説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムにおいて、電線の短縮化、耐ノイズ性の向上、仕様変更に対する対応容易化、コミュニケーション充填の最適化等を図る。
【解決手段】燃料電池スタック12と燃料電池スタック12に関連する補機13およびセンサ14とを有する燃料電池ユニット10と、燃料電池スタック12の燃料を貯蔵する燃料タンク22と燃料タンク22に関連する補機23およびセンサ24とを有する燃料サプライユニット20と、燃料電池ユニット10および燃料サプライユニット20とを制御し各センサから入力した情報を扱う制御装置と、を備える燃料電池システム1において、前記制御装置は、燃料電池ユニット10に設けられた制御器15と、燃料サプライユニット20に設けられた制御器25とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池と制御装置と各種センサと記憶装置とポンプ等の補機を備えた燃料電池ユニットと、燃料源と各種センサとバルブ等の補機を備えた燃料サプライユニットとを、電気的および機械的に接続してなる燃料電池システムが開示されている。
【0003】
図5は、このような構成を基本とする燃料電池システムを燃料電池車両に搭載した場合の構成図を示している。なお、図5には、燃料サプライユニットに燃料を供給するための燃料補充ステーションを併記している。
燃料電池ユニット50は、燃料電池スタック51と、燃料電池スタック51への燃料の供給、停止を司る遮断弁やレギュレータ等の補機52と、燃料電池スタック51の運転制御に必要な各種センサ53と、各種センサ53で検出したデータ等を記憶する情報記憶装置54と、情報記憶装置54から入力したデータに基づいて補機52等を制御する制御器55とを備えている。
【0004】
燃料サプライユニット60は、燃料を蓄える燃料タンク61と、燃料タンク61の出口に設けられた遮断弁等の補機62と、燃料タンク内圧検出用の圧力センサ等の各種センサ63とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−506482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5に示される従来の燃料電池システムでは、情報記憶装置54、制御器55が燃料電池ユニット50にあるだけで、燃料サプライユニット60には制御器がないので、燃料サプライユニット60のセンサ63と燃料電池ユニット50の情報記憶装置54とを接続する電線や、燃料サプライユニット60の補機62と燃料電池ユニット50の制御器55とを接続する電線など、燃料電池ユニット50と燃料サプライユニット60とに架け渡される電線本数が多くなり、重量増大およびコストアップになるという課題がある。
【0007】
また、センサ出力に多いアナログ微弱信号等は、電磁ノイズによる悪影響を受け易く、車両には電磁ノイズの発生源となる機器(例えば、大出力モータやバッテリなど)が多く存在するため、燃料電池ユニット50と燃料サプライユニット60との間でセンサ出力信号線を架け渡す場合には、電磁ノイズを低減する配慮が必要となり、面倒であるという課題がある。なお、電磁ノイズを低減する具体的な対策としては、電磁ノイズフィルタの大容量化、電磁ノイズの遮断、配線位置や電線長の工夫などが知られている。
【0008】
また、例えば補機62の仕様変更など、燃料サプライユニット60の仕様変更をする場合に、それに対応する燃料電池ユニット50の制御器55や情報記憶装置54も仕様変更しなければならなくなる場合がある。このように、燃料サプライユニット60の仕様変更だけで済まず、燃料電池ユニット50の仕様変更まで伴うとなると、極めて煩雑であるという課題がある。特に、燃料電池ユニット50の仕様変更をする際に、燃料電池スタック2を取り外す事態を招くと、作業時間も長時間となり、益々煩雑となる。
【0009】
さらに、今後、燃料補充ステーション70において燃料タンク61に燃料を補給する場合には、充填効率向上や安全性向上のために、燃料補充ステーション70と車両との間で通信を行いながら燃料充填を行うことが考えられている(以下、コミュニケーション充填という)。ここで、燃料補充ステーション70は、燃料を貯蔵する燃料源71、燃料源71の出口に設けられた遮断弁等の補機72と、燃料源71内圧検出用の圧力センサ等の各種センサ73と、補機72を制御する制御器74とを備えて構成される。
【0010】
前記コミュニケーション充填を行うには、燃料補充ステーション70の制御器74は燃料サプライユニット60のセンサ63のデータを参照する必要があるが、図5に示される従来の燃料電池システムでは、制御器55が燃料電池ユニット50にあるため、燃料補充ステーション70の制御器74を燃料電池ユニット50の制御器55と接続して通信を行い、情報記憶装置54を介して燃料サプライユニット60のセンサ63のデータを取得することとなる。このようにすると、情報記憶装置54に接続されている燃料電池ユニット50の補機52のドライバやセンサ53も起動されてしまい、消費電力が増大するという課題もある。
