説明

燃料電池システム

【課題】水自立の維持を図りながら、スケールの発生を抑制することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム1は、燃料電池100と、オフガス燃焼部112と、排ガス流路120と、貯湯槽130と、熱交換器140と、貯湯槽130内の熱回収水を熱交換器140に供給する循環往路、熱交換後の熱回収水を貯湯槽130に送出する循環復路、熱交換後の熱回収水を循環往路に合流させるバイパス流路を有する熱回収水循環流路150と、循環ポンプ230と、熱回収水の循環復路およびバイパス流路への分配割合を調節する分配割合調節弁160と、凝縮水を収容するタンク170と、水位センサ180と、凝縮水の回収量を所定範囲に維持するよう分配割合調節弁160を制御し、熱交換後の熱回収水の温度が所定範囲となるよう循環ポンプ230を制御する制御部190とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率が高く、かつ、発電反応により有害物質を発生しない燃料電池が注目を浴びている。こうした燃料電池としては、例えば、固体酸化物形燃料電池がある。燃料電池は、電解質体を燃料極と空気極との間に配した基本構造を有し、燃料極に水素を含む燃料ガス、空気極に酸素を含む酸化剤ガスが供給されて、電気化学反応によって発電する。
【0003】
燃料電池で用いられる燃料ガスは、例えば灯油、天然ガス、LPG、ナフサ等の炭化水素系原燃料またはメタノール等のアルコール類原燃料と水蒸気とを混合して、改質装置で水蒸気改質することで得られる。改質により得られた燃料ガス(改質ガス)は燃料電池の燃料極に供給され、発電に用いられる。原燃料の水蒸気改質に用いられる水蒸気は、改質用水を加熱して生成される。
【0004】
また、燃料電池で発電するとともに、発電にともなって生じた熱を利用して水を加熱し、加熱された水を貯湯槽に貯える燃料電池システムが開発されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この燃料電池システムでは、貯湯槽に貯えられた熱回収水が燃料電池から排出された高温の排ガス、あるいはこの排ガス等と熱交換した熱回収水と熱交換することで加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−199920号公報
【特許文献2】特開2006−24430号公報
【特許文献3】特開2008−135356号公報
【特許文献4】特開2010−33880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の状況において、本発明者は以下の課題を認識するに至った。すなわち、上述した燃料電池システムにおいて、原燃料の水蒸気改質に用いられる改質用水には、熱回収水との熱交換による排ガスの冷却によって回収される凝縮水を利用することができる。改質用水の全てを凝縮水で補うことができれば、外部から市水を取り込む必要がなくなるため、市水中に含まれるカルシウムやシリカの析出を回避することができる。また、改質用水として用いられる水はイオン交換樹脂を通過させて利用するため、市水を取り込まないことでイオン交換樹脂にかかる負荷も軽減することができる。その結果、燃料電池システムの長寿命化が可能となる。そのため、固体酸化物形燃料電池を有する燃料電池システムでは、水自立が強く望まれている。
【0007】
水自立を維持すべく凝縮水の回収量を増大させたい場合、1つの方法として、熱交換器を通過する熱回収水の熱交換器入口における温度(以下、適宜この温度を「熱回収水入口温度」と称する)を下げることが考えられる。これにより排ガスをより低い温度にまで下げることができるため、凝縮水の生成量を増大させることができる。特に固体酸化物形燃料電池は、固体高分子形燃料電池等に比べて運転温度が高いため排ガスも高温である。したがって、凝縮水の生成に必要な排ガス温度の下げ量が大きい。そのため、固体酸化物形燃料電池を有する燃料電池システムでは、水自立の維持に必要な量の凝縮水を回収するために、熱回収水の熱回収水入口温度を下げることが有効である。
【0008】
一方で、燃料電池システムが熱回収水を貯湯槽に貯える構成を有する場合、貯湯層内の温度成層を保つために、熱回収水は一定温度で回収されることが望ましい。したがって、上述のように熱回収水入口温度を下げて排ガスを冷却する場合、熱回収水の熱交換器出口における温度(以下、適宜この温度を「熱回収水出口温度」と称する)を一定に保つために、熱交換器を通過する熱回収水の流速を低減させる必要がある。しかしながら、熱回収水の流速を低減させた場合、熱交換器の熱回収水流路の内壁にカルシウムなどの堆積物であるスケールが発生しやすくなる。また、燃料電池システム全体の小型化の要請から貯湯槽にも当然に小型化が求められており、貯湯槽を小型化した場合は貯湯層に貯える熱回収水の温度を高くする必要がある。よって、排ガスとの熱交換に用いられる熱回収水の量を減らすことが求められる。そのため、スケールがさらに発生しやすくなる。
【0009】
スケールが発生すると、スケールによって熱交換器における熱交換有効面積が減少し、熱交換器の機能が低下する。そのため、排ガス温度が高温のままとなって凝縮水の生成量が減少し、また熱回収効率も低下する。スケールの発生を抑えるためには、熱交換器内を通過する熱回収水の流速を増大させることが考えられるが、その場合は熱回収水出口温度が低下して貯湯槽の貯留温度が低下してしまうため、貯湯槽の小型化の妨げとなる。
【0010】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、水自立の維持を図りながら、スケールの発生を抑制することができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は、燃料電池システムである。当該燃料電池システムは、アノードおよびカソードを含む燃料電池を有する発電部と、発電部から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、排ガスの熱を回収するための熱媒体を貯蔵する貯蔵槽と、排ガス流路を流れる排ガスと熱媒体との間で熱交換を行う熱交換部と、貯蔵槽内の熱媒体を熱交換部に供給するための循環往路、熱交換部を通過した熱媒体を貯蔵槽に送出する循環復路、および熱交換部を通過した熱媒体を貯蔵槽を介さずに循環往路に合流させるバイパス流路を有する熱媒体循環流路と、熱媒体循環流路内の熱媒体を循環させて、熱媒体の流速を調節する循環装置と、熱媒体の流量の循環復路およびバイパス流路への分配割合を調節するための分配割合調節部と、熱交換部を通過した排ガスから回収された凝縮水を収容するタンクと、タンク内の水量に関する状態を検出して状態信号を送信するための検出部と、状態信号に基づいて、排ガスから回収される凝縮水の量を所定範囲に維持するように分配割合調節部を制御し、熱交換部で熱交換が行われた熱媒体の温度が所定範囲となるように循環装置を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この態様によれば、水自立の維持を図りながら、スケールの発生を抑制することができる。
【0013】
上記態様において、発電部は、改質部および燃焼部をさらに有し、改質部は、原燃料を改質して燃料電池に供給する改質ガスを生成し、燃焼部は、燃料およびアノードオフガスの少なくとも1つを燃焼用酸素含有ガスおよびカソードオフガスの少なくとも1つと混合して燃焼させ、改質部を加熱してもよい。
【0014】
上記態様において、燃料電池システムの状態がタンク内水量を増大させるべき状態である場合に、制御部は、循環復路への分配割合を増大させて熱媒体の熱交換部入口温度を低下させるとともに熱交換部を通過する熱媒体の流速を低減させてもよい。
【0015】
上記態様において、制御部は、循環復路への分配割合が最大である場合に、燃料電池の発電出力を低減させてもよい。
【0016】
上記いずれかの態様において、燃料電池システムの状態がタンク内水量を減少させるべき状態である場合に、制御部は、燃料電池の発電出力を増大させてもよい。
【0017】
上記態様において、制御部は、燃料電池の発電出力が最大である場合に、バイパス流路への分配割合を増大させて熱媒体の熱交換部入口温度を上昇させるとともに熱交換部を通過する熱媒体の流速を増大させてもよい。
【0018】
上記いずれかの態様において、検出部は、タンク内の水位を検出し、水位が所定の下限値を下回った場合に、制御部は、循環復路への分配割合を増大させて熱媒体の熱交換部入口温度を低下させるとともに熱交換部を通過する熱媒体の流速を低減させてもよい。
【0019】
上記いずれかの態様において、検出部は、タンク内の水位を検出し、水位が所定の上限値を上回った場合に、制御部は、バイパス流路への分配割合を増大させて熱媒体の熱交換部入口温度を上昇させるとともに熱交換部を通過する熱媒体の流速を増大させてもよい。
【0020】
上記いずれかの態様において、検出部は、排ガスの温度を検出し、凝縮水の回収量とタンク内の水の使用量との差は、排ガスの温度に応じて決まり、排ガスの温度が、前記差が所定の下限値を下回る温度である場合に、制御部は、循環復路への分配割合を増大させて熱媒体の熱交換部入口温度を低下させるとともに熱交換部を通過する熱媒体の流速を低減させてもよい。
