。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−244721(P2012−244721A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111267(P2011−111267)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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