【0011】
そこで、この発明は、電線の短縮化、耐ノイズ性の向上、仕様変更に対する対応容易化、コミュニケーション充填の最適化等を図ることができる燃料電池システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る燃料電池システムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、
燃料電池(例えば、後述する実施例における燃料電池スタック12)と燃料電池関連補機(例えば、後述する実施例における補機13)と燃料電池関連情報用センサ(例えば、後述する実施例におけるセンサ14)とを有する燃料電池装置(例えば、後述する実施例における燃料電池ユニット10)と、
前記燃料電池の燃料源(例えば、後述する実施例における燃料タンク22)と燃料源関連補機(例えば、後述する実施例における補機23)と燃料源関連情報用センサ(例えば、後述する実施例におけるセンサ24)とを有する燃料供給装置(例えば、後述する実施例における燃料サプライユニット20)と、
前記燃料電池装置および前記燃料供給装置とを制御し各センサから入力した情報を扱う制御装置と、
を備える燃料電池システム(例えば、後述する実施例における燃料電池システム1)において、
前記制御装置は、前記燃料電池装置に設けられた第1制御装置(例えば、後述する実施例における制御器15)と、前記燃料供給装置に設けられた第2制御装置(例えば、後述する実施例における制御器25)とからなることを特徴とする燃料電池システムである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2制御装置は、前記燃料源関連補機および前記燃料源関連情報用センサを使用するための回路を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記燃料供給装置は燃料補充用補機(例えば、後述する実施例における主止弁26)を備え、前記第2制御装置は、燃料電池システムの外部に存する燃料補充ステーション(例えば、後述する実施例における燃料補充ステーション30)との通信用センサと前記燃料補充用補機を使用するための回路を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の発明において、前記第1制御装置は、前記第2制御装置とともに、前記通信用センサと前記燃料補充用補機を使用するための回路を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の発明において、燃料電池システムは車両(例えば、後述する実施例における車両100)に搭載され、前記第2制御装置は衝突検知回路を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の発明において、燃料電池システムは車両(例えば、後述する実施例における車両100)に搭載され、前記燃料源は主止弁(例えば、後述する実施例における主止弁26)を備えた燃料タンク(例えば、後述する実施例における燃料タンク22)であり、前記第2制御装置は、該第2制御装置を除いた前記燃料供給装置の中心と主止弁の中心を通る線を法線とし前記燃料供給装置の中心通る面を第1基準面に設定したときに、該第1基準面から主止弁に近い側の空間に配置されることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の発明において、前記燃料供給装置は燃料補充用補機(例えば、後述する実施例における主止弁26)を備え、前記第2制御装置は、燃料電池システムの外部に存する燃料補充ステーション(例えば、後述する実施例における燃料補充ステーション30)との通信用センサと前記燃料補充用補機を使用するための回路を備え、車両の前後方向、左右方向、上下方向からの各視座のうち、最も前記主止弁と車両外面が近くなる視座での該車両外面に、前記燃料補充ステーションとの通信を可能にする通信接続部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の発明において、前記第2制御装置は、前記燃料供給装置を支持するフレーム(例えば、後述する実施例におけるフレーム21)に設置されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の発明において、前記第2制御装置は、前記フレームの最外部よりも内側に設置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項10に係る発明は、請求項8に記載の発明において、前記第2制御装置は、前記フレーム上に設置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項11に係る発明は、請求項8に記載の発明において、前記主止弁に最も近い電磁ノイズ発生部(例えば、後述する実施例における高電圧部品27)と前記燃料供給装置との境界となる境界面に対して平行で前記主止弁の中心を通る面を第2基準面に設定したときに、前記第2基準面を基準として前記電磁ノイズ発生部から遠ざかる側の空間に前記第2制御装置が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、燃料電池装置は第1制御装置を備え、燃料供給装置は第2制御装置を備えているので、燃料電池装置と燃料供給装置との間を接続する電線数を削減することができ、重量低減、コストダウンを図ることができる。また、燃料供給装置において電線長を短縮することができ、電線が電磁ノイズによる影響を受け難くなる。