【0021】
上記いずれかの態様において、検出部は、排ガスの温度を検出し、凝縮水の回収量とタンク内の水の使用量との差は、排ガスの温度に応じて決まり、排ガスの温度が、前記差が所定の上限値を上回る温度である場合に、制御部は、バイパス流路への分配割合を増大させて熱媒体の熱交換部入口温度を上昇させるとともに熱交換部を通過する熱媒体の流速を増大させてもよい。
【0022】
上記いずれかの態様において、検出部は、タンク内の水圧を検出し、水圧が所定の下限値を下回った場合に、制御部は、循環復路への分配割合を増大させて熱媒体の熱交換部入口温度を低下させるとともに熱交換部を通過する熱媒体の流速を低減させてもよい。
【0023】
上記いずれかの態様において、検出部は、タンク内の水圧を検出し、水圧が所定の上限値を上回った場合に、制御部は、バイパス流路への分配割合を増大させて熱媒体の熱交換部入口温度を上昇させるとともに熱交換部を通過する熱媒体の流速を増大させてもよい。
【0024】
上記いずれかの態様において、燃料電池システムは、燃料電池の上流に配置され、原燃料を改質するための改質部を備えてもよい。
【0025】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、水自立の維持を図りながら、スケールの発生を抑制することができる燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1に係る燃料電池システムの概略構成を示す流路図である。
【図2】実施形態1に係る燃料電池システムの動作制御のフローチャートである。
【図3】実施形態1に係る燃料電池システムの他の動作制御のフローチャートである。
【図4】実施形態2に係る燃料電池システムの概略構成を示す流路図である。
【図5】排ガスの温度と水収支との関係を示す図である。
【図6】実施形態2に係る燃料電池システムの動作制御のフローチャートである。
【図7】実施形態3に係る燃料電池システムの概略構成を示す流路図である。
【図8】実施形態3に係る燃料電池システムの動作制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る燃料電池システムの概略構成を示す流路図である。なお、図1の流路図は、主に各構成の機能やつながりを模式的に示した図であり、各構成の位置関係または配置を限定するものではない。
【0030】
本実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池100、改質部110およびオフガス燃焼部112(燃焼部)を有する発電部2と、排ガス流路120と、貯湯槽130(貯蔵槽)と、熱交換器140(熱交換部)と、熱回収水循環流路150(熱媒体循環流路)と、分配割合調節弁160(分配割合調節部)と、タンク170と、水位センサ180(検出部)と、制御部190とを備える。また、燃料電池システム1は、改質ガス流路200と、凝縮水分離器210と、改質用水流路220と、循環ポンプ230(循環装置)と、温度センサ240とを備える。なお、上述した各構成は、1つの筐体内に収容されてもよいし、例えば発電系統と蓄熱系統とを別個の筐体内に収める等、機能に応じて複数の筐体に分けて収容されてもよい。また、発電部2についても、燃料電池100、改質部110およびオフガス燃焼部112が同一筐体内に収容されてもよいし、複数の筐体に分けて収容されてもよい。以下、各構成について説明する。
【0031】
燃料電池100は、例えば固体酸化物形燃料電池である。燃料電池100は、アノード102(燃料極)とカソード104(空気極)との間に、固体酸化物を含む電解質体106が設けられたセルが複数直列に接続された燃料電池スタック(図示せず)からなる。燃料電池100は、燃料として水素含有ガスを用いるとともに、酸化剤として酸素含有ガスを用いて発電を行う。例えば、燃料としては、都市ガス、LPG、灯油、アルコール等の水素原子を含む原燃料を改質して得られる水素富化ガス(以下、適宜この水素富化ガスを「改質ガス」と称する)や、純水素等を用いることができる。また、酸化剤としては、取り扱いが容易な空気の他、酸素富化空気、純酸素等を用いることができる。
【0032】
本実施形態では、燃料として改質ガスが用いられる。この改質ガスは、後述する改質部110からアノード102に供給される。すなわち、改質部110で生成された改質ガスが改質ガス流路200を通ってアノード102に供給され、改質ガスに含まれる水素が燃料として用いられる。なお、改質ガスには少量の一酸化炭素が含まれる場合があるが、この一酸化炭素も燃料として用いることができる。
【0033】
また、本実施形態では、酸化剤として空気が用いられる。この空気は、燃料電池システム1の外部から燃料電池システム1に取り込まれる。燃料電池システム1に取り込まれた空気は、フィルタにより塵や浮遊物が除去され、加温されてカソード104に供給される。
【0034】
改質ガスおよび空気が供給されると、燃料電池100の各セルのアノード102で以下の式(1)、(2)および(3)で示す電極反応が起きる。一方、カソード104で以下の式(4)で示す電極反応が起きる。各セルでの電極反応は、約600℃〜約1000℃の温度範囲で行われる。
アノード:H+O2−→HO+2e (1)
CO+O2−→CO+2e (2)
CH+3O2−→CO+2HO+6e (3)
カソード:1/2O+2e→O2− (4)
【0035】
アノード102では、上記式(1)に示されるように、供給された改質ガスに含まれる水素が電子を放出するとともに、カソード104から電解質体106中を移動してきた酸素イオンと反応して水が生成される。あるいは、上記式(2)に示されるように、供給された改質ガスに含まれる一酸化炭素が電子を放出するとともに、カソード104から電解質体106中を移動してきた酸素イオンと反応して二酸化炭素が生成される。あるいは、上記式(3)に示されるように、供給された改質ガスに含まれる炭化水素であるメタンが電子を放出するとともに、カソード104から電解質体106中を移動してきた酸素イオンと反応して水および二酸化炭素が生成される。電子は、外部回路を通ってカソード104に移動する。一方、カソード104では、上記式(4)に示されるように、供給された空気中に含まれる酸素がアノード102側から移動してきた電子と反応して酸素イオンとなる。酸素イオンは電解質体106の内部をアノード102に向かって移動する。このように、外部回路ではアノード102からカソード104に向かって電子が移動するため、電力が取り出される。
【0036】
燃料電池100で発生した直流電力は、コンバータ(図示せず)により所定電圧(たとえば350V)の直流電力に変換された後、インバータ(図示せず)によって交流電力(たとえば100V)に変換される。インバータで変換された交流電力は系統(図示せず)へ出力される。また、コンバータで変換された所定電圧の直流電力は、制御部190等の電源として利用される。また、本実施形態では、燃料電池システム1は負荷追従運転を行う。すなわち、燃料電池システム1は、電力需要の変動に合わせて燃料電池100の発電量を変化させる運転を行う。
【0037】
改質部110は、原燃料を水蒸気改質して水素ガスを主成分とする改質ガスを生成する装置である。改質部110には、灯油、天然ガス、LPG等の原燃料が供給される。改質部110は、例えば、アルミナ等の担体に金属粒子としてルテニウム(Ru)が担持されたRu系の改質触媒を有する改質触媒層(図示せず)を備える。
【0038】
改質部110には原燃料と水蒸気とが供給され、改質触媒の存在下で原燃料の水蒸気改質が行われる。この水蒸気改質では、以下の式(5)で示すように、例えば原燃料中のメタンと水蒸気が反応して水素と一酸化炭素が生じる改質反応が起こる。当該改質反応は、例えば、約600℃〜約700℃の範囲で行われる。
CH+HO→3H+CO (5)
【0039】
改質反応に必要な水蒸気は、改質用水を気化させることで生成される。例えば、燃料電池システム1には、改質用水を気化する気化部(図示せず)が発電部2内の改質部110の上流側に配置され、気化部において、後述するオフガス燃焼部112による加熱により改質用水が気化されて改質部110に供給される。改質用水は、改質用水ポンプ(図示せず)によって後述するタンク170から供給される。改質用水の供給量は、改質用水ポンプの吐出量を制御することで調節することができる。
【0040】
発電部2内には、オフガス燃焼部112が設けられている。オフガス燃焼部112は、燃料電池100のアノード102およびカソード102の下流側に位置し、アノード出口から排出されたアノードオフガス、および燃料電池システム1の外部より取り込んだ原燃料の少なくとも1つと、カソード出口から排出されたカソードオフガス、および燃焼用酸素含有ガス(たとえば、燃料電池システム1の外部より取り込んだ空気)の少なくとも1つとを混合して燃焼させる。オフガス燃焼部112による混合ガスの燃焼によって発電部2全体が加熱される。この加熱によって燃料電池100および改質部110は、それぞれの反応に好適な温度に調節される。改質部110での改質反応によって生成された改質ガスは、改質ガス流路200を通って燃料電池100のアノード102に供給される。
【0041】