さらに、燃料供給装置に設置されている機器の仕様変更を行う場合に、部品交換を燃料供給装置内で完結することができる場合が多くなり、サービス性が向上する。
請求項2に係る発明によれば、燃料源関連補機を第2制御装置によって制御することが可能となる。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、燃料補充ステーションと燃料電池システムとの間で通信を行いながら燃料補充をする場合に、第2制御装置だけを起動させるだけで済み、第1制御装置を起動させずに済むので、消費電力を抑制することができる。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、燃料補充用の回路を冗長化することができ、燃料供給装置の第2制御装置における燃料補充用の回路に故障が生じた場合に、燃料電池装置の第1制御装置の回路を用いて燃料補充を行うことができる。
請求項5に係る発明によれば、車両の衝突時に燃料供給遮断の確実性が向上する。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、燃料供給装置の第2制御装置と燃料タンクの主止弁との距離を比較的に短くすることができるので、第2制御装置と主止弁とを接続する電線の長さを短縮することができる。
請求項7に係る発明によれば、 通信接続部を主止弁に近い位置に配置することができ、その結果、通信用接続部と燃料供給装置の第2制御装置とを接近して配置することができるので、通信用接続部と第2制御装置とを接続する電線の長さを短縮することができ、ノイズによる影響を受け難くすることができる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、第2制御装置を強固に設置することができる。
請求項9に係る発明によれば、車両が衝撃を受けた場合に、第2制御装置を破損し難くすることができる。
請求項10に係る発明によれば、第2制御装置および電線をチッピング(飛び石)やスプラッシュ(水跳ね)等から保護することができる。
【0028】
請求項11に係る発明によれば、第2制御装置およびこれに接続される電線が、電磁ノイズ発生部から発生する電磁ノイズの影響を受け難くすることができ、耐ノイズ性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明に係る燃料電池システムを搭載した燃料電池車両を側方から見た模式図である。
【図2】前記燃料電池システムの概略構成と燃料補充ステーションの概略構成を示すブロック図である。
【図3】前記燃料電池システムにおける燃料電池ユニットを車両後方から見た背面図である。
【図4】前記燃料電池システムにおける燃料電池ユニットを上方から見た平面図である。
【図5】従来の燃料電池システムの概略構成と燃料補充ステーションの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明に係る燃料電池システムの実施例を図1から図4の図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る燃料電池システム1を搭載した燃料電池車両100を側方から見た模式図であり、図2は該燃料電池システム1の概略構成と燃料補充ステーション30の概略構成を示すブロック図である。
【0031】
燃料電池システム1は、燃料電池ユニット(燃料電池装置)10と燃料サプライユニット(燃料供給装置)20とから構成されており、図1に示すように、燃料電池ユニット10は車両の前部に設置され、燃料サプライユニット20は車両の後部に設置されている。より具体的には、燃料電池ユニット10は車両の前部座席のフロア下に設置されており、燃料サプライユニット20は後部座席よりも後方に設置されている。つまり、燃料電池ユニット10と燃料サプライユニット20は互いに車両前後方向に離間して配置されている。なお、燃料電池ユニット10と燃料サプライユニット20は、燃料配管によって機械的に接続されるとともに、制御器15と制御器25(図2)が電線によって接続されている。
【0032】
図2に示すように、燃料電池ユニット10は、燃料電池スタック12、燃料電池スタック12の運転に必要な補機(燃料電池関連補機)13と、燃料電池スタック12の運転管理に必要な各種センサ(燃料電池関連情報用センサ)14と、燃料電池スタック12の運転を制御するための制御器(第1制御装置)15とを備えて構成されており、フレーム11(図1)に支持されている。
【0033】
燃料電池ユニット10の補機13には、例えば、加湿器や、燃料電池スタック12に酸化剤を供給するコンプレッサや、燃料電池スタック12への燃料供給を停止可能にする遮断弁や、燃料サプライユニット20から供給される燃料の圧力を所定圧に減圧するレギュレータ等が含まれる。補機13は制御器15によって制御される。
【0034】
燃料電池ユニット10のセンサ14には、例えば、燃料電池スタック12の温度を検出するスタック温度センサ、燃料電池スタック12から排出されるカソードオフガスの圧力を検出するカソード圧センサ等が含まれる。センサ14は検出値に応じた電気信号を制御器15に出力する。
燃料電池ユニット10の制御器15は、センサ14から入力した情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された情報等に基づいて補機13等を制御する制御回路等を含んで構成されている。
【0035】
一方、燃料サプライユニット20は、燃料タンク22と、燃料タンク22から燃料を放出したり燃料タンク22に燃料を充填する際に必要な補機(燃料源関連補機)23と、補機23の運転管理に必要な情報を検出する各種センサ(燃料源関連情報用センサ)24と、補機23の運転を制御するための制御器(第2制御装置)25とを備え得て構成されており、フレーム21(図1)に支持されている。
【0036】
図3、図4に示すように、燃料タンク22はその出口部に主止弁26を備えている。主止弁26は、燃料タンク22から燃料を放出したり、燃料タンク22に燃料を充填する際に、燃料タンク22内と図2に示した燃料供給流路28あるいは燃料充填流路29とを選択的に接続あるいは遮断する弁であり、電磁駆動部を備えている。したがって、主止弁26は燃料補充用補機でもある。また、主止弁26は、図示を省略するが、燃料タンク22内の圧力を検出するタンク圧センサと、燃料タンク22内の温度を検出するタンク温度センサとを具備している。
【0037】
燃料サプライユニット20の補機23には、前記主止弁26が含まれており、主止弁26以外に、主止弁26から放出された燃料圧を減圧するレギュレータ等が含まれる。補機23(主止弁26の電磁駆動部を含む)は制御器25によって制御される。
燃料サプライユニット20のセンサ24には、前述した主止弁26に設けられたタンク圧センサやタンク温度センサが含まれており、これら以外にも、燃料タンク22周囲の水素濃度を検出する水素センサが含まれる。センサ24は検出値に応じた電気信号を制御器25に出力する。
燃料サプライユニット20の制御器25は、センサ24から入力した情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された情報等に基づいて補機23等を制御する制御回路等を含んで構成されている。
【0038】
図3、図4を参照して、燃料サプライユニット20のレイアウトについて詳述する。なお、図4において符号Frは車両前方を示している。
フレーム21は、平面視で車幅方向に細長く中央部分が開口した長方形状の枠型をなしており、このフレーム21の上に燃料タンク22が設置されている。燃料タンク22は、車幅方向に細長く両端が半球状のボンベ型をなしており、フレーム21の前後方向ほぼ中央であって、左右方向に関しては図中若干左寄りに配置されている。また、主止弁26は、燃料タンク22の図中右端に設けられている。
また、燃料タンク22の真上には、電磁ノイズ発生部としての高電圧部品(例えば高圧バッテリ)27が設置されているものとする。
ここで、図3および図4に示すように、制御器25を除いた燃料サプライユニット20の中心をP、主止弁26の中心をQとする。
なお、燃料サプライユニット20の中心Pとは、各部品の密度を一定とした際の、配管および配線を除く燃料サプライユニット20の各部品によりなる重心点(図心)である。
【0039】
そして、燃料サプライユニット20の中心Pと主止弁26の中心Qを通る直線Lを法線とする面であって燃料サプライユニット20の中心Pを通る面を第1基準面S1に設定する。
さらに、高電圧部品27と燃料サプライユニット20との境界面と平行な面であって主止弁26の中心Qを通る面を第2基準面S2に設定する。なお、この実施例では、第2基準面S2は主止弁26の中心Qを通る水平面となっている。
【0040】
このように基準面S1,S2を設定したときに、燃料サプライユニット20の制御器25を、第1基準面S1よりも主止弁26に近い側の空間に配置するのが好ましい。前述したように主止弁26は、流路切換のための電磁駆動部だけでなく、タンク圧センサやタンク温度センサを備えており、制御器25に接続する電線を多く必要とするが、制御器25を第1基準面S1よりも主止弁26に近い側の空間に配置すると、第1基準面S1よりも主止弁26から遠い側の空間に配置する場合に比較して、制御器25と主止弁26との距離を比較的に短くすることができ、前記電線長を短縮することができるからである。