オフガス燃焼部112で発生した高温の排ガスは、オフガス燃焼部112から排ガス流路120に排出される。排ガス流路120は、熱交換前排ガス流路122と、熱交換後排ガス流路123とを有する。熱交換前排ガス流路122は、一端がオフガス燃焼部112の排ガス出口に接続され、他端が熱交換器140の排ガス入口141に接続されている。熱交換後排ガス流路123は、一端が熱交換器140の排ガス出口142に接続され、他端が凝縮水分離器210の排ガス入口に接続されている。オフガス燃焼部112から排出された排ガスは、熱交換前排ガス流路122を通って熱交換器140に供給される。熱交換器140を通過した排ガスは、熱交換後排ガス流路123を通って凝縮水分離器210に供給される。
【0042】
凝縮水分離器210は、排ガス中から凝縮水を分離する。凝縮水が分離された排ガスは、排気管124を通って外気に開放される。排ガスから回収された凝縮水は、凝縮水流路125を通ってタンク170に収容される。タンク170と改質部110との間には改質用水流路220が接続されており、タンク170に収容された凝縮水は、改質用水流路220を通って改質部110に供給され、改質用水として用いられる。改質用水は、イオン交換樹脂等の水処理装置(図示せず)において水処理が行われる。水処理装置としてイオン交換樹脂が用いられる場合、イオン交換樹脂は、凝縮水分離器210またはタンク170と一体化されてもよいし、凝縮水流路125または改質用水流路220の流路系内に配置されてもよい。
【0043】
タンク170内には、水位センサ180が設けられている。水位センサ180は、制御部190と信号ケーブルで接続されており、タンク170内の水量に関する状態としてタンク170内の水位を検出して、状態信号を制御部190に送信する。具体的には、水位センサ180は、タンク170内に収容された凝縮水の所定の下限水位および所定の上限水位を検出する2点水位検知型のセンサであり、タンク170内の水位が所定の下限値を下回った場合に水位が下限値を下回ったことを示す状態信号を制御部190に送信し、水位が所定の上限値を上回った場合に水位が上限値を上回ったことを示す状態信号を制御部190に送信する。なお、コストダウンの観点から、水位センサ180は、1点の水位のみを検出する1点水位検知型のセンサであってもよい。
【0044】
貯湯槽130は、排ガスの熱を回収するための熱回収水(熱媒体)を貯蔵する。貯湯槽130には、熱回収水として、例えば水道管を通じて市水が供給される。貯湯槽130と熱交換器140とは熱回収水循環流路150によって連結されており、貯湯槽130に貯蔵されている熱回収水は、循環ポンプ230によって熱交換器140に供給される。
【0045】
熱交換器140は、排ガス流路120を流れる排ガスと、熱回収水循環流路150を流れる熱回収水との間で熱交換を行う。具体的には、熱交換前排ガス流路122を通過して熱交換器140に供給された排ガスと、熱回収水循環流路150の第2流路152を通過して熱交換器140に供給された熱回収水との間で熱交換を行う。これにより、発電部2で生じた熱エネルギーによって熱回収水が加熱され、貯湯槽130に湯水が貯留される。このように、発電部2で発生した熱エネルギーを湯水として貯湯槽130に貯留することができるため、発電部2の排熱を無駄なく回収することができる。
【0046】
熱回収水循環流路150は、第1流路151〜第5流路155を有する。第1流路151は、一端が貯湯槽130の出口に接続され、他端が循環ポンプ230の吸水口に接続されている。第2流路152は、一端が循環ポンプ230の送水口に接続され、他端が熱交換器140の熱回収水入口143に接続されている。第3流路153は、一端が熱交換器140の熱回収水出口144に接続され、他端が分配割合調節弁160の入口161に接続されている。第4流路154は、一端が分配割合調節弁160の第1出口162に接続され、他端が貯湯槽130の入口に接続されている。第5流路155は、一端が分配割合調節弁160の第2出口163に接続され、他端が第1流路151の中間部に連結されている。
【0047】
第1流路151および第2流路152によって、貯湯槽130内の熱回収水を熱交換器140に供給するための巡回往路が形成されている。また、第3流路153および第4流路154によって、熱交換器140を通過した熱回収水を貯湯槽130に送出する循環復路が形成されている。また、第3流路153および第5流路155によって、熱交換器140を通過した熱回収水を貯湯槽130を介さずに循環往路に合流させるバイパス流路が形成されている。
【0048】
分配割合調節弁160は、第1出口162の開度と第2出口163の開度を連続的または段階的に調節可能である。分配割合調節弁160は、制御部190と信号ケーブルで接続されており、制御部190からの制御信号を受信して、第1出口162および第2出口163の開度を変化させる。これにより、分配割合調節弁160は、熱交換器140から排出された熱回収水の流量の循環復路およびバイパス流路への分配割合を調節することができる。また、分配割合調節弁160は、第1出口162および第2出口163の開度を信号として制御部190に送信する。これにより、制御部190は、熱回収水の分配割合を把握することができる。
【0049】
本実施形態では、分配割合調節弁160は第3流路153、第4流路154および第5流路155の合流点に配置されているが、分配割合調節弁160の配置はこれに限定されない。例えば、分配割合調節弁160は、第1流路151、第2流路152および第5流路155の合流点に設置してもよい。また、熱回収水の分配割合を調節しない状態で熱回収水の流入量が第4流路154(循環復路)よりも第5流路155(バイパス流路)の方が多い構造である場合には、2方弁からなる分配割合調節弁160を第5流路155の途中に設置して、分配割合調節弁160の開度を調節することで熱回収水の流量の循環復路およびバイパス流路への分配割合を調節してもよい。また、熱回収水の分配割合を調節しない状態で熱回収水の流入量が第5流路155(バイパス流路)よりも第4流路154(循環復路)の方が多い構造である場合には、2方弁からなる分配割合調節弁160を第4流路154の途中に設置して、分配割合調節弁160の開度を調節することで熱回収水の分配割合を調節してもよい。
【0050】
本実施形態の分配割合調節弁160は、第1出口162の開度を増大させると第2出口163の開度が低減し、第1出口162の開度を低減させると第2出口163の開度が増大する弁である。第1出口162の開度が増大されると、熱交換器140で加熱された後、貯湯槽130へ送出される熱回収水の量が増大する。反対に、第2出口163の開度が増大されると、熱交換器140で加熱された後、貯湯槽130へ戻されずに再び熱交換器140へ供給される熱回収水の量が増大する。
【0051】
循環ポンプ230は、熱回収水循環流路150内の熱回収水を循環させるポンプであり、熱回収水の送出量を連続的または段階的に調節可能である。循環ポンプ230による熱回収水の送出量を調節することで、熱交換器140を通過する熱回収水の流速を変化させることができる。循環ポンプ230は、制御部190と信号ケーブルで接続されており、制御部190からの制御信号を受信して、熱回収水循環流路150内を循環する熱回収水の流速を変化させる。
【0052】
熱交換器140の熱回収水出口144の近傍には、熱交換器140を通過した熱回収水の温度を検出するための温度センサ240が設けられている。温度センサ240は、制御部190と信号ケーブルで接続されており、検出した熱回収水の温度を信号として制御部190に送信する。
【0053】
制御部190は、ハードウェア構成としては各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどで実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。制御部190は、水位センサ180から状態信号を受信し、受信した状態信号に基づいて分配割合調節弁160を制御する。また、制御部190は、温度センサ240から温度信号を受信し、熱交換器140の熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように、循環ポンプ230を制御して熱回収水の流速を調節する。さらに、制御部190は、必要に応じて燃料電池100の発電出力を調節する。
【0054】
次に、上述の構成を備えた燃料電池システム1の動作について説明する。
【0055】
制御部190は、水位センサ180から受信した状態信号に基づいて、排ガスから回収される凝縮水の量を所定範囲に維持するように、分配割合調節弁160を制御する。具体的には、制御部190は、タンク170内の水量に関する状態が水量を増大させるべき状態である場合に、循環復路、すなわち第4流路154への分配割合を増大させる。また、制御部190は、タンク170内の水量に関する状態が水量を減少させるべき状態である場合に、バイパス流路、すなわち第5流路155への分配割合を増大させる。本実施形態では、タンク170内の水位が所定の下限値を下回った場合を水量を増大させるべき状態とし、タンク170内の水位が所定の上限値を上回った場合を水量を減少させるべき状態としている。
【0056】
タンク170内の水位の低下が続いた場合、いずれは改質部110に供給される改質用水が不足することになるため、凝縮水分離器210で排ガスから回収される凝縮水の量を増大させることが望まれる。そこで、制御部190は、タンク170内の水位が所定の下限値を下回った場合に、上述のように熱回収水の流量の第4流路154への分配割合を増大させる。これにより、貯湯槽130に戻される熱回収水の量が増大するため、貯湯槽130から熱交換器140に供給される熱回収水の量が増大する。その結果、熱交換器140の熱回収水入口143には、循環流路への分配割合を増大させる前に比べてより低温の熱回収水が供給される。熱交換器140に供給される熱回収水の温度が低いほど熱回収水が排ガスから回収する熱量は増えるため、熱交換器140を通過する排ガスをより低温にすることができる。これにより、より大量の凝縮水を生成することができ、凝縮水の回収量を増大させることができる。
【0057】
また、制御部190は、温度センサ240からの温度信号に基づいて、熱回収水出口144近傍の熱回収水の温度を一定に保つように循環ポンプ230を制御する。上述のように熱回収水入口143における熱回収水の温度を低くした場合は、熱回収水入口143から熱回収水出口144に到達するまでの熱回収水の温度上昇幅が大きくなるため、制御部190は循環ポンプ230を制御して熱回収水の流速を低減させる。
【0058】
このように、タンク170内の水位が所定の下限値を下回った場合、熱回収水の流量の量循環流路への分配割合を増やして凝縮水の生成量を増大させることで、改質部110での改質反応に必要な改質用水を確保することができる。
【0059】
一方、タンク170内の水位の上昇が続いた場合、いずれは余剰分の凝縮水をタンク170から排出することになるため、凝縮水分離器210で排ガスから回収される凝縮水の量を低減させることが望まれる。そこで、制御部190は、タンク170内の水位が所定の上限値を上回った場合に、上述のように熱回収水の流量の第5流路155への分配割合を増大させる。これにより、貯湯槽130に戻されることなく熱交換器140に再供給される熱回収水の量が増大するため、熱交換器140の熱回収水入口143には、バイパス流路への分配割合を増大させる前に比べてより高温の熱回収水が供給される。熱交換器140に供給される熱回収水の温度が高いほど熱回収水が排ガスから回収する熱量は減るため、排ガスの温度低下量は小さくなる。これにより、凝縮水の生成量を低減させることができ、凝縮水の回収量を低減させることができる。
【0060】
また、上述のように熱回収水入口143における熱回収水の温度を高くした場合は、熱回収水入口143から熱回収水出口144に到達するまでの熱回収水の温度上昇幅が小さくなるため、制御部190は、循環ポンプ230を制御して熱回収水の流速を増大させる。
【0061】
このように、タンク170内の水位が所定の上限値を上回った場合、熱回収水の流量のバイパス流路への分配割合を増やして凝縮水の生成量を低減させることで、過剰な凝縮水の回収を回避できるため、イオン交換樹脂等の水処理装置にかかる負荷を軽減することができる。これにより、水処理装置の長寿命化を図ることができ、ひいては燃料電池システム1の長寿命化を図ることができる。また、余剰分の凝縮水の排出を回避することができるため、タンク170から凝縮水を排出するための構造を省略することができる。これにより、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。また、凝縮水の生成量を低減させている間は熱回収水の流速を上げているため、熱交換器の熱回収水流路の内壁にカルシウムなどの堆積物であるスケールが発生することを抑制することができる。
【0062】
なお、前記「所定の下限値」は、例えば燃料電池100のアノード102への改質ガスの供給を維持することができる凝縮水の最低量にマージンを付加して、当該最低量よりも高く設定した値である。また、前記「所定の上限値」は、例えばタンク170の収容限界量からマージンを差し引いて、当該収容限界量よりも低く設定した値である。「所定の下限値」および「所定の上限値」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。なお、水位センサ180が1点水位検知型のセンサである場合は、前記「所定の下限値」は水位センサ180の検出水位を下回った状態であり、前記「所定の上限値」は水位センサ180の検出水位を上回った状態である。
【0063】
以下に、燃料電池システム1の動作制御のフローを詳細に説明する。図2は、実施形態1に係る燃料電池システムの動作制御のフローチャートである。本フローチャートは、水位センサ180が2点水位検知型である場合の例である。このフローは、制御部190により実行され、例えば、燃料電池システム1の起動とともに開始され、燃料電池システム1の停止とともに終了する。
【0064】
制御フローがスタートすると、制御部190は、タンク170内の水位が所定範囲内にあるか判断する(ステップ101:以下S101と略記する。他のステップも同様)。制御部190は、水位が所定の上限値以下かつ所定の下限値以上である場合に、水位が所定範囲にあると判断する。水位が所定範囲内にある場合(S101のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最大であるか判断する(S102)。燃料電池100の発電出力が最大でない場合(S102のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させて(S103)、ステップ101に戻る。燃料電池100の発電出力が最大である場合(S102のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させることなくステップ101に戻る。
【0065】
このように、タンク170内の水位が所定範囲内にある場合は、燃料電池100の発電出力を増大させて、燃料電池システム1による電力供給量を増大させるように制御する。なお、燃料電池システム1が電力需要に応じて発電出力を増減させる負荷追従運転を行う場合は、制御部190は、燃料電池100の発電出力が電力需要に対して所定の好適範囲にあるか判断し、発電出力がこの好適範囲から外れている場合に、燃料電池100の発電出力を調整するように制御してもよい。前記「好適範囲」とは、負荷追従運転における負荷である電力負荷に対して、一定の値だけ下回った値を指すが、電力系統側に逆潮しなければ、燃料電池100の発電出力は発電負荷と同じ値であってもよい。この場合、制御部190により好適範囲に発電出力を制御しつつ、ステップ101で水位が所定範囲内にあると判断された場合は、発電最大出力(許容できる最大発電出力)を上げていく。許容できる最大発電出力を上昇させることにより、水位が下限値未満となり発電出力低減フラグがオンに設定され(詳細は後述する)これにより抑制されていた許容最大発電出力を増大させることとなる。
【0066】
水位が所定範囲内にない場合(S101のN)、制御部190は、タンク170内の水位が所定の下限値未満であるか判断する(S104)。水位が所定の下限値未満である場合(S104のY)、制御部190は、熱回収水の循環流路への分配割合が最大であるか判断する(S105)。循環流路への分配割合が最大でない場合(S105のN)、制御部190は、第1出口162の開度を所定量だけ増大させて循環復路への分配割合を増大させ、熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように熱回収水の流速を低減させる(S106)。
【0067】
燃料電池100の発電出力を同一とし、熱回収水の分配割合を制御して熱回収水入口温度を異ならせた場合における、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量の比較と燃料電池システム1での水収支(g/分)とを表1および表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
表1および表2に示すように、循環流路への分配割合を増大させて熱回収水入口温度を下げるほど、排ガス出口142における排ガス温度(排ガス出口温度)が低下し、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量と水収支とがともに増大する。したがって、循環流路への分配割合を増大させて、熱回収水入口143における熱回収水の温度を下げることで、タンク170内の水位を上昇させることができる。言い換えれば、熱回収水入口143における熱回収水の温度を上げることで、タンク170内の水位を低下させることができる。
【0071】
第1出口162の開度の増大量は、適宜設定することができる。また、熱交換器の熱回収水流路の内壁へのスケール発生を抑制する観点から、予め熱回収水の最低流速を任意に定めておき、熱回収水の熱交換器出口温度を所定範囲に収めるべく低減させた流速がこの最低流速を下回らないように、循環復路への分配割合を増大させてもよい。例えば、本実施形態では、第1流路151の熱回収水温度が10℃で、熱回収水の分配割合をバイパス流路:循環流路=0:100〜61:39の範囲で変更できるように設定している。また、この分配割合の範囲で取り得る熱回収水入口温度を10℃〜50℃としている。なお、熱回収水の分配割合および熱回収水入口温度がこの範囲に限定されないことはもちろんである。
【0072】