【0041】
また、第2基準面S2を基準にして高電圧部品27から遠ざかる側の空間に、制御器25を配置するのが好ましい。このようにすると、制御器25およびこれに接続される電線が、高電圧部品27から発生する電磁ノイズの影響を受け難くすることができ、耐ノイズ性を向上することができる。
【0042】
さらに、平面視において、制御器25をフレーム21の最外縁(最外部)よりも内側に配置するのが好ましい。このようにすると、車両が衝撃を受けた場合に、制御器25を破損し難くすることができる。
図3、図4において、細かい点を付した領域Rは、フレーム21の上側において上記三つの条件を満足する領域を示している。
【0043】
また、制御器25はフレーム21に直接設置するのが好ましい。制御器25を強固に設置することができるからである。
制御器25をフレーム21に直接設置する場合に、フレーム21の上に設置するのが、より好ましい。制御器25および電線をチッピング(飛び石)やスプラッシュ(水跳ね)等から保護することができるからである。
燃料サプライユニット20の制御器25は、衝突検知回路を備えるのが好ましい。これにより、車両100が衝突したときに燃料供給遮断の確実性が向上する。
【0044】
この実施例では、図3、図4に示すように、制御器25は、主止弁26から一番近い位置のフレーム21の上に直接設置されている。また、図4に示すように、主止弁26以外の補機23(レギュレータ等)と、主止弁26に具備されているセンサ以外のセンサ24(水素センサ等)は、フレーム21の前部上方に設置されている。
【0045】
このように構成された燃料電池システム1によれば、燃料電池ユニット10は燃料電池ユニット10内の制御に必要な制御器15を備え、燃料サプライユニット20は燃料サプライユニット20内の制御に必要な制御器25を備えているので、燃料サプライユニットに制御器を備えない従来の燃料電池システムと比較して、燃料電池ユニット10と燃料サプライユニット20との間を接続する電線数を削減することができる。その結果、電線全体として、重量低減、コストダウンを図ることができる。また、車両上におけるレイアウトの自由度が高くなり、商品性が高まる。
【0046】
また、燃料サプライユニット20内において、センサ24と制御器25を接続することができるので、燃料サプライユニットに制御器を備えない従来の燃料電池システムと比較して、電線長を短縮することができ、電線が電磁ノイズによる影響を受け難くなる。
【0047】
また、燃料サプライユニット20に設置されている機器の仕様変更を行う場合に、部品交換を燃料サプライユニット20内で完結することができる場合が多くなり、サービス性が向上する。
【0048】
なお、燃料補充ステーション30にて燃料タンク22に燃料を充填する際にコミュニケーション充填をできるようにするために、燃料サプライユニット20の制御器25は、燃料補充ステーション30との通信用センサ(例えば、車両100の燃料充填口と燃料充填ホース35との接続を確認するセンサ等)と燃料補充用補機(主止弁26等)を使用および制御するための回路(以下、燃料補充用回路という)を備えることが好ましい。
このように燃料サプライユニット20の制御器25に燃料補充用回路が備えられていると、コミュニケーション充填の際に燃料サプライユニット20の制御器25だけを起動させるだけで済み、燃料電池ユニット10の制御器15を起動させずに済む。その結果、燃料電池ユニット10の制御器15に接続されたセンサ14や補機13を起動させずに済むので、消費電力を抑制することができる。
【0049】
燃料補充ステーション30は、図2に示すように、燃料を貯蔵する燃料源31、燃料源31の出口に設けられた遮断弁等の補機32と、燃料源31内圧検出用の圧力センサ等の各種センサ33と、補機32を制御する制御器34等を備えて構成されている。
燃料のコミュニケーション充填は、燃料補充ステーション30の補機32から延びる燃料補充ホース35を車両100の燃料充填口(図示略)に接続し、燃料補充ステーション30の制御器34と燃料サプライユニット20の制御器25を電気的に接続して行う。
【0050】
ここで、車両100に、燃料補充ステーション30の制御器34から延びるコミュニケーション充填用通信線36を接続する接続部(以下、通信接続部という)を設ける必要があるが、この通信接続部は、車両100の前後方向、左右方向、上下方向からの各視座のうち、最も主止弁26と車両外面(ボディ外面)が近くなる視座での該車両外面に設けるのが好ましい。このようにすると、通信接続部を主止弁26に近い位置に配置することができ、その結果、通信接続部と燃料サプライユニット20の制御器25とを接近して配置することができるので、通信接続部と制御器25とを接続する電線の長さを短縮することができ、ノイズによる影響を受け難くすることができる。
【0051】
また、燃料サプライユニット20の制御器25に燃料補充用回路を設けるとともに、燃料電池ユニット10の制御器15にも、燃料補充ステーション30との通信用センサと燃料補充用補機を使用および制御するための燃料補充用回路を備えることも可能である。
このようにすると、燃料補充用回路を冗長化することができるので、燃料サプライユニット20の制御器25の燃料補充用回路に回路故障が生じた場合に、燃料電池ユニット10の制御器15の燃料補充用回路を用いて燃料補充を行うことができ、燃料補充ができない事態となる確率を低減することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 燃料電池システム
10 燃料電池ユニット(燃料電池装置)
12 燃料電池スタック(燃料電池)
13 補機(燃料電池関連補機)
14 センサ(燃料電池関連情報用センサ)
15 制御器(第1制御装置)
20 燃料サプライユニット(燃料供給装置)
21 フレーム
22 燃料タンク(燃料源)
23 補機(燃料源関連補機)
24 センサ(燃料源関連情報用センサ)
25 制御器(第2制御装置)
26 主止弁(燃料源関連補機、燃料補充用補機)
27 高電圧部品(電磁ノイズ発生部)
30 燃料補充ステーション
100 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と燃料電池関連補機と燃料電池関連情報用センサとを有する燃料電池装置と、
前記燃料電池の燃料源と燃料源関連補機と燃料源関連情報用センサとを有する燃料供給装置と、
前記燃料電池装置および前記燃料供給装置とを制御し各センサから入力した情報を扱う制御装置と、
を備える燃料電池システムにおいて、
前記制御装置は、前記燃料電池装置に設けられた第1制御装置と、前記燃料供給装置に設けられた第2制御装置とからなることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記第2制御装置は、前記燃料源関連補機および前記燃料源関連情報用センサを使用するための回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料供給装置は燃料補充用補機を備え、
前記第2制御装置は、燃料電池システムの外部に存する燃料補充ステーションとの通信用センサと前記燃料補充用補機を使用するための回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1制御装置は、前記第2制御装置とともに、前記通信用センサと前記燃料補充用補機を使用するための回路を備えることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
燃料電池システムは車両に搭載され、前記第2制御装置は衝突検知回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池システムは車両に搭載され、
前記燃料源は主止弁を備えた燃料タンクであり、
前記第2制御装置は、該第2制御装置を除いた前記燃料供給装置の中心と主止弁の中心を通る線を法線とし前記燃料供給装置の中心通る面を第1基準面に設定したときに、該第1基準面から主止弁に近い側の空間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料供給装置は燃料補充用補機を備え、
前記第2制御装置は、燃料電池システムの外部に存する燃料補充ステーションとの通信用センサと前記燃料補充用補機を使用するための回路を備え、
車両の前後方向、左右方向、上下方向からの各視座のうち、最も前記主止弁と車両外面が近くなる視座での該車両外面に、前記燃料補充ステーションとの通信を可能にする通信接続部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記第2制御装置は、前記燃料供給装置を支持するフレームに設置されていることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記第2制御装置は、前記フレームの最外部よりも内側に設置されていることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記第2制御装置は、前記フレーム上に設置されていることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記主止弁に最も近い電磁ノイズ発生部と前記燃料供給装置との境界となる境界面に対して平行で前記主止弁の中心を通る面を第2基準面に設定したときに、前記第2基準面を基準として前記電磁ノイズ発生部から遠ざかる側の空間に前記第2制御装置が配置されていることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−12421(P2013−12421A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145112(P2011−145112)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】