熱回収水の循環流路への分配割合が最大である場合(S105のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最小であるか判断する(S107)。燃料電池100の発電出力が最小でない場合(S107のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を低減させる(S108)。例えば、制御部190は、燃料電池100の最大発電出力の設定値(発電出力上限値)を下げることで、燃料電池100の発電出力を低減させる。燃料電池システム1が負荷追従運転を行っている場合、制御部190が燃料電池100の最大発電出力の設定値を低減させることで、燃料電池100の発電出力を減らすことができる。なお、発電出力の低減は、所定値まで低減させてもよいし、所定量だけ低減させてもよい。制御部190は、燃料電池100の発電出力を低減させるとともに、発電出力低減フラグをオンに設定する。
【0073】
熱回収水入口温度を同一とし燃料電池100の発電出力を異ならせた場合における、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量の比較と燃料電池システム1での水収支(g/分)とを表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3に示すように、燃料電池100の発電出力を低減させると、排ガス出口温度が低下し、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量と水収支とがともに増大する。すなわち、燃料電池100の発電出力を低減させた場合、改質用水の流量と投入される原燃料および空気の流量とが低減されるため、燃料電池100から排出される排ガス流量が減る。これにより、熱交換器140を通過する排ガスの流速が小さくなるため、より排ガスと熱回収水との熱交換が進み、熱交換後の排ガス温度が熱回収水入口温度に漸近する。その結果、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量が増大する。また、燃料電池100に供給される改質ガスの量が減るため、タンク170内の凝縮水の使用量が減少する。よって、燃料電池システム1における水収支が増大する。したがって、燃料電池100の発電出力を低減させることで、タンク170内の水位を上昇させることができる。
【0076】
なお、ステップ104で水位が下限値未満(S104のY)であると判断されるのは、ステップ101〜103が繰り返されて燃料電池100が高出力運転された結果である。そのため、水位が下限値未満であると判断される状況では、貯湯槽130内の湯水の通常使用により比較的低温の市水が供給されることを考慮しても、貯湯槽130内の湯水は比較的高温になっている。したがって、ステップ105,106が繰り返されて循環流路への分配割合が最大となった状態でも熱回収水入口温度の低下量は比較的小さい。そのため、表3では、例として第1流路151の熱回収水温度および熱回収水入口温度をともに40℃としている。
【0077】
燃料電池100の発電出力が最小である場合(S107のY)、制御部190は、第1出口162の開度および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持する。第1出口162の開度および燃料電池100の発電出力を維持した場合、貯湯槽130内の湯水の使用等によって時間の経過とともに第1流路151の熱回収水温度が低下し、これにより熱回収水入口温度が低下して凝縮水の回収量が増大し、その結果、タンク170内の水位が徐々に上昇していくことが見込まれる。なお、制御部190は、所定時間が経過してもタンク170内の水位が下限値以上にならない場合に、燃料電池システム1を停止させたり、操作パネル(図示せず)を介して管理者や使用者に改質用水の不足を通知する等の制御を実施してもよい。
【0078】
水位が所定の下限値未満でない場合(S104のN)、この場合は水位が所定の上限値を上回っている状態であり、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最大であるか判断する(S109)。制御部190は、例えば、発電出力低減フラグがオンに設定されているか否かを判定することにより、燃料電池100の発電出力が最大であるか判断することができる。燃料電池100の発電出力が最大でない場合(S109のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させる(S110)。例えば、燃料電池100の最大発電出力の設定値を上げることで、燃料電池100の発電出力を増大させる。なお、発電出力の増大は、所定値まで増大させてもよいし、所定量だけ増大させてもよい。また、燃料電池システム1が負荷追従運転を行っている場合、制御部190は、ステップ109において燃料電池100の発電出力が電力需要未満であるか判断し、発電出力が電力需要未満である場合に、ステップ110において電力需要に合わせて燃料電池100の発電出力を調整するように制御してもよい。
【0079】
熱回収水入口温度を同一とし燃料電池100の発電出力を異ならせた場合における、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量の比較と燃料電池システム1での水収支(g/分)とを表4および表5に示す。
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
表4および表5に示すように、燃料電池100の発電出力を増大させると、排ガス出口温度が上昇し、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量と水収支とがともに低下する。表3からも同様のことがいえる。すなわち、燃料電池100の発電出力を増大させた場合、燃料電池100から排出される排ガス流量が大きくなるため、熱交換器140を通過する排ガスの流速が大きくなる。そのため、排ガスと熱回収水との熱交換量が減る。その結果、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量が減少する。また、燃料電池100に供給される改質ガスの量が増えるため、タンク170内の凝縮水の使用量が増大する。よって、燃料電池システム1における水収支が減少する。したがって、燃料電池100の発電出力を増大させることで、タンク170内の水位を低減させることができる。
【0083】
なお、例えば表1および表2のそれぞれにおける熱回収水入口温度が10℃の場合を比較すると、燃料電池100の発電出力を増大させると水収支が増大する。しかしながら、燃料電池100の発電出力を増大させるステップ110は、タンク170内の水位が所定範囲の上限値を上回ったと判断された場合(S104のN)、すなわち既に燃料電池100がある程度の時間運転された後に実行される。そのため、貯湯槽130内の湯水は比較的高温になっていることがほとんどであり、熱回収水入口温度が10℃となることは稀である。すなわち、燃料電池100の発電出力の増大により水収支が増大する状況は少ない。また、仮に、熱回収水入口温度が10℃となる状況、言い換えれば燃料電池100の発電出力の増大が水収支を増大させる状況であっても、その後のバイパス流路への分配割合増大制御によって水収支が低下していく。したがって、燃料電池100の発電出力の増大により水収支が大きくなる状況は一時的である。そのため、燃料電池システム1による電力供給量を増大できるというメリットも考慮して、燃料電池100の発電出力の増大を優先的に実施する。
【0084】
燃料電池100の発電出力が最大である場合(S109のY)、制御部190は、熱回収水のバイパス流路への分配割合が最大であるか判断する(S111)。バイパス流路への分配割合が最大でない場合(S111のN)、制御部190は、第2出口163の開度を所定量だけ増大させてバイパス流路への分配割合を増大させ、熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように熱回収水の流速を増大させる(S112)。
【0085】
表1および表2に示すように、バイパス流路への分配割合を増大させて熱回収水入口温度を上げるほど、排ガスの単位体積当たりの凝縮水量と水収支とがともに低下する。したがって、バイパス流路への分配割合を増大させて、熱回収水入口143における熱回収水の温度を上げることで、タンク170内の水位を低下させることができる。なお、第2出口163の開度の増大量は、適宜設定することができる。
【0086】
バイパス流路への分配割合が最大である場合(S111のY)、制御部190は、第2出口163の開度および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持する。表1に示すように、燃料電池100の発電出力を増大させた状態(700Wの状態)で、バイパス流路への分配割合が最大の状態では、燃料電池システム1での水収支(g/分)は負の値をとっている。したがって、バイパス流路への分配割合および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持することで、タンク170内の水位が徐々に低下していくことが見込まれる。
【0087】
続いて、燃料電池システム1の他の動作制御のフローを説明する。図3は、実施形態1に係る燃料電池システムの他の動作制御のフローチャートである。本フローチャートは、水位センサ180が1点水位検知型である場合の例である。このフローは、制御部190により実行され、例えば、燃料電池システム1の起動とともに開始され、燃料電池システム1の停止とともに終了する。以下の説明では、上述した水位センサ180が2点水位検知型である場合の動作制御と同様の点は適宜省略する。
【0088】
制御フローがスタートすると、制御部190は、タンク170内の水位が所定の下限値未満であるか判断する(S201)。水位が所定の下限値未満である場合(S201のY)、制御部190は、熱回収水の循環流路への分配割合が最大であるか判断する(S202)。循環流路への分配割合が最大でない場合(S202のN)、制御部190は、第1出口162の開度を所定量だけ増大させて循環復路への分配割合を増大させ、熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように熱回収水の流速を低減させる(S203)。
【0089】
熱回収水の循環流路への分配割合が最大である場合(S202のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最小であるか判断する(S204)。燃料電池100の発電出力が最小でない場合(S204のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を低減させる(S205)。燃料電池100の発電出力が最小である場合(S204のY)、制御部190は、第1出口162の開度および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持する。
【0090】
水位が所定の下限値未満でない場合(S201のN)、この場合は水位が所定の上限値を上回っている状態であり、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最大であるか判断する(S206)。燃料電池100の発電出力が最大でない場合(S206のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させ、ステップ201に戻る(S207)。燃料電池100の発電出力が最大である場合(S206のY)、制御部190は、熱回収水のバイパス流路への分配割合が最大であるか判断する(S208)。
【0091】
このように、タンク170内の水位が上限値を上回っている場合、すなわち、改質用水が不足していない場合は、燃料電池100の発電出力を増大させて、使用者の電力需要を満たすように制御する。なお、燃料電池システム1が負荷追従運転を行っている場合、制御部190は、燃料電池100の発電出力が電力需要を満たしているか判断し、発電出力が電力需要を満たしていない場合に、燃料電池100の発電出力を調整するように制御してもよい。
【0092】
バイパス流路への分配割合が最大でない場合(S208のN)、制御部190は、第2出口163の開度を所定量だけ増大させてバイパス流路への分配割合を増大させ、熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように熱回収水の流速を増大させる(S209)。バイパス流路への分配割合が最大である場合(S208のY)、制御部190は、第2出口163の開度および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持する。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池システム1おいて、熱回収水循環流路150は、熱交換器140を通過した熱回収水を貯湯槽130に戻す循環復路と、熱交換器140を通過した熱回収水を貯湯槽130を介さずに熱交換器140に再供給するバイパス流路を有する。また、制御部190は、水位センサ180から受信したタンク170内の水量に関する情報に基づいて、排ガスから回収される凝縮水の量を所定範囲に維持するように、分配割合調節弁160を制御している。また、制御部190は、分配割合調節弁160の制御とともに循環ポンプ230を制御して熱回収水の流速を調節している。
【0094】
このように、燃料電池システム1は、タンク170内の凝縮水の残量が所定の上限値を超える場合は、熱交換器140に供給される熱回収水の温度を上げることで、凝縮水の生成量を減らしている。また、燃料電池システム1は、タンク170内の凝縮水の残量が所定の下限値を下回ると、熱交換器140に供給される熱回収水の温度を下げて凝縮水の回収量を増大させている。
【0095】
そのため、本実施形態に係る燃料電池システム1は、水自立の維持を図ることができる。これにより改質用水として外部から市水を取り込む必要がなくなるため、市水中に含まれるカルシウムやシリカの析出を回避することができ、またイオン交換樹脂等の水処理装置にかかる負荷を軽減することができる。また、凝縮水の過剰生成を回避することができることからも、水処理装置にかかる負荷を軽減することができる。その結果、燃料電池システム1の長寿命化が可能となる。また、過剰な凝縮水の排出に必要な構造を省略することができるため、燃料電池システム1の小型化が可能となる。
【0096】
また、凝縮水の残量に余裕がある状態では熱回収水の流速を増大させているため、スケールの発生を抑制することができる。これにより、燃料電池システム1の長寿命化を図ることができる。なお、本実施形態に係る燃料電池システム1は、熱回収水循環流路150にバイパス流路を設けて熱交換器140に供給する熱回収水の温度を調節している。そのため、例えば燃料電池システム1の使用環境温度が下がった場合に、熱交換水の流速を落とすことによってではなく、熱交換器140に供給する熱回収水の温度を上昇させることで、熱回収水出口144における熱回収水の温度を目標温度まで上昇させることができる。すなわち、燃料電池システム1の使用環境温度が変化した場合においても、熱交換器140を流れる熱交換水の流速を担保することができるため、スケールの発生を抑制することができる。
【0097】
(実施形態2)
実施形態2に係る燃料電池システム1は、タンク170内の水量に関する状態として排ガスの温度を検出する。以下、本実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る燃料電池システム1の主な構成は実施形態1と同一であり、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0098】
図4は、実施形態2に係る燃料電池システムの概略構成を示す流路図である。図4に示すように、本実施形態に係る燃料電池システム1は、タンク170内の水量に関する状態を検出する検出部として、実施形態1の水位センサ180に代えて、熱交換器140を通過した排ガスの温度を検出する排ガス温度センサ250(検出部)を備える。排ガス温度センサ250は、例えば熱交換後排ガス流路123に設けられ、熱交換器140で熱交換が行われた後の排ガスの温度を検出する。また、排ガス温度センサ250は、制御部190と信号ケーブルで接続されており、検出した排ガスの温度を状態信号として制御部190に送信する。
【0099】
図5は、排ガスの温度と水収支との関係を示す図である。図5において、縦軸が水収支(g)であり、横軸が排ガス温度(℃)である。図5に示すように、排ガス温度センサ250によって検出される排ガスの温度と、凝縮水の回収量とタンク170内の水の使用量との差である水収支とは反比例の関係を有する。すなわち、水収支は、排ガスの温度に応じて決まる。具体的には、例えば排ガスの温度が約37℃であるときに、水収支が毎分1.5gであり、排ガスの温度が約45℃まで上昇すると水収支が毎分0gとなる。排ガスの温度が約45℃を上回ると、水収支は負の値となり、タンク170の水位は時間経過とともに低下する。排ガス温度と水収支との関係は、原燃料および改質用水の改質部110への供給量と、酸化剤である空気の燃料電池100への供給量およびその露点に基づいて計算で求めることができる。
【0100】
制御部190は、排ガス温度センサ250で検知される排ガスの温度と水収支とを対応付けた複数の変換テーブルを予め記憶している。この複数の変換テーブルは、設計者による実験やシミュレーションに基づいて、原燃料、改質用水および空気の供給量を取り得る範囲で変化させて作成されたものである。また、空気の露点については、空気露点を測定する機器を取り付け、その信号によるデータを用いてもよいし、露点分に余裕を持たせた変換テーブルを作成してもよい。制御部190は、排ガス温度センサ250から温度信号を受信し、変換テーブルを用いて温度信号から水収支を取得する。
【0101】
制御部190は、排ガス温度センサ250から受信した状態信号に基づいて、排ガスから回収される凝縮水の量を所定範囲に維持するように、分配割合調節弁160を制御する。制御部190は、排ガスの温度が、水収支が所定の下限値を下回る温度である場合に、タンク170内の水量に関する状態が水量を増大させるべき状態にあるとして、循環復路への分配割合を増大させるとともに熱回収水の流速を減少させる。また、制御部190は、排ガスの温度が、水収支が所定の上限値を上回る温度である場合に、タンク170内の水量に関する状態が水量を減少させるべき状態にあるとして、バイパス流路への分配割合を増大させるとともに熱回収水の流速を増大させる。
【0102】
例えば、前記「所定の下限値」は毎分0gに設定され、制御部190は、排ガスの温度が、水収支が毎分0gになるときの温度である45℃を上回ったときに、循環復路への分配割合を増大させる。排ガスの温度が45℃を上回ると、すなわち水収支が毎分0gを下回るとタンク170内の水量は減少していくため、循環復路への分配割合を増大させて凝縮水の回収量を増大させる。
【0103】
また、前記「所定の上限値」は例えば毎分1.5gに設定され、制御部190は、排ガスの温度が、水収支が毎分1.5gになるときの温度である37℃を下回ったときに、バイパス流路への分配割合を増大させる。排ガスの温度が37℃未満になると、すなわち水収支が毎分1.5gを越えると凝縮水の回収量が過剰になるため、バイパス流路への分配割合を増大させて凝縮水の回収量を低減させる。なお、「所定の下限値」および「所定の上限値」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0104】
以下に、燃料電池システム1の動作制御のフローを詳細に説明する。図6は、実施形態2に係る燃料電池システムの動作制御のフローチャートである。以下の説明では、実施形態1と同様の点は適宜省略する。
【0105】
制御フローがスタートすると、制御部190は、排ガスの温度が所定範囲内にあるか判断する(S301)。制御部190は、排ガスの温度が所定の上限値以下かつ所定の下限値以上である場合(図5の斜線で示す範囲にある場合)に、排ガスの温度が所定範囲にあると判断する。ここで、排ガス温度の所定の上限値は、水収支が所定の下限値(図5における毎分0g)となる温度(図5における45℃)であり、排ガス温度がこの上限値を超えると、水収支が所定の下限値を下回る。また、排ガス温度の所定の下限値は、水収支が所定の上限値(図5における毎分1.5g)となる温度(図5における37℃)であり、排ガス温度がこの下限値を下回ると、水収支が所定の上限値を上回る。
【0106】
排ガスの温度が所定範囲内にある場合(S301のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最大であるか判断する(S302)。燃料電池100の発電出力が最大でない場合(S302のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させて(S303)、ステップ301に戻る。燃料電池100の発電出力が最大である場合(S302のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させることなくステップ301に戻る。
【0107】
排ガスの温度が所定範囲内にない場合(S301のN)、制御部190は、排ガスの温度が所定の上限値を上回るか判断する(S304)。排ガスの温度が所定の上限値を上回る場合(S304のY)、制御部190は、熱回収水の循環流路への分配割合が最大であるか判断する(S305)。循環流路への分配割合が最大でない場合(S305のN)、制御部190は、第1出口162の開度を所定量だけ増大させて循環復路への分配割合を増大させ、熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように熱回収水の流速を低減させる(S306)。
【0108】
循環流路への分配割合が最大である場合(S305のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最小であるか判断する(S307)。燃料電池100の発電出力が最小でない場合(S307のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を低減させる(S308)。燃料電池100の発電出力が最小である場合(S307のY)、制御部190は、第1出口162の開度および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持する。
【0109】
排ガスの温度が所定の上限値を上回らない場合(S304のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最大であるか判断する(S309)。燃料電池100の発電出力が最大でない場合(S309のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させる(S310)。燃料電池100の発電出力が最大である場合(S309のY)、制御部190は、熱回収水のバイパス流路への分配割合が最大であるか判断する(S311)。
【0110】
バイパス流路への分配割合が最大でない場合(S311のN)、制御部190は、第2出口163の開度を所定量だけ増大させてバイパス流路への分配割合を増大させ、熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように熱回収水の流速を増大させる(S312)。バイパス流路への分配割合が最大である場合(S311のY)、制御部190は、第2出口163の開度および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持する。
【0111】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池システム1は、水収支の指標となる排ガスの温度に基づいて、凝縮水の回収量を所定範囲に維持するように分配割合調節弁160を制御している。このような制御によっても、実施形態1に係る燃料電池システム1と同様の効果を奏することができる。
【0112】
(実施形態3)
実施形態3に係る燃料電池システム1は、タンク170内の水量に関する状態としてタンク170内の水圧を検出する。以下、本実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る燃料電池システム1の主な構成は実施形態1と同一であり、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0113】
図7は、実施形態3に係る燃料電池システムの概略構成を示す流路図である。図7に示すように、本実施形態に係る燃料電池システム1は、タンク170内の水量に関する状態を検出する検出部として、実施形態1の水位センサ180に代えて、タンク170内の水圧を検出する水圧センサ260(検出部)を備える。水圧センサ260は、制御部190と信号ケーブルで接続されており、検出した水圧を状態信号として制御部190に送信する。
【0114】
制御部190は、水圧センサ260から受信した状態信号に基づいて、排ガスから回収される凝縮水の量を所定範囲に維持するように、分配割合調節弁160を制御する。制御部190は、水圧が所定の下限値を下回った場合に、タンク170内の水量に関する状態が水量を増大させるべき状態にあるとして、循環復路への分配割合を増大させるとともに熱回収水の流速を減少させる。また、制御部190は、水圧が所定の上限値を上回った場合に、タンク170内の水量に関する状態が水量を減少させるべき状態にあるとして、バイパス流路への分配割合を増大させるとともに熱回収水の流速を増大させる。
【0115】
前記「所定の下限値」は、例えば改質部110への改質ガスの供給を維持することができる凝縮水の最低量にマージンを付加して、当該最低量よりも高く設定した水量で検出される水圧値である。また、前記「所定の上限値」は、例えばタンク170の収容限界量にマージンを付加して、当該収容限界量よりも低く設定した水量で検出される水圧値である。「所定の下限値」および「所定の上限値」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0116】
以下に、燃料電池システム1の動作制御のフローを詳細に説明する。図8は、実施形態3に係る燃料電池システムの動作制御のフローチャートである。以下の説明では、実施形態1と同様の点は適宜省略する。
【0117】
制御フローがスタートすると、制御部190は、水圧が所定範囲内にあるか判断する(S401)。制御部190は、水圧が所定の上限値以下かつ所定の下限値以上である場合に、水圧が所定範囲にあると判断する。水圧が所定範囲内にある場合(S401のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最大であるか判断する(S402)。燃料電池100の発電出力が最大でない場合(S402のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させて(S403)、ステップ301に戻る。燃料電池100の発電出力が最大である場合(S402のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させることなくステップ301に戻る。
【0118】
水圧が所定範囲内にない場合(S401のN)、制御部190は、水圧が所定の下限値未満であるか判断する(S404)。水圧が所定の下限値未満である場合(S404のY)、制御部190は、熱回収水の循環流路への分配割合が最大であるか判断する(S405)。循環流路への分配割合が最大でない場合(S405のN)、制御部190は、第1出口162の開度を所定量だけ増大させて循環復路への分配割合を増大させ、熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように熱回収水の流速を低減させる(S406)。
【0119】
循環流路への分配割合が最大である場合(S405のY)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最小であるか判断する(S407)。燃料電池100の発電出力が最小でない場合(S407のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を低減させる(S408)。燃料電池100の発電出力が最小である場合(S407のY)、制御部190は、第1出口162の開度および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持する。
【0120】
水圧が所定の下限値未満でない場合(S404のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力が最大であるか判断する(S409)。燃料電池100の発電出力が最大でない場合(S409のN)、制御部190は、燃料電池100の発電出力を増大させる(S410)。燃料電池100の発電出力が最大である場合(S409のY)、制御部190は、熱回収水のバイパス流路への分配割合が最大であるか判断する(S411)。
【0121】
バイパス流路への分配割合が最大でない場合(S411のN)、制御部190は、第2出口163の開度を所定量だけ増大させてバイパス流路への分配割合を増大させ、熱回収水出口144における熱回収水の温度が所定範囲となるように熱回収水の流速を増大させる(S412)。バイパス流路への分配割合が最大である場合(S411のY)、制御部190は、制御部190は、第2出口163の開度および燃料電池100の発電出力を現状のまま維持する。
【0122】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池システム1は、タンク170内の水圧に基づいて、凝縮水の回収量を所定範囲に維持するように分配割合調節弁160を制御している。このような制御によっても、実施形態1に係る燃料電池システム1と同様の効果を奏することができる。
【0123】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述した各実施形態の変形例としては、たとえば以下のものを挙げることができる。
【0124】
上述した各実施形態では、燃料電池システムの発電工程における排ガスと熱回収水との熱交換によって、水自立の維持とスケール発生の抑制とを図る場合を例に説明したが、燃料電池システムの停止工程においても、同様の制御によって水自立の維持とスケール発生の抑制とを図ることができる。例えば、燃料電池システムの停止工程では、オフガス燃焼部での燃焼と燃料電池の発電とが停止され、発電部に空気が供給されて発電部内が冷却される。発電部内の冷却に用いられた空気は、発電部から高温の排ガスとして熱交換器に送出される。そして、この排ガスに対して上述した制御が実施される。この場合、需要電力および発電電力はともに0Wであるため、発電電力が最大または最小であることを判定するステップ(たとえば、図2に示すフローのS102、S107、S111)においては、常にYが選択される。
【符号の説明】
【0125】
1 燃料電池システム、 2 発電部、 100 燃料電池、 110 改質部、 112 オフガス燃焼部、 120 排ガス流路、 130 貯湯槽、 140 熱交換器、 150 熱回収水循環流路、 160 分配割合調節弁、 170 タンク、 180 水位センサ、 190 制御部、 230 循環ポンプ、 240 温度センサ、 250 排ガス温度センサ、 260 水圧センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードおよびカソードを含む燃料電池を有する発電部と、
前記発電部から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、
前記排ガスの熱を回収するための熱媒体を貯蔵する貯蔵槽と、
前記排ガス流路を流れる排ガスと前記熱媒体との間で熱交換を行う熱交換部と、
前記貯蔵槽内の熱媒体を前記熱交換部に供給するための循環往路、前記熱交換部を通過した熱媒体を前記貯蔵槽に送出する循環復路、および前記熱交換部を通過した熱媒体を前記貯蔵槽を介さずに前記循環往路に合流させるバイパス流路を有する熱媒体循環流路と、
前記熱媒体循環流路内の熱媒体を循環させ、前記熱媒体の流速を調節する循環装置と、
前記熱媒体の流量の前記循環復路および前記バイパス流路への分配割合を調節するための分配割合調節部と、
前記熱交換部を通過した排ガスから回収された凝縮水を収容するタンクと、
前記タンク内の水量に関する状態を検出して状態信号を送信するための検出部と、
前記状態信号に基づいて、前記排ガスから回収される凝縮水の量を所定範囲に維持するように前記分配割合調節部を制御し、前記熱交換部で熱交換が行われた熱媒体の温度が所定範囲となるように前記循環装置を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記発電部は、改質部および燃焼部をさらに有し、
前記改質部は、原燃料を改質して前記燃料電池に供給する改質ガスを生成し、
前記燃焼部は、燃料およびアノードオフガスの少なくとも1つを燃焼用酸素含有ガスおよびカソードオフガスの少なくとも1つと混合して燃焼させ、前記改質部を加熱する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記状態が前記水量を増大させるべき状態である場合に、前記制御部は、前記循環復路への分配割合を増大させるとともに前記熱交換部を通過する熱媒体の流速を低減させる請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記循環復路への分配割合が最大である場合に、前記燃料電池の発電出力を低減させる請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記状態が前記水量を減少させるべき状態である場合に、前記制御部は、前記燃料電池の発電出力を増大させる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記燃料電池の発電出力が最大である場合に、前記バイパス流路への分配割合を増大させるとともに前記熱交換部を通過する熱媒体の流速を増大させる請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記検出部は、前記タンク内の水位を検出し、
前記水位が所定の下限値を下回った場合に、前記制御部は、前記循環復路への分配割合を増大させるとともに前記熱交換部を通過する熱媒体の流速を低減させる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記検出部は、前記タンク内の水位を検出し、
前記水位が所定の上限値を上回った場合に、前記制御部は、前記バイパス流路への分配割合を増大させるとともに前記熱交換部を通過する熱媒体の流速を増大させる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記検出部は、前記排ガスの温度を検出し、
前記凝縮水の回収量と前記タンク内の水の使用量との差は、前記排ガスの温度に応じて決まり、
前記排ガスの温度が、前記差が所定の下限値を下回る温度である場合に、前記制御部は、前記循環復路への分配割合を増大させるとともに前記熱交換部を通過する熱媒体の流速を低減させる請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記検出部は、前記排ガスの温度を検出し、
前記凝縮水の回収量と前記タンク内の水の使用量との差は、前記排ガスの温度に応じて決まり、
前記排ガスの温度が、前記差が所定の上限値を上回る温度である場合に、前記制御部は、前記バイパス流路への分配割合を増大させるとともに前記熱交換部を通過する熱媒体の流速を増大させる請求項1乃至9のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記検出部は、前記タンク内の水圧を検出し、
前記水圧が所定の下限値を下回った場合に、前記制御部は、前記循環復路への分配割合を増大させるとともに前記熱交換部を通過する熱媒体の流速を低減させる請求項1乃至10のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記検出部は、前記タンク内の水圧を検出し、
前記水圧が所定の上限値を上回った場合に、前記制御部は、前記バイパス流路への分配割合を増大させるとともに前記熱交換部を通過する熱媒体の流速を増大させる請求項1乃至11のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−101872(P2013−101872A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245532(P2011−245532)